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大豆はコレステロールを下げるのか?(2019年累積メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大豆の健康効果.jpg
2019年のJournal of the American Heart Association誌に掲載された、
大豆のコレステロール降下作用を検証した、
メタ解析の論文です。

大豆は良質の蛋白源であると共に、
女性ホルモン様作用を持つイソフラボンを含み、
心筋梗塞や脳卒中、骨粗鬆症の予防効果などが報告されています。

アメリカのFDAは1999年に、
その時点での臨床データを検証し、
大豆にコレステロール降下作用があると認め、
「大豆は心臓に良い」という健康表示を許可しました。

ただ、その後発表された臨床データにおいては、
コレステロール低下作用はあまり明確ではなく、
2017年にはFDAは大豆の健康表示の取り消しを検討している、
という発表をしました。

今回の研究はカナダの研究者によるもので、
FDAが今回の取り消し検討の根拠としている、
臨床試験46件のデータを、
累積メタ解析という年代順にデータを1つずつ解析し、
積み上げてゆくという手法で再解析し、
その結果を検討しています。

その結果、
1999年にFDAが根拠としたデータの再解析では、
大豆の摂取によるLDLコレステロールの低下は、
中央値で6.3mg/dLでしたが、
1999年以降のデータを解析しても、
4.2mg/dLから6.7mg/dLの範囲で推移していました。

つまり、累積メタ解析という手法で検証する限り、
1999年時点では明らかであった、
大豆によるコレステロール降下作用が、
それ以降の臨床データにより否定された、
というFDAの言い分は根拠がなく、
大豆によるコレステロール降下作用は認められるものの、
スタチンのような薬の効果と比較すれば、
小さな効果に留まる、
という判断が妥当であるようです。

要するに1999年の時点では大豆の健康効果は、
FDAによりやや過大に評価されていたものの、
今回の決定は今度は過小評価につながっているというのが、
上記論文の言いたいことであるようです。

真相はどうなのでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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プロの運動選手は長生きなのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メジャーリーガーと生命予後.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌のレターですが、
メジャーリーガーの寿命と病気を調べて、
一般男性と比較したユニークな研究です。

プロのスポーツ選手が健康かどうか、
というのはよく議論になるところです。

運動は健康習慣の柱の1つであることは間違いがなく、
その意味では運動を仕事にしているスポーツ選手は、
普通の人より健康的であると言えます。

この場合の健康というのは、
生活習慣病にならないということですから、
結果として健康長寿になる、
ということになります。

その一方でスポーツ選手は体を酷使するので、
怪我が多く、むしろそのために、
健康を害することが普通の人より多いのでは、
という可能性も指摘されています。

仮にこちらの要素の方が大きいとすると、
スポーツ選手は却って短命で病気も多い、
という可能性もある訳です。

果たしてどちらが正しいのでしょうか?

それは勿論、スポーツの種類やランクによっても、
違う事項であると想定されます。

今回の研究はアメリカのメジャーリーガーを対象としたもので、
歴代の16637名の選手を対象とした、
このジャンルでは非常に大規模なものです。

平均的なアメリカ男性とメジャーリーガーを比較したところ、
メジャーリーガーの総死亡のリスクは、
平均的アメリカ男性と比較して、
24%(95%CI; 0.73から0.78)有意に低下していました。

個別の病気による死亡リスクについても、
認知症などの神経変性疾患を除いては、
一般男性よりメジャーリーガーではリスクが低下していました。

メジャーリーガーとして活躍する期間が長いほど、
総死亡のリスクは低下していましたが、
肺癌、血液系の癌、そして皮膚癌については、
期間が長いほどリスクが増加する傾向を示していました。
これは排気ガスの吸引や、日光を浴びる時間が長いことが、
関連している可能性が示唆されますが、
明確な原因までは今回の検証からは分かりません。

ピッチャーやキャッチャーなどのポジションと、
死亡リスクとの関連を見てみると、
ピッチャーと比較した時、
ショートとセカンドの内野手は、
総死亡のリスクが19%(95%CI: 0.72から0.91)、
癌による死亡のリスクが22%(95%CI:0.62から0.98)、
呼吸器疾患による死亡のリスクが44%(95%CI: 0.37から0.84)、
それぞれ有意に低下していました。
また、キャッチャーはピッチャーと比較して、
泌尿生殖器系の疾患による死亡リスクが、
2.52倍(95%CI:1.19から5.35)有意に増加していました。

このように概ねメジャーリーガーは、
そのキャリアが長いほど、
多くの病気のリスクが低下しており、
長生きである傾向が認められました。
ただ、神経変性疾患に関してはそうした傾向はなく、
またキャリアが長いと一部の癌のリスクは増加していました。
ポジション毎の比較では、
比較的怪我の少ないポジションである内野手の死亡リスクが低く、
骨盤周囲の外傷を受けやすいキャッチャーでは、
泌尿生殖系の病気による死亡リスクが、
ピッチャーの2倍以上という高値を示していました。

このように習慣的な運動が生命予後に良いことは、
ほぼ間違いがないのですが、
ハードな練習や試合を行なうアスリートにおいては、
怪我なども多く、
ホコリなどの吸引や紫外線の曝露も多いために、
病気によっては一般の人よりそのリスクが増加する、
ということもあるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(補足)
論文の画像が間違っていました。
コメントでご指摘を受け取り急ぎ修正しました。
(令和1年8月2日午後10時)
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SGLT2阻害剤の尿路感染症リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤の尿路感染症リスク.jpg
2019年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
最近注目されている糖尿病治療薬の、
副作用の頻度についての論文です。

SGLT2阻害剤というのは、
最近非常に評価の高い2型糖尿病の飲み薬で、
商品名としては、ジャディアンス、スーグラ、
フォシーガ、ルセフィ、デベルザ、カナグル、
などがそれに当たります。

この種類の薬は尿に排泄されるブドウ糖の量を増やし、
血液中の糖を減らすというメカニズムを持ち、
これまでのインスリンの分泌を促進したり、
その効きを良くしたりする薬剤とは、
根本的にその仕組みが異なっています。

当初はあまり糖尿病の治療において、
本質的な薬ではないと考えられましたが、
実際に使用がされてみると、
長期の心血管疾患のリスクを低下させたり、
生命予後を改善するなど、
これまでの糖尿病治療薬では、
あまり明確な効果がなかった部分において、
有効性を示す報告が複数発表されて、
非常に注目を集めました。

ただ、そのメカニズムから、
幾つかの副作用や有害事象が危惧されていて、
その1つが尿路感染症の増加や悪化です。

このタイプの薬は尿糖を増加させるので、
糖を栄養とする細菌が、
尿中で増加する可能性が想定されます。

実際に開発時の臨床試験においては、
尿路感染症が重篤なものを含めて、
有害事象として報告されています。

ただ、それでは通常の臨床において患者さんに使用した場合に、
他の競合する糖尿病治療薬と比較して、
本当に尿路感染症が多く発症するのか、
という点については、
これまでにあまり信頼のおけるデータがありませんでした。

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
健康保険の請求データを解析することにより、
SGLT2阻害剤を新規に開始した場合と、
DPP4阻害剤とGLP1アナログという、
こちらもその有用性が確認されている糖尿病治療薬を、
同じように開始した場合とを比較して、
尿路感染症の発症リスクを比較検証しています。
これは後からデータを解析しただけのものですが、
それぞれの比較において12万人余が登録された、
大規模なものです。

その結果、
入院を要したり、腎盂腎炎や敗血症を来すような、
重篤な尿路感染症の発症率においても、
外来で抗菌剤を処方されるような、
軽症の尿路感染症の発症率においても、
SGLT2阻害剤はDPP4阻害剤やGLP1アナログと比較して、
その有意な増加を認めませんでした。
GLP1アナログに至っては、
むしろ重篤な尿路感染症がSGLT2阻害剤より多くなっていました。

このように、
今回の検証では、
一般臨床でのデータにおいて、
SGLT2阻害剤は尿路感染症を増加させていませんでした。

これをもってSGLT2阻害剤が安全とも言い切れませんが、
これまでイメージとして存在していた、
「SGLT2阻害剤は尿路感染症を増加させる」
という常識は、
あまり根拠のないものと考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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食事と2型糖尿病リスクとの関係(2019年のアンブレラレビュー) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2型糖尿病と食事の関連.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
2型糖尿病を予防する食事についての論文です。

2型糖尿病の発症に、
食事などの環境要因が大きく影響していることは、
間違いのない事実です。

ただ、それではどのような食事を摂れば、
最も糖尿病になりにくいのか、
という点については、
多くの臨床データや疫学データはあるものの、
互いに相反するような結果も多く、
データの信頼度も玉石混交で、
あまりクリアな結論が出ているとは言えません。

そこで今回の研究では、
これまでの臨床データや疫学データを、
まとめて解析したメタ解析の複数の論文を、
更にまとめて解析する、
アンブレラレビューと呼ばれる手法により、
これまでの「集合知」としてこの問題を検証しています。

これまでのデータをまとめて解析した結果として、
精製していない全粒穀物の摂取は、
1日の摂取量を30グラム増やすことで、
2型糖尿病の発症リスクを13%(95%CI: 0.82から0.93)、
穀類(シリアル)由来の食物繊維の摂取は、
1日の摂取量を10グラム増やすことで、
2型糖尿病の発症リスクを25%(95%CI:0.65から0.86)、
それぞれ有意に低下させていました。

つまり、全粒穀物を多く摂ることで、
2型糖尿病のリスクを下げることが出来る、という結果です。

また、1日12から24グラムのアルコールの摂取は、
2型糖尿病の発症リスクを25%(95%CI:0.67から0.83)、
これも有意に低下させていました。

つまり、ちょっと議論を呼ぶところですが、
1日1合程度のアルコールは、
糖尿病の予防になるという結果です。

一方で糖尿病のリスクを増加させる食品としては、
赤身肉を1日100グラム摂取することで17%(95%CI:1.08から1.26)、
加工肉を1日50グラム摂取することで37%(95%CI:1.22から1.54)、
ベーコン2枚で107%(95%CI:1.40から3.05)、
砂糖加糖飲料1本で26%(95%CI:1.11から1.43)、
それぞれ2型糖尿病の発症リスクを有意に増加させていました。

このように、
ベーコンやソーセージなどの加工肉が、
糖尿病のリスクとしてかなり大きい、
ということはほぼ間違いがなさそうで、
現状の予防策としては、
白いパンや白米よりも、
玄米や全粒粉のパンを食べ、
加工肉は極力避け、
赤身肉の摂り過ぎにも気を付ける、
というくらいが、
現状は科学的根拠のある糖尿病予防のための食事、
と言って良いようです。
アルコールは1日1合程度はむしろ悪くない、
というデータが多いのですが、
他の病気のリスクは上げる可能性もありますから、
ケースバイケースで考える必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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頭蓋内圧亢進症の診断法の検討 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
頭蓋内圧亢進の診断法.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
脳の外傷や出血に伴う、頭蓋内圧亢進症という、
重篤な合併症の診断法についての論文です。

脳というのはお豆腐くらいの硬さのふわふわしたもので、
それが脳脊髄液という液体に囲まれて、
頭の骨(頭蓋)で出来たお椀の中に浮かんでいる、
というのが脳の実際です。

この脳脊髄液の圧力のことを、
頭蓋内圧と呼んでいます。

頭蓋内圧は、
脳脊髄液が一定量ずつ出入りしながら、
一定の範囲に保たれていて、
ふにゃふにゃの脳を守る働きをしています。
実際には脳自体とその周辺の血管、そして脳脊髄液が、
バランスを取って頭蓋内圧を作っているのです。

しかし、脳が強く揺さぶられて外傷を起こし、
炎症を起こして腫れ上がると、
脳自体の圧力が上昇し、
脳脊髄液の流れも妨害されるので、
頭蓋内圧は上昇します。
すると、バランスが崩れることにより、
脳の血管の圧力は低下して、
脳を流れる血液が減少します。

要するに、
頭蓋内圧が上昇すると、
それだけで脳は虚血になるのです。

脳内出血やクモ膜下出血でも同様のことが起こります。
頭蓋内圧亢進が高度になると、
その圧力により、脳の一部が、
脳脊髄液の出入りする穴を通して、
押し出されるような現象が起こります。
これが脳ヘルニアで、
押し出される脳の部位によっては、
死に直結する事態となります。

このように脳の深刻な影響を与える頭蓋内圧亢進症ですが、
その診断はそう簡単なものではありません。

確定診断に最も有効な方法は、
頭蓋骨に小さな穴をあけて、
そこからセンサーを挿入して、
直接頭蓋内圧を測定する、という方法です。

しかし、通常熟練した脳外科医以外にそうした処置は出来ませんし、
センサーの挿入により新たな出血や梗塞が起こるというリスクもあります。

そこで患者さんにあまり負担が掛からない方法で、
頭蓋内圧の亢進を推測出来るような方法が、
これまでに多く考えられて来ました。

症状としては、
意識レベルの低下や収縮期血圧の上昇と徐脈、
診察所見としては、
眼底のうっ血乳頭、
画像診断としてはCTやMRIにおける、
脳槽の圧迫や正中線偏位の所見などがあり、
やや特殊な検査としては、
瞼に超音波を当てて測定する、
視神経鞘の拡大の計測などが使用されています。

今回の検証はこれまでの臨床データをまとめて解析する方法で、
こうした臨床所見や検査所見と、
実際の脳内センサーで測定した頭蓋内圧との関連を比較検証しています。

その結果、
臨床所見と検査所見に関わらず、
単独の所見で頭蓋内圧亢進症の鑑別診断を行うことは、
信頼度や正確性には欠けて困難であることが明らかになりました。

このため上記論文の結論としては、
単独の検査所見や臨床所見に左右されることなく、
頭蓋内圧亢進症が疑われた場合には、
速やかに侵襲的な頭蓋内圧測定が、
可能な施設に搬送することが望ましい、
というものになっています。

今後は複数の所見などを組み合わせることにより、
より精度の高い非侵襲的な診断への道も、
検証されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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脳梗塞急性期の血糖コントロールについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脳梗塞時の血糖コントロール.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
脳梗塞の急性期における血糖コントロールについての論文です。

糖尿病が脳梗塞のリスクを高め、
その予後にも悪い影響を与えることは、
多くの臨床研究において確認された事実です。

ただ、急性の脳梗塞を起こして数日のような急性期に、
血糖コントロールを改善することにより、
その梗塞の予後が改善するかどうかについては、
あまり明確なことが分かっていません。

インスリンを使用して強制的に血糖を低下させるような臨床研究が、
過去に何度か行われていますが、
明確な改善効果は確認されていません。
低血糖は間違いなく脳梗塞の予後を悪化させるので、
それを起こすことなくコントロールを良好に保つことは、
実際には困難で、
結果としてあまり目標まで血糖を下げられていない上に、
糖尿病の患者さんを主体とした試験もあまりないのが実際です。

現行のアメリカのガイドラインでは、
脳梗塞の急性期の血糖値は、
140から180mg/dLに維持することが推奨されていますが、
その根拠はあまり確実なものではありません。
日本のガイドラインに至っては、
ただ、アメリカの推奨値が紹介されているだけで、
独自の指針を示してはいません。

そこで今回の研究では、
アメリカの63か所の専門施設において、
急性の虚血性梗塞を起こして12時間以内であり、
糖尿病があって血糖値が110mg/dLを超えているか、
糖尿病がなくて血糖値が150mg/dL以上である患者、
トータル1151名をクジ引きで2つの群に分けると、
一方はインスリンの持続注入を施行して、
血糖値が80mg/dLから130mg/dLを目標とした厳格なコントロールを行い、
もう一方はインスリンの皮下注射を施行して、
血糖値が80mg/dLから179mg/dLというややラフなコントロールを行って、
その治療を72時間まで持続し、
その後90日間の予後を比較検証しています。

両群ともほぼ8割が糖尿病の患者さんです。

その結果、
後遺症や生命予後などの指標で評価した、
患者さんの予後には両群で有意な差はなく、
重篤な低血糖の発症は、
厳格コントロール群のみで認められました。

このように、
今回のこれまでより厳密な検証においても、
脳梗塞急性期の厳格な血糖コントロールが、
患者さんの短期間の予後を改善するという根拠はなく、
現状のコントロールの指標はアメリカのガイドラインにある、
180mg/dLを超えない程度に維持するという方針が、
概ね妥当であるように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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睡眠不足が社会的に悪いイメージを与えるのは何故か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療や産業医活動には廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
寝不足と外見.jpg
2017年のRoyal Society Open Science誌に掲載された、
短期の不眠が、他人に与える自分の印象に、
大きな影響を及ぼすという現象を分析した論文です。

寝不足は疲労や集中力不足の原因となり、
外見的にも顔色は悪くなり、むくんで、
周囲に与える印象も悪いものとなります。

多くの人が睡眠不足の人とは、
距離を置きたいと思う心理が働くということは、
これまでの研究によっても明らかになっています。

ただ、その原因は必ずしも明確ではありません。

睡眠不足から生じる不健康な外見や態度は、
その人が病気を持っている、
という可能性を相手に与えます。

そのために、
「病気の人に近づくのは危険だ」という、
半ば無意識の危険回避の本能が、
働いてしまうのではないか、
という仮説があります。

また、睡眠不足の人は、
魅力が乏しく、疲れていて、信頼性に欠けるという印象があり、
それが恋愛にしろ仕事にしろ遊びにしろ、
その人と関係を持つことを避けるという行動と、
結び付いているのではないか、
という仮説もあります。

ただ、どういう要素がどの程度関連しているのか、
というような詳細については、
これまであまり明らかではありませんでした。

今回の研究では、
18から47歳の25名の被験者を、
8時間の睡眠を2日続けた状態と、
4時間の寝不足状態を2日続けた状態とで、
顔写真を撮影し、
それを先入観なく別の18から65歳の122名に見せて、
その人物と付き合いたいかどうかを、
一定の尺度で比較検証しています。

この研究は1日4時間2日という、
実際にも可能性の高い寝不足の条件を設定している点と、
顔写真のみの判定なので、
曖昧な印象や雰囲気などの情報が、
混入しにくいのが特徴です。

その結果、
睡眠不足の顔写真は、
見た人にこの人とは付き合いたくないと思わせていて、
個別の指標としては、
睡眠不足の顔は魅力がなく、不健康で眠そうと感じさせました。
ただ、その人が信頼出来るかという信頼度の指標には、
通常睡眠の写真と差はあまりませんでした。

これまでの研究では、
睡眠不足はその人の健康度と魅力の点で、
ネガティブな印象を相手に与え、
それがその人と付き合いたくない理由になっている、
と想定されていました。

ただ、今回の検証では、
健康度、魅力、そして眠そうな様子を併せても、
その人と付き合いたくない要因の、
3分の1程度しか説明は困難で、
そうした通常想定されるような要因以外にも、
睡眠不足がその人の顔に与える印象の中には、
「この人と接触することは良くない」と判断させる要素が、
潜んでいるようです。

不眠症のような病気の場合は別として、
習慣的な睡眠不足や、
仕事などの負担で強いられるような睡眠不足は、
本人が思っている以上に人間関係にネガティブな影響を与えるものなので、
円滑な人間関係の維持のためには、
充分な睡眠を取ることも、
1つのエチケットと考えておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ビタミンB12の補充療法と過剰投与のリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンB12の過剰使用.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載されたレターですが、
カナダで不必要なビタミンB12の注射が行われている、
という報告です。

ビタミンB12は、中にコバルトという金属原子を含む、
巨大で複雑な構造の化合物です。
これを作れるのは、一部の微生物だけです。
微生物が合成したビタミンB12は、
動物の組織に取り込まれます。

従ってビタミンB12は、
原則として動物性食品(肉、魚、貝と乳製品)、
にしか含まれていません。
普通ビタミンというと、
何となく野菜に入っているようなイメージがありますね。
でも、このB12に関しては、
野菜や果物には一切入ってはいないのです。
菜食主義者がビタミンB12の不足で、
貧血や神経障害になることがあるのは、
このためですね。

ビタミンB12は高齢者で不足し易い、
と言われています。
それは、ビタミンB12が腸から吸収される仕組みに、
その原因があります。
ビタミンB12は、主に肉に含まれています。
肉の中にがっちり結び付いたビタミンは、
胃酸の働きによって、分離されます。
そして、胃から出る「内因子」と言われる蛋白質に、
代わりにくっついて、
腸から吸収されるのです。
高齢者では、胃酸の出る量は一般に少なくなっています。
胃の粘膜も萎縮して薄くなっています。
すると、肉がうまく分解されなくて、
B12が出てこなかったり、
出てきても、内因子が少なくてうまく吸収されないことが、
起こり易いのです。
「内因子」が足りなくて、
ビタミンが吸収されないタイプの貧血を、
特別に「悪性貧血」と呼んでいますね。

ここまで、よろしいでしょうか。

さて、1日に必要なビタミンB12の量はどのくらいでしょうか。

おおよそ2~3μgと言われています。

これはね、本当にちょっぴりの量なんです。
かなり食の細い方でも、
肉や魚や乳製品を一切摂らない、というのでない限り、
不足することは、吸収に問題がなければ、
まず考えられません。

人間の身体の中で、
ビタミンB12は何処にどれだけあるのでしょうか。

これはちょっと、資料によって、
記載がかなり違います。
血液の中にあるB12は全体の中では少数で、
大部分は肝臓の中に備蓄されています。
ある日本の文献では、1000μgから5000μgとされていますが、
その出典は明らかでありません。
「ハリソン内科学」の記載は、
2000μgですが、それと同じ量が他の組織に分布している、
とあります。
「メルクマニュアル」には、
3000μgから10000μgが肝臓に備蓄されている、
と書かれています。
これだけ備蓄量に差があるのは、
元々の根拠となるデータが、
あまり正確なものではないことを示している、
と僕は思います。
要するに、あまりよく分かってはいないのです。

このあやふやな備蓄量を改善するために、
ビタミンB12欠乏による貧血の治療では、
8000μgから12000μgものビタミンB12を、
注射し続けるように、
との治療方針が決められているのです。

実際には高度の欠乏症以外は、
注射によるビタミンB12の補充は必要がありません。

殆どの場合経口のビタミン剤(メコバラミンなど)で充分ですし、
それでも使用中の血液のビタミンB12濃度は、
基準値を大きく上回ることが多いのです。

にも関わらずビタミンB12の筋肉注射は、
高齢者の手足のしびれなどの漠然とした症状に対して、
国内外を問わず、やや安易に使用されているのが実際です。

今回の検討はカナダのオンタリオのもので、
医療データベースの情報を活用して、
146850人へのビタミンB12の筋肉注射の事例を解析したところ、
そのうちの63.7%は、血液濃度が基準値内であったり、
血液濃度自体が測定されていないなど、
不適切な使用であると判定されました。

このように、
現状多くのビタミンB12の筋肉注射はあまり根拠のないもので、
今後その適応については、
より科学的なものに再検討される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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日本人における脂肪肝とインスリン抵抗性との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脂肪肝とインスリン抵抗性.jpg
2019年のJournal of the Endocrine Society誌に掲載された、
脂肪肝とインスリン抵抗性との関連についての論文です。
順天堂医院の研究グループによる研究です。

欧米の2型糖尿病は肥満による内臓脂肪の蓄積が、
その主な原因とされていて、
殆どの患者さんは高度の肥満ですが、
日本を含むアジアにおいては、
やせ形でインスリン抵抗性を主体とする2型糖尿病が、
欧米より大きな比率を占めている、
という特徴があります。

ただ、その原因は未だ不明です。

そこで1つの仮説としては、
アジア人では食事から得た過剰なエネルギーを、
皮下脂肪に溜める力が弱く、
そのため肥満に至る前にあふれ出した脂肪が、
内臓脂肪や肝臓、筋肉への脂肪の蓄積に結び付いて、
それがインスリン抵抗性に繋がっているのでは、
という考え方があります。

しかし、肝臓への過剰な脂肪の蓄積である脂肪肝と、
胃や腸の周りに蓄積する内臓脂肪の、
どちらがより強くインスリン抵抗性と関連しているのかについては、
あまり明確なことが分かっていません。

そこで今回の研究では、
肥満がなく(BMIが25未満)、糖尿病のない、
日本男性87名に、
人工膵臓を用いたインスリン抵抗性の厳密な検査を行い、
同時にMRIとMRスペクトロスコピーという手法を用いて、
内臓脂肪の蓄積と脂肪肝の有無を診断。
両者の関連を検証しています。

その結果、
内臓脂肪の蓄積はなくても、
脂肪肝があるとインスリン抵抗性が認められたのに対して、
内臓脂肪の蓄積はあっても、
脂肪肝のない場合には、
インスリン感受性は良好であることが確認されました。

つまり、日本人の肥満のない男性に限った場合の話ですが、
内臓脂肪の蓄積とその目安の1つである腹囲の増大より、
脂肪肝の方がより強くインスリン抵抗性と関連していた、
という結果です。

現状は世界的に見ても、
腹囲を基準としてメタボを判定することが主流ですが、
特定の人種や集団においては、
むしろ脂肪肝の方がより病気のリスクの、
指標であるのかも知れません。

今後の更なる検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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気管支拡張症に対する吸入ステロイドと抗菌剤持続治療の比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
気管支拡張症の治療比較.png
2019年のEuropean Respiratory Journal誌に掲載された、
気管支拡張症の治療の有効性を比較した論文です。

気管支拡張症というのは、
伸展性のある肺の気管支が、
その機能を失い、
部分的もしくは全体的に拡張する病気です。

その原因は大きく分けると、
先天性のものと後天性のものがあり、
先天性のものは、
気管支の感染防御機能が、
何らかの原因で障害されていることにより、
若い年齢から気道の感染を繰り返しながら、
気管支拡張症が進行します。

嚢胞線維症はその代表的な病気ですが、
明確な人種差があって、
白人に多くアジアには少ないとされています。

後天性の気管支拡張症は、
肺炎などの肺の感染症により、
持続的な気道の炎症が起こり、
発症することが多く、
小児期のアデノウイルス感染症やマイコプラズマ肺炎、
結核や細菌性肺炎が、
その原因として知られています。

肺炎は勿論後遺症を残さず、
完全に治癒することもありますが、
炎症が持続する結果として、
気道を障害し、
通常部分的な、
気管支の拡張症を来たすことも多いのです。

それ以外に、
自己免疫疾患などでは、
気道の非感染性の炎症が起こり、
それにより気管支拡張症を来たすこともあります。

後天性の気管支拡張症は、
疫学的には中年の女性に多く、
これは自己免疫機序との関わりを、
示すものだと思われます。

気管支拡張症の本態は、
気道の慢性の炎症にあります。

拡張した気管支は、
その正常な機能を失っているので、
その部位で細菌が増殖し易く、
一旦増殖すると完全には除菌されません。

そこで風邪など身体の抵抗力が低下した時に、
拡張した気道で細菌の増殖が起こり、
気管支炎や肺炎などの、
強い炎症を起こすのです。

これを、
気管支拡張症の急性増悪と呼んでいます。

急性増悪を繰り返せば、
障害される気道が増え、
肺の機能は低下します。
これを繰り返すことにより、
気管支拡張症は進行してゆくのです。

気管支拡張症は決して稀な病気ではないと考えられていますが、
日本のみならず海外においても、
あまり明確なその発症頻度は、
報告されていません。

気管支拡張症の診断は、
進行したものであれば、
レントゲンで可能ですが、
正確にはCTが必要です。

従って、
CT検査が増えればその頻度は増加するので、
正確な頻度のデータが取り難い、
という問題があります。
これは甲状腺癌の頻度などと、
同じ問題点です。

また、古い結核の病巣などには、
高率に気管支拡張症を合併しますが、
そうしたものを気管支拡張症にカウントするかどうか、
というような点も明確ではありません。

ただ、たとえば慢性気管支炎などと、
言われるような病態の多くは、
気管支拡張症を伴っている可能性が高いのです。

さて、
このように進行性の病気である気管支拡張症ですが、
現時点で確実に有効な治療は存在していません。

ただ、
そのメカニズムからして、
気道の細菌性の炎症をコントロールすることが、
重要なことは明らかです。

特に緑膿菌という細菌が慢性の炎症を来しているような事例では、
病状は悪化し易く、
治療も困難であることが知られています。

この炎症のコントロールに、
抗生物質を使用する臨床試験が多く行われていますが、
一定の効果が見られたという報告はあるものの、
その効果は限定的で、
かつ耐性菌の誘導など有害な影響も無視出来ません。

また、気道の炎症を抑え呼吸機能を維持する目的で、
吸入ステロイドの使用も行われていますが、
その一定の有効性が報告されている反面、
細菌感染の悪化のリスクを、
高めるという可能性も否定出来ません。

そこで今回の研究では、
先天性の囊胞性線維症を除外した気管支拡張症の患者さんに対して、
吸入ステロイドを使用した場合と、
マクロライドと呼ばれる抗菌剤を持続的に使用した場合とで、
どちらが予後に良い影響を与えるのかを比較検証しています。

アメリカの健康保険のデータより、
年齢が65歳以上の囊胞性線維症を除外した気管支拡張症の患者さんで、
新たに28日以上の吸入ステロイドの治療が開始された83589名と、
新たに28日以上のマクロライド系抗菌薬の治療が開始された6500名を、
年齢などをマッチングさせて抽出し、
その予後の比較を行っています。
例数は多いのですが、
後からデータを解析したもので、
事例を登録して経過を追ったような試験ではありません。

その結果、
吸入ステロイド使用群では、
年間100人当り12.6件の気道感染症による入院があったのに対して、
マクロライド使用群では、
年間100人当り10.3件の入院があり、
マクロライド使用群と比較して吸入ステロイド使用群では、
気道感染による入院のリスクを、
1.39倍(95%CI:1.23から1.57)有意に増加していました。
また気管支拡張症の急性増悪のリスクも、
吸入ステロイド使用群で1.56倍(95%CI:1.49から1.64)
有意に増加していました。
死亡リスクについては有意な差は認められませんでした。

このように、
COPDにおいては一定の有効性が確認されている、
吸入ステロイドの治療ですが、
気管支拡張症の急性増悪の予防という観点からは、
抗菌剤治療と比較して予後の悪化に結び付く可能性が高く、
気管支拡張症に対する吸入ステロイドの使用は、
今後より慎重に考える必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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