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心臓突然死の予防ガイドライン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心臓突然死の予防ガイドライン.jpg
2019年のJAMA誌に掲載されたものですが、
心臓突然死の予防のためのアメリカのガイドラインの解説記事です。

心臓突然死というのは、
主に重症の不整脈の発作が突然に起こって、
それにより死に至ることですが、
アメリカにおいては心血管疾患による死亡のうち、
ほぼ半数を占めると報告されています。

要するに心臓に何らかの病気を持っていると、
不整脈で心臓がいきなり停止する危険性が、
決して低くはないのです。

この場合その不整脈の多くは、
心室細動や粗動と呼ばれる心臓の筋肉の一種の痙攣で、
これが起こると心臓は十分な血液を流せなくなり、
血圧は保てなくなって死に至るのです。

それでは、この不整脈による死亡を阻止するためには、
一体どうすればよいのでしょうか?

近年、こうした場合の切り札的に考えられているのが、
植込み式除細動器(ICD)です。
これはペースメーカーによく似た機械を身体に植込んで、
危険な不整脈を感知し、
仮にそれが起こった時には、
電気ショックを身体の中で起こして、
止めてしまおうという装置です。

今使用されているものには、
不整脈を感知する機能や記録する機能、
電気ショックを起こす機能と共に、
ペースメーカーの機能も付いていて、
心臓が停止するようなほぼ全ての場合において、
対応可能な機器に進歩しています。

従って、多くの心臓突然死は、
このICDで予防可能です。

それでは全員がICDの植込みをすれば、
心臓で死ぬ人はいなくなるではないか、
と思われるかも知れません。
しかし、実際にはそれは効率的な考えではありません。

それほどリスクはないとは言え、
植込みの処置は手術の一種で合併症もありますし、
その医療費も高額になります。

実際に不整脈死のリスクが高い人に限って、
その使用を行わなければ、
有効な治療とは言えないのです。

一度でも重症不整脈の発作を起こした人であれば、
再発予防のために植込みをすることは理に適っています。

それでは、まだ起こしていない場合にはどうでしょうか?

現行のガイドラインにおいては、
心臓の超音波検査で計測可能な、
左室の駆出率という指標が、
そのリスク判定に重要な役割を果たしています。

この数値は55%以上が正常で、
40%未満が中等症の心不全、
30%未満は重症の心不全ということになります。

駆出率が40%未満という中等度の心機能低下の状態では、
まず心不全の治療薬である、
ACE阻害剤やβ遮断剤、アンジオテンシン受容体拮抗薬や、
抗アルドステロン薬、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤、
などの使用が心臓突然死の予防のためにも重要です。

急性心筋梗塞後40日以上、
もしくはステントなどの再灌流治療後90日以上経過していて、
駆出率が35%以下で、薬物治療を継続していても、
心不全がNYHA分類のⅡ度もしくはⅢ度
(安静時は症状はないが日常動作やそれ以下の動作で息切れなどの症状あり)
の心不全症状がある虚血性心疾患の患者さんには、
1年以上の余命が期待できることを条件に、
ICDの植込みが推奨されます。

同じく虚血性心疾患の患者さんで、
急性心筋梗塞から40日以上、
もしくはステントなどの再灌流療法から90日以上経過していて、
薬物療法を継続していても、駆出率が30%以下で、
心不全がNYHA分類のⅠ度(日常生活では症状はない)の状態では、
1年以上の余命が期待できることを条件に、
ICDの植込みが推奨されます。

虚血性心疾患ではない心筋症の患者さんで、
薬物治療を継続していても、駆出率が35%以下で、
心不全がNYHA分類のⅡ度もしくはⅢ度
(安静時は症状はないが日常動作やそれ以下の動作で息切れなどの症状あり)
の状態である場合には、
1年以上の余命が期待できることを条件に、
ICDの植込みが推奨されます。

以上がアメリカの現行のガイドラインの内容です。

内容は新規の心不全治療薬である、
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤が薬物治療に加わった以外は、
ほぼ以前のものを踏襲する内容となっています。

心臓突然死の予防のためには、
心不全の状態を評価して、
ICDの適応を決めることが有益であるという考え方になっています。

日本の現行のガイドラインは、
内容的にはアメリカのものと大きな違いはありませんが、
アメリカと比べて虚血性心疾患の頻度が低いので、
別個の不整脈のリスクなどについて、
より多くの取り決めのある点が異なっています。

現行多くの心臓突然死が、
予防可能となりつつあることは確かで、
その治療の適応を含めて、
より詳細な検証が積み重ねられることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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