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頭蓋内圧亢進症の診断法の検討 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
頭蓋内圧亢進の診断法.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
脳の外傷や出血に伴う、頭蓋内圧亢進症という、
重篤な合併症の診断法についての論文です。

脳というのはお豆腐くらいの硬さのふわふわしたもので、
それが脳脊髄液という液体に囲まれて、
頭の骨(頭蓋)で出来たお椀の中に浮かんでいる、
というのが脳の実際です。

この脳脊髄液の圧力のことを、
頭蓋内圧と呼んでいます。

頭蓋内圧は、
脳脊髄液が一定量ずつ出入りしながら、
一定の範囲に保たれていて、
ふにゃふにゃの脳を守る働きをしています。
実際には脳自体とその周辺の血管、そして脳脊髄液が、
バランスを取って頭蓋内圧を作っているのです。

しかし、脳が強く揺さぶられて外傷を起こし、
炎症を起こして腫れ上がると、
脳自体の圧力が上昇し、
脳脊髄液の流れも妨害されるので、
頭蓋内圧は上昇します。
すると、バランスが崩れることにより、
脳の血管の圧力は低下して、
脳を流れる血液が減少します。

要するに、
頭蓋内圧が上昇すると、
それだけで脳は虚血になるのです。

脳内出血やクモ膜下出血でも同様のことが起こります。
頭蓋内圧亢進が高度になると、
その圧力により、脳の一部が、
脳脊髄液の出入りする穴を通して、
押し出されるような現象が起こります。
これが脳ヘルニアで、
押し出される脳の部位によっては、
死に直結する事態となります。

このように脳の深刻な影響を与える頭蓋内圧亢進症ですが、
その診断はそう簡単なものではありません。

確定診断に最も有効な方法は、
頭蓋骨に小さな穴をあけて、
そこからセンサーを挿入して、
直接頭蓋内圧を測定する、という方法です。

しかし、通常熟練した脳外科医以外にそうした処置は出来ませんし、
センサーの挿入により新たな出血や梗塞が起こるというリスクもあります。

そこで患者さんにあまり負担が掛からない方法で、
頭蓋内圧の亢進を推測出来るような方法が、
これまでに多く考えられて来ました。

症状としては、
意識レベルの低下や収縮期血圧の上昇と徐脈、
診察所見としては、
眼底のうっ血乳頭、
画像診断としてはCTやMRIにおける、
脳槽の圧迫や正中線偏位の所見などがあり、
やや特殊な検査としては、
瞼に超音波を当てて測定する、
視神経鞘の拡大の計測などが使用されています。

今回の検証はこれまでの臨床データをまとめて解析する方法で、
こうした臨床所見や検査所見と、
実際の脳内センサーで測定した頭蓋内圧との関連を比較検証しています。

その結果、
臨床所見と検査所見に関わらず、
単独の所見で頭蓋内圧亢進症の鑑別診断を行うことは、
信頼度や正確性には欠けて困難であることが明らかになりました。

このため上記論文の結論としては、
単独の検査所見や臨床所見に左右されることなく、
頭蓋内圧亢進症が疑われた場合には、
速やかに侵襲的な頭蓋内圧測定が、
可能な施設に搬送することが望ましい、
というものになっています。

今後は複数の所見などを組み合わせることにより、
より精度の高い非侵襲的な診断への道も、
検証されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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