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ビタミンB12の補充療法と過剰投与のリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンB12の過剰使用.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載されたレターですが、
カナダで不必要なビタミンB12の注射が行われている、
という報告です。

ビタミンB12は、中にコバルトという金属原子を含む、
巨大で複雑な構造の化合物です。
これを作れるのは、一部の微生物だけです。
微生物が合成したビタミンB12は、
動物の組織に取り込まれます。

従ってビタミンB12は、
原則として動物性食品(肉、魚、貝と乳製品)、
にしか含まれていません。
普通ビタミンというと、
何となく野菜に入っているようなイメージがありますね。
でも、このB12に関しては、
野菜や果物には一切入ってはいないのです。
菜食主義者がビタミンB12の不足で、
貧血や神経障害になることがあるのは、
このためですね。

ビタミンB12は高齢者で不足し易い、
と言われています。
それは、ビタミンB12が腸から吸収される仕組みに、
その原因があります。
ビタミンB12は、主に肉に含まれています。
肉の中にがっちり結び付いたビタミンは、
胃酸の働きによって、分離されます。
そして、胃から出る「内因子」と言われる蛋白質に、
代わりにくっついて、
腸から吸収されるのです。
高齢者では、胃酸の出る量は一般に少なくなっています。
胃の粘膜も萎縮して薄くなっています。
すると、肉がうまく分解されなくて、
B12が出てこなかったり、
出てきても、内因子が少なくてうまく吸収されないことが、
起こり易いのです。
「内因子」が足りなくて、
ビタミンが吸収されないタイプの貧血を、
特別に「悪性貧血」と呼んでいますね。

ここまで、よろしいでしょうか。

さて、1日に必要なビタミンB12の量はどのくらいでしょうか。

おおよそ2~3μgと言われています。

これはね、本当にちょっぴりの量なんです。
かなり食の細い方でも、
肉や魚や乳製品を一切摂らない、というのでない限り、
不足することは、吸収に問題がなければ、
まず考えられません。

人間の身体の中で、
ビタミンB12は何処にどれだけあるのでしょうか。

これはちょっと、資料によって、
記載がかなり違います。
血液の中にあるB12は全体の中では少数で、
大部分は肝臓の中に備蓄されています。
ある日本の文献では、1000μgから5000μgとされていますが、
その出典は明らかでありません。
「ハリソン内科学」の記載は、
2000μgですが、それと同じ量が他の組織に分布している、
とあります。
「メルクマニュアル」には、
3000μgから10000μgが肝臓に備蓄されている、
と書かれています。
これだけ備蓄量に差があるのは、
元々の根拠となるデータが、
あまり正確なものではないことを示している、
と僕は思います。
要するに、あまりよく分かってはいないのです。

このあやふやな備蓄量を改善するために、
ビタミンB12欠乏による貧血の治療では、
8000μgから12000μgものビタミンB12を、
注射し続けるように、
との治療方針が決められているのです。

実際には高度の欠乏症以外は、
注射によるビタミンB12の補充は必要がありません。

殆どの場合経口のビタミン剤(メコバラミンなど)で充分ですし、
それでも使用中の血液のビタミンB12濃度は、
基準値を大きく上回ることが多いのです。

にも関わらずビタミンB12の筋肉注射は、
高齢者の手足のしびれなどの漠然とした症状に対して、
国内外を問わず、やや安易に使用されているのが実際です。

今回の検討はカナダのオンタリオのもので、
医療データベースの情報を活用して、
146850人へのビタミンB12の筋肉注射の事例を解析したところ、
そのうちの63.7%は、血液濃度が基準値内であったり、
血液濃度自体が測定されていないなど、
不適切な使用であると判定されました。

このように、
現状多くのビタミンB12の筋肉注射はあまり根拠のないもので、
今後その適応については、
より科学的なものに再検討される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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