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「女と男の観覧車」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アレンの観覧車.jpg
大好きなウディ・アレンの新作が、
今ロードショー公開されています。

いつもそれほど長い上映にはならないので、
少し慌てて劇場に足を運びました。

アレンの作品が毎年公開されるのは嬉しい限りですが、
その出来には結構ばらつきがあります。
昨年の「カフェ・ソサエティ」はかつてのアレン節全開の、
ハリウッドでギャングが活躍する楽しい話でしたが、
今回はそうした華やかさとは無縁の、
往年のフランス映画を思わせるような重悲劇で、
全編救いの欠片もないような、
冷徹な生活のドラマが展開されます。

シモーヌ・シニョレか、
「欲望という名の電車」のブランチか、
というような退廃を漂わせた、
元売れない女優の主人公をケイト・ウィンスレットが演じ、
アル中の情の深いろくでなしと結婚していながら、
義理の娘と軽薄な脚本家志望の大学生を、
不倫で取り合うという絶望的な役柄を演じます。

物語自体は救いのないままに進みますが、
狂言回しの軽薄な大学生が、
正面を時々向いて観客に話しかけるという、
アレンらしい趣向と、
主人公の義理の娘の純情な美しさがガス抜きとなり、
映画を象徴する観覧車を中心とした、
コニーアイランドの浜辺の美しいパノラマが、
その見事な映像美で画面を飾ります。

昔だったら救いがなさ過ぎて、
とても受け付けないタイプの映画でしたが、
人生の悲劇性に滑稽さとある種の味わいとを感じるようになると、
意外にこうした話も悪くないなと、
そんなようにも思えます。
アレンにしてなし得た侘び寂びの境地と言うか、
キャストも決してやり過ぎない、
過不足のない熱演で見応えがありました。

誰にでもお勧め出来る映画ではありませんが、
アレン節がお好きな方には、
彼の新たな側面をまた感じさせる、
怜悧で美しく素敵な作品でした。

ご興味のある方は是非。
ケイト・ウィンスレットも良かったですよ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「パンク侍、斬られて候」(2018年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
パンク侍.jpg
町田康さんのぶっ飛んだ時代小説を、
宮藤官九郎さんが脚本を書き、
石井岳龍さんが監督した映画版が、
今ロードショー公開されています。

これは原作は僕くらいの世代的には、
筒井康隆さんの焼き直し的な感じのものなんですよね。
ただ、筒井さんの作品は今読むと矢張りとても古めかしくて、
何と言うのかな、
個人の自我がとことん肥大化して、
大衆とマスメディアという化け物が全てを支配して、
高度に情報化され退廃化した社会を、
ある意味予言したような作品群であった訳ですが、
今は実際に筒井さんが妄想する100倍くらい凄まじく、
そうした世の中になってしまっているので、
「今さらそんな当たり前のことを言われても…」
という気分にどうしてもなってしまうのです。

少し前に筒井さんの作品を読み直してみて、
昔はゲラゲラと腹がよじれるくらいに笑えたのに、
全然ただの現実を描いているだけなので、
ちっとも笑えないことに愕然としたことがあります。

その点町田さんのこの作品は、
筒井さんの世界を現代にフィットするように、
巧みに読み替えたような感じがあって、
オリジナルとは到底思えないものの、
まずは面白く読むことが出来ます。

ヘンテコな新興宗教は「ドグラマグラ」を意識したもので、
それほどの新味はありませんが、
後半猿回しから猿が舞台の前面に登場する辺りの不気味さは、
なかなかのもので、
ラストで世界を終わらせてしまう辺りに、
町田さんのある種の覚悟を感じる思いがあります。

ただ、ハチャメチャなこの原作を、
実写で映画化するのは相当ハードルが高そうに思われるところ、
脚本のクドカンはほぼ原作のままに台本を作り、
石井岳龍監督もほぼ原作の通りにイメージを尊重して、
愚直なまでに原作をリスペクトした一作に仕上げています。

正直相当感心しました。

石井監督はカルトもアクションも、
独自の拘りがあるのだと思いますが、
前作の「蜜のあわれ」もなかなかの美意識に裏打ちされていて、
見応えがありましたし、
今回の作品でも、
ビジュアルの統一感がなかなかに素晴らしく、
魅力的なキャストの大芝居を、
130分に過不足なく綺麗にまとめ上げた手腕は、
これも凡手ではありません。

原作を読まれないで映画を観られた方は、
時代劇なのに時代考証無視のカタカナ交じりの台詞や、
寒いギャグや自我の肥大した若者同士のじゃれ合いを、
クドカンの趣向だと思われたかも知れませんが、
実はほぼほぼ原作そのままの台詞なのです。

唯一の不満はクライマックスが、
やや拙いCGまみれであることと、
レイティングをG(制限なし)にするために、
人間や猿がバンバン爆発するという残酷シーンを、
抽象的な処理で逃げていることです。
ただ、猿をリアルに爆発させるのは、
動物愛護的に叱られてしまうのだと思いますし、
興行的な観点から、
レイティングは避けるという事情があったとは推察されます。
でも、これはやらないとこの作品を映像化する意味が、
あまりなくなるという気がしますから、
ちょっと残念ではありました。
ただ、転んでもただでは起きないというのか、
原作の人間と猿の爆発を花火にして、
石井輝男さんの「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」のオマージュにしている、
という辺りなど、
マニア心をくすぐるような感じがあります。

いずれにしてもこの空中分解必死の企画を、
このレベルでまとめ上げたことは、
控えめに言っても賞賛に値する力技で、
僕は大好きな作品です。

考え抜かれたキャスティングが成功していて、
役者は皆抜群に良いのですが、
染谷将太さんの狂気と、
豊川悦司さんの愛らしい悪党ぶりは、
中でも繰り返し見たくなる至芸でした。

あまり評判は良くないのですが、
個人的にはこれまでに観た今年の日本映画の中では、
「万引き家族」と共に最も優れた作品だと、
大真面目に思っています。

どちらも間違いなく今僕達が生きているこの地獄さながらの世界を、
想像力を駆使して描ききった傑作なのです。

皆さんも是非。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ハン・ソロ.jpg
ハン・ソロの若き頃の冒険を描いた、
スターウォーズの外伝が今公開中です。

これは西部劇になっているのですが、
裏切り裏切られの悪党同士の化かし合いで、
マカロニ・ウエスタン的な世界観があり、
ちょっと「マッド・マックス 怒りのデスロード」的な部分もあります。

ただ、これはどうだったのでしょうか?

そもそもそうした世界観が、
スターウォーズのスペース・オペラ的、脳天気な世界観と、
フィットしていたのかどうか、
というのがはなはだ疑問です。

ディスニーになってからのスター・ウォーズは、
時代の変化やマーケティングもあるのでしょうが、
本来のスターウォーズとは違うスタイルに傾斜していて、
それが成功しているとは言えない、
という点が問題だと思います。

今回の作品はマカロニウェスタンやマッドマックスに、
明らかに影響を受けているのですが、
それでいて子供でも制限なく見られないといけないので、
そこにそもそも無理がありました。
もっと能天気で牧歌的な世界観で、
良かったのではないでしょうか。

個人的には、
前半の列車強盗はなかなか面白かったのですが、
それ以外は受け付けませんでした。

それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「羊と鋼の森」(2018年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
羊と鋼の森.jpg
ピアノの調律師の世界を扱った青春小説を、
山崎賢人さんの主演で、
ほぼ原作に忠実に映画化した作品が、
今ロードショー公開されています。

原作は本屋大賞も受賞した宮下名都さんの小説で、
語り口が流麗で美しく、
調律師の世界を詩的に描いた点も新鮮で、
珍しい職業物で教養小説でもあるという、
本読みの心を狙い撃ちにしたような作品です。

ただ、確かに評価されるのだろうなあ、とは思いながらも、
個人的にはそれほど好きにはなれませんでした。
ちょっと話の展開が地味過ぎないですかね。
もうちょっと波乱万丈でも良いし、
神秘主義的な部分があっても良いように感じました。
また、レトリックが過剰ですよね。
理想の音の表現として引用される作家の言葉も、
修飾句だらけで3段もあるというのは、
長すぎるのではないでしょうか?
音色の表現などもあまりに過剰でくどすぎます。

お好きな方はすいません。
色々な感想があるということで、
スルーして頂ければ幸いです。

さて、人気のある小説ではあっても、
内容はとても地味なので、
これをどうやって映画にするのかしら、
大分設定を変えてしまうのではないかな、
と危惧も覚えたのですが、
実際に仕上がった作品は、
ほぼほぼ原作に忠実な物語で、
それをしかも極めて繊細かつ丁寧に、
特に山を張ることなく、
悠然と紡いだ作品になっていました。

それでいて退屈かと言うとそうでもなくて、
ピアノの音色と北海道の自然に彩られた物語は、
ある心地良い美意識とテンポとに支配され、
一旦そのリズムに乗ってしまうと、
とても心地良く最後まで作品世界に身をゆだねることが出来ます。

原作への愛情が強く感じられるという点が好印象で、
こういう映画もありだな、というようには感じました。

キャストは全てしっくりと役柄に合っていて、
通常日本映画には付き物の、
サービス的な違和感のあるようなキャストがいません。
中でも主人公の先輩調律師を演じた鈴木亮平さんが、
とても良い感じの役作りで印象的です。
変な熱演とは違うこうした自然さは、
これもあまり日本映画では見られないタイプの、
良い芝居であったと思います。
また原作では双子の姉妹を、
双子という設定は変えて、
上白石姉妹に演じさせているのですが、
実際の関係と役柄とが微妙にリンクするのが、
妖しくも面白くて、
ちょっと際どく胸騒ぎのするような感じが、
これもなかなかの見ものでした。

演出も堂々と正攻法で安定感があり、
シネマスコープの画面が上手く使われていました。

そんな訳でなかなか拾い物の感じのする良作で、
綺麗で静かな映画を観たい、というご希望の方には、
控え目にお薦めしたいと思います。

なかなかですよ。

唯一の不満はラストの久石譲さんによるテーマ曲で、
それまで使用された楽曲から、
がくんとレベルが下がるので駄目だと思います。
あれは最後までクラシックの名曲で押すのが、
絶対良かったですよね。
まあでも、売るための事情が色々あるので、
仕方がないのだろうとは推察されます。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「Vision」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
5d5e30eee4d39cbb.jpg
河瀬直美監督の新作「Vision」が、
今ロードショー公開されています。

河瀬直美さんは良くも悪くもとても作家性の強い監督ですし、
世界的な大女優のジュリエット・ビノシュを主役に据えて、
SF的な設定のドラマを紡ぐというのですから、
相当変わった作品になるのであろうなあ、
脱力系の怪作にならなければ良いのだけれど…
というようにおっかなビックリで鑑賞したのですが、
予想の通りと言うか、
とてもとても変てこりんで奇妙な映画で、
「幻の湖」や「ブルークリスマス」、
「シベリア超特急」や「ジパング」、
などに匹敵するカルト的脱力映画になっていました。

ピノシュ演じる女性エッセイストが、
「Vision」という名前の謎の薬草(?)を求めて、
奈良県の吉野を訪れるのですが、
そこには永瀬正敏さん演じる山男や、
夏木マリ演じるシャーマンのような女性などがいて、
実は過去の因縁でビノシュとその村は結ばれていた、
というようなお話です。

お馴染みの吉野の風景が全編に登場しますが、
1000年に一度姿を現す謎の植物により、
全ての人間の苦しみが浄化される、
というような大風呂敷を広げておいて、
最後はちょっとした山火事(安っぽいCG)が起こって、
夏木マリがヘンテコな踊りを踊り、
ビノシュと森山未來さんの息子が、
岩田剛典さんとなって現れて終わり、
というだけのことになってしまうので、
何か狐につままれたような気分で、
劇場を後にしておしまい、という感じです。

まあ、内容的には輪廻転生的な、
河瀬直美さんのいつものお話しのリフレインなのですが、
「あん」、「光」と、
独立した物語として完成度の高い作品が続いていたので、
またまた以前のような自主映画的なテーマが、
しかもB級底抜けSF超大作的な雰囲気で展開されてしまうと、
おいおいという感じになりますし、
ラストには「結局これだけ?」と脱力せざるを得ないのです。

ビノシュが何か作品世界から大きく浮いていて、
「八月の狂詩曲」のリチャード・ギアのようで落ち着きません。
長瀬正敏さんとのベッドシーンがあるのですが、
観られた方はお分かりのように、
とても恥ずかしくて見るのが辛くなるような感じです。
これなら登場して頂かない方が、
作品的には良かったのではないでしょうか。

色々と事情があるのでしょうが、
練り上げられないままに、
やっつけ仕事で間に合わせた、
という感じが痛々しく、
今年観た映画の中では、
間違いなく最大の脱力系カルト映画となってしまいました。

通常の感性の方には受け付けないタイプの作品で、
飛びぬけた感性を持った天才か変人のみに、
理解可能な作品なのだと思います。

怪作です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「万引き家族」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
健康教室のために午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
万引き家族.jpg
カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した、
是枝裕和監督の「万引き家族」を観て来ました。

昨年は「三度目の殺人」という、
サスペンス作品が話題となった是枝監督ですが、
この「万引き家族」はかつての「誰も知らない」に近いテイストで、
それぞれの思惑がありながら、
年金生活の老女の家に転がり込み、
それぞれ別個の生活を持ちながら、
偽物の「家族」として生活する、
3世代の男女の物語です。

基本ラインは「誰も知らない」と同じで、
親に見捨てられた兄と妹(ただし虚構の…)の物語なのですが、
「誰も知らない」が徹頭徹尾子供視点であったのに対して、
今回の作品はより重層的で、
同居するそれぞれの大人にも、
それぞれのドラマがある、という内容になっていて、
群像劇でありながら、
ありがちな薄っぺらで総花的な内容にはなっていない、
という辺りに是枝監督の成熟を感じます。
通常の倫理観から少し自由になっていると言う点と、
それに伴うある種の危うさのようなものは、
「誰も知らない」と同じです。

日本映画が取ったカンヌのグランプリと言うと、
「影武者」にしても「うなぎ」にしても、
決してその監督の代表作と言えるような出来栄えではなく、
功労賞的な意味合いを感じさせるようなものばかりでしたが、
今回の「万引き家族」は、
是枝監督の代表作で最高傑作と言っても、
全く誇大表現ではない完成度と熟成度のある作品で、
初めて本当の意味でグランプリにふさわしい日本映画が、
グランプリを取ったと言って良いように思います。

好き嫌いはあっても、
必見の作品であることは間違いがなく、
数年に1本という力作であることは、
これも間違いはないと思います。

ともかく是枝監督のこれまでの映画の、
良い要素はその全てがありますし、
全てが十全に練り上げられて、
一篇の映像詩として昇華されています。

映像は特に俯瞰と引きのカットが美しくて、
見えない花火を屋根の隙間から仰ぎ見るという、
技巧の極致のような場面も良い一方で、
雪道や駐車場などの、
さりげない俯瞰の効果がまた抜群なのです。
僕が特に気に入っているのは、
リリー・フランキーと安藤サクラさんが下着姿でそうめんをすすっていると、
にわかに空が暗くなって夕立になり、
その暗闇をきっかけとして2人が抱き合うワンカットで、
勿論天気を演出は出来ませんから、
特殊効果であることは間違いがないのですが、
極めて自然でエロチックで、
夏のあばら家の空気が感じられるような、
優れて映画的な名場面だったと思います。

キャストは全て名演と言って良いもので、
僕のある意味人生の目標でもあるリリー・フランキーさんは、
彼の人生最高と言って良い芝居をしていますし、
相手役の安藤さくらさんがまた艶っぽく良いのです。
昔の桃井かおりさんを超えたと思いました。
子役の達者さもそれはそれで良いですし、
かなり体当たり的な松岡茉優さんも、
彼女ならではの心に染み付くような芝居でした。
樹木希林さんはもう自然体の極致ですが、
パチンコ屋でずるをした時の凄味のある笑いなどは、
それを切り取った監督もさすがですが、
戦慄的な思いすら感じました。

ラストは例によって、
観客の期待を鮮やかに裏切って、
映画という虚構をなで斬りにするように終わるのですが、
こうした趣向が失敗することも多々ある中で、
今回のラストは、
観客が次の何かを期待し切望する一瞬をなで切ることで、
「ここからは皆さんが物語を紡ぐ番です」
と言われているようで、
なかなかの切れ味であったと思いました。

色々と作品外で物議もかもしている本作ですが、
一個の作品として素晴らしいことは間違いがなく、
是非是非見逃さないで頂きたいと思います。

日本映画的な、
あまりに日本映画的な傑作です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ファントム・スレッド」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ファントム・スレッド.jpg
名優ダニエル・デイ=ルイスの引退作で、
1950年代のロンドンを舞台として、
アメリカ製作ですがイギリス映画的な作品です。

ルイスはカリスマ的なオートクチュールのデザイナーで、
マザコンで死んだ母親と洋服のみを偏愛する変態ですが、
モデルとして見初めた、
ピッキー・クリープス演じるアルマという女給と付き合ったことから、
彼女に翻弄されて自滅への道を辿ります。

典型的な堅物男が若い女性に翻弄される話のようで、
お互いにかなりの変態なので、
決してそうも展開はしない、
という辺りが面白く、
特に女性が男性に毒を盛るというやり取りが、
生々しくて凄みがあります。
この辺り今世間をにぎわしている事件と、
良く似ている感じがするのが、
偶然とは言えちょっと不気味な感じがします。

映像は格調高くて美しく、
ルイスの芝居は確かに見応えがあります。

ただ、対するアルマ役の女優さんが、
どうも魅力に乏しいのでかなりゲンナリします。
後半は特にただのストーカーのようにしか思えず、
あまり入り込むことが出来ませんでした。
ラストはある意味常道から外れているのですが、
中途半端に終わっている感じもあります。
個人的にはもっと徹底して主人公が追い込まれで破滅し、
女優さんに十全な魅力がある方が好みでした。

そんな訳で芸術的かつ変態的な、
面白い映画ではあるのですが、
かなり好みは別れるように思います。
個人的には、ちょっと駄目でしたね。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「虎狼の血」(2018年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
虎狼の血.jpg
柚月裕子さんの同題の警察小説を、
白石和彌監督が外連味たっぷりに映画化した、
正調の東映ヤクザ映画を観て来ました。

これは原作を先に読みました。
詰まらなくはなかったのですが、
善悪があまりにはっきりしていて、
良いヤクザと悪いヤクザというような構図が、
最初から最後まで変化しないので、
個人的にはあまり面白いとは思えませんでした。
最後の展開のみちょっと面白いのですが、
後は意外に地味な話ですよね。

映画版はどう料理するのだろうと思っていると、
ほぼほぼ原作通りのストーリー展開で、
ラストはさすがに原作の通りだと、
映像的には尻すぼみになってしまうので、
派手な抗争場面をクライマックスとして付け加えていました。
ただ、それでも物語的には弱いなあ、
という感じが抜けきれませんでした。

最初から最後まで悪いヤクザと良いヤクザという構図が、
一切変わることがありません。
裏切りとか寝がえりとか意外な展開とか、
そうしたものが何もないのは詰まらないですよね。
原作はもう少し良いヤクザの人間模様などが描かれているので、
もう少し理解はしやすいのですが、
映画はそうしたことはないので、
江口洋介がどうして良いヤクザなのかなど、
さっぱり分からない感じになっています。

これは原作がそうなので仕方がないのですが、
主人公の役所広司さん演じる大上が、
クライマックスの前に姿を消してしまうのは、
矢張り詰まらないですよね。
姿を消すにしても、
その前にもっと派手なドンパチが欲しいと思います。

演出は最初など「仁義なき戦い」そのままにしたりして、
引用上等の外連味たっぷりなのは良いと思います。
映画オリジナルの松坂桃李さんと阿部純子さんの、
昭和の匂いたっぷりのラブロマンスも、
昔の東映映画のテイストで良いですよね。
真木よう子さんが過去を語る時の、
祭りの移動撮影も良い感じです。
ただ、「アウトレイジ」と比べると、
キャラは弱いですよね。
江口洋介さんも竹野内豊さんも、
もっと個性的で唯一無二の感じが欲しかったと思います。

総じて意欲作ではありましたが、
原作のストーリー的な弱さもあって、
突き抜けた魅力を持つまでには至らなかったのは、
やや残念に感じました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「友罪」(2018年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
友罪.jpg
薬丸岳さんが2013年に発表した小説を、
瀬々敬久監督が自作の台本でメガホンを取り、
瑛太さんや生田斗真さんを始めとする贅沢なキャストが顔を揃えた映画化が、
今ロードショー公開されています。

原作は酒鬼薔薇事件をモチーフとした、
14歳で殺人事件を起こした犯人が、
自分の友人であったらそれを受け入れることが出来るのか、
という難題に真っ向から取り組んだ小説で、
ちょっと子供じみた気恥ずかしくなるような部分もあるのですが、
全体に非常に熱量の大きな、
とても面白い小説です。

ただ、この映画版は、
非常に明快で誰にでも理解可能な原作を、
随分と内容をひねって、
良く言えば感性豊かに、
悪く言えば独りよがりに再構成した台本と演出が、
個人的にはどうも疑問で、
何より原作のストレートな魅力が、
全く消えてしまっているのがとても残念に感じました。

原作は生田斗真さん演じる益田の視点で、
その多くが展開されていて、
その心理の動きが一番の魅力と言っても良いのですが、
この映画版はその部分がぼんやりとしか描かれていません。
設定自体も原作はもっと小さな町工場なのですが、
映画では結構大きな工場となっていて、
原作では工場のベテランの作業員として登場する山内を、
タクシードライバーに変えて佐藤浩市さんが演じ、
原作では工場の事務員である美代子も、
別の会社の電話オペレイターに変えて夏帆さんが演じて、
夏帆さんと生田斗真さんと佐藤浩市さんの話が、
独立に群像劇のように進行する、
という変更を行っています。
富田靖子さん演じる犯罪を犯した少年の更生に当たる女性の設定も、
かなり改変されています。
佐藤浩市さんのパートは、
原作には概略的な描写があるだけなので、
ほぼ映画のオリジナルです。

ただ、夏帆さんと瑛太さんとの出会いが偶然になっていたり、
無理矢理原作を変えているので、
随所に不自然さが増していますし、
富田靖子さんと瑛太さんの関係や再会のいきさつなども、
説明がされないので無意味に分かりにくくなっています。
生田斗真さんの心理が描かれないので、
ラストもイメージ先行で、
あまり納得のゆくようなものになっていないのも、
非常に残念な感じです。

キャストは瑛太さんが非常に素晴らしい熱演ですが、
演出や構成が独りよがりなものなので、
ただの「瑛太ワンマンショー」のようになってしまい、
作品世界の中で安定感を持って存在していない結果になったのは、
これも監督の罪は重いと言わざるを得ません。
ただ、猟奇事件の内容も原作より穏当なものに変わっていることから、
原作を変えざるを得ないような、
外部の者には窺い知れない事情のようなものがあったのかも知れません。
夏帆さんの役は、
脱がなければ意味がないのに誤魔化していて、
これもとても残念な印象でした。

そんな訳で原作とキャストは大いに期待を持たせたのですが、
あまり皆さんにお勧め出来るような作品ではなく、
とても残念な鑑賞でした。
原作はとてもお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ウィンストンチャーチル.jpg
ゲイリー・オールドマンが凝ったメイキャップと演技で、
あまり似ているようには思えないチャーチルを演じ、
アカデミー賞の主演男優賞とメイクアップ賞を受賞した、
2017年のイギリス映画を観て来ました。

これはまあ、日本語の題名の通りで、
第二次大戦の初期、
ヒトラーが破竹の進撃でヨーロッパを席巻していた時に、
徹底してヒトラー嫌いで、
ヒトラーとの交渉を拒否し、
ドイツとの戦争を主張して民意をとらえた、
チャーチルの活躍を、
100%肯定的に捉えた戦意高揚映画です。

これは何か個人的にはひどいな、
と感じました。

結果としてはチャーチルが正しかった訳ですが、
相手がヒトラーだから絶対に譲歩も交渉もせず、
たとえ戦局が不利と思えても、
徹底して武力で戦い抜くというのが正義で、
いやいや交渉の余地も少しは残すべきだという、
穏健的な意見が全て悪という考え方は如何なものでしょうか?

そうなのかも知れないのですが、
ちょっとモヤモヤしてしまいます。

最初はチャーチルには政局は不利で、
ドイツと交渉しようという意見が大半だったのですが、
それが反転したのは、
1つは国王のジョージ6世がチャーチルに味方したことと、
世論が熱狂的に戦争を支持したことで、
その描き方としては、
迷ったチャーチルが1人で町に出て、
ロンドンで地下鉄に乗り、
そこで乗り合わせた庶民の皆さんと対話をして、
「ヒトラーと話し合いなんかするな、戦え!」
という意見が民意だと確信したからだ、
という流れになっています。

これはどうでしょうか?

良く悪し様に言われることの多い、
大衆への安易な迎合そのものではないでしょうか?

実際にはもっと客観的な戦況分析とか、
そうしたものが裏打ちとしてあったのだと思うのですよね。
しかし、この映画には全くそうしたことは描かれないで、
ただ勢いで戦争しろ、苦しくても最後まで戦え、
如何なる犠牲を払っても戦え、
というメッセージがあるだけです。
こんな描き方で良いのでしょうか?

はなはだ疑問です。

全体に丁寧な作りで退屈はしませんし、
演技陣は頑張っていると思いますが、
戦闘シーンなどもほぼ皆無で、
ひたすらウジウジした政局だけが描かれているので、
とてもテンションは上がりません。

オールドマンの芝居も、
作り込みが強すぎて、
人工的な上にとても汚らしいので、
個人的にはゲンナリでした。
でもこういうのが賞を取る演技なんですよね。

世界の一般的な意見が、
こうした映画に単純に拍手喝采するようなものだとすると、
絶望的な気分にもなりますが、
まあでもトルストイの「戦争と平和」も、
ヒューマニズムの金字塔のようで、
実際には戦意高揚小説ですし、
ヒューマニズムというのは、
結局は「悪」を見つけてそいつを殺すという、
戦争賛美と表裏一体のものなのかも知れません。
平和主義とか人道主義とかと言うのは、
「悪」を見つけるまでの、
束の間の休憩みたいなものなのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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