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糖尿病性網膜症に対するスタチン治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンと糖尿病性網膜症.jpg
2019年のJAMA Ophthalmology誌に掲載された、
スタチン治療が糖尿病性網膜症に与える影響についての論文です。

2型糖尿病の治療は新薬の開発などもあり、
日々進歩をしていますが、
それでも全身の血管に影響を与える合併症は、
血糖コントロールが安定していても、
完全には予防出来ないのが実際です。

糖尿病性網膜症は小血管合併症の1つで、
網膜の血管に出血などの変化が起こり、
進行すれば失明のリスクも高い深刻な合併症です。

ただ、その予防については、
血糖やコレステロール、血圧を正常に保つ、
ということ以外には、
現状決め手がないのが実際です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
コレステロール降下作用のみならず、
抗炎症作用なども併せ持っていて、
動脈硬化の進行予防薬として、
その評価は確立している薬剤です。

ただ、血糖を上昇させるような作用も持っているため、
糖尿病の患者さんへの使用については、
その適応について色々な見解があります。

今回の研究は台湾のもので、
年齢などをマッチングさせた、
スタチンを使用している2型糖尿病で脂質異常症の患者さん18947名を、
スタチンは未使用の18947名と比較して、
中央値で7.6年の経過観察を行い、
糖尿病性網膜症の進行を比較検証しています。

その結果、
観察期間中にスタチン使用群の2004名と、
未使用群の2269名が糖尿病性網膜症を新規発症しています。
スタチン使用群は未使用群と比較して、
糖尿病性網膜症全体のリスクを14%(95%CI: 0.81から0.91)、
増殖性網膜症のリスクを36%(95%CI: 0.58から0.70)、
硝子体出血のリスクを38%(95%Ci: 0.54から0.71)、
網膜剥離のリスクを39%(95%CI: 0.47から0.79)、
黄斑浮腫のリスクを40%(95%CI: 0.46から0.79)と、
それぞれ有意に低下させていました。

つまり、スタチンの使用により、
かなり明確に糖尿病性網膜症が予防されている、
という結果です。

ただ、この研究では、
血糖値やコレステロール値などの臨床検査値が、
殆ど検討されていないので、
そうした数値の影響が実際には大きい、
という可能性も否定は出来ません。

今後スタチンが本当に独立して網膜症を予防可能なのか、
より詳細かつ厳密な検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていいい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者肺炎の重症度の指標について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
プロカルシトニンと高齢者肺炎.jpg
2019年のBMC Geriatrics誌に掲載された、
高齢者の肺炎の重症度を予測する指標についての論文です。

肺炎というのは、
お子さんから高齢者まで罹患する、
重症の感染症を代表する病気の1つです。

その原因には肺炎球菌などによる細菌性以外に、
ウイルス性や真菌性、
アレルギー性のものなど多くがあり、
それぞれに対して治療は異なるので、
その鑑別診断が非常に重要です。

肺炎の診療において大切なことは、
その原因を含めて肺炎を早期に診断することと、
その重症度を適切に判断することです。

この重症度の判定において、
以前から補助的に使用されていたのが、
CRPと呼ばれる血液検査です。

CRPは炎症反応と呼ばれる検査の代表で、
インターロイキン6というサイトカインによって、
肝臓で産生される炎症物質です。

この数値は一般的に言えば、
身体の炎症が強いほど高くなるので、
肺炎の重症度の指標にもなると思われます。

ただ、このCRPは肺炎の原因の鑑別には、
殆ど役に立ちませんし、
肝機能が低下したような時には数値が上がりません。
肺炎のような炎症以外にも、
関節リウマチや動脈硬化などによっても、
数値が上昇するので、
その数値により肺炎の重症度を予測することは、
あまり信頼性の高い方法とは言えません。

近年CRPに変わる炎症の指標として、
プロカルシトニンという検査が注目されています。
この検査はカルシトニンというホルモンの前駆体ですが、
特に細菌感染症において組織で産生されることが分かっています。

この検査はCRPとは異なって、
細菌感染症で特異的に増加し、
特に敗血症など重篤な状態で増加することが、
臨床データによって明らかとなっています。

このため、肺炎の重症度の予測や、
それが細菌感染症であるかどうかの判断には、
CRPよりプロカルシトニンが適している、
という考え方が高まりました。

しかし…

たとえば2013年のBritish Medical Journaln誌に掲載された研究では、
肺炎の診断においてはプロカルシトニンは単独で有用な指標ではなく、
白血球とCRPの方が有効であった、という結果になっています。

何が最も肺炎の診断や予後予測に有用であるのか、
この問題はまだ解決には至っていないようです。

今回の研究は福岡大学筑紫病院の研究者によるものです。
肺炎の患者さんトータル667名を解析したもので、
そのうちの436名は75歳以上の高齢者でした。

多変量解析において、
血液のアルブミン濃度や体格の指標のBMI、
肺炎の臨床的重症度指標、などと比較して、
プロカルシトニンの高齢肺炎患者の30日後の生命予後に対する関与は、
より小さなものとなっていました。

年齢に関わらずプロカルシトニンの数値は、
30日後の死亡リスクに対する、
独立した予測因子とはなっていませんでした。

肺炎の重症度との関連で見ると、
重症の肺炎であるほどプロカルシトニンの数値は有意に高値で、
年齢に問わず一定の重症度の指標となっていましたが、
白血球数やCRPについては、
重症度と検査値との間に、
明らかな関連は認められませんでした。

サブ解析においては、
細菌性肺炎の代表である肺炎球菌による肺炎において、
その重症度が高いほどプロカルシトニン値も有意に増加していました。

このように、
高齢者においてもプロカルシトニンの数値と、
肺炎の重症度との間には一定の関連が認められましたが、
その一方で生命予後を予測する独立した指標とは、
認められませんでした。

現状は個々の数値を、
患者さんの状態や病状に合わせて、
幾つか組み合わせながら臨床的な判断をしてゆくしか、
ないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アスピリン使用によるCOPDの予後改善効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COPDにおけるアスピリンの有効性.jpg
2018年のChest誌に掲載された、
慢性の肺疾患に対するアスピリン使用の効果についての論文です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、
主に喫煙に伴って、
肺に慢性気管支炎などの肺の炎症が起こり、
それが気道の細菌感染などをきっかけとした急逝増悪を繰り返し、
肺気腫へと進行して呼吸不全に至る、
という病気です。

このCOPDに対しては、禁煙に加えて、
抗コリン剤や気管支拡張剤、ステロイド剤などの吸入が、
呼吸機能の改善や急性増悪の予防目的で使用されています。

ただ、COPDは全身の炎症性疾患という側面があるのですが、
現行の治療は気道の局所の炎症を抑えるには有効でも、
全身の炎症に対しては有効ではありません。

そのために、
全身の炎症への対応として、
マクロライド系の抗菌剤の継続使用や、
スタチンの使用が試みられていますが、
抗菌剤には耐性の問題や聴力低下などの有害事象の問題があり、
スタチンの有効性は、
精度の高い臨床試験にておいては確認されていません。

低用量のアスピリンには抗血小板作用や抗炎症作用があり、
COPDにアスピリンを使用すると、
未使用と比較して生命予後が改善することを、
示唆する疫学データが存在しています。
しかし、データは限られていてその詳細も不明です。

そのため今回の研究では、
COPDの患者さんの疫学データを活用して、
503組のアスピリン未使用と使用のペアにより、
アスピリンの使用がCOPDの予後に与える影響を検証しています。

その結果、
アスピリンの使用により、
COPDの急性増悪のリスクは22%(95%CI: 0.65から0.94)
有意に低下していました。
ただ、救急外来受診や入院を要するような、
重症の事例に限って解析した場合には、
そのリスクの低下は有意ではなくなりました。

また患者さんの呼吸困難度やQOLについても、
アスピリン使用群で改善する傾向を示しました。

このように今回の解析では、
アスピリン使用がCOPDの予後に、
一定の改善をもたらす可能性が示唆されました。

アスピリンには出血系の合併症などの有害事象もあり、
今後より精度の高い介入試験を実施して、
患者さんにとって有効性と安全性のバランスの問題が、
解決されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高感度CRPと肺癌リスクとの関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
CRPと肺癌.jpg
2018年のBritish Medical Journals誌に掲載された、
炎症反応の検査値と肺癌のリスクとの関連についての論文です。

CRPというのは、
炎症に伴って肝臓で産生される蛋白質で、
炎症の急性期に高値となることから、
その血液濃度の測定は、
「炎症反応」と呼ばれて臨床に広く使用されている検査です。

通常その値は、
0.3mg/dL以下であれば正常と判断されていますが、
近年高感度CRPと言って、
0.01mg/dLまで正確に測定出来るようになると、
通常の基準値であれば正常値であっても、
それがやや高いということが、
身体の状態にとって意味があるのではないか、
という知見が多く報告されるようになりました。

動脈硬化の進行に伴う、
心筋梗塞や脳卒中のような心血管疾患では、
その進行度によって、
高感度CRPが上昇する、
という知見があります。

また、肺癌を含む複数の癌において、
矢張り高感度CRPが上昇しているという知見が報告されています。

今回の検証は喫煙歴や癌の組織型を分けて、
肺癌と高感度CRPとの関連をみたものです。

アジア、ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカにおける、
20種類の疫学データをまとめて解析したもので、
5299名の肺癌と診断された患者さんを、
年齢などをマッチさせた同じ5299名のコントロールと比較しています。

その結果、
肺癌と診断されるリスクと高感度CRPとの間には、
喫煙歴のない非喫煙者では、
明確な関連は認められませんでした。
その一方で現在の喫煙者では、
高感度CRP値が2倍に増加することにより、
肺癌のリスクが9%(95%CI: 1.05から1.13)、
喫煙歴のある非喫煙者でも9%(95%CI: 1.04 から1.14)と、
それぞれ有意な肺癌リスクの増加が認められました。

肺癌の組織型との比較では、
腺癌では明確な関連は認められませんでしたが、
小細胞癌と扁平上皮癌においては、
特に喫煙歴のある非喫煙者において、
高感度CRPとの間に有意な関連が認められました。

この高感度CRPと肺癌リスクとの関連は、
特にCRP測定後1から2年の間の、
肺癌発症リスクと高い相関を示していました。

このことから、
高感度CRPの上昇で推測される、
身体の軽度の炎症は、
肺癌の原因であるというより、
その初期診断のマーカーとしての意味を持っている可能性が高い、
と推察されました。

炎症反応の上昇は、
様々な病気によっても引き起こされるものなので、
高感度CRPの計測を肺癌の早期診断に利用する、
というのは実現性は低い考え方であるように思いますが、
組織型や喫煙歴によっても、
高感度CRPの数値と肺癌リスクとの関連に差がある、
という今回の知見は興味深く、
今後の知見の蓄積を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者への長期の運動習慣の健康効果(2018年のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高齢者への運動の効果のメタ解析.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
高齢者が定期的に運動することの効果についてのメタ解析の論文です。

定期的に運動の習慣を持つことが、
筋肉量を維持して骨折を予防し、
心血管疾患や認知症の予防にもなることは、
これまでの多くの疫学データや観察研究により、
ほぼ確立された事実です。

ただ、1年以上の長期の運動習慣が、
高齢者に与える影響というように限定すると、
それほど裏打ちとなるデータが豊富にある訳ではありません。

2014年のJAMA誌に掲載された、
LIFE(ライフ)研究は、
その数少ない介入試験のデータです。
それがこちらです。
高齢者への運動の効果ライフ研究.jpg
ここでは70歳から89歳の一般住民1635名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は健康維持の指導のみを行ない、
もう一方は週に2回(家庭では3から4回)の運動を行なって、
平均で2.6年の経過観察を行なっています。

その結果、
400メートルの歩行が困難となるような身体機能低下は、
運動療法群で28%有意に予防されていました。
しかし、その一方で病気での入院や死亡は、
むしろ運動療法群で多い傾向が認められました。

高齢者の身体機能の低下は様々ですから、
画一的に運動を強制するようなことを行なっても、
かならずしも高齢者のトータルな予後を、
改善することには結び付かない可能性もある、
という問題を示唆する結果です。

今回の研究はその後に発表されたデータも含めて、
60歳以上の高齢者を対象に、
1年以上の運動療法の効果を検証した臨床データを、
まとめて解析する、スステマティック・レビューとメタ解析という手法で、
この問題の現時点でのまとめを行なっています。

これまでの46の臨床研究における、
22709名のデータをまとめて解析した結果として、
概ね週に3回程度のエアロビックやバランス体操を取り入れた運動療法は、
転倒のリスクを12%、
外傷性転倒のリスクを26%、それぞれ有意に低下させ、
有意ではないものの骨折のリスクも低下させる傾向を示しました。
ただ、頻回の骨折や入院のリスク、
また生命予後の改善効果は有意には見られませんでした。

つまり、高齢者の長期の運動療法は、
ライフ研究単独と同様、
今回のメタ解析においても、
骨折や転倒のリスクの予防にはなっても、
明確に患者さんの生命予後や、
健康寿命の延長には結び付くとは言えないようです。

運動習慣は確かに高齢者においても、
転倒予防や筋力の維持などには有効ですが、
それ自体身体に負荷を掛ける行為ではあるので、
個々の高齢者の状態に応じて、
画一的ではなく、
きめ細かい個別の対応が必要な事項であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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血液アルコール濃度の規制値変更と飲酒運転予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルコール濃度と飲酒運転予防効果.jpg
2018年のLancet誌に掲載された、
血液アルコール濃度の基準値の変更が、
飲酒運転予防に与える影響についての論文です。

飲酒運転による自動車事故は、
日本でも最近大きな問題となっていますが、
海外でもその状況は同じで、
個々の国においてそれぞれの、
飲酒運転の規制の法律が施行されています。

ただ、検査においてどのレベルを超えるアルコールが検出されれば、
それを飲酒運転と見做すかという基準値には、
各国において少なからず違いがあります。

日本では血液のアルコール濃度が、
0.3mg/mL以上が飲酒運転(正確には酒気帯び運転)
の基準として使用されていますが、
これは世界でも厳しいレベルの基準値で、
欧米では0.8mg/mLを基準としていることが多く、
それが最近0.5mg/mLに厳しくなって来ている、
というのが実状であるようです。

基準値を厳しくすることには、
どのような効果があるのでしょうか?

一般的には法律で基準値を厳しくすることにより、
より少量のお酒でも捕まるということがある、
という認識が広まって、
飲酒後の運転により気をつけるようになり、
飲酒運転が減るという抑止効果があると、
そうした効果が期待をされています。

しかし、そうした効果は実際に証明出来るものなのでしょうか?

スコットランドにおいては、
2014年に血液アルコール濃度の基準値が、
0.8mg/mLから0.5mg/mLへと厳格化されました。

今回の研究では基準値厳格化前後の、
飲酒運転による事故や飲酒量などの疫学データ、および、
コントロールとして基準値が0.8mg/mLのまま固定されている、
イギリスやウェールズの疫学データも比較して、
基準値厳格化の影響を検証しています。

その結果、飲酒運転の基準厳格化の前後において、
バーやレストランでの個人の飲酒量は若干低下が認められましたが、
交通事故の頻度には明らかな違いはなく、
イギリスやウェールズとの比較では、
むしろ事故数は基準が厳格化したスコットランドで多い傾向がありました。

これはトータルな事故の件数を見たものですから、
これだけで基準値の厳格化が無意味とは言えませんが、
単純に基準を厳格化すれば、
それだけで飲酒事故が減ると考えるのは誤りで、
「飲んだら乗るな」の啓蒙活動を含めて、
飲酒運転の撲滅のためには、
その効果を含めて科学的かつ多角的な検証が、
必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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シャワーヘッドの汚染による非結核性抗酸菌症のリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは1月5日から、
いつも通りの診療を行っています。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シャワーヘッドの汚染.jpg
2018年のmBio誌に掲載された、
シャワーヘッドの細菌汚染が身体に与える影響についての論文です。

シャワーや入浴は身体を清潔にして、
感染症の予防効果もあると一般的には考えられています。

実際入浴の温熱による免疫力の賦活作用や、
サウナによる肺炎予防効果などが報告はされています。

一方で浴室やシャワールームは、
感染のリスクのある場所でもあります。

循環系の浴槽では、
クラミジアのような特殊な細菌が繁殖し、
難治性の肺炎などの原因となることがあります。
浴室は湿気が多く、
カビなどが繁殖することにより、
その吸入により気管支炎や肺炎などを起こすこともあります。
病原体が微小な水滴と一緒に吸引されると、
より肺の奥まで病原体が吸引されるので、
感染のリスクが高いと考えられています。

シャワーは塩素消毒された水道水が、
勢いよく噴出して身体を洗うもので、
それだけ考えると清潔で、
感染症の問題などはないように思えます。

ただ、実際にはシャワーヘッドの部分などには、
澱などが溜まりやすい死角があり、
そこにムコ多糖などと一緒になった形で、
細菌がバイオフィルムという構造を形成すると、
消毒薬などにも抵抗性となり、
それが予期せぬ病気の原因となることもあるのです。

今回の研究ではアメリカやヨーロッパにおいて、
656家庭のシャワーヘッドを調査したところ、
高率に細菌のバイオフィルムが見つかり、
塩素消毒した水道水においては、
塩素に抵抗性の強い、
非結核性抗酸菌症という慢性気道感染を起こす細菌が、
高率に検出されました。

そこで非結核性抗酸菌症の罹患率と、
シャワーヘッドの培養結果との関連を見たところ、
シャワーヘッドで非結核性抗酸菌が検出された地域で、
非結核性抗酸菌症の罹患率が高い、
という傾向が認められました。

これはまだ間接的なデータに過ぎないので、
シャワーヘッドの感染が、
非結核性抗酸菌症の原因であるとは言い切れませんが、
身近なところに意外な危険が潜んでいる可能性がある、
という点については、
心に留めておく必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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癌患者の静脈血栓塞栓症に対するアピキサバンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アピキサバンの癌に対する効果.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
癌の患者さんの合併症の予防のために、
経口の抗凝固剤を使用する臨床試験の結果についての論文です。

深部静脈血栓塞栓症というのは、
足などの末梢の静脈の流れが悪くなることにより生じた血の塊(血栓)が、
肺などの血管に詰まって肺梗塞などを起こす病気です。

エコノミークラス症候群と言われることがあるように、
長時間同じ姿勢を取っていたり、
身体が不自由で寝ていることが多い生活をしていると、
発症しやすいことが知られています。

そして、それ以外に発症リスクが高いのが、癌の患者さんです。

癌の患者さんでは生活も不自由になることが多い上に、
癌自体が血栓症のリスクになります。

ただ、こうした患者さんでは出血のリスクも高いので、
予防のために血を固めにくくする薬を使用することは、
患者さんの予後を必ずしも良くするとは限りません。
そのために現行のガイドラインにおいて、
癌の患者さんにおける抗凝固療法は、
明確に推奨はされて来ませんでした。

今回の臨床研究は最近使用されている抗凝固剤のうち、
出血系の合併症の少ない薬と評価されているアピキサバン(エリキュース)を、
血栓症のリスクの高い癌患者さんに使用して、
その予防効果を検証しているものです。

抗癌剤を使用中で静脈血栓症のリスクの高い癌の患者さん、
トータル574名を患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方にはアピキサバンを1回2.5mgという低用量で1日2回使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
180日間を超える経過観察を施行しています。
(intention to treat 解析)

その結果、
偽薬群の静脈血栓症発症率が、
275名中28例の10.2%であったのに対して、
アピキサバン群では288名中12例の4.2%で、
アピキサバンの使用により静脈血栓症のリスクは、
59%(95%CI: 0.26 から0.65)有意に低下していました。
治療期間において、
重篤な出血系の合併症はアピキサバン群で6例(2.1%)発症したのに対して、
偽薬群では3例(1.1%)の発症に留まっていて、
これは有意ではないものの、
矢張り出血のリスクは2倍程度に上昇することが示唆されました。
生命予後には両群で差はありませんでした。

このように、
静脈血栓症のリスクの高い癌の患者さんにおいて、
アピキサバンの少量継続使用によって、
そのリスクが低下することはほぼ間違いがありません。
ただ、出血系の合併症が少なからず増加し、
生命予後には差はないという今回の結果を見ると、
その使用は症例を選んで検討することが妥当であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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フィンランドサウナの心血管疾患予防効果(前向きコホート研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
サウナの心疾患予防効果.jpg
2018年のBMC Medicine誌に掲載された、
サウナの健康効果についての論文です。

入浴は世界中において、
古くから好まれている生活習慣で、
皮膚などの清潔を保つと共に、
その温熱効果により気分をリラックスし、
血流を一時的にせよ高めるという効果があります。

より長期的に入浴習慣に健康面での効果があるかどうか、
と言う点については、
現時点であまり明確なことが分かっていません。

一部には体温を上昇させることにより、
ヒートショックプロテインを増やし、
免疫を活性化させる、
というような知見もありますが、
それは仮説の域を出ないように思います。

入浴法により健康効果に違いがあるのではないか、
という見解も以前からあります。

日本で行われているような、
首まで熱い湯に浸かる全身浴は、
血圧や脈拍に与える影響が大きく、
入浴中の突然死に繋がるリスクが高い、
という側面があるからです。

フィンランドはサウナ発症の地で、
比較的低温のサウナが一般的な入浴法として普及しています。

サウナというのは湯船に浸からないために、
純粋の温熱効果のみが得られるので、
全身浴と比較してより健康に利する可能性があるのです。

実際これまでに大規模なフィンランドの観察研究において、
サウナの心血管疾患予防効果や肺炎予防効果などが認められ、
過去にブログ記事にもしています。

ただ、これは観察研究ですから、
例数は多くてもそれほど精度の高いものではありません。

今回の研究は一定の住民を登録して、
10年以上の長期の観察を行ったもので、
この分野ではこれまでにあまりなかったタイプの臨床研究です。

フィンランドにおいて、
一般住民1688人を登録し、
登録の時点でのサウナの利用頻度を聞き取りすると、
その後中間値で15年間の経過観察を行っています。

その結果、
心血管疾患の死亡リスクは、
サウナの使用頻度が高いほど低い、
という一定の相関が認められました。

週に1回のサウナ習慣と比較して、
2から3回のサウナ習慣のある住民は、
29%(95%CI: 0.52から0.98)、
4から7回のサウナ習慣のある住民は、
70%(95%CI: 0.14から0.64)、
それぞれ有意に心血管疾患による死亡リスクが低下していました。

これはサウナ習慣がかなり一般的な、
フィンランドに限ったデータで、
運動の健康効果に近いものを、
見ているという可能性もあります。

ただ、前向きコホート研究において、
入浴の健康効果がここまで明確に証明されたことはこれまでになく、
今後は他の入浴法との差についても、
科学的な検証が進むことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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一過性脳虚血発作と軽症脳卒中に対する抗血小板剤の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
TIAと軽症脳卒中の抗血小板療法.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
軽症脳卒中後の抗血小板剤の2剤併用療法の効果についての、
メタ解析の論文です。

一時的に言葉が出なくなる、手に力が入らなくなる、
などの症状が出現して改善する、
一過性脳虚血発作と、
虚血性脳卒中と診断されるも軽症で、
退院の時点では全く後遺症はないか、
あっても軽微で日常生活には制限は生じない
(modified Rankin Scaleという指標で0か1)
軽症虚血性脳卒中においては、
後遺症はないか軽微であっても、
その後より重篤な脳卒中に進行したり、
再発して予後の悪化するリスクが、
高いことが知られています。

そのため予後の改善目的で抗血小板剤による治療が行われます。

こうした場合に最も多く使用されているのは、
低用量のアスピリンで、
それ以外にクロピドグレルやシロスタゾールも使用されています。

一方でこうした場合の予後改善には、
単剤の抗血小板剤では不充分で、
2種類の抗血小板剤を併用する必要があるのではないか、
という意見があり、
アメリカの専門家のガイドラインの1つでは、
弱い推奨として、
アスピリンとクロピドグレルを発作後24時間以内に開始し、
それを21日間継続する、
という治療法が記載されています。

これまでに3つの精度の高い臨床試験が、
アスピリン単独と併用療法を比較しています。
アメリカのみで行われた比較的小規模な試験と、
アメリカとヨーロッパ、オーストラリアなどで行われた大規模臨床試験、
そして中国で行われた大規模臨床試験です。

今回の研究はその3つの臨床試験を併せて解析したメタ解析で、
この問題の現時点での一定の結論を導くことを目的としています。

トータルで10447名の臨床データをまとめて解析した結果として、
一過性脳虚血発作と軽症虚血性脳卒中発症後24時間以内に、
クロピドグレルとアスピリンを併用すると、
アスピリンの単独使用と比較して、
総死亡のリスクには有意な影響を与えずに、
非致死性脳卒中再発のリスクが、
30%(95%CI: 0.61から0.80)有意に低下していました。
ただ、中等度もしくは重度の頭蓋内以外の出血のリスクは、
1.71倍(95%CI: 0.92 から3.20)
と有意ではないものの増加する傾向を示しました。
併用療法とアスピリン単独との差は、
開始後10日から明確になり、
21日間を超える使用では有用でないと推測されました。

要するに、
一過性脳虚血発作もしくは軽症虚血性脳卒中発症後、
24時間以内にアスピリンとクロピドグレルの投与を開始すると、
アスピリン単独の場合と比較して、
患者さん1000人当り20人の脳卒中の再発を予防可能です。
その一方で同じ1000人当り2人には、
中等度以上の出血系の合併症がそのために発症します。
この効果を得るためには10日以上の使用が必要である一方、
21日以上の併用には意味がないと考えられます。

これまでの臨床試験においては、
クロピドグレルの用量は1日75ミリグラムから600ミリグラムと、
かなりの幅があり、
その使用法も初期量のみ多くするなど試験により様々です。

今回の検証により、
一定期間の併用療法の効果は、
ほぼ確認をされたと言って良いので、
今後その用量や期間を含めて、
適切なガイドラインが、
日本を含めて作成されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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