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白衣高血圧の心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
白衣高血圧の影響.jpg
2019年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
白衣高血圧の心血管疾患リスクと生命予後についての、
これまでの報告をまとめたレビューです。

白衣高血圧というのは、
診察室で医師や看護師が測定すると高血圧である一方で、
家で自己測定をしたり、
自動血圧計などで家庭血圧を測ると、
そちらは常に正常血圧で明確な差がある、
という現象のことです。

白衣高血圧という時には、
基本的に降圧剤を飲んでいない人を対象としていますが、
高血圧で投薬治療中の患者さんが、
家庭血圧では正常であるのに、
診察室では明らかな血圧上昇を示す時には、
白衣効果と呼ぶことが一般的です。

さて、この白衣高血圧は病気でしょうか?

これは常に議論となる問題です。

現行の高血圧のガイドラインにおいては、
診察室の血圧と家庭血圧には、
概ね5mmHgの差が想定され基準値が決められていますから、
ある程度の差は折り込み済みの部分があるのですが、
家での血圧は上が120代なのに、
診察室では180を超えるというような人もいて、
こうなるとこれも1つの病気として、
捉えた方が良いというようにも思われます。
(勿論どちらの測定も正確である場合の話です)

今回のレビューはこれまでの主な臨床研究をまとめたものですが、
27の臨床研究から白衣高血圧もしくは白衣効果の、
25786名の患者さんをまとめて解析したところ、
未治療の白衣高血圧の患者さんは、
正常血圧のコントロール群と比較して、
心血管疾患の発症リスクが1.36倍(95%CI: 1.03から2.00)、
総死亡のリスクが1.33倍(95%CI: 1.07から1.67)、
心血管疾患による死亡のリスクが2.09倍(95%CI: 1.23から4.48)、
それぞれ有意に増加していました。
一方で降圧剤による治療中の白衣効果については、
そうした心血管疾患リスクや生命予後の悪化は、
認められませんでした。

このように未治療の場合の白衣高血圧は、
高血圧に準じて考えた方が良く、
その時点での降圧剤の使用は、
低血圧のリスクが高いので推奨されませんが、
禁煙や塩分制限、生活改善などの介入と、
経過観察は重要であると考えられます。

現状必ずしも明確な定義もなく、
研究によってもその評価は様々な白衣高血圧ですが、
今後はより実証的な検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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イボを補修テープで治療する [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
するイボを補修テープで治療.jpg
2002年のArch Pediatr Adolesc Med誌に掲載された、
市販の補修テープを貼るだけで、
尋常性疣贅(ウイルス性イボ)を治療する、
という興味深い試みを検証した論文です。

この方法は一部で流行っているもののようで、
医療関係者のSNSでも紹介されることがあります。
だた、その論拠となるまともな文献は、
これ以外にはあまりないようです。

尋常性疣贅(Verruca Vulgaris)というのは、
ヒトパピローマウイルスによる皮膚の感染症で、
上記文献の記載によれば、
小児の5から10%には発症するというほど多く、
そのピークは12から16歳にあり、
その3分の2は発症後2年以内に自然に治癒するとされています。

こちらをご覧下さい。
イボの画像.jpg
典型的な尋常性疣贅の画像です。
これは日本皮膚科学会のサイトから引用させて頂いたものです。
特別な許可は得ていないので、
問題があるようでしたら削除しますのでご連絡下さい。

このウイルス性イボの治療には、
現状あまり良い方法がありません。

皮膚科などで最も広く行われているのは、
液体窒素によりイボを冷凍に凝固するという方法ですが、
その治療メカニズムは明確ではない上に、
複数回の治療を要し、
治療は痛みや不快感を伴います。

以前から民間療法的な治療として、
イボにテープを貼っておくと良い、
というものがあり、
1998年にウイルス性イボに強い粘着力を持つテープを、
6日間連続して装着することを繰り返したところ、
およそ80%でイボが改善した、
という報告があります。

上記論文においては、
3歳から22歳のウイルス性イボの患者51名を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は液体窒素による治療を複数回行い、
もう一方は補修テープをイボに貼り付けて、
6日後の夜に剥がし、
翌朝に貼り替えることを2ヶ月間繰り返します。

使用されているのは水道管などの補修テープで、
論文には詳細は書かれていませんが、
最近日本で使われているという報告が多いのはこちらです。
イボのパワーテープの写真.jpg

その結果、
液体窒素の治療により治癒したのは、
25名中60%に当たる15名であったのに対して、
ダクトテープによる治療で治癒したのは、
26名中85%に当たる22名で有意な差が認められました。

何故ここまでダクトテープによる治療は効果があるのでしょうか?

その点はほとんど明確なことは分かっていないようです。

メカニズムが不明であることと、
精度の高い臨床データがあまりないことは難点ですが、
殆どリスクなく安全に簡便に行えることは大きな利点で、
今後そのメカニズムを含めた、
研究の進捗を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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軽症脳卒中の再発予防へのチカグレロル使用の有用性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
軽症脳卒中への抗血小板剤2種併用療法の効果.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
軽症の脳卒中の再発予防における、
薬剤の選択についての論文です。

一時的に言葉が出なくなる、手に力が入らなくなる、
などの症状が出現して改善する、
一過性脳虚血発作と、
虚血性脳卒中と診断されるも軽症で、
退院の時点では全く後遺症はないか、
あっても軽微で日常生活には制限は生じない
(modified Rankin Scaleという指標で0か1)
軽症虚血性脳卒中においては、
後遺症はないか軽微であっても、
その後より重篤な脳卒中に進行したり、
再発して予後の悪化するリスクが、
高いことが知られています。

そのため予後の改善目的で抗血小板剤による治療が行われます。

こうした場合に最も多く使用されているのは、
低用量のアスピリンで、
それ以外にクロピドグレルやシロスタゾールも使用されています。

一方でこうした場合の予後改善には、
単剤の抗血小板剤では不充分で、
2種類の抗血小板剤を併用する必要があるのではないか、
という意見があり、
アメリカの専門家のガイドラインの1つでは、
弱い推奨として、
アスピリンとクロピドグレルを発作後24時間以内に開始し、
それを21日間継続する、
という治療法が記載されています。

これまでに3つの精度の高い臨床試験が、
アスピリン単独と併用療法を比較しています。
アメリカのみで行われた比較的小規模な試験と、
アメリカとヨーロッパ、オーストラリアなどで行われた大規模臨床試験、
そして中国で行われた大規模臨床試験です。

その3つの臨床試験を併せて解析したメタ解析では、
トータルで10447名の臨床データをまとめて解析した結果として、
一過性脳虚血発作と軽症虚血性脳卒中発症後24時間以内に、
クロピドグレルとアスピリンを併用すると、
アスピリンの単独使用と比較して、
総死亡のリスクには有意な影響を与えずに、
非致死性脳卒中再発のリスクが、
30%(95%CI: 0.61から0.80)有意に低下していました。
ただ、中等度もしくは重度の頭蓋内以外の出血のリスクは、
1.71倍(95%CI: 0.92 から3.20)
と有意ではないものの増加する傾向を示しました。
併用療法とアスピリン単独との差は、
開始後10日から明確になり、
21日間を超える使用では有用でないと推測されました。

要するに、
一過性脳虚血発作もしくは軽症虚血性脳卒中発症後、
24時間以内にアスピリンとクロピドグレルの投与を開始すると、
アスピリン単独の場合と比較して、
患者さん1000人当り20人の脳卒中の再発を予防可能です。
その一方で同じ1000人当り2人には、
中等度以上の出血系の合併症がそのために発症します。
この効果を得るためには10日以上の使用が必要である一方、
21日以上の併用には意味がないと考えられます。

さて、このクロピドグレルという薬の問題点は、
肝臓の薬剤代謝酵素であるCYP2C19で代謝され、
代謝物が効果を発揮するという薬であるため、
その酵素の活性が弱い変異があると、
同じ量でも効果が得られない可能性がある、
ということです。

ただ、臨床試験によってもこの遺伝子変異により、
効果の差があったとする報告がある一方、
あまり関連がなかったという報告もあって一致した結論が得られていません。

最近同種の目的で使用されるようになった、
チカグレロル(ブリリンタ)という抗血小板剤は
(日本では虚血性心疾患のみの適応)、
そのメカニズムが異なると共に、
代謝酵素がCYP3A4で、
クロピドグレルのような問題が生じにくいと想定されます。

そこで今回の第2相臨床試験においては、
中国の複数施設において、
軽症脳卒中もしくは一過性脳虚血発作を来した、
675名の患者さんをくじ引きで2つの群に分けると、
症状出現後24時間以内に、
一方はアスピリン100mgにクロピドグレル75mg(初回のみ300mg)
を併用し、
もう一方はアスピリン100mgにチカグレロル90mg(初回のみ180mg)
を併用して、
その90日間の予後と血小板機能を比較検証しています。

その結果、90日の時点での血小板機能は、
クロピドグレルと比較してチカグレロル群が、
有意に抑制されていました。
その違いは特にCYP2C19の変異がある群で大きくなっていました。
一方で脳卒中の再発については、
トータルでは両群に有意な差はなく、
脳の主要な結果の動脈硬化の強い群に限定すると、
チカログレロル群の方が55%有意に再発を予防していました。
両群の出血系の合併症には、
有意な差は認められませんでした。

このように、
血小板機能の抑制については、
クロピドグレルよりチカグレロルの方が安定していることは、
ほぼ間違いがありません。

ただ、臨床効果においては、
実際にはそれほどの差は見られておらず、
今度どのような患者さんにおいて、
よりチカログレルの有効性が高いのか、
個別の検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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プロトンポンプ阻害剤は命を縮める薬なのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PPIの寿命短縮効果.png
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
プロトンポンプ阻害剤という胃薬の、
高齢者使用と生命予後についての、
かなりショッキングな論文です。

プロトンポンプ阻害剤は、
強力な胃酸分泌の抑制剤で、
従来その目的に使用されていた、
H2ブロッカ-というタイプの薬よりも、
胃酸を抑える力はより強力でかつ安定している、
という特徴があります。

このタイプの薬は、
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療のために短期使用されると共に、
一部の機能性胃腸症や、
難治性の逆流性食道炎、
抗血小板剤や抗凝固剤を使用している患者さんの、
消化管出血の予防などに対しては、
長期の継続的な処方も広く行われています。

商品名ではオメプラゾンやタケプロン、
パリエットやタケキャブなどがそれに当たります。

このプロトンポンプ阻害剤は、
H2ブロッカーと比較しても、
副作用や有害事象の少ない薬と考えられて来ました。

ただ、その使用開始の当初から、
強力に胃酸を抑えるという性質上、
胃の低酸状態から消化管の感染症を増加させたり、
ミネラルなどの吸収を阻害したりする健康上の影響を、
危惧するような意見もありました。

そして、概ね2010年以降のデータの蓄積により、
幾つかの有害事象がプロトンポンプ阻害剤の使用により生じることが、
明らかになって来ました。

現時点でその関連が明確であるものとしては、
プロトンポンプ阻害剤の長期使用により、
急性と慢性を含めた腎機能障害と、
低マグネシウム血症、
クロストリジウム・デフィシル菌による腸炎、
そして骨粗鬆症のリスクの増加が確認されています。

その一方でそのリスクは否定は出来ないものの、
確実とも言い切れない有害事象もあり、
肺炎や一部の癌、認知症リスクの増加などが報告されています。

それでは、こうした多くの有害事象は、
トータルに見て使用する患者さんの生命予後に、
影響を与えているのでしょうか?

砕いた言い方を敢えてすれば、
プロトンポンプ阻害剤を常用していることで、
命が縮むようなことはないのでしょうか?

今回の研究はその点を明らかにしようとしたもので、
アメリカの退役軍人の大規模な疫学データを活用して、
新規にプロトンポンプ阻害剤を開始した157625名を、
H2ブロッカーを使用している56842名を比較して、
その生命予後を死因毎に検証しています。

中間値で10年の観察期間において、
H2ブロッカーと比較したところ、
プロトンポンプ阻害剤の使用により、
患者1000人当たり45.20人の過剰死亡が、
認められると計算されました。
この過剰死亡のうち38.65%は循環器疾患により、
28.63%は癌により、13.83%は泌尿生殖器疾患により、
9.29%は感染症及び寄生虫疾患による死亡でした。

死因毎の解析によると、
プロトンポンプ阻害剤の使用は、
心血管疾患や慢性腎臓病による過剰死亡と関連が認められました。

このように、かなりショッキングなデータですが、
プロトンポンプ阻害剤の使用により、
明確に生命予後の悪化が認められたことは、
控え目に言っても重く受け止めるべきで、
特に高齢者への半年を超えるような長期の使用については、
その有効性が確実と判断される事例に限って、
必要最小限の期間において使用するべきものなのだと思います。

ただ、念のため補足しますが、
現在プロトンポンプ阻害剤を継続的に使用されている方は、
主治医に無断で服薬を中断されるようなことはされないで下さい。

今回のデータにおいても、
実際には生命予後のリスク増加の程度はそれほど大きなものではなく、
プロトンポンプ阻害剤は多くの疾患において、
消化管出血などの予防効果は確立した薬でもあるからです。

要は不要な投薬が高齢者において、
漫然と長期行われることが問題である訳で、
その点はどうか誤解のないようにして頂きたいと思いますし、
不安に思われた方はまずは主治医にその点をご相談して頂きたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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睡眠中の照明と肥満との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
睡眠中の人工照明の肥満リスク.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
寝ている時の人工照明と、
肥満リスクとの関連についての論文です。

睡眠時間が短いと太りやすいというのは、
これまでの複数の疫学データにおいて、
ほぼ実証されている事実です。

睡眠が不安定であるということは、
夜間に抑制されていないといけない食欲が、
抑えられないということでもありますし、
日内リズムの乱れ自体が、
エネルギー消費や脂肪代謝に関わる、
多くのホルモンや生体物質に影響を与えます。

それでは、
テレビを点けたままで寝ていたり、
部屋の照明を点けたままで、
眠っていることと、
暗い部屋で眠ることとは、
身体に与える影響に何か差があるのでしょうか?

動物実験においては、
明るい中で睡眠を取ることは、
体内時計を狂わせ、睡眠時間を短縮させて、
肥満などの代謝異常の要因となると考えられています。

しかし、人間においても同様のことが成り立つかどうかは、
まだ明らかではありません。

そこで今回の研究では、
アメリカとプエルトリコにおいて、
登録時に35歳から74歳の43722名を、
平均で5.7年観察し、
登録時及び経過中に発症した肥満や内臓脂肪の過剰と、
睡眠時の人工照明やテレビの有無との関連を検証しています。

その結果、
暗い中や室内灯での睡眠と比較して、
照明を点けたままやテレビを点けたままで睡眠を取ると、
肥満のリスクは有意に増加していて、
観察期間中の肥満発症リスクは、
19%(95%CI: 1.06から1.34)有意に増加していました。

この人工照明時の肥満リスクの増加は、
睡眠時間や睡眠の質などの因子を補正しても残っていて、
単純に部屋が明るいと睡眠時間が短くなる、
ということではなく、
もっと本質的な要因があることが示唆されました。

今回初めて大規模な臨床データにより、
睡眠中の人工照明と肥満との関係が示された意義は大きく、
今後そのメカニズムを含めて、
より詳細な検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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1日何歩歩くのが健康的か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
歩数と健康との関係.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
歩く歩数と健康との関係を検証した論文です。

健康のためにはよく歩くのが良い、
というのは健康の専門家かそうでないかに関わらず、
多くの人が言っていることです。

最近ではスマホやアップルウォッチなどの、
所謂ウェアラブル端末が普及して、
簡単に毎日の歩数が計れるようになり、
よりその健康効果が一般に広まりを見せています。

そこで問題となるのは目標とするべき歩数です。

馴染みのあるのが1日1万歩歩きましょう、という基準で、
皆さんも何度もお聞きになったことがあると思います。

上記文献の記載によると、
アメリカにおいても同様の基準がポピュラーで、
意外にもその元になっているのは、
日本の万歩計の会社の宣伝にあるようです。

ただ、実際にはその根拠は、
あまり精度の高い研究に裏付けられたものではありません。

そこで今回の研究では、
アメリカで低用量アスピリンとビタミンEの、
成人女性における心血管疾患予防効果を検証した、
疫学研究のデータを活用して、
1日の歩数と生命予後との関連を検証しています。

平均年齢72歳の16741名を4.3年観察した結果として、
1日の歩数を4群に分けて検証したところ、
最も少ない群(中間値で2718歩)と比較して、
最も多い群(中間値で8442歩)は、
総死亡のリスクが42%(95%CI: 0.38から0.88)、
有意に低下していました。
これは歩く速度などは補正した結果です。

この歩数による総死亡リスクの低下は、
7500歩程度までは歩数が増えるほど大きくなりますが、
それを超えると頭打ちになっていました。
また、歩く速度との関連をみたところ、
歩数の方が生命予後への影響は大きく、
歩行速度との関連はあまり明確ではありませんでした。

日本で最近報告された、
中之条研究という疫学データでは、
1日8000歩で20分程度の早歩きを混ぜるのが、
心血管疾患の予防には一番有効であった、
という結果になっていました。

今回のデータと中之条研究には一致する点が多く、
高齢女性の生命予後の改善のためには、
どうやら1日7000から8000歩程度が、
平均すると最も有用性は高いと言っていいようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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SGLT2阻害剤2剤の直接比較臨床試験(2019年韓国のデータ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
糖尿病治療4種併用療法の効果.jpg
2019年のDiabetes Research and Clinical Practice誌に掲載された、
2種類のメカニズムは同じ糖尿病治療薬を、
通常治療への上乗せで直接比較した臨床試験の論文です。

2型糖尿病の飲み薬としては、
メトホルミンが世界的に第一選択薬ですが、
その単独の治療で十分な血糖コントロールが達成されない場合には、
DPP4阻害剤やピオグリタゾン、
SGLT2阻害剤やSU剤などの単独もしくは組み合わせての上乗せが、
治療として考慮されます。

現実的にはこのうちの3剤以上の併用も、
決して稀なことではありません。

これらの薬剤のうち、
現時点で最も新しいのは、
尿へのブドウ糖の排泄を促進する作用を持つ、
SGLT2阻害剤で、
最近血糖値を低下させるばかりではなく、
心血管疾患のリスクの低下や、
生命予後の改善に関する有効性を示すデータが、
複数報告されて非常に注目を集めています。

SGLT2阻害剤には多くの薬剤が存在していますが、
その全てが同じような有効性を確認されている、
という訳ではありません。

最も信頼のおけるデータがあるのは、
エンパグリフロジン(商品名ジャディアンス)で、
次にデータが多いのがカナグリフロジン(商品名カナグル)ですが、
こちらは糖尿病性壊疽が治療群でより多かった、
というような安全上の危惧を感じさせる報告もあります。
ダパグリフロジン(商品名フォシーガ)も広く使用されている薬ですが、
その心血管疾患の予後改善効果は、
今のところ心血管疾患の既往があるような集団でのみ確認されています。

今回の韓国での臨床研究は、
メトホルミンとSU剤、DPP4阻害剤を充分量投与していても、
血糖コントロールが不良である2型糖尿病の患者さんに対して、
エンパグリフロジンもしくはダパグリフロジンを上乗せで使用して、
その安全性と有効性とを直接比較したものです。

SGLT2の複数の薬剤を、
通常の臨床と同じような条件で、
直接的に比較したような試験はこれまでにあまりなく、
偽薬を使うような厳密な方法の研究ではないので、
その信頼性はそれほど高いものではありませんが、
日本の臨床とかなり似通った条件での検証であるので、
臨床医としては興味深い研究です。

対象は18歳から80歳の2型糖尿病の患者さんで、
メトホルミンを1日2000ミリグラム、
DPP4阻害剤をその薬の上限量、
SU剤のグリメピリドを1日8ミリグラム、
の3剤併用療法を行っていても、
HbA1cが7.5%以上(12.0%未満)とコントロール不良である350名で、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はエンパグリフロジンを1日25ミリグラム、
他方はダパグリフロジンを1日10ミリグラムという上限量で使用して、
52週間の治療を継続してその効果を比較しています。

これは他の薬剤は日本の使用量とほぼ同じですが、
グリメピリドの1日8ミリというのはかなり多い量で、
現状日本の臨床で、ここまでSU剤を増量することは、
稀だと思います。
添付文書の上限量は6ミリですが、
1から2ミリ程度までにとどめるのが、
少なくとも長期的には一般的な考えであると思います。

その結果、
両群でHbA1c、空腹時血糖は、
共に有意に低下していましたが、
その低下幅はエンパグリフロジンがダパグリフロジンを、
有意に上回っていました。
両群の有害事象には明確な差はなく、
体重や血圧の減少効果も同等でした。

このように今回の検証では、
ダパグリフロジンと比較して、
エンパグリフロジンの有効性がほぼ確認されていて、
この結果は日常臨床における薬剤選択においても、
有益な情報を与えてくれるもののように思います。

今のところSGLT2阻害剤の第一選択は、
ほぼエンパグリフロジンと考えて大きな間違いはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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糖尿病のレガシー効果は本当か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
レガシー効果.jpg
2019年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
血糖コントロールの「レガシー効果」を検証した論文です。

レガシー効果(Legacy Effects)というのは、
この場合糖尿病のコントロールをある時期厳密に行うと、
その影響がコントロールを緩めても長期間持続する、
という現象のことです。

血糖値をたとえば5年間、
徹底して薬剤や生活指導でコントロールして、
糖尿病のない人と同じ状態にしておくと、
その後の血糖値はより上昇しても、
そうした厳密なコントロールの期間のない患者さんと比較して、
心血管疾患のリスクや生命予後にも良い影響が持続する、
という現象です。

この糖尿病の領域におけるレガシー効果が、
実際にあるのかどうか、という点については、
まだ結論が出ていません。

何度か今までにも紹介していますが、
血糖コントロールをより厳しくして、
理想的にはほぼ正常の血糖値を実現すれば、
糖尿病の長期合併症として最も問題となる、
心血管疾患のリスクが糖尿病のない人と同じかそれに近くなるのでは、
という考え方があり、
それに基づいて通常の血糖コントロール(概ねHbA1cを7.5%以下にするのが目標)と、
より厳密な血糖コントロール(HbA1cを6%未満にすることを目標)と比較する、
大規模臨床試験が複数実施されました。

しかし、ほぼ全ての試験において、
厳密なコントロールを行なっても、
通常の治療と比較して、
心血管疾患のリスクや生命予後に、
明らかな改善は認められませんでした。
むしろ、生命予後は悪化する、
というような結果すらあったのです。

この原因は全て明らかになっているという訳ではありませんが、
人為的に血糖を下げることによる、
低血糖の発生などの影響があると想定されています。

ただ、その一部の臨床試験の追跡調査において、
厳密な治療を行なった期間には差がつかなかったものの、
治療後の追跡期間においては、
厳密にコントロールした方が予後が良かった、
という結果が報告されたのです。

これは厳密なコントロールを一定期間行ったことによる、
血管などへの良い影響が、
その後の血糖は上昇しても、
遺産(レガシー)のように残っている、
という可能性を示唆するものです。

たとえば、1型糖尿病の患者さんを対象とした、
DCCTと呼ばれる大規模臨床試験の追跡結果では、
厳密なコントロール期間の終了後に、
心血管疾患のリスクに差が付いています。

また、新たに2型糖尿病と診断された患者さんを対象とした、
UKPDSというイギリスの大規模臨床試験の追跡結果では、
こちらも心血管疾患リスクと生命予後に、
厳密なコントロールは終了した時期において、
有意な差が見られています。

その一方でACCORD試験やADVANCE試験という、
比較的重症で高齢の患者さんを対象とした同様の臨床試験においては、
このレガシー効果は認められていません。

今回の研究は、
アメリカの退役軍人の2型糖尿病の患者さん1791名を対象として、
通常の血糖コントロールと厳密なコントロールの効果を、
中間値で5.6年の治療期間で比較した、
VADTと呼ばれる臨床試験の追跡調査の結果をまとめたものです。

この試験はその診断から平均で11.5年が経過した、
比較的高齢で罹病期間の長い患者さんを対象している点がその特徴です。

治療強化期間においては、
矢張り治療を厳密にしても予後には差がなかったのですが、
10年(治療強化期間を含む)の追跡調査の結果では、
強化治療群で約17%、
通常治療群より心血管疾患リスクの低下が認められました。

つまり、レガシー効果の可能性が期待されたのです。

今回の検証はより長期、15年の観察期間での結果をまとめたものです。

その結果、
15年の観察期間においては、
心血管疾患のリスクや死亡リスクにおいて、
強化コントロールと通常コントロールとの間で、
有意な差は認められませんでした。

つまり、レガシー効果は今回は否定されたのです。

どうやら、
糖尿病になってまだ間もない時期においては、
HbA1cを6%未満にするような強化コントロールを、
一定期間続けることにより、
より高齢になってコントロールを緩めても、
その影響は持続する可能性が高いのですが、
罹病期間が長く心血管疾患を発症しているようなケースでは、
むしろ血糖コントロール自体は緩めて、
血圧や脂質、禁煙など、
他の心血管疾患の予防策に軸足を移した方が、
効果が見込める可能性が高いようです。

若年の糖尿病の患者さんには極力厳密なコントロール、
高齢になったら、むしろ低血糖に気を付けてコントロールを緩め、
心血管疾患のリスクを低下させるという報告のある、
GLP1アナログやSGLT2阻害剤の使用に力点を置くことが、
現状はベターな選択と言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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超加工食品の心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スーパー加工食品の心血管疾患リスク.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
超加工食品の心血管疾患リスクについての論文です。

以前にもご紹介したことがありますが、
超加工食品(ultra-processed foods)というのは、
一般にはまだ耳慣れない言葉かと思います。
これは2016年に国連の関連する食品についての会議で提唱されたもので、
食品をその加工の度合いによって、
4種類に分類するNOVA分類がその元になっています。

このNOVA分類では、
食品をその加工度によって、
第1群;加工されていないか、最小限しか加工されていない食品
第2群;加工された調味料
第3群;加工食品
第4群;超加工食品
の4つに分類しています。

第1群は果物や野菜や肉、豆は牛乳など、
その由来が見て分かるような食品のことです。
第2群は砂糖や塩などの加工された調味料です。
第3群は一定の加工をされた食品のことで、
たとえば缶詰の桃や自然の製法で作ったパンやチーズ、
ミックスナッツやミックスベジタブルなどがそれに当たります。

そして、第4群の超加工食品は、
通常5種類以上の食品が組み合わされ、
そこに複数の調味料などが加えられたものを意味しています。
こうした食品は他の群の食品では、
使用されないような添加物や化学物質が添加されることが通常です。

これは要するに、
僕達がお店などで手に入れることの出来る、
食事の材料となる食品の分類なのです。

たとえばラーメンを食べようと思った時に、
その材料として、
自然の岩塩などを調味料に使い、
自然の小麦や豚肉、野菜などを調達して、
それを組み合わせて調理すれば、
第1群のみを使用したことになりますし、
塩や砂糖などの調味料は市販の物を使うと、
第2群も使用したことになります。
袋詰めの麺を買い、
スーパーの焼き豚などを買って、
それを組み合わせてラーメンを作ると、
第3群も使用したことになり、
最初からカップ麺やインスタントラーメンを買って、
それを使用すると第4群を使ったことになるのです。

健康のためには、
極力超加工食品を減らそう、
というのがこの国連の会議の、
基本的な考え方です。
超加工食品は料理の手間を減らしてくれますから、
確かに便利ですが、
最初からパッケージ化されているので、
その成分を確認することは出来ませんし、
栄養バランスの調節も難しくなります。

添加物を全て危険視するような考え方にも問題はありますが、
人間の手間を省くために、
本来は必要のない物質を、
多く使用してそれを食べるということ自体が、
人間本来のあり方ではないことも、
また事実だと思います。

それでは実際に超加工食品を多く食べることで、
健康上の害はどの程度あるのでしょうか?

2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
10万人以上の住民の栄養調査の結果と、
その後の癌の発症との関連を検証したフランスの疫学データでは、
トータルな癌と乳癌の発症リスクは、
超加工食品の摂取量が10%増加すると、
概ね10%有意に増加することが確認されました。
大腸癌と前立腺癌については、
同様の関連は認められませんでした。

今回の研究は同じ疫学データを元にして、
今度は超加工食品の摂取と、
心血管疾患のリスクとの関連を検証したものです。

その結果、
105159名を中間値で5.2年観察したところ、
食品中の超加工食品が10%増加すると、
心血管疾患のリスクは12%(95%CI: 1.05から1.20)
有意に増加していました。
食品の中では特に塩辛いスナック菓子が、
1日100グラム余計に摂取することで、
そのリスクが2.03倍(203%)という最も大きな増加を示していました。

このように含まれている栄養素は、
そう大きく変化していなくても、
超加工食品を摂取することにより、
癌に加えて心血管疾患のリスクも明確に増加しており、
今後その比率を下げるための施策が、
色々な分野で問題となることになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ミネラルを含む飲み水が血圧に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
バングラデシュのミネラル濃度と高血圧.jpg
2019年のJournal of the American Heart Association誌に掲載された、
飲料水のミネラル濃度が血圧に与える影響についての論文です。

海から近い地域の地下水には、
塩分やカリウム、
マグネシウムなどのミネラルが多く含まれていて、
そうした地域の飲料水にも、
内陸部の飲料水と比較すると多くのミネラルが含まれています。

こうした飲料水のミネラル分は、
住民の健康にどのような影響を与えるのでしょうか?

相反する2つの見解があります。

ミネラルを多く含む飲料水には、
塩分が多く含まれているので、
それで血圧が上昇するというリスクが考えられます。

その一方で、同時に含まれているカリウムやカルシウム、
マグネシウムなどのミネラル分には、
むしろナトリウムの排泄を促して、
血圧の低下に繋がるという可能性も考えられます。

一体どちらが正しいのでしょうか?

今回の研究はバングラデシュにおいて、
6487名の住民の血圧の数値と、
季節や地域により変動する飲み水のミネラル濃度との、
関連性を検証したものです。

その結果、
特にカルシウムとマグネシウムを多く含む飲み水を使用している地域では、
よりミネラル濃度の低い地域と比較して、
血圧値は有意に低く、
高血圧の発症リスクも有意に低下していました。

ミネラル分の多い飲み水は、
塩分も多いのですが、
カルシウムやマグネシウムの多いことが、
どうやら塩分の作用を相殺して、
血圧にはむしろ良い影響を与えるものであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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