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睡眠中の照明と肥満との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
睡眠中の人工照明の肥満リスク.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
寝ている時の人工照明と、
肥満リスクとの関連についての論文です。

睡眠時間が短いと太りやすいというのは、
これまでの複数の疫学データにおいて、
ほぼ実証されている事実です。

睡眠が不安定であるということは、
夜間に抑制されていないといけない食欲が、
抑えられないということでもありますし、
日内リズムの乱れ自体が、
エネルギー消費や脂肪代謝に関わる、
多くのホルモンや生体物質に影響を与えます。

それでは、
テレビを点けたままで寝ていたり、
部屋の照明を点けたままで、
眠っていることと、
暗い部屋で眠ることとは、
身体に与える影響に何か差があるのでしょうか?

動物実験においては、
明るい中で睡眠を取ることは、
体内時計を狂わせ、睡眠時間を短縮させて、
肥満などの代謝異常の要因となると考えられています。

しかし、人間においても同様のことが成り立つかどうかは、
まだ明らかではありません。

そこで今回の研究では、
アメリカとプエルトリコにおいて、
登録時に35歳から74歳の43722名を、
平均で5.7年観察し、
登録時及び経過中に発症した肥満や内臓脂肪の過剰と、
睡眠時の人工照明やテレビの有無との関連を検証しています。

その結果、
暗い中や室内灯での睡眠と比較して、
照明を点けたままやテレビを点けたままで睡眠を取ると、
肥満のリスクは有意に増加していて、
観察期間中の肥満発症リスクは、
19%(95%CI: 1.06から1.34)有意に増加していました。

この人工照明時の肥満リスクの増加は、
睡眠時間や睡眠の質などの因子を補正しても残っていて、
単純に部屋が明るいと睡眠時間が短くなる、
ということではなく、
もっと本質的な要因があることが示唆されました。

今回初めて大規模な臨床データにより、
睡眠中の人工照明と肥満との関係が示された意義は大きく、
今後そのメカニズムを含めて、
より詳細な検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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1日何歩歩くのが健康的か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
歩数と健康との関係.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
歩く歩数と健康との関係を検証した論文です。

健康のためにはよく歩くのが良い、
というのは健康の専門家かそうでないかに関わらず、
多くの人が言っていることです。

最近ではスマホやアップルウォッチなどの、
所謂ウェアラブル端末が普及して、
簡単に毎日の歩数が計れるようになり、
よりその健康効果が一般に広まりを見せています。

そこで問題となるのは目標とするべき歩数です。

馴染みのあるのが1日1万歩歩きましょう、という基準で、
皆さんも何度もお聞きになったことがあると思います。

上記文献の記載によると、
アメリカにおいても同様の基準がポピュラーで、
意外にもその元になっているのは、
日本の万歩計の会社の宣伝にあるようです。

ただ、実際にはその根拠は、
あまり精度の高い研究に裏付けられたものではありません。

そこで今回の研究では、
アメリカで低用量アスピリンとビタミンEの、
成人女性における心血管疾患予防効果を検証した、
疫学研究のデータを活用して、
1日の歩数と生命予後との関連を検証しています。

平均年齢72歳の16741名を4.3年観察した結果として、
1日の歩数を4群に分けて検証したところ、
最も少ない群(中間値で2718歩)と比較して、
最も多い群(中間値で8442歩)は、
総死亡のリスクが42%(95%CI: 0.38から0.88)、
有意に低下していました。
これは歩く速度などは補正した結果です。

この歩数による総死亡リスクの低下は、
7500歩程度までは歩数が増えるほど大きくなりますが、
それを超えると頭打ちになっていました。
また、歩く速度との関連をみたところ、
歩数の方が生命予後への影響は大きく、
歩行速度との関連はあまり明確ではありませんでした。

日本で最近報告された、
中之条研究という疫学データでは、
1日8000歩で20分程度の早歩きを混ぜるのが、
心血管疾患の予防には一番有効であった、
という結果になっていました。

今回のデータと中之条研究には一致する点が多く、
高齢女性の生命予後の改善のためには、
どうやら1日7000から8000歩程度が、
平均すると最も有用性は高いと言っていいようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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SGLT2阻害剤2剤の直接比較臨床試験(2019年韓国のデータ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
糖尿病治療4種併用療法の効果.jpg
2019年のDiabetes Research and Clinical Practice誌に掲載された、
2種類のメカニズムは同じ糖尿病治療薬を、
通常治療への上乗せで直接比較した臨床試験の論文です。

2型糖尿病の飲み薬としては、
メトホルミンが世界的に第一選択薬ですが、
その単独の治療で十分な血糖コントロールが達成されない場合には、
DPP4阻害剤やピオグリタゾン、
SGLT2阻害剤やSU剤などの単独もしくは組み合わせての上乗せが、
治療として考慮されます。

現実的にはこのうちの3剤以上の併用も、
決して稀なことではありません。

これらの薬剤のうち、
現時点で最も新しいのは、
尿へのブドウ糖の排泄を促進する作用を持つ、
SGLT2阻害剤で、
最近血糖値を低下させるばかりではなく、
心血管疾患のリスクの低下や、
生命予後の改善に関する有効性を示すデータが、
複数報告されて非常に注目を集めています。

SGLT2阻害剤には多くの薬剤が存在していますが、
その全てが同じような有効性を確認されている、
という訳ではありません。

最も信頼のおけるデータがあるのは、
エンパグリフロジン(商品名ジャディアンス)で、
次にデータが多いのがカナグリフロジン(商品名カナグル)ですが、
こちらは糖尿病性壊疽が治療群でより多かった、
というような安全上の危惧を感じさせる報告もあります。
ダパグリフロジン(商品名フォシーガ)も広く使用されている薬ですが、
その心血管疾患の予後改善効果は、
今のところ心血管疾患の既往があるような集団でのみ確認されています。

今回の韓国での臨床研究は、
メトホルミンとSU剤、DPP4阻害剤を充分量投与していても、
血糖コントロールが不良である2型糖尿病の患者さんに対して、
エンパグリフロジンもしくはダパグリフロジンを上乗せで使用して、
その安全性と有効性とを直接比較したものです。

SGLT2の複数の薬剤を、
通常の臨床と同じような条件で、
直接的に比較したような試験はこれまでにあまりなく、
偽薬を使うような厳密な方法の研究ではないので、
その信頼性はそれほど高いものではありませんが、
日本の臨床とかなり似通った条件での検証であるので、
臨床医としては興味深い研究です。

対象は18歳から80歳の2型糖尿病の患者さんで、
メトホルミンを1日2000ミリグラム、
DPP4阻害剤をその薬の上限量、
SU剤のグリメピリドを1日8ミリグラム、
の3剤併用療法を行っていても、
HbA1cが7.5%以上(12.0%未満)とコントロール不良である350名で、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はエンパグリフロジンを1日25ミリグラム、
他方はダパグリフロジンを1日10ミリグラムという上限量で使用して、
52週間の治療を継続してその効果を比較しています。

これは他の薬剤は日本の使用量とほぼ同じですが、
グリメピリドの1日8ミリというのはかなり多い量で、
現状日本の臨床で、ここまでSU剤を増量することは、
稀だと思います。
添付文書の上限量は6ミリですが、
1から2ミリ程度までにとどめるのが、
少なくとも長期的には一般的な考えであると思います。

その結果、
両群でHbA1c、空腹時血糖は、
共に有意に低下していましたが、
その低下幅はエンパグリフロジンがダパグリフロジンを、
有意に上回っていました。
両群の有害事象には明確な差はなく、
体重や血圧の減少効果も同等でした。

このように今回の検証では、
ダパグリフロジンと比較して、
エンパグリフロジンの有効性がほぼ確認されていて、
この結果は日常臨床における薬剤選択においても、
有益な情報を与えてくれるもののように思います。

今のところSGLT2阻害剤の第一選択は、
ほぼエンパグリフロジンと考えて大きな間違いはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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糖尿病のレガシー効果は本当か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
レガシー効果.jpg
2019年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
血糖コントロールの「レガシー効果」を検証した論文です。

レガシー効果(Legacy Effects)というのは、
この場合糖尿病のコントロールをある時期厳密に行うと、
その影響がコントロールを緩めても長期間持続する、
という現象のことです。

血糖値をたとえば5年間、
徹底して薬剤や生活指導でコントロールして、
糖尿病のない人と同じ状態にしておくと、
その後の血糖値はより上昇しても、
そうした厳密なコントロールの期間のない患者さんと比較して、
心血管疾患のリスクや生命予後にも良い影響が持続する、
という現象です。

この糖尿病の領域におけるレガシー効果が、
実際にあるのかどうか、という点については、
まだ結論が出ていません。

何度か今までにも紹介していますが、
血糖コントロールをより厳しくして、
理想的にはほぼ正常の血糖値を実現すれば、
糖尿病の長期合併症として最も問題となる、
心血管疾患のリスクが糖尿病のない人と同じかそれに近くなるのでは、
という考え方があり、
それに基づいて通常の血糖コントロール(概ねHbA1cを7.5%以下にするのが目標)と、
より厳密な血糖コントロール(HbA1cを6%未満にすることを目標)と比較する、
大規模臨床試験が複数実施されました。

しかし、ほぼ全ての試験において、
厳密なコントロールを行なっても、
通常の治療と比較して、
心血管疾患のリスクや生命予後に、
明らかな改善は認められませんでした。
むしろ、生命予後は悪化する、
というような結果すらあったのです。

この原因は全て明らかになっているという訳ではありませんが、
人為的に血糖を下げることによる、
低血糖の発生などの影響があると想定されています。

ただ、その一部の臨床試験の追跡調査において、
厳密な治療を行なった期間には差がつかなかったものの、
治療後の追跡期間においては、
厳密にコントロールした方が予後が良かった、
という結果が報告されたのです。

これは厳密なコントロールを一定期間行ったことによる、
血管などへの良い影響が、
その後の血糖は上昇しても、
遺産(レガシー)のように残っている、
という可能性を示唆するものです。

たとえば、1型糖尿病の患者さんを対象とした、
DCCTと呼ばれる大規模臨床試験の追跡結果では、
厳密なコントロール期間の終了後に、
心血管疾患のリスクに差が付いています。

また、新たに2型糖尿病と診断された患者さんを対象とした、
UKPDSというイギリスの大規模臨床試験の追跡結果では、
こちらも心血管疾患リスクと生命予後に、
厳密なコントロールは終了した時期において、
有意な差が見られています。

その一方でACCORD試験やADVANCE試験という、
比較的重症で高齢の患者さんを対象とした同様の臨床試験においては、
このレガシー効果は認められていません。

今回の研究は、
アメリカの退役軍人の2型糖尿病の患者さん1791名を対象として、
通常の血糖コントロールと厳密なコントロールの効果を、
中間値で5.6年の治療期間で比較した、
VADTと呼ばれる臨床試験の追跡調査の結果をまとめたものです。

この試験はその診断から平均で11.5年が経過した、
比較的高齢で罹病期間の長い患者さんを対象している点がその特徴です。

治療強化期間においては、
矢張り治療を厳密にしても予後には差がなかったのですが、
10年(治療強化期間を含む)の追跡調査の結果では、
強化治療群で約17%、
通常治療群より心血管疾患リスクの低下が認められました。

つまり、レガシー効果の可能性が期待されたのです。

今回の検証はより長期、15年の観察期間での結果をまとめたものです。

その結果、
15年の観察期間においては、
心血管疾患のリスクや死亡リスクにおいて、
強化コントロールと通常コントロールとの間で、
有意な差は認められませんでした。

つまり、レガシー効果は今回は否定されたのです。

どうやら、
糖尿病になってまだ間もない時期においては、
HbA1cを6%未満にするような強化コントロールを、
一定期間続けることにより、
より高齢になってコントロールを緩めても、
その影響は持続する可能性が高いのですが、
罹病期間が長く心血管疾患を発症しているようなケースでは、
むしろ血糖コントロール自体は緩めて、
血圧や脂質、禁煙など、
他の心血管疾患の予防策に軸足を移した方が、
効果が見込める可能性が高いようです。

若年の糖尿病の患者さんには極力厳密なコントロール、
高齢になったら、むしろ低血糖に気を付けてコントロールを緩め、
心血管疾患のリスクを低下させるという報告のある、
GLP1アナログやSGLT2阻害剤の使用に力点を置くことが、
現状はベターな選択と言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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超加工食品の心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スーパー加工食品の心血管疾患リスク.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
超加工食品の心血管疾患リスクについての論文です。

以前にもご紹介したことがありますが、
超加工食品(ultra-processed foods)というのは、
一般にはまだ耳慣れない言葉かと思います。
これは2016年に国連の関連する食品についての会議で提唱されたもので、
食品をその加工の度合いによって、
4種類に分類するNOVA分類がその元になっています。

このNOVA分類では、
食品をその加工度によって、
第1群;加工されていないか、最小限しか加工されていない食品
第2群;加工された調味料
第3群;加工食品
第4群;超加工食品
の4つに分類しています。

第1群は果物や野菜や肉、豆は牛乳など、
その由来が見て分かるような食品のことです。
第2群は砂糖や塩などの加工された調味料です。
第3群は一定の加工をされた食品のことで、
たとえば缶詰の桃や自然の製法で作ったパンやチーズ、
ミックスナッツやミックスベジタブルなどがそれに当たります。

そして、第4群の超加工食品は、
通常5種類以上の食品が組み合わされ、
そこに複数の調味料などが加えられたものを意味しています。
こうした食品は他の群の食品では、
使用されないような添加物や化学物質が添加されることが通常です。

これは要するに、
僕達がお店などで手に入れることの出来る、
食事の材料となる食品の分類なのです。

たとえばラーメンを食べようと思った時に、
その材料として、
自然の岩塩などを調味料に使い、
自然の小麦や豚肉、野菜などを調達して、
それを組み合わせて調理すれば、
第1群のみを使用したことになりますし、
塩や砂糖などの調味料は市販の物を使うと、
第2群も使用したことになります。
袋詰めの麺を買い、
スーパーの焼き豚などを買って、
それを組み合わせてラーメンを作ると、
第3群も使用したことになり、
最初からカップ麺やインスタントラーメンを買って、
それを使用すると第4群を使ったことになるのです。

健康のためには、
極力超加工食品を減らそう、
というのがこの国連の会議の、
基本的な考え方です。
超加工食品は料理の手間を減らしてくれますから、
確かに便利ですが、
最初からパッケージ化されているので、
その成分を確認することは出来ませんし、
栄養バランスの調節も難しくなります。

添加物を全て危険視するような考え方にも問題はありますが、
人間の手間を省くために、
本来は必要のない物質を、
多く使用してそれを食べるということ自体が、
人間本来のあり方ではないことも、
また事実だと思います。

それでは実際に超加工食品を多く食べることで、
健康上の害はどの程度あるのでしょうか?

2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
10万人以上の住民の栄養調査の結果と、
その後の癌の発症との関連を検証したフランスの疫学データでは、
トータルな癌と乳癌の発症リスクは、
超加工食品の摂取量が10%増加すると、
概ね10%有意に増加することが確認されました。
大腸癌と前立腺癌については、
同様の関連は認められませんでした。

今回の研究は同じ疫学データを元にして、
今度は超加工食品の摂取と、
心血管疾患のリスクとの関連を検証したものです。

その結果、
105159名を中間値で5.2年観察したところ、
食品中の超加工食品が10%増加すると、
心血管疾患のリスクは12%(95%CI: 1.05から1.20)
有意に増加していました。
食品の中では特に塩辛いスナック菓子が、
1日100グラム余計に摂取することで、
そのリスクが2.03倍(203%)という最も大きな増加を示していました。

このように含まれている栄養素は、
そう大きく変化していなくても、
超加工食品を摂取することにより、
癌に加えて心血管疾患のリスクも明確に増加しており、
今後その比率を下げるための施策が、
色々な分野で問題となることになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ミネラルを含む飲み水が血圧に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
バングラデシュのミネラル濃度と高血圧.jpg
2019年のJournal of the American Heart Association誌に掲載された、
飲料水のミネラル濃度が血圧に与える影響についての論文です。

海から近い地域の地下水には、
塩分やカリウム、
マグネシウムなどのミネラルが多く含まれていて、
そうした地域の飲料水にも、
内陸部の飲料水と比較すると多くのミネラルが含まれています。

こうした飲料水のミネラル分は、
住民の健康にどのような影響を与えるのでしょうか?

相反する2つの見解があります。

ミネラルを多く含む飲料水には、
塩分が多く含まれているので、
それで血圧が上昇するというリスクが考えられます。

その一方で、同時に含まれているカリウムやカルシウム、
マグネシウムなどのミネラル分には、
むしろナトリウムの排泄を促して、
血圧の低下に繋がるという可能性も考えられます。

一体どちらが正しいのでしょうか?

今回の研究はバングラデシュにおいて、
6487名の住民の血圧の数値と、
季節や地域により変動する飲み水のミネラル濃度との、
関連性を検証したものです。

その結果、
特にカルシウムとマグネシウムを多く含む飲み水を使用している地域では、
よりミネラル濃度の低い地域と比較して、
血圧値は有意に低く、
高血圧の発症リスクも有意に低下していました。

ミネラル分の多い飲み水は、
塩分も多いのですが、
カルシウムやマグネシウムの多いことが、
どうやら塩分の作用を相殺して、
血圧にはむしろ良い影響を与えるものであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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塩分摂取量と肥満との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
塩分と肥満.jpg
2019年のthe American Journal of Clinical Nutrition誌にウェブ掲載された、
塩分の摂取量と肥満との関連についての論文です。

塩分の摂取量が多いと、
血圧が上昇し易くなり、
心血管疾患のリスクを増加させることは、
その程度や摂取量はともかくとして、
大筋ではほぼ確立した事実です。

最近幾つかの報告で、
塩分の摂取量と肥満や過体重との間に、
関連があるのではないかという知見が得られています。

糖質や脂質、総カロリーが多いと、
肥満に結び付くということは常識的に想定されますが、
塩辛いものを食べるだけで、
カロリーは変わらなくても太りやすくなるというのは、
にわかに納得はいかない感じがします。

結局カロリーが多かっただけの話ではないでしょうか?

これまでの研究では、
塩分摂取量を推測する方法が、
食事のアンケートだけであったり、
1回のみの尿のナトリウム濃度測定であったりしているので、
本当の日々の塩分の摂取量が、
反映されているないという可能性が高かったのです。

そこで今回の研究では、
日本、中国、イギリス、アメリカの4か国で行われた、
高血圧と食事との関連を検証する国際的な疫学研究のデータを活用して、
時期をおいて2回測定された尿中ナトリウム濃度と、
肥満との関連を検証しています。

対象者は登録時に40から59歳の、
日本が1145名、中国が839名、イギリスが501名、アメリカが2195名、
トータル4680名の一般住民です。

摂取カロリーなどを補正した結果として、
尿中ナトリウムから推測した塩分摂取量が、
1日当たり1グラム多いと、
体格の指標であるBMIは、
日本で0.28、中国で0.10、イギリスで0.42、アメリカで0.52、
それぞれ有意に増加していました。
また同様に塩分摂取量が1日1グラム多いことにより、
過体重と肥満になるリスクは、
日本で21%、中国で4%、イギリスで29%、アメリカで24%、
それぞれ有意に増加していました。

要するに人種差や地域差はおそらくあるものの、
塩分の摂取量が多いほど、
過体重や肥満が多いことはほぼ一致した傾向が認められたのです。

それでは、
何故塩分を摂ると肥満になるのでしょうか?

塩辛いものが好きな人はカロリーも多くなりやすい、
というのがシンプルな推論です。

勿論データとしてはカロリーの違いを補正しているのですが、
総カロリーは食事調査を元にして算出しているので、
それほど正確ではない可能性があるからです。

ただ、近年ネズミの実験などで示された知見として、
塩分摂取量を多くすると果糖の分解が抑制されて果糖が増え、
それが脂肪の蓄積を促進するというものがあります。
また、脂肪細胞のインスリン感受性を高め、
それにより脂肪細胞の肥大化を招く、
というような報告もあります。

今回の4か国調査では、
中国だけが塩分摂取量と肥満との関連が薄いのですが、
その理由は良く分かりません。

いずれにしても塩分摂取量と肥満との間に、
カロリーに関わらない関連があるかも知れない、
という今回の知見は非常に興味深く、
今後の研究の進捗を見守りたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コーヒーと不妊治療の成功率との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには出掛ける予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーと不妊治療.jpg
2019年のFertility and Sterility誌に掲載された、
コーヒーと不妊治療の成功率との関係という、
ユニークなテーマを検証した論文です。

不妊治療の成功率が環境要因に左右される部分がある、
というのは比較的知られていることで、
ストレスとの関連なども指摘をされることがあります。

ただ、明確にどのような生活習慣が、
妊娠の成功率を上げるのか、
というような点については、
まだあまり明確なことが分かってはいないと思います。

コーヒーのようなカフェインを多く含む飲料は、
妊娠中にはあまり良い影響をもたらさないと考えられていますし、
カフェインの多量摂取は女性ホルモン濃度を下げ、
生理周期を短くするというような報告もあるので、
これまでの常識としては、
不妊治療中もあまり摂ることは望ましくない、
というのが一般的でした。

ただ、最近になってコーヒーに生命予後を改善し、
抗酸化作用や腎臓の血流増加作用などにより、
心血管疾患の予防効果もあることが、
次々と明らかになり、
それであればむしろコーヒーを適度に摂取した方が、
不妊治療にも良い影響を与えるのではないか、
という考え方も否定出来ないようになりました。

そこで今回の研究では、
デンマークの単独の専門施設において、
不妊治療を行ったトータル1708名の女性を対象として、
コーヒーの摂取量と治療の成功率との関連を比較検証しています。

内訳は人工授精(IUI)を施行した1511名と、
体外受精を(IVF)もしくは顕微授精(ICSI)を施行した2870名、
凍結胚移植周期を施行した1355名です。
(個人が複数の治療をしています)

その結果、
人口授精施行群においては、
コーヒーを殆ど飲まない場合と比較して、
コーヒーを1日1から5杯飲む習慣のある人は、
妊娠の成功率が1.49倍(95%CI: 1.05から2.11)、
出産の成功率が1.53倍(95%CI: 1.06から2.21)、
それぞれ有意に増加していました。
それ以外のより高度な不妊治療については、
コーヒーの摂取量との有意な関連は認められませんでした。

この結果をもって、
コーヒーが不妊治療に有効とは言えませんが、
1日5杯程度までの摂取については、
少なくとも明確に悪い影響を与える、
という可能性は否定的で、
適度な摂取は問題ないと考えても良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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トランスジェンダーと乳癌リスク(性転換後のリスクは?) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
トランスジェンダーと乳癌リスク.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
性別を変更した場合の乳癌リスクの変化についての論文です。

性差というのは、
病気のリスクという点では、
医学で重要視されて来た分類です。

かなり多くの病気において、
その原因は分かっているものもあれば不明のものもありますが、
性別による発症率の差があることは、
間違いのない事実であるからです。

乳癌は性差のある病気の代表的なもので、
女性で発達した乳腺組織が、
女性ホルモンのよる長期の刺激を受けることにより、
発症することが分かっていて、
そのため女性に圧倒的に多く、
男性でも発症することはありますが、
極めて少ないというタイプの癌です。

従って、乳癌検診は女性にはありますが、
男性にはありません。

ただ、トランスジェンダーの方が増え、
女性から男性に、
また男性から女性に、
性別の転換が行われるようになると、
性別と病気との関係という概念も揺らいて来ます。

生物学的性別としては男性として生まれ、
後から獲得された性別に合わせて女性となり、
女性ホルモン剤を使用しているというようなトランスジェンダーの女性では、
乳癌のリスクは通常の女性とどのように違うのでしょうか?

今回のオランダの疫学研究では、
2260名のトランスジェンダーの女性(生物学的男性に生まれ女性に性転換)と、
1229名のトランスジェンダーの男性(生物学的女性に生まれ男性に性転換)を、
性別の変わらない女性や男性と比較して、
その乳癌リスクの違いを比較検証しています。

その結果、
2260名のトランスジェンダーの女性を、
長期間観察したところ15例の浸潤性乳癌が診断され、
女性ホルモン療法の継続期間の中央値は18年でした。

これをマッチングした性別の変わらない男性と比較すると、
乳癌のリスクは46.7倍(95%CI: 27.2から75.4)有意に増加していました。
ただ、これを性別の変わらない女性と比較すると、
0.3倍(95%CI:0.2から0.4)と有意に低値でした。
発生した乳癌の多くは乳管由来で、
女性ホルモンの受容体は83%で陽性でした。
またマーカーのHER2は8.3%で陽性でした。

トランスジェンダーの男性1229名の解析では、
男性ホルモン使用期間の中間値が15年で、
4名の浸潤性乳癌が診断され、
そのリスクは性別の変わらない女性と比較すると、
0.2倍(95%CI: 0.1から0.5)と有意に低値となっていました。

このように、
出生時の性別は男性のトランスジェンダーの女性で、
乳腺が存在していて女性ホルモンの使用が継続すると、
中間値で18年という比較的短期間でも乳癌が発症していて、
そのリスクは性転換していない女性と比較すれば少ないものの、
元の性別の男性と比較すれば46倍以上という高率になっています。

これは要するに、
乳癌というのは性別に特定の癌ではなくて、
女性ホルモンの影響がある程度の期間ありさえすれば、
発症する癌であるということになります。

上記文献の解説では、
乳癌検診の考え方としては、
その時点で女性ホルモンに曝露されていれば、
トランスジェンダーの女性であってもそうでなくても、
同じように乳癌検診を受けることが必要にして充分ではないか、
というように記載されています。

性別の転換や長期のホルモンの使用が、
格別特殊なことではなくなった現在、
性差のある病気のリスクについては、
色々と検証をし直す必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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COPDの急性増悪に対する抗菌剤使用の適応について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COPDの抗菌剤使用にCRPを利用する。.jpg
2019年のEuropean Respiratory Journal誌に掲載された、
最近問題になることの多い、
呼吸器疾患に対する抗菌剤の適応についての論文です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、
喫煙による呼吸器の病気の代表で、
慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていた病気を総称したものです。

この病気の進行予防としては、
禁煙が勿論必須ですが、
一旦進行した病気は禁煙だけで元に戻る訳ではなく、
それと共に病状の悪化を防ぐ治療が必要です。

その目的のために現行使用されているのが、
吸入の抗コリン剤や気管支拡張剤、吸入ステロイドなどの薬剤です。

COPDの予後において重要な役割を果たしているのが、
急性増悪と呼ばれる症状の急激な悪化です。

この急性増悪のきっかけとしては、
細菌やウイルスによる感染症が大きな役割を果たしています。

COPDの患者さんは平均で年間に1.5回の急性増悪を来たし、
その25%においてウイルスと細菌の混合感染が診断された、
というデータもあります。

もし感染の原因が細菌であれば、
抗菌剤を使用することにより急性増悪時の症状の改善に、
一定の有効性が期待出来ます。
一方でウイルス感染のみであれば、
抗菌剤は有効ではなく、
今問題とされている「抗菌剤の乱用」
ということになってしまいます。

それでは、患者さんの症状や簡単な検査によって、
細菌感染である可能性を診断することが出来るものでしょうか?

現在のCOPDのGOLDと呼ばれるガイドラインにおいては、
患者さんに感染症状があり、
急性増悪時に緑色などの膿のような痰(膿性痰)があれば、
細菌感染の可能性が高いので、
抗菌剤の使用を検討する、とされています。

ただ、ウイルス感染に伴い膿性痰の出ることもありますし、
患者さんが「緑色の汚い痰が出る」と言っても、
それが客観的な膿性痰ではないことも少なくはありません。

そこでもう1つ参考になる可能性があるのは、
血液の白血球の性状やCRPなどの炎症反応です。

今回の臨床研究では、
オランダの2カ所の医療機関において、
COPDの急性増悪で入院となった患者さんをくじ引きで2群に分け、
一方の群の101名は炎症反応のCRPを測定して、
その数値が5mg/dL以上の時のみ細菌感染と判断して抗菌剤を使用し、
他方の群の119名は膿性痰の有無で抗菌剤を使用して、
両群の経過を比較しています。

その結果、
CRPで抗菌剤の使用を判断した群では、
抗菌剤の使用比率は31.7%であったのに対して、
膿性痰での判断では46.2%と有意に高くなっていました。

その一方で治療後30日の時点での改善率や急性増悪の再発率には、
両群で有意な差は認められませんでした。

要するにCRPを指標にして抗菌剤の使用を判断した方が、
抗菌剤の使用は抑制され、
不適切な使用を減らす意味では一定の効果が期待されます。

ただ、予後には特に変化はなく、
平均では両群とも30日程度で次の急性増悪が見られていることから、
治療が奏功している率はそれほど高いものではなく、
予後の更なる改善のために、
より有効な治療の判断が求められるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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