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バセドウ病放射線ヨード治療の二次発癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
放射性ヨードと癌リスク.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)に対する放射性ヨード治療の、
その後に与える二次発癌リスクについての論文です。

バセドウ病の治療には、
抗甲状腺剤による薬物療法と、
甲状腺の極一部を残して切除する手術治療、
そして放射性ヨードを内服して、
甲状腺の細胞の大部分を死滅させるという、
放射性ヨード治療の3種類があります。

日本においては、
第一選択の治療は、
通常は薬物療法で、
副作用で治療継続が困難な場合や、
何らかの要因で薬物治療が困難な場合などに限って、
他の治療が選択されることが通常です。
ただ、アメリカにおいては、
放射性ヨード治療が、
短期で治療が終えられるなどの利点から、
第一選択の治療とされることが多い、
という国内外の違いがあります。

ただ、そのアメリカにおいても、
放射性ヨード治療後にバセドウ病の眼症が悪化する事例があることや、
その放射線被ばくによる二次発癌のリスクから、
抗甲状腺剤による治療が、
近年では見直される傾向にあるようです。

さて、
バセドウ病の放射線治療は、
放射能でラベルしたI 131という放射性ヨードを、
内服することによる治療です。

ヨードはその大部分は甲状腺に集積し、
甲状腺の細胞はほぼ死滅してしまうため、
他の臓器の被ばくの影響は少ない、
というのがその安全性についての理屈です。

しかし、実際には他の臓器への影響も少ないながらはあり、
それが将来的な別の臓器の発癌に、
結び付くという可能性は否定出来ません。

今回の研究では、
アメリカとイギリスにおいて、
甲状腺機能亢進症の治療の予後を長期観察した、
大規模な疫学データを活用して、
この問題の検証を行っています。
以前に一度解析結果が報告されていて、
そこではあまり明確な関連は証明されなかったのですが、
今回はその時より長期の、
24年に渡る観察期間をおいて、
再検証を行っているのです。

放射性ヨードで治療された甲状腺機能亢進症の患者さん、
トータル18805名をその後24年間観察しています。
放射性ヨードの線量はバセドウ病に対しては平均で375メガベクレル、
結節性甲状腺腫に対しては平均で653メガベクレルが使用されていて、
各臓器の吸収線量は、
大腸、骨盤内臓器、脳と中枢神経に対しては20から99ミリグレイ、
膵臓、胃、肝臓、腎臓、乳腺、肺、骨髄に対しては100から400ミリグレイ、
食道に対しては1.6グレイ、
そして甲状腺に対しては130グレイとなっています。

患者さんの年齢は平均49歳で78%は女性、
原因疾患は93.7%がバセドウ病です。
全ての固形癌に対して、
胃の吸収線量100ミリグレイ当たり、
6%の死亡リスクの増加が有意に認められました。
また、乳腺の吸収線量100ミリグレイ当たり、
12%の死亡リスク増加が有意に認められました。
乳癌を除外したそれ以外の固形癌の死亡リスク増加は、
胃の吸収線量100ミリグレイ当たり5%でした。

今回の検証において初めて、
治療の線量とその後の長期の癌による死亡リスクとの間に、
用量依存的な関連が確認されました。

この結果はかなり重いもので、
バセドウ病に対する放射性ヨード治療の適応についてh、
今後欧米においても、
再検証されることになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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