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「銀魂2 掟は破るためにこそある」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
銀魂2.jpg
昨年好評だった「銀魂」の続編が、
前回のキャストがほぼ全て登場する形で、
にぎにぎしく公開されています。

少し遅ればせに映画館に足を運びました。
金曜日の朝だったので観客は3人でした。

江戸時代に異国ではなくエイリアンが日本を侵略し、
共存するようになったというパラレルワールドが舞台で、
史実とは少し違う歴史上の人物もどきが、
微妙に史実もなぞりながら、
奇想天外な物語を紡ぎます。

このコミック原作の、
ドラマとギャグが絶妙にブレンドされた世界が、
福田雄一さんの世界とかなり相性が良くて、
とても楽しく乗り乗りで観ることが出来ます。

今回は岡田将生さんや長澤まさみさん、
堂本剛さんの出番は少なく、特別出演的な感じで、
メインは史実にもある新撰組の内紛劇(伊東甲子太郎)に、
将軍暗殺の陰謀が絡みます。

裏主役は三浦春馬さんの伊東鴨太郎で、
このパートはほぼギャグなしのドラマですが、
そこがなかなか良く仕上がっているので、
ドタバタやパロディやギャグとのバランスが良いのです。
沖田総悟の吉沢亮さんの磨きの掛かった格好良さなども抜群です。

前作でもそうでしたが、
アクションや殺陣のリズミカルな編集がなかなかで、
CGパートもハリウッド製には及びませんが、
日本映画としてはかなり頑張っていて、
インド映画の「バーフバリ」辺りとは遜色がありません。
その辺りの適度なスケール感と、
極めてチープなギャグとのバランスがまた良いのです。

そんな訳で福田雄一さんの世界に一旦馴染むと、
この世界は非常に心地よく、
頭を空っぽにして楽しむことが出来ます。
まだまだ続編がありそうですから、
今後もとても楽しみです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「アントマン&ワスプ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アントマン&ワスプ.jpg
マーベル・コミックのヒーロー映画の1本、
「アントマン&ワスプ」を観て来ました。

その昔最初の「スーパーマン」や「バットマン」が、
テレビシリーズを最新のSFXで映画化した辺りでは、
毎回劇場に足を運んでいました。
ただ、その頃からそれほど好みの世界、
という感じではありませんでした。
その頃はマーベル・コミックの映画というのはあまりなくて、
確か「ハルク」などは映画化されましたが、
当時の技術ではコミックの世界の再現は、
難しかった感じでした。
「スパイダーマン」の映画は最初の2本は観たのですが、
とても乗れるような感じではなくて、
それからは足が遠ざかったという感じです。
その後はマーベルのシリーズものが、
ガンガン公開されていますが、
時々観るという感じです。

最近のSFXは本当に見事で凄いですよね。
でも、あまりに凄くて、しかもやたらめったら公開されますから、
有難みがないというか、
どうでも良いような気分にもなるのが、
これは贅沢な悩みかも知れません。

今回はタイム・スケジュール的な都合で観たのですが、
結構面白かったです。

大きくなったり小さくなったりするヒーローというのが面白くて、
縮小してバッグくらいのサイズになった研究所を、
皆で取り合うというのが馬鹿馬鹿しくていいですよね。
2時間弱という上演時間も手ごろです。
キャラクター設定も定番でお約束でうまいと思います。

ただ、悪役は何かとても貧弱で弱くて、
ゴーストという怪人が出て来ますが、
最初から死にかけですし、
後はギャングとのカーチェイスですから、
ヒーロー側が勝つに決まっているような戦いで、
あまり盛り上がる感じにはなりません。
展開にも意外性はあまりないのですが、
その分手ごろでほのぼのとしていて、
気楽に見られる感じが良いとも言えます。

シリーズを知らないと分かりにくい場面もありますが、
まあ、大体は補足出来ますから、
マーベル初心者の方でも、
それなりに楽しめる1本に、
仕上がっていたと思います。

マニアックな映画との二択で迷った場合には、
こちらの方が元は確実に取れますよ、
という言い方はして良いと思います。

そこそこのお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
バッド・ジーニアス.jpg
2017製作の日本公開は珍しいタイ映画ですが、
とても評判が良かったので新宿武蔵野館で観て来ました。

高校生のアメリカ留学の権利に絡む、
試験のカンニングを扱った映画で、
中国で実際に起こったカンニング事件を元にして、
それを舞台をタイに置き換えてドラマ化したものです。
確か結構話題になって報道もされた事件ですね。

これはとても面白いですよ。

全編軽快かつスリリングに展開して、
130分という結構長尺を、
少しの緩みもなく一気に見せきる構成力が素晴らしく、
メインとなる高校生4人のキャラクターが、
とても練り上げられていて趣きがあるのです。

単純にカンニング事件を扱った、というものではなく、
少年少女が資本主義の世の中の「毒」に接触し、
それと向き合うという物語です。
その「毒」は4人を深く蝕んでゆくのですが、
そのうちの1人だけが、
それを乗り越えようとするところで、
物語は終わります。

最後までハラハラドキドキで、
先の読めない展開が続きますが、
ラストの処理はおや、という感じもあります。
父親の情愛のようなものが出て来るのは、
アジアン・テイストであるのかも知れません。

主人公の天才少女がいいですよね。
美人でも何でもない(失礼!)のですが、
その無愛想さが次第に魅力的に見えてくるのが素敵です。
ちょっとした感情表現が良く、
物語の中での成長が、
感じられるような演出も上手いのです。
最初と最後の印象が全く違うでしょ。
これが映画ですよね。

もう1人苦学生の相手役の男の子が、
また良い味を出しています。
窮屈な正義感が、不幸によって屈折する感じが、
これもとても素敵です。

こういう映画はハリウッドでも、
日本映画でも、韓国映画や中国映画でも、
素材としては同じように出来そうですし、
似た映画も既にあると思いますが、
そのテイストも対象との向き合い方も、
役者さんの感じもまた少し違っていて、
それがとても新鮮なのです。
その物語の裏打ちとなっている深層の倫理観のようなものも、
また今の日本の空気とはかなり違っていて、
それもとても興味深く鑑賞しました。

そんな訳でとてもとても面白い映画で、
凡百の日本映画の10本分は楽しめる快作です。

皆さんも是非ご覧下さい。

惹き付けられ、ハラハラし、
ちょっぴり切なくて、
そしてこの世界の残酷さと生きづらさについて、
少し深く考えさせる映画です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「クワイエット・プレイス」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
クワイエット・プレイス.jpg
これは1950年代頃のユニヴァーサルやAIPが連発していた、
チープで世紀末的なSFホラーの世界を、
リニューアルしたようなB級SFホラー映画で、
こうしたものが好きなので、
まずは楽しく鑑賞することが出来ました。

お話はエイリアンに侵略された近未来が舞台で、
そのエイリアンというのが目を持たず、
音にだけ反応して、
物音がすると、
たちまち襲いかかってくる、
という設定になっています。

そのために、生き残った人類は、
何も音を立てないようにしてひっそりと生活しています。

と言っても、大仕掛けな話になる訳ではなく、
両親と3人の子供の一家が、
アメリカの田舎を逃げまわるだけ、
というような最小限度のお話になっています。

設定は正直かなり穴があるんですよね。
人間以上に聴覚が発達しているエイリアンなのですが、
その割には後半は少しくらい音を立てても、
小さな音なら大丈夫という感じになっています。
本当なら、人間の立てる音なら、
微細な音でも感知する筈ですが、
仮にそうだとすると、
多分多少息を潜めたところで無駄だと思いますから、
設定自体が成立しなくなってしまうのですね。

まあでも、こうしたB級映画では、
そのくらいはお約束で、
目を瞑って楽しむのが正解なのだと思います。

設定上前半は殆ど台詞はなく、
手話と字幕でストーリーは展開されるという、
サイレント映画的な趣向がミソで、
そこに音の効果が最大限に利用される、
というのがなかなか面白いのです。

低予算でエイリアンの登場シーンも、
最小限度しかないのですが、
最近の怪物やエイリアンが最初からじゃんじゃん登場する、
という派手な作品と比較すると、
その抑制されたタッチが、
むしろ新鮮に感じられます。
そのビジュアルも、
新味はないのですが、
なかなかリアルで悪くありませんでした。

そんな訳で、
上映時間も90分と昔の映画と同じ手頃な長さですし、
こうしたチープな娯楽作が好きな向きには、
決して悪くない1本だと思いました。

お好きな方のみにお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「プーと大人になった僕」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
プーと大人になった僕.jpg
ディズニーが熊のプーさんの後日談を実写映画化しました。

これはディズニーの作品としては、
趣味的な感じのする小品で、
作り手が作りたい作品を作った、
というその意味では愛すべき映画です。
そもそもヒットを狙った感じではなく、
公開後1週間の映画館もガラガラでした。

元々アニメ化されたプーさんは、
かなりアメリカナイズされたもので、
公開当時には原作者サイドから批判のあったようです。

それを意識したものかどうか、
今回の実写映画は、
原作通りにイギリスを舞台にしていて、
時代も1949年に設定され、
非常にノスタルジックな感じのする物語になっています。

原作は7歳のクリストファー・ロビン少年が、
ぬいぐるみのプーさん達との生活に、
別れを告げることで終わるのですが、
今回の映画はその場面から始まって、
その後大人になり仕事人間となってしまったクリストファー・ロビンが、
20年ぶりにプーとその仲間たちに再会する、
というドラマになっています。

ロビンがなくした仕事の書類を、
彼の娘とプーさん達森の仲間が、
届けようと旅をするのがクライマックスですから、
とてもとても地味なお話しなのですが、
原作のキャラクターを忠実に再現した細部には、
かなりのこだわりが感じられます。

ロビンは総合商社のカバン部門を指揮している、
と言う設定で、
お金持ちのバカンス用のカバンを作っていたのですが、
戦後すぐという時代で、
お金持ちもバカンスをするような余裕はなく、
カバンが売れなくなってしまいます。

それでボンボンの2代目社長(?)からは、
コストを20%削減しなければ、
カバン部門を廃止すると宣告されてしまいます。

困ったロビンは家族との約束を反故にして、
旅行もキャンセルしてその削減案の書類を作るのですが、
プーさんとその仲間が書類を失くしてしまうのです。

書類もなしに会社の会議に行ったロビンは、
果たしてどのようなプランを出すのでしょうか?

皆さんはどう思いますか?

要するに、
「家族でディズニーランドで遊ぼう。そうすれば経済も廻って上手くいくよ」
というディズニーに都合の良い結論になるのですが、
その道徳的な結論が、
にわかに首肯出来ないものの、
「なるほど、これが1つの今の時代の正解とされることなのか」
とそう思うと興味深くも感じます。

原作を知らない方には、
汚れたぬいぐるみがそのまま動くビジュアルは、
ちょっと異様に感じるかも知れません。
ただ、これが原作の通りなのです。

まあ、ぬいぐるみが本物の動物と一緒に、
森で楽しく暮らしているという物語を、
そのまま実写で表現する、
というのはかなり無理がありますよね。

童話をそのまま実写にするというのは、
今のような高度の技術をもってしても、
基本的に無理のあることなのかも知れません。

そんな訳でかなり観客を選ぶ作品だと思いますが、
ディズニーとしては本気で趣味に走ったと思える1本で、
人によってはかつての「不思議の国のアリス(アニメ版)」のように、
偏愛の対象となる作品となるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「累 かさね」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
かさね.jpg
松浦だるまさんの人気コミックスを、
職人タイプの佐藤祐市さんが監督し、
人気者の土屋太鳳さんと芳根京子さんが主演した、
ホラースリラー映画を観て来ました。

楳図かずおの「洗礼」みたいな話ですが、
「デスノート」的テイストが取り入れられ、
もっとスタイリッシュで今風です。

これはちょっと拾いもの、といった感じの映画でした。

長大なコミックスの、
第3巻の途中までのほんの入り口の部分だけを、
それも人物関係などをより整理して、
ニナと累という「魔法の口紅(笑)」で顔が入れ替わる2人の女性の、
因縁と対立のみに絞って、
シンプルに映像化したことが成功しています。

ただ、ラストは舞台の終演で、
無理矢理終わり感を出しているのですが、
あらゆることが決着しないままですから、
ちょっと苦しいな、という感じはしました。

フジテレビ印の映画で、
スタッフもその多くはテレビドラマ出身ですから、
クオリティもテレビドラマの水準を、
大きく出るものではありません。
ただ、テレビドラマと映画の違いも良く心得ているので、
テレビの連続ドラマのように、
スピード感と密度と先延ばしで乗り切るのではなく、
より物語の構造をシンプルにして、
少数の登場人物を掘り下げることにより、
また別の世界を成立させています。

美と醜の相克を、
「ガラスの仮面」的な演劇成り上がりストーリーと、
絡ませた辺りがアイデアの面白さで、
原作より演劇の場面が多く、
前半はチェホフの「かもめ」、
後半はワイルドの「サロメ」が、
比較的忠実に上演されてストーリーに絡まります。
顔の瞬時に入れ替わる映像表現も、
そう目新しいことをしているという訳ではないのですが、
なかなか自然に出来ていました。

主役2人はなかなかの熱演で、
テレビドラマではあまり見せない顔を、
見せているという点も良いと思います。
累の母親役の檀れいさんが、
怪物的で不気味な伝説の大女優を、
それらしく演じていて凄みがありました。
檀さんはこうしたものが良いと思います。

総じてもう少しグロテスクで先鋭的にして欲しかったと思いますが、
一般向けの映画としては、
かなり無難な着地をしていて、
退屈なく観ることが出来る映画です。

もしお時間があればどうぞ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「寝ても覚めても」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
寝ても覚めても.jpg
芥川賞作家の柴崎友香さんの長編小説を、
新鋭の濱口竜介監督が脚色演出し、
東出昌大さんと唐田えりかさんが主演した、
ちょっと不思議な雰囲気の恋愛映画を観て来ました。

これは唐田えりかさん演じる、
ちょっと捉えどころのない感じのする女性が、
東出昌大さん演じる、
同じ顔を持ち性格は対象的な2人の男性の間を、
揺れ動くというドラマです。

これは原作も読みました。
原作はなかなか独特の感性で面白いんですよね。
全編女性の主人公の視点で展開されるのですが、
詩的な短文を連ねたような、
短いエピソードの集積のような作りになっていて、
世界を全て断片に分析して俯瞰するような表現で、
そうしたうつろで無機的な感じが、
そのまま主人公の内面でもあるのですね。

ただ、ラストの展開のみかなり唐突で、
それが全体のバランスを乱しているような感じがあります。
シンプルに考えれば、
主人公が過去の突然いなくなった恋人の呪縛から、
ゆっくりと解けてゆく、
というような感じでも良かったように思うのですが、
それだけだと凡庸という気もしますし、
その辺りが難しいところです。

映画はそのバタバタしたラストだけをフィーチャーした感じのもので、
原作の持つ独特の雰囲気とは無縁で、
主人公の人格設定も全く異なり、
基本的に原作をリスペクトした感じのものではありません。

そんな訳で個人的には納得のゆく映画ではありませんでした。
原作の良いところは全てなくしていて、
それに代わる映画的な魅力が、
そう多くあるとは思えないからです。

以下ネタバレを含む感想になります。

ただ、謎めいた設定にも思えますが、
実際には特に謎はなく、
物語の展開にも意外性やひねりのあるようなタイプの、
作品ではありません。

これは映画を観ると、
全く同じ顔を持つ男が2人いて、
何故かその2人に出会ってしまい恋に落ちるという、
因縁話的な物語に思えるのですが、
実は原作は全くそうしたものではなくて、
最初は過去の恋人そっくりと思った男が、
その過去の執着から逃れてみると、
大して似ているとも思えない程度だった、
というような記憶の不確かさを扱った作品なのです。

佐藤正午さんの「永遠の2分の1」という小説があって、
それと同じパターンですよね。
あれも自分そっくりの悪い男がいて、
間違われて酷い目にあうのですが、
実際に会ってみると、
それほど似ているとは思えなかった、
というような話です。

ただ、こうした話は記憶の曖昧さや改変を扱ったものなので、
映像化はしにくいですよね。
ほぼ不可能と言っても良いかも知れません。
それで今回の映画では、
2人の男を同じ東出昌大さんが演じているのですが、
それだと原作とは全く違う話になってしまうのですよね。

これはもう確信犯的な改変だと思うのですが、
それなら同じ顔を持つ2人の男と恋をする話として、
成立していないといけないのですが、
実際にはそうなってはいないように思います。

元々原作の筋立ても、
記憶は主人公の頭の中で改変されてしまうので、
その意味でご都合主義になっているのですが、
映画は更に唐突感とご都合主義感が増し、
原作とは設定が変わっているので、
よりその不自然さが増している、
という結果になっています。

たとえば過去に姿を消した恋人が、
俳優でスターになっているのですが、
もし全く同じ顔であれば、
主人公ばかりでなく、
周囲が皆それに気が付く筈でしょ。
それなのに誰も気が付かないというのが極めて不自然に感じます。
これは原作も同じ設定なのですが、
実際には「ちょっと似ているという程度」が現実であったので、
それでも良いのです。
この辺は設定を変えたことで、
物語がかなり破綻していると思います。

主人公が昔の友人の女性と再会する場面で、
友人が整形していると告白するところがあります。
これは原作ではポイントの1つで、
一瞬見ただけでは分からないほど、
顔が変わっていて、
それが2人の恋人の顔が同じ、
ということの対比として使われているのです。
映画にはその場面自体はあるのに、
演じている役者さんの顔は全く変わっていないので、
何が言いたいのか不明の、
奇怪な感じになっています。

映画版は主人公の職業などの設定も変わっていますし、
原作には全くない友達が難病のALSになるという設定や、
東日本大震災が男女を結び付けるという設定などを入れていますが、
それが効果的に物語に結び付いているのとは思えず、
ただ映画の作り手の趣味が出ただけ、
という感じになっています。
小劇場演劇やチェーホフとイプセン、
演技論を戦わせるところなどもありますが、
これも全く映画の創作です。
小劇場は大好きなので、
ああいうものもくだらなくて稚拙でガッカリします。
やるならちゃんとやってよね、と思います。

せっかく、面白い小説を映画にするのだから、
もう少し原作の良いところや雰囲気、
その本質的な部分に対して、
リスペクトするような映画にはならなかったのでしょうか?

こうして別物にするのであれば、
オリジナルのストーリーを紡ぐべきではないでしょうか?

どうにも納得はゆきませんでした。

蓮実重彦さんが褒めていて、
ああ、矢鱈に水が象徴的に使われているし、
変な構図が多いので、
こういうのをあの方はお褒めになるのね、
とは思ったのですが、
やたらと人物を横に並べたリして、
風変りな映像ではあるのですが、
それほど個性的な作家性を感じる絵作りではありません。

ただ、前半の謎めいた青春映画的なムードは、
悪くはありませんでした。

そんな訳で、
結構良いかも知れない、
と期待をしていた作品であったので、
鑑賞直後の落胆は大きかったのですが、
少し時間が経ってみると、
まあ映画というのは、
概ねこうしたものなのかも知れない、
と思うようになりました。

後は作り手の感性がこちらとフィットするかどうかの問題で、
この映画は正直僕とはとても合いませんでした。

後から思ったのですが、
物語も語り口も構図も、
是枝監督の「幻の光」に似ていて、
テーマはほぼ同じですから、
影響をされている部分はあるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ペンギン・ハイウェイ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は代診の医師が、
午後2時以降は院長の石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
ペンギン・ハイウェイ.jpg
森見登美彦さんの傑作ジュブナイルSF「ペンギン・ハイウェイ」が、
スタジオコロリドの初めての長編アニメーションとして映画化され、
今ロードショー公開されています。

本好きの方は勿論ご承知だと思いますが、
森見登美彦さんの「ペンギン・ハイウェイ」は、
ちょっと奇跡的な大傑作です。

森見さんの小説は「夜は短し歩けよ乙女」のような、
擬古典と言った雰囲気の大学生青春小説が多いのですが、
古典のパロディを、
パロディと言えないほどの完成度で、
仕上げられるという異能の人でもあります。

「ペンギン・ハイウェイ」は、
言ってみれば昔日本SFの黎明期に量産された、
「時をかける少女」や「なぞの転校生」などの、
ジュブナイルSFの世界を復活させたものですが、
極めて見事に現代的にブラッシュアップされていて、
完成度が高く惚れ惚れするような素晴らしい作品に仕上がっています。

話はまあ「マックウィーンの絶対の危機(ブロブ)」みたいなものですから、
今更なあ、という感じのするものなのですが、
生意気でこまっしゃくれた小学4年生を主人公にして、
徹頭徹尾子供視点で物語を完結させることで、
ある種の新鮮みを付加している点が上手いのです。

普通、ジュブナイルSFというと、
後半になって大人の科学者や宇宙人や未来人が出て来て、
そうした大人が解説したり説明するような展開が定番でしょ。
この作品はそうではないんですよね。
主人公が自分の価値感と思考とで事件を解決し、
大人や人間ならざるものは、
真実を知ることもそれを語ることも出来ないのです。
このことによって、
ある意味月並みな真相が、
魔法のように新鮮さをまとうのです。
とても感心しました。

今回のアニメ映画化は、
ヨーロッパ企画の上田誠さんが脚色に当たっています。
上田さんもこうした仕掛けのおある話の、
辻褄を合わせることが得意なので、
なかなか完成度の高い台本になっていたと思います。
ほぼ原作に忠実ですが、
少し変えたりはしょったりした部分があり、
それが整合性を持って合理的に構成されているのです。
これは悪くありませんでした。

ただ、映像のクオリティは、
ジブリ作品や新海誠作品、
細田守作品と比較すると、
正直かなり落ちるもので、
完成度が今ひとつであることと共に、
作家性が弱いように感じました。
ラストは原作とは異なり、
時空の裂け目の向こう側が、
人間社会の破滅した未来であるようですが、
そういうことなら何でもありの想像力全開の世界ですから、
もっとアニメならではの、
スケールの大きな表現が欲しかったと思います。

こんな言い方は失礼かとは思いますが、
今公開中の凡作「未来のミライ」と、
映像とストーリーを入れ替えたら、
素晴らしい作品になったのにな、
とそんなことを考えてしまいました。

ペンギンの集団などもの凄く安っぽいですし、
怪物の描写も酷いですよね。
主人公の恋するお姉さんと、
母親のビジュアルが殆ど違わないのもガッカリでした。

このようにかなり落胆する映画でしたが、
それでも原作をリスペクトする姿勢は随所にあり、
ラストは結構うるっとは来てしまいました。

この原作はもう一度、
ベストの態勢でリメイクして欲しいですね。
あの傑作がこれでは…
ちょっと残念過ぎるのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「検察側の罪人」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
検察側の罪人.jpg
雫井脩介さんが2013年に発表した同題のミステリーを、
木村拓哉さんと二宮和也さんの顔合わせで映画化し、
原田眞人監督がメガホンを取った話題作を、
封切りの日に観て来ました。

最初に良いところを言いますと、
メインキャスト2人の演技のぶつかり合いは、
なかなか見応えがありました。
また、シネスコの画面を斜めに切り裂くような、
工夫された映像表現もなかなかでした。

それ以外は…

申し訳ないのですが、
個人的感想としては最悪の部類です。

以下少しネタバレを含む感想になります。
映画は予備知識があってもなくても、
どちらでも変わりのないような代物ですが、
原作はなかなかの社会派ミステリーの力作なので、
是非先に原作を読まれることをお勧めします。

それでは先に進みます。

この映画版は、
おそらくは監督主導の個人プレイのように思いますが、
原作を目茶苦茶に改変して、
原作の世界からは到底容認出来ないような入れごとをしています。

主人公の1人の祖父がインバール作戦の生き残りで、
その祖父の意思を次いで、
日本の軍国主義化を画策する大物政治家を倒すために、
検事としての正義を守ろうと、
結果的に悪にも手を染める、
というようなストーリーが強引にはめ込まれていて、
そのために、結果として、
正義のためには殺人を犯しても許される、
というような意味にも取られかねない内容になってしまっています。

原作には勿論そんな内容はありません。
インバール作戦も出て来ませんし、
正義を歪めた検事の所業は、
司直の手によって最後には裁かれます。

勿論映画には映画の入れごとがあることは構いませんが、
そのために原作のストーリーの自然さが、
大きく損なわれてしまっています。

インバール作戦や日本の軍国化を糾弾したいのであれば、
もっと別の映画で、
正々堂々とテーマにすれば良いのではないでしょうか?

こんなやり方はフェアではないように思います。

ストーリーの改悪はそればかりではなく、
原作ではただのヤクザの便利屋であった松重豊さんの役を、
ダークな秘密組織みたいにして、
芦名星さんが声を失った殺し屋を演じるという、
訳の分からないおまけまで付いています。
原作では生き残る犯人を、
超法規的に殺すという映画版の趣向は、
原作のテーマを根底から踏みにじるような性質のものです。
法による正義の限界を描いた作品である筈なのに、
暗黒組織が代わりに殺してお終いでは、
あまりに原作無視のあり方ではないでしょうか。

原作では検事の完全犯罪に、
刑事コロンボ的な面白みがあったのですが、
映画は原作ではただの事務官であった吉高由里子さんの役を、
わざわざ2年ごして潜入したジャーナリストにして、
最初からほぼ事件の全貌を、
知っているような趣向にしているので、
ミステリーとしての面白みが殆どなくなってしまっています。

原作の後半は公判整理を巡る攻防が読みどころなのですが、
他の場面に尺を使っているために、
検事の話なのに公判に関わるシーンは全くない、
という何か珍妙な結果になっています。

山崎努さんの役は大物人権派弁護士で、
彼が後半登場することで公判の流れが変わるのですが、
映画ではそのくだりが完全に抹消されているので、
祝賀会でのみ登場するのが、
極めて不可解な結果となっています。
容疑者が無罪になるきっかけは、
共犯者が自首したため、
という身も蓋もない段取りになっています。
検事の犯罪が暴かれるという段取りもなく、
要するに原作のミステリーの要素はほぼ排除され、
代わりに監督の趣味の世界が展開されているのです。

それ以外にも大駱駝艦の舞踏手まで使って、
繰り出される意味不明の珍妙なダンスは、
一体何の冗談でしょうか?
舞踏好きとしては噴飯ものです。
犯人の変なタップダンスは何ですか?
どうして皆で作品の格を下げたいのか、
訳が分かりません。

おそらくは色々な思惑が錯綜して、
こうした珍妙な作品になったのだと思いますが、
編集次第で、
もっと正攻法の社会派ミステリードラマの力作に、
なった映像素材であると思うので、
こんな結果になったのは本当に残念でなりません。
この監督の作品は、
多分一生観ることはないと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「人間機械」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日ですが祝日のためクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
人間機械.jpg
これは1時間15分ほどのドキュメンタリーで、
インドの服飾工場の労働の風景と、
労働者と経営者に対するインタビューを、
個性的な映像表現でまとめたものです。

これは宣伝がちょっとずるくて、
前衛的で単なるドキュメンタリーを越えた、
これまでにない映像表現、
というようなニュアンスが強調されているのですが、
実際には無知につけ込む労働搾取を告発する、という、
メッセージ性の強い映画で、
描かれるのはごく一般的な工場の作業風景で、
映像は美しいと言えなくもありませんが、
それほどびっくりするようなものとは言えません。

正直イメージと違い落胆しましたが、
それは地味な社会派ドキュメンタリーを、
無理矢理かつてない映像表現のように売り込んだ、
誇大な宣伝戦略と、
それに臆面もなく協力した、
一部の批評家と称する人達の、
節操のなさにあるだけで、
この映画には何の罪もないのです。

真面目な社会派ドキュメンタリーとして、
お薦めの一本です。

それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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