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高齢者の尿路感染症に対する早期の抗菌剤治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
尿路感染症における抗菌剤の効果.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載されて、
高齢者の尿路感染症に対する抗菌剤治療の効果についての論文です。

多くの抗菌剤が効かない耐性菌の問題などのために、
抗菌剤の使用を減らそうという動きが、
世界的に加速しています。

重篤な感染症ではなくて、
抗菌剤が適応となっている病気というと、
溶連菌感染による急性の扁桃炎と、
単純性尿路感染症(膀胱炎)がその代表です。

女性は尿道が短いなどの構造的な理由があって、
男性よりも膀胱炎を起こし易いので、
女性の膀胱炎に対する抗菌剤の使用は、
短期間であれば必要な処方であると考えられます。
現行の国際的なガイドラインにおいて、
単純性尿路感染症の第一選択の治療薬剤は、
ホスホマイシンとニトロフラントインです。

この2種類の抗菌剤はいずれも古い薬ですが、
効果が通常の尿路感染の病原体などに限定されていて、
耐性菌の誘導を起こし難いと考えられていることから、
こうしたチョイスになっているのです。

ホスホマイシンは日本でも使用可能な薬ですが、
ニトロフラントインは日本未発売の薬です。

抗菌剤はむしろ古い薬の方が有用性が高いのですが、
日本においては製薬会社が新薬を出すと、
同様の効能の古い薬は販売しない流れになるので、
本当に有用性の高い薬の多くが、
日本では流通していない、
というような皮肉な事態となっているのです。

医学は進歩しているので、
新しく出る薬の方がより優れた薬の筈だ、
という誤った進歩史観が、
こうした歪んだ現状を生んでいるように、
個人的には思います。

さて、単純性尿路感染症の治療において、
症状出現後するに抗菌剤を使用するべきなのか、
それとも数日は様子をみて、
改善がなかったり悪化した場合のみ抗菌剤を使用するべきなのか、
といった点についてはまだあまり明確な指針が示されていません。

単純性尿路感染症は通常は軽症で終わる病気なので、
その意味では数日の経過を見てから、
抗菌剤使用の判断をしても良いような気がします。
しかし、一方で高齢者においては、
尿路感染症から敗血症に移行して重症化するというケースも、
少なからず報告されているので、
その点を重視するのであれば、
より早期に抗菌剤治療を開始した方が良いようにも思います。

それでは、実際に抗菌剤の使用のタイミングによって、
高齢の患者さんの尿路感染症の予後には違いがあるのでしょうか?

その点を検証する目的で今回の研究では、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用して、
65歳以上で1回は尿路感染症と診断を受けている、
トータル157264名のデータを解析し、
尿路感染症の診断と抗菌剤の使用のタイミング、
そして敗血症への進行などの予後との関連を検証しています。

その結果、
尿路感染症の診断後60日以内に、
全体の0.5%に当たる1539件の事例で敗血症を発症しており、
診断後速やかに抗菌剤が処方された場合と比較して、
診断同日には処方されず1週間以内に処方されたケースでは、
敗血症のリスクは7.12倍(95%CI: 6.22から8.14)、
抗菌剤が未使用のケースでは8.08倍(95%CI: 7.12から9.16)、
それぞれ有意に増加していました。

入院のリスクも速やかに抗菌剤が使用された場合と比較して、
抗菌剤の使用が遅れても未使用でも、
ほぼ2倍に増加していました。

また総死亡のリスクについても、
抗菌剤が即日使用された場合と比較して、
遅れて使用された場合には1.16倍(95%CI: 1.06から1.27)、
未使用の場合には2.18倍(95%CI: 2.04から2.33)、
それぞれ有意に増加していました。

使用頻度も最も高かった抗菌剤は、
ST合剤でした。

このように、
今回のイギリスのデータにおいては、
65歳以上の高齢者の尿路感染症は、
診断と同時に抗菌剤を使用することで、
敗血症の予防のためにも生命予後の改善のためにも、
有益である可能性が高い、
という結果になっています。

これは介入試験のようなものではないので、
まだ確定的な知見ではありませんが、
高齢者(データによれば特に85歳以上の男性)においては、
尿路感染症は診断と同時に抗菌剤を使用開始することが、
その予後改善のために有用な可能性が高いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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心房細動治療に対するカテーテルアブレーションと内服治療の比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
カテーテルアブレーションの生命予後に対する効果.jpg
JAMA誌に掲載された、
心房細動における2種類の治療を比較検証した論文です。

心房細動は心房が痙攣様に収縮して、
脈拍が乱れた状態が続く不整脈で、
75歳までに人口の10%はこの不整脈を発症すると報告されています。
(海外データ)

その最も深刻な合併症は、
心臓に生じた血栓による脳卒中ですが、
それ以外に心不全などのリスクも増加し、
抗凝固剤の適切な使用により、
脳卒中のリスクが予防されても、
総死亡のリスクは心房細動がない場合の、
2倍に増加すると報告されています。

また命に関わることはなくても、
不整脈発作時の動悸や息切れなどの症状は、
人によってはかなり不快なもので、
日常生活にも大きな制限が生じることも稀ではありません。

心房細動の治療としては、
不整脈を電気ショックなどの方法で元に戻すことと、
抗凝固剤や抗不整脈剤を使用する内服治療があります。

また、最近では不整脈の原因となっている部分を、
カテーテルを利用して焼却する、
カテーテルアブレーションと呼ばれる侵襲的な治療が、
広く行われるようになっています。

カテーテルアブレーションは成功すれば、
患者さんは不整脈から解放されることになるので、
患者さんにとって大きなメリットのある治療です。
ただ、一方で再発は稀ではなく、
何度も繰り返し治療が必要となることもあります。
また、長期的に患者さんの予後を、
薬物治療と比較して改善するかどうかは、
まだ比較的小規模の研究でしか検討されていません。

今回の研究は、
カテーテルアブレーションの治療と薬物療法の間で、
その生命予後や脳卒中の発症、出血系の合併症、心停止などのリスクを、
これまでにない多数の事例で比較検証したものです。

世界10か国の126の専門施設において、
慢性心房細動もしくは過去6か月に2回以上一過性心房細動の確認された、
トータル2204名の症状のある心房細動の患者さんで、
年齢は65歳以上、もしくは65歳未満でも、
脳卒中のリスクが高い患者さんは対象となっています。
治療としては各種ガイドラインにおいて、
抗凝固療法の適応があると判断された患者さんでは、
全例で抗凝固療法が施行されています。

その上で、
対象者をくじ引きで2つの群に分けると、
一方はカテーテルアブレーションを施行し、
もう一方は抗不整脈剤などを含む投薬治療を施行して、
中央値で48.5か月の経過観察を行い、
両群の生命予後や脳卒中のリスクなどを比較しています。

その結果、
総死亡と後遺症を残す脳卒中、重篤な出血系合併症、
そして心停止を併せた頻度は、
カテーテルアブレーション群の8.0%、
薬物治療群の9.2%に認められ、
両群に有意な差は認められませんでした。

個別のリスクの解析では、
総死亡のリスクについては両群では差はなく、
心血管疾患による死亡と入院を併せたリスクは17%、
心房細動の再発のリスクは48%、
いずれも薬物治療群と比較してアブレーション群では有意に低下していました。

このように、
確かにカテーテルアブレーションは、
心房細動の再発の抑制などの点において、
一定の優位性はあるのですが、
トータルに患者さんの生命予後に見た時には、
明確な差は薬物治療と比較して認められない、
というのが結論になっています。

同じ雑誌の紙面にもう1篇、
同じ研究の別の側面をまとめた論文が掲載されています。
それがこちらです。
カテーテルアブレーションのQOLに対する効果.jpg
これは同じ臨床試験において、
患者さんの自覚症状などのQOLの差を見たものです。

ここでは治療開始後12か月の時点で、
カテーテルアブレーション群が薬物治療群と比較して、
明確にQOLの改善を認めていることが示されています。

つまり、心房細動の不快な症状のコントロールと言う面では、
明確にカテーテルアブレーションが、
薬物治療と比較して優れている、
と言って良いようです。

このように、
カテーテルアブレーションの治療は、
薬物治療と比較して多くの利点を持っており、
心房細動の不快な症状に苦しんでいる患者さんにとっては、
積極的に施行するメリットのある方法です。
ただ、その再発率は4年間では5割を超えており、
決して再発が少ないとは言えません。
また、トータルな生命予後や脳卒中の発症などの点においては、
明確にアブレーションが優れているという根拠はなく、
その点も良く理解した上で、
どちらの治療を選択するか個別に検証する必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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抗酸化サプリメントの認知機能への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
サプリメントの認知症予防効果.jpg
2015年のJAMA誌に掲載された、
ω3系脂肪酸やカロテノイドの、
認知機能に対する影響を検証した論文です。

認知症の予防に関しては、
現状画期的な方法がある訳ではありません。

ただ、観察研究においては、
EPAやDHAのω3系脂肪酸や、
抗酸化作用を持つカロテノイドと呼ばれる自然由来の色素が、
認知症の発症リスクの低下に、
一定の有効性があることを示唆するデータが発表されています。

こうした成分をサプリメントとして摂ることで、
認知症を予防することが出来るのでしょうか?

今回の研究では、
加齢黄斑変性という目の病気に対する、
抗酸化サプリメントの効果を検証した、
大規模臨床試験のデータを活用して、
ω3系脂肪酸と、
ルテインとゼアキサンチンという、
抗酸化作用を持つカロテノイドの、
認知機能に対する効果を検証しています。

アメリカにおいて上記試験に参加した、
3741名の認知機能を経時的に測定した結果として、
ω3系脂肪酸とルテイン・ゼアキサンチンのサプリメントは、
非使用群と比較して、
認知機能の低下に明確な影響を与えませんでした。

こうした成分を適切に補充することは、
加齢黄斑変性を含め多くの病気の予防に、
一定の有効性が認められているので、
サプリメントとしての有効性が全て否定された、
という訳ではありませんが、
認知症の予防という観点においては、
過度な期待を持つことは禁物と考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ナトリウムとカリウムの摂取量と生命予後について(2019年大規模疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ナトリウムとカリウムの摂取量と健康.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
ナトリウムとカリウムの摂取量と心血管疾患リスク、
および生命予後への影響について検証した論文です。

これは何度か当ブログでもご紹介している、
PURE研究という大規模疫学データを、
これまでの論文より、長期間で検証した報告です。

塩分は毎日どのくらい摂るのが最も健康的なのでしょうか?

これはまだ完全には解決されていない問題です。

日本人は欧米人と比較すると、
伝統的な食生活においては、
塩分が多く脂質は少ないという特徴がありました。

かつての日本人は平均で1日20グラム以上という、
非常に沢山の塩分を摂っていて、
そのために脳卒中や胃癌が多かったのです。

その一方で欧米では、
塩分の摂取はそれほど多くない一方で、
脂質の摂取量は多く、
そのために心筋梗塞が多かったのです。

高血圧は脳卒中のリスクにもなり、
また心筋梗塞のリスクにもなりますが、
塩分の摂取量を減らすことにより、
高血圧の患者さんでは血圧が減少することが実証され、
そのことから、
塩分は制限すればするほど健康的である、
という考えが一般にも広まりました。

WHOは2025年までに、
塩分の摂取量を1日5グラム未満にすることを目標に掲げています。

ところが、2011年のJAMA誌に、
びっくりするような論文が発表されました。

高血圧の患者さんにおいて、
塩分摂取量の目安になる尿中のナトリウムの排泄量を、
病気のリスクと比較検証したところ、
尿中ナトリウム排泄量が4から6グラムの間が、
最も心筋梗塞や心不全、脳卒中による入院のリスクが小さくなり、
それより多くても少なくても、
そのリスクは増加する、
という結果が得られたのです。

尿中ナトリウム排泄が4グラムと言うのは、
食塩の1日の摂取量が10グラムくらいに相当します。

つまり、1日10グラムを切るような塩分制限は、
却って有害な可能性がある、という結果になっていたのです。

ただ、このデータは高血圧の患者さんの臨床試験のデータを、
後から解析したものなので、
病気による影響が否定出来ません。

それで、
高血圧の方もそうでない方もひっくるめて、
10万人余という対象者を登録して、
前向きにその予後を観察するという研究が、
同じ研究者のグループによって、
2014年8月のNew England…誌に発表されました。

それがPURE研究です。

対象者は世界中からエントリーされていますが、
42%は中国からの登録です。
それを含めて半数はアジアという布陣です。

24時間のナトリウム排泄量は、
平均で4.93グラムで、
カリウム排泄量は平均で2.12グラムです。
このナトリウム排泄量は、
食塩摂取量が12.5グラムに相当します。

3.7年の観察期間中に、
3.3%に当たる3317名に、
心血管疾患の発症や死亡が起こっています。

これをナトリウム排泄量から推測される食塩摂取量と対比させると、
ナトリウム排泄量が3から6グラム
(食塩摂取量で推定7.6グラムから15.2グラム)
の間が最も死亡と心血管疾患の発症リスクが低く、
それより高くても低くても、
リスクが増加することが確認されました。
一方でカリウムの排泄量に関しては、
それが少ないほどリスクは増加し、
排泄量が2グラムを越えると、
そのリスクの低下はなだらかになりますが、
ナトリウムのように逆転する傾向は認められていません。

この傾向は高血圧や基礎疾患のあるなしに関わらず、
同じように存在していましたが、
高血圧が存在していると、
ナトリウム排泄量と予後との関連はより強いものとなり、
その場合にはナトリウム排泄量が3グラム未満であっても、
ナトリウム排泄量が増えるほど、
リスクの増加は認められました。

要するに、2011年のJAMA誌の報告とほぼ同じように、
塩分摂取は多くても少なくても心血管疾患のリスクになっていたのです。

今回発表された研究は、
同様の検討を、
8年というより長期に渡り継続して再検証したものです。
観察期間の中央値は8.2年です。

その結果、
WHOの現行の目標値となっている、
ナトリウムの摂取量が2.0グラム(食塩換算で5.08グラム)未満で、
カリウムの摂取量が3.5グラムを上回るという条件を満たしていたのは、
全体の0.002%という低比率で、
総死亡と心血管疾患の発症とを併せたリスクが最も低かったのは、
ナトリウムの摂取量が3.5グラム(食塩換算で8.89グラム)で、
カリウムの摂取量が最も多い場合でした。

従って、
腎機能が正常であるという条件は付きますが、
最も健康上のメリットが大きいのは、
カリウムは多めに摂り、
塩分は食塩換算で7グラムから10グラム程度の制限に留めるのが、
現状は最も適切と考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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尿酸降下剤の心血管疾患に対する有効性(2019年日本の臨床研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日なのでクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
フェブリクスタットの心血管疾患有効性.jpg
2019年のEuropean Heart Journal誌に掲載された、
尿酸降下剤の心血管疾患の予後改善効果を検証した論文です。

これは日本国内の多施設臨床試験です。

尿酸降下剤としては、
アロプリノール(商品名ザイロリック)という薬が、
世界的には最も広く使用されています。
これは尿酸の合成を抑えて血液の尿酸を下げる効果の薬です。

その有効性は確立していますが、
問題は体質により重症薬疹の発症があることです。
遺伝子多型によりリスクが推測出来る、
というような報告もあるのですが、
現状は一般臨床において、
遺伝子検査により適応を判断する、
というような方法は使われていません。
その発症は欧米よりアジアにおいて多いとされています。

帝人ファーマにより開発されたフェブキソスタットは、
アロプリノールとは構造の異なる尿酸合成阻害剤で、
アロプリノールに変わり得る薬として注目されました。

アメリカでは武田製薬の子会社により販売され、
ヨーロッパでも別個に販売されるなど、
日本発の新薬としては珍しい成功例を言って良いものです。

その有効性は尿酸値の降下作用な痛風発作の予防という面では、
アルプリノールと同等と評価されています。
次に問題になるのは副次的な効果です。
尿酸の高値と心血管疾患とのリスクとの間には関連がある、
という指摘があり、
フェブリクスタットが心血管疾患の予後にも、
トータルに良い影響を与えることが期待されたのです。

ところが…

武田製薬の主導で行われた北アメリカにおける大規模臨床試験が、
2018年に発表されると、
その雲行きはかなり怪しいものになりました。

それがこちらです。
フェブリクスタットの効果NEJM.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載されたこの論文では、
痛風の患者さん6190名をくじ引きで2つの群に分け、
一方はアロプリノールを使用し、
もう一方はフェブキソスタットを使用して、
中央値で32か月の経過観察を行なっています。
これは偽薬も使用して、
患者さんにも担当医にもどちらが選ばれたか分からないという、
厳密な方法で行われた試験です。

結果はトータルな心血管疾患のリスクでは、
アロプリノールとフェブキソスタットの間に、
有意な違いは認められませんでした。

しかし、総死亡のリスクは1.23倍(95%CI: 1.01から1.47)、
心血管疾患による死亡のリスクは1.34倍(95%CI:1.03から1.73)、
アロプリノールと比較してフェブキソスタット群で有意な増加が認められました。

この結果を受けてアメリカのFDAは、
フェブキソスタットの位置づけを、
アロプリノールと同等ではなく、
アロプリノールが副作用などで使えない時などのために、
二次選択薬としての位置づけに降格したのです。

何故このような現象が起こったのでしょうか?
この点は不明ですが、掲載誌での議論では、
尿酸を下げ過ぎることが、
却って心血管疾患リスクの増加に繋がるのでは、
というような意見もあります。
また、フェビリクスタットが悪いのではなく、
アロプリノールに心血管疾患を予防するような作用があるのでは、
というような意見もあります。

さて、今回の臨床研究は日本のもので、
フェブリクスタットの有効性と安全性を、
再評価することがその主な目的となっています。

2018年論文は痛風の患者さんを対象としていましたが、
今回のものは一定の心血管疾患のリスクがあり、
血液の尿酸値が7.0mg/dLを超え、9.0mg/dL以下と対象としています。
ここでくじ引きで対象者を2つに分けると、
一方はフェブリクスタットを使用し、
もう一方は尿酸がより上昇した時のみアロプリノールを使用して、
36か月の経過観察を行なっています。
対象患者数は1070名です。

その結果、
当然のことですが尿酸値はフェブキソスタット群で有意に低下し、
心血管疾患と総死亡を併せたリスクは、
フェブキソスタット群が25%(95%CI: 0.592から0.950)有意に低下していました。

つまり、
2018年のNew England…の論文とは異なり、
フェブキソスタット群で心血管疾患の予後が改善したとする結果です。

ただ、
この試験は患者さんにどちらが選ばれたかは、
最初から分かっているような方法で行われています。
偽薬を使用するようなことはしていないのです。
対象となる心血管疾患についても違いがあり、
腎障害については微小アルブミン尿のようなものまで入れていて、
イベントのうち最も多いのは、
この腎機能障害となっています。
従って、個別の疾患で有意差が付いているのも、
腎障害だけです。
2018年論文では虚血性心疾患と脳卒中とそれによる死亡のみですから、
それだけでもかなりの違いがあるのです。

また、
本来フェブキソスタットの心血管疾患に対する効果を見るのであれば、
尿酸の低下はほぼ同一にして比べるべきですが、
今回の試験では尿酸値はフェブキソスタット群のみで低下しているので、
フェブキソスタットの独自の降下を見ているのか、
尿酸が低下したことによる効果を見ているのか、
それも定かではありません。

そもそもは2018年論文と同じようなデザインの試験をして、
そんなことはないよ、という結論を得られれば良かったのですが、
デザインは厳密ではない上に、
評価の仕方にもかなり無理があって、
とてもこの結果だけを見て、
フェブキソスタットは安全で心血管疾患の予後を改善する、
とは言えないような内容になっています。

薬の審査と言うのは国内外を問わず、
公正とは言い難い面があって、
海外の評価だから当てになるというものではありません。
今回についてはアメリカの評価は辛すぎる面があり、
一方で日本での評価は甘すぎる面があるように思います。

今後の更なる検証を期待したいと思いますが、
日本単独で今回の試験より精度の高いデータを出すことは、
おそらく資金的にも困難と思われるので、
高尿酸値症の治療薬としてのフェブキソスタットの評価は、
世界的には今後あまり上がることはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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シュウ酸の排泄量と腎機能低下との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シュウ酸の排泄量と腎機能.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
シュウ酸の尿中排泄量が腎機能低下に与える影響についての論文です。

シュウ酸は葉物の野菜などに多く含まれる、
シンプルな構造の酸で、
身体では代謝の過程で生じることがありますが、
基本的には身体で利用出来る物質ではなく、
そのまま尿や便から排泄されます。

カルシウムと結合し易い性質があり、
そのためカルシウムを多く含む食品と一緒に摂ると、
結合して便に排泄されやすくなります。
また、尿中でもカルシウムと結合して結石の原因となります。

大量のシュウ酸は毒性がありますが、
通常食事で摂取されるレベルのシュウ酸は、
尿路結石を繰り返すような場合以外は、
特に問題視はされていません。
ただ、シュウ酸結石の沈着が急性の腎障害の原因となったり、
基礎研究においては組織の炎症や障害を誘発するという知見もあるので、
食事で摂るレベルのシュウ酸であっても、
腎機能の低下を招く可能性は否定出来ません。

今回の研究では軽度の腎機能障害の患者さんにおいて、
尿中のシュウ酸の排泄量と、
腎機能低下との間に関連があるのかを検証しています。

対象となっているのは、
慢性の腎障害の別個の疫学研究に参加している、
慢性腎障害のステージ2から4の3123名で、
尿中のシュウ酸の排泄量を5分割して検討したところ、
排泄量が多いほど、
推算糸球体濾過量が50%低下するリスクも、
末期腎不全に移行するリスクも、
いずれも有意に増加が認められました。

尿中シュウ酸排泄量が低い方から4割と比較して、
高い方から6割であると、
その後推算糸球体濾過量が50%低下するリスクは1.32倍(95%CI: 1.13から1.53)、
末期腎不全に移行するリスクは1.37倍(95%CI: 1.15から1.63)、
それぞれ有意に増加していました。

要するに少し腎機能が低下したような状態では、
通常食事で摂取してもあり得る程度のシュウ酸の尿への排泄増加が、
腎機能低下を進行させるリスクになっているかも知れない、
という結果です。

シュウ酸を多く含む食品は、
ほうれん草、緑茶、コーヒー、ココア、ナッツ、
バナナなど、
通常では健康に良いとされる食品が並んでいますから、
それを制限するというのも悩ましいところですが、
腎機能がある程度低下した状態では、
シュウ酸の摂り過ぎには留意して間違いはないと思いますし、
今後シュウ酸を制限することで、
本当に腎機能低下の進行予防効果があるのかを含めて、
より進んだ検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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食事の脂肪と生命予後との関連について(2019年アメリカの大規模疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脂肪の摂取量と健康.jpg
2019年のCirculation Research誌に掲載された、
種別毎の脂肪の摂取量と生命予後との関連を検証した、
大規模な疫学データによる論文です。

動物性の油よりも、
植物性の油の方が健康に良い、
というのはしばしば言われて来たことです。

飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸が健康に良い、
というような言い方も、
しばしばされてきました。

テレビなどの健康情報では、
サバやサンマに含まれる脂肪酸が、
ダイエットに良いという話題も盛り上がっているようです。

脂肪酸というのは、身体の中の油の総称で、
タンパク質のように窒素は含まず、
炭素と水素、酸素だけからなる、
シンプルな構造物です。
リン脂質や糖脂質、コレステロールやステロイドのような、
脂肪酸から由来する物質も多く、
この中には窒素を含むものもあります。

その大元である脂肪酸は、
二重結合のない飽和脂肪酸と、
二重結合のある不飽和脂肪酸に分かれます。

原子は他と繋がる手を、
決まった数だけ持っていて、
その手がそれぞれ別のものと繋がっているのが、
飽和で、2つの手が同じものと繋がっているのが、
不飽和ということになります。

分子量の大きい「不飽和脂肪酸」は、
その二重結合の位置が端から3番目のものと、
6番目のものとに分かれます。
3番目のものをn-3脂肪酸とか、ω-3系多価不飽和脂肪酸、
などと呼び、
EPAやDHA、α-リノレン酸などはその代表です。
一方で6番目のものの代表は、
リノール酸やアラキドン酸で、
これをおなじように、
n-6脂肪酸やω-6系多価不飽和脂肪酸、
などと呼んでいます。

動物性の脂肪の多くは、
飽和脂肪酸です。
ラードやバターなどはその代表です。

魚や植物油を多く摂るような生活習慣により、
心血管疾患のリスクが減少する、
というような疫学データは多くあり、
その原因として注目されているのがω3系脂肪酸です。

これは具体的には、
主にサバやサンマなどの青身魚の脂に含まれる、
EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、
DHA(ドコサヘキサエン酸)、
そしてエゴマやアブラナ、ダイズなどの油に含まれる、
植物性油脂のαリノレン酸です。

現行の心血管疾患の予防のためにガイドラインにおいては、
飽和脂肪酸と主に油脂により生じるトランス脂肪酸を減らして、
その変わりに不飽和脂肪酸を増やすように、
という大雑把な指針が示されていますが、
実際には疫学研究の結果もまちまちで、
メタ解析の論文でも飽和脂肪酸の悪影響が、
それほど明確には示されていません。
また、心血管疾患以外の死亡リスクについては、
殆ど検証はされていないのが実際です。

そこで今回の研究では、
アメリカの大規模な疫学データを活用して、
摂取している脂肪の種類毎の量と、
疾患毎の死亡リスクとの関連を検証しています。

登録時に50から71歳の521120名を、
16年間に渡り観察した結果を解析し、
飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、単価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、
動物性単価不飽和脂肪酸、植物性単価f飽和脂肪酸、
魚介由来ω3系多価不飽和酸、αリノレン酸、リノール酸、アラキドン酸、
の個別の摂取量を5分割して比較しています。

その結果、総死亡のリスクは、
いずれも最も摂取量が少ない場合との比較で最も多い場合で、
飽和脂肪酸が1.29倍(95%CI: 1.25から1.33)、
トランス脂肪酸が1.03倍(95%CI: 1.00から1.05)、
αリノレン酸が1.06倍(95%CI: 1.03から1.09)、
アラキドン酸が1.10倍(95%CI: 1.08から1.13)、
それぞれ有意に増加していました。

一方で動物由来単価不飽和脂肪酸で9%(95%CI: 1.06 から1.13)、
植物由来単価f飽和脂肪酸で6%(95%CI: 0.91 から0.97)、
多価不飽和脂肪酸で7%(95%CI: 0.91 から0.95)、
魚介由来ω3系多価不飽和脂肪酸で8%(95%CI: 0.90 から0.94)
とそれぞれ有意に低下していました。

心血管疾患による死亡リスクは、
飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、アラキドン酸の摂取量が多いほど増加し、
魚介由来ω3系多価不飽和脂肪酸が多いほど低下していました。

総カロリーの5%を飽和脂肪酸から植物由来単価不飽和脂肪酸に置換すると、
総死亡のリスクを15%、心血管疾患による死亡リスクを10%、
癌による死亡リスクを11%、呼吸器疾患による死亡リスクを30%、
それぞれ有意に低下させていました。

また、総カロリーの2%を飽和脂肪酸からリノール酸に置換すると、
総死亡のリスクを8%、心血管疾患による死亡リスクを6%、
癌による死亡リスクを8%、糖尿病による死亡リスクを9%、
これもそれぞれ有意に低下させていました。

このように、
飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、動物由来単価不飽和和脂肪酸、
αリノレン酸、アラキドン酸は、
その摂取量が多いほど死亡リスクの増加に繋がり、
魚介由来ω3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いことと、
飽和脂肪酸を植物由来単価不飽和脂肪酸とリノール酸に置換することは、
総死亡および一部の疾患の死亡リスクを低下させていました。

これはほぼ従来言われていたことの確認、
という意味合いの結果ですが、
これだけ大規模で長期間の調査はこれまでに例がなく、
今後の栄養指導の議論のたたき台となるものだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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BGMが創造力を低下させる? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BGMが想像力を妨害する。.jpg
2019年のAppl Congnit Psychl誌に掲載された、
音楽の刺激が想像力に関わるような脳の活動を、
抑制する可能性があるのではないか、
という内容の論文です。

事実かどうかはまだ分かりませんが、
これまでの通説に反するような結果なので、
注目を集めている研究です。

BGMとして音楽を流して、
それを聴きながら別個の作業や勉強、仕事をすることは、
その作業の効率にどのような影響を与えるでしょうか?

その人にとって心地良くリラックスするような音楽、
また時には気分を高揚させるような音楽の刺激が、
単純作業やあまり頭を使わないような作業や運動の効率を、
上げる効果があるであろうということは、
音楽を聴きながら作業をしたことのある人なら、
臨床研究などせずとも、
実感は出来ることであるように思います。

ただ、これは脳の複数の部分の働きを、
統合して行うような作業においても成り立つことでしょうか?

その点についてはBGMがそうした創造的な作業においても、
その能力向上に有用であったという報告はあるものの、
ごく少数でまだ明確な結論に至ったとは言えません。

そこで今回の研究では、
馴染みのある音楽(歌詞付き)と歌詞のないインストルメンタル、
そして馴染みのない母国語以外の音楽(歌詞付き)の3種類のBGMを用意して、
個々の音楽を流しながら想像力を要すると思われる作業を行い、
その効率を無音の場合と比較検証しています。

対象となっている作業は、
CRAT(遠隔連想テスト)と呼ばれる性質のもので、
3つの異なる言葉を聞き、
そこに共通する性質を別の言葉で表現する、
というものです。

この作業はイメージする力が必要となるので、
創造性を測る1つの物差しとして使われているものです。

30名の健常なボランティアを対象として、
テストを施行したところ、
3種類のBGMのいずれを使用しても、
無音と比較すれば作業の効率は低下していました。
耳慣れた音楽を使用した場合には、
確かに気分は良く作業は進められましたが、
それは作業効率自体とは関連が認められませんでした。

このように創造性を必要とするような作業においては、
BGMはそれが耳慣れたものであっても、
作業効率を低下させる方法に働く、
というこれまでとは反対の見解が示されました。

これは別に証明された、
というほどの知見ではありませんが、
個人的にはもっともだというように思います。

僕自身、この記事を書いているような時は、
極力無音でないと作業が進まないのですが、
レセプトの病名付けのような作業の時には、
今はyou tubeでナイツの漫才と状況劇場の古い音源を、
BGMとしてエンドレスで流しながら行うことが多く、
その方が持続的に長く作業が継続出来るような気がします。

おそらく、これは作業の性質によっても、
かなり個人差のある事項であると思うので、
そもそもこうした研究には、
あまり馴染まないものではないかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ホルモン補充療法の認知症発症リスク(フィンランドの観察研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ホルモン補充療法と認知症リスク.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
女性ホルモン補充療法と認知症発症リスクとの関連についての論文です。

認知症と女性ホルモンとの関連については色々な議論があります。

女性ホルモンに神経細胞を保護するような作用のあることは、
動物実験レベルでは複数のデータが存在しています。
そのことと高齢者に認知症が発症するという事実からは、
女性ホルモンの使用が認知症の予防になるのでは、
という考えが示唆されます。

しかし、2003年から2004年に発表された、
女性ホルモンの認知症予防効果を検証した、
偽薬を使用した大規模で信頼性の高い臨床試験の結果では、
閉経後の女性に対する女性ホルモン補充療法は、
認知症の発症リスクを低下はさせませんでした。

その原因として考えられたのは、
投与のタイミングの影響で、
女性ホルモンの使用は閉経後すぐに行わないと、
認知症予防効果には繋がらないのではないかと想定されたのです。

今回の研究は国民総背番号制を取り、
国民規模の健康データが抽出可能なフィンランドの疫学研究で、
1999年から2013年に掛けて、
閉経後にアルツハイマー病の診断を受けた84739名の女性を、
年齢などをマッチングさせたアルツハイマー病ではない84739名と比較して、
閉経後の女性ホルモンの補充が、
アルツハイマー病の発症に与える影響を検証しています。

その結果、
女性ホルモン補充療法は、
その後のアルツハイマー病と診断されるリスクを、
意外にも9から17%有意に増加させていました。
このリスクの増加はホルモン補充療法が、
エストロゲン単独でも、
エストロゲンとプロゲステロンでも有意な差はなく、
女性ホルモンの補充が若い時期からであっても、
高齢になってからであっても違いはありませんでした。

その影響はホルモン補充が10年を超えると有意に高く、
内服ではなく膣剤での使用では認められませんでした。

このホルモン補充療法による認知症発症リスクは、
70から80歳の女性10000名当り年間18名の発症に繋がったと考えられ、
これは105件の発症を18件底上げする、
というくらいの頻度です。

このように、
これまでの女性ホルモンが認知症を予防するという推測に反して、
今回の大規模な住民研究では、
むしろ女性ホルモンの補充が、
認知症のリスクに繋がるという予想外の結果が得られました。

ただ、そのリスクの増加は軽微である上に、
経膣投与では全くリスク増加が見られないなど、
疑問を感じるような部分もあり、
まだこの結果を事実と考えるのは時期尚早のようにも思います。

今後の検証の積み重ねを注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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腕立て伏せ可能回数と将来の心血管疾患リスクとの関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
腕立て伏せと健康.jpg
2019年のJAMA Network Open誌に掲載された、
腕立て伏せの出来る回数とその後の健康との関係を検証した、
ちょっと面白い論文です。

心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の危険因子としては、
高血圧や糖尿病、喫煙などが有名ですが、
筋力などの基礎体力も重要な要素であるという指摘もあります。

以前ご紹介した論文では、
握力の数値が生命予後や心血管疾患のリスクと、
関連しているという報告もありました。

今回の研究はアメリカ、インディアナ州で、
18歳以上の男性消防士、1562名を対象として、
そのうちの1104名の腕立て伏せの可能回数を、
その基礎体力の指標として登録時に測定し、
10年間の経過観察を行なっています。

その結果、
経過観察期間中に37件の心血管疾患が発症し、
腕立て伏せの可能回数が多いほど、
心血管疾患の発症リスクが低くなる、
という関連が認められました。

腕立て伏せの可能回数を5つに分けた解析では、
10回未満と比較して、
40回以上可能であった群では、
心血管疾患のリスクが96%(95%CI: 0.01から0.36)
有意に低下していました。

これは消防士さんのデータで、
比較的若い人が主体なので、
実際に発症した病気の事例も少なく、
一般の方にそのまま当て嵌まる知見ではありませんが、
簡単に測定可能な体力の指標が、
ここまで大きく心血管疾患の予後に関連している、
という結果は大変興味深く、
今後より幅広い対象者において、
同様の検証が行われることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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