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母親妊娠中のグルテン摂取と1型糖尿病との関連について(2018年デンマークの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
グルテンと1型糖尿病.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
小麦に多く含まれるグルテンという蛋白質と、
1型糖尿病の発症との関連についての論文です。

グルテンは小麦などに含まれる蛋白質で、
パンやパスタ、ピッツァなどのモチモチしているのは、
このグルテンの食感によるものです。

セリアックスプルー(Celiac Sprue)という病気があります。

これは白人に多く日本人には極めて稀な、
一種の自己免疫疾患で、
小麦蛋白に含有されるグルテンの成分が、
小腸の粘膜に刺激を与え、
そこに免疫反応が惹起されることで、
自分の身体の小腸上皮細胞を、
免疫系が攻撃するようになり、
小腸の炎症によりその機能が失われて、
重篤な吸収不良に至る、
という病気です。

HLA-DQ2/DQ8という遺伝子を持つ人に発症し易いとされ、
グルテンを食事から除去することにより、
通常症状が改善します。

このように、
体質によってグルテンが異常な免疫反応を惹起することは、
ほぼ間違いのない事実です。

もう1つグルテンと関連があると想定されている病気が、
1型糖尿病です。

1型糖尿病というのは5歳以下で主に発症する、
インスリンの分泌が高度に低下するタイプの糖尿病で、
その病因は膵臓の細胞に対する、
自己免疫機序による炎症であると考えられています。

この病気は欧米のライフスタイルに関連があると想定されていて、
その原因の1つと考えられているのがグルテンです。

高率に糖尿病になるネズミを利用した実験によると、
妊娠している母親のネズミを、
通常の食事ではなくグルテンを含まない食事で栄養すると、
通常の食事では子供のネズミの64%が糖尿病を発症するところ、
グルテン・フリーでは8%に抑制されたと報告されています。

ただ、これは敢くまで動物実験であるので、
人間でも同様の影響があるのかという点については、
まだ明確ではありません。

今回の研究は国民総背番号制を敷いているデンマークのもので、
91745名の女性の101042件の妊娠事例のうち、
妊娠中の食事調査が行われた70188件を対象として、
グルテンの摂取量と子供の1型糖尿病の発症リスクとの関連を検証しています。
最終的に対象となっているのは67565件の妊娠事例です。

食事調査によるグルテンの摂取量は、
平均で1日13.0グラム、
7グラム未満から20グラム以上まで分布していました。

平均で15.6年の経過観察中に、
0.37%に当たる247件で1型糖尿病が発症していました。
妊娠中の食事のグルテンの摂取量が、
毎日10グラム増加する毎に、
子供の1型糖尿病の発症リスクは、
31%(95%CI: 1.001から1.72)有意に増加していました。
グルテンの摂取量が7グラム未満と最も少ない群と比較して、
20グラム以上と最も高い群では、
子供の1型糖尿病の発症リスクは、
2.00倍(95%CI: 1.02から4.00)と、
これも有意に増加していました。

このように今回の大規模な疫学データにおいて、
グルテンの妊娠中の摂取量と、
お子さんの1型糖尿病の発症リスクとの間には、
動物実験と同様の関連が認められました。
ただ、これは食事調査のみのデータで介入試験のような厳密なものではなく、
データ自体信頼区間からは有意と言って良いか微妙なレベルです。
この問題は今後への影響も大きいので、
より厳密な方法での検証が、
急務であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新規インフルエンザ治療薬パロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ)の臨床試験データ [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ゾフルーザの臨床データ.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
インフルエンザの新薬である商品名ゾフルーザの、
発売前の臨床試験データをまとめた論文です。

インフルエンザの治療薬には、
世界中で広く使用されている、
オセルタミビル(商品名タミフル)、
吸入薬のザナミビル(商品名リレンザ)以外に、
使用が1回で済む吸入薬のラニナミビル(商品名イナビル)、
注射薬のペラミビル(商品名ラピアクタ)、
ファビビラビル(商品名アビガン)があります。

注射薬のイナビルは日本以外では殆ど使用されておらず、
注射薬のラピアクタは日本以外では、
重症時やハイリスク時のみの使用が一般的です。
アビガンはそれまでとはメカニズムの異なる治療薬で、
現状はパンデミック時など国がその使用を許可した場合のみ、
その使用が可能となる医薬品という特殊な位置づけとなっています。

そこに更に今回、
また新たなメカニズムを持つインフルエンザ治療薬として、
ゾフルーザが加わりました。

メカニズムから見ると、
タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタは、
いずれもノイラミニダーゼ阻害剤で、
感染した細胞内で増殖したウイルスが、
他の細胞に感染することを防ぐ仕組みの薬です。

一方でアビガンは、
感染細胞内でウイルスが増殖するのに必要な、
RNAポリメラーゼの阻害剤です。

そして今回のゾフルーザは、
アビガンとは別個の、
細胞内でウイルスが増殖するのに必要な酵素である、
キャップ依存性エンドヌクレアーゼの阻害剤です。

ゾフルーザは通常より早いペースで日本では承認が進み、
2018年の3月に発売されました。
当初はアビガンと同じように、
パンデミック時などの使用とする方針もあったようですが、
実際に発売されてみると、
特にそうした制限はなく、
製薬会社の担当の方のお話を聞いても、
現行どのような場合に使用するべきという指針はなく、
自由に処方して問題はないというお話でした。

この薬剤は感染細胞でのウイルスの増殖を抑えるので、
タミフルやリレンザより効果が迅速で、
体内で49から91時間という長い半減期を持っているため、
内服で1回のみの使用で充分という特徴があります。

今回発表された第3相臨床試験の結果では、
12から64歳のインフルエンザ症状の患者に対して、
ゾフルーザ使用群と、
タミフルを1日150mgの5日間使用群、
そして偽薬群の3群に分けて、
その予後を比較検証しています。
最終的に解析された人数は1064名で、
その8割は日本での登録者です。

その結果、
症状改善までに要する時間は、
偽薬で80.2時間であったのに対して、
タミフル群では53.8時間、
ゾフルーザ群で53.7時間となっていました。
つまり、ゾフルーザを使用することにより、
インフルエンザの発熱などの症状が、
タミフルと同様に1日程度短縮する効果があります。
ウイルスが検出されなくなるまでの期間は、
タミフルよりゾフルーザがより短くなっていました。

ただ、ゾフルーザの効果が減弱するような遺伝子変異も、
9.7%に認められていました。
仮にこうした変異のあるウイルスの感染に対して、
ゾフルーザをすると、
使用しない場合と比較して、
むしろウイルスの排泄に時間の掛かることが想定されます。

本来こうした薬剤の有効性は、
重症化予防や生命予後の改善効果などで判断されるべきですが、
通常健常者の感染の予後は良いインフルエンザの場合、
こうした臨床試験で当面の判断はせざるを得ず、
現状はその効果はタミフルと同等と、
そう考えるのが妥当であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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健康な高齢者へのアスピリン使用の生命予後への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの高齢者へのリスク.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
70歳以上の高齢者に低用量のアスピリンを使用した場合の、
生命予後への影響を検証した論文です。

低用量(1日80から100mg)のアスピリンには、
抗血小板作用があり。
心血管疾患の再発予防や、
消化器系の癌(腺癌)の進行予防効果が確認されています。
その一方で出血系の合併症のリスクは高めるので、
まだ心血管疾患や癌を発症していない、
健康な高齢者に使用を継続した時に、
果たして健康面にトータルでメリットがあるのか、
というのは未だ解決されていない問題です。

そこで2010年から2014年に掛けて、
オーストラリアとアメリカの70歳以上
(アメリカの黒人とヒスパニックは65歳以上)
の一般住民で、
心血管疾患や認知症などがなく生活上の問題のない、
トータル19114名を登録してくじ引きで2群に分け、
本人にも実施者にも分からないように、
一方はアスピリンを毎日100mgを使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
中央値で4.7年の経過観察を行っています。

その結果、
アスピリンの使用は健康寿命の延長に、
有意な効果は認められず、
総死亡のリスクはむしろアスピリン群で増加する、
という意外な結果が得られました。

その結果は別個に論文として発表されていますが、
今回の論文では、
アスピリンによる総死亡リスクの増加について、
個々の死因を分析するなど、
より詳細な解析を行っています。

その結果、
アスピリン群では年間1000人当り、
12.7件の死亡が発症していたのに対して、
偽薬群では11.1件で、
アスピリンは総死亡のリスクを、
1.14倍(95%CI:1.01から1.29)有意に増加させていました。
この原因を死因毎に検索したところ、
この差の原因は、主に癌死亡の差によっていました。
ただ、特定の癌死亡が増えているということはなく、
出血系の合併症が、
癌の患者さんの予後を変えている、
という証拠も得られませんでした。

癌が進行したケースでは、
実際には多くの対象者が登録から外れてしまっているので、
アスピリンが癌の進行を早めた、
というメカニズムは考えにくそうです。

この結果はこれまでの同種の疫学データとは、
一致しないものであるのですが、
比較的健康な高齢者が、
一次予防や健康寿命の延長目的でアスピリンを使用することには、
より慎重である必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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前糖尿病での糖尿病進行予防治療の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので外来は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
前糖尿病の治療介入.jpg
2018年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
前糖尿病への治療介入の効果についての論文です。

前糖尿病(prediabetes)というのは、
主にアメリカで重視されている考え方で、
日本で言う「境界型糖尿病」とほぼ同じものです。

つまり、
血糖が正常パターンと糖尿病と診断されるパターンとの、
間の数値を取ることを意味しています。

具体的には、
食前血糖が100mg/dL未満で、
75グラムのブドウ糖負荷試験をした時に、
2時間値が140mg/dL未満を正常パターンとしていて、
食前血糖が126mg/dL以上もしくは、
糖負荷試験の2時間値が200mg/dL以上が、
糖尿病パターンです。
この間にあるのが前糖尿病ということになります。
食前血糖の正常パターンを100未満としているのは、
アメリカのみで、
日本では110未満が正常、
ただし100から109は正常だた高め、
というあちこちに配慮した、
玉虫色のものになっています。

5から7年くらいの経過観察により、
前糖尿病の人の3分の1は糖尿病と診断される状態に進行する、
と報告されています。

ただ、それでは前糖尿病の人だけが、
糖尿病になるのかと言うとそうでもなく、
5年後に糖尿病と診断された人の4割は、
5年前には正常の血糖パターンだった、
という報告もあります。

そこでアメリカで近年提唱されているのが、
糖負荷試験の1時間値が、
155mg/dL(8.6mmol/L)を超えた場合も、
前糖尿病と同じように考えよう、
とい主張です。
この数値を入れると、
糖尿病に将来なるリスクの高い人を、
かなり絞り込むことが可能となるのです。

この前糖尿病の段階から糖尿病への進行を阻止することが、
糖尿病の患者さんの増加を食い止めるために、
非常に重要であることは間違いがありません。

これまでに糖尿病治療薬であるメトホルミンなどを、
前糖尿病の段階から使用することにより、
糖尿病への進行が予防された、
というような報告が散見されますが、
実際の臨床で行われたような研究は少なく、
その例数も充分とは言えないものなので、
その有効性についてはまだ結論が出ていません。

そこで今回の研究では、
アメリカにおいて、
実地のプライマリケアや内分泌代謝科の医療機関を登録し、
糖負荷試験で前糖尿病と診断され、
糖尿病に進行するリスクが高いと判断された対象者に対して、
そのリスクの高さにより、
中等度のリスクの場合には、
生活改善と共にメトホルミンとピオグリタゾンを使用し、
高度のリスクがある場合には、
生活改善と共にメトホルミンとピオグリタゾンに加えて、
GLP1アナログを使用、
薬物治療を望まなかった対象者は、
生活改善のみを行って、
その3群の予後の比較を行っています。

この場合の中等度リスクというのは、
血糖パターンは正常で、
糖負荷後1時間の血糖が155を超えている場合か、
糖負荷のパターンは前糖尿病であるけれど、
1時間値は155未満である場合のどちらかです。
高度のリスクというのは、
血糖パターンが前糖尿病で、
負荷後の1時間値も155を超えている場合です。

予防目的の薬物治療は、
メトホルミンは1日850mg、
ピオグリタゾンは1日15mg、
リラグルチドで1日1.2mgなどが使用されています。
これはアメリカの使用量としては、
下限くらいの量が設定されています。
日本においてはリラグルチドの1.2mgは認められていません。

トータルな振り分けられた人数は747名で、
最終的に解析されたのは422名です。

その結果、
平均の平均の観察期間32ヶ月において、
中等度もしくは高度リスクで生活改善のみの場合には、
糖尿病への移行が11%に認められたのに対して、
中等度リスクでメトホルミンとピオグリタゾン使用群では、
糖尿病への移行は5%に抑えられ、
高度リスクでGLP1アナログを含む3剤使用群では、
糖尿病への移行は1名も認められませんでした。

生活改善のみと比較して、
メトホルミンとピオグリタゾンの使用は、
糖尿病へ移行するリスクを71%(95%CI: 0.11から0.78)、
GLP1アナログを含む3剤の使用は、
88%(95%CI: 0.02から0.94)、
それぞれ有意に低下させた、
という結果になっています。

これはあまり厳密なデザインの試験ではなく、
例数も結果的にはかなり減ってしまっているので、
常にこれだけの効果があるとは、
言い切れない結果なのですが、
前糖尿病状態からの積極的な介入に、
無視できない効果のあることは事実で、
今後その安全性や対象者の絞り込み、
医療経済的な側面も含めて、
充分な検証が必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ジクロフェナク(ボルタレン)の心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ボルタレンの心血管疾患リスク.jpg
2018年のBritish Medical Journalに掲載された、
広く世界的に使用されている、
ジクロフェナク(商品名ボルタレンなど)という消炎鎮痛剤の、
心血管疾患リスクとの関連についての論文です。

非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
商品名ではボルタレンやブルフェン、
ロキソニンなどがそれに当たり、
一般に幅広く使用されている解熱鎮痛剤です。

しかし、この薬には多くの有害事象や副作用があり、
心血管疾患(特に急性心筋梗塞)の発症リスクの増加は、
ほぼ確認されている有害事象の1つです。

しかし、個別の薬剤間でどの程度のリスクの差があるのか、
と言う点や、
薬剤の量や期間とリスクとの関連などの事項については、
論文によっても結論が異なる部分があり、
まだ確実と言えるような知見は得られていません。

今回の研究はデンマークの、
国民レベルの大規模疫学データを活用したもので、
ジクロフェナク(ボルタレン)を使用開始した1370832名と、
イブプロフェン(ブルフェン)を使用開始した3878454名、
ナプロキセンを使用開始した291490名、
アセトアミノフェン(カロナール)を使用開始した764781名、
以上の消炎鎮痛剤の使用群を、
年齢などの背景を一致させた、
消炎鎮痛剤未使用者1303209名と、
その使用30日以内の心血管疾患の発症リスクを、
比較検証しています。

その結果、
未使用のコントロールと比較して、
ジクロフェナク使用30日以内の心血管疾患発症リスクは、
50%(95%CI: 1.4から1.7)有意に増加していました。
同様にアセトアミノフェンによるリスクの増加は20%、
イブプロフェンによるリスクの増加は20%、
ナプロキセンによるリスクの増加は30%、
それぞれ有意に増加していました。

このように、
多くの消炎鎮痛剤が心血管疾患のリスクを、
その使用後30日以内という短期間で増加させますが、
中でもジクロフェナクはそのリスクが高く、
痛み止めとしては有効性の高い薬剤ではありますが、
その使用は特に心血管疾患のリスクの高い使用者においては、
より慎重である必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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乳製品による心血管疾患予防効果(2018年5大陸の大規模データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ミルクと健康.jpg
2018年のLancet誌に掲載された、
乳製品の摂取習慣と健康影響についての論文です。

乳製品の健康への影響という問題については、
これまでに相反するデータがあり、
まだ結論に至ってはいません。

乳製品は吸収の良いカルシウムが豊富で、
リンやビタミンDも含んでいるため、
骨粗鬆症の予防に良いとかつては言われていましたが、
最近の疫学データにおいては、
乳製品の摂取で骨粗鬆症のリスクが、
明確に低下するというような結果は得られていません。

一方で乳製品は動物性脂肪を主体とする食品ですから、
脂質代謝に悪影響を与える可能性があり、
その摂取によりコレステロールが増加した、
というようなデータもあります。
このため心血管疾患の予防という観点からは、
現行のガイドラインにおいて、
その摂取の一定の制限が推奨されています。

一方でチーズやヨーグルトなどの乳製品由来の発酵食品は、
生乳とは異なって動脈硬化に悪影響を与えず、
認知症予防にも良い効果が期待できるのでは、
というような報告もあります。

これまでのデータの1つの問題は、
その臨床データの多くがアメリカかヨーロッパにおいてのもので、
乳製品の摂取量の元々少ない、
アジアやアフリカなどの地域が対象となっていない、
という点にありました。

そこで今回の検証では、
世界5大陸から21の国の35から70歳の一般住民、
トータル136384名を対象として、
乳製品の摂取量と心血管疾患リスクや生命予後との関連を検証しています。
観察期間の中間値は9.1年です。

その結果、
乳製品の摂取量が多い群では未摂取と比較して、
心血管疾患による死亡と心筋梗塞、脳卒中、心不全を併せたリスクが、
16%(95%CI: 0.75から0.94)有意に低下していました。
総死亡のリスクも17%(95%CI: 0.72から0.96)と有意に低下し、
心血管疾患による死亡のリスクは14%(95%CI:0.58から1.01)、
有意ではないものの低下する傾向を示しました。

牛乳とヨーグルトの摂取量が多いほど、
心血管疾患による死亡と心筋梗塞、脳卒中、
心不全を併せたリスクは低下していましたが、
チーズの摂取ではそうした有意な低下は認められませんでした。

この乳製品の摂取による心血管疾患予防効果は、
主に欧米以外の発展途上国において強く認められました。
つまり、栄養状態が悪く、乳製品の摂取量が少ない地域で、
そうした傾向が強く認められていて、
こうした地域においては、
高率良くカロリーと脂質、蛋白質を摂取出来る乳製品が、
健康の維持に有用であったという可能性を示唆しています。

今回の研究結果は、
これまでのデータと食い違う面もあり、
乳製品の健康影響については、
まだ結論が出ているとは言えませんが、
牛乳1日200ミリリットル程度までの乳製品の摂取は、
健康にも良い影響のある可能性が高い、
とそう考えて大きな間違いはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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前立腺癌のPSA検診の効果(2018年のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PSA健診の効果.jpg
今日本では市町村単位で行われていることの多い、
前立腺癌のPSA検診の有効性を検証した論文です。

前立腺癌は高齢の男性に多い癌で、
以前には骨や肺に転移したり、
周辺に浸潤したりしないと、
滅多には見つからないタイプの癌でした。

それが1980年代後半に、
PSAという血液の一種の腫瘍マーカーの測定が、
導入されることにより、
早期の癌の診断が可能となるようになりました。

アメリカでは1992年に、
アメリカ泌尿器科学会とアメリカ癌学会が、
50歳以上のPSAによる癌検診を推奨する声明を出します。
それにより格段に癌検診は広まり、
それまでには見付からなかった、
早期の前立腺癌が多く発見され、
治療されるようになります。

この効果はかなり劇的なものです。
こちらをご覧ください。
癌検診と転移の発見率の図.jpg
早期の前立腺癌が多く見付かるようになり、
それに伴って転移して見付かる進行した前立腺癌が、
劇的に減少している、
というのがこの図の所見です。

ただ、癌検診の元締め的な立場にある、
アメリカ予防医療専門委員会は、
この時点でPSA検診を推奨する、
という判断をしませんでした。

それは何故かと言うと、
前立腺癌の多くは、
それほど進行して命に関わるものではないので、
PSAによる前立腺癌検診が、
受診者の生命予後を改善する、
という明確なデータが得られなかったからです。

前立腺癌は早期に発見出来れば、
その後に命に関わるようなことは、
極めて少ない癌であることは間違いがありません。
つまり、検診をすることにより、
確実に進行癌は減少するのです。
その意味では癌検診として理想的です。

しかし、その自然経過は非常に長く、
比率的に言うと進行癌は稀なので、
不特定多数の人口にPSA検診を行なうと、
「わざわざ見付けなくてもその人の寿命に何ら影響しない」
多数の悪性度の低い前立腺癌を発見して治療してしまう、
という過剰診断と過剰治療の問題に直面するのです。

その予後の良さから、
トータルに目に見えるような寿命の延長というような結果には、
なかなか結び付き難いのだと思います。

1996年にアメリカ予防医療専門委員会は、
PSAを用いた不特定の住民検診は推奨しない、
という声明を出しました。
それが2002年には判定するデータに乏しい、
という適応に含みを残す表現になり、
2008年には75歳以上の男性には推奨せず、
75歳以下の男性では判定するデータに乏しい、
という表現になります。

2012年にPLCO研究という、
アメリカで癌検診の効果を検証した、
大規模な臨床研究の結果が発表されました。
これは38000人余りを約11年間観察したものですが、
PSA検診による前立腺癌死亡リスクの低下は、
確認されませんでした。

同年にアメリカ予防医療専門委員会は、
全ての年齢層において、
PSA検診を推奨しない、という声明を発表します。

これはアメリカ国内のみならず、
世界的にかなりの影響を与えました。

同年には今度はヨーロッパにおいて、
ERSPCと言われる大規模なPSA検診の有効性についてのデータが、
発表されました。
16万人という規模で11年間の観察を行ない、
PSA検診による、相対リスクで29%、
検診者1000人当たり1.07人の前立腺癌による死亡を有意に減らした、
という結果になっています。
(2012年時点の発表データ)

アメリカとヨーロッパで、
それぞれ別個の結果になっているのですが、
その理由はアメリカのデータでは、
PSA検診をしていないコントロール群でも、
実際には74%の対象者が1回はPSAを測定していた、
というバイアスにあったようです。

ただ、ヨーロッパのデータにおいて、
1000人当たり1.07人の死亡を減らした、
というPSA検診の効果を、
大きいとみるのか小さいとみるのかは難しいところです。

2018年のアメリカ予防医療専門委員会の最新の勧告では、
年齢が55から69歳においては、
個別に判断して施行の是非は決定するべきとしていて(推奨ランクC)、
70歳以上では明確に推奨しない、としています(推奨ランクD)。
つまり、50代から60代においては、
事例を選べば一定の有効性はある、
という見解にまた修正をしているのです。

この問題は今のところまだ、
はっきりとした結論に至ってはいないようです。

今回の研究はこれまで報告されたメタ解析には、
含まれていない、
最新の臨床データを含む、
PSA検診の再解析で、
これまでの臨床データをまとめて解析した、
メタ解析の最新版です。
データの年齢は研究によって違いがあり、
50代から60代が主体ですが、
それより高齢や若年のデータも混ざっています。

それによると、
PSA検診によるスクリーニングは、
トータルで見ると総死亡のリスクを低下させず、
前立腺癌による死亡のリスクについては、
21%(95%CI: 0.69から0.91)有意に低下させる、
という結果が得られました。

これは10年を超えるスクリーニングにより、
検診施行者1000人当たり、1人の前立腺癌による死亡を予防する、
というくらいの効果と推測されます。
その一方で診断目的の生検及び診断後の治療の影響により、
これも検診施行者1000人当たり、
おおよそ1人が敗血症により入院し、
3人が排尿障害のため尿漏れパッドが必要となり、
25人が勃起不全になると試算されます。

このように前立腺癌のPSAを用いたスクリーニングにより、
前立腺癌による死亡のリスクは、
若干低下させる効果がありますが、
総死亡には影響を与えるものではなく、
診断のための検査や治療における合併症は、
少なからず患者さんの予後に影響するので、
PSA検診自体は継続するとしても、
その後の対応や対象者の絞り込みなど、
今後より有用な検診となるように、
その国際的な基準の整備が、
急務であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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スタチンが心血管疾患の予防に有効なのは何歳までなのか?(2018年スペインの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

ちょっとレセプトがギリギリで、
2日更新が間に合いませんでした。

レセプトも無事出せたので、
今日から通常運転に戻りたいと思います。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの高齢者一次.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
スタチンの高齢者における心血管疾患予防効果についての論文です。

「65歳以上ではこの薬は飲んではいけない」
というような扇情的な記事が、
複数のメディアや一般向けの雑誌などを賑わしています。

そうした番組や記事の、
不安を煽るような大袈裟な表現は感心しませんが、
心血管疾患の予防薬とされるような薬の有効性が、
高齢者ではあまり検証をされていない、
ということ自体は事実で、
高齢化社会においては、
高齢者においても有効な治療薬や、
病気の予防法の研究が、
急務であることは間違いがありません。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
広く使用されている動脈硬化性疾患の予防薬です。

心血管疾患(主に心筋梗塞)を一旦起こした場合の、
再発予防(二次予防)としての効果は、
75歳以上の年齢においてもほぼ確認されていますが、
まだ心血管疾患を起こしていない場合の、
起こさないための予防(一次予防)効果は、
75歳以上ではトータルには明確には確認されていません。

2型糖尿病は心血管疾患の大きなリスク要因ですが、
糖尿病のあるなしが、
高齢者のスタチン使用による予防効果に、
どのような影響を与えるのかも、
それを検証するデータはまだ限られています。

今回の研究はスペインにおいて、
75歳以上で心血管疾患の既往のない、
トータル46864名を登録し、
スタチンの新規の使用が中間値で5.6年の経過観察期間中に、
新規の心血管疾患をどの程度予防したのかを、
糖尿病のあるなしや年齢によって検証しています。

その結果、
糖尿病を合併していない場合、
75から84歳の年齢層においては、
スタチンの新規使用はその後の心血管疾患のリスクを、
有意に低下させることはなく、
総死亡のリスクも有意には低下させていませんでした。
それは85歳以上の年齢層でも同じでした。

一方で2型糖尿病を合併している場合には、
75から84歳の年齢層において、
スタチンの新規使用はその後の心血管疾患のリスクを、
24%(95%CI: 0.65から0.89)有意に低下させ、
総死亡のリスクも、
16%(95%CI: 0.75 から0.94)有意に低下していました。
しかし、糖尿病を合併している場合にも、
年齢が85歳以上では有意なリスクの低下は認められませんでした。

このように75歳以上で開始されたスタチンの、
一次予防としての心血管疾患予防効果と生命予後の改善効果は、
糖尿病が合併していない場合には、
トータルでは明確には認められず、
糖尿病を合併している場合でも、
85歳以上では認められませんでした。

これは個人の持つリスク因子によっても、
変わりうるものなので、
週刊誌的に「スタチンを75歳以上で飲むのは無効」
と言うことは誤りですが、
少なくとも85歳以上から開始されるスタチンの有効性には、
あまり科学的な根拠はない、
とそう言っても誤りではないように思います。
そして、75歳以上の年齢で開始されるスタチンの適応についても、
糖尿病の合併の可否を含めて、
より慎重かつ個別な検証が必要であることは、
間違いがないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの一次予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの一次予防効果.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
アスピリンの心血管疾患の一次予防効果を、
糖尿病の患者さんで検証した論文です。

1日80から100mg程度のアスピリンを継続的に飲むことに、
心血管疾患や腺癌というタイプの癌の、
予防効果のあることは、
多くの疫学データや精度の高い臨床試験においても、
実証されている事実です。

ただ、その一方でアスピリンには出血系の合併症があり、
使用を継続することで、
消化管出血や脳出血などのリスクは増加します。

従って、アスピリンを服用することが、
その人にとって有益であるかどうかは、
その作用と有害事象とのバランスに掛かっています。

その有効性は一度そうした病気になった人の、
再発予防効果としては確立されていますが、
まだ病気にはなっていない場合の、
一次予防効果については、
どのような対象者を選ぶかによっても、
その結果は様々で統一した見解とはなっていません。

今回の検証はイギリスにおいて、
年齢が40歳以上で糖尿病に罹患していて、
これまでに心血管疾患を発症していない、
トータルで15480名を登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はアスピリンを1日100mg継続使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
平均で7.4年の経過観察を行い、
心血管疾患と消化管の癌、および出血系の合併症の頻度を、
比較検証しています。

その結果、
観察期間中の心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、
心血管疾患による死亡を併せた頻度は、
偽薬群が9.6%に対してアスピリン群が8.5%で、
アスピリンにより心血管疾患のリスクは、
12%(95%CI: 0.79から0.97)有意に低下していました。

一方で経過中に、
脳内出血、眼底出血、消化管出血などの重篤な出血を発症するリスクは、
偽薬群で3.2%に対してアスピリン群では4.1%で、
アスピリンの使用により、
出血系の合併症は1.29倍(95%CI: 1.09から1.52)有意に増加していました。
その主体は消化管出血です。

消化管の癌の発症リスクについては、
アスピリン群と偽薬群とで有意な差はありませんでした。
これは全癌で見ても同じでした。

要するにアスピリンを使用することにより、
心血管疾患は12%減少し、
その一方で出血系の合併症は29%増加しています。

この両者の重みを、
単純に比較することは出来ませんが、
糖尿病の患者さん全員に、
一次予防のためにアスピリンを使用することは、
現時点で必ずしも有益であると、
言えるものではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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夜間食事制限の肥満予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
夜に食べると太るは本当か?.jpg
2018年のCell Metabolism誌に掲載された、
「夜食べると太る」という現象のメカニズムを、
ネズミの実験で検証した論文です。

人間の身体にはほぼ24時間のリズムで周期的に時を刻む、
体内時計があることが知られています。

個々の細胞には時計遺伝子と言われる複数の遺伝子があって、
それが日内リズムに同期して時を刻んでいます。

その一方で細胞が集合した組織により構成された人体にも、
体内時計の司令塔があり、
脳の視交叉上核という部分にあることが分かっています。
この脳の時計は太陽などの光刺激に反応して、
身体が光を感知した時間で時計を合わせ、
朝と認識して1日を開始するのです。

要するに身体全体としても時計があり、
それを構成する個々の細胞も、
それぞれの体内時計を持っている、
ということになります。

この体内時計によって、
人間の身体の代謝がコントロールされています。
昼と夜とでは主に肝臓において、
活性化される酵素に違いがあり、
それによって代謝の違いが生じているのです。

夜食事をすると太るのは、
体内時計によって夜は眠るための時間と認識されているので、
食事をしてもそれをエネルギーとして活用する力が弱く、
結果として脂肪の蓄積が起こりやすい、
というのが大きな理由となっています。

これまでの研究により、
時計遺伝子が働かないようにしたネズミを作り、
体内時計を壊してしまうと、
そのネズミは肥満になり、
脂質異常症や糖尿病などの代謝性疾患を、
高率に発症することが分かっています。

それでは、
代謝を正常に維持するには、
体内時計は必須のものなのでしょうか?

これはまだ結論が出ていません。

時計遺伝子により誘導される肝臓の代謝酵素の多くは、
別の刺激によっても誘導されることが分かっているからです。

それは空腹による刺激です。

今回のネズミの研究では、
まず体内時計が正常に働いているネズミを、
総カロリーの60%が脂質という高脂肪食で飼育し、
自由な時間に食べさせた場合と、
夜の9から10時間は一切食事を与えない場合とを、
比較しています。

その結果、
自由な時間に食べさせたネズミは、
高率に肥満になり糖尿病や脂質異常症を発症しましたが、
夜の食事を制限したネズミは、
健康で肥満にもなりませんでした。

次に時計遺伝子が働かないようにして、
体内時計のないネズミを作って同じ実験をすると、
矢張り夜の食事を制限した場合には、
ネズミは健康で肥満にもなりませんでした。

もし体内時計が代謝をコントロールしていて、
それは変えられないとすると、
食事制限をしても結果は変わらない筈ですが、
実際には体内時計がない状態であっても、
夜間に食事を摂らない時間を充分に取ることによって、
肥満や代謝障害は起こらなかったのです。

これはまだネズミの実験ですから、
人間でもこの通りの現象があるかどうかは、
まだ明らかではありませんが、
仮に人間でも成り立つとすると、
肥満や代謝疾患の予防のために重要なことは、
夜の時間帯に充分な絶食の時間を取ることで、
それが正常な代謝状態を保つために、
必要にして充分な習慣であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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