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「ジャンニ・スキッキ」(2019年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は石原が担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ジャンニ・スキッキ.jpg
新国立劇場のレパートリーとして、
ツェムリンスキーの「フィレンツェの悲劇」と、
プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」が二本立て(ダブル・ビル)として、
先日新国立劇場で上演されました。

これは以前二期会が同じ組み合わせの上演をしていますが、
上演自体はかなり珍しくて、
僕自身はどちらの作品も今回生で聴くのは初めてです。

「ジャンニ・スキッキ」はプッチーニが比較的後期に作曲した、
60分くらいの上演時間の短い1幕劇です。
中に出て来る「私のお父さん」があまりにも有名で、
マリア・カラス以来リサイタルのアンコールの定番ですが、
全体が上演されることは非常に稀です。

これはプッチーニ唯一の喜劇で、
遺産相続の遺言状を巡る騒動を、
伴奏に乗った合唱主体で軽快に描いた作品です。
ほぼ鳴り止む瞬間のない音楽は、
全編が快適なリズムとスピード感を持っていて、
心地良く一気に聴くことが出来る完成度の高い作品です。
「私のお父さん」を初めとする、
間に挟まれたアリアがあまりに美しいメロディなので、
ちょっと浮いている感じもするのが、
唯一の瑕というのが面白いところです。

ただ、この20世紀初頭の、
古典的オペラの最後の時代の作品は、
ほぼミュージカルと言って良い構造になっていて、
ここまで来ると、必然的にミュージカルと映画の時代になり、
古典的オペラは終焉を迎えるのです。

今回の上演は1幕で同じ程度の上演時間の悲劇である、
「フィレンツェの悲劇」との二本立てで、
こちらもシュトラウス的音楽をベースとした、
現代音楽と演劇の融合に繋がる、
こちらも古典的オペラの最後の時期の作品です。

演出は最初の「フィレンツェの悲劇」は、
テーマを具現するような、
中央で破壊された巨大な屋敷のオブジェが舞台中央に陣取り、
その家の外の舞台前方に、
家の内部が拡大されて表現されている、
というかなり抽象的なものです。
2本目の「ジャンニ・スキッキ」になると、
紗幕の向こうでオブジェが左右に割れて、
その向こうから全ての家具や小道具が、
巨大に作られたポップな舞台が姿を現します。

「フィレンツェの悲劇」は原作と同じ時代設定で、
「ジャンニ・スキッキ」では1950年代が舞台の読み替え演出です。

舞台面はなかなか美しくて良いのですが、
「フィレンツェの悲劇」はオブジェが舞台を狭くしているだけで、
最後まで何ら動きがないのが詰まらないと思います。
舞台が動くのは紗幕の向こうの転換というのは、
これも如何にも詰まらないのです。
「ジャンニ・スキッキ」をポップな舞台にしたのは、
2つの作品の対比を明確にしたかったのだと思いますが、
この作品が上演される機会は、
そう多くはないのですから、
原作通りの設定で上演して欲しかったな、
というのが正直なところでした。

キャストはまずまずの充実度で、
特に「ジャンニ・スキッキ」は、
一点豪華主義でタイトルロールにカルロス・アルバレスを導入し、
後は実力派の日本人歌手で固めて、
絶妙のアンサンブルを実現しています。
砂川涼子さんの「私のお父さん」は抜群の完成度ですし、
村上敏明さんとの二重唱も日本人歌手の良さが出ていたと思います。
押しは強くありませんが、完成度が高く繊細です。

そんな訳でなかなか楽しめる上演でした。

もう日本のオペラは、
新国立を楽しむくらいしかないですからね。

バブルは遠くなりにけり、という感じです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ワーグナー「さまよえるオランダ人」(東京・春・音楽祭2019) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。

さまよえるオランダ人.jpg
東京春音楽祭のワーグナーシリーズとして、
今回は「さまよえるオランダ人」が演奏会形式で上演されました。

この作品はワーグナーの初期作で、
彼のキャリアの中では、
初めてその後のワーグナーのオペラのスタイルが、
確立された作品とされています。

実際現行上演されるワーグナー作品は、
「さまよえるオランダ人」以降のものが殆どで、
それ以前の作品も数作残っていますが、
僕も生で聴いたことはありません。

また、この「さまよえるオランダ人」自体も、
ワーグナー作品としてはそれほど上演頻度は多くなく、
僕は生で聴くのは新国立劇場での上演以来2回目です。

不死の呪いを掛けられたオランダ人の船長が、
夢見がちな少女の自己犠牲によって救済されるという物語で、
その後何度もリフレインされるワーグナー生涯のテーマが、
最もシンプルな形で表現されています。

構成も比較的シンプルで、
上演時間も他のワーグナー作品と比較すると短いので、
ワーグナー作品としては比較的聴きやすい部類です。

ただ、指輪4部作のとてつもない仰々しさや、
「タンホイザー」後半の深刻さのつるべ打ちのような重厚さ、
また「トリスタンとイゾルデ」のいつ果てるともなく続く、
二重唱の長大さなどと比較すると、
少し淡泊で物足りなさを感じることも確かです。

今回の上演は演奏会形式で、
場面のイメージが浮かびにくいというきらいはあるのですが、
キャストはブリン・ターフェル、リカルダ・メルビート、
ペーター・ザイフェルトと一流のワーグナー歌いが顔を揃え、
新進気鋭のドイツ人指揮者に、
オケはNHK交響楽団という豪華版で、
ワーグナーの音楽の醍醐味を、
心ゆくまで味わうことが出来ました。

現在はその充実度において、
1年に1回の東京・春・音楽祭が、
オペラ好きとしては一番の楽しみであることは間違いがなく、
今後も良い演奏を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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マスネ「ウェルテル」(2019年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ウェルテル.jpg
新国立劇場のレパートリーとして上演された、
マスネの「ウェルテル」を聴いて来ました。

これはゲーテの「若きウェルテルの悩み」を原作として、
マスネが作曲したフランスオペラの代表的な作品の1つで、
マスネの作品としても「マノン」に次いで上演頻度の高いものだと思います。

ともかくテノールが歌いっぱなしという感じの作品で、
テノールが良くないと話にならないオペラです。

僕はこれまでに生では2回聴いていて、
最初は2002年に新国立劇場が初めて上演した時。
テノールはジョゼッペ・サバティーニでした。
歌唱は素晴らしかったのですが、
年上の女性に失恋して自殺する青年、
という役柄には違和感はありました。
2回目はリヨン歌劇場が演奏会形式で上演し、
大野和士さんが指揮した舞台でしたが、
これは若手のテノールが確か代役だったと思うのですが、
とてもウェルテルを歌う水準には達しておらず、
学生の練習に立ち会っているような悲惨な舞台でした。
大野さんの指揮するオペラは、
これまで何故か歌手との連携の悪い、
ギクシャクしたものが多いという印象があります。
何故なのかしら?
ひょっとしたら、
たまたまそうした舞台ばかりを聴いているのかも知れません。

今回の演出は2016年が初演ですが、
その時は聴いていません。

演出はクラシックなものですが、
細部に安普請の感じはあるものの、
なかなか美しくて好印象でした。

さて、今回は主役のテノール以外は日本人というキャスト、
ただし相手役のシャルロットは、
ヨーロッパで活躍されている藤村実穂子さんです。

テノール役はサイミール・ピルグという若手で、
ハンサムでビジュアルも役柄にどんぴしゃりですし、
声も伸びがあって声量と繊細さを兼ね備えた、
なかなかの逸材でした。
対する藤村さんはビジュアル的には微妙ですが、
歌は非常に素晴らしくかつ堂々としていて、
世界の第一線で活躍している凄みが感じられました。
ただ、彼女の歌い方はワーグナーのヒロインのようなので、
あまりに堂々としていて、
この作品の持つある種軟弱な優しさのようなものが、
陰に隠れてしまった感はありました。

テノールは藤村さんほどではないのですが、
矢張りかなり堂々とした歌いっぷりなので、
マスネの繊細さが、あまり表現されず、
「なんでこんなウジウジした話なのに、
そんなに堂々と歌い上げちゃってるの?」
という違和感が伴うような印象がありました。

本当のマスネは多分、
もっと繊細で弱々しくないと、
物語の切実さに届かないのではないでしょうか?

そんな訳でこれまで聴いた「ウェルテル」の舞台の中では、
最もクオリティの高い素敵で音楽的に優れた舞台でしたが、
その表現自体にはマスネの繊細さはあまりなかったようにも感じました。
音は素敵で情感に溢れていて、
何も起こらない1幕が、
個人的には一番気に入りました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「タンホイザー」(2019年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
今日は東京も雪ですね。
受診予定の方はお気を付け下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
タンホイザー.jpg
新国立劇場の2018/2019シーズンのレパートリーとして、
ワーグナーの「タンホイザー」が上演されました。

「タンホイザー」はワーグナーの作品の中では、
比較的上演時間が短く、
それでいてワーグナーらしい聴き所も豊富で、
ワーグナーの思想が、
簡明に表現されているようなところもあるので、
初めてワーグナーを聴く方にはお薦めの作品です。

これまでに生で聴いたのは、
新国立劇場のレパートリーで2回くらい、
ドイツの歌劇場の引っ越し公演で3パターンくらい、
東京オペラの森とその後継の東京春音楽祭の公演と、
都合7回くらいで、
今回が多分8回目くらいになります。

演出として印象に残っているのは、
ロベルト・カーセンが演出した東京春音楽祭の舞台と、
鬼才コンヴィチュニーが、
それほど前衛的でなかった時期に演出した、
バイエルン歌劇場(そうでなかったかも…)の舞台です。
カーセンの舞台は魔女は殆ど全裸で登場して、
白い布のセットを赤いペンキで塗りたくるような舞台。
コンヴィチュニーのものは、
大人の童話という雰囲気の、
彼としては前衛に走りすぎない、
見やすい舞台でした。

今回の新国立のプロダクションは、
新国立らしい比較的オーソドックスで、
セットや美術は構想は悪くないものの、
大味で細部が雑なものでしたが、
あまり変わったことはしていないので、
まあまあ音楽を聴くには支障のないものです。

オケは最初の管楽器の響きなど、
何とかならないものかな、とガッカリするレベルでしたが、
その後は堅実で後半はまずまずでした。
歌手陣はメインの3人がなかなか頑張っていて、
ビジュアルも役柄に合っていましたし、
声が美しいので良かったと思います。

例によって良い演奏でも観客は終わるとすぐに帰り出して、
アンコールをじっくり待たない慌ただしい新国立クオリティですが、
今や日本のオペラの屋台骨は、
新国立劇場のみが支えているので、
応援は是非し続けたいと思っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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2018年のオペラと声楽を振り返る [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

本日までクリニックは年末年始の休診です。
明日からは通常の診療になります。

休みの日は趣味の話題です。

今日は昨年聴いたオペラと、
声楽のコンサートを振り返ります。

昨年聴いたオペラはこちら。
①東京春音楽祭「ローエングリン」(演奏会形式)
②イタリア・バーリ歌劇場「イル・トロヴァトーレ」
③新国立劇場「トスカ」
④オーケストラ・アンサンブル金沢「ペレアスとメリザンド」
⑤ローマ歌劇場「椿姫」
⑥ローマ歌劇場「マノン・レスコー」
⑦新国立劇場「魔笛」
⑧新国立劇場「カルメン」
⑨新国立劇場「フォルスタッフ」

2018年はあまりグッと来る舞台に出逢いませんでした。
ローマ歌劇場の2作品はまずまず充実した舞台であり演奏だったと思います。
2作品とも演出は面白くて、
特に「椿姫」の、
全ての場の間にきちんと幕間を取った、
堂々としてビジュアル的に豪華な舞台は、
最近場を繋いで幕間を減らすような演出が多いので、
とてもフレッシュに感じましたし、
これが本道だと改めて思いました。
日本にお金がなくなって、
大がかりな引っ越し公演のようなものがあまりなくなりましたから、
新国立劇場の持つ日本のオペラ界における位置は、
より大きな物となっているように感じます。
他に聴くものがないですからね。
ただ、カーテンコールを待たずに帰ってしまったり、
電話を鳴らしたりフライングの拍手をしたり、
マナーの悪い観客が大部分であるのにはうんざりします。

それから昨年は以下のような、
声楽のコンサートに足を運びました。
①東京春音楽祭 フォークトとクルーガーのリサイタル
②デジレ・ランカトーレ ソプラノリサイタル
③モイツァ・エルトマン ソプラノリサイタル

こちらも例年より少ない回数です。
リサイタル自体は皆良かったのですが、
実際大物の来日は減りましたし、
腰も重くなったのが実際でした。
それから良質なリサイタルを主催していた、
東京プロムジカがプロムジカさんの急逝でなくなってしまう、
という切ないニュースもありました。
お悔やみを申し上げます。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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ヴェルディ「フォルスタッフ」(2018年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
フォルスタッフ.jpg
新国立劇場のレパートリーとして、
ヴェルディの「フォルスタッフ」が上演されています。

「フォルスタッフ」はヴェルディ晩年の円熟期のオペラで、
「マクベス」「オテロ」と並ぶ、
シェイクスピア原作ものの最後の作品です。

これは結構難しいオペラなんですよね。

物語は他愛のない喜劇で、
それほどの起伏のあるドラマチックな物語がある、
という訳ではありません。
また聴かせどころのアリアがある、
というような構成ではなく、
メインはアンサンブルを楽しむという音楽作りになっています。

ヴェルディが最後にモーツァルトに回帰した、
という感じの作品で、
何に似ていると言えば、
「フィガロの結婚」辺りに良く似ています。
ラストに妖精の森で大団円を迎える辺りなどそっくりです。

アンサンブルが聴き所なので、
歌手が揃わないと上質な公演にはなりません。

今回の舞台はエヴァ・メイやロベルト・デ・カンディアなどの海外組に、
幸田浩子さんなどの国内組が上手く配分されていて、
突出した歌唱はなかったのですが、
アンサンブルはなかなかの高レベルで、
ヴェルディの音楽の到達点を、
まずはじっくりと鑑賞することが出来ました。

エヴァ・メイは大好きなメゾも歌えるソプラノで、
久しぶりに聴きましたが、
前回リサイタルで聴いた時よりかなり引き締まった体型で、
若返った印象を持ちました。
正直最近は浪速のおばちゃん感があったのですが、
今回は衣装も良く、
素敵な若奥様を楽しそうに演じ歌っていました。
もっと歌える人だと思いますし、
予習で聴いたスカラ座のムーティ指揮版などと比べると、
とても控えめに歌っている印象ですが、
おそらく他とのバランスを取ったのかな、
と思いました。
スカラ座版はファン・ディエゴ・フローレスとインヴァ・ムーラが、
若い恋人同士という豪華版です。

そんな訳でもっと爆発するような「フォルスタッフ」も、
あり得るとは思うのですが、
今回はかなりモーツァルトに寄せたアンサンブル重視で、
今の新国立の水準としては、
充分及第点の出来であったと思います。

演出はこの初演の時に観ていて、
安っぽく感じて印象が悪かったのですが、
今回改めて観てみると、
2つの回り舞台を組み合わせて、
場面転換のストレスを解消した構造は、
決して悪くないなと感じました。
ただ、新国立のオリジナル演出は概ねそうしたものが多いのですが、
構造は悪くなくても美術の細部がおざなりで、
舞台のラフスケッチそのまま、
というような仕上がりになってしまっています。
この舞台もその代表で、
もっと細かいところが重厚に出来ていればなあ、
とそんな風に思えてなりませんでした。

いすれにしてもこの難しい作品にして、
水準を超える聴き応えのある作品となっていたことはとても嬉しく、
まずは充実した気分で劇場を後にすることが出来ました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。


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ビゼー「カルメン」(2018年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
カルメン2018.jpg
新国立劇場のレパートリーとして上演された、
ビゼーの「カルメン」を聴いて来ました。

「カルメン」はフランス・オペラとしては最もポピュラーな作品で、
音楽は誰でも知っていますし、その認知度は高いのですが、
意外に上演時間は長くて、
風俗描写的な部分が多いので、
初めて聴いて退屈して寝てしまう、
という人が多い作品でもあります。

また、タイトルロールのカルメンには、
男なら誰でも一目惚れして当然、
というような圧倒的なオーラが必要とされるので、
納得の出来るようなキャストに出会うことは滅多にありません。
歌の聴かせどころは意外に少なくて、
カスタネットを叩いて踊ったりもしないといけないので、
歌で聴かせる、というタイプの歌手では駄目なのです。

これまでに6回くらい生で聴いていますが、
納得のゆくカルメンに出会ったことはまだありません。

スターの闘牛士が出て来るのですが、
彼の歌がまた難物で、
何故かたどたどしく盛り下がってしまうことが殆どで、
これも納得のゆく歌唱を聴いたことは皆無です。

今回の上演はもう多分4回くらいは上演している、
鵜山仁さんの演出による舞台ですが、
鵜山さんの演出は保守的で地味で暗くて、
あまり好みではありません。
この舞台は鵜山さんとしては、
比較的派手で色彩感もある部類ですが、
お金の都合なのか4幕とも同じ壁のセットなのが如何にも詰まらず、
特に4幕は闘牛場の門の前という抜群のセンスで、
スペクタクルにも演出出来るところなのに、
ただ抽象的な門があるだけのセットで、
地味でガッカリしてしまいます。

今回の上演はカルメン役に、
イタリアの新鋭ジンジャー・コスタ=ジャクソンがキャスティングされていて、
初登場の瞬間から、イメージするカルメン通りのビジュアルに、
感心する思いがありました。
ハバネラの最初の歌い出しなど、
ゾクゾクするような興奮があります。
ただ、ハバネラ自体は今ひとつ膨らみには欠ける歌唱でした。
演技とビジュアルは申し分なのですが、
また歌唱にはカルメンの風格はありませんでした。
それでも伸びしろを感じる素敵なカルメンでした。
対するドン・ホセにはボリショイの若手オレグ・ドルコフで、
透明感のある声が役柄にフィットしていました。

音楽と合唱は優等生的ですがレベルは高く、
まずは満足のゆくカルメンだったと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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モーツァルト「魔笛」(2018年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
魔笛.jpg
大野和士さんが芸術監督に就任しての、
新国立劇場のシーズン開幕公演として、
モーツァルトの「魔笛」が上演されました。

ウィリアム・ケントリッジが2005年に演出し、
その後世界中で上演された名演出を、
今回初めて借りて来ての上演になります。

「魔笛」は新国立劇場ではこれまでに何度も上演されていますが、
僕はここで聴くのは初めてです。
通例で男声のメインのキャストは海外ゲストが多く、
夜の女王やパミーナという主要な女声キャストは、
日本組となることが多いのですが、
あまりそれが乗らなかったのです。

ただ、今回はシーズンオープニングですし、
演出にも興味があったので足を運ぶことにしました。

「魔笛」は引っ越し公演などで何度かは聴いていますが、
1幕はともかく2幕が長くて、
有名な夜の女王のアリアが終わると、
眠くなることが多いのが正直なところです。
また、子供じみた演出や悪ふざけのような演出が多いことや、
効果音などに人工音が使われることが多いことも、
僕がこの作品の上演を、
あまり好きではない理由です。

ただ、今回の上演はなかなか良かったですし、
最後まであまり眠くもならずに聴くことが出来ました。

演出は基本的には擬古典という感じの古風なもので、
そこにプロジェクションマッピングが、
上手く活かされて新しい風を吹き込んでいます。
最初の大蛇を影絵で処理したのは、
ちょっとミスタッチに感じましたが、
それ以外の部分はなかなか原作の雰囲気を活かしていて、
良かったと思いました。
主要なアリアやアンサンブルの聴き所は、
舞台正面に歌手を立たせて、
下からの古風な照明を当てて処理するのも、
音楽優先で良いと思いました。
何より良かったのは、
雷や嵐などの効果音も、
全て生音で処理していたことで、
これは最近の「魔笛」の上演では、
あまりないことだと思います。

でも、こういうのは、
一般受けはしないかも知れませんね。

コロラトゥーラは大好きなので、
夜の女王のアリアにはこだわりがあるのですが、
正直生の舞台で満足のゆく歌唱を聴いたことはありません。
今回の安井陽子さんは夜の女王はお得意なので、
安定した歌いっぷりと貫禄は、
悪くありませんでした。
トータルに歌手陣も悪くありませんでしたし、
今回の「魔笛」はなかなか高レベルで満足のゆくものでした。

まずまずお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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プッチーニ「マノン・レスコー」(2018年ローマ歌劇場来日公演) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
マノンレスコー.jpg
ローマ歌劇場の来日公演の演目として、
プッチーニの「マノン・レスコー」が上演され、
その神奈川県民ホールの舞台に足を運びました。

プレヴォーの小説「マノン・レスコー」は、
オペラやバレエとして、
これまでに何度も劇化されています。

今上演されている中で最も古いのが、
フランスのオーベール作曲によるオペラで、
これは日本で上演されたことは、
本格的にはほぼないと思います。
海外で上演された録画がDVDなどで観ることは出来て、
それを観るとロッシーニに近い、
超絶歌唱連続の楽しい作品です。

次にフランスで作曲されたのがマスネによる「マノン」で、
デセイ様やネトレプコなどの名歌手が上演したことで、
最近は上演されることの多いヴァージョンです。
如何にもフランスオペラらしい、
楽しく情感や切なさにも満ちた素敵な作品で、
場が多すぎて、やや長く繰り返しの多い点が難です。
僕は新国立劇場で上演されたものと、
英国ロイヤルオペラで、
アンナ・ネトレプコが演じたものを生で聴いています。
ネトレプコ版は同じ公演を2回聴きましたが、
これはもう抜群でした。
大興奮!

そしてもう1つのオペラ版マノンが、
このプッチーニの「マノン・レスコー」です。

プッチーニのマノンは彼の出世作ですが、
ドラマを重視したより新しいオペラとなっていて、
音楽を利用した情景描写が非常に長いということと、
ダイナミックで膨らみのある感情表現が魅力です。

こちらもこれまで日本で上演される機会は決して多くはなく、
僕は2012年に新国立劇場で上演したものを1回聴いているだけで、
今回が2回目の機会です。

今回の上演は主役のマノンを歌った、
クリスティーネ・オポライスの初来日が目玉で、
相手役のグレゴリー・クンデも、
オテロなどを得意とする名テノールです。

正直僕の聴いた舞台は、
まだオーケストラと歌手とのコンビネーションが今ひとつで、
とても良いところがある一方で、
オケと声とのタイミングが合わなかったり、
声が消されるような部分も多く、
やや欲求不満の気味の出来であったように思います。

大柄で恰幅の良いクンデが、
純真な学生役というのもちょっと違和感があります。

オポライスはさすがの迫力で、
2幕の二重唱の部分など、
もの凄くエロチックで肉感的であることに驚きました。
ビジュアルも抜群の美しさです。

これでもう少し音と歌のバランスが良ければなあ、
とは何度も思いましたが、
これはもう舞台は生ものなので仕方がありません。

演出もセンスのあるもので、
トータルにはさすがのクオリティであったと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ヴェルディ「椿姫」(2018年ローマ歌劇場来日公演) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ローマの椿姫.jpg
ローマ歌劇場の日本公演として上演された、
ヴェルディ「椿姫」の舞台に足を運びました。

「椿姫」はおそらく最も多く生で聴いているオペラで、
50回以上はこれまでに聴いていると思います。
一時期は毎年藤原歌劇団が、
豪華なゲストを招聘して毎年上演していましたし、
新国立劇場でも定期的な上演があり、
海外のオペラハウスの引っ越し公演でも、
3回に1回くらいは演目に選ばれるという感じです。

このオペラは作品としての完成度は高いですし、
3幕4場の構成ですが、
その場毎に雰囲気が異なり、
主要な登場人物は3人のみというのも特徴です。
1幕は主人公のソプラノの技量で、
全てを押し切るというプリマドンナオペラのスタイルですが、
2幕1場では繊細な感情の変化を、
主にバリトンとソプラノの二重唱で紡ぐというスタイルが面白く、
2幕2場はまた華やかな仮面舞踏会を、
バレエや大規模な合唱を入れて、
グランドオペラに近いスタイルで表現。
3幕は死の床に就く主人公を、
アリアとテノールとの二重唱で情感深く描きます。

上演によってさほど印象の変わらないのは1幕のみで、
他の場面は音楽作りや演出により、
その印象は大きく変わります。

最もポイントになるのは、
音楽的には最も優れていて、
ヴェルディの天才が発揮された2幕1場ですが、
この場面を上手く上演することは非常に難しく、
下手をすれば最も退屈な場面となる一方、
伝統的に上演されているバージョンでは、
この部分がオリジナルからズタズタにカットされていて、
オリジナルの音楽の良さが、
まるで感じられないものになっている、
というのが大きな問題点です。
ただ、最近は原点回帰でカットの少ない上演が増え、
僕が聴いた中でも、
エヴァ・メイの歌ったチューリヒ歌劇場の舞台と、
デセイ様の歌ったトリノ歌劇場の舞台は、
かなり全長版に近く、
この場面の真価を感じさせる優れた上演だったと思います。

次に難しいのがグランドオペラ形式の2幕2場で、
1場とはガラリと印象が変わりますが、
バレエや合唱が入り、
ラストは合唱付8重唱という大規模なものですが、
ゴタゴタとして散漫な場面になってしまうことが通常です。

それでは今回の上演はどうだったのでしょうか?

今回の上演はヴァレンティノの豪華な衣装と、
ソフィア・コッポラの映像的な演出も勿論良いのですが、
演劇的に非常に優れた舞台で、
特に2幕2場の仮面舞踏会の場面と、
3幕のヴィオレッタの死の場面が、
優れた成果を挙げていました。

2幕2場は豪華な衣装と装飾で盛り上げると共に、
あくまでヴィオレッタを主役にして、
ラストの大合唱も、
さながら合唱付のヴィオレッタの大アリアのように、
聴くことが出来たのが、
これまでにない創意であったと思います。
ここは途中でポーズなく時間のみが経過するのですが、
その処理も上手く出来ていたと思います。

構成として、幕毎に幕間を置き、
2幕の1場と2場は転換を挟んでそのまま上演されるのが通例で、
最近では1幕と2幕1場をそのまま繋げ、
2幕2場と3幕もそのまま繋げて、
1回の幕間で上演するパターンも多いのですが、
今回の上演は場毎に3回の幕間をとっていて、
上演時間が延びてしまう弊害はあるものの、
この方が演劇的オペラとしては、
理に適っているように感じました。
こうした方が、2幕1場の独立性が活きる、
というように感じるのです。

次に良かったのが3幕で、
通常よりヴィオレッタとアルフレードの二重唱が長く、
2人の恋が成就したことを、
明確に伝える構成になっていました。
多分死に際に長く歌うのが不自然だと誰かが考えて、
ここを短くしたのだと思いますが、
これは絶対オリジナルの方がいいですよね。
「過ぎ去った日々」も2番までカットなく歌っていて、
ここは作品のテーマを最も明確に表現している部分なので、
絶対にこの方が良いのです。

その一方で2幕1場はかなりのカット版で、
この部分の難しさから、
ここは敢えて軽く扱った、という感じがしました。
レオ・ヌッチの降板も大きかったのかも知れません。

ヴィオレッタを歌ったフランチェスカ・ドットは、
生で聴くのは初めてですが、
はつらつとして美しく、
陰影には乏しい感じはありましたが、
イメージ通りのヴィオレッタで素敵でしたし、
実力の120%くらいは出している熱演でした。
コロラトゥーラも綺麗で上手いですよね。
まだ若い声です。
相手役のポーリは、
当代ではアルフレードを最も沢山歌っている1人で、
何度も聴いていますが、
さすがの安定感で舞台を牽引していました。
バリトンの恰幅の良いアンブロージェ・マエストリは、
この役には声が若すぎるという気はしますが、
声量抜群で新鮮さのあるジェルモンでした。
2幕1場はまだ荷が重かった感じです。

僕はどちらかと言えば、
演劇としてオペラを聴いているので、
今回の上演はとても好ましく感じましたし、
演劇としての上演としては、
これまでのベストに近い「椿姫」であったと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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