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LDLコレステロールと脳内出血リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
LDLコレステロールと脳卒中リスク.jpg
2019年のNeurology誌に掲載された、
LDLコレステロール値と脳内出血のリスクとの関連についての論文です。

LDLコレステロールは、
悪玉コレステロールと呼ばれることもあるように、
その数値が上昇することで、
心血管疾患特に心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクになります。

そのため、
心筋梗塞の予防のためには、
LDLコレステロールをなるべく低くすることが推奨されています。

特に心筋梗塞などを起こした時の二次予防では、
70mg/dLを切るような、
かなり極端な数値が目標として設定されています。

ここまで強力にコレステロールを下げて、
何か問題は生じないのでしょうか?

体質的にコレステロールが低値の家系があり、
その調査などのデータからは、
コレステロールが基準値を超えて高度に低くても、
健康上の問題はないとされています。

ただ、その一方で一般住民の疫学データなどによると、
脳出血のリスクは、
コレステロールが低いほど増加する、
という報告が複数存在しています。

コレステロールは細胞膜にとって必要不可欠の脂質ですから、
シンプルに考えると、
それが欠乏することにより、
脳の血管が脆くなり、
出血しやすくなるという可能性は想定されます。

ただ、これまでの報告は
脳内出血の比較的少ない欧米のものが多く、
頻度の多いアジアでの報告が待たれていました。

今回のデータは中国のもので、
登録の時点で心筋梗塞や脳卒中、癌の既往のない、
トータル96043名(年齢中間値51.3歳)を9年間経過観察し、
経過中に複数回測定したLDLコレステロール値と、
脳内出血リスクとの関連を比較検証しています。

その結果、
脳内出血のリスクは、
血液のLDLコレステロール濃度が100mg/dL以上と比較して、
70から99mg/dLでは有意な差はありませんでした。
しかし、70から99mg/dLと比較して、
50から69mg/dLではそのリスクは1.65倍(95%CI: 1.32から2.05)、
50mg/dL未満では2.69倍(95%CI:2.03から3.57)、
それぞれ有意に増加していました。

それを図示したものがこちらです。
LDLコレステロールと脳卒中リスクの図.jpg

今回のデータでは1から4%程度が、
コレステロール降下剤を使用していましたが、
それを除外しても、
この傾向は変わりませんでした。

このようにあくまで治療していない場合の話ですが、
血液のLDLコレステロール値が70mg/dLを下回ると、
脳内出血の発症リスクが増加することは、
ほぼ間違いがなさそうです。

ただ、これは、
スタチンなどでコレステロールを薬で下げている、
患者さんでのデータではないので、
その点はまた別個に考える必要があります。

脂質異常症は心血管疾患のリスクであることは間違いがありませんが、
それは主には虚血性心疾患のデータで、
そのまま脳卒中にも当て嵌まるものではない、
という点には注意が必要で、
コレステロールを何処まで下げるのかについては、
個々の患者さんの病気のリスクを慎重に判断した上での、
多角的な検討が必要であるのかも知れません。

今後ガイドライン等においても、
より患者さんのトータルな予後を重視した、
繊細で個別の差に配慮した、
改良がなされることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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