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SGLT2阻害剤の有害事象(一般臨床の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤の有害事象.png
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
今最も注目されている糖尿病の飲み薬の、
有害事象や副作用について解析した論文です。

2型糖尿病の治療において、
最近注目を集めている新薬が、
SGLT2阻害剤です。

この薬は腎臓の近位尿細管において、
ブドウ糖の再吸収を阻害する薬で、
要するにブドウ糖の尿からの排泄を増加させる薬です。

この薬を使用すると、
通常より大量の尿が出て、
それと共にブドウ糖が体外に排泄されます。

これまでの糖尿病の治療薬は、
その多くがインスリンの分泌を刺激したり、
ブドウ糖の吸収を抑えるような薬でしたから、
それとは全く異なるメカニズムを持っているのです。

確かに余分な糖が尿から排泄されれば、
血糖値は下がると思いますが、
それは2型糖尿病の原因とは別物で、
脱水や尿路感染の原因にもなりますから、
あまり本質的な治療ではないようにも思います。

しかし、最近この薬の使用により、
心血管疾患の発症リスクや総死亡のリスクが有意に低下した、
というデータが発表されて注目を集めました。
こうした効果が認められている糖尿病の治療薬は、
これまでに殆ど存在していなかったからです。

2015年のNew England…誌に発表された論文は、
ブログでもご紹介したことがあります。
エンパグリフロジン(商品名ジャディアンス)というSGLT2阻害剤の、
3年間の臨床データを解析したものですが、
偽薬と比較して総死亡のリスクが32%、
心血管疾患による死亡のリスクが38%、
それぞれ有意に低下していました。

2017年の同じNew England…誌には、
今度はカナグリフロジン(商品名カナグル)という、
また別のSGLT2阻害剤の臨床データが報告されています。
ここでは心血管疾患のリスクの高い2型糖尿病の患者さんに、
これも3.5年以上の長期間の観察を行なったところ、
偽薬と比較して心血管疾患による死亡と急性心筋梗塞と脳卒中を併せたリスクを、
14%有意に低下させていました。
ただ、この結果はエンパグリフロジンと比較すると、
少し見劣りがする上に、
臨床試験において糖尿病性壊疽による下肢切断のリスクと、
骨折のリスクが、
カナグリフロジン群で高かった、
という気になるデータも報告されています。

アメリカのFDAの有害事象の登録システムにおいては、
SGLT2阻害剤の使用により、
糖尿病性ケトアシドーシスや急性腎障害、
重篤な尿路感染症、静脈血栓塞栓症、
急性膵炎などが関連する事象として報告されていて、
そうしたリスクの増加が否定出来ません。

こうした有害事象と薬剤との関連を検証するために、
特定の集団に対する臨床試験が複数行われていますが、
重篤な有害事象は頻度としては多くはないので、
通常の臨床試験のレベルでは、
その検証は困難なのが実際です。

今回の疫学データは、
国民総背番号制を取っているスウェーデンとデンマークのもので、
SGLT2阻害剤を新規に開始した17213名を、
年齢などをマッチさせたGLP1阻害剤の新規使用者17213名と比較して、
7つの重篤な有害事象のリスクを比較検証しています。

この場合の7つの有害事象というのは、
糖尿病性壊疽による下肢切断、骨折、急性膵炎、急性腎障害、
重篤な尿路感染症、糖尿病性ケトアシドーシス、
そして静脈血栓塞栓症です。

2 型糖尿病の治療薬としては、
最近心血管疾患の予後を改善する可能性があるとして、
SGLt2阻害剤とともに取り上げられることが多いのが、
インクレチン関連薬のGLP1アナログですから、
対照としてGLP1アナログを使用しているのです。

使用されているSGLT2阻害剤は、
61%がダパグリフロジン(フォシーガ)、
38%がエンパグリフロジン、
1%がカナグリフロジンとなっています。

解析の結果、
糖尿病性壊疽による下肢切断のリスクは、
SGLT2阻害剤ではGLP1アナログと比較して、
2.32倍(95%CI: 1.37から1.91)有意に増加していました。
罹患率はGLP1アナログが患者1000人当り1.1件に対して、
SGLT2阻害剤では2.7件です。
糖尿病ケトアシドーシスのリスクも、
2.14倍(95%CI: 1.01から4.52)
有意に増加していましたが、
それ以外の5つの有害事象については、
有意なリスクの差はありませんでした。

下肢切断のリスクについては、
下肢の動脈硬化や狭窄などがある場合に、
そのリスクが高くなることが想定され、
サブ解析では実際にそうした傾向は認められましたが、
そうしたリスクの高い事例を除いても、
矢張りそうした傾向は有意に認められていました。

このように今回の検証においても、
糖尿病性壊疽による下肢切断のリスクは、
SGLT2全般において高くなっていて、
今回のデータはダパグリフロジンが主体ですから、
これがトータルなSGLT2阻害剤の傾向であるとは、
まだ断定は出来ませんが、
カナグリフロジンのデータとも併せて考えると、
そのリスクが高まった、
というようには言えそうです。

現状の考え方としては、
SGLT2阻害剤の使用に際し、
下肢の閉塞性動脈硬化症が疑われる事例や、
インスリンの欠乏が高度であるような事例においては、
その使用をより慎重に考慮する必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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気温と死亡との関係(2018年中国の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
気温と生命予後.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
気温と死亡との関連についての論文です。

人間は住宅や乗り物、
衣服や装備などの機能を高めることにより、
極寒の地から灼熱の地まで、
幅広い気温の場所で生活しています。

ただ、それでも極寒の低温の場所や、
灼熱の高温の場所での生活は、
健康に様々な影響を与えることは間違いがありません。

したがって、この居住地の気温というものと、
そこに住む人間の健康状態や病気や死亡には、
一定の関連があることもまた間違いはありません。
どんなに防御していても、
凍てついた極寒の地では凍死などは多いでしょうし、
灼熱の砂漠では熱中症による死亡は多いのも確かなことです。

ただ、気温と病気や死亡との関連を、
まとめて解析したような疫学データは、
それほど多くはありません。

今回の研究は中国全土の272の地域において、
その気温と死亡リスクとの関連を検証したものです。

その結果、総死亡においても、
心血管疾患や脳卒中などの個別の病気の死亡においても、
そのリスクは22℃くらいが最も低く、
それを上回っても下回っても、
死亡リスクは増加していました。

そして0℃を下回るような低温においては、
その5日目まで死亡リスクは増加し、
その後は低下に転じていました。
一方で29℃を超えるような高温においては、
その初日においては死亡リスクが増加するものの、
2、3日後には通常の気温と同じに戻っていました。

温度と個々の病気による死亡リスクとの関連を見ると、
29℃を超える高温や0℃を下回る低温よりも、
やや低い気温において、
最もその影響は大きくなると算出されました。

この現象を的確に説明することは困難ですが、
低温の影響は高温より持続することと、
低温の持続が感染症などのリスクを増加させることが、
その一因ではないかと推測されます。

現代のような環境の調節が可能となった社会でも、
実際には気温の与える健康への影響は意外に大きく、
病気の予防という観点からも、
この知見は重要な意味を持っているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ω3系脂肪酸と健康長寿との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ω3脂肪酸と高齢者の健康.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
ω3系脂肪酸の血液濃度と健康長寿との関連についての論文です。

動物性の油よりも、
植物性の油の方が健康に良い、
というのはしばしば言われて来たことです。

飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸が健康に良い、
というような言い方も、
しばしばされてきました。

テレビなどの健康情報では、
サバやサンマに含まれる脂肪酸が、
ダイエットに良いという話題も盛り上がっているようです。

脂肪酸というのは、身体の中の油の総称で、
タンパク質のように窒素は含まず、
炭素と水素、酸素だけからなる、
シンプルな構造物です。
リン脂質や糖脂質、コレステロールやステロイドのような、
脂肪酸から由来する物質も多く、
この中には窒素を含むものもあります。

その大元である脂肪酸は、
二重結合のない飽和脂肪酸と、
二重結合のある不飽和脂肪酸に分かれます。

原子は他と繋がる手を、
決まった数だけ持っていて、
その手がそれぞれ別のものと繋がっているのが、
飽和で、2つの手が同じものと繋がっているのが、
不飽和ということになります。

分子量の大きい「不飽和脂肪酸」は、
その二重結合の位置が端から3番目のものと、
6番目のものとに分かれます。
3番目のものをn-3脂肪酸とか、ω-3系多価不飽和脂肪酸、
などと呼び、
EPAやDHA、α-リノレン酸などはその代表です。
一方で6番目のものの代表は、
リノール酸やアラキドン酸で、
これをおなじように、
n-6脂肪酸やω-6系多価不飽和脂肪酸、
などと呼んでいます。

動物性の脂肪の多くは、
飽和脂肪酸です。
ラードやバターなどはその代表です。

魚や植物油を多く摂るような生活習慣により、
心血管疾患のリスクが減少する、
というような疫学データは多くあり、
その原因として注目されているのがω3系脂肪酸です。

これは具体的には、
主にサバやサンマなどの青身魚の脂に含まれる、
EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、
DHA(ドコサヘキサエン酸)、
そしてエゴマやアブラナ、ダイズなどの油に含まれる、
植物性油脂のαリノレン酸です。

今回の研究は、
最近のキーワードの1つである健康長寿
(この場合は慢性疾患や認知症、身体が不自由にならずに長生きする、
という意味です)
に対するω3系脂肪酸の血液濃度との関連を検証したもので、
摂取量ではなく血液濃度を検証しているところがポイントです。

アメリカにおける心血管疾患にかかわる疫学データを活用して、
平均年齢74.4歳の2622名の健康長寿である高齢者を観察し、
その血液中のω3系脂肪酸の血液濃度と、
その予後との関連を検証しています。

その結果、
実際には多くの高齢者が、
経過の中で健康長寿ではなくなる訳ですが、
ω3系脂肪酸濃度が高いことは、
健康長寿からの転落を有意に予防していました。
個別の脂肪酸で見ると、
健康長寿の維持に有効であったのは、
EPAとDHAのみでした。

このように血液濃度においてEPAやDHAが高いことが、
健康長寿の1つの因子であることを示唆する所見が得られたことは、
サバやサンマなどの健康信仰を、
より補強するものとは言えそうです。
ただ、サプリメントを使用するような介入試験においては、
このようなクリアな結果は得られていませんから、
EPAやDHAのサプリメントを摂ることが健康に良い、
とは必ずしも言えない、ということも、
同時に確認しておく必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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脳卒中は生活改善でどれだけ予防出来るのか?(UKバイオバンクの解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脳卒中と生活習慣.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
脳卒中の遺伝的リスクと環境要因との関連を検証した論文です。

脳卒中のような心血管疾患は、
遺伝的な体質と生活習慣などの環境要因が、
複合的に関係して発症すると考えられています。

遺伝的な部分については大規模なゲノム解析により、
90種類くらいの1塩基変異が、
脳卒中の発症リスクと関連している、
ということが分かっています。

また、喫煙や高血圧、食事や運動などの生活習慣が、
脳卒中のリスクと一定の関連のあることが、
これも多くの疫学データからほぼ明らかになっています。

それでは、
この遺伝的な体質のリスクと、
生活習慣や治療などで改善可能な因子との間には、
どのような関係があるのでしょうか?

たとえば、禁煙によるその後の影響にも、
遺伝的な素因のあるなしで違いがあるのでしょうか?

そうした点についての疫学的な検証は、
これまであまり行われていませんでした。

そこで今回の研究では、
イギリスの大規模な臨床データとして有名な、
UKバイオバンクの医療データを活用して、
この問題の検証を行っています。

対象は登録時に40から73歳の306473名で、
脳卒中の発症に関連する90種類の点遺伝子多型(SNP)を解析して、
遺伝的な高リスクと低リスクをランク付けし、
健康な生活習慣としては、
非喫煙、健康な食事、運動習慣、体重の適正管理の4つを、
これも良好な生活習慣と、不良な生活習慣にランク付けして、
脳卒中の発症との関連を比較しています。

中間値で7.1年の観察期間中に、
2077件の脳卒中(虚血性梗塞1541件、脳内出血287件、くも膜下出血249件)
が発症していて、
遺伝的なリスクを3分割した時に、
低リスクと比較して高リスク群では、
脳卒中の発症リスクは35%(95%CI:1.21から1.50)
有意に増加していました。
また、好ましい生活習慣を3から4つ維持している群と比較して、
0から1つしか実践していない群では、
脳卒中の発症リスクは66%(95%Ci: 1.45から1.89)
こちらも有意に増加していました。
そして、この遺伝的リスクと生活習慣の差によるリスクは、
互いに関連はなく独立したリスクであることも確認されました。

つまり、生活改善による脳卒中の予防効果は、
その人の遺伝的な素因に関わらず、
同じように有効である、
ということになります。

今後は遺伝的なリスク因子を調整することも、
不可能ではなくなるかも知れませんが、
現状はその効果の確実な4つの生活習慣について、
改善するのが脳卒中予防のためには、
最善の道であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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心筋梗塞の危険因子の性差(UKバイオバンクの解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
急性心筋梗塞リスクの性差.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
心筋梗塞のリスクの性差についての論文です。

多くの病気には性差、
すなわち性別によるその発症リスクの差が存在しています。
たとえばバセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患は、
女性に多い病気として知られています。

心血管疾患の代表的病気の1つである心筋梗塞は、
年齢が50歳代より若い場合には、
女性より男性に多いことが知られています。
ただ、年齢が60歳以上になると、
男女差はあまり明確ではなくなります。

上記文献にある欧米のデータでは、
30から64歳では4から5倍男性に多く、
65から89歳ではそれが2倍程度に縮まると記載されています。

ただ、高血圧などの個々のリスク因子と、
心筋梗塞の性差との間に関連については、
まだあまり明確なことが分かっていません。

そうした点を検証する目的で、今回の研究では、
イギリスのUKバイオバンクという、
世界的に有名な医療情報のデータベースを活用して、
47万人を超える対象者の、
その後の心筋梗塞の新規発症と、
そのリスク因子の性差との関連を検証しています。

その結果、
平均で7年を超える経過観察期間中に、
5081名が心筋梗塞を発症し、女性はそのうちの28.8%でした。
その罹患率は女性では年間1万人当り7.76人で、
男性では24.35人でした。

一般的な心筋梗塞のリスク因子のうち、
高血圧、喫煙、肥満、糖尿病は、
男女ともにその発症と関連していましたが、
年齢が高くなるほどその影響は小さくなっていました。

女性においては、
収縮期血圧の上昇と高血圧、
喫煙と糖尿病は、
いずれも男性より大きな影響を、
その発症に与えていました。

つまり、心筋梗塞は女性より男性に多く発症することは、
間違いがありませんが、
高血圧と喫煙、そして糖尿病というリスクが、
その発症に与える影響は、
実は男性より女性の方が大きいということが分かったのです。

この結果は従来のデータと異なる部分があり、
生活改善の効果について、
男女で異なる可能性があるという知見は、
今後の患者指導などの変更に繋がるものになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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糖尿病の心血管疾患リスクとシスタチンC [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シスタチンCと心血管疾患.jpg
2018年のthe American Journal of Cardiology誌に掲載された、
2型糖尿病の予後と腎臓関連の検査値との関連についての論文です。

2型糖尿病の患者さんにとって一番の問題は、
この病気があると、
心筋梗塞や脳卒中などの、
動脈硬化に関わる心血管疾患の発症リスクが、
非常に増加することです。

糖尿病はまた、
慢性腎臓病のリスクでもあって、
3大合併症としての糖尿病性腎症は勿論のこと、
軽度の腎機能低下やその兆候であっても、
独立した心血管疾患のリスクとなって、
患者さんの予後に大きな影響を与えると考えられています。

糖尿病に関わる腎機能低下のマーカーとしては、
通常尿蛋白(特に初期の兆候としてのアルブミン排泄量)と、
血液のクレアチニン濃度から推測した、
糸球体濾過量が使用されています。

このいずれかの異常値を、
その後の腎機能低下や心血管疾患のリスクとしているのです。

しかし、
クレアチニンは筋肉量などの影響を大きく受けるので、
同様の目的で使用されるシスタチンCという指標の方が、
より有益ではないか、という説があります。
また、糸球体ではなく尿細管の障害の指標として、
尿中NGALや尿中KIM-1という検査値があり、
こうした指標の評価はまだ定まっていません。

そこで今回の研究では、
糖尿病治療薬の大規模臨床試験のデータを活用して、
複数の腎障害マーカーと、
2型糖尿病の患者さんの心血管疾患リスクとの関連を検証しています。

対象は登録時点で腎機能低下がなく、
心血管疾患のリスクは高い2型糖尿病患者5380名で、
観察期間中の心筋梗塞、脳卒中、及び心血管疾患による死亡を併せたリスクと、
シスタチンC、尿中NGAL、尿中KIM-1、尿中蛋白との関連を検証しています。

中央値で18ヶ月の観察期間中に、
11.5%に当たる621名が心血管疾患を発症し、
上記4種のマーカーはいずれも推計糸球体濾過量とは独立に、
心血管疾患の発症リスクと有意な関連を持っていました。

そして、全ての腎臓マーカーを併せて解析すると、
血中シスタチンC濃度のみが、
独立した心血管疾患のリスクとなっていました。

要するに他の腎機能低下の指標に、
明らかな異常のない段階であっても、
シスタチンCの上昇が、
その後の患者さんの予後を、
鋭敏に予測していた、ということになる訳です。

これはまだ現時点では仮説の域を出ませんが、
今後シスタチンCという指標が、
糖尿病の予後判定のために、
より重要な役割を担うようになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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50歳以上の年齢における帯状疱疹予防ワクチンの有効性の比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト関連の事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
帯状疱疹ワクチンの有効性.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
2種類の帯状疱疹予防ワクチンの比較を行った論文です。

帯状疱疹は身体に帯状の湿疹が出来、
強い神経痛を伴う病気で、
症状自体は一時的ですが、
その後に帯状疱疹後神経痛という、
その名の通りの辛い神経痛が長く残ることがあります。

この病気は水ぼうそう(水痘)と同じウイルスの感染によって起こります。
初感染は水ぼうそうという形態を取り、
おそらくは神経節という部分に、
残存しているウイルスが、
身体の細胞性免疫が低下すると、
再燃して帯状疱疹を起こします。

通常水ぼうそうのウイルスに感染したことがあるかどうかは、
血液の抗体の上昇で判断し、
抗体が上昇していれば、
再び水ぼうそうに感染することはないのですが、
身体に潜んでいるウイルスが、
帯状疱疹という形で再燃することは、
抗体が陽性であっても起こり得るのです。

水ぼうそう自体の予防は、
抗体があれば充分ですが、
帯状疱疹の予防には、
このウイルスの抗原に反応する、
CD4陽性のTリンパ球という、
免疫細胞の産生が必要と考えられています。

水ぼうそうに罹ってしばらくの間は、
こうした細胞も多く存在しているので、
帯状疱疹は予防されているのですが、
時間が経つと次第にその数は減り、
年齢と共にその産生能自体も低下するので、
帯状疱疹が発症し易くなる、
という理屈です。

さて、帯状疱疹を予防するには、
抗原刺激を与えて、
それに反応するリンパ球が増えれば良いということになります。

その方法として、
通常考えられるのはワクチンの接種です。

水痘ワクチンは生ワクチンで、
このウイルスを弱毒化したそのものです。

通常小さなお子さんに2回接種して、
水ぼうそう自体を予防することを目的としています。

それでは、
このワクチンを大人に打てば、
免疫は再び賦活され、
帯状疱疹が予防されるのではないでしょうか?

この目的で国産のワクチンより、
基準値としては10倍以上多い抗原量を持つワクチンが、
帯状疱疹予防用に開発され、
アメリカにおいて大規模な臨床試験が行われました。
商品名はZOSTAVAXです。
その結果は2005年のNew England…誌に発表されています。

それによると、
50から59歳の年齢層においては、
帯状疱疹用の強化水痘ワクチンの1回接種によって、
帯状疱疹の発症が70%抑制され、
60から69歳では64%、
70歳以上では38%の抑制が認められた、
という結果になっています。
打った場所の腫れや痛み以外には、
目立った副反応は見られていません。
ワクチンの有効性は接種後10年は維持されますが、
発症の抑制が有意に確認されているのは、
8年までというデータがあります。

このように、
強化水痘ワクチンを接種することによって、
ある程度の細胞性免疫の賦活が起こり、
帯状疱疹の発症が、
一定レベル予防されることは間違いがありません。

ただ、数字を見て頂くと分かるように、
満足の行く効果とは言えません。

日本においても1990年代の早い時期に、
国産の水痘ワクチンを高齢者に接種した場合、
50から69歳で約90%、
70歳以上で約85%で、
接種による細胞性免疫の上昇が認められた、
という研究結果が報告されています。

しかし、これは敢くまで細胞性免疫に動きがあった、
というだけのもので、
それが帯状疱疹の予防に充分なレベルであるのかを、
実際に確認しているものではありません。

日本においては、
従来から使用されている水痘生ワクチンが、
そのまま50歳以上の帯状疱疹予防への適応となり、
2016年の4月より承認され、
添付文書の改訂が行われました。

日本の文献には国産の水痘ワクチンの力価は、
欧米の帯状疱疹予防用の物より、
基準値としては低いけれど、
実際にはその力価はかなり幅のあるものなので、
平均するとほぼ同等の効果が期待出来る、
という記載が多く見られ、
今回改訂された添付文書においても、
海外の帯状疱疹予防ワクチンと同等のもの、
という考えから、
臨床的な有効性のデータは、
海外データがそのまま引用されています。
しかし、直接比較をして効果を検証しているものではないので、
その真偽は定かではありません。

要するに、
国産のワクチンを帯状疱疹予防に使用しても、
有効であるかどうかの、
精度の高いデータは存在していないのです。
(この点については、ほぼ確実と思うのですが、
全ての知見に目を通している訳ではないので、
もしデータが発表されているようでしたら、
優しくご指摘を頂ければ幸いです)

さて、前述の海外データでも分かるように、
水痘の生ワクチンを高齢者に使用した場合、
その効果は高齢になるほど減弱し、
70歳以降での接種の意義はあまり大きいとは言えません。
また、生ワクチンという性質上、
高度に免疫の低下した患者さんや、
骨髄幹細胞移植後の患者さんなどは禁忌となっています。

そこでより効果が高く、
高齢者や免疫の低下した患者さんにも、
使用の可能なワクチンの開発が、
海外においては進められました。

2015年のNew England…誌に、
その第3相臨床試験が発表されています。
それがこちらです。
50歳以上の帯状疱疹ワクチン.jpg

使用されたワクチンは、
日本でも製造販売承認が得られているグラクソ社のもので、
HZ/suワクチンと命名されています。

これは水痘・帯状疱疹ウイルスの一部の糖蛋白抗原に、
細胞性免疫の強い増強作用のある、
AS01Bという免疫増強剤(アジュバント)を添加したものです。

このワクチンを2ヶ月間隔で、
2回筋肉注射をして、
その後平均で3.2年の経過観察を行ない、
その間の帯状疱疹の発症を、
偽ワクチン接種群と比較しています。

トータルの事例数は年齢50歳以上の15411例で、
それを7698例のワクチン接種群と、
7713例の偽ワクチン群にくじ引きで振り分けます。

結果は全体と、
50から59歳、60から69歳、70歳以上という、
年齢毎に解析もされています。
これは勿論、
強化水痘生ワクチンの臨床試験の結果と比較するためです。

その結果…

トータルでは観察期間中に、
偽ワクチン群では210例(年間1000人当たり9.1例の発症率)
の帯状疱疹が発症したのに対して、
ワクチン接種群では6例(年間1000人当たり0.3例)に留まっていて、
ワクチンの有効率は97.2%(93.7から99.0)と算定されました。

これを年齢層毎に見ると、
50から59歳の有効率が96.6%、
60から69歳の有効率が97.4%、
70歳以上の有効率が97.9%で、
年齢に関わらずに高い有効率が維持されていることが分かります。

両群の有害事象の頻度は、
ワクチン接種群が高くなりましたが、
その多くは接種部位の腫れや痛みで、
自己免疫疾患の発症や死亡リスクなどについては、
両群で明らかな差は認められませんでした。

帯状疱疹の予防という観点では、
ここまで有効なワクチンはこれまでになく、
この結果はかなり画期的なものと言って良いと思います。

ただ、この試験結果では、
70歳以上の年齢層の対象者は、
ワクチン接種者で1809名、
コントロールを含めても3632名です。

これでは70歳以上の高齢者への、
効果と安全性を確認するには不充分ということで、
同一試験の延長として、
同じ第3相の臨床試験として、
ワクチン接種群が6950名、
コントロール群が同じ6950名、
平均年齢が75.6歳で、
全て70歳以上の高齢者においてのデータが発表されています。
平均の観察期間は3.7年です。
それがこちらです。
70歳以上の帯状疱疹ワクチンの効果.jpg

観察期間中に、
ワクチン接種群での帯状疱疹の発症率は、
年間1000人当たり0.9件(実数で23件)であったのに対して、
コントロール群では9.2件(実数で223件)で、
ワクチンの有効率は84.2%(84.2から93.7)と算出されました。

年齢別に見ると、
70代が90.0%で、
80歳以上が89.1%です。

これを2015年に発表された、
50歳以上の年齢層の試験と合わせて解析すると、
70歳以上の16596例のデータとして、
ワクチンの有効率は91.3%(86.8から94.5)で、
帯状疱疹後神経痛の予防効果は88.8%(68.7から97.1)でした。

重篤な有害事象は、
コントロール群との間で有意な差はありませんでした。

この結果を見る限り、
70歳以上の年齢層においては、
従来の水痘生ワクチンやその抗原量を調整したワクチンでは、
帯状疱疹予防効果は不充分で、
免疫増強剤を使用したサブユニットワクチンに軍配が挙がる、
ということになります。

ただ、これはZOSTAVAXとの直接比較ではありません。
両者の臨床データを確認してみると、
ZOSTAVAXのコントロール群の方が帯状疱疹後神経痛の頻度は多く、
より感染が悪化しやすいような対象が、
選ばれている、という可能性があります。

従って、全く同じ対象群で比較すれば、
サブユニットワクチンとそれほどの差はないのではないか、
という推測も可能なのです。

そこで今回の論文では、
ネットワークメタ解析という手法を用いて、
両者のワクチンの効果と安全性を比較検証しています。

5つの臨床試験のデータをまとめて解析した結果として、
50歳以降の全年齢で見ると、
強化型の生ワクチンは偽ワクチンとの比較で、
検査で確認された帯状疱疹の発症を、
明確に予防する効果が確認されませんでした。

一方で免疫増強剤を添加したHZ/suワクチンは、
偽ワクチンとの比較においても、
強化型生ワクチンとの比較においても、
明確な帯状疱疹の予防効果を示していました。

ただ、HZ/suワクチンは偽ワクチンとの比較において、
局所の腫れや発熱、関節痛などのワクチン接種に伴う有害事象が、
有意に多く認められていて、
強化型生ワクチンとの比較においても、
有意ではないものの有害事象が多く傾向を示していました。
重篤な全身的な有害事象や死亡リスクについては、
どちらのワクチンも明確な増加は認められませんでした。

このように、
ワクチンの有効性については、
間違いなく免疫増強剤を含むサブユニットワクチンが、
優れているのですが、
その一方で有害事象は多い傾向も否定は出来ず、
今後どちらのワクチンを第一選択として使用するべきか、
日本においても議論となるように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ミルタザピンのSSRIやSNRIへの上乗せ効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ミルタザピンのSSRIへの上乗せ効果.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
難治性のうつ病に対して、
2種類の抗うつ剤を組み合わせて使用した場合の、
単剤と比較しての有効性を検証した論文です。

うつ病の薬物治療の第一選択は、
脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンを、
増加させる働きを持つ抗うつ剤である、
SSRIやSNRIといったタイプの薬剤です。

日本で使用されている薬剤としては、
SSRIにはパロキセチン(パキシル)、ジェイゾロフト(セルトラリン)、
エスシタロプラム(レクサプロ)、フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)、
があり、
SNRIにはデュロキセチン(サインバルタ)、ミルナシプラン(トレドミン)、
ベンラファキシン(イフェクサー)があります。

こうした抗うつ剤には一定の有効性が認められていますが、
それでも少なからぬ患者さんが、
単剤による治療では充分な治療効果を得られていません。

国際的な臨床試験のデータによると、
単剤の抗うつ剤による12から14週間の治療によって、
うつ病の症状が50%以上低下したのは、
半数の患者さんに過ぎませんでした。

単剤の抗うつ剤でその充分量を使用しても、
その効果が不充分である場合には、
どのような方法があるでしょうか?

薬物療法に限って考えると、
リチウムなどの気分安定剤や、
抗精神病薬を併用するような方法、
別のタイプの抗うつ剤への切り替え、
そして、2種類以上の抗うつ剤の併用、
などの対応が考えられ、
実際にそうした処方が行われていますが、
そうした治療が抗うつ剤の単剤の治療と比較して、
明確に有効性が高いという科学的な根拠は、
あまりないのが実際です。

今回の検証はその中で、
SSRIやSNRIとは別個の機序で、
セロトニンやノルアドレナリンの放出を促進するとされる、
ミルタザピン(商品名リフレックス、レメロン)を、
SSRIもしくはSNRI単剤の治療で十分な効果の得られなかった、
治療抵抗性のうつ病の患者さんに対して、
上乗せして使用した効果を検証しています。

イギリスの複数の医療機関において、
18歳以上のうつ病の患者さんで、
第一選択の抗うつ剤であるSSRIもしくはSNRIを、
6週間以上使用して十分な効果の得られなかった480名を、
くじ引きで2つの群に分けると、
患者さんにも主治医にも分からないように、
一方はミルタザピンを上乗せして使用し、
もう一方は偽薬を同様に使用して、
52週間の治療効果を比較検証しています。

ミルタザピンは1日15ミリグラムで開始し、
2週間後に30ミリグラムに増量にして持続します。

その結果、
治療開始12週の時点で、
ミルタザピンの上乗せ群でうつ尺度は改善する傾向を示しましたが、
偽薬と比較して有意な差は認められませんでした。
眠気などの副作用や有害事象は、
ミルタザピン群で有意に増加していました。

このように、
今回の検証においては、
SSRIもしくはSNRIへのミルタザピンの上乗せは、
明確なうつ症状の改善に結び付きませんでした。

ただ、無効であるという結果ではなく、
現状こうした併用が一般に行われているという現状を考えると、
個別にはその使用を否定するというものではありません。

ただ、現状経験的にこうした治療が行われている点には、
その有効性が実証されていない、という問題があり、
今後どのような選択肢がより有効であるのか、
科学的な検証が行われる必要性が高いと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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心不全に対する減塩の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心不全に対する減塩の効果.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌のレビューですが、
心不全の予後改善のために減塩が良いという、
どの教科書にも書いてある当たり前のアドバイスが、
実はあまり明確な根拠に乏しいという、
興味深い内容の論文です。

食事の塩分を制限することが健康に良いという考え方は、
高血圧や心臓病、腎臓病などにおいて、
ほぼ確立された事実と考えられています。

ただ、1日10グラムを超えるような、
明らかな食塩過多が悪いということであって、
1日5グラムを切るような厳しい塩分制限が、
本当に健康的なのか、と言う点については、
その見解は一定していないのが実際です。

たとえば高血圧症においても、
一応ガイドライン上では1日6グラム未満の減塩が、
推奨されてはいますが、
強い塩分制限はむしろ高血圧の患者さんの予後を悪化させる、
という報告もあります。

心臓の機能が低下して、
身体に水が溜まったり、呼吸が苦しくなったりする心不全では、
体液量が体内のナトリウム量で規定されるという考えから、
極力塩分を制限した方が、
心臓への負担が減り予後の改善に繋がる、
という考え方があります。

その見地から現行の日本のガイドラインでは、
慢性の心不全の患者さんでは、
1日6グラム未満の塩分制限が推奨されています。

ところが、
実際にはより強力な塩分制限により、
心不全の予後に悪影響があり、生命予後も悪化した、
というような報告もまた認められます。

今回のレビューでは、
これまでに行われたこの分野の主だった臨床データを、
メタ解析の手法でまとめて解析していますが、
それによると評価に値するデータは、
全体で9つの研究のトータル479名のものしかなく、
個々の研究の症例数は、
いずれも100例に満たない小規模な研究ばかりでした。

減塩の効果を入院中の患者さんで見ると、
減塩の明確な効果は認められませんでした。
一方で外来のみの検証では、
4つの研究のうち2つでは明確な予後の差はなく、
残りの2つでは一定の心不全のレベルの改善効果が認められました。

つまり、入院しているような、
比較的重症の事例では、
過度の減塩はむしろ患者さんに悪影響を与える可能性がある一方、
比較的軽症の外来の心不全の患者さんでは、
減塩には一定の予後改善効果がありそうです。

この場合の減塩というのは、
概ね1日2から3グラムという高度のものなので、
免疫力を落とし、生命予後を悪化させることも、
充分に想定出来ます。
入院では厳密な減塩が可能となる一方、
外来では実際にはそこまでは出来ないので、
それが結果の違いとなったようにも思われます。

いずれにしても、
1日5グラムを切るような減塩が、
心不全においても予後改善に結び付くという根拠は乏しく、
ガイドライン上の常識ではあっても、
今後は再検証が必要な事項ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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スタチンの卵巣癌予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの卵巣癌予防効果.jpg
2018年のInternational Journal of Cancer誌に掲載された、
コレステロール降下剤の卵巣癌予防効果についての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
その心血管疾患の予防効果は確立されています。

それ以外にスタチンには抗炎症作用や、
免疫調整作用などの作用があるとされていて、
それが抗癌剤の作用増強や癌の進行予防に、
一定の効果があるのではという考え方があり、
それを示唆するデータも発表されています。
ただ、この点についてはまだ、
確立されたものとは言えません。

今回の研究はアメリカにおいて、
卵巣癌を発症した患者さん2040名を、
年齢などをマッチさせた2100名のコントロールと比較して、
卵巣癌のリスクに対するスタチン使用の影響を検証しています。

その結果、
スタチンの使用は未使用と比較して、
卵巣癌の発症リスクを32%(95%CI:0.54から0.85)
有意に低下させていました。

ここでスタチンを、
組織移行などにおいて差のある、
水溶性スタチン(プラバスタチン、ロスバスタチン)と、
脂溶性スタチン(シンバスタチン、アトルバスタチン、
ピタバスタチン、フルバスタチン)とに分けて分析すると、
卵巣癌の有意な低下は脂溶性スタチンにおいて、
著明に認められ、水溶性スタチン単独では、
有意には認められませんでした。
また、このスタチンの予防効果は、
49歳以降で使用した場合で、
使用期間は2から4.9年において最も顕著に認められました。

このように、
スタチンの使用により、
今回の疫学データにおいても、
卵巣癌の有意な低下が認められました。

ただ、結果は使用期間が5年を超えると有意ではないなど、
明確な用量依存性がなく、
今回の検証でもその効果は、
明確に実証されたとは言えないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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