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唐組「ジャガーの眼」(2019年再演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ジャガーの眼2019.jpg
唐組の第63回公演として、
「ジャガーの眼」が再演されています。
東京公演は明日が千秋楽ですね。

この芝居は唐組としても、
「秘密の花園」と並んで最も再演頻度の高い作品です。

初演は状況劇場の終わり頃の1985年で、
若手の女優さんがヒロインを演じ、
本公演で李礼仙が出演しないという異例の公演でした。

唐組結成間もない1989年に再演(唐組として初演)され、
1995年には「サラマンダ直し版」として、
人形のサラマンダの部分を少し膨らませて台詞を増やした、
別バージョンが再演されました。
更にこのバージョンが1997年に再演されています。
2008年には唐先生が闇坂という、
別のキャラを演じる別バージョンとしてまた再演。
この2008年版は2015年に木野花の演出で「日本の30代」
という企画公演もありました。
それから僕は観ていませんが、
新宿梁山泊も別個にテント公演で上演しています。

このように多くのバージョンの混在するこの作品ですが、
今回は唐十郎+久保井研の演出として、
初演の台本通りの再演になっています。

これは絶対初演のままがいいですよ。

今回の上演は僕の観た中では、
これまでのベスト3のうちには間違いなく入る舞台で、
久保井さんの緻密で唐先生愛に満ちた演出により、
この作品の真価が感じられる舞台に仕上がっていました。

初演はテントも今より大きかったですし、
ラストの屋台崩しも大仕掛けで、
リアルな路地が全て崩れ落ち、
トラックも登場していました。

その点ではそれ以降の全ての再演は、
スケールの面では物足りなさは否めないのですが、
今回の上演は群衆シーンにもそれなりの人数が用意されていて、
まずまずの迫力がありましたし、
セットも3幕の標本室については、
これまでの上演の中で最も良く出来ていました。

キャストはヒロインのくるみに、
ベテランの藤井由紀さんがキャスティングされていて、
最初に男装の麗人として登場し、
2幕には女性の姿で婚約者のある男性を強引に誘惑する、
という2面性を巧みに演じていて新鮮でした。
これまでくるみを上演していた女優さんは、
皆若く元気で一本調子な役作りであったので、
これはそうした役なのかしらと思っていたのですが、
決してそうではなく、
むしろ李礼仙が演じるのが相応しいように、
実際には描かれていたことが分かりました。
今回はラストに男装の麗人に戻り、
それまでとは違う声色で叫ぶところが、
とても新鮮であるとともに、
「あっ、この台詞はこれが正解だよね」
と初めてそう感じました。

この作品には扉探偵とDr弁という、
魅力的な悪役が2人登場しますが、
今回は扉に300時代から活躍している内野智さんが、
Dr弁には最近進境著しい全原徳和さんがキャスティングされています。

内野さんはこうした役柄は合っていて、
その役作りにもこれまでとは違う工夫が見られました。
ただ、ちょっとパワー不足で、
台詞を言うのが精一杯で息切れするような場面が多くありました。
こうした役柄には、
矢張りもう少し若いパワーと体力と肺活量とが、
必要であるようです。

全原さんはこれまでとは違う、
グランギニョール風の役作りで、
初演の金守珍のイメージが強いこの役の、
新しい解釈を感じさせました。
個人的には金守珍の10倍くらい全原さんの方が好きです。
ただ、もっと大暴れして欲しいですね。
やや控えめな芝居で、
雰囲気はあるのに物足りなさは残りました。

今回抜群であったのは、
少年役をフレッシュに演じた大鶴美仁音さんと、
サラマンダを絢爛豪華に演じた月船さららさんで、
このお2人については、
これまでのこの作品の上演史において、
間違いなく最高だったと断言出来ます。

美仁音さんは「吸血姫」を観てしまうと、
今回もヒロインなのかしらと予想していたのですが、
蓋を開けてみると少年役を、
これ以上ないくらい爽やかかつ繊細に演じきっていて、
自然体で演じているようで、
誰の真似にもなっていない、
という辺りが凄いと思います。

月船さららさんは、
昨年の「黄金バット」も最高で、
こうした唐先生の芝居のダークな女性を演じさせると、
ピカイチという感じがあります。
状況劇場から唐組を通じて、
こうした役柄を魅力的に演じることの出来た女優さんは、
これまでほぼ皆無と言って良く、
初演を含めて初めて、
サラマンダという役柄はその本来の姿を、
舞台上に出現させた、と言って良いと思います。

藤井由紀さんも今回は息切れしていて、
台詞がきつそうでしたね。
そこはちょっと残念。
後、サラマンダの吹き替えの人形は、
もっとリアルであると良かったですね。

そうした少しの瑕はありますが、
この作品の素晴らしさを十全に感じさせる素晴らしい上演で、
小劇場ファンには必見と言って良いと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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文楽「妹背山婦女庭訓」(2019年通し上演) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
妹背山.jpg
国立劇場の文楽公演で、
大作の「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」が、
15年ぶりに通し上演されました。

最近文楽を観ていないのですが、
これだけは観なければ、と、
昼夜に日を分けて足を運びました。
午前の部が午前10時半から午後3時、
午後の分が午後3時45分から午後9時、
という長丁場です。

この作品はトリッキーで重層的な作風で、
円熟期の人形浄瑠璃を代表する作家の1人である、
近松半二の代表作で、
ほぼ完全な形の通し上演が今行われている、
数少ない文楽作品の1つです。

歌舞伎では何度か観ているのですが、
文楽ではこれまで観る機会を逸していて、
今回は楽しみにして出掛けました。

何と言っても三段目の妹山脊山の段が、
中央に吉野川を挟んで、
両側に2つの敵対する家を配置し、
語りと三味線も両側に分かれて掛け合いをするという、
現行文楽において最大のスケールと言って良い、
豪華絢爛壮絶戦慄の大傑作で、
前半は芝六住家を除けば、
ほぼこの場のための前置きと言って良い構成です。

人形も太夫も三味線も、
この場面にエース級が投入されていて、
後半両側の家を隔てていた襖が落ち、
悲劇が露わになる瞬間の戦慄は、
間違いなく文楽の素晴らしさを代表する一瞬でもあります。

ただ、太夫の力量によってその場面の凝集力にかなりの差があるのが、
文楽の特徴でもあり弱点でもあって、
残念に思う場面もありました。

正直20年くらい前と比較すると、
名人上手も少なくなって、
やや薄味にも感じる文楽ですが、
今回は久しぶりにその世界の豊穣さに触れる思いがしましたし、
時間的にはなかなか足を運べないのですが、
またそう遠くない時に鑑賞したいと改めて思いました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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イキウメ「獣の柱」(2019年再演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
イキウメ 獣の柱.jpg
哲学的で観念的な劇作と、
シャープで鋭利な演出で人気の劇団イキウメが、
2013年に図書館的人生のシリーズとして上演した作品を、
かなり内容に手を入れて、
装いを新たに再演しています。

これは非常に良かったです。

ある事件をきっかけにした架空年代記もので、
「散歩する侵略者」と「太陽」と並んで、
前川知大さんの現在までのベストと言って良いものだと思います。
「散歩する侵略者」は何度かヴァージョンが変わっていて、
最初のものはホラーミステリーに近いものでしたが、
最近のものは大分架空年代記ものに寄せていると思います。

個人的には初期のホラーミステリー的なもの、
特にひねりのある「関数ドミノ」や、
「プランクトンの踊り場」(後に「聖地X」に書き換え)辺りが、
他にないスタイルで好きだったのですが、
前川さんご本人はあまりこうしたどんでん返しのあるような、
ミステリータッチの作品は好みではないようで、
最初は僕もホラーミステリーを求めていたので、
年代記ものにはかなり違和感があったのですが、
最近は「これもありだな」と思えるようになっています。
そのきっかけになったのは「太陽」の再演で、
これは非常に充実した舞台でした。
今回の「獣の柱」の再演はそれに迫るものだと思います。

これは2003年にまず「快楽を与える隕石」という、
導入部のみが短編として創作され、
2013年にその後巨大な快楽を与える柱が、
地球全土に振り注いで、
それをきっかけに人間の社会が大きな変革を求められる、
という長編にブローアップされました。

2013年版は観ているのですが、
正直あまり良い印象は残っていません。
どうしても2011年の震災と重ねて考えてしまう、
というところがありましたし、
宗教が絡んだりして、内容にやや散漫な印象がありました。
池田成志さんが客演でしたが、
イキウメのスタイルに、
合わなかったように思います。

今回のバージョンは、
基本的には2013年版を踏襲しているのですが、
2000年と2051年を主な舞台としていて、
年代記としての性質がより明確になり、
震災とは無関係の創作であることも明確化されています。

オープニングに客席に向かって浜田信也さんが話し始めるので、
ちょっと危うい感じがしたのですが、
その後は2000年の災厄が、
比較的リアルに活写されていて時代の変化も分かりやすく、
話が膨らんでゆく辺りも自然でした。
ラストは最初に戻るのですが、
オープニングの意味が腑に落ちる感じになっていて、
それでいて種明かしはしないというか、
異常な現象の意味を、
語ることなく終わるというオープンエンドも好印象でした。

これは「太陽」と同じく、
今の社会と対比するような感覚で、
味わうべき物語ではないと思うのです。
純然たるイマジネーションの産物として、
かつてのSFのように、
架空の年代記として味わうべき物語です。
それをここまでの精度で舞台化することは、
現行前川さん以外では到底実現出来ない力業です。

今回はまたキャストが良かったですね。

これはキャスト全員に、
「快楽の魔力に囚われる」という場面があって、
それを各々の演技力で形にする訳です。
男優陣は皆充実していて、
いい塩梅に熟成感があるので、
その競演を見るだけでも演劇の楽しみがあります。

女優陣は今は毎回定まらないのですが、
今回は核になる村川絵梨さんがとても良くて、
さすが朝ドラのヒロインもやっただけあって華があり、
作品がぐっと締まった感じです。
また是非出てほしいな。
初演の池田成志さんの役は市川しんぺーさんで、
イキウメの出演経験もありますし、
こなれた芝居でうさん臭さもあるので、
なかなかの好演だったと思います。

そんな訳でイキウメの良さが十全に発揮された快作で、
2時間15分が決して長く感じられませんでした、
とんでもないほら話を、
とてもリアルに切実に感じさせた、
見事なお芝居だったと思います。

お薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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少年王者舘「1001」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも代診となります。
受診予定の方はご注意下さい。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
1001.jpg
天野天街さんの映像で舞台を塗りつぶしたり、
巨大な文字が登場したりする演出と、
夕沈さんを中心とする独特の群舞が特徴的な、
名古屋の人気劇団少年王者舘が、
初めて新国立劇場のレパートリーとして、
小劇場で公演を行いました。

僕自身はそれほどコアなファンではなく、
時々足を運ぶという感じですが、
天野さんが天才的なクリエーターであることは間違いがありません。

ただ、天才肌故かかなり作品の出来にはムラがあり、
素晴らしいなあ、と思う舞台がある反面、
なんじゃこりゃ、ちゃんと練習したの?
と問い掛けたくなるような舞台も何度か観ています。

今回は雰囲気はあってもストーリーはなく、
断片的なイメージと、
ややアジテーション的なものが、
執拗に繰り返されて展開し、
途中で主人公が「世界が終わってしまえ」みたいなことを言うと、
舞台セットが取り払われて、
そこでいつもの群舞をかなり長く踊って、
それで終了となるお芝居です。

架空の世界のお話しのような解説になっていますが、
雰囲気は戦中戦後の日本という感じで、
途中で終戦の日のお言葉が流れると、
日の丸の中央を切り取った旗を振り、
中央に昭和天皇の映像が流れたリします。
「令和」を茶化したりするような言葉遊びもあって、
基本的に天皇制に批判的であるということは分かります。

ただ、それが何となくそんな風に感じさせる、
というようなモヤモヤした表現になっていて、
何かをはっきり言うということはありません。

それで観ているこちらも、
何となくイライラします。

言いたいことがあるなら、もっとはっきり言えばいいのに。

こういう何か腰の引けたような表現が、
僕は嫌いです。

総じてこの集団のこれまでの創作にもありがちなことですが、
内容があまり煮詰まっていなかったのかな、
というように感じました。
舞台もね、いつもより大仕掛けにはなっているのですが、
セットの作り込みもスカスカで、
あまり密度の濃い感じになっていません。

昔の佐藤信のお芝居のようでもあるし、
維新派みたいなところもあるし、
寺山修司を彷彿とさせるところもあるのですが、
どの方向にも突き詰めていないというか、
中途半端な感じがぬぐえません。

それでストーリーもなく2時間15分の上演時間というのは、
如何にも長過ぎるように感じました。

今回はちょっと失敗の部類ですね。

でも少年王者舘がムラッ気なのは、
もう良く分かっていることなので、
今回は失敗でしたが、次は抜群ということもありますし、
次回に期待をしたいと思います。

矢張り、新国立にはちょっと合わなかったようですね。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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トム・ストッパード「良い子はみんなご褒美がもらえる」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
良い子はみんなご褒美.jpg
イギリス演劇界の巨匠トム・ストッパードが、
1970年代に執筆し、
アンドレ・プレヴィンが作曲した、
オーケストラと役者の芝居が競演するという異色作が、
今イギリスの演出家の演出で本邦初演されています。

これはソ連を舞台に、
精神病院に幽閉された政治犯の男と、
同じく入院していて、
自分がオーケストラを指揮していると信じている男が、
途中で入れ替わることによって自由の身になる、
という皮肉で奇妙な作品です。

1時間15分ほどの短い芝居ですが、
舞台奥には本物のオーケストラが陣取っていて、
音楽を演奏しながらその前で芝居が行われる、
という面白い趣向です。

ある男の妄想の中にしか登場しないオーケストラを、
舞台上に実際に登場させ、
それが常にお話の中央に存在している、
という訳で、
明らかに新時代のオペラを目指しているのです。

ただ、発想は面白くても、
実際に上演するのはかなりハードルの高い作品です。

基本的には登場人物の少ない地味な作品なので、
小劇場で上演するのが妥当な感じがするのに、
その一方でオーケストラを舞台に上げないといけないので、
大きな舞台が必要となります。
作品の背景となっているのは1970年代のソ連ですから、
それを今の日本の観客に見せて、
作者の意図を感じさせようというのも、
かなり無理のある試みです。

今回の上演は海外の演出家の手によるもので、
かなり真面目に作品世界を表現しようとしたものですが、
良質な上演ではあったものの、
結果として娯楽性のある芝居にはなっていませんでした。

アンサンブルのダンスが矢鱈とフィーチャーされていて、
如何にも欧米の演出家という感じですが、
個人的には説明過剰で退屈に感じました。
ラストに2人の主人公が入れ替わって釈放されるのは、
一種のギャグだと思うのですが、
その面白さは活かされていたとは思えません。

これは本当はケラさん辺りが演出した方が、
日本の観客の心には響く作品となってように感じました。

演技陣で特筆するべきは、
オーケストラの妄想を生きる青年を演じた橋本良亮さんで、
やや滑舌に難がありましたが、
この難しい役柄を、
説得力と熱量を持って演じていたと思います。

そんな訳で良質な舞台ではありましたが、
面白い芝居とは言い難く、
多分もう再演されることもないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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蓬莱竜太「母と惑星について、および自転する女たちの記録」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

本日から6日の月曜日までは、
クリニックは休診を頂きます。
ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
母と惑星.jpg
2016年に初演されて高い評価を得た、
蓬莱竜太さんの女性のみの4人芝居が、
キャストを一部入れ替えて再演されました。

演出は初演と同じ栗山民也さんです。

奔放な母親の3人の個性的な娘が、
母親の死後にその骨を散骨するために、
中東を旅するという物語で、
独白の多いかなり文学に傾斜した芝居です。

栗山さんの演出は例によって地味で、
色彩感に乏しく僕は苦手なのですが、
今回に関しては女優さんの語りを前面に押し出す、
という意味では成功していたと思います。

こうした芝居は4人のキャストの演技が、
どれだけ個性的で膨らみを持っているかが勝負、
という気がします。

今回の座組は鈴木杏さん、田畑智子さん、
芳根京子さんにベテランのキムラ緑子さんというカルテットで、
愛らしく可憐な芳根さんは華がありますし、
鈴木杏さんはもうベテランの風格で汚れ役もこなせる幅の広さがあります。
田畑さんの陰のある屈折した感じもアクセントになって、
なかなか個性的な演技のお競演で見応えがありました。
女そのもののような母親役には、
キムラさんはちょっとイメージが違うかな、
というようには感じました。

作劇は海外戯曲のようで、
なかなか面白かったのですが、
せっかく異国を舞台にした割には、
だまされて高価なペルシャ絨毯を買わされるなど、
エピソードは如何にもありきたりの物が多く、
ちょっと物足りなさも感じました。

ただ、語りと演技に主眼を置いたこうした芝居は、
なかなか意欲的で面白く、
これからもキャストを変えながら、
上演される価値のある芝居だと思いました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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蓬莱竜太「まほろば」(2019年日澤雄介演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
まほろば.jpg
蓬莱竜太さんの岸田戯曲賞受賞作が、
劇団チョコレートケーキの日澤雄介さんの演出で、
装いも新たに再演されました。

僕はこの作品は初演は観ていないので、
生で観るのは今回が初めてです。

九州の田舎町を舞台に、
祭りの日に普段は離れて暮らす女性達が実家に集まり、
祭りで男達が外に出ている間に、
女達だけで色々な遣り取りをしています。
そこでお互いに秘めていた思いが明らかになり、
祭り囃子と共に女同士の連帯が生まれることになるのです。

女性キャストのみで、
舞台も旧家の座敷に固定された、
叙情豊かな家族劇で、
まとまりの良い悪くないお芝居でした。

こういう芝居はでも、
井上ひさしさんのお芝居の、
ややパターン化した再生産という趣があって、
保守的で目新しさはありません。

時代が感じられるようなディテールはあまりなく、
反面普遍的なキャラクターの形成に、
成功しているという感じもあまりありませんでした。

ラストは役者さん達が正面を向いて、
祭りの神輿が通るのを見送るのですが、
実際に神輿が登場する訳ではなく、
音効と役者の視線でそうと感じさせるだけです。
こういうありがちな演出が、
僕は正直あまり好きではありません。

ありきたりで下らなくないですか?

それと生理が止まったので、
早期の閉経と思った女性が、
実は妊娠していた、という話があるのですが、
これはちょっとありそうにない話だと思います。
閉経は女性ホルモンが低下することで起こり、
妊娠は増加することで起こるので、
実感として全く違う現象であるからです。

そんな訳で良質なお芝居とは感じましたが、
個人的にはあまり乗れませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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根本宗子「クラッシャー女中」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
クラッシャー女中.jpg
根本宗子さんが作・演出を務めるプロデュース公演で、
今をときめく中村倫也さんなど豪華なキャストが集結した、
先日終了した話題の公演に足を運びました。

中村倫也さんは大好きで、
根本宗子さんの描くナルシストで屈折した男役には、
ベストフィットするという感じがありますし、
相手役は麻生久美子さんと趣里さんですから、
これはもう期待しない方が無理という公演です。

そんな訳でワクワクドキドキしながら劇場に足を運びました。

ところが…

巻頭、根本さんと趣里さんと田村健太郎さんが、
アドリブめいたやり取りをダラダラ続け、
始まったと思うと、今度は子ども時代の話になって、
みんなで小学生を演じるという、
コントともおふざけとも言えない場面が続くので、
おもちゃ箱のようなセットや衣装のビジュアルとも相まって、
どうも元気の出る感じになりません。

内容は確かにいつも通りなのです。
子どもの時のトラウマで屈折した主人公が、
感情をぶつけ合う格闘の中で、
そこから解放されるという物語です。

ただ、藝術家の資産家のお屋敷という設定自体が、
リアルな愛憎の物語の舞台としては、
あまり非現実的で、
かと言ってアニメのように、
普通にメイドや女中がいるお屋敷という非現実を、
そのまま楽しもうという感じにもなっていません。
演出自体も楽屋落ち的なものがあるかと思うと、
中途半端なミュージカルシーンがあったりと、
行き当たりばったりで一貫性がありません。

何よりも、
今最もブレイクしている男優さんと言って良い中村倫也さんと、
最も油が乗っている女優さんの1人と言って良い麻生久美子さんの持ち味が、
そのヘンテコリンな衣装を含めて、
まるで出ていないという残念さには、
これはもう大きな落胆を感じざるを得ませんでした。

期待が大きかっただけに、
最近では最も失望し裏切られ暗い気分になった舞台でした。

何て勿体ないことを!!

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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歌舞伎座三月大歌舞伎(2019年夜の部) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
3 月大歌舞伎2019.jpg
今年初めて歌舞伎座の大歌舞伎に足を運びました。

夜の部で眼目は仁左衛門の「盛綱陣屋」です。

平成8年から10年に掛けてくらいの間が、
僕が一番歌舞伎にのめりこんでいた時期で、
ほぼ毎月一度ずつは歌舞伎座に通い、
現行上演されている全ての演目を制覇することを目標にしていました、

ただ、巡り合わせで観ることの出来なかった名作もあり、
その筆頭がこの「盛綱陣屋」と「新薄雪物語」です。

首実検というと、
「寺子屋」と「鮨屋」、「熊谷陣屋」は、
それぞれ何度か観ているのですが、
この「盛綱陣屋」は前3つの演目をお手本として、
それを更にひねって構成されているもので、
名戯作者でトリッキーで技巧的な構成を得意とする、
近松半二の代表作の1つです。

元々長編の浄瑠璃「近江源氏先陣館」の八段目ですが、
歌舞伎で上演されるのはほぼこの幕のみで、
記録を見る限り、戦後通し上演的な試みも、
これまで行われたことはないようです。

通常の首実検というのは、
主君の若君を守るために、
忠臣の子どもが犠牲になり、
それを知りながら敵側に心ならずも組みしているかつての忠臣が、
本物の首であると嘘を言う、
というパターンですが、
この「盛綱陣屋」は父親の計略のために、
父の偽首でありながら捕まっている息子が、
自分が腹を切って父親であることを証明しようとし、
それを目撃した今は敵方に組みしている兄の検分役が、
本物の兄の首だと嘘を言う、
という込み入った構造になっています。

父親が逃げ延びるために、
子どもの方が命を差し出すという話で、
今では絶対お話としても許されないようなプロットですが、
首実検の途中で急に子どもが腹を切るという場面があり、
それを見て兄が弟の偽首と知りながら、
その計略を悟り、
甥を無駄死ににさせまいと嘘を言うという心理を、
無言劇として数分掛けてじっくり演じるというのが、
他の歌舞伎劇にはあまりない特殊な見せ場になっています。

当代を代表する盛綱役と言えば、
東の吉右衛門と西の仁左衛門で、
今回仁左衛門丈の見事な盛綱の芝居を、
じっくり観られたことはしあわせでした。

盛綱の母親である微妙は、
三婆の1つと言われる難役ですが、
録画で歌右衛門の名演技などを観ているので、
今回の秀太郎丈の微妙は、
今ひとつの感が拭えませんでした。

女形の老け役は、
今はまともに出来る役者さんが殆どいませんよね。
残念なことだと思います。

それでもひさしぶりに重厚な時代物の雰囲気を、
堪能することが出来ました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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六本木歌舞伎「羅生門」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
羅生門.jpg
六本木のEXシアターで2年毎に上演されている、
海老蔵さんが主演し、三池崇史さんが演出する六本木歌舞伎が、
今回はV6の三宅健さんをゲストに迎えて、
先日まで東京で上演されました。

今回の新作は芥川龍之介の「羅生門」が原作とのことですが、
そこに「杜子春」や「蜘蛛の糸」を絡め、
更には「茨木」や忠臣蔵の七段目などの設定を入れ込んで、
休憩を含み2時間程度の作品に仕上げています。

前2作は台本作家にもビックネームを招聘していたのですが、
今回は特にクレジットはなく、
海老蔵さんを中心に松竹の文芸部のスタッフなどと、
相談して作品にしたのかな、と思いました。

海老蔵さんは勿論当代一の歌舞伎役者らしい歌舞伎役者で、
元禄歌舞伎の時代を彷彿させるような、
瑞々しい荒事の演技にその特質があると思います。

ただ、多くの演出家や作家と、
コラボをしつつ新作をクリエイトしているものの、
海老蔵さんが描く新しい歌舞伎作品の誕生には、
正直至っていないのが現状のようにも思います。

その中ではこの六本木歌舞伎のシリーズの1作目は、
宇宙人に対して歌舞伎の荒事のヒーローが、
徹頭徹尾歌舞伎で戦うという発想がなかなかで、
素の海老蔵本人が本人として登場して、
舞台上で歌舞伎役者に変貌する、という趣向も含めて、
面白い試みだと思いました。

2作目の「座頭市」は、
濃厚な濡れ場が特徴の世話物ですが、
ラストは唐突に荒事になるという珍妙な作品で、
意欲作ではあってもトータルには感心はしませんでした。

そして今回の3作目は、
三宅健さんが「羅生門」の下人を演じ、
悪事をなして斬り殺されると、
そこに私服の海老蔵さんが登場して、
三宅さんにもう一度別の人生を用意する、
という趣向になっていて、
それが何度も繰り返され、
ラストは天上からの救いの糸に乗って、
精神の呪縛から解放される、
というドラマになっています。

その中で海老蔵さんは歌舞伎のヒーローとなり、
荒事をしっかりと披露しますし、
ラストは一種の歌舞伎舞踊劇として盛り上がりを作っています。

これまでの3作品の中では、
若者の葛藤を主軸に据えて、
歌舞伎劇の要素を取り込み、
狂言回しのようなゲームマスターのような存在として、
素の海老蔵さんを登場させるという仕掛けを含めて、
最も分かり易い、意図も明確な作品に仕上がっていたと思います。

三宅健さんもとても頑張っていましたし、
まずは成功といって良いのではないかと思います。

ただ、これが新しい歌舞伎かと言うと、
いささか疑問の気はしますし、
希代の歌舞伎役者で、
元禄歌舞伎を体現出来る現存唯一の肉体である海老蔵丈が、
その本領を発揮しているとは言い難い側面もあります。

今後も海老蔵さんの芝居道と探求は続くと思いますし、
可能な限りそれを見守りたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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