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BMIと死亡リスクとの関連について(心血管疾患の状態による解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。

BMIと死亡リスク.jpg
2018年のthe American Journal of Cardiology誌に掲載された、
体格の指標であるBMIという数値と、
生命予後との関連を、
心血管疾患のリスクなどで解析した論文です。

BMIというのはキログラムで表示した体重の数値を、
メートルで表示した身長で2回割り算して得られる数字で、
この数値が25以上であると過体重と判断され、
世界的にも30を超える状態は肥満と診断されます。

一般住民や心血管疾患の既往のない集団での疫学データにおいては、
BMIが20から24.9の間が最も死亡リスクが低く、
25を超えると総死亡のリスクも、
心血管疾患の発症リスクもいずれも増加に転じます。

しかし、その一方で心血管疾患を持つ患者さんの集団では、
BMIが20から24.9より高い、過体重や軽度の肥満の方が、
死亡リスクが低いという、
かなり意外な結果が複数報告されています。

これをBMIパラドックスと呼ぶこともあります。

何故、心血管疾患の患者さんでは、
体重が重い方が予後が良いのでしょうか?

今回の研究はこれまでの疫学データをまとめて解析する手法で、
心血管疾患の既往のない集団と、
心血管疾患で治療中の安定した状態にある集団、
そして急性冠症候群の状態にある集団の、
3種類の集団毎に、
生命予後とBMIとの関連を比較しています。

その結果、
心血管疾患のない集団では、
最も死亡リスクが低いのは27.2であったのに対して、
安定した心血管疾患の集団では28.1、
急性冠症候群の集団では30.9となっていました。

このように個々の集団において、
心血管疾患との関係の違いにより、
死亡リスクを低下させるBMIの数値には明確な違いが認められました。

またこの集団を全て併せた上で、
喫煙や既往歴などから死亡リスクを推計し、
そのリスクの高さによって3つの分類を行っても、
高リスクである方が、
総死亡のリスクを最も低下させるBMIは上昇していました。

それを図示したものがこちらになります。
BMIと死亡リスクの図.jpg
このように、
どうやら心血管疾患に関わらず、
病気のリスクが高く元々死亡リスクが高い集団では、
そうでない集団より、
やや体重が多くBMIが高い方が、
生命予後が良いという傾向が、
トータルに認められると考えて間違いはないようです。

その原因は不明ですが、
上記文献の著者らは、
生命保持における内臓脂肪などの持つ役割が、
リスクの高い集団では大きいのではないか、
というような推測をしています。

いずれにしても、
その人にとっての健康的なBMIには違いがあり、
それを無視して20から24.9を至適とする、
というような考え方は、
適切ではないと考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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抗血小板剤未使用時の出血リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
一般住民の出血リスク.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
一般集団における消化管などの出血のリスクについての論文です。

脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが高い場合には、
その発症予防のために、
アスピリンなどの抗血小板剤を使用していることで、
一定の予防効果が期待出来ます。

これまでにそうした心血管疾患を起こしたことのある患者さんでは、
その再発のリスクは非常に高いものなので、
その使用にメリットのあることはほぼ間違いがありません。

これを二次予防と言います。

その一方でこれまでにそうした病気を発症していない場合には、
二次予防と比較して抗血小板剤の予防効果は、
より低いものとなります。

従ってこの一次予防において抗血小板剤を使用するかどうかは、
その発症リスクの予測と、
使用による有害事象や副作用の頻度の予測とを、
比較検証して、
そのメリットが明確にそのデメリットを上回る場合に、
初めて検討されるべきだと考えられます。

抗血小板剤の有害事象の筆頭は、
消化管出血や脳内出血などの出血系合併症です。

アメリカの予防医学の専門部会は、
50代でその後10年間の心血管疾患リスクが10%以上の時に、
アスピリンの低用量での使用を推奨しています。

ただ、その元になったデータは寄せ集めのもので、
特に一般の人口における出血リスクについては、
あまり信頼性の高いものではありません。

そこで今回の研究ではニュージーランドにおいて、
プライマリケアで登録された一般住民の疫学データを活用して、
心血管疾患の既往がなく、
抗血小板剤などの出血リスクを高める薬剤を使用していない場合の、
出血リスクの推測を行っています。
トータルな対象者は30から79歳の359166名です。

その結果、
人口1000人当り年間2.19件(95%CI: 2.11から2.27)の、
非致死性消化管出血が発症し、
消化管出血による死亡率は、
3.4%(95%CI: 2.2から4.1)に達していました。

これをアメリカ予防医学部会の提言の元になったデータと、
比較した表がこちらになります。
出血リスクの比較の表.jpg
これはちょっと驚くような違いがあって、
たとえば40代の男性で非致死性消化管出血のリスクは、
人口1000人当り年間1.83件ですが、
アメリカ作業部会の出した推計は、
同じ年齢区分で0.5件となっていて、
3倍以上の違いがあります。

つまり、これまでの想定より今回の疫学データは、
遙かに出血のリスクが高いのです。

これを利用してアスピリンの一次予防の効果を検証すると、
未使用の場合の出血リスクの増加によって、
アスピリン使用時の出血リスクも上方修正され、
従来よりその予防効果は、
遙かにデメリットの大きなものとなってしまいます。

そのどちらが実態に近いのか、
という点はまだ何とも言えませんが、
現行のガイドラインを鵜呑みにすることが、
それほど科学的であるとは言い難く、
地域差の問題なども含めて、
この問題は今後大きな議論を呼ぶことになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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食べ物の種類と脳内報酬系との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
糖と脂質の脳への影響.jpg
2018年のCell Metabolism誌に掲載された、
食事の種類と脳内報酬系と言われる脳の機能との関連を検証した、
なかなか興味深い論文です。

肥満というのは現代の深刻な健康問題ですが、
スナック菓子や菓子パン、ケーキなどの、
見ると思わず食べたくなるような食品が販売され、
それを食べ過ぎてしまうことが、
その1つの大きな要因として考えられます。

そもそも動物というのは、
自分にとってその食べ物が、
どのくらいのカロリーを有しているのかを、
なかば本能的に理解をしていて、
食品の量ではなくカロリーで、
どのくらい食べれば良いのかを、
脳が判断していると考えられています。

人間を含む哺乳類において、
その仕組みは脳の中脳辺縁系という部分で、
コントロールをされていると理解されています。

ただ、この中脳辺縁系は脳内報酬系などと呼ばれているように、
ドーパミン系の神経を興奮させて、
その部位がある行動で刺激されると、
それをある種の快感と判断して、
その行動が繰り返されるという側面を持っています。

生存のために最適な食品を食べた時に、
それが中脳辺縁系を刺激して、
その食行動が習慣化されれば、
それはその生物の生存において意義のあることですが、
今の人間の環境のように、
周りに食べ物があふれていて、
不健康でカロリーも過多な食品が、
見た目をインスタ映え良く粉飾して、
味も甘く香りもそそるように魅力的な工夫が凝らされていると、
それに騙されてしまうという可能性も、
脳内報酬系の性質としては否定は出来ません。

今回の研究は健康なボランティアを対象として、
糖質(炭水化物)主体の食品と、
脂質主体の食品、
そして脂質と糖質とを両方多く含む食品の3種類に分け、
同じカロリーのポーションとして被験者に見せ、
どれを好むかという傾向と、
その時に脳に起こる変化を、
機能性MRIを使用して比較検証したものです。

これはカロリーは同一なので、
生物の本能としては、
3種類で同等の反応が出ることが正常なのです。

具体的には糖質主体の食品はキャンデーやパスタやパン、
脂質主体の食品はチーズやサラミ、
糖質と脂質を含む食品はケーキやビスケットなどが映像になっています。

その結果、
脂質や糖質主体の食品よりも、
多くの人が脂質と糖質を両方含む食品をより好み、
機能性MRIにおいて、
脳内報酬系が活発に反応していることが確認されました。

このように、
脂質と糖質を含む人工的な食品を、
人間はより脳で好むという性質があるので、
それが元々の適正なカロリー摂取の仕組みを狂わせて、
肥満などの原因の1つになっているのではないか、
というのが上記論文の筆者らの考えであるようです。

これは画像のイメージにも偏りがありますし、
食品の画像の好みの問題であって、
実際の食行動に結び付くかどうかは、
推測に過ぎないという気がしますが、
食品メーカーなどの過剰な宣伝によって、
人間の本来の食行動がゆがめられ、
その本質が脳内報酬系にあるのでは、
という推論は大変興味深く、
今後より踏み込んだ知見を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コーヒーの生命予後改善効果とカフェイン代謝(UKバイオバンクの解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーとカフェイン代謝と健康.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
コーヒーの生命予後への効果と、
カフェイン代謝に関わる遺伝子変異との関連を検証した論文です。

コーヒーを飲む習慣が、
総死亡のリスクを減少させ、
心血管疾患や一部の癌のリスクも減少させることは、
世界各地で行われた大規模な疫学データから、
ほぼ実証された事実です。

その結果を受け、
2015年のアメリカの健康的な食事習慣のガイドラインでは、
1杯8オンス(ほぼ240ミリリットル)のカップで、
1日5杯までのコーヒーを飲む習慣を、
健康的な食習慣として推奨しています。

ただ、1日5杯を超えるコーヒーにおいても、
健康上の害はないのか、と言う点については、
まだ明確な結論は出ていません。

コーヒーはカフェインを多く含む飲み物で、
カフェインには常用性があり、
また交感神経を刺激して心臓にも負荷を掛けるので、
大量のカフェインが有害であることもまた事実です。

従って、コーヒーが健康に良いとは言っても、
飲み過ぎれば害になることは間違いがなさそうです。

ここで1つ問題なのは、
カフェインを身体で代謝する酵素には遺伝子のタイプがあって、
そのタイプによっては代謝が極端に悪く、
そうでない人と比べて、
血液のカフェイン濃度が高くなる可能性が想定されるということです。

実際にカフェインの代謝酵素の活性が低い人に限って、
カフェインの摂取量が多いと心筋梗塞のリスクの増加に繋がった、
というような報告も過去には発表されています。

その遺伝子のタイプによる影響というのは、
どの程度のものなのでしょうか?

そうした点を検証する目的で、今回の研究では、
UKバイオバンクという、
世界的に有名な医療情報のデータベースを活用して、
50万人近い対象者の、
コーヒーの摂取量と健康状態、
そしてカフェインの代謝酵素のタイプとの関連を検証しています。

10年を超える観察期間における総死亡のリスクは、
コーヒーを全く飲まない群と比較した時に、
1日1杯で8%(95%CI: 0.87から0.97)、
2から3杯で12%(95%CI: 0.84から0.93)、
4から5杯で12%(95%CI: 0.83から0.93)、
6から7杯で16%(95%CI: 0.77から0.92)、
8杯以上で14%(95%CI: 0.77から0.95)と、
それぞれ有意に低下していました。

同様の傾向はインスタントコーヒーでも、
カフェインレスのコーヒーでも認められ、
カフェインの代謝酵素に関わる遺伝子の多型は、
その死亡リスクの低下に影響を与えていませんでした。

このように、
今回の結果では1日8杯以上というコーヒーにおいても、
総死亡のリスクの低下は有意に認められていて、
どうやらカフェインとその健康効果との間には、
あまり関連はなさそうだ、という結果になっています。

ただ、これは相反するようなデータ
(カフェインの代謝物濃度と健康影響が相関した)
もこれまでに報告されていて、
カフェインの代謝産物の影響なども複雑に絡み合っているので、
今回のデータのみをもって、
コーヒーの効果はカフェインと無関係とは言い切れないのですが、
大規模データでこうした結果の出た意義は大きく、
コーヒーの健康影響への議論は、
まだまだ加熱することになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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HPVワクチンによる皮膚扁平上皮癌治癒効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
HPVワクチンの皮膚癌への有効性.jpg
2018年のJAMA Dermatology誌に掲載された、
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンを、
高齢者の皮膚の扁平上皮癌に使用して、
著効と言って良い効果があったという、
興味深い1例報告です。

ヒトパピローマウイルスが、
子宮頸癌以外にも、
多くの癌の発生に関わっていることは、
広く知られていますが、
皮膚の扁平上皮癌も、
その1つです。

通常こうした知見はあくまで研究レベルのもので、
癌の治療にそのまま使えるようなものではありませんが、
今回の症例報告は手術適応のない、
90代の女性に発症した多発性の皮膚扁平上皮癌が、
ガーダシル9という国外では使用されている9価のHPVワクチンによって、
ほぼ完治と言って良い治療効果が認められたという、
かなり驚くべき事例です。

当該の患者さんに対して、
6週間の間隔を置いてガーダシル9を、
通常の接種量で2回の筋肉注射による接種を行います。
更に同じワクチン液0.5ミリリットルを、
生理食塩水2.5ミリリットルで希釈し、
皮膚にリドカインとエピネフリンによる局所麻酔をした上で、
直接皮膚の癌組織に注入します。
8ヶ月の間に都合4回の腫瘍内注入を繰り返したところ、
8ヶ月後には全ての肉眼的腫瘍が縮小し、
11ヶ月後には肉眼的には瘢痕を残すのみで、
組織学的検証でも、
軽度の細胞の異形成を示すのみで、
癌細胞は完全に消失していました。
そして、治療開始後24ヶ月の時点で、
再発の兆候は認められていません。

ちょっと信じられないほどの劇的な治療効果です。

治療前後の画像が論文には掲載されていますが、
ちょっとどぎつい刺激の強い感じのものなので、
あえて引用はしません。
無料で読める論文ですので、
ご興味のある方は本文をご一読下さい。

これはまだ1例報告なので、
仮に事実としても、
どのような症例に効果があるのか、
特定の事例のみの効果なのか、
など詳細はまだ不明ですが、
通常感染予防として使用されているワクチンに、
このような出来上がった癌の治療効果がある、
という報告は大変興味深く、
今後の検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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インフルエンザ生ワクチンと不活化ワクチンの比較(2018年カナダ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザ生ワクチンと不活化ワクチンの比較.jpg
2018年のJAMA Pediatrics誌に掲載された、
インフルエンザの生ワクチンと不活化ワクチンとを比較した論文です。

現状日本で使用されているインフルエンザワクチンは、
皮下注射のタイプの不活化ワクチンですが、
海外では鼻からスプレーをする方法の生ワクチンも使用されています。

この生ワクチンはアメリカでは2003年には認可され、
ヨーロッパでは2011年に認可されて、
2011年以降に本格的に接種が開始されました。
導入されたのはアメリカ、カナダ、イギリスなどです。

ただ、その対象年齢や位置づけは国によっても異なっています。

アメリカは2014から2015年のシーズンには、
2から8歳の年齢層において、
不活化ワクチンより生ワクチンを優先して接種の方針としましたが、
2013年から2016年における有効性の検証により、
H1N1pdm09(2009年に流行した「新型」ウイルス)に対する効果が、
ほぼ無効であったという結果がまとまり、
2016年のシーズンでは「推奨しない」という判断になりました。
しかし、2018年の2月には、一転して、
2018年から2019年のシーズンにおいて、
再度生ワクチンを推奨するという方針を打ち出しています。

今回の研究が行われたカナダでは、
2011年から2013年には2から17歳で生ワクチンが採用され、
2014年から2016年には2から6歳で生ワクチンが採用されています。

このように生ワクチンと不活化ワクチンの有効性に、
どの年齢でどの程度の差があるのかについては、
まだ一定した結論が得られていません。

今回の研究はカナダにおいて、
2から17歳の年齢層における、
生ワクチンと不活化ワクチンの有効性の比較を、
検査で確定したインフルエンザに限って検証しているものです。

2012年から2016年の4シーズンにおいて、
インフルエンザ感染が疑われた2から17歳の鼻腔もしくは咽頭の検体、
トータル10779件に遺伝子検査を施行したところ、
3161件がインフルエンザウイルス感染と診断されました。
これをワクチン接種歴とその種類を聞き取りし、
検査の陰性例をコントロールとする手法で解析したところ、
2015から2016年のシーズンのB型インフルエンザ感染に関しては、
不活化ワクチンの方が生ワクチンより有効でしたが、
それ以外のシーズンの全てのウイルス型に対するワクチンの有効性には、
生ワクチンと不活化ワクチンとの間で、
有意な差は認められませんでした。

このように、
今回のカナダの解析においては、
生ワクチンと不活化ワクチンとの間に、
2から17歳の年齢層において効果の差は認められませんでした。

従って、この年齢層においては、
その使用のし易さやそのお子さんの健康状態などを勘案して、
どちらかを選択するという考え方が、
どうやら妥当であるように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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アイスクリーム頭痛とそのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アイスクリーム頭痛.jpg
これは随分と古い資料ですが、
1997年のBritish Medical Journal誌の解説記事です。

アイスクリーム頭痛という身近で面白いテーマの短い総説ですが、
これ以降この症状についての知見は、
それほどの大きな進歩はないようです。

アイスクリーム頭痛(Ice cream headache)は、
寒冷刺激による頭痛(Cold stimulus headache)の一種で、
アイスクリームやかき氷を食べた時に、
すぐに起こる頭がキーンとするような頭痛のことです。

典型的な経過は冷たいものを食べて数秒で始まり、
30から60秒くらいでピークとなり、
2 から5分以内には消退します。

その頻度(有病率)は報告によりバラバラで、
7.6%という報告から93%という報告まであります。

大人での調査では8%というものから、
15%、37%、60%と様々です。

ティーンエイジャーくらいの調査では、
概ね大人よりその頻度は多く、
41%から79%という報告があります。

アイスクリーム頭痛が注目されるのは、
主に片頭痛との関連においてです。
かなり古い報告では、
片頭痛の患者さんの93%にアイスクリーム頭痛が見られる一方で、
片頭痛のない人では31%にしか見られなかった、というものがあります。
この報告はアイスクリーム頭痛と片頭痛との関連を示唆するものですが、
より新しい報告では、
関連は見られない、というものもあって、
一定はしていません。

アイスクリーム頭痛のメカニズムは、
三叉神経を刺激して興奮させるのではないか、
という考え方が有力です。
一種の関連痛ですが、
そのメカニズムは推測の域を出ていません。

古い報告ではアイスクリーム頭痛は夏のみに起こる、
という報告がありますが、
冬に調査して同様に認められた、
という報告もあり、
季節性は明確ではないようです。
風変わりなものではアイスクリームを5秒以内に一気食いした場合と、
ゆっくり食べた場合とを比較したものがあり、
ゆっくり食べると頻度は少なくはなりますが、
それで予防されるということはないようです。

今日はアイスクリーム頭痛の総説でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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腹部大動脈瘤スクリーニングの効果(2018年スウェーデンのコホート研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
AAAのスクリーニングの効果.jpg
2018年のLancet誌に掲載された、
腹部大動脈瘤のスクリーニングの効果を検証した論文です。

腹部大動脈瘤は主に動脈硬化と高血圧に伴う、
お腹の太い動脈の「腫れ」で、
血管が破裂すればお腹の中に大出血を起こし、
命にかかわるような事態となります。

この大動脈瘤のチェックは、
お腹の超音波検査によって、
比較的簡単に発見することが出来るので、
リスクの高い高齢男性に、
腹部大動脈瘤の検診を行うことにより、
大出血が未然に防がれて、
生命予後の改善に結び付くのでは、
という想定が可能です。

その立証のために、
これまで幾つかの介入試験が行われています。

このうち2009年に発表されたイギリスの臨床試験では、
65歳から74歳の男性に対して、
腹部大動脈瘤のスクリーニングを行い、
その効果を13年に渡って観察したところ、
死亡リスクが42%(95%CI; 31から51%)有意に低下しました。

また、同様に施行されたデンマークの臨床試験では、
65歳から73歳の男性を対象として、
14年間の観察期間において、
腹部大動脈瘤のスクリーニングにより、
死亡リスクが66%(95%CI; 43から80%)有意に低下していました。

一方でオーストラリアにおいて、
65歳から83歳というより広い年齢層の男性に対して行われた、
腹部大動脈瘤のスクリーニングの長期効果を検証結果では、
明確な生命予後の改善は確認されませんでした。

今回のデータは今度はスウェーデンのもので、
65歳以上の男性で、
腹部大動脈瘤のスクリーニングの対象となった25265名を、
年齢をマッチさせたコントロールと比較して、
スクリーニングの効果を検証しています。

スクリーニングは1回のみの腹部超音波検査を行なうもので、
その径が30ミリ以上を動脈瘤と診断しています。
診断された事例は専門施設で経過観察を行い、
概ね径が55ミリ以上で予防的手術の対象とされています。

6年の経過観察の結果、
スクリーニングによる死亡リスクの低下は24%と算出されましたが、
有意ではなく(95%CI: 0.38から1.51)、
これはスクリーニングを受けた1万人当たり、
2名の死亡を予防する効果と算出されます。
一方で過剰診断は同じ1万人当たり49人に認められ、
そのうちの19名はスクリーニングをしなければ、
有害な手術を回避出来たと推測されました。
スクリーニングによる死亡リスクの低下は、
スクリーニング未施行群との比較で検証したところ、
喫煙の有無の影響による可能性が高いと想定されました。

このように今回の結果では、
腹部大動脈瘤のスクリーニングは、
過剰診断を増やすだけで明確はメリットに乏しい、
という厳しい結論となっています。

まだこの問題は結論が出ていませんが、
少なくとも集団で施行するのに有用な健診ではない、
という判断はほぼ動かないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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喘息治療における長時間作用性β2刺激剤の安全性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
LABAのステロイド併用の安全性.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
現在広く使用されている喘息治療薬の安全性を検証した論文です。

気管支喘息の治療の柱は、
吸入ステロイド剤です。

吸入ステロイド剤は喘息に伴う気管支壁の炎症を抑え、
呼吸状態を改善して、
喘息発作やその急性増悪を予防します。

これは多くの精度の高い臨床試験において、
実証された事実です。

吸入ステロイドと並んで、
長く喘息の長期管理に使用されていたのが、
長時間作用性β2刺激剤です。
これを略してLABAと呼んでいます。

LABAは吸入により持続的に気管支を広げ、
喘息の症状を改善する効果があります。
その一方で交感神経の刺激作用が持続することにより、
短時間作用性の薬と比較すれば軽微であるとは言え、
心臓に負担を掛け不整脈などを誘発することも想定されます。

LABAの安全性についてアメリカのFDAは2010年に、
LABAを気管支喘息の第一選択薬として使用するべきではない、
という見解を公表しました。

これはLABA単独の治療についてですが、
現状気管支喘息の吸入薬の多くは、
吸入ステロイドとの合剤となっています。
専門家の間でも、
この合剤の安全性には問題がないとする見解があったのですが、
FDAはステロイドとの合剤についても、
LABA単剤と同様の警告を表示するように指示していました。

2010年にFDAは、
ステロイドの単独の吸入剤と比較した場合の、
ステロイドとLABAの合剤の安全性についての臨床試験を、
各メーカーに施行するように指示をしました。

そして、その結果がほぼ確認されたとして、
2017年の12月に、
ステロイドとLABAの合剤の、
安全性についての警告を取り消す決定をしたのです。

今回の論文はその決定の根拠となった、
4つの臨床試験の結果をまとめて解析したものです。
主な対象となっている合剤は、
日本でも発売されている、
アドエアとシムビコート、
そして日本未発売のデュレアです。

その結果36010名の対象者をまとめて解析した結果として、
6ヶ月の治療期間における患者さんの予後には、
有意な差はないことが確認されました。
また、ステロイド単独の治療と比較して、
ステロイドとLABAの合剤による治療は、
喘息の急性増悪のリスクを、
17%(95%CI: 0.78から0.89)有意に低下させていました。

このように、
少なくとも半年程度の治療期間においては、
吸入ステロイドとLABAの合剤は、
吸入ステロイド単独の治療と比較して、
その予後を悪くすることはなく、
むしろ急性増悪のリスクについては、
より低下させるという可能性が示唆されました。

LABAの安全性は、
吸入ステロイドとの併用に限っては、
ほぼ実証されたと言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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メトホルミンの妊娠中の安全性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メトホルミンの妊娠中の安全性.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
最も世界的に評価の高い糖尿病治療薬の、
妊娠中の安全性についての論文です。

メトホルミン(商品名メトグルコなど)は、
インスリン感受性を改善して血糖値を低下させる薬で、
2型糖尿病の第一選択の治療薬として、
その評価は世界的に確立しています。

ただ、妊娠されている女性の使用については、
まだ議論のあるところです。

メトホルミンは胎盤を移行する性質があり、
大量の薬剤を使用した動物実験においては、
催奇形性が認められています。
ただ、常用量の使用による催奇形性については、
人間、動物問わずに実証はされていません。
妊娠中の女性はメトホルミンの副作用である乳酸アシドーシスを、
起こしやすいのではないか、という報告もあります。

このため、現行の日本の添付文書においては、
妊娠および授乳中のメトホルミンの使用は、
禁忌の扱いとなっています。
つまり、どんな理由があっても使用は出来ません。

しかし、上記文献の記載によれば、
イギリスにおいては、
2008年以降妊娠糖尿病の患者さんや、
2型糖尿病の患者さんで、
そのメリットがリスクを上回る場合には、
その使用が認められています。

メトホルミンはまた多囊胞性卵胞という病気においては、
そのインスリン感受性改善作用を期待して、
妊娠を希望する女性にも使用されています。

実際問題として、
メトホルミンを使用している患者さんが、
妊娠する可能性は非常に高い訳ですから、
妊娠中はいかなる理由があろうと、
その使用を中止するという考え方には無理があります。

メトホルミンの妊娠中の使用についての、
これまでに報告された3つのメタ解析の論文では、
いずれも未使用と比較して、
明確な胎児奇形の増加は認められなかった、
という結果になっています。

一方で2018年に392名の妊娠女性への調査結果では、
糖尿病におけるメトホルミンの使用においてのみ、
有意な胎児奇形の増加が認められています。

このように、
メトホルミンの妊娠中の影響については、
まだ確実と言える根拠が存在していません。

今回の研究はヨーロッパ11カ国の胎児先天異常のデータを活用して、
50167件の先天異常発症事例と、
妊娠初期のメトホルミンの使用との関連を検証しています。

その結果、
先天異常をトータルで見ると、
妊娠初期のメトホルミンの使用と、
胎児の先天異常の発症率との間には、
明確な関連は認められませんでした。

個別の先天異常について見ると、
肺動脈弁閉鎖症のみに弱い相関が認められました。

このようにメトホルミンの妊娠中の使用については、
先天異常の関連ではそれほどのリスクはない、
というのが現状の認識と考えて良いようで、
まだ確定的なものではありませんが、
日本の現状の「禁忌」という扱いも、
今後は見直される必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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