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2型糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの癌予防効果(2018年日本の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの癌予防効果日本.jpg
2018年のDiabetes Care誌に掲載された、
日本人の2型糖尿病の患者さんにおける、
アスピリンの癌予防効果についての論文です。

アスピリンを代表とする消炎鎮痛剤に、
癌の発症予防と予後改善の効果がある、
とする報告は以前からありました。

そのメカニズムは、
必ずしも全て分かっている、
という訳ではありませんが、
消炎鎮痛剤の炎症を抑えるメカニズムの一部が、
癌の増殖に関わるシグナルを、
同時に抑えているためと、
概ね考えられています。

最も研究が進んでいるのはアスピリンで、
最近の幾つかの大規模臨床試験の結果として、
癌の組織型のうち、
腺癌というタイプの癌については、
間違いなくその予後を改善する効果があり、
より明確なのは、
特に大腸癌の転移の抑制効果です。

以前ご紹介した、
2012年のLancet 誌の論文では、
メタアナリシスの結果として、
大腸癌の転移のリスクを、
74%低下させた、
という画期的な効果が得られています。

2009年のJAMA誌の論文では、
大腸癌関連の死亡を29%抑制していますし、
今年のBritish Journal of Cancer誌の論文でも、
大腸癌の患者さんの全死亡リスクを、
23%有意に低下させる効果が得られています。

このように、
複数の一流の医学誌に、
別々の研究グループから、
同様の結果が集積されているのですから、
これはほぼ科学的事実なのです。

さて、
アスピリンの継続的な使用が、
大腸癌の予後を改善する効果のあることは分かりました。

ただ、
この効果にどの程度の地域差や人種差のようなものが、
あるのかという点はまだ不明確ですし、
アスピリンには消化管出血などの出血系合併症が少なからずあり、
予防効果とそうした有害事象とのバランスを、
使用に関してどう考えるかがまた問題となります。

今回の研究は日本において、
2型糖尿病の患者さんに対して、
アスピリンの心血管疾患に対する一次予防効果を検証した、
臨床研究のデータを活用して、
糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの癌予防効果を検証しています。

糖尿病はそれ自体癌のリスクであり、
日本においては糖尿病の患者さんでは、
そうでない人より1.7倍癌のリスクが増加する、
というデータもあるので、
糖尿病の患者さんはアスピリンによる癌予防の、
有効な対象であると考えられるからです。

2536名の2型糖尿病の患者さんを、
中央値で10.7年という長期の観察を行った結果として、
トータルにはアスピリンの使用による癌リスクの低下は、
有意には認められませんでした。

年齢を分けたサブ解析においては、
65歳以上では有意なアスピリンによる効果はなかった一方で、
65歳未満の解析では、
喫煙や血糖コントロールなどの因子を補正した結果として、
アスピリンにより癌のリスクは34%
(95%CI: 0.43から0.99)有意に抑制されていました。
ただ、これもギリギリという感じです。

最もこれまでにデータの多い大腸癌のみでみると、
矢張り65歳以上では有意な差はなく、
65歳未満のみの解析では、
そのリスクはアスピリンにより52%
(95%CI: 0.15から0.97)有意に低下していました。
実際の大腸癌の発症件数は、
アスピリン群で27例、
未使用群で31例ですから、
こうした検証では対象者がもう少し多くないと、
検証は難しいように思いました。

このように今回のデータは例数と癌の発症数から、
明確な差を出すことは難しかったようですが、
現時点で日本人の集団において、
アスピリンの癌予防に有効性があるとは、
言えないのが実際であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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バルプロ酸の男性生殖内分泌機能に対する影響(2018年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
バルプロ酸と男性生殖機能.jpg
2018年のEpilepsy & Behavior誌に掲載された、
抗けいれん剤として広く使用されている、
バルプロ酸(商品名デパケンなど)の、
男性生殖機能に与える影響についての論文です。

バルプロ酸は最もポピュラーなけいれん止めの薬で、
てんかん発作の予防に広く使用されていて、
それ以外に偏頭痛などの慢性頭痛の予防や、
双極性障害などの感情障害の治療にも、
しばしば使用されている薬です。

この薬は有効な反面、
副作用や有害事象が多いことも知られています。

代表的なものは肝機能障害や眠気、
錐体外路症状や胃腸症状などですが、
女性の月経異常や多囊胞性卵胞なども報告されています。

男性の性欲減退や生殖内分泌型の異常も、
報告はありますがその頻度などは明確には分かっていません。

ちなみに現行の日本の添付文書においては、
女性の月経異常は頻度不明で、
男性の生殖機能については記載はありません。

今回の研究はこれまでの臨床データをまとめて解析した、
システマティック・レビューとメタ解析によるものですが、
6つの臨床研究のトータル316名のデータをまとめて解析した結果として、
バルプロ酸の使用により、
血液中のテストステロン濃度と、卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度は、
いずれも有意に低下していました。

つまり、バルプロ酸の使用により、
男性ホルモンが低下し、
男性生殖機能が低下する可能性があることは、
間違いはなさそうですが、
この問題についてのデータは少なく、
その程度を含めて今後より大規模な検証が、
必要であるように思われます。

てんかんへの使用はともかくとして、
バルプロ酸は偏頭痛などに対しても、
若年層にしばしば連用されている薬なので、
この問題は軽視するべきではないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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マルチビタミン・サプリメントの心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マルチビタミンの効果.jpg
2018年のCircultion: Cardiovascular Quality and Outcome誌に掲載された、
マルチビタミンのサプリメントの、
心血管疾患予防効果についての論文です。

人間に必要なビタミンを複合して含む、
マルチビタミン・サプリメントは、
サプリメントの商品の中でも、
最も広く使用されているものです。

個々のビタミンの不足や欠乏が、
多くの病気の原因となることは、
それは間違いのない事実ですが、
それはあくまで高度の不足の場合であって、
余程の偏食やアレルギーなどがない場合には、
そうした事態はあまり起こりません。

それでは、それほどの欠乏がなくても、
やや多めにビタミンを摂ることに、
健康上のメリットがあるのかどうか、
という点については、
まだ明確な結論が出ていません。

これまでの多くの研究では、
マルチビタミンのサプリメントと、
心血管疾患などのリスクとの間には、
明確な関連は得られていません。
ただ、一部にある種の心血管疾患において、
そのリスクがサプリメント使用者で低かった、
というようなデータも発表はされています。

今回の研究は、
1970年から2016年の間に発表された、
主だった臨床データや疫学データをまとめて解析する手法で、
マルチビタミンのサプリメントの使用と、
心血管疾患のリスクとの関連を検証しています。

その結果、
一般住民がマルチビタミンのサプリメントを使用しても、
その後の心血管疾患のリスクには、
何ら有意な影響は確認されませんでした。

これはほぼ常識的な結果で、
そうは言っても全ての方にサプリメントは無効ではなく、
それほどの害もないと想定されるので、
お好きな方が使用することを非難するべきではないと思いますが、
少なくとも心血管疾患の予防という観点においては、
そうしたサプリメントの使用は無意味と断じても、
もう言い過ぎではない時期に来ているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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BMIと死亡リスクとの関連について(心血管疾患の状態による解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。

BMIと死亡リスク.jpg
2018年のthe American Journal of Cardiology誌に掲載された、
体格の指標であるBMIという数値と、
生命予後との関連を、
心血管疾患のリスクなどで解析した論文です。

BMIというのはキログラムで表示した体重の数値を、
メートルで表示した身長で2回割り算して得られる数字で、
この数値が25以上であると過体重と判断され、
世界的にも30を超える状態は肥満と診断されます。

一般住民や心血管疾患の既往のない集団での疫学データにおいては、
BMIが20から24.9の間が最も死亡リスクが低く、
25を超えると総死亡のリスクも、
心血管疾患の発症リスクもいずれも増加に転じます。

しかし、その一方で心血管疾患を持つ患者さんの集団では、
BMIが20から24.9より高い、過体重や軽度の肥満の方が、
死亡リスクが低いという、
かなり意外な結果が複数報告されています。

これをBMIパラドックスと呼ぶこともあります。

何故、心血管疾患の患者さんでは、
体重が重い方が予後が良いのでしょうか?

今回の研究はこれまでの疫学データをまとめて解析する手法で、
心血管疾患の既往のない集団と、
心血管疾患で治療中の安定した状態にある集団、
そして急性冠症候群の状態にある集団の、
3種類の集団毎に、
生命予後とBMIとの関連を比較しています。

その結果、
心血管疾患のない集団では、
最も死亡リスクが低いのは27.2であったのに対して、
安定した心血管疾患の集団では28.1、
急性冠症候群の集団では30.9となっていました。

このように個々の集団において、
心血管疾患との関係の違いにより、
死亡リスクを低下させるBMIの数値には明確な違いが認められました。

またこの集団を全て併せた上で、
喫煙や既往歴などから死亡リスクを推計し、
そのリスクの高さによって3つの分類を行っても、
高リスクである方が、
総死亡のリスクを最も低下させるBMIは上昇していました。

それを図示したものがこちらになります。
BMIと死亡リスクの図.jpg
このように、
どうやら心血管疾患に関わらず、
病気のリスクが高く元々死亡リスクが高い集団では、
そうでない集団より、
やや体重が多くBMIが高い方が、
生命予後が良いという傾向が、
トータルに認められると考えて間違いはないようです。

その原因は不明ですが、
上記文献の著者らは、
生命保持における内臓脂肪などの持つ役割が、
リスクの高い集団では大きいのではないか、
というような推測をしています。

いずれにしても、
その人にとっての健康的なBMIには違いがあり、
それを無視して20から24.9を至適とする、
というような考え方は、
適切ではないと考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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抗血小板剤未使用時の出血リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
一般住民の出血リスク.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
一般集団における消化管などの出血のリスクについての論文です。

脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが高い場合には、
その発症予防のために、
アスピリンなどの抗血小板剤を使用していることで、
一定の予防効果が期待出来ます。

これまでにそうした心血管疾患を起こしたことのある患者さんでは、
その再発のリスクは非常に高いものなので、
その使用にメリットのあることはほぼ間違いがありません。

これを二次予防と言います。

その一方でこれまでにそうした病気を発症していない場合には、
二次予防と比較して抗血小板剤の予防効果は、
より低いものとなります。

従ってこの一次予防において抗血小板剤を使用するかどうかは、
その発症リスクの予測と、
使用による有害事象や副作用の頻度の予測とを、
比較検証して、
そのメリットが明確にそのデメリットを上回る場合に、
初めて検討されるべきだと考えられます。

抗血小板剤の有害事象の筆頭は、
消化管出血や脳内出血などの出血系合併症です。

アメリカの予防医学の専門部会は、
50代でその後10年間の心血管疾患リスクが10%以上の時に、
アスピリンの低用量での使用を推奨しています。

ただ、その元になったデータは寄せ集めのもので、
特に一般の人口における出血リスクについては、
あまり信頼性の高いものではありません。

そこで今回の研究ではニュージーランドにおいて、
プライマリケアで登録された一般住民の疫学データを活用して、
心血管疾患の既往がなく、
抗血小板剤などの出血リスクを高める薬剤を使用していない場合の、
出血リスクの推測を行っています。
トータルな対象者は30から79歳の359166名です。

その結果、
人口1000人当り年間2.19件(95%CI: 2.11から2.27)の、
非致死性消化管出血が発症し、
消化管出血による死亡率は、
3.4%(95%CI: 2.2から4.1)に達していました。

これをアメリカ予防医学部会の提言の元になったデータと、
比較した表がこちらになります。
出血リスクの比較の表.jpg
これはちょっと驚くような違いがあって、
たとえば40代の男性で非致死性消化管出血のリスクは、
人口1000人当り年間1.83件ですが、
アメリカ作業部会の出した推計は、
同じ年齢区分で0.5件となっていて、
3倍以上の違いがあります。

つまり、これまでの想定より今回の疫学データは、
遙かに出血のリスクが高いのです。

これを利用してアスピリンの一次予防の効果を検証すると、
未使用の場合の出血リスクの増加によって、
アスピリン使用時の出血リスクも上方修正され、
従来よりその予防効果は、
遙かにデメリットの大きなものとなってしまいます。

そのどちらが実態に近いのか、
という点はまだ何とも言えませんが、
現行のガイドラインを鵜呑みにすることが、
それほど科学的であるとは言い難く、
地域差の問題なども含めて、
この問題は今後大きな議論を呼ぶことになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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食べ物の種類と脳内報酬系との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
糖と脂質の脳への影響.jpg
2018年のCell Metabolism誌に掲載された、
食事の種類と脳内報酬系と言われる脳の機能との関連を検証した、
なかなか興味深い論文です。

肥満というのは現代の深刻な健康問題ですが、
スナック菓子や菓子パン、ケーキなどの、
見ると思わず食べたくなるような食品が販売され、
それを食べ過ぎてしまうことが、
その1つの大きな要因として考えられます。

そもそも動物というのは、
自分にとってその食べ物が、
どのくらいのカロリーを有しているのかを、
なかば本能的に理解をしていて、
食品の量ではなくカロリーで、
どのくらい食べれば良いのかを、
脳が判断していると考えられています。

人間を含む哺乳類において、
その仕組みは脳の中脳辺縁系という部分で、
コントロールをされていると理解されています。

ただ、この中脳辺縁系は脳内報酬系などと呼ばれているように、
ドーパミン系の神経を興奮させて、
その部位がある行動で刺激されると、
それをある種の快感と判断して、
その行動が繰り返されるという側面を持っています。

生存のために最適な食品を食べた時に、
それが中脳辺縁系を刺激して、
その食行動が習慣化されれば、
それはその生物の生存において意義のあることですが、
今の人間の環境のように、
周りに食べ物があふれていて、
不健康でカロリーも過多な食品が、
見た目をインスタ映え良く粉飾して、
味も甘く香りもそそるように魅力的な工夫が凝らされていると、
それに騙されてしまうという可能性も、
脳内報酬系の性質としては否定は出来ません。

今回の研究は健康なボランティアを対象として、
糖質(炭水化物)主体の食品と、
脂質主体の食品、
そして脂質と糖質とを両方多く含む食品の3種類に分け、
同じカロリーのポーションとして被験者に見せ、
どれを好むかという傾向と、
その時に脳に起こる変化を、
機能性MRIを使用して比較検証したものです。

これはカロリーは同一なので、
生物の本能としては、
3種類で同等の反応が出ることが正常なのです。

具体的には糖質主体の食品はキャンデーやパスタやパン、
脂質主体の食品はチーズやサラミ、
糖質と脂質を含む食品はケーキやビスケットなどが映像になっています。

その結果、
脂質や糖質主体の食品よりも、
多くの人が脂質と糖質を両方含む食品をより好み、
機能性MRIにおいて、
脳内報酬系が活発に反応していることが確認されました。

このように、
脂質と糖質を含む人工的な食品を、
人間はより脳で好むという性質があるので、
それが元々の適正なカロリー摂取の仕組みを狂わせて、
肥満などの原因の1つになっているのではないか、
というのが上記論文の筆者らの考えであるようです。

これは画像のイメージにも偏りがありますし、
食品の画像の好みの問題であって、
実際の食行動に結び付くかどうかは、
推測に過ぎないという気がしますが、
食品メーカーなどの過剰な宣伝によって、
人間の本来の食行動がゆがめられ、
その本質が脳内報酬系にあるのでは、
という推論は大変興味深く、
今後より踏み込んだ知見を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コーヒーの生命予後改善効果とカフェイン代謝(UKバイオバンクの解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーとカフェイン代謝と健康.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
コーヒーの生命予後への効果と、
カフェイン代謝に関わる遺伝子変異との関連を検証した論文です。

コーヒーを飲む習慣が、
総死亡のリスクを減少させ、
心血管疾患や一部の癌のリスクも減少させることは、
世界各地で行われた大規模な疫学データから、
ほぼ実証された事実です。

その結果を受け、
2015年のアメリカの健康的な食事習慣のガイドラインでは、
1杯8オンス(ほぼ240ミリリットル)のカップで、
1日5杯までのコーヒーを飲む習慣を、
健康的な食習慣として推奨しています。

ただ、1日5杯を超えるコーヒーにおいても、
健康上の害はないのか、と言う点については、
まだ明確な結論は出ていません。

コーヒーはカフェインを多く含む飲み物で、
カフェインには常用性があり、
また交感神経を刺激して心臓にも負荷を掛けるので、
大量のカフェインが有害であることもまた事実です。

従って、コーヒーが健康に良いとは言っても、
飲み過ぎれば害になることは間違いがなさそうです。

ここで1つ問題なのは、
カフェインを身体で代謝する酵素には遺伝子のタイプがあって、
そのタイプによっては代謝が極端に悪く、
そうでない人と比べて、
血液のカフェイン濃度が高くなる可能性が想定されるということです。

実際にカフェインの代謝酵素の活性が低い人に限って、
カフェインの摂取量が多いと心筋梗塞のリスクの増加に繋がった、
というような報告も過去には発表されています。

その遺伝子のタイプによる影響というのは、
どの程度のものなのでしょうか?

そうした点を検証する目的で、今回の研究では、
UKバイオバンクという、
世界的に有名な医療情報のデータベースを活用して、
50万人近い対象者の、
コーヒーの摂取量と健康状態、
そしてカフェインの代謝酵素のタイプとの関連を検証しています。

10年を超える観察期間における総死亡のリスクは、
コーヒーを全く飲まない群と比較した時に、
1日1杯で8%(95%CI: 0.87から0.97)、
2から3杯で12%(95%CI: 0.84から0.93)、
4から5杯で12%(95%CI: 0.83から0.93)、
6から7杯で16%(95%CI: 0.77から0.92)、
8杯以上で14%(95%CI: 0.77から0.95)と、
それぞれ有意に低下していました。

同様の傾向はインスタントコーヒーでも、
カフェインレスのコーヒーでも認められ、
カフェインの代謝酵素に関わる遺伝子の多型は、
その死亡リスクの低下に影響を与えていませんでした。

このように、
今回の結果では1日8杯以上というコーヒーにおいても、
総死亡のリスクの低下は有意に認められていて、
どうやらカフェインとその健康効果との間には、
あまり関連はなさそうだ、という結果になっています。

ただ、これは相反するようなデータ
(カフェインの代謝物濃度と健康影響が相関した)
もこれまでに報告されていて、
カフェインの代謝産物の影響なども複雑に絡み合っているので、
今回のデータのみをもって、
コーヒーの効果はカフェインと無関係とは言い切れないのですが、
大規模データでこうした結果の出た意義は大きく、
コーヒーの健康影響への議論は、
まだまだ加熱することになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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HPVワクチンによる皮膚扁平上皮癌治癒効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
HPVワクチンの皮膚癌への有効性.jpg
2018年のJAMA Dermatology誌に掲載された、
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンを、
高齢者の皮膚の扁平上皮癌に使用して、
著効と言って良い効果があったという、
興味深い1例報告です。

ヒトパピローマウイルスが、
子宮頸癌以外にも、
多くの癌の発生に関わっていることは、
広く知られていますが、
皮膚の扁平上皮癌も、
その1つです。

通常こうした知見はあくまで研究レベルのもので、
癌の治療にそのまま使えるようなものではありませんが、
今回の症例報告は手術適応のない、
90代の女性に発症した多発性の皮膚扁平上皮癌が、
ガーダシル9という国外では使用されている9価のHPVワクチンによって、
ほぼ完治と言って良い治療効果が認められたという、
かなり驚くべき事例です。

当該の患者さんに対して、
6週間の間隔を置いてガーダシル9を、
通常の接種量で2回の筋肉注射による接種を行います。
更に同じワクチン液0.5ミリリットルを、
生理食塩水2.5ミリリットルで希釈し、
皮膚にリドカインとエピネフリンによる局所麻酔をした上で、
直接皮膚の癌組織に注入します。
8ヶ月の間に都合4回の腫瘍内注入を繰り返したところ、
8ヶ月後には全ての肉眼的腫瘍が縮小し、
11ヶ月後には肉眼的には瘢痕を残すのみで、
組織学的検証でも、
軽度の細胞の異形成を示すのみで、
癌細胞は完全に消失していました。
そして、治療開始後24ヶ月の時点で、
再発の兆候は認められていません。

ちょっと信じられないほどの劇的な治療効果です。

治療前後の画像が論文には掲載されていますが、
ちょっとどぎつい刺激の強い感じのものなので、
あえて引用はしません。
無料で読める論文ですので、
ご興味のある方は本文をご一読下さい。

これはまだ1例報告なので、
仮に事実としても、
どのような症例に効果があるのか、
特定の事例のみの効果なのか、
など詳細はまだ不明ですが、
通常感染予防として使用されているワクチンに、
このような出来上がった癌の治療効果がある、
という報告は大変興味深く、
今後の検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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インフルエンザ生ワクチンと不活化ワクチンの比較(2018年カナダ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザ生ワクチンと不活化ワクチンの比較.jpg
2018年のJAMA Pediatrics誌に掲載された、
インフルエンザの生ワクチンと不活化ワクチンとを比較した論文です。

現状日本で使用されているインフルエンザワクチンは、
皮下注射のタイプの不活化ワクチンですが、
海外では鼻からスプレーをする方法の生ワクチンも使用されています。

この生ワクチンはアメリカでは2003年には認可され、
ヨーロッパでは2011年に認可されて、
2011年以降に本格的に接種が開始されました。
導入されたのはアメリカ、カナダ、イギリスなどです。

ただ、その対象年齢や位置づけは国によっても異なっています。

アメリカは2014から2015年のシーズンには、
2から8歳の年齢層において、
不活化ワクチンより生ワクチンを優先して接種の方針としましたが、
2013年から2016年における有効性の検証により、
H1N1pdm09(2009年に流行した「新型」ウイルス)に対する効果が、
ほぼ無効であったという結果がまとまり、
2016年のシーズンでは「推奨しない」という判断になりました。
しかし、2018年の2月には、一転して、
2018年から2019年のシーズンにおいて、
再度生ワクチンを推奨するという方針を打ち出しています。

今回の研究が行われたカナダでは、
2011年から2013年には2から17歳で生ワクチンが採用され、
2014年から2016年には2から6歳で生ワクチンが採用されています。

このように生ワクチンと不活化ワクチンの有効性に、
どの年齢でどの程度の差があるのかについては、
まだ一定した結論が得られていません。

今回の研究はカナダにおいて、
2から17歳の年齢層における、
生ワクチンと不活化ワクチンの有効性の比較を、
検査で確定したインフルエンザに限って検証しているものです。

2012年から2016年の4シーズンにおいて、
インフルエンザ感染が疑われた2から17歳の鼻腔もしくは咽頭の検体、
トータル10779件に遺伝子検査を施行したところ、
3161件がインフルエンザウイルス感染と診断されました。
これをワクチン接種歴とその種類を聞き取りし、
検査の陰性例をコントロールとする手法で解析したところ、
2015から2016年のシーズンのB型インフルエンザ感染に関しては、
不活化ワクチンの方が生ワクチンより有効でしたが、
それ以外のシーズンの全てのウイルス型に対するワクチンの有効性には、
生ワクチンと不活化ワクチンとの間で、
有意な差は認められませんでした。

このように、
今回のカナダの解析においては、
生ワクチンと不活化ワクチンとの間に、
2から17歳の年齢層において効果の差は認められませんでした。

従って、この年齢層においては、
その使用のし易さやそのお子さんの健康状態などを勘案して、
どちらかを選択するという考え方が、
どうやら妥当であるように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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アイスクリーム頭痛とそのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アイスクリーム頭痛.jpg
これは随分と古い資料ですが、
1997年のBritish Medical Journal誌の解説記事です。

アイスクリーム頭痛という身近で面白いテーマの短い総説ですが、
これ以降この症状についての知見は、
それほどの大きな進歩はないようです。

アイスクリーム頭痛(Ice cream headache)は、
寒冷刺激による頭痛(Cold stimulus headache)の一種で、
アイスクリームやかき氷を食べた時に、
すぐに起こる頭がキーンとするような頭痛のことです。

典型的な経過は冷たいものを食べて数秒で始まり、
30から60秒くらいでピークとなり、
2 から5分以内には消退します。

その頻度(有病率)は報告によりバラバラで、
7.6%という報告から93%という報告まであります。

大人での調査では8%というものから、
15%、37%、60%と様々です。

ティーンエイジャーくらいの調査では、
概ね大人よりその頻度は多く、
41%から79%という報告があります。

アイスクリーム頭痛が注目されるのは、
主に片頭痛との関連においてです。
かなり古い報告では、
片頭痛の患者さんの93%にアイスクリーム頭痛が見られる一方で、
片頭痛のない人では31%にしか見られなかった、というものがあります。
この報告はアイスクリーム頭痛と片頭痛との関連を示唆するものですが、
より新しい報告では、
関連は見られない、というものもあって、
一定はしていません。

アイスクリーム頭痛のメカニズムは、
三叉神経を刺激して興奮させるのではないか、
という考え方が有力です。
一種の関連痛ですが、
そのメカニズムは推測の域を出ていません。

古い報告ではアイスクリーム頭痛は夏のみに起こる、
という報告がありますが、
冬に調査して同様に認められた、
という報告もあり、
季節性は明確ではないようです。
風変わりなものではアイスクリームを5秒以内に一気食いした場合と、
ゆっくり食べた場合とを比較したものがあり、
ゆっくり食べると頻度は少なくはなりますが、
それで予防されるということはないようです。

今日はアイスクリーム頭痛の総説でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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