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健康な高齢者へのアスピリン使用の生命予後への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの高齢者へのリスク.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
70歳以上の高齢者に低用量のアスピリンを使用した場合の、
生命予後への影響を検証した論文です。

低用量(1日80から100mg)のアスピリンには、
抗血小板作用があり。
心血管疾患の再発予防や、
消化器系の癌(腺癌)の進行予防効果が確認されています。
その一方で出血系の合併症のリスクは高めるので、
まだ心血管疾患や癌を発症していない、
健康な高齢者に使用を継続した時に、
果たして健康面にトータルでメリットがあるのか、
というのは未だ解決されていない問題です。

そこで2010年から2014年に掛けて、
オーストラリアとアメリカの70歳以上
(アメリカの黒人とヒスパニックは65歳以上)
の一般住民で、
心血管疾患や認知症などがなく生活上の問題のない、
トータル19114名を登録してくじ引きで2群に分け、
本人にも実施者にも分からないように、
一方はアスピリンを毎日100mgを使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
中央値で4.7年の経過観察を行っています。

その結果、
アスピリンの使用は健康寿命の延長に、
有意な効果は認められず、
総死亡のリスクはむしろアスピリン群で増加する、
という意外な結果が得られました。

その結果は別個に論文として発表されていますが、
今回の論文では、
アスピリンによる総死亡リスクの増加について、
個々の死因を分析するなど、
より詳細な解析を行っています。

その結果、
アスピリン群では年間1000人当り、
12.7件の死亡が発症していたのに対して、
偽薬群では11.1件で、
アスピリンは総死亡のリスクを、
1.14倍(95%CI:1.01から1.29)有意に増加させていました。
この原因を死因毎に検索したところ、
この差の原因は、主に癌死亡の差によっていました。
ただ、特定の癌死亡が増えているということはなく、
出血系の合併症が、
癌の患者さんの予後を変えている、
という証拠も得られませんでした。

癌が進行したケースでは、
実際には多くの対象者が登録から外れてしまっているので、
アスピリンが癌の進行を早めた、
というメカニズムは考えにくそうです。

この結果はこれまでの同種の疫学データとは、
一致しないものであるのですが、
比較的健康な高齢者が、
一次予防や健康寿命の延長目的でアスピリンを使用することには、
より慎重である必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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前糖尿病での糖尿病進行予防治療の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので外来は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
前糖尿病の治療介入.jpg
2018年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
前糖尿病への治療介入の効果についての論文です。

前糖尿病(prediabetes)というのは、
主にアメリカで重視されている考え方で、
日本で言う「境界型糖尿病」とほぼ同じものです。

つまり、
血糖が正常パターンと糖尿病と診断されるパターンとの、
間の数値を取ることを意味しています。

具体的には、
食前血糖が100mg/dL未満で、
75グラムのブドウ糖負荷試験をした時に、
2時間値が140mg/dL未満を正常パターンとしていて、
食前血糖が126mg/dL以上もしくは、
糖負荷試験の2時間値が200mg/dL以上が、
糖尿病パターンです。
この間にあるのが前糖尿病ということになります。
食前血糖の正常パターンを100未満としているのは、
アメリカのみで、
日本では110未満が正常、
ただし100から109は正常だた高め、
というあちこちに配慮した、
玉虫色のものになっています。

5から7年くらいの経過観察により、
前糖尿病の人の3分の1は糖尿病と診断される状態に進行する、
と報告されています。

ただ、それでは前糖尿病の人だけが、
糖尿病になるのかと言うとそうでもなく、
5年後に糖尿病と診断された人の4割は、
5年前には正常の血糖パターンだった、
という報告もあります。

そこでアメリカで近年提唱されているのが、
糖負荷試験の1時間値が、
155mg/dL(8.6mmol/L)を超えた場合も、
前糖尿病と同じように考えよう、
とい主張です。
この数値を入れると、
糖尿病に将来なるリスクの高い人を、
かなり絞り込むことが可能となるのです。

この前糖尿病の段階から糖尿病への進行を阻止することが、
糖尿病の患者さんの増加を食い止めるために、
非常に重要であることは間違いがありません。

これまでに糖尿病治療薬であるメトホルミンなどを、
前糖尿病の段階から使用することにより、
糖尿病への進行が予防された、
というような報告が散見されますが、
実際の臨床で行われたような研究は少なく、
その例数も充分とは言えないものなので、
その有効性についてはまだ結論が出ていません。

そこで今回の研究では、
アメリカにおいて、
実地のプライマリケアや内分泌代謝科の医療機関を登録し、
糖負荷試験で前糖尿病と診断され、
糖尿病に進行するリスクが高いと判断された対象者に対して、
そのリスクの高さにより、
中等度のリスクの場合には、
生活改善と共にメトホルミンとピオグリタゾンを使用し、
高度のリスクがある場合には、
生活改善と共にメトホルミンとピオグリタゾンに加えて、
GLP1アナログを使用、
薬物治療を望まなかった対象者は、
生活改善のみを行って、
その3群の予後の比較を行っています。

この場合の中等度リスクというのは、
血糖パターンは正常で、
糖負荷後1時間の血糖が155を超えている場合か、
糖負荷のパターンは前糖尿病であるけれど、
1時間値は155未満である場合のどちらかです。
高度のリスクというのは、
血糖パターンが前糖尿病で、
負荷後の1時間値も155を超えている場合です。

予防目的の薬物治療は、
メトホルミンは1日850mg、
ピオグリタゾンは1日15mg、
リラグルチドで1日1.2mgなどが使用されています。
これはアメリカの使用量としては、
下限くらいの量が設定されています。
日本においてはリラグルチドの1.2mgは認められていません。

トータルな振り分けられた人数は747名で、
最終的に解析されたのは422名です。

その結果、
平均の平均の観察期間32ヶ月において、
中等度もしくは高度リスクで生活改善のみの場合には、
糖尿病への移行が11%に認められたのに対して、
中等度リスクでメトホルミンとピオグリタゾン使用群では、
糖尿病への移行は5%に抑えられ、
高度リスクでGLP1アナログを含む3剤使用群では、
糖尿病への移行は1名も認められませんでした。

生活改善のみと比較して、
メトホルミンとピオグリタゾンの使用は、
糖尿病へ移行するリスクを71%(95%CI: 0.11から0.78)、
GLP1アナログを含む3剤の使用は、
88%(95%CI: 0.02から0.94)、
それぞれ有意に低下させた、
という結果になっています。

これはあまり厳密なデザインの試験ではなく、
例数も結果的にはかなり減ってしまっているので、
常にこれだけの効果があるとは、
言い切れない結果なのですが、
前糖尿病状態からの積極的な介入に、
無視できない効果のあることは事実で、
今後その安全性や対象者の絞り込み、
医療経済的な側面も含めて、
充分な検証が必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ジクロフェナク(ボルタレン)の心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ボルタレンの心血管疾患リスク.jpg
2018年のBritish Medical Journalに掲載された、
広く世界的に使用されている、
ジクロフェナク(商品名ボルタレンなど)という消炎鎮痛剤の、
心血管疾患リスクとの関連についての論文です。

非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
商品名ではボルタレンやブルフェン、
ロキソニンなどがそれに当たり、
一般に幅広く使用されている解熱鎮痛剤です。

しかし、この薬には多くの有害事象や副作用があり、
心血管疾患(特に急性心筋梗塞)の発症リスクの増加は、
ほぼ確認されている有害事象の1つです。

しかし、個別の薬剤間でどの程度のリスクの差があるのか、
と言う点や、
薬剤の量や期間とリスクとの関連などの事項については、
論文によっても結論が異なる部分があり、
まだ確実と言えるような知見は得られていません。

今回の研究はデンマークの、
国民レベルの大規模疫学データを活用したもので、
ジクロフェナク(ボルタレン)を使用開始した1370832名と、
イブプロフェン(ブルフェン)を使用開始した3878454名、
ナプロキセンを使用開始した291490名、
アセトアミノフェン(カロナール)を使用開始した764781名、
以上の消炎鎮痛剤の使用群を、
年齢などの背景を一致させた、
消炎鎮痛剤未使用者1303209名と、
その使用30日以内の心血管疾患の発症リスクを、
比較検証しています。

その結果、
未使用のコントロールと比較して、
ジクロフェナク使用30日以内の心血管疾患発症リスクは、
50%(95%CI: 1.4から1.7)有意に増加していました。
同様にアセトアミノフェンによるリスクの増加は20%、
イブプロフェンによるリスクの増加は20%、
ナプロキセンによるリスクの増加は30%、
それぞれ有意に増加していました。

このように、
多くの消炎鎮痛剤が心血管疾患のリスクを、
その使用後30日以内という短期間で増加させますが、
中でもジクロフェナクはそのリスクが高く、
痛み止めとしては有効性の高い薬剤ではありますが、
その使用は特に心血管疾患のリスクの高い使用者においては、
より慎重である必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ヴェルディ「椿姫」(2018年ローマ歌劇場来日公演) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ローマの椿姫.jpg
ローマ歌劇場の日本公演として上演された、
ヴェルディ「椿姫」の舞台に足を運びました。

「椿姫」はおそらく最も多く生で聴いているオペラで、
50回以上はこれまでに聴いていると思います。
一時期は毎年藤原歌劇団が、
豪華なゲストを招聘して毎年上演していましたし、
新国立劇場でも定期的な上演があり、
海外のオペラハウスの引っ越し公演でも、
3回に1回くらいは演目に選ばれるという感じです。

このオペラは作品としての完成度は高いですし、
3幕4場の構成ですが、
その場毎に雰囲気が異なり、
主要な登場人物は3人のみというのも特徴です。
1幕は主人公のソプラノの技量で、
全てを押し切るというプリマドンナオペラのスタイルですが、
2幕1場では繊細な感情の変化を、
主にバリトンとソプラノの二重唱で紡ぐというスタイルが面白く、
2幕2場はまた華やかな仮面舞踏会を、
バレエや大規模な合唱を入れて、
グランドオペラに近いスタイルで表現。
3幕は死の床に就く主人公を、
アリアとテノールとの二重唱で情感深く描きます。

上演によってさほど印象の変わらないのは1幕のみで、
他の場面は音楽作りや演出により、
その印象は大きく変わります。

最もポイントになるのは、
音楽的には最も優れていて、
ヴェルディの天才が発揮された2幕1場ですが、
この場面を上手く上演することは非常に難しく、
下手をすれば最も退屈な場面となる一方、
伝統的に上演されているバージョンでは、
この部分がオリジナルからズタズタにカットされていて、
オリジナルの音楽の良さが、
まるで感じられないものになっている、
というのが大きな問題点です。
ただ、最近は原点回帰でカットの少ない上演が増え、
僕が聴いた中でも、
エヴァ・メイの歌ったチューリヒ歌劇場の舞台と、
デセイ様の歌ったトリノ歌劇場の舞台は、
かなり全長版に近く、
この場面の真価を感じさせる優れた上演だったと思います。

次に難しいのがグランドオペラ形式の2幕2場で、
1場とはガラリと印象が変わりますが、
バレエや合唱が入り、
ラストは合唱付8重唱という大規模なものですが、
ゴタゴタとして散漫な場面になってしまうことが通常です。

それでは今回の上演はどうだったのでしょうか?

今回の上演はヴァレンティノの豪華な衣装と、
ソフィア・コッポラの映像的な演出も勿論良いのですが、
演劇的に非常に優れた舞台で、
特に2幕2場の仮面舞踏会の場面と、
3幕のヴィオレッタの死の場面が、
優れた成果を挙げていました。

2幕2場は豪華な衣装と装飾で盛り上げると共に、
あくまでヴィオレッタを主役にして、
ラストの大合唱も、
さながら合唱付のヴィオレッタの大アリアのように、
聴くことが出来たのが、
これまでにない創意であったと思います。
ここは途中でポーズなく時間のみが経過するのですが、
その処理も上手く出来ていたと思います。

構成として、幕毎に幕間を置き、
2幕の1場と2場は転換を挟んでそのまま上演されるのが通例で、
最近では1幕と2幕1場をそのまま繋げ、
2幕2場と3幕もそのまま繋げて、
1回の幕間で上演するパターンも多いのですが、
今回の上演は場毎に3回の幕間をとっていて、
上演時間が延びてしまう弊害はあるものの、
この方が演劇的オペラとしては、
理に適っているように感じました。
こうした方が、2幕1場の独立性が活きる、
というように感じるのです。

次に良かったのが3幕で、
通常よりヴィオレッタとアルフレードの二重唱が長く、
2人の恋が成就したことを、
明確に伝える構成になっていました。
多分死に際に長く歌うのが不自然だと誰かが考えて、
ここを短くしたのだと思いますが、
これは絶対オリジナルの方がいいですよね。
「過ぎ去った日々」も2番までカットなく歌っていて、
ここは作品のテーマを最も明確に表現している部分なので、
絶対にこの方が良いのです。

その一方で2幕1場はかなりのカット版で、
この部分の難しさから、
ここは敢えて軽く扱った、という感じがしました。
レオ・ヌッチの降板も大きかったのかも知れません。

ヴィオレッタを歌ったフランチェスカ・ドットは、
生で聴くのは初めてですが、
はつらつとして美しく、
陰影には乏しい感じはありましたが、
イメージ通りのヴィオレッタで素敵でしたし、
実力の120%くらいは出している熱演でした。
コロラトゥーラも綺麗で上手いですよね。
まだ若い声です。
相手役のポーリは、
当代ではアルフレードを最も沢山歌っている1人で、
何度も聴いていますが、
さすがの安定感で舞台を牽引していました。
バリトンの恰幅の良いアンブロージェ・マエストリは、
この役には声が若すぎるという気はしますが、
声量抜群で新鮮さのあるジェルモンでした。
2幕1場はまだ荷が重かった感じです。

僕はどちらかと言えば、
演劇としてオペラを聴いているので、
今回の上演はとても好ましく感じましたし、
演劇としての上演としては、
これまでのベストに近い「椿姫」であったと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「累 かさね」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
かさね.jpg
松浦だるまさんの人気コミックスを、
職人タイプの佐藤祐市さんが監督し、
人気者の土屋太鳳さんと芳根京子さんが主演した、
ホラースリラー映画を観て来ました。

楳図かずおの「洗礼」みたいな話ですが、
「デスノート」的テイストが取り入れられ、
もっとスタイリッシュで今風です。

これはちょっと拾いもの、といった感じの映画でした。

長大なコミックスの、
第3巻の途中までのほんの入り口の部分だけを、
それも人物関係などをより整理して、
ニナと累という「魔法の口紅(笑)」で顔が入れ替わる2人の女性の、
因縁と対立のみに絞って、
シンプルに映像化したことが成功しています。

ただ、ラストは舞台の終演で、
無理矢理終わり感を出しているのですが、
あらゆることが決着しないままですから、
ちょっと苦しいな、という感じはしました。

フジテレビ印の映画で、
スタッフもその多くはテレビドラマ出身ですから、
クオリティもテレビドラマの水準を、
大きく出るものではありません。
ただ、テレビドラマと映画の違いも良く心得ているので、
テレビの連続ドラマのように、
スピード感と密度と先延ばしで乗り切るのではなく、
より物語の構造をシンプルにして、
少数の登場人物を掘り下げることにより、
また別の世界を成立させています。

美と醜の相克を、
「ガラスの仮面」的な演劇成り上がりストーリーと、
絡ませた辺りがアイデアの面白さで、
原作より演劇の場面が多く、
前半はチェホフの「かもめ」、
後半はワイルドの「サロメ」が、
比較的忠実に上演されてストーリーに絡まります。
顔の瞬時に入れ替わる映像表現も、
そう目新しいことをしているという訳ではないのですが、
なかなか自然に出来ていました。

主役2人はなかなかの熱演で、
テレビドラマではあまり見せない顔を、
見せているという点も良いと思います。
累の母親役の檀れいさんが、
怪物的で不気味な伝説の大女優を、
それらしく演じていて凄みがありました。
檀さんはこうしたものが良いと思います。

総じてもう少しグロテスクで先鋭的にして欲しかったと思いますが、
一般向けの映画としては、
かなり無難な着地をしていて、
退屈なく観ることが出来る映画です。

もしお時間があればどうぞ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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