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コーヒーによる脈拍低下作用 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーと脈拍.jpg
2019年のHeart and Vessels誌に掲載された、
コーヒーの脈拍への影響についての論文です。

コーヒーの健康効果については、
世界中の大規模疫学データにおいて、
総死亡のリスクや心血管疾患のリスクを低下させる、
と言う点においてはその結果はほぼ一致しています。

この意味ではコーヒーの健康効果は、
ほぼ実証されたと言って良いのです。

ただ、それではコーヒーのどの成分が、
その健康効果の原因になっているのか、
という点についてはまだ明確な結論が出ていません。

その候補の1つはカフェインですが、
カフェインやコーヒー以外にも、
緑茶や紅茶などにも含まれているの対して、
同じ量のカフェインの摂取で比較しても、
コーヒーと同じような効果が、
お茶では得られていないと言う点が、
疑問として残るのです。

心血管疾患のリスクの1つとして脈拍数があります。

これまでにも何度かご紹介しているように、
安静時の脈拍数が早い(概ね1分間に75回以上)と、
高血圧や心血管疾患のリスクが高まることが報告されています。

それでは、コーヒーは脈拍にどのような影響を与えるのでしょうか?

今回の研究は久留米大学医学部の研究グループによるもので、
世界7カ国共同研究という疫学研究の日本での対象地である、
久留米市田主丸町(たぬしまるまち)の住民データを活用して、
コーヒーの摂取量と生命予後、そして脈拍数との関連を検証しています。

筆頭筆者の方の名前が、
Yume Nohara-Shitamaと書かれているので、
「ゆめ、のはら、したま?」
これは何かペンネームのようなものなのかしら、
とても人の名前のようにも思えないぞ、
と思ったのですが、
ちゃんとした人の名前でした。
ご興味のある方はお調べ下さい。

検診を受けた40歳以上の町民1902人(町の人口が3463人)
を対象として15年の経過観察を行った結果、
観察期間中に343名が死亡をされました。
ここでコーヒーの1日摂取量を、
1日0から10ミリリットルから1日151ミリリットル以上の4群に分けて比較したところ、
総死亡のリスクはコーヒーの摂取量が最も少ない群と比較して、
多い群では有意に低下していました。

コーヒーの生命予後改善効果が、
ここでも確認されたことになります。

ここでのコーヒーの摂取量と安静時脈拍数との関係をみてみると、
コーヒーの摂取量が多いほど脈拍数は低下していました。

そして、
コーヒーの摂取量が最も少ない群では、
脈拍が70回を超える群では55以下の群と比較して、
総死亡のリスクは2倍以上となっていましたが、
コーヒーの摂取量の多い群では、
脈拍と死亡リスクとのそうした関連は認められませんでした。

要するにコーヒーによる脈拍数の低下が、
高血圧や心血管疾患のリスクを下げ、
そのことによって死亡リスクの低下に繋がっていることを、
想定させる結果です。

それでは、何故コーヒーで脈拍数が低下するのでしょうか?

コーヒーはカフェインを含んでいて、
カフェインには交感神経の刺激作用がありますから、
その点だけを考えると、
脈拍はむしろ多くなっておかしくはありません。

ただ、これは敢くまで短期の効果で、
長期間カフェインを持続的に摂取すると、
むしろ脈拍は低下するという可能性があります。
また、コーヒーに含まれるポリフェノールの代表であるクロロゲン酸が、
脈拍の低下に結び付いているという可能性も、
上記文献の考察には記載されています。

このように、
意外にもコーヒーを飲んだ方が脈拍は低下しており、
それがコーヒーの健康効果にも、
関連している可能性がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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グルコサミンの心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
グルコサミンの心血管疾患予防効果.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
関節痛に広く使用されているサプリメントが、
心血管疾患の予防になるのではないかという、
「意外に効くじゃんグルコサミンって!」
という感じの論文です。

グルコサミンとコンドロイチンは、
膝などの関節の軟骨を形成する成分で、
そのためサプリメントとしてその補充を行なうことが、
膝の痛みの改善や関節症の進行予防に繋がるのでは、
という期待から、
サプリメントの一大市場を形成しています。

毎日そのCMがテレビで流れない日はありませんし、
あらゆるメディアがその宣伝を行なっています。

しかし、実際にその効果がどの程度のものか、
という点については、
まだ議論があり、
一定の結論に至ってはいません。

グルコサミンについては2000年代の初め頃に、
一流の医学誌にその使用により膝の痛みが改善したとする、
複数の論文が掲載されました。
今でも一部のグルコサミンの宣伝には、
その時のデータが使用されています。

しかし、その論文の多くが、
特定のグルコサミンの販売業者と癒着した、
研究者によるものだったことが判明し、
その信頼性は大きく損なわれました。

その後、アメリカでGAIT研究と呼ばれる大規模な臨床研究が行われ、
グルコサミンとコンドロイチンの半年間の効果が検証されました。
その結果は、2006年と2008年に論文化されました。
トータルには明確な効果は確認されませんでしたが、
特に有害ではなく、症状の改善したケースも認められました。
サブ解析で中等度から高度の痛みのある患者さんでは、
痛みの改善効果があるかも…
というくらいの結果です。

その後2014年のAnn Rheum Dis.に新たな臨床試験の結果が発表されました。
その後に発表された臨床試験の中では、
例数もまずまずで厳密な手法を用い、
偽薬と比較していて、2年という長期の効果を見ている、
という点で、それまでにない画期的なものです。

オーストラリアにおいて、
45から75歳の変形性膝関節症の患者さん、
トータル605名を、
本人にも治療者にも分からないように、
4つのグループに分け、
第一グループはグルコサミンを1日1500ミリグラム、
第二グループはコンドロイチンを1日800ミリグラム、
第三グループはグルコサミンとコンドロイチンの併用、
そして第四グループは偽薬を使用して、
その後2年間の経過観察を行います。

その結果…

偽薬を含めた全てのグループで、
治療の1年後には膝の痛みは改善を示しましたが、
グループ間の差は有意なものはありませんでした。
有害事象にも差はありません。
そして、グルコサミンとコンドロイチンの併用群では、
膝関節症の進行度の指標1つである、
関節裂隙の狭小化が、
2年間で0.1ミリ(0.002から0.20)偽薬より有意に予防されていました。

つまり、
痛みなどの症状には差は付かなかったけれど、
グルコサミンとコンドロイチンを併用すると、
二年間で関節の軟骨の減りが、
平均で0.1ミリ少なくて済んだ、
ということになります。

同じ雑誌に翌2015年、
次のような論文も発表されました。
これは別個の研究で、
フランス、ドイツ、ポーランド、スペインで、
患者さんが登録されています。

変形性膝関節症のある40歳以上の606名の患者さんを、
グルコサミン1500ミリグラムとコンドロイチン1200ミリグラムを併用する群と、
セレコキシブという消炎鎮痛剤を200ミリグラム使用する群の2つに分け、
半年間の経過観察を行なっています。
どちらのグループかは、
患者さんにも主治医にも知らされません。

その結果、
矢張り痛みはどちらの群でも減少していて、
しかし両群での効果の差は認められませんでした。

この研究は偽薬との比較ではないので、
その点はちょっと見劣りがするのですが、
膝関節症の痛みに対して、
痛み止めを使うべきか、
それともグルコサミンやコンドロイチンで様子を見るべきか、
というのは、
臨床において医者も患者さんも、
日々直面する問題ですから、
その意味では意義のある試験だと言って良いと思います。

膝関節症は、
物理的なストレスと老化が原因であっても、
その進行には一種の自己炎症のメカニズムが絡んでいて、
その意味では消炎鎮痛剤の使用が、
理に適っている側面があります。

しかし、こうして結果を見ると、
どうやらセレコキシブによる病状の改善効果は、
グルコサミンとコンドロイチンで、
充分代用は可能な水準のもののように思われます。
更には偽薬とどの程度違うかは、
神のみぞ知る、という感じです。

トータルに考えて、
グルコサミンとコンドロイチンの併用は、
2年間程度の使用における安全性はほぼ確立していて、
その効果は膝関節症の進行予防に、
僅かには関与しているようです。
ただ、その痛みなどの改善効果は、
多分にプラセボ効果を含んでいて、
それを除外するとかなり心許ない感じです。

このように、グルコサミンはサプリメントとしては優等生です。

一定の効果がある可能性があり、
一方で有害事象などのリスクが生じる可能性は極めて低いからです。

このため、アメリカやオーストラリアでは、
グルコサミンは日本と同じくサプリメントの扱いですが、
ヨーロッパでは処方箋の必要な処方薬の扱いとなっています。

こうしたことを知らずに、
「グルコサミンには何の効果もない」
と言い切っているような専門家と称する方もいますが、
実は知識がアップデートされていないのです。

最近グルコサミンの使用により、
心血管疾患のリスクが低下するのでは、
ということを示唆する報告が幾つか見られています。

今回の研究は大規模健康データである、
イギリスのUKバイオバンクのデータを活用して、
心血管疾患の既往のないトータル466039名に、
グルコサミンの使用の有無を聞き取りし、
中間値で7年の経過観察を行って、
心血管疾患の発症リスクを比較検証しています。

他の心血管疾患のリスク因子を補正した結果として、
グルコサミンの習慣的な使用は、
心血管疾患のトータルな発症リスクを15%(95%CI: 0.80から0.90)、
心血管疾患による死亡のリスクを22%(95%CI: 0.70から0.87)、
虚血性心疾患の発症リスクを18%(95%CI: 0.76から0.88)、
それぞれ有意に低下させていました。

このように、
今回の大規模な検証から、
グルコサミンの使用が心血管疾患のリスクを低下させる可能性が、
示唆されました。

仮にこれが事実として、
どのようなメカニズムが想定されるでしょうか?

上記文献の考察では、
グルコサミンに抗炎症効果があり、
それが原因となっている可能性や、
グルコサミンに糖化を抑制するような作用があり、
低糖質ダイエットと似た作用があるのでは、
というような推論も記載されています。

グルコサミンの心血管疾患予防効果は、
まだ確定したものではありませんが、
グルコサミンはサプリメントとしては、
関節炎にも一定の有効性があり、
心血管疾患の予防効果もあるとすれば、
意外に優れものと言えるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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インフルエンザ感染と湿度との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザと湿度の関係.jpg
2019年のPNAS(米科学アカデミー紀要)に掲載された、
インフルエンザ感染に対する湿度の影響についての論文です。

季節性インフルエンザの感染は、
北半球では11月から3月に多く、
南半球では5月から9月に多いという特徴があります。

これは概ね気候の影響として説明されています。

インフルエンザウイルスの感染は、
温度と湿度が共に低い環境で、
より活発化することが知られています。

ただ、2019年のApplied and Environmental Microbiology誌に掲載された論文では、
カナダの疫学データを解析した結果として、
通常湿度として表現されている相対湿度は、
確かにB型インフルエンザは低いほど感染が活発化しますが、
A型インフルエンザはむしろ高いほど感染が活発化する、
という結果になっていました。

つまり、湿度が低いほどインフルエンザ感染が活発化する、
という「常識」も、
実際にはそれほど確実と言える知見ではありません。

仮に湿度が低いとインフルエンザが流行し易いとして、
その原因は何なのでしょうか?

湿度特に絶対湿度が低いと、
インフルエンザウイルスを含む飛沫粒子が安定せず、
飛沫感染が安定せず、
感染が起こりにくい、
とする複数のデータが存在しています。

その一方で厚生労働省のサイトには、
人間の気道の粘膜の防御機能が、
相対湿度が低いと低下する、
という趣旨の説明がありますが、
その根拠はあまり明確なものがありません。

上記論文の記載をみても、
粘膜の防御機能などが湿度によってどう変化するかについては、
その根拠となる知見は限られているようです。

今回の研究はアメリカのエール大学などの研究チームによるもので、
ネズミによる動物実験ですが、
相対湿度が10から20%と低い環境と、
50%と通常の環境とで、
気道の防御機能の違いを比較検証しています。

その結果、
湿度が低いと気道粘膜の繊毛運動が低下し、
インフルエンザウイルス感染時に障害された、
粘膜の機能回復も遅れることが確認されました。

つまり、厚労省のサイトにあることも嘘ではなく、
インフルエンザ感染に対抗する粘膜の防御機能は、
湿度が10から20%では低下することが、
動物実験のレベルではありますが、
確認されたのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アスピリンは大腸癌検診の感度を上げるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンと大腸癌リスク.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
大腸癌検診の感度を上げるために、
検診前にアスピリンを使用する方法の、
効果を検証した論文です。

実際に国際的にその有効性が確認されている癌検診は、
僅かしかありませんが、
そのうちの1つが便の潜血反応を使用した大腸癌検診です。

これは日本の市町村でも広く行われていますが、
便を通常2回日を変えて取ってもらい、
そこに微量の血液の成分が、
検出されるかどうかを検査するものです。

もしこの検査で陽性反応があった場合には、
大腸内視鏡検査など、
大腸癌診断のための精密検査に進みます。

この検査は大腸癌に限って言うと、
その70から80%で陽性となり、
この検査が陰性であれば大腸癌は90%で否定されます。

ただ、大腸癌は前癌状態の腺腫から進行しますが、
その腺腫の段階で検査が陽性となることはあまりありません。

それでは、前癌状態の腺腫において、
この検査の感度を上げるような方法はないのでしょうか?

報告によると、
低用量のアスピリンを長期使用している患者さんでは、
未使用の患者さんより前癌状態の腺腫の発見率が高かった、
というデータが存在しています。
これはアスピリンの使用により出血が止まりにくい状態となるので、
腺腫からの微量な出血が、
それだけ感知されやすくなった可能性が想定されています。

それでは、
アスピリンを普段使用していない人でも、
便潜血の検査の前にアスピリンを使用することで、
検査の感度を上げることが出来るのではないでしょうか?

今回の研究ではその点を検証する目的で、
検査前にアスピリンを単回使用して、
その効果を比較検証しています。

ドイツの複数施設において、
40歳から80歳のアスピリンなどの抗血小板剤や抗凝固剤を未使用で、
大腸の内視鏡検査を予定している2422名を登録し、
対象者にも検査の担当者にも分からないように2つの群に分けると、
一方は便潜血の採便の2日前に300ミリグラムのアスピリンを使用し、
もう一方は偽薬を使用して便潜血検査を施行し、
その結果をその後の大腸内視鏡検査の結果と比較して、
アスピリン使用の有効性を検証しています。

その結果、
前癌病変の腺腫と癌を併せた病変の検出感度は、
偽薬群では30.4%にあったのに対して、
アスピリン群では40.2%で、
一定の感度の上昇が認められました。
しかし、予め設定した有効と判断される水準には、
達していませんでした。

従って、今回の結果としては、
アスピリンの使用は当初想定したような効果が得られなかった、
要するに失敗であったということになります。

ただし…

これはより例数を増やせば、
有意な差に達するという可能性はあります。
また、デザインとして1回のみのアスピリンの使用を行なっていますが、
それでは充分な効果に至らないという可能性もあります。
たとえば1週間くらい持続して使用すれば、
より効果は明確になった可能性はあります。

従って、まだこの問題は結論が出ているとは言えません。

今後の更なる検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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脈拍数と生命予後について(2019年スウェーデンの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脈拍と生命予後.jpg
2019年のBMJ Open Heart誌に掲載された、
脈拍数と生命予後と心血管疾患リスクとの関連についての論文です。

安静時の脈拍数が早いほど、
生命予後に悪影響を与えたり、
心血管疾患のリスクになるというのは、
これまでに疫学データで複数報告されています。

こうした情報が一般にも広まっているので、
僕も時々外来で患者さんから、
「脈が早いと早死にすると聞いたのですが大丈夫ですか」
のような質問を受けることがあります。

確かにある時点で脈拍が早いことが、
その後の死亡リスクの増加と関連する、
というようなデータは複数存在しています。

しかし、
その殆どは1回しか脈拍を測定していないので、
脈拍が早いことが生命予後の悪化の、
原因であるのか結果であるのかは明確ではありません。

今回の研究はスウェーデンにおいて、
1943年に生まれた798名を対象として、
50歳の登録時の安静時の脈拍を測定して、
その後21年に渡る経過観察を行い、
60歳時にも脈拍数を測定して、
その変化と生命予後や心血管疾患との関連を検証しています。

長期の観察を行っている点と、
脈拍の変化を検証している点が今回のポイントです。

その結果、
50歳の安静時脈拍数が55回以下と比較して、
75回を超えていると、
その後の総死亡のリスクは2.3倍(95%CI: 1.2から4.7)、
心血管疾患の発症リスクは1.8倍(95%CI: 1.1から3.0)、
虚血性心疾患の発症リスクは2.2倍(95%CI: 1.1から4.5)、
それぞれ有意に増加していました。

次に50歳時と60歳時の安静時脈拍数が、
5以上変動したかどうかで検証すると、
脈拍が増加した場合と比較して、
脈拍が安定していると、
心血管疾患のリスクは44%(95%CI: 0.35から0.87)
有意に抑制されていました。

この10年間に脈拍が1回増加する毎に、
総死亡のリスクが3%、心血管疾患のリスクが1%、
虚血性心疾患のリスクが2%、
それぞれ増加すると算定されました。

このように、
安静時の脈拍が75回以上である場合と、
脈拍が10年で5以上増加した場合に、
総死亡のリスクや心血管疾患のリスク、
また虚血性心疾患のリスクのいずれもが増加していました。

これは脈拍自体のリスクと言うより、
交感神経の緊張状態や、
心機能の低下などを反映している可能性が高く、
特に経過の中で脈拍数が増加した時には、
何か心血管系の異常の兆候がないか、
一度は検討する必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アルコールとタバコの癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルコールと癌リスク.jpg
2019年のBMC Public Health誌に掲載された、
アルコールとタバコの癌リスクを、
男女で比較した、
一般向けとしては受けそうな内容の論文です。

タバコが食道癌や肺癌など、
多くの癌の発症リスクであることは、
一般の方にも広く知られている事実です。
上記文献の記載によれば、
癌による死亡の22%は、
タバコが原因と推定されるそうです。

一方でアルコールについては、
適正な範囲の飲酒習慣は、
健康を大きく害することはない、
という考え方が一般的です。
その適正量にも色々な意見がありますが、
概ね1日に20グラム以下のアルコールであれば、
大きな問題は生じないと言って良いと思います。

ただし、癌についてはそのニュアンスは少し異なります。
アルコールに明確な関連のある癌のうち、
喉頭癌、食道癌、乳癌などについては、
より少ないアルコール量でも、
そのリスクの増加に繋がるというデータが存在しています。

今回の研究はイギリスの疫学データを元にして、
アルコールとタバコの癌リスクに与える影響を、
一般への啓蒙目的に算出しているものです。

その結果、
1週間にボトル1本のワインを飲むと、
その生涯における癌発症リスクは、
絶対リスクで男性では1.0%、女性では1.4%増加すると算出されました。

この男女差は、
主に乳癌のリスクが絶対リスクで0.8%増加することから、
生じていました。

そして、
1週間にボトル1本のワインを飲むことの癌発症リスクは、
男性では1週間に5本の喫煙に相当し、
女性では1週間に10本の喫煙に相当すると算出されました。

これはかなり単純化されたものなので、
リスクを分かり易く示すための目安に過ぎませんが、
女性の飲酒のリスクに一般の警鐘を鳴らすという意味で、
一定の意義があるものではないかと思います。

アルコールも時には、
タバコに匹敵するリスクになるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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脊髄損傷に対する間葉系幹細胞の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
間葉系幹細胞と脊髄損傷.jpg
2019年のJournal of Neurotrauma誌の論文ですが、
治療法のなかった脊髄損傷に対して、
間葉系幹細胞を大量に注射することにより治療するという、
世界初のこの分野の再生治療として、
今非常に話題になっている知見に関わるものです。

2019年の2月に、
脊髄損傷治療用の自己骨髄間葉系幹細胞「ステミラック注」
の薬価収載が決定しました。
1回分の薬価が1500万円弱という、
ビックリするような高額の注射薬です。
これが条件付きで健康保険の適応となったのです。

この薬を1回使用するだけで、
1000万円以上の健康保険料が使用されることになる訳です。
(実際には高額医療の還付があるので公費負担は更に大きい)

勿論画期的な治療にお金が掛かるのは当然のことなのでしょう。

それは理解出来ます。

脊髄損傷というのは本当に深刻な事態ですから、
この治療によりその回復が望めるのだとすれば、
むしろ安いと言えるのかも知れません。

ただ、正直医療費が危機的だ、
薬は皆ジェネリックにしろ、
不要な治療はするな、検査もするな、
と毎日言われ続けて仕事をしている身としては、
何となくモヤモヤする気分になることも事実です。

こうした治療がこれから沢山行われるようになるのでしょ?

今のシステムでそれが本当に可能なのですか?

そんなことは不可能ではないでしょうか?

ない袖は振れないのではないですか?

個人的な意見としては、
こうした高額医療は、
これまでの健康保険の枠組みとは、
別個の枠組みで処理するようにするべきだと考えます。

そうでないと医療費が危機的である原因が何処にあるのか、
全く分からないような事態になってしまいます。

別個にファンドみたいなものを作って、
そこから拠出するべきではないでしょうか?

そうしないのは、
これで健康皆保険の制度が崩壊しても、
「仕方ないでしょ」という言い訳を用意しているようにしか、
僕には思えません。

この治療は最近NHKスペシャルで、
「奇跡の治療、夢の治療、驚異の治療」のように取り上げられて、
大きな話題となりました。

NHKは本当に懲りないですよね。

いや、勿論この再生治療自体を批判したいということではないのです。

これは勿論素晴らしい治療なのだと思います。(多分ね)

ただ、どうしてNHKのこの番組は、
まだその効果が実証されていないような治療を、
いつもいつも「奇跡」とか「夢」とか「驚異」などと、
扇情的な表現で飾り立てて紹介するのでしょうか?

この前確か取り上げたのは、
認知症の新薬でしたよね。

あれは今どうなっていますか?

殆ど全て頓挫していますよね。

もっと前にSSRIが日本で発売される前には、
「夢の薬」として取り上げたのではないかしら。

あれは有用な薬ではありますが、
決して「夢の薬」などではなかったですよね。

こうした扇情的な取り上げ方で、
患者さんが利益を得ることがあったでしょうか?

なかったとは言いません。
でも、不利益を被ることの方が、
ずっと多かったのではないでしょうか?

そして今回ですが、
非常に高価な治療が、認められた後というタイミングで、
単独施設でしか行えないという状況の中で、
「夢の治療」として取り上げるのは、
如何にもきな臭い、何かの意図を感じてしまうのは、
うがち過ぎでしょうか?

すいません。
ちょっと余談が長くなり過ぎました。

この治療はどういうものかと言うと、
脊髄損傷のように神経が大きく障害された病態の急性期に、
骨髄の中にあって血液や神経に分化する性質を持つ間葉系幹細胞を、
自家培養して増やすと、
それを点滴で身体に戻してやるだけです。

それによって神経の再生が促されて症状が改善すると言うのです。

こうした考え方は癌治療では色々と試みられています。

ただ、特定の細胞を培養して戻すという方法については、
簡便である反面、
あまり着実な効果には結び付かない、
という考え方が多いように思います。

釈然としないのは明確なロジックがあるということではなく、
色々な未分化な細胞を試してみたところ、
間葉系幹細胞で上手く行った、という感じの流れで、
後付けで色々と理屈を付けているように思われるところです。

上記論文においては、
注入された幹細胞が、
障害された局所ばかりではなく、
ネズミの脳の運動野において、
神経系細胞の機能回復に作用している遺伝子の発現が、
増加していたというのです。

つまり、一回の注射をするだけで、
損傷部の神経再生が促されるのみならず、
中枢神経においても機能回復に繋がる活性化が起こる、
ということになります。

これがもし本当なら、
これこそ夢の治療であることは間違いがありません。

現状はただ、発表されている多くは動物実験で、
臨床試験においては著効例を含め、
13例中12例が有効と判断されたと記載されていますが、
まだ論文化はされていないようです。
これが第2相の臨床試験という位置づけで、
その時点でスピード承認されているのですから、
通常ではあり得ない早さです。

おそらく海外の需要なども見込んでいるのでしょうが、
この段階での薬価収載というのは、
如何にも早すぎるという気はします。

健康保険は火の車なのですから、
もう少し別の形での臨床研究の継続が、
あっても良かったのではないでしょうか。

そんな訳で色々と危惧の残る気がする今回の事態ですが、
患者さんに有効なのであればそれが福音であることは確かで、
この知見が果たして5年後にどのように展開しているのか、
冷静に待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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食品中のヒ素が心機能に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ヒ素と心機能.jpg
2019年のCirculation: Cardiovascular Imaging誌に掲載された、
食事や水などからのヒ素の摂取が、
その後の心機能に与える影響についての論文です。

ヒ素というのは、
地殻に多く分布する元素で、
土や水などに多く含まれ、
体内にも微量ながら存在しています。
土や水に含まれるヒ素は無機ヒ素ですが、
魚介類や海藻などには有機ヒ素という形で存在しています。

ただ、大量のヒ素を一度に摂ると、
急性の中毒症状が起こり、
下痢や嘔吐、神経症状や内臓障害を来し、
最悪は死に至ります。

また慢性に多くのヒ素を摂取していると、
膀胱癌や皮膚癌、肺癌の発症リスクとなることや、
高血圧や心疾患、糖尿病などのリスク増加に繋がることも分かっています。

ただ、心血管疾患との関連については、
疫学データではそうした傾向は見られるものの、
それがどのようなメカニズムで生じているのかは、
まだ明確な知見はありません。

そこで今回の研究では、
アメリカの先住民(インディアン)を対象とした、
心疾患の疫学研究のデータを活用して、
心エコーを活用した心機能の測定値と、
尿中のヒ素濃度から換算したヒ素の摂取量との関連を検証しています。

登録時に14から50歳で、
糖尿病や心血管疾患のない1337名を平均5.6年観察したところ、
左室肥大の発症リスクは、
ヒ素の摂取量が2倍になると1.47倍(95%CI: 1.05から2.08)
有意に増加していて、
血圧が高めか高血圧に限ると、
そのリスクはより上昇し1.58倍(95%CI: 1.04から2.41)
となっていました。
また左室機能などの指標も、
ヒ素の摂取量の増加に伴い低下が認められました。

このようにヒ素の摂取量が多いことが、
心肥大や心機能の低下に結び付く可能性があるという指摘は、
非常に興味深く、
日本人は米や海藻類などを通して、
欧米よりもヒ素の摂取量は多いので、
今後こうした検証は、
日本人においても行われる必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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魚の良い脂と水銀との微妙な関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプトの事務作業をしています。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オメガ3脂肪酸と鉛.jpg
2019年のBMJ Heart誌に掲載された、
魚に含まれる健康に良い脂の成分と、
同時に含まれるメチル水銀との関連についての論文です。

興味深いテーマですが、
研究自体の詰めは甘いという感じのする研究です。

青魚などの身に多く含まれる、
EPAやDHAなどの、
ω3系多価不飽和脂肪酸は、
心血管系疾患のリスクを下げる作用が、
複数の研究で確認されています。

そのサプリメントとしての使用は、
必ずしも満足の行く結果に至っていませんが、
魚を多く摂る食生活が、
概ね健康的で長寿であり、
動脈硬化に関連する病気も少ない、
ということはほぼ確実で、
その大きな原因が、
このω3系多価不飽和脂肪酸にあると考えられています。

この点では、
どしどし魚を食べましょう、ということになります。

しかしその一方で、
魚には毒性の高いメチル水銀が、
非常に濃縮されて存在している、
という報告があります。

このメチル水銀はEPAやDHAとは反対に、
心血管疾患のリスクを増加させると報告されています。

つまり、魚は心血管疾患を予防する成分と共に、
それを促進するような成分も同時に含んでいる、
ということになる訳です。

それでは、より水銀の多い魚を摂ることによって、
良い脂による健康効果は、
相殺されてしまうのでしょうか?

この点については、あまり明確な知見がありません。

今回のデータはフィンランドにおいて、
動脈硬化のリスクを検証した男性のみの疫学データを解析したものですが、
運動負荷を行なって診断した心筋の虚血の有無を、
血液中のω3系脂肪酸の濃度と、
髪の毛のメチル水銀濃度と比較しています。

髪の毛の水銀濃度は、
主に食事由来のメチル水銀の摂取量を示し、
血液中のEPAやDHAの濃度も、
その摂取量を示しているという推測によるものです。

その結果、
血液中のEPAやDHAの濃度が高いほど、
心血管疾患の既往のある患者さんでの、
負荷検査の陽性率は低下していました。

つまり、動脈硬化が進行した人では、
EPAやDHAを多く摂ることで、
一定の病気の予防効果があるのでは、
ということを示唆する結果です。

その一方で髪の毛の水銀濃度は、
高いほど心筋虚血の陽性率が高くなっていて、
それは心血管疾患の既往によりませんでした。

この研究は必ずしも食事の摂取量を反映していませんし、
心血管疾患の既往のある人で、
負荷検査の陽性率が高いのは当たり前のことですから、
全てが間接的な所見のみで、
研究としては詰めが甘いという印象があります。

ただ、「魚を沢山食べましょう」
という指導があまり深い考えなく行われがちな医療現場において、
その一端にあるリスクを指摘した点が興味深く、
今後のより精度の高い検証を期待したいと思います。

論文の記載によれば、
マグロは水銀の含有が多く、
鮭は少ないのでお勧めのようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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日焼け止めの成分の血液への移行について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
日焼け止めのリスク.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
日焼け止めの4種類の成分の皮膚からの吸収を検証した論文です。

内容は24名のボランティアで短期間の測定をしたもので、
アメリカのFDAが安全性のチェックのために行なったものです。
論文ではなく、短報という扱いです。

紫外線は皮膚を傷めてシミやそばかすなどの原因となり、
一部の皮膚癌のリスクを増加させます。

このため、以前は日焼けというのは健康のシンボルでしたが、
今では忌み嫌われるようになり、
紫外線の強い時期には日焼け止めが必須、
というのが世界的なトレンドになっています。

最近では多くの化粧品が日焼け止めの成分を含有していて、
その美肌効果が謳われているので、
ほぼ毎日日焼け止めの成分が使用されている、
といっても過言ではない状況が生じています。

その使用は生後6か月から、
場合によっては行われています。

日焼け止めには数多くの成分が含有されています。

古いタイプの日焼け止めは、
紫外線を反射する性質を持つ、
酸化チタンと酸化亜鉛が使用されていて、
こうしたタイプの化合物については、
通常の使用における安全性はほぼ確立しています。

その一方で最近の日焼け止めの主力となっているのは、
紫外線吸収剤と呼ばれるタイプの有機系科学物質で、
今では数十種類が混合され使用されています。

ただ、その安全性についてはまだ明確ではなく、
国や地域によってもその規制は様々です。

アメリカのFDAはこうした紫外線吸収剤について、
皮膚から吸収された際の血液濃度が、
0.5ng/mLを超えないことをその使用の条件としています。

これはその作用が特定出来ない化学物質において、
発癌性のリスクを一定レベル以下にすることを目標に、
算出されている指標です。

仮に発癌性の強い物質であっても、
この濃度以下であればその影響はほぼ許容範囲となる、
という意味です。

今回の検証は日焼け止めの成分の安全性を、
この指標を満たしているかどうかで検証したものです。

24名の健康なボランティアを4つの群に分け、
4種類の日焼け止め(2種類はスプレーで、残りはクリームとローション)を、
毎日4回4日間、身体の4分の3に使用し、
代表的な紫外線吸収剤の成分である、
アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、エカムスルの血液濃度を、
頻回に測定しています。

その結果、
外用1日目において、
4種類の外用剤の全てにおいて、
その4種類の成分全ての血液濃度は、
基準とされる0.5ng/mLを上回っていました。
オキシベンゼンに至っては、
使用期間を含む7日間の平均血液濃度が、
169.3から209.6ng/mLという高濃度となっていました。

このオキシベンゼンは、
母乳にも含まれていたという報告もあり、
生まれてから死ぬまで、
人によっては常にこの物質の曝露を受けている、
と言っても過言ではありません。

現状こうした紫外線吸収剤の成分が、
人間において明らかな毒性や健康影響を持つ、
という根拠は得られていませんが、
今後そうした検証も積み上げられていくと思われます。

現時点ではこうした日焼け止めの頻用に、
リスクはないとは言い切れず、
その使用は紫外線のリスクの高い状況に、
限って使用することが安全ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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