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唐組「ジャガーの眼」(2019年再演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ジャガーの眼2019.jpg
唐組の第63回公演として、
「ジャガーの眼」が再演されています。
東京公演は明日が千秋楽ですね。

この芝居は唐組としても、
「秘密の花園」と並んで最も再演頻度の高い作品です。

初演は状況劇場の終わり頃の1985年で、
若手の女優さんがヒロインを演じ、
本公演で李礼仙が出演しないという異例の公演でした。

唐組結成間もない1989年に再演(唐組として初演)され、
1995年には「サラマンダ直し版」として、
人形のサラマンダの部分を少し膨らませて台詞を増やした、
別バージョンが再演されました。
更にこのバージョンが1997年に再演されています。
2008年には唐先生が闇坂という、
別のキャラを演じる別バージョンとしてまた再演。
この2008年版は2015年に木野花の演出で「日本の30代」
という企画公演もありました。
それから僕は観ていませんが、
新宿梁山泊も別個にテント公演で上演しています。

このように多くのバージョンの混在するこの作品ですが、
今回は唐十郎+久保井研の演出として、
初演の台本通りの再演になっています。

これは絶対初演のままがいいですよ。

今回の上演は僕の観た中では、
これまでのベスト3のうちには間違いなく入る舞台で、
久保井さんの緻密で唐先生愛に満ちた演出により、
この作品の真価が感じられる舞台に仕上がっていました。

初演はテントも今より大きかったですし、
ラストの屋台崩しも大仕掛けで、
リアルな路地が全て崩れ落ち、
トラックも登場していました。

その点ではそれ以降の全ての再演は、
スケールの面では物足りなさは否めないのですが、
今回の上演は群衆シーンにもそれなりの人数が用意されていて、
まずまずの迫力がありましたし、
セットも3幕の標本室については、
これまでの上演の中で最も良く出来ていました。

キャストはヒロインのくるみに、
ベテランの藤井由紀さんがキャスティングされていて、
最初に男装の麗人として登場し、
2幕には女性の姿で婚約者のある男性を強引に誘惑する、
という2面性を巧みに演じていて新鮮でした。
これまでくるみを上演していた女優さんは、
皆若く元気で一本調子な役作りであったので、
これはそうした役なのかしらと思っていたのですが、
決してそうではなく、
むしろ李礼仙が演じるのが相応しいように、
実際には描かれていたことが分かりました。
今回はラストに男装の麗人に戻り、
それまでとは違う声色で叫ぶところが、
とても新鮮であるとともに、
「あっ、この台詞はこれが正解だよね」
と初めてそう感じました。

この作品には扉探偵とDr弁という、
魅力的な悪役が2人登場しますが、
今回は扉に300時代から活躍している内野智さんが、
Dr弁には最近進境著しい全原徳和さんがキャスティングされています。

内野さんはこうした役柄は合っていて、
その役作りにもこれまでとは違う工夫が見られました。
ただ、ちょっとパワー不足で、
台詞を言うのが精一杯で息切れするような場面が多くありました。
こうした役柄には、
矢張りもう少し若いパワーと体力と肺活量とが、
必要であるようです。

全原さんはこれまでとは違う、
グランギニョール風の役作りで、
初演の金守珍のイメージが強いこの役の、
新しい解釈を感じさせました。
個人的には金守珍の10倍くらい全原さんの方が好きです。
ただ、もっと大暴れして欲しいですね。
やや控えめな芝居で、
雰囲気はあるのに物足りなさは残りました。

今回抜群であったのは、
少年役をフレッシュに演じた大鶴美仁音さんと、
サラマンダを絢爛豪華に演じた月船さららさんで、
このお2人については、
これまでのこの作品の上演史において、
間違いなく最高だったと断言出来ます。

美仁音さんは「吸血姫」を観てしまうと、
今回もヒロインなのかしらと予想していたのですが、
蓋を開けてみると少年役を、
これ以上ないくらい爽やかかつ繊細に演じきっていて、
自然体で演じているようで、
誰の真似にもなっていない、
という辺りが凄いと思います。

月船さららさんは、
昨年の「黄金バット」も最高で、
こうした唐先生の芝居のダークな女性を演じさせると、
ピカイチという感じがあります。
状況劇場から唐組を通じて、
こうした役柄を魅力的に演じることの出来た女優さんは、
これまでほぼ皆無と言って良く、
初演を含めて初めて、
サラマンダという役柄はその本来の姿を、
舞台上に出現させた、と言って良いと思います。

藤井由紀さんも今回は息切れしていて、
台詞がきつそうでしたね。
そこはちょっと残念。
後、サラマンダの吹き替えの人形は、
もっとリアルであると良かったですね。

そうした少しの瑕はありますが、
この作品の素晴らしさを十全に感じさせる素晴らしい上演で、
小劇場ファンには必見と言って良いと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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