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ほりぶん 第6回公演「牛久沼3」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ほりぶん牛久沼3.jpg
ナカゴーの怪人鎌田順也さんの別ユニット、
ほりぶんの第6回公演として、
「牛久沼3」が本日まで上演されています。

ほりぶんはワンピース姿の女性しか登場しない、
というお芝居を上演し続けていますが、
はえぎわの怪女優川上友里さんがメインで、
周囲も大暴れ上等の肉体派の皆さんが揃っているので、
ある意味ナカゴーよりラディカルでシュールな世界が展開されます。

今回の作品は2017年に第4回公演として上演された、
「牛久沼」のシリーズ第3作で、
前作は牛久沼の最後のウナギを釣り上げた親子が、
それぞれの理由でウナギを求める女性達と、
壮絶なウナギ争奪戦を繰り広げるというお話でした。

今回の続編は第1作から3年後という設定で、
今度は母親のために子供が1人で、
もう絶対にいないと思われていたウナギを釣り上げるのですが、
同じように因縁のある女性達が次々と出現して、
再び仁義なきウナギ争奪戦が繰り広げられます。

今回のメインは最強の敵と称される、
ナイロン100℃の菊池明明さん演じる「疲れ知らずさん」で、
もう妖怪と言って良いような怪演で、
大バトルが何もない素舞台で展開されるのです。

当日渡される資料には、
何とまだ上演すら未定の「牛久沼4」まで網羅した、
あらすじ集が付いていて、
鎌田さんの独特の拘りが感じられます。

本当に子供の空想のように、
牛久沼の世界が拡大されて行く様が面白く、
是非末永い上演を期待したいと思いました。

さて、鎌田さんの劇作は、
そのシュールで奔放な想像力はそのままに、
最近の作品ではドラマの部分で成熟度が増しています。
今回の作品でも、
主人公となった文子という娘が、
追っ手が迫っているにもかかわらず、
絶対に走らないという母親との約束を守り、
そのために却って危機に陥るも、
最後にはトラウマを克服して走り出す、
というドラマとしての縦筋が明確にあり、
母親との対話が練り上げられていることで、
その部分の説得力が増している、
と言う点が大きな特徴です。

こうしたドラマに説得力があり、
かつしっかりと笑いの要素もそこに散りばめられている、
と言う点に劇作としての成熟があり、
鎌田さんの世界が、
新たなステージに昇りつつあることが感じられました。

キャストのエネルギー全開の大暴れはいつも通りでしたが、
今回はやや粘着でウェットな芝居の人が多く、
やや腹にもたれる感じがあったのと、
あまりに体当たりで皆さん傷だらけなのが痛々しく、
特に菊池明明さんはそのとぼけたキャラが、
個人的には大好きであったので、
今回の捨て身の妖怪演技は、
さすがにちょっとなあ、と、
これも痛々しい感じを覚えてしまいました。

もう少し女優さんの美しさもいかした、
素敵な感じもあると良かったですね。
肉体派ばかりでは少しきついな、と感じました。

たとえばですが、
菊池さんは前半はもっと乙女チックに登場して、
後半で妖怪化しても良かったのではないでしょうか?

いずれにしても、
鎌田さん以外ではなし得ない唯一無二のお芝居で、
初見の方なら呆然自失を約束する怪作です。
是非体力を付けてご覧下さい。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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tsumazuki no ishi × 鵺的「死旗」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
死旗.jpg
鵺的の高木登さんが台本を書き、
tsumazuki no ishiの寺十吾(じつなしさとる)さんが演出して、
両者の劇団を中心として、
多彩なキャストが顔を揃えた舞台が、
今下北沢のザ・スズナリで上演されています。

これはかなり悪趣味なので、
全ての方にお勧め出来る舞台ではありませんが、
かつての東京グランギニョールを思わせるような、
圧倒的な熱量で繰り広げられるアングラ芝居で、
よくぞ今の時代にここまでやったと、
とてもとても感銘を受けました。

アングラ芝居のお好きな方には、
絶対の贈り物です。

是非劇場に急ぐのじゃ。
見逃しては後悔しますぞ。

以下少しネタバレを含む感想です。

お話は場所も時代も特定しない、
山奥の血の濃い村の話で、
超能力を持つ盲目の長老に支配された、
略奪と強姦とカニバリズムを生業とする地獄のような部落に、
強姦され殺され食べられた女が、
忍びの村の一族であったことから、
復讐に燃える女忍びに率いられた集団と、
血で血を洗う抗争劇が繰り広げられます。

物語は死体を継ぎ合わせて作られた、
残美という人造美女が誕生する辺りから、
伝奇小説的色合いを強め、
山田風太郎的淫乱と暴力の奇想から、
ラストは町田康を思わせる血の精液の雨の中、
世界崩壊と再生の神話に着地します。

鵺的の高木登さんの世界は、
アングラ愛の集大成的な、
悪趣味上等、引用パクリ上等の、
清々しいほどに露悪的で悪趣味で過剰な世界で、
白土三平の「忍者武芸帳」から、
ハマーフィルムの「フランケンシュタイン死美人の復讐」、
山田風太郎の一連の奇想忍法帳、
町田康のパンク侍まで召喚しつつ、
ラストまで1時間40分をまとめ上げた手腕に感心します。

何より素晴らしいのは寺十吾さんの演出で、
寺十さんはアングラ演出では当代最高と思いますが、
今回はその手腕が極限まで発揮された素晴らしいもので、
凡百の演出家であれば扱い兼ねて空中分解するような素材を、
一点の緩みもなく緻密に組み上げ、
最初から醜悪な残虐場面が度肝を抜きますし、
音響やダイナミックな照明、本水などの効果で盛り上げ、
残美の場面では人外の悲しみのようなものまで、
巧みに表現しています。
こうした作品は尻つぼみになるのが通常ですが、
隠し球の夕沈さんを最後に登場させることで、
ラストの再生に繋がる葬列まで、
緩むことなく締め括った力技には、
まことに感銘を受けました。

寺十さんのこれまでのアングラ演出の、
集大成にして最高傑作と言って、
決して言い過ぎではないものだと思います。

キャストは女優陣が素晴らしく、
体当たり演技で賞賛に値する、
熟んだ果実のような川添美和さんが良いですし、
女忍びのとみやまあゆみさんの、
凜としたたたずまい、
残美という人造人間を、
アングラテイストの身体演技で演じきった、
福永マリさんと粒揃いです。

ちょっと残念だったのは、
かつて演劇実験室天井桟敷の一時期の看板であり、
アングラそのものを体現する、
跳躍する異形の肉体であった、
長老役の若松武さんが、
勿論かつての天井桟敷時代の身体演技を、
再現したくはないのでしょうが、
裏声のおとなしめのお芝居に終始していたのが、
かつての若松さんの肉体の大ファンとしては、
少し残念には感じました。
もう少し年齢無視の大暴れを、
しては頂けなかったのでしょうか?
もっと大人げない時代を召喚するような奇態を、
今のかつてを知らない若い観客達に、
見せつけては頂けなかったのでしょうか?
(失礼な表現と不遜な言葉をお許し下さい)
あと鵺的の奥野さんには、
もう少し体当たり演技が欲しかったな、
というようには感じました。
川添さんがあれだけやっているのですから、
もう少し踏ん張っては頂けなかったのでしょうか?
(これも失礼をお許し下さい)

いずれにしても、
「よくぞやったり」の素晴らしいアングラ芝居で、
よもやこれだけの物が今の時代に観られるとは、
想像もしなかった嬉しい誤算でした。

こうしたものがお好きな方には、
絶対のお薦めです。

アングラ万歳!

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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港.ロッ区.「ロックの女」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
みなとのロック.jpg
鈴木砂羽さんが「自分の見たい芝居を作る」
と旗揚げしたプロデュースユニットの、
第一回公演が今赤坂レッドシアターで上演されています。
その初日に足を運びました。

今回は女子刑務所の話で、
怪人福田転球さんの作・演出、
主演は椿鬼奴さんで、
新垣里沙さん、平田敦子さん、関谷春子さん、
佐藤真弓さんなど、
小劇場の曲者や歌のしっかり歌えるキャストが、
バランス良く配置されている、
小劇場的にはなかなか豪華な布陣です。

これは要するに「監獄ロック」で、
仲の悪かった女囚仲間が、
アカペラでバンドを組んでゲリラ的に演奏する、
というようなお話です。

音楽畑のキャストが随所に配置されていて、
鬼奴さんをボーカルにして、
アカペラのロックバンドが演奏します。

ストーリーはほぼあってなきがごとしで、
音楽のパートと、
女囚同士のギャグを交えたやり取りが、
全編を支配する軽いタッチのお芝居です。

転球さんの台本は、
役者それぞれの個性を活かして、
それでいて主張はし過ぎない抑制の利いたもので、
下手に楽屋落ちやずるずるのアドリブに流れない、
お芝居のフォルムを守っているのが、
とても好印象で、
もっと奇天烈な芝居を想像していたので、
少し意外な感じもしますが、
破天荒に見えて、
実はきまじめな方なのかも知れません。

主役の鬼奴さんが芝居の間合いから外れるので、
その点が座組としてはリスキーなのですが、
転球さんは何度も同じ舞台に立っているので、
その点も心得ていて、
テンポを乱さずに進行させている点も、
演出の力量を感じました。

正直もう少しキャストの個人技的な部分や、
個人の遊びの部分もあって良いかな、
というようには感じました。
個人の見せ場がこのくらいであれば、
もう少し物語りに起伏があっても良かったと思います。

演出の転球さんと主宰の鈴木砂羽さんは、
それぞれ少し出演しますが、
慰問歌手として豪華なドレスで登場した鈴木砂羽さんは、
その存在感とオーラが圧巻で、
とてもとても素敵でした。
彼女は以前のホリケンの舞台に出た時にも思いましたが、
映像で見るより舞台では遙かにオーラと押し出しがあり、
とても魅力的でビックリします。

正直こんな感じで毎回出てくれるのなら、
それだけで観に行く値打ちはあるな、
というように思いました。

総じて物足りない部分もありましたが、
こうした企画物の小劇場音楽劇というのは、
数はあっても殆ど成功しませんから、
今回はまずまず満足の行く、
楽しい上演だと思います。

客席はやや寂しい感じでしたから、
内輪向けと思って手控えている方には、
「なかなか良いですよ」とお勧めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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マームとジプシー「BEACH」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
BEACH.jpg
動きや台詞の様式的な繰り返しの中に、
思春期の喪失感や死の匂いを漂わせた、
独特のスタイルが面白い演劇ユニット、
マームとジプシーが、
ドイツのシューズブランド、トリッペンとのコラボで、
原宿のイベントスペースを使い、
70分ほどの小さなお芝居を上演しています。

マームとジプシーは時々足を運んでいるという感じで、
この間の東京芸術劇場での「BOAT」は、
設定ばかり仰々しくて、
昔の意味不明の前衛演劇の劣化コピーのような、
個人的にはガッカリの作品であったのですが、
今回の作品は遙かに小品でありながら、
マームとジプシーの本来の良さがギッチリと詰まった、
素敵なお芝居でした。

トリッペンとのコラボということで、
6人のキャストはこのブランドの別々のサンダルを履いていて、
その内容も時々CMとして、
舞台奥のスクリーンに映写されます。

物語は夏のビーチでの1日の出来事で、
ある1人の女性が、
翌日にその町を去る、
というだけのさざ波のような小さなドラマが、
独特のリフレインの演出と共に、
詩情豊かに描かれます。

役者さんの息づかいも届く小空間に、
そのミニマルなドラマが心地よく、
何もない舞台に、
観客の想像力の中で砂浜の風景が浮かび、
そこに仄かに漂う、
喪失と死の匂いのようなものが、
切なく美しい叙情を紡ぐのです。

役者さんも心得た芝居で、
作者の世界を精緻に表現していました。

空間設計としては、
もっと大空間の処理にも長けたマームとジプシーですが、
その内包するミニマルな喪失感のようなものを、
的確に表現するには、
もっと小さな空間での芝居の方が完成度は高く、
現時点ではよりその本質を感じられるように思いました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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劇団鹿殺し「俺の骨をあげる」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
鹿殺し.jpg
劇団鹿殺しの本公演に足を運びました。

劇団鹿殺しはこれまでに6回くらい観ています。
それほど熱心な観客ではないのですが、
時々気になると観るという感じです。

本公演ではないのですが、
劇団休止中に丸尾さんと歌手のCoccoさんが組んだ舞台は、
2人の個性がガッチリ噛み合った見事な舞台で、
その年一番と言って良い感銘を受けました。

今回は台本が丸尾丸一郎さん、演出・主演が菜月チョビさんという、
鹿殺しのゴールデンコンビで、
オレノグラフィティさんの音楽に、
劇団員によるブラスと3人編成のロックバンドの生演奏による、
ロックミュージカル仕立てで、
まあこれぞ鹿殺し、
というスタイルの公演です。

内容は常に人生の主役であることを貪欲に求めた、
チョビさん演じる1人の女性の一代記で、
女子プロレスからロック、卓球などの世界を、
波瀾万丈に渡り歩きます。
その人生の中で関係した5人の男性が、
いずれも死して主人公を去ってゆくのですが、
それが彼女の骨になるというストーリーです。

丸尾さんの台本は、
本来はかなりクセのある、
ややメンヘラ的な感じのものですが、
今回のものはチョビさんの人生賛歌のような、
浪花節のお芝居なので、
その毒はそれほど気になりません。

ただ、今回は熱量で見せるタイプの舞台と思いますが、
役者さんの平均年齢も高くなり、
キャストによっては力押しが厳しい感じで、
お芝居のパートとライブのパート、
アクションやパフォーマンスのパートなどの、
メリハリがなく全体に流れてしまう感じがありました。

サンシャイン劇場くらいの箱で、
こうした芝居を上演するのには、
おそらくもっと別の作り方が必要で、
劇団☆新感線のように、
大仰に決めるところは決めることと、
ゲストにはフレッシュで華のあるキャストが、
1人は必要であるように感じました。

そんな訳で個人的には今ひとつではあったのですが、
これぞ鹿殺しという公演で、
キャストの熱演も悪くなく、
鹿殺しのお芝居の好きな方には、
お勧めの1本だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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長塚圭史「MAKOTO」(阿佐ヶ谷スパイダース新作) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
MAKOTO.jpg
長塚圭史さんが主宰する演劇ユニット、
阿佐ヶ谷スパイダースの久しぶりの新作公演が、
今吉祥寺シアターで上演されています。

阿佐ヶ谷スパイダースは、
個人的には何と言っても2004年の「はたらくおとこ」が衝撃的で、
あの男臭く、リアルでありながらシュールで、
過激で冷徹で暴力的で露悪的な感じなども、
そして何より時代と斬り結ぶような切羽詰まった切れ味に、
身の毛もよだつような戦慄を覚えました。

ただ、こうした作風というのは、
そう長く持続出来る性質のものでもないことは必定で、
一旦活動を休止して長塚さんが留学して以降、
再開された数本の舞台は、
中途半端に欧米風の前衛劇を気取ったような、
切実さに欠ける代物で、
長塚さんの作品に対する迷いも窺われて、
正直全く面白くはありませんでした。

2016年に「はたらくおとこ」の再演があり、
以前と同じ衝撃力のある舞台であることに、
改めて感心すると共に、
またこういう作品をやって欲しいな、
この再演はその予告編と考えて良いのかしら、
そうだよね、きっとそうだよね、
と自分に言い聞かせていたところ、
2年後にようやく長塚さんの新作が、
新生阿佐ヶ谷スパイダースの公演として、
今回の上演となったのです。

さて、そうして待望の今回の公演ですが、
以前の腑抜けのような作品と比較すると、
少し骨のある感じはあり、
現代と斬り結ぼうという意欲も感じはしたのですが、
正直どのような方向に物語りを進めるべきか、
明らかに迷いがあり、
また各方面に気を遣って、
隙を見せたり怒られたりしないように、
小細工を色々と弄しているような感じもあって、
あまり乗れる作品ではありませんでした。

内容的にはトビー・フーパーの「スポンテニアス・コンバッション」や、
怪奇大作戦の「呪いの壺」のような、
個人の私的な喪失感や情念から発したある種のパワーが、
世界を変革や滅亡に導くというドラマなのですが、
ベースにあるドラマに深みがまるでありませんし、
漫画家という設定も活きていません。
破壊衝動の向かう先にも説得力がなく、
「こんな終わり方かい!」
と突っこみなるような脱力系の終わり方にも、
とても納得はゆきませんでした。

今後も長塚圭史さんは応援し続けるつもりですが、
今回のような迷いと守りの芝居ではなく、
もっと攻めて攻めて攻めて、
その演劇的エネルギー自体で、
世界を焼き尽くすような猛劇を、
次は期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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藤田貴大「BOAT」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日からクリニックは夏期の休診に入ります。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
Boat.jpg
もう公演は終わっていますが、
マームとジプシーの藤田貴大さんが、
東京芸術劇場と協力して上演する、
マームとジプシー特別公演というような新作の舞台に、
先日足を運びました。

高校生の制服姿の団体が、
1階の客席の3分の2以上を占めていて、
僕は自分が学生だった頃から、
個人ではなく学校で行くこうした行事が、
大嫌いだったので、
これなら貸し切りにしてくれれば良かったのに…
と思いましたが特に事前の連絡などはないので、
仕方がありません。
幕前には大騒ぎだったので危惧したのですが、
観劇態度は極めて真面目でした。

ただ、それでは高校生の鑑賞に、
この舞台が適していたのかと言うと、
その点についてははなはだ疑問です。

内容はかなり抽象性の高いもので、
架空の島が舞台となり、
そこに昔からいる住民と、
新しくボートで流れ着いた人達との間に、
差別やトラブルが生じたり、
悲劇が起こったりしているうちに、
今度は大量のボートが現れて、
島は崩壊に導かれます。

ラストは差別意識のない主人公達が、
島をボートで離れるところで、
物語は終わります。

これだけでもお分かりのように、
島をメタファーにして、
今の日本の状況を、
かなり悲観的に描いたお芝居で、
最後に希望を残した感じはあっても、
それで何かが生まれる訳ではありません。

マームとジプシーのいつもの感じですから、
素舞台に本物のボートが置かれているだけで、
衣装も稽古着的なものです。

そのボートが吊り上げられるのが、
舞台上の最も大きな動きです。

台詞は不自然な棒読が基本ですが、
特徴的なリフレインは今回はあまりなく、
普通のお芝居に近づいている印象でした。

総じて、
昔のアングラ演劇の興隆期に、
一般の方がイメージしていた、
難解で意味不明のお芝居に、
ほぼ近いような、
過去の亡霊が甦ったような作品で、
個人的にはとても受け付けませんでした。

もう少し明るい話が見たいですよね。

それでは今日はこのくらいで。

今日も皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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谷賢一「1961年:夜に昇る太陽」(福島三部作・第一部) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも、
石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
1961夜に昇る太陽.jpg
劇団DULL-COLORED POPが、
2年間の緻密な取材を元に、
福島原発事故に至った福島県双葉町の歴史を、
福島三部作として描くシリーズの第一作が、
今こまばアゴラ劇場で上演されています。

これはなかなか気合いの入った作品で、
内容の細部には首肯しかねる部分もあるのですが、
トータルにはとても感心しましたし、
ラストには胸の熱くなるような思いを受け取りました。

双葉町の町長を勤めることになる一家の物語で、
今回上演された第一作は、
双葉町の議会で原発の誘致が決定された、
1961年の出来事が描かれ、
今後上演される第二作は1986年が、
そして第三作では2011年が描かれる予定とのことです。

始まりでは福島に向かう列車の車中で、
東電の誘致担当者の男が、
科学者を志す里帰り途中の東大生と、
故郷と日本の未来についての対話をします。
それがスムースに物語に繋がり象徴的な意味を持つ辺り、
構成が極めて巧みです。

その後は子役を、
その父親や大人になった本人が、
人形劇で二役で演じるという、
児童劇風の趣向が導入されます。

ここは好みが分かれるところで、
演出にメリハリが付いて面白い反面、
もっと抑制的な演出でリアルであっても、
良かったのではないかとも思えます。

子役を芝居で登場させると、
通常は大人が演じますから、
かなり違和感のある感じにはなります。
この演出はそれを回避しているのです。
また、ずっと主役の1人である子供を演じていた黒子が、
ラストでその人物の大人になった姿を、
2011年に演じるというような趣向を見ると、
なるほどという感じはあるのですが、
その一方で人形を投げて笑わしたり、
2役の切り替えをそのまま見せて、
慌てるのをギャグにしたりするのは、
大して面白くもありませんし、
いささかやり過ぎで、
舞台自体の格を下げてしまったと感じました。

物語は東京の大学に行って、
地元と決別するために戻って来た一家の長男を主軸に展開し、
そこではからずも、
原発の誘致における、
決定的な瞬間に立ち会うことになります。
東電の担当者を演じた青年団の古屋隆太さんの見事な演技もあって、
この場面は凄みと迫力がありました。
ただ、締め括りに一家の長老が大学生に向い、
「お前は反対しなかった」
と3回異常に力んで繰り返すのは、
いくら何でもくど過ぎる、
とは感じました。

この台詞がとても重要であることは分かりますが、
真面目に舞台を観ている観客であれば、
それは1回言われれば分かります。
それを執拗に繰り返すのは、
よりテーマを強調しているようで、
却って逆効果ではないかと感じました。
終わりの2回を正面を向き、
観客に対して繰り返すのも、
「お前は何様だよ」
とちょっと感じてしまうのです。
観客に訴えたい熱意は分かりますが、
こうした部分こそ抑制的にした方が、
より観客の心に届くのではないでしょうか?

総じて、
場面のおしりが長く、
対話の台詞がどれも長すぎるのが、
このお芝居の一番の欠点で、
言いたいことが沢山あるのは分かるのですが、
それを敢えて8割くらいにして、
おしりの2割をカットした方が、
観客により感銘を与える作品に、
なったのではないかと思います。
その言外の2割を想像する方が、
最初から全部言われるより、
より心に響き、
忘れがたく心に刻まれるのではないでしょうか?

いずれにしても力感溢れる快作で、
小劇場的な演出と演技の過剰さは、
やや空回りしている感はあるものの、
その緻密な取材にも頭が下がりますし、
純粋に感動する1本となっていました。
そして、何より改めて福島の悲劇について、
一体誰が何処で何を間違ったのかと、
深く考えさせる作品となっていました。

これからの2部、3部も本当に楽しみです。

頑張って下さい。応援しています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ナカゴー「まだ出会っていないだけ」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日2本目の記事は演劇の話題です。
それがこちら。
ナカゴー 2018.jpg
唯一無二の変な舞台を見せる大好きなナカゴーの本公演が、
今下北沢の駅前劇場で公演されています。

これは昨年の「ていで」に似た、
ナカゴー印の家庭劇で、
ハイバイでの不思議な芝居もなじみ深い、
上田遙さんが客演で、
主役の定食屋をきりもりする女性を演じ、
長く決別していた妹と、
再会して仲直りしようと心の中では思いながら、
結果としてまた喧嘩をしてしまうという心理を、
ナカゴーらしいガジェットは散りばめながら、
本筋は極めて繊細かつ正攻法の心理劇として描いています。

天才鎌田順也さんのお芝居は、
その破天荒な展開とシュールなギャグが魅力ですから、
河童や悪霊や人面痘や口さけ女の集団などが登場する方が、
楽しくて本筋のようにも思うのですが、
数年前からどうやらこうした心理劇や家庭劇に興味が移り、
全うにそれを追求しようとしているようです。

また、これも少し前から、
最初に前説として、
あらすじを最後まで喋ってしまったり、
舞台上で役者が練習として、
本番の台詞を喋ってしまうなど、
普通は「それをしたら台無しだろう」
と思えるようなことをするようになりました。

ただ、
昨年の「ていで」ではそれが全くの失敗で、
何の意味もなく感じられたのですが、
今回の作品を見ると、
最初に予行練習はあるのですが、
大事な台詞は省いていましたし、
最初に登場する前説の女性が、
あらすじを喋ってしまうこと自体は一緒でも、
その女性自体が未来の分かる「予知能力者」だということになっていて、
同じ予知能力者の女性と対決して、
劇中で「予め決まっている未来」を、
変えようとして対決する、
という趣向になっているので、
なるほどそうしたことがしたいのかと、
ようやく腑に落ちるような気分になったのです。

鎌田さんはどうやら、
自分に身近な感情のありかを、
追求するような文学的な芝居を、
エンタメとして成立させる取り組みをしていると共に、
予め書かれた戯曲を演じる、
という行為に対する深い懐疑を、
それ自体テーマとしようとしているようです。

普通考えると、
そんなことをしても意味ないじゃん、
と思えるところですが、
そこが天才の天才たるゆえんで、
その凡人には無意味に見える葛藤が、
全く新しい芝居の萌芽となりつつあるように、
今回は感じました。

昨年の「ていで」を足場にしながら、
今回の作品は数段レベルアップして、
完成度の高い作品となっていましたし、
新劇的な家庭劇としても高い水準で成立しながら、
それがある懐かしさを感じさせるような、
シュールで前衛的な芝居としても成立していたのです。

鎌田さんの新たな境地を見る思いがありました。

役者は主役の上田遙さんが抜群に良く、
重鎮の篠原正明さんもいつもながらの迫力でした。
座組の水準もしっかりと上がっているようです。

正直もっと破天荒さを期待したい部分も正直あるのですが、
今回の舞台はナカゴーの1つの新たな側面の、
現時点での到達点として、
非常に完成度の高い、
素敵なお芝居になっていたと思います。

楽しめました。

それでは次はもう1本、
映画の記事に続きます。
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「マクガワン・トリロジー」(2018年小川絵梨子演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

台風が近づいていますので、
受診予定の方はくれぐれもご注意下さい。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
マクガワン・トリロジー.jpg

アイルランドを舞台に、
IRAの殺し屋を主人公にした2014年の海外戯曲を、
翻訳芝居の演出に長けた小川絵梨子さんが演出し、
主役を人気者の松坂桃李さんが演じた舞台が、
今世田谷パブリックシアターで上演されています。

これは3幕のお芝居で、
それぞれ別の場面で、
結果として登場人物全てを、
主人公が殺してしまう、
という趣向になっています。

それ自体はなかなか面白いのですが、
台詞で心の揺れ動きをレトリックで表現する、
という感じのお芝居で、
ジェイムズ・ジョイスが出て来たり、
パンクロックもシェイクスピアも出て来たりするので、
翻訳劇としてはかなりハードルが高く、
とても日本で上演して楽しめる、
という作品ではありませんでした。

IRAの殺し屋というと、
マクドナーの「ウィー・トーマス」が印象深いのですが、
長塚圭史さんによる翻訳上演は、
外連味たっぷりで、
前半殺し屋がいつ銃を撃つのか、
それだけでワクワクする感じがありました。
またストーリー自体にもひねりがあり、
予期せぬ展開やブラックユーモア、
風変わりなキャラなどに満ちていて、
それが翻訳劇の退屈さをすくい取っていました。

そうしたワクワクが、
今回の上演には全くありません。

小川さんの演出は堅実なもので、
オペラを彷彿とさせるような欧米的なセットが美しく、
休憩のない2幕から3幕への転換を、
それ自体見せ場にするという趣向など、
さすが、と感じる部分はあったのですが、
いかんせん素材が地味過ぎて、
とても娯楽劇として成立してはいませんでした。

キャストも皆熱演ではあるのですが、
台詞で心理を語るという感じのお芝居なので、
元々翻訳調で不自然な台詞を、
喋るだけで精一杯という感じがあって、
台詞の堅さを超えた生の実感のようなものを、
舞台に漂わせるまでには至っていませんでした。

主役の松坂さんは熱演で、
これまでとはまた違った側面を見せていましたから、
ファンの方には見る価値のある作品だったと思いますが、
翻訳劇の上演としては、
「どうして、こんなものを選んでしまったの?」
という違和感が最後まで抜けませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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