So-net無料ブログ作成

「ダンスウィズミー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら、
ダンスウィズミー.jpg
娯楽映画の名人矢口史靖監督の新作が、
今ロードショー公開されています。

多分「ラ・ラ・ランド」が発想の原点と思われますが、
等身大の人間味のあるミュージカルを、
これまでにない切り口で娯楽映画にしよう、
というような方向性の作品です。

よくミュージカル映画の悪口として、
「普通にお芝居をしているのに、急に歌ったり踊ったりするのは、変だよね」
というパターン化された発言がありますが、
それを逆手に取って、
過去にミュージカルへのトラウマのある主人公が、
催眠術によって、
「音楽が聞こえると、どこでもいつでも歌って踊り出す」
という状態になり、
そのために人生の危機が訪れるので、
催眠術を解いてもらおうと、
借金で姿をくらましている催眠術師を追いかけて、
全国を旅するというロードムービーにしています。

主人公は三吉彩花さん演じる若いOLなので、
女性主人公の自分探しという定番の女性映画の要素に、
楽しいミュージカルの要素と、
これも定番のロードムービーの要素を、
一緒にしてしまえばヒットするだろう、
というそれだけ聞いても、
ちょっと安易だな、大丈夫かしら、
と思ってしまうような企画です。

観た感想としては、
予想をはるかに下回る詰まらなさで、
今年一番と言っていいくらい、
落胆して劇場を後にしました。

ネットで良い感想をいくつか読んだので見ることにしたのですが、
…騙されました。
いわゆるステマであったようです。

勿論個人的感想ですので、
面白かったと思われる方もあれば、
意外に悪くなかった、と思われる方もあるかと思います。

個人的な感想ですのでご容赦下さい。

以下少し悪口になります。
ご不快な方は飛ばして下さい。

これね、そもそも企画として成立していないと思うのです。

催眠術で音楽が聞こえると歌って踊るんでしょ。
でも周囲の人は催眠術には掛かっていないので、
おそらく呆れて見ているだけになる筈です。
それじゃミュージカルにならないので、
最初の2つくらいの場面については、
周囲の人も歌って踊るという、
一生の「妄想シーン」にしているのです。
ただ、妄想ではこれまでのミュージカル映画と変わらないので、
音楽が終わってみると、
みんなは呆れていて、辺りは散らかり放題、
という感じになっています。
でも、結局実際に行われたことはどうだったのかしら。
その辺が胡麻化されているのでよく分かりません。

主人公はレストランで歌って踊った時に、
シャンデリアや高価な食器やワインなどを、
大量に破壊してしまうので、
それで一文無しになってしまう、という設定です。

そこまで破壊的な言動をしているのに、
その後の歌唱シーンは至って穏当で、
ストリートミュージシャンとキャンディーズを歌うところなど、
別に普通の人の歌や踊りと何ら変わるところはありません。

こうした部分を見ると、
凶悪な催眠術で歌わされているというより、
もっと周囲を理解しつつ理性を持って歌っているとしか、
思えないんですよね。

催眠術による歌と踊りというのが、
どういうものなのか、
ただ、普通に歌って踊るだけなのか、
それとも「ジキルとハイド」のように、
別人格が浮かび上がって、
秘められていた力が解放されて、
超人的な身体能力を発揮するものなのか、
その辺りも不明です。

レストランの時はアクロバティックな大暴れをしているので、
超人的な能力が発揮されたようにも思います。
その一方でダンスも歌もお世辞にも上手いように見えませんし、
レストラン以外の場面では、
普通のカラオケか、それ以下のクオリティなので、
とても超人的とは思えません。

この辺りもまるで整合性がないのです。

実際ミュージカル映画という割には、
ミュージカルの場面は極めて少なく、
予告編で流れているのがほぼ全て、と言って、
言い過ぎではないくらいです。

後半のロードムービーの部分では、
もう設定自体をあきらめたのかしら、
と思ってしまうくらいです。

人間ドラマもかなりお寒い感じで、
ちょっと背伸びをして良い会社に入ったOL、
という設定ですが、
仕事や職場の描写にリアリティがないので、
ラストに主人公のする決断にも、
何ら説得力がありません。
やしろ優の役柄もありきたりですし、
「ウェディングベル」を歌って、
不実な男性の結婚式に殴り込むなど、
あまりに捻りのない設定には開いた口が塞がりませんでした。

総じてノスタルジックでベタな感じを売りにしているのですが、
そもそも日本にミュージカルの伝統などはなく、
仮にあるとすれば、
劇団四季と東宝ミュージカルでしょうから、
パロディにするならそうした部分に切り込むべきで、
今回題材になっているのは、
歌謡曲が全盛の時代の「歌謡ショー」ですよね。
歌謡ショーがテーマであるなら、
それをもっと前面に打ち出すべきではなかったのかな、
というように感じました。
今回の作品で描かれているミュージカル部分は、
歌謡ショーなのかミュージカルなのかが不明瞭で、
その点が一番の計算違いであったように思います。

多分企画の時点で迷走したのでしょうが、
設定が思いつきの域を出ないままに作品化され、
最後まであいまいなまま終わってしまった、
という作品であったように思います。

テレビで見る価値もないかな、というようには思いますが、
勿論三吉彩花さんのファンであれば、
必見とは思います。
でも、どこかのCMの三吉さんの方が、
正直100倍良かったですね。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0) 

「アス」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アス.jpg
「ゲット・アウト」というSFホラーの快作で、
鮮やかなデビューを飾った鬼才ジョーダン・ピールの、
長編劇映画第2作「アス」が今ロードショー公開されています。

今回も前作に負けず劣らず面白い映画でした。

個人的には最高と言って良いくらい。
ホラー色のあるSFミステリーというジャンルなのですが、
このジャンルの作品としては、
歴史的に見ても最上の部類の作品です。

小児期のトラウマを抱えて成長した女性が、
家族と共に生まれ故郷に戻ると、
そこで奇怪な事件に遭遇します。
闇から現れた自分達そっくりの化け物じみた家族が、
自分達に成り代わろうと襲って来るのです。

自分達そっくりの怪物の正体は、
一体何なのでしょうか?
怪物は何の目的で、何処から現れたのでしょうか?
謎をはらみながら過激に物語は展開し、
意外に奥の深い謎の答えと、
予想外の展開が観客を待っています。

前作「ゲット・アウト」と同じように、
今の時代の空気を反映している作品ではあるのです。
ただ、何かを比ゆ的に表現したり揶揄したり、
社会批評的なことはしていません。
つまり、フィクションとしてしっかり完結していて、
現実の要素を必要とするような作品ではないのです。

その点がまずとても好印象です。

これは骨格は古典的なミステリーの、
使い古されたワンアイデアなのですが、
それを仰々しくも荒唐無稽で大袈裟な設定に覆い隠すことによって、
先が読めないスリラーに仕立てている点がとても巧みです。
SFミステリーはこうでなくちゃな、という感じです。
これはイギリスのミステリー作家、
ジョン・ブラックバーンやピーター・ディキンスンが得意とした手法で、
それを巧みにオリジナルの脚本に取り入れています。

これだけで思わず踊り出したくなるほど歓喜します。

演出もとても巧みで、
それほど予算を掛けているという訳ではないのですが、
パニック描写やアクションシーンに、
様々な別種のパターンを織り込んでいて、
物語ではなく演出技巧だけでも楽しめるという、
マニアックな世界を出現させています。

この辺りはヒッチコックを彷彿とさせます。

ヒッチコックの作品は色々な形で使われていますが、
特に「鳥」が今回はモチーフとなっていて、
最初にはそっくりのカットもありますし、
鳥の恐怖が伝染しつつ拡大するタッチを、
巧みにこの物語に取り入れています。

ネットなどの感想では、
設定が辻褄が合わない、とか、
説明されない部分がある、というような点が、
この作品の欠点として語られていますが、
個人的な意見としてはそれはナンセンスで、
こうしたSFスリラーでは、
半分くらいだけ理屈で説明して、
残り半分は意味不明のまま宙吊りにしておくのが、
1つのセオリーで、
全て説明してしまうと理が勝ちすぎて、
作品の怖さはなくなってしまうのです。

今回の映画に関しては、
その説明する部分としない部分とのバランス、
辻褄の合う部分と合わない部分とのバランスは、
こうしたジャンル作としては絶妙であったと思います。

これでいいのです。

そんな訳で個人的にはとてもとてもお気に入りの1本で、
同じ趣味の方には「絶対に見逃すな!」と強く言いたい作品です。
こうした映画を大スクリーンで観る機会は、
とても貴重なものだからです。
シャマラン監督にも昔は同様の期待をしたのですが、
今になってみると彼は偽物でした。
その点ジョーダン・ピールは、
間違いのない本物です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(6)  コメント(0) 

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも中村医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ワンスアッポンアタイム.jpg
レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットがダブル主演を務めた、
クェンティン・タランティーノ監督の新作映画が、
今ロードショー公開されています。
その公開初日に足を運びました。

これは1969年のハリウッドを舞台にして、
ディカプリオ演じる落ち目のアクションスターと、
そのスタントマン役のブラッド・ピットの関係を軸に、
その時代のハリウッドの雰囲気をノスタルジックに描き、
そこに実際に起こったシャロン・テート惨殺事件を絡めた作品です。

タランティーノ監督としては原点回帰というのか、
かつての「パルプ・フィクション」に近い感覚の映画です。
ストーリーよりもこだわりのあるディテールや語り口が面白く、
緩急自在、真面目に見ていると、
「これ冗談でした」みたいに梯子を外されるような感じもあります。

今回の作品も、
今の映画のスピード感で編集すれば、
1時間半くらいで終わってしまうようなストーリーです。
それをわざわざ引き延ばして、
2時間40分にしてしまうのです。

そこが、いいじゃない、と感じるか、
ダラダラして詰まらん、騙された、
と感じるかは見る人によって分かれるところです。

宣伝の著名人の感想で、
「ラストに涙が出た」とか、
「ラスト13分の衝撃は映画史に残る」みたいなのがあるのですが、
それはちょっと言い過ぎではないかしら。
一般の人が泣けるようなラストではないですし、
面白いし愛すべき作品ではあると思いますが、
映画史に残るようなラストではないよね。
こんなことを言ってしまって、
後々恥ずかしくなることはないのかしら、と、
他人ごとながら心配してしまいます。

個人的なラストの感想は、
まあ「肩すかし」というか「拍子抜け」という感じです。

ただ、タランティーノ監督の、
これは1つの特質でもあると思うので、
お好きな方にとってはこれでいいのだと思います。

僕はラストはもう少し盛り上げて欲しいな、
それで2時間以上も伏線を張ってもったいぶっているんだから、
というようにはちょっと思ってしまう方です。
あの事件の段取りはあれでもいいと思うんですよね。
変化球は監督の持ち味だし。
でも、それでそのまま終わってしまうのはさすがになあ、
というようには思ってしまいました。
もう一押しはあって然るべきですよね。
物足りなくてお腹が余計空いてしまう、
という感じです。

ただ、ディテールはさすがと言うか、
本当に1969年に撮ったとしか思えないような、
画面の質感が素晴らしいですし、
車がハイウェイを疾走する感じもいいよね。
シャロン・テートが、
自分の出演している「サイレンサー破壊部隊」を、
ぶらりと訪れた映画館で見るところとか、
さりげないけれど楽しいですよね。
僕はこの映画はテレビで何度か見ているので、
本物の映像にシャロン・テートの部分のみマーゴット・ロビーをはめ込む、
細かい技巧も楽しめました。
ブルース・リーが指導したキャットファイトの場面とか、
監督のオタク趣味全開ですね。

シャロン・テートは抜群の美女ですが、
出演作には恵まれていなくて、
「サイレンサー破壊部隊」は、
007のパクリのB級スパイ映画ですが、
彼女はそこで主人公を助けるコメディエンヌとして、
結構印象に残る活躍をしています。
従って、ある意味この映画はシャロン・テートの代表作で、
こんな他愛のない映画が代表作であるという辺りに、
彼女の存在の切なさがあるのですが、
その辺りをタランティーノはさすがに巧みに掬い取っています。
映画館の前の本屋で「テス」の初版本を買うのですが、
これは当時ポランスキーが映画化をもくろんでいて、
その主役がシャロン・テートになる可能性があったのですよね。
結果的には別の主役でずっと後になって映画化されるのですが、
ここにも切なさが表れています。
ただ、こうした伏線を張っているのにラストがあれじゃな、
とどうしてもそう思ってしまいますね。
ブルース・リーの仰々しい登場も、
その扱いは神格化されている方にとっては、
違和感のあるものかもしれませんが、
僕は嫌いではない、という程度なので、
楽しんで観ることが出来ました。

また、2大スターの共演というのが、
単なる顔見世ではなくて、
がっちり4つに組んでの熱演なので、
その点も好感が持てました。

そんな訳でタランティーノ監督のファンであれば、
懐かしく楽しめる作品に仕上がっていたと思います。
ファンでない方にはきつい部分があります。
また、監督の最高傑作という評もあるのですが、
個人的には賛成はしません。
「パルプ・フィクション」の方が、
矢張りいいのじゃないかな。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0) 

「ダイナー」(2019年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも中村医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ダイナー .jpg
平山夢明さんの同題の小説を、
蜷川実花さんが監督した映画が、
今公開されています。

これも評判はかなり悪いし、
蜷川実花さんの映画は、
あまり好きでもないので、
それほど見たかったという訳ではないのですが、
空いている時間に嵌まる映画がこれしかなかったので、
朝の時間に観て来ました。

思っていたほどは悪くありませんでした。

これは殺し屋がいっぱい出てきて、
互いに殺し合いをするという映画で、
鈴木清順監督が「殺しの烙印」をリメイクした、
「ピストルオペラ」みたいな感じです。
要するにイメージ先行でトータルには意味不明で、
ただ、独特のムードと美意識、
そしてディテールを楽しむ種類の作品です。

それに加えて今回の作品には裏設定があって、
監督の父親でもある、
亡くなった演出家の蜷川幸雄さんが、
劇中でも亡くなった殺し屋のボスとして、
遺影のような姿で出演しています。

映画では蜷川幸雄の薫陶を受けた役者さんが多数出演し、
極めつけは「身毒丸」のオーディションで世に出た、
蜷川組生え抜きの藤原竜也さんが、
後半で「俺はボス(蜷川幸雄さんのこと)に見いだされて育てられた」
というようなセリフを言います。

これは言ってみれば、
娘の蜷川実花さんによる、
父親追悼の映画なのです。

劇中では結構残念な登場を含めて、
多くの俳優さんが登場していますが、
マザコンで破滅キャラの窪田正孝さんが良く、
彼の登場場面は見ごたえがあります。
一方で後半のボスの跡目争いは、
かなりグズグズの感じとなり、
盛り上がりに欠けたのは残念ではありました。

アクションが意味不明でしょぼかったり、
狂言回し的な玉城ティナさんの設定が弱かったり、
セットが意外に安っぽかったりと、
悪口を言えばキリがないのですが、
鈴木清順監督のイマイチレベルの作品と同じと割り切って観れば、
そう悪くないというのが個人的な感想でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

「ゴールデン・リバー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ゴールデン・リバー.jpg
「ディーパンの戦い」などのフランスのジャック・オーディアール監督が、
初めての英語による映画として、
アメリカでもあまり製作されなくなった、
西部劇映画を作りました。

これは日比谷シャンテでしかやっていないし、
もう終わりそうだしどうしようかな、
と思っていたのですが、
何となく気になったので無理して観て来ました。

なかなか良かったです。

本当に本格的な西部劇をガチで作っているんですよね。

それも1960年代以降の、
食詰めた男同士が世界の果てに墜ちて行くような、
ニューシネマの洗礼を受けたような、
昔のシネフィルの皆さんが絶賛して、
「映画評論」で蓮見先生が褒めるような、
そんな感じのマニアックな西部劇です。

しかもこれはヨーロッパでロケしていて、
音楽のジャカジャカした感じや、
途中でちょっと登場人物の語りになったり、
酸で身体が爛れて腕を切断したりの過激な描写にしても、
かつてのマカロニウエスタンの雰囲気も、
濃厚にたたえています。

特に今作る意味を強く感じさせるような、
そうした映画ではないんですよね。
監督が愛するかつての西部劇を、
丁寧かつ端正に再現した、
という趣の映画です。

ただ、かつてのマカロニウエスタンと比べれば、
映画技術的には遙かに高度で、
完成度の高い作品に仕上がっています。
シネスコの画面の使い方や人物の掘り下げの深さなどは、
間違いなく今の映画でもある、
という気はします。

物語はシスターズ(姉妹)という名字の、
殺し屋の兄弟がいて、
それが英語題では「シスターズ・ブラザーズ」という、
人を食ったようなタイトルの由来です。
沈着で引っ込み思案の兄と、
粗暴で考えなしの弟がいて、
弟の暴走を兄がサポートする形で、
どうにか殺し屋稼業を続けているのですが、
その地方を支配する提督の指示で、
川底にある金を検出出来るという、
特殊な薬品を開発した科学者を、
探して殺すという仕事を引き受けた時から、
微妙に2人の関係は揺らぎはじめ、
そして2人の運命を大きく変えるような出来事が、
待ち受けているのです。

沈着な兄をジョン・C・ライリー、
粗暴な弟をホアキン・フェニックスが演じていて、
古典的な西部劇では悪党として、
主人公に殺される憎まれ役のような2人が、
この映画では主人公になっている訳です。

ライリーのキャラがね、
ともかく抜群にいいんですよね。

弟を守ることが自分の使命と思って生きているんだけど、
それが少しずつ揺らいで来て、
途中で敵味方がなくなって、
立場の違う4人が1つの集団になると、
兄弟は別々になってしまうんですが、
結局人間的に大きな欠陥のある弟を、
破滅させないことは兄にしか出来ないんですよね。

それで悲劇が訪れるのですが、
とてもとても切ないのです。

演技派のライリーの芝居も、
名演と言って良い素晴らしいものでした。

僕はもう途中からは、
感情移入しまくりでしたね。
なので、人によっては甘すぎると感じるラストも、
僕にはほっとして素敵に感じました。

西部劇と言えば銃撃戦ですが、
この映画のパターンは、
ドカンドカンと重量感のある音で拳銃をぶっぱなして、
次の瞬間には誰かが倒れている、
という感じのスタイルです。
殆ど瞬間すら見せないのですが、
映画としてはそれで悪くなかったですね。
この映画の拳銃は象徴的な殺戮兵器なのです。

最近はあまりないムードのある人間ドラマで、
2時間たっぷり映画の世界に浸ることが出来ました。

とても映画らしい映画として、
昔からの映画ファンの皆さんにはお薦めしたいと思います。

最近の映画しか観ていないという方には、
ちょっと合わないかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

nice!(6)  コメント(0) 

「アルキメデスの大戦」(2019年実写映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アルキメデスの大戦.jpg
人気漫画の「アルキメデスの大戦」が、
VFXを得意とする山崎貴監督により実写映画化されました。

これは天才数学者で帝大を退学した青年が、
ひょんなことから海軍将校となり、
独自の視点で軍を改革し戦争を阻止しようとする、
太平洋戦争前夜の時代を舞台とした物語です。

それを山崎監督は大幅にリライトし、
戦艦大和の建造を巡る海軍内部の抗争劇に的を絞って、
「戦艦大和」が主役の物語としてまとめ上げています。

これは何より原作を巧みに作り変えた脚本が良く、
VFXも尺は少ないながら迫力があって、
キャストも充実した、
日本の最近の娯楽映画としては、
出色の1本で、
それは勿論ハリウッドの大作と比べれば、
スケール感は見劣りがしますが、
そのアイデアや構想力は決して遜色のない力作でした。

最近の日本の戦争映画としても随一だと思います。

最近の山崎監督の仕事はどうもなあ、
と思われる向きにも、
いやいや今回はなかなか歯応えがありますよ、
とお薦めしたいと思います。

映画館に足を運んで、
決して損はないですよ。

以下少しネタバレを含む感想です。

これね、巻頭5分強で戦艦大和が沈むスペクタクルシーンがいきなりあり、
その後で昭和8年の海軍の巨大戦艦建造計画に、
時間が巻き戻るのですが、
その後ラストまで一切戦闘シーンはありません。

かなり、勇気のある構成ですが、
それがこの映画の場合成功していて、
余韻のあるラストに至ると、
もう一度最初から見たくなってしまうのです。

作戦勝ちですね。

巻頭の大和沈没以降は、
ほぼほぼ原作通りに話は進むのですが、
原作ではあまり目立たない山本五十六を前面に出し、
主役の数学者役の菅田将暉さんも、
その部下役の柄本佑さんも、
財閥令嬢の浜辺美波さんも、
かなり原作とは違う性質に変えられていて、
それがキャストにフィットして、
原作とは違う雰囲気をしっかり作っています。
この辺りも脚本が非常に巧みです。
また、原作ではとっかかりに過ぎない戦艦の選定会議を、
クライマックスに設定して、
そこに池井戸潤のテイストを注入して、
娯楽性を増しています。
これだけだと、ただの戦前版池井戸潤になってしまうのですが、
その後に田中泯さん演じる平山中将と、
主人公ととの対決場面を作り、
戦艦大和の完成を見せることで、
ラストは綺麗に戦争映画に帰着しているのです。
この辺りの意外性のある構成も、
とても巧みです。

キャストは、
原作より飄々とした数学オタクとして、
主人公を熱感豊かに演じた菅田将暉さんが良く、
対する平山中将役の田中泯が、
怪物的な軍人科学者を演じて出色です。

田中泯さんはこれまでに多くの映像作品に出演していますが、
おそらくこの作品が代表作と言って、
言い過ぎではないものだと思います。
個人的には舞踏家の割には、
動きの表現に冴えがないなあ、と思っていたのですが、
今回の自分の非を認め、一瞬で虚脱するような演技など、
舞踏家としての本質が垣間見える見事な芝居でした。
この映画の田中泯さんは凄いです。

そんな訳でかなり質の高い、
アイデアのユニークな、
最近出色の日本戦争映画の快作として、
多くの皆さんに是非観て頂きたいと思います。

なかなかですよ。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(9)  コメント(0) 

新海誠「天気の子」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
天気の子.jpg
「君の名は。」の新海誠監督の、
待望の新作「天気の子」が今ロードショー公開されています。

その初日に足を運びました。

うーん。

映像と音楽は最高です。
特にクライマックスのスカイダイビングみたいなところ、
凄いですよ。
お話は「君の名は。」ほど万人向けではなく、
より監督の趣味が強く出たかな、
という感じもあります。
今回は異常気象の意味づけをテーマにしていて、
それも狙いは良いと思います。
ただ、敢えて説明を避けているところはあると思うのですが、
それを割り引いても、
設定に辻褄が合わないところや、
説明不足のところが多く、
ラストの破滅志向的なところも引っかかりは感じます。
破滅志向が悪いのではなくて、
それに伴う犠牲を一切描写せず、
「何とかなるさ」と美化しているようなところに、
ちょっとモヤモヤする感じがするのです。
それでいて、ラストだけ「君の名は。」と全く同じ、
というのが強引なのです。

以下少しだけ内容に踏み込みます。
鑑賞前の方はご注意下さい。

これ、夜叉ヶ池ですよね。
新海誠版「夜叉ヶ池」。
ただ、普通雨乞いとそのための生け贄というところを、
逆に「晴れ女」として雨の時に晴れを呼ぶ、
という設定にしているのです。

1人の女性を取り戻すために、
村を水没させてしまうというのも「夜叉が池」と一緒です。
ただ、「夜叉が池」では横暴な村の住民、
というものが描かれているので、
「こいつらの村なら水没してしょうがないな」
という気分にさせてくれるのですが、
この作品では小栗旬が声を演じた男が、
やや責任放棄の感じがするものの、
警官も真面目に職務をまっとうしているだけですし、
多分主人公達に害をなしていると思われる家族も、
意図的に全く描かれていないので、
誰も悪くないのに主人公の決断で、
東京が水没してそれでいいの?
という気分にはどうしてもなってしまいます。

勿論ドラマの主人公は身勝手でいいわけですし、
日常にはない決断をすることが、
フィクションの醍醐味でもあるのですが、
この作品の場合、
愛する人を取り戻して東京を水没させるか、
愛する人をあきらめて東京を水没から救うか、
という2択が設定されていて、
監督のコメントなどを読むと、
そのどちらを選ぶかが作品のテーマであるような、
説明の仕方がされています。
しかし、ちょっとそれはフェアでないというか、
水没によって被害に遭う人のことも、
主人公達を孤独に追い込んでいる社会の実態も、
何1つ描写はされていないので、
それでいて主人公の選択だけに意味を持たせるというのは、
かなり無理があるように感じました。

拳銃が出て来て、
そこだけ中村文則の「銃」みたいになるのですが、
それも上手く機能はしていないという気がしました。
超常現象のライターという設定も効果的とは言えないですし、
晴れ女が結局特定の日を晴れにするというバイトでしか使われなかったり、
主人公2人の出会いがあまりにご都合主義であったりと、
何か全体的にディテールが上手く噛み合っていない、
という感じが強くしました。

そんな訳であまり乗れなかったのですが、
非常に意欲的な作品であったことは確かで、
今回はややミスタッチもあったと思うのですが、
新海監督の作品はこれかも期待して待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0) 

「アラジン」(2019年実写版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アラジン.jpg
ディズニーが20年前の大ヒットアニメーションの「アラジン」を、
実写映画化して今公開中です。

これはサイレント映画時代に最初に作られて、
1940年代にトーキーのカラー映画としてリメイクされた、
「バクダッドの盗賊」を元にしています。

元々の「アラジンと魔法のランプ」には、
魔人は出て来るものの願い事が3つだけ、
という設定はなく、
空飛ぶ魔法の絨毯も出て来ません。

3つの願いと魔法の絨毯がミックスされているのは、
映画の「バクダッドの盗賊」のアイデアなのです。

実写映画版はアニメ版を元にしながら、
魔神ジーニーと王女の次女のラブロマンスというおまけを入れて、
ウィル・スミスの演じるジーニーに、
かなりスポットの当たる内容に改変されています。
「バクダッドの盗賊」の魔神は、
人間にいいように騙されて使われる、
という存在ですから、
魔神が人間になって家族を作るという今回の映画は、
彼が主役と言っても言い過ぎではないのです。

今回の映画はまた、
CGのウィル・スミスが縦横無尽に動き周り、
アニメとほぼ同じスピード感と、
ほぼ同じカット割りを達成しているのが画期的で、
アニメと同じ感覚で、
実写(もどき)が実現する時代になったのだなあ、
という感慨にふけることが出来ました。

正直お話はセンス・オブ・ワンダーが足りないというか、
ランプの魔神という非現実的なものが出て来る割には、
それ以外にあまり不可思議なものや、
奇怪なもの、荒唐無稽なものが登場しないので、
お話的にもあまり盛り上がる感じがないことが、
ちょっと物足りません。
活劇らしい活劇もなく、
最後も悪党を騙して自滅させるだけ、
というのも物足りません。
ただ、それはもう意図されたもので、
もっとホンワカした歌芝居の世界に、
ひと時浸れればそれで良いのかも知れません。

僕にはちょっと物足りない世界でした。

まあ対象が違うので当然ですね。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0) 

「長いお別れ」(2019年中野量太監督作品) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
長いお別れ.jpg
傑作「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督が、
今度は認知症をテーマにした新作映画を作りました。
前回はオリジナル脚本でしたが、
今回は同題の原作があります。

これは絶対に観なければ、
と最初から思っていたのですが、
なかなか予定が合わず、
ようやく先週に滑り込みで観ることが出来ました。

「湯を沸かすほどの熱い愛」は末期癌を主軸に据えたドラマでしたが、
今回の「長いお別れ」は認知症を扱ったドラマです。

中島京子さんの原作は、
連作短編の形式で、
認知症の老人を中心として家族模様を、
多角的に人物スケッチ風に描いたものですが、
今回の映画はその中の幾つかのエピソードは、
そのままで活かしながらも、
蒼井優さんと竹内結子さんという、
2人の娘の人生に主にスポットが当てられ、
7年間の年代記的に物語は展開されています。

蒼井優さんのパートはほぼ原作にはないオリジナルで、
起業を夢見ながらフリーターと試行錯誤を繰り返していて、
恋も実らないという、
「寅さん」的な役柄になっていますが、
原作はフードコーディネーターとして成功している、
という設定でそうした人間ドラマは描かれていません。
また、竹内結子さん演じる女性は、
研究者の夫と海外で暮らしているという設定自体は、
原作にもあるのですが、
夫との葛藤であるとか、
家族との「積み木崩し」めいた葛藤の部分は、
これも原作にはないオリジナルです。

端的に言えば、
原作はインテリの家庭の生活スケッチなんですよね。
そのふんわりとしてとぼけた面白さは残しながらも、
中野監督としては、
もっと庶民的な活力のあるドラマ、
もう少しきれいごとを排した、
ドロドロしたドラマにしたかったのだと思います。

原作のエピソードのうち、
ほぼそのまま使われているのは、
メリーゴーランドの件と、
母親の網膜剥離の手術の件、
柔道部のかつての友達の葬儀に参列し、
とぼけた対応をしてしまうところ、
そしてラストのアメリカでの校長先生と生徒の対話です。

震災の話は原作にもあるのですが、
時間経過ははっきりしていません。
それを映画は2007年からのドラマにして、
間に挟み込む格好にしています。

多分、メリーゴーランドがやりたかったのだと思うのですね。

とても面白くファンタスティックでグッと来るエピソードで、
映画ではそれをオープニングと中段に分けて配置することで、
映画の骨格を作っています。
ただ、子供と遊園地の係員との対話などは映画のオリジナルで、
中野監督の良さがとても活きた場面だと思います。

このパートを含めて、
巻頭の辺りは本当に素晴らしいですよね。
台詞の1つ1つが絶妙で、
時間的空間的に遠く離れた何かが繋がるという、
映画のテーマを巻頭10分くらいで全て見せていて、
それと同時に人物紹介まで済ませています。
この鮮やかな技巧の冴えは、
さすが中野監督という感じがします。

ただ、認知症は矢張り難しいですね。

山崎努さんは勿論名演だとは思うのです。

でも、僕も毎日認知症の方とは仕事で接しているので、
やっぱり違うよなあ、という感じが強くあって、
中段からはあまり物語の中には入り込めませんでした。

途中で誤嚥するのを見せたりするでしょ。
熱演しているのですけれどちょっとね。
こういうものは、矢張りフィクションで見せる、
演技で見せる、という性質のものはないと思います。

つらくなりますよね。

途中で万引きを見せるでしょ。
あれもいらないよね。
原作には勿論ないのです。

また、前回の「湯を沸かすほどの熱い愛」でも思ったのですが、
医療監修はひどいよね。

途中で父親が入院するのですが、
モニターがね、心電図だけを表示しているんです。
血圧も酸素飽和度も何もなし。
有り得ないでしょ。
2人部屋だけど、必ず1人しかいないし、
重症になると特別室みたいな個室に移されているし。
普通はナースステーションの隣くらいになるでしょ。
目配りの出来ない個室になるなんて、
有り得ないですよね。

ただ、今回は確信犯なのかな、
というようにも感じました。

原作にはね、
もっと治療のこととか、
薬のこととか、診断のこととか、
施設入所の話やケアマネの話とか、
リアルな診療の実際が、
結構出て来るんですよ。
最後に延命治療について考えるところも、
もっとリアルに書かれているし、
病名も違っているのです。
それを、バッサリ全部切っていて、
治療もせず、全部妻が介護している、
みたいな感じにしているのでしょ。
わざわざこうしているんですよね。

監督はそんなに医療が嫌いなのかしら?

ちょっとモヤモヤしてしまいました。

今回の場合、
そうした医療無視の改変が、
あまり成功しているようには思えないんですよね。

後半で重症のお父さんのために、
誕生日会を開く(これも原作にはない設定)のですが、
帽子をかぶせるために、
身体を無理に引っ張って移動させるんですよね。
ちょっとひどいよね、
これを何かユーモアとしてやっている感じなのがね、
違うんじゃないかな、という気持ちを強く持ちました。

医療とは違いますが、
竹内結子さんの役は、
7年もアメリカで暮らしていて、
全く英語がしゃべれないという設定なんですよね。

有り得ないでしょ。

夫と息子の3人家族であまり家族の交流もない、
という設定で、
日常会話くらいは出来ないと、
生きていけないじゃないですか。

原作は勿論、
「英語は下手で自信がない」というくらいの設定なのです。
それを「全くしゃべれない」にしているんですよね。
こういうところも、
趣旨は分かるのですが、
リアリティを全く無視するほどの効果が、
果たしてあったのかと思うと、
これも極めて疑問です。
むしろあれですよね。
今流行りの翻訳ソフトを常に使っている、
というような設定なら面白かったかも知れません。

面白いところも勿論あるんですよね。

アメリカで竹内結子さんの息子が、
腐女子のアメリカ少女と、
英語で会話してAKBを踊ったりとか、
成功かどうかはともかくとして、
あまり見たことのない映像表現でしょ。

ラストは戸惑われた方が多かったと思うのですが、
これはほぼ原作通りなんですよね。
原作でも分かりにくい表現ですが、
日本で校長先生の祖父が死んで、
それをアメリカで校長先生に話をする、
その2つが時空を超えて、
微かにつながる、ということだと思うのですが、
微妙で不思議なセンスですよね。
映画では2人の校長先生が同じ仕草をする、
という原作にないディテールを付け加えて、
よりその意図を鮮明化していました。

成功はしていなかったと思いますが、
僕はこれは嫌いではありません。

関係ないけど、山崎努の縁側の後ろ姿で見せるところ、
あれ川島雄三ですよね。

そんな訳でさすが中野監督というところは多々あったのですが、
トータルは「湯を沸かすほどの熱い愛」ほどはのめり込めず、
モヤモヤした気分で劇場を後にしました。

でもこの映画も嫌いではありません。

中野監督の、
ちょっとブラックな部分、
普通と倫理観のややずれたような部分に、
若干の危惧はもちながらも、
その絶妙な映画技巧と構成力、
押しつけではない感動の醸成には、
今後も最上級の期待持って、
次作を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(6)  コメント(0) 

「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ゴジラ キングオブモンスターズ.jpg
ハリウッド版ゴジラ映画の新シリーズの2作目が、
今ロードショー公開されています。

最初のハリウッドゴジラは、
東宝特撮映画のゴジラとは別物でしたが、
2014年に新シリーズ化されたゴジラは、
東宝とも連携して製作に当り、
アメリカのスタッフにも怪獣オタクが揃って、
その世界観も東宝特撮映画を、
かなり意識したものに仕上がっていました。

今回の続編はハリウッド製作として、
初めてキングギドラ、ラドン、モスラが、
ゴジラと共に顔を揃え、
かつての「三大怪獣地上最大の決戦」と、
「怪獣総進撃」を、
かなり意識した映画になっています。

要するに、とても馬鹿馬鹿しく楽しい映画です。

映画の前半はアメリカSFアクションという雰囲気で展開されるので、
正直それほど乗れませんでした。
ただ、中段でゴジラとキングギドラが相対する、
という辺りになると、
東宝特撮映画を再現しようという、
意図がかなり明確になって来るので、
その後の馬鹿馬鹿しくも楽しい展開は、
「そうだよね。怪獣映画はこうじゃなくちゃね」
という感じで楽しむことが出来ました。

怪獣が善悪に分かれて、
プロレスもどきに対決するでしょ。
ラドンが洗脳されて敵になって、
キングギドラが目茶苦茶強いので、
一旦はゴジラが負けて海に沈んじゃうんでしょ。
それを人間が放射能で助けようとして、
尊い犠牲が生まれるんだよね。
生き返って二度目の対決があって、
またゴジラ危うしとなると、
モスラが助けに来るんだよね。
まあ、とてもとても定石通りで、
小気味よい感じです。

頭の悪い悪役に、家族の絆に、少女の活躍でしょ。
マッドサイエンティストに、
秘密兵器でオキシジェンデストロイヤーも出て来るんだよ。

ラストにね、
破壊された地球に、ゴジラの力で自然が蘇る、
というようなクレジットが流れるでしょ。
これはもう水木しげるのだいだらぼっちの思想でしょ。
この脳天気な楽天主義と破滅思想。
もうモロに60年代のユートピアです。

東宝特撮映画の黄金時代は、
1960年代ですが、
当時はヒットはしても、
批評家からは馬鹿にされて酷評しかなかったんですよね。
石上三登志さんとか双葉十三郎さんとか、
本当にもうケチョンケチョンで、
当時のアメリカの「放射能X」とか「宇宙戦争」とか、
そういう映画は褒めてたんだよね。
今考えると下らないというか、分かってないというか、
別におバカ映画にはアメリカも日本も、
変わりはないんだよね。
それなのにアメリカ映画は絶賛して、
東宝特撮映画は罵倒するというのは、
単純に日本製は駄目、という先入観があっただけだったのだと、
今は明らかにそう思えます。

当時もっと正当な評価というか、
こんな荒唐無稽な馬鹿馬鹿しい映画を、
精魂込めて作っていたということに、
少しでも理解のある批評があったら、
もっと違った発展が、
日本特撮映画にもあったと思いますよね。
結局素晴らしい未来に繋がる映画の可能性を、
当時の知識人と称する人達が潰してしまったんだよね。

今じゃさあ、
同じような馬鹿丸出しの映画を、
世界中で同じように作ってヒットしているでしょ。
これで良かったんだよ。
でも、今もきっと同じように日本の可能性を、
皆さんが潰しているのだと思います。
これが多分悲しいけれど日本人の個性ですね。

今思うと良かったのは世界観とデザインですよね。
世界で怪獣をコントローラーで制御して、
人間と共存させていると宇宙人がそれを妨害してとか、
斬新だったのじゃないかなあ。
怪獣のデザインが素晴らしいよね。
人間が入る着ぐるみが原点で、
それを感じさせないようにカモフラージュする、
というところに神経を使ったのが、
かえって良かったのではないかしら。
今回の映画でもね、
新たに創造された怪獣のデザインは本当にクズで、
キングギドラやモスラ、ラドンは、
それぞれにCG用にちょっと変えているとは言え、
やっぱり素晴らしいんだよね。
これはもう誇って良いことだと思います。
それなのにね、
公開当時はそれも馬鹿にされたんだよ。
恐竜が放射能で復活したのであれば、
もっと恐竜そのものの形でないとおかしい、
とか悪口を書かれていたんだよ。
何を言ってるんだか。
おバカ映画なんだから、
格好良ければいいんだよ。
生きてる恐竜なんか誰も見たことはないんだし。

正直CGの絵作りは好きじゃないのです。
画面も暗くて、
殆どアンバーとブルーだけの照明でしょ。
もっと原色じゃないと怪獣映画は詰まらないよね。
ただ、後半になると、
割と意識的に着ぐるみの感じを出していて、
それはなかなか良かったです。
人間に救われたゴジラが、
海から出て来るところとか、
着ぐるみっぽくていいよね。
好きです。

そんな訳で東宝怪獣映画が好きな人には、
必見と言っても良い映画です。

ラストとか、ちょっと泣けますよ。

中国資本になって、
モスラは中国に取られちゃった感じですけど、
それも時代だから仕方がないですね。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(6)  コメント(1)