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阿佐ヶ谷スパイダース「桜姫」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
桜姫.jpg
阿佐ヶ谷スパイダースが歌舞伎の「桜姫東文章」を元にしたお芝居を、
吉祥寺シアターで上演しています。

元々シアターコクーン向けに書かれて未上演となった台本を、
今回使用して初めての公演とのことです。

これは南北の「桜姫東文章」とほぼ同じ筋立てを、
時代を第二次大戦後すぐくらいに移して、
生演奏を入れた音楽劇にしています。
芝居小屋かレビューっぽい雰囲気もありますし、
かつての黒テントのレビュー形式のお芝居に、
とてもよく似たスタイルです。

歌舞伎の原作はヒロインが仇討をしてめでたし、
という感じになりますが、
この作品ではその部分はもっと身もふたもない感じになり、
ヒロインは無雑作に殺されて、
戦地を潜り抜けた殺人マシーンのような虚無的な権助が、
キャストを皆殺しにして終わります。

ただ、どうなのだろう。
それほどショッキングでもないですし、
即物的に人が死んだり不幸になるのも、
悪くはないのですが、
それだけを延々と見せられても、
いささかゲンナリするような気分が否めません。

黒テントのまだ精力的に活動していた頃のお芝居などを、
観たことのない方には、
今回のような演出や古典の再構築は新鮮に見えるかも知れませんが、
僕などはさんざんにその洗礼は受けているので、
あまり新味は感じませんでしたし、
かと言って懐かしさも感じませんでした。

それでも、
内省的な作家の自分探しのような舞台よりは、
長塚さんの本領に近いお芝居というようには感じました。

もっとやるなら過激にやって欲しいな。

何か欲求不満気味の観劇でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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長塚圭史「アジアの女」(2019年吉田鋼太郎演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アジアの女.jpg
2006年に新国立劇場の演劇公演として初演された、
「アジアの女」というお芝居が、
シアターコクーンで吉田鋼太郎さんの演出の元に、
装いも新たに再演されています。

これは東京で大震災が起こって東京が隔離され、
そこに取り残された兄妹と、
そこに関わる作家を中心とした物語です。

立ち入り禁止区域の廃屋に住み続ける兄妹であるとか、
そこに入り込んだボランティアや、
住みついた外国人とのトラブルなど、
今観るとどう考えても東日本大震災後のドラマなのですが、
実際にはずっと以前に書かれたものです。

僕は初演版も観ていますが、
初演観劇当時は大袈裟で曖昧な設定に、
釈然としない気分になったのが実際でした。

ただ、今改めて再見してみると、
当時の長塚さんの先見性というか予見性のようなものに、
「冴えていたのね」と素直に感心しました。

この作品は欧米の台詞劇に近いスタイルを狙ったもので、
初演の作家役は岩松了さんでしたから、
岩松さんの劇作のスタイルに、
長塚さんが挑戦した、というニュアンスもありました。
食い詰めた若者の殺し合いのような、
暴力性やすさんだ情感が長塚さんの初期のスタイルでしたが、
この作品では暴力は舞台の外でしか起こらないので、
長塚さんの過激な芝居を見慣れていた当時は、
物足りない気分になったことも事実です。
ただ、その後の長塚さんの劇作は、
どちらかと言えば過激を封印した作家の自分探しのドラマに、
傾斜していったように思います。

これは言ってみれば、
フィクションに何が出来るかに葛藤し苦悩する、
長塚さんの自分探しのドラマの原点のような意味合いの作品なのです。

初演は新国立劇場の小劇場で、
登場人物も5人と少人数ですから、
元々小劇場向けに書かれたお芝居です。

それを今回は中劇場でもやや大きい部類のシアターコクーンで、
石原さとみさんがヒロインを演じ、
吉田鋼太郎さんが主演を勤めて演出にも当たるという、
豪華版の再演を行なっています。

吉田鋼太郎さんの演出は果たして…
と思って観ていると、
いきなりバーバーの「弦楽のためのアダージョ」が流れて、
崩れかけた家々の大セットに、
多方向から万華鏡のような照明が当たり、
真っ赤な衣装のヒロインが、
強烈な白いスポットに照らし出されて、
芽の出る筈のないコンクリの地面に、
種を播き水を撒いているので、
「これ、蜷川幸雄じゃん」と、
驚き半分、納得半分という気持ちになりました。

その後もラストの外開きを含めて、
まごうことなき蜷川演出で、
多分スタッフも同じなのだと思いますし、
懐かしい蜷川芝居が展開されたのです。

こうなると、吉田鋼太郎さんは今回の企画の中で、
どの程度の役割を果たしていたのかしら、
というのは疑問に感じるところです。
主役で普段より演技にも力が入っている感じでしたから、
演出に傾注したというようにも思えませんし、
「これは蜷川芝居でやりますね」
という企画意図に乗っかって、
お任せでこんな感じになったのではないかな、
というように推察はされますが、
それが事実であるかどうかは分かりません。

トータルな舞台の感想としては、
初演より色々な意味でスケールアップしていて、
キャストも数段豪華で見応えがありました。

石原さとみさんは声が悪いのが、
舞台ではやや難点ですが、
さすがに華がありますし、
役柄にも合っていました。
その兄を演じた山内圭哉さんはおそらく今回のMVPで、
心優しいろくでなしのアルコール中毒者を、
リアルかつ繊細に演じていました。
良かったですよね。
特に後半石原さとみさんとの2人の場面は、
「ガラスの動物園」を彷彿させるような、
繊細な名場面になっていました。
才能のない作家を演じた吉田鋼太郎さんも、
最近は明らかに置いているような、
手抜きのお芝居が多かったのですが、
今回はなかなか力が入っていました。

正直コクーンの芝居としては矢張り地味な点は否めないのですが、
スターと演技派の競演は見応えがあり、
蜷川風演出もそうしたものと割り切れば、
楽しむことが出来ました。

初演よりこの作品の真価が感じられる舞台でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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鵺的「悪魔を汚せ」(2019年再演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は中村医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
悪魔を汚せ.jpg
アングラ色の強い舞台が魅力の鵺的が、
2016年に初演されて好評であった「悪魔を汚せ」を、
ほぼオリジナルキャストで再演しています。

高木登さんによるドロドロの家庭崩壊劇を、
アングラ演出では当代随一の演出家寺十吾(じつなしさとる)さんが、
外連味たっぷりに演出しています。

これは歴史のある製薬会社の創業者の一族が、
当主である老人の死をきっかけにして、
家族同士の闘争が加速し、
屋敷は燃え尽き終焉を迎えるという物語です。

一応現代に時間は設定されているようですが、
とても現代という感じではなく、
ゴシックロマンや横溝正史の作品を彷彿とさせるような物語です。
子供たちの世代が悪魔として暗躍するというのも、
古典的なミステリーを想起させるような趣向です。

ただ、内容に意外性のあるような展開はほぼないので、
ミステリーに傾斜している感じはあまりありません。

正直同じような話が続くので、
退屈に感じる部分はあります。
最初に「家族の嫌な姿を思う存分見せる」
というようなことをセリフで言ってしまうので、
観客としてはどうしても過度な期待を持ってしまい、
「その割には…」という感想になってしまいます。
より過激なものを、と期待をしてしまうのです。
その辺りは構成にもやや問題があるように感じました。
途中で明らかになる家族の秘密と称するものも、
とてもありきたりなのでガッカリします。

ただ、ラストに至る展開の意外性と、
ラストに対決する2人の少女が、
絶叫しつつ終わるというのはとても面白くて、
この部分は斬新で一気に覚醒するような思いがありました。
作家としての高木さんの個性が良く表れた、
名シーンであったと思います。

キャストはトータルにはなかなか頑張っていたと思います。
ただ、親子の年齢差があまりない感じなので、
設定に違和感を感じるという部分はありました。
しかし、作者の高木さんも若者3人をそのままのキャストで再演したかった、
と言われているので、
それは承知の上であったのかな、
という気はしました。

特筆するべきは矢張り演出で、
狭い空間に作り込んだ、
奥行と立体感のあるセットも素晴らしいですし、
闇と光を巧みに使った効果も抜群です。

来年もまた高木さんの作品と寺十さんの演出で、
新作が予定されているようですから、
これはもう最大の期待を持って待ちたいと思います。

アングラ小劇場の好きな方には絶対の贈り物です。
臭って来るような血みどろ家族崩壊劇で、
観劇の夜の悪夢に登場することは確実の、
「残る」芝居です。

ただ、明るさや軽みや笑いや勧善懲悪などの要素は皆無で、
通常の倫理観を踏みにじるようなところがありますから、
「まっとうな感覚のお芝居」を希望される向きには、
全く向いていないということは、
補足しておきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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オフィス300「私の恋人」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
私の恋人.jpg
渡辺えり子(旧芸名)さんが、
上田岳弘さんの同題の長編小説を叩き台にしたお芝居を作り、
本人と能年玲奈(旧芸名)さん、小日向文世さんという3人が、
30役以上を演じるという舞台に仕上げて、
明日まで下北沢の本多劇場で上演しています。

3人芝居の体裁ですが、
歌と踊りを含めた女性のアンサンブルが4名と、
キーボードの生演奏が付いています。

芸名変更にお二人とも反対なので、
旧芸名で以下も記載をさせて頂きます。

劇団解散後も精力的に活動をしている渡辺さんですが、
最近の作品はあまり共感が出来ず、
少し遠ざかっていたのが実際です。

今回の舞台も作品としてはあまり上出来とは言えないのですが、
能年玲奈さんをメインとした興行としては、
大成功と言って良く、
彼女の魅力は十全に引き出されていて、
観客の満足度は高かったと思います。
こういうところに、
商売人としての渡辺さんの才覚を見る思いがします。
カーテンコールの様子などを拝見すると、
少し前より何か肩の力が少し抜けた感じで、
「愛すべきおばさん」になっていたのも好ましく感じました。
離婚が良かったのかしら?
失礼なので詮索はしないでおきます。

今回の作品は上田さんの原作があるのですが、
それをそのまま使った場面は、
正直あまり面白くありません。

原始人とナチに殺害されるユダヤ人と現代日本の若者が、
1つの人格の生まれ変わりで、
常に想像上の「私の恋人」を探している、というお話しで、
このシノプシスだけだと、とてもとても面白そうなのですが、
実際に読んでみると、
何かまどろっこしくて頭でっかちの文系ワールドで、
正直読んで時間の無駄だった、
と落胆した小説でした。

これね、「私の恋人」らしき人は白人女性なので、
これを能年玲奈さんがやるのかしら、
ちょっと無理がある気がするな、
と思っていたのですが、
実際の舞台では「私の恋人」を探している青年を能年さんが演じ、
白人女性はアンサンブルのダンサーが、
白い衣装で象徴的に演じる、
という趣向になっていました。

ただ、これは原作のメインキャラが、
きちんと登場しないということなので、
ちょっと無理がありますよね。
それが活かされていたとは思えませんし、
原作を読んでいない方には、
理解は困難であったように思いました。

総じて原作を朗読したりする場面は詰まらなくて、
原作にはない東北の時計屋の一家のお話しがあって、
その部分がかつての渡辺さんの戯曲そのもので、
そちらに関してはとても面白く観劇しました。

2人の兄弟がいて、
兄は夢想家で生活破綻者者の引きこもり。
弟は社会に適応して都会に出て行くのですが、
実は兄の妄想の中に弟は住んでいて、
というような昔懐かしい渡辺さんの世界です。
時計屋の祖父はシベリア抑留でも生き残ったのですが、
8年前の震災で死んでしまって、
その思い出の品が時計屋に保管されているという趣向です。
いいですよね。
昔の作品だと、
大抵実は弟は死んでいて、
兄が引きこもりで死んだ弟を夢想していただけだった、
というようなお話になるのですが、
今回の作品ではそうした仕掛けは明確にはなく、
何かを匂わせる程度で終わっています。

ラストが素晴らしかったですね。

能年玲奈さんが舞台上で衣装を脱いで、
自分がデザインした白いワンピース姿になり、
そこに虹色のコートと帽子をまとって、
時計屋の主人の元を訪れるのです。
「待っていたよ。君は未来の僕だね」
みたいなことを小日向さんが言って、
そのやり取りの後に抒情的な歌になります。

こういうのはノスタルジーの至福ですね。
渡辺さんの作品世界の最高の部分。

それが垣間見れただけでも今回は大満足でした。

ただ、作品は今回レビュー的で散漫でしょ。
場面毎にドタバタと色々な人物を演じるので、
感情の持続が観客の側に生まれないんですよね。
だから、感動も瞬発的で大きくは盛り上がらないのです。
これは小日向さんは研究者と時計屋の主人の2役、
能年玲奈さんは時計屋の弟の1役にして、
他のキャストがにぎにぎしく多くの役を演じ分ける、
という感じにした方が良かったと思います。

ただ、今回は能年さんメインのレビューショーにしたかったんですよね。
それで成功しているので、
仕方がないのかな、という気はします。
作品としては次回に期待。

能年さんは魅力がありますね。
それを引き出した渡辺さんも凄いと感じました。
普通ここまでしないですよ。
歌も歌うし、衣装もあらゆるタイプのものが用意されています。
ただ、役者さんとしては舞台で生きるタイプじゃないですね。
役柄の切り替えも出来ないし、
本来はもっと小劇場的才覚のある人が、
この役はやるべきだったとは思います。
でもね、前述のラストの未来からの訪問の場面など、
存在感が凄いんですよ。
これは小劇場役者には、
とても出せないスターの風格だと思いました。

そんな訳で観ることが出来て幸せな舞台ではありました。

渡辺えり子さんの世界、良かったな、
「風の降る森」とか最高ですよね。
観終わった瞬間にもう一度見たい、と思ったですもん。
ああいうのがまた是非観たいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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三谷幸喜「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シャーロック・ホームズ.jpg
三谷幸喜さんの新作公演が、
今三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで上演されています。

これは翻訳劇的なスタイルのもので、
ミステリー好きの三谷さんとしては、
その原点の1つと言うべき、
シャーロック・ホームズを取り上げています。

と言っても勿論正攻法のものではなく、
作品として残されているホームズが生まれる前の、
名探偵ホームズの誕生に繋がった一夜の出来事を、
兄マイクロフトとの確執を軸に、
一種の家庭劇として描いた2幕劇です。

登場人物は7人で、
ホームズ役はミュージカルで活躍する柿沢勇人さんですが、
裏の主役と言って良いのは、
ワトソン役の佐藤二朗さんで、
お茶目な感じは残しつつも、
後半になるとシリアスな展開を担います。

問題はその役柄が佐藤二朗さんのキャラと、
フィットしていたかどうか、ということと、
ミステリーの古典をしょぼい家庭劇にしてしまった、
という変化球が、
果たして成功していたかどうか、
と言う点にあるのだと思います。

個人的な感想としては、
両方ともあまり成功ではなかったですね。

佐藤二朗さんは頑張っていたと思いますが、
その持ち味の軽快さや飄逸さが、
却って損なわれたしまった感じがありました。
福田雄一さんの作品に出演する時と比べると、
何か窮屈そうでしたね。

何より問題と思うのがストーリー展開で、
あまりにしょぼくないですか?
お菓子が1つ盗まれただけの事件とか、
クライマックスが延々とカードゲームをするだけ、
というのも、
わざわざ映像まで駆使して何やってるの、
と脱力するような感じがありました。

推理クイズの答えを延々と考える警部とか、
ディテールもあまり弾まないですし、
三谷さんがホームズ談を読み込んでいるのは勿論分かるのですが、
「踊る靴紐」とか、ちょっとセンスを疑います。

最近の三谷さんの作品の傾向として、
今の日本の状況に結び付いた舞台を、
というところはあると思うのです。

今度の如何にも詰まらなそうな(失礼)映画もそうですし、
この作品も主人公のホームズを引き込もりのニートにして、
如何にして引きこもりのニートが、
周囲の協力の元に社会復帰するか、
という物語になっています。

最近三谷さんの作品に、
かつてのようなすれ違いだけで見せる底抜けの笑いや、
ラストになって全てが腑に落ちるような快感がないのは、
そして何より新作のヒットがないのは、
そうした啓蒙的な意識が、
本来の藝術の自由度を、
狭めてしまっているからかも知れません。

それでも、ここまで弾まない詰まらない舞台(あくまで私見です)なのに、
観客は極めて好意的で全てを受け止めて反応し笑い、
客席は大入り満員でチケット入手も困難で、
退場する時の様子を見ても、
「面白かったね」と互いに言い合っているので、
このある種の三谷ブランドの魔法が、
いつまで続くのかには興味が沸くのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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サムゴーギャットモンテイブ「NAGISA 巨乳ハンター/広島死闘編」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はもう1本忘れないうちに演劇の話題です。
それがこちら。
サムゴー巨乳ハンター.jpg
劇団員のいない山並洋貴さんの1人劇団、
サムゴーギャットモンテイブのヒット作、
「NAGISA 巨乳ハンター」が、
新たに「NAGISA 巨乳ハンター/広島死闘編」として、
規模を拡大して今日まで上演されています。

これはオリジナルの「NAGISA 巨乳ハンター」が、
2年前に上演されていて、
その時に観ています。
2年前のオリジナルは1時間くらいの中編で2本立ての1本でしたが、
今回はそれを元にして、
よりお話を膨らませて1時間40分ほどの、
1本立て興行として復活させています。
題名は続編のようなのですが、
実際にはリニューアルでの再演です。

巨乳ハンターは、
貧乳のヒロインが巨乳の宇宙人などと戦う漫画ですが、
この作品は副題からも分かるように、
東映の仁義なき戦いとさそりのシリーズがベースになっています。
登場する女性は殆どが貧乳で、
巨乳のヤクザと戦うというへんてこりんな設定です。
今回は個々のキャラの人間ドラマ(と言っても真面目なものではない)と、
時間SF的設定が加わって、
ラストは無限ループのような楽しいクライマックスに帰着します。

間違いなく2年前の初演より面白く、
キャストも充実していて、
皆伸び伸びとふざけているのが素晴らしいのです。

上演場所のシアター711は、
元々映画のミニシアターだったので、
オンボロな割にムードがあり、
今回はそこに小さな回り舞台を配して
(と言ってもただの大きなお盆ですが…)、
それと黒いカーテンという、
最小限の舞台装置で、
お盆を色々なスピードで人力で廻すことにより、
巧みに舞台転換を成立させています。
それを後半になると時間の移動と置き換えるのがクレヴァーで、
ラストはシベリア少女鉄道を観ているようなテイストもありました。
(「残酷な神が支配する」のアレです)

座組は主役の田中渚さんがスレンダーな魅力で素晴らしく、
前回から再登板の巨乳ヤクザの面々も、
迫力押しの楽しい芝居で舞台を支えています。
こちらも再登板の塚田詩織さんは、
前回より演技もこなれていて、
より役柄にフィットしていました。
ただ、さすがに前回のような、
キワドイ観客サービスはありませんでした。

それに加えてコケティッシュで、
アニメから抜け出したような赤猫座ちこさんや、
捕まってしまう劇団員を、
等身大(?)で演じた伊藤貴史さんなど、
今回参加組も個性豊かで楽しめました。

前回も思いましたが、
この個性的な座組を1つにまとめ上げた、
作・演出の山並さんの手腕はなかなかのもので、
猥雑でちょっとエッチでデタラメでエネルギッシュな、
ほぼ理想的な小劇場活劇を成立させていました。

昔、演劇団などが上演していた舞台に、
テイストとしては近いのですが、
クオリティとセンスという面では、
今回の作品の方が数段レベルの高いものでした。

客席は何か誤解をしているのか、
それとも誤解をしていないからそうなのか、
エッチな冴えない中高年の男性が殆どで、
入場前は「止めときゃ良かった」という気分にもさせられたのですが、
入ってみると同化してしまいました。
そう言えば毛皮族も、
かつてエロを売りにしていた時は、
こんな感じの客席でした。

そんな訳で小劇場でしか存在し得ない楽しい舞台で、
久しぶりに小劇場愛に全身を一杯にすることが出来ました。

お好きな方だけのお楽しみです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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根本宗子「プレイハウス」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
プレイハウス.jpg
根本宗子さんがパルコ・プロデュース公演として、
新作「プレイハウス」を、
今池袋の芸術劇場プレイハウスで上演しています。

最近は根本さんの作品はほぼほぼ全部観ています。

最近の出来は玉石混交という感じで、
小空間での密度の濃い素晴らしいお芝居がある一方、
キャストの豪華なこの間の「クラッシャー女中」のように、
ちょっと意図不明の、
明らかな失敗作という感じの作品もありました。

今回は企画公演で劇場は大きいのですが、
10人組のアイドルグループが、
自分達を模したようなショーパブの風俗嬢を演じ、
その店の店長や客、ホストという男たちと、
バトルを繰り広げるという、
根本さんの得意パターンの群像劇で、
過去にもスーパー限定のアイドルと、
その仕掛人の男たちとのバトル、
というような似通った設定の作品があり、
今回はその豪華拡大版といった感じの舞台です。

内容はなので新味はないのですが、
根本さんならではの世界が確立していて安定感があり、
今回は意図的にベタな設定も多くて、
ラストも破格なくハッピーエンドで終息するので、
万人向きの娯楽作に仕上がっていたと思います。

GANG PARADEというアイドルグループのメンバーが、
なかなか個性的で1人1人が魅力的ですし、
演技も悪くなく、
歌と踊りもふんだんにあって見応え聴き応えがありました。
この10人をきちんと描き分けていて混乱のない辺りは、
集団劇を得意とする根本さんの面目躍如という感じがします。

根本さんのお芝居の男性キャストは、
大体が女性陣にとっちめられ、
哀れに泣きわめいたり許しを請うのが定番の、
言ってみれば損な役回りなのですが、
今回メインの磯村勇斗さんは、
もともと善玉悪玉の両者を演じられる色悪的資質を持っているので、
役柄には合っていて悪くありませんでした。

そんな訳で、
万人向きの楽しい舞台に仕上がっていて、
それでいて根本さんの色はしっかり出ていますし、
やや守りに入った感じはありますが、
まずは成功と言ってよい作品だと思います。

偉そうな言い方すいません。
これからも頑張ってく下さい。

それではこの話題はこのくらいで。
今日もう1本あります。

石原がお送りしました。
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歌舞伎座八月納涼歌舞伎(2019年第三部) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2019年8月大歌舞伎.jpg
歌舞伎座の納涼歌舞伎に足を運びました。

年毎に通俗味を増し、
観るのが辛いような演目が増える歌舞伎座ですが、
今回は玉三郎丈が初めて納涼歌舞伎に出演し、
市川中車が5役を演じて雪之丞変化を再構成するという趣向に、
少し興味が湧いたので伺ってみました。

ただ、実際に観てみるとビックリで、
舞台には殆どセットはなく、
登場するのはほぼ4人の役者のみで、
要するに1人の独白か2人の掛け合いが殆どで、
それ以外は映像を流して処理するという、
ディナーショーの余興のような舞台でした。
市川中車丈も確かに5つのお役を演じはしますが、
そのうちの1役は映像のみの出演です。

これが本当に歌舞伎座で上演する必要性のある舞台でしょうか?

こうした物を求めている観客が何処かにいるのかしら?

かれこれ30年以上は歌舞伎座に足を運んでいますが、
ここまでの手抜きの舞台を観たことは、
未だかつてありませんでした。

色々予算的な問題や企画上のゴタゴタもあったのかしらと、
推測は出来なくもありませんが、
歌舞伎座に足を運ぶ以上、
歌舞伎座でしか観られないものを観たいと思いますし、
こうした低予算の自主公演のようなことが行われるのであれば、
事前に「これはいつものお芝居とは違いますよ」という、
アナウンスはして欲しかったと思いました。

よく宣伝文句などを読むと、
確かにそれらしい怪しげなことは書かれていたので、
行間を読まないお前が悪いのだと、そう言われればそれまでですが、
玉三郎丈の演出と主演で、
中車を相手役に「雪之丞変化」と言われれば、
それなりの本格的な歌舞伎劇を想像するでしょ。
玉三郎丈も確かに自主公演では、
こうしたディナーショーもどきの演出もあったと思いますが、
歌舞伎座の舞台は特別、という認識は、
以前から持たれていたように思いますし、
その美意識には絶大の信頼を置いていたので、
今回の裏切られ感は大きかったのです。

ちょっとダメージが大きくて、
しばらくは歌舞伎を観る元気はなくなりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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谷賢一「2011年:語られたがる言葉たち」(福島三部作・第三部) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2011語られたがる言葉達.jpg
福島原発事故に至った時代を描いた、
谷賢一さんの福島三部作が、
今池袋で一挙上演されています。

この作品は緻密な取材を元に、
福島の出身でもある谷賢一さんが、
3つの時代の物語として、
福島原発事故を3つの連作の芝居にしたもので、
僕は以前第一部の「1961年:夜に昇る太陽」は観ていて、
今回は第三部の「2011年:語られたがる言葉たち」に足を運びました。

本当は第二部の「1986年:メビウスの輪」も観たかったのですが、
ちょっと時間が取れませんでした。

ただ、今回第三部を鑑賞して、
とてもとても素晴らしかったので、
無理しても第二部も観ておきたかったな、
とそれだけでは残念でなりません。

帰りにはパンフレットと3作品全ての台本を買いました。

この連作はまず構成の勝利という感じがします。

福島原発事故を福島の悲劇として描くのに、
原発導入のきっかけとなった1961年と、
チェルノブイリ原発事故が起き、政治も揺れていた1986年、
そして原発事故の2011年の3つの時代で描く、
という発想が秀逸です。
今回の第三部も原発事故の年を舞台にしながら、
その年の12月に時間を取っています。
これもとてもクレヴァーな設定だと思います。
事故が少し距離を持って語られるようになり、
それでいて当事者にとっては生々しい現実でもあるという、
最も複雑な思いの交錯する時間であったからです。

そして、現実に谷さんが取材された、
双葉町の元町長をモデルとした一家を主軸に据え、
一種の家族年代記としての設定も付加しています。

この辺りとても古典的な歴史ロマンの設定を、
組み入れている点も面白く、
それが古典的な風格をこの作品に与えています。

第一部もとても面白かったのですが、
犬を擬人化してミュージカル仕立てにしたりと、
ちょっと小劇場テイストの趣向が、
せっかくの作品のリアルな重厚さを、
減殺しているようなきらいはありました。
(初演時の感想です。今回は観ていません)

その点今回の第三部は題材のせいもあるでしょうが、
ぐっとシリアスで、
一部に死人を戯画的に出したりという、
小劇場の諧謔的趣向があるのですが、
それほど鼻につくようなことはなく、
実際に取材された現地の生の声を主体にして、
メディアのありかたに切り込んだ台本の完成度は素晴らしく、
役者も熱量のある芝居で舞台をもり立てていました。

特にずっと語ることを拒んでいた男が、
震災当日の出来事を語る場面と、
主人公である元双葉町町長の弟の独白は、
とても感動的で心に残りました。
最近涙腺が緩いのでグズグズに泣いてしまいました。

とても感動的で考えさせる素晴らしい舞台で、
濃密で目を離せない2時間の、
最近では希有な演劇体験が皆さんを待っています。
是非にとお薦めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アガリスクエンターテイメント「発表せよ!大本営!」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アガリスク 大本営.jpg
シチュエーションコメディを一貫して上演し続け、
熱烈なファンも多いアガリスクエンターテイメントの新作公演が、
今下北沢の駅前劇場で上演されています。

作・演出の冨坂友さんは、
学校での君が代斉唱問題も、
ナチスドイツのユダヤ人問題も、
平気でシチュエーションコメディにしてしまい、
何らそこに特定の思想性を持ちこまない、
という離れ業を涼しい顔で行う新時代の劇作家です。

今回は日本が惨敗して、
その後の太平洋戦争の行く末を決定付けた、
ミッドウエイ海戦の結果を、
強引に改ざんして報道した、
悪名高い「大本営発表」の史実を、
これまた大胆にシチュエーションコメディ化しています。

一体どんなことになるのかしらと、
ちょっと危惧する思いもあったのですが、
実際に鑑賞してみると、
いつも以上に互いに反発する、
異なった意見をもつキャラクター達が、
「大本営発表」という1つのゴール(?)を目指して、
悪戦苦闘する姿が活き活きと描かれ、
人間の愚かしさと愛らしさと切なさとが、
いつも以上に感じられる作品に仕上がっていました。

まあ、大本営発表がゴールでいいのか、
というのはちょっとあるのですね。
三谷幸喜さんの「笑の大学」でも、
その辺はちょっと逃げてるでしょ。
最後に「戦争は良くないよ」という、
ステレオタイプなことを言うことで、
無難にまとめている、というようなところがありますね。
あの作品も、制約があるだけ、苦労があるだけ、
それをかいくぐろうと人間は燃える、
というところが肝にある訳で、
その背景はどうでもいいというのが、
「喜劇」としての立場だと思います。
笑えないものは喜劇としては余計なのです。
ただ、なかなかそこは徹底するのは難しいところだと思います。
冨坂さんはその辺りの割り切りが凄くて、
最初に前説で「戦争で日本が負けた、ということだけ覚えておいて下さい」と言い、
作品のオープニングで後の反省をチラと見せるだけで、
後は批評性や思想性を持ち込むことなく、
「大本営発表」を喜劇にすることだけを目指して、
徹底してその世界を遊んでいます。

批判的な意見もあるでしょうが、
個人的にはシンプルに凄いと思いました。

数年前と比べると役者さんのレベルが上がっていて、
安心してその世界に身を委ねることが出来るようになっています。
セットも巧みな配置に出来ていてセンスがありますし、
後半テンポを上げてクライマックスの大本営発表本番に向け、
グイグイ盛り上がる辺りは小劇場演劇の快感がありました。
役者さんは皆さん良かったのですが、
特に今回主役と言って良い活躍の津和野諒さんが、
抜群の力量と存在感で舞台をまとめていました。

以前は大倉孝二さんのコピーみたいな感じもあった、
津和野諒さんですが、
今回の熱演に関しては、
間違いなく今の大倉孝二さんを超えていました。

そんな訳で非常に見応えのあった本作ですが、
正直なところを言えば、
かなり窮屈な設定であったことは確かで、
もっと自由度の高い設定であった方が、
冨坂さんの劇作とこの劇団の楽しさは、
もっと開放されるのではないか、
というようにも感じました。

次回も期待を込めて待ちたいと思います。

頑張って下さい!

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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