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グルコサミンの心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
グルコサミンの心血管疾患予防効果.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
関節痛に広く使用されているサプリメントが、
心血管疾患の予防になるのではないかという、
「意外に効くじゃんグルコサミンって!」
という感じの論文です。

グルコサミンとコンドロイチンは、
膝などの関節の軟骨を形成する成分で、
そのためサプリメントとしてその補充を行なうことが、
膝の痛みの改善や関節症の進行予防に繋がるのでは、
という期待から、
サプリメントの一大市場を形成しています。

毎日そのCMがテレビで流れない日はありませんし、
あらゆるメディアがその宣伝を行なっています。

しかし、実際にその効果がどの程度のものか、
という点については、
まだ議論があり、
一定の結論に至ってはいません。

グルコサミンについては2000年代の初め頃に、
一流の医学誌にその使用により膝の痛みが改善したとする、
複数の論文が掲載されました。
今でも一部のグルコサミンの宣伝には、
その時のデータが使用されています。

しかし、その論文の多くが、
特定のグルコサミンの販売業者と癒着した、
研究者によるものだったことが判明し、
その信頼性は大きく損なわれました。

その後、アメリカでGAIT研究と呼ばれる大規模な臨床研究が行われ、
グルコサミンとコンドロイチンの半年間の効果が検証されました。
その結果は、2006年と2008年に論文化されました。
トータルには明確な効果は確認されませんでしたが、
特に有害ではなく、症状の改善したケースも認められました。
サブ解析で中等度から高度の痛みのある患者さんでは、
痛みの改善効果があるかも…
というくらいの結果です。

その後2014年のAnn Rheum Dis.に新たな臨床試験の結果が発表されました。
その後に発表された臨床試験の中では、
例数もまずまずで厳密な手法を用い、
偽薬と比較していて、2年という長期の効果を見ている、
という点で、それまでにない画期的なものです。

オーストラリアにおいて、
45から75歳の変形性膝関節症の患者さん、
トータル605名を、
本人にも治療者にも分からないように、
4つのグループに分け、
第一グループはグルコサミンを1日1500ミリグラム、
第二グループはコンドロイチンを1日800ミリグラム、
第三グループはグルコサミンとコンドロイチンの併用、
そして第四グループは偽薬を使用して、
その後2年間の経過観察を行います。

その結果…

偽薬を含めた全てのグループで、
治療の1年後には膝の痛みは改善を示しましたが、
グループ間の差は有意なものはありませんでした。
有害事象にも差はありません。
そして、グルコサミンとコンドロイチンの併用群では、
膝関節症の進行度の指標1つである、
関節裂隙の狭小化が、
2年間で0.1ミリ(0.002から0.20)偽薬より有意に予防されていました。

つまり、
痛みなどの症状には差は付かなかったけれど、
グルコサミンとコンドロイチンを併用すると、
二年間で関節の軟骨の減りが、
平均で0.1ミリ少なくて済んだ、
ということになります。

同じ雑誌に翌2015年、
次のような論文も発表されました。
これは別個の研究で、
フランス、ドイツ、ポーランド、スペインで、
患者さんが登録されています。

変形性膝関節症のある40歳以上の606名の患者さんを、
グルコサミン1500ミリグラムとコンドロイチン1200ミリグラムを併用する群と、
セレコキシブという消炎鎮痛剤を200ミリグラム使用する群の2つに分け、
半年間の経過観察を行なっています。
どちらのグループかは、
患者さんにも主治医にも知らされません。

その結果、
矢張り痛みはどちらの群でも減少していて、
しかし両群での効果の差は認められませんでした。

この研究は偽薬との比較ではないので、
その点はちょっと見劣りがするのですが、
膝関節症の痛みに対して、
痛み止めを使うべきか、
それともグルコサミンやコンドロイチンで様子を見るべきか、
というのは、
臨床において医者も患者さんも、
日々直面する問題ですから、
その意味では意義のある試験だと言って良いと思います。

膝関節症は、
物理的なストレスと老化が原因であっても、
その進行には一種の自己炎症のメカニズムが絡んでいて、
その意味では消炎鎮痛剤の使用が、
理に適っている側面があります。

しかし、こうして結果を見ると、
どうやらセレコキシブによる病状の改善効果は、
グルコサミンとコンドロイチンで、
充分代用は可能な水準のもののように思われます。
更には偽薬とどの程度違うかは、
神のみぞ知る、という感じです。

トータルに考えて、
グルコサミンとコンドロイチンの併用は、
2年間程度の使用における安全性はほぼ確立していて、
その効果は膝関節症の進行予防に、
僅かには関与しているようです。
ただ、その痛みなどの改善効果は、
多分にプラセボ効果を含んでいて、
それを除外するとかなり心許ない感じです。

このように、グルコサミンはサプリメントとしては優等生です。

一定の効果がある可能性があり、
一方で有害事象などのリスクが生じる可能性は極めて低いからです。

このため、アメリカやオーストラリアでは、
グルコサミンは日本と同じくサプリメントの扱いですが、
ヨーロッパでは処方箋の必要な処方薬の扱いとなっています。

こうしたことを知らずに、
「グルコサミンには何の効果もない」
と言い切っているような専門家と称する方もいますが、
実は知識がアップデートされていないのです。

最近グルコサミンの使用により、
心血管疾患のリスクが低下するのでは、
ということを示唆する報告が幾つか見られています。

今回の研究は大規模健康データである、
イギリスのUKバイオバンクのデータを活用して、
心血管疾患の既往のないトータル466039名に、
グルコサミンの使用の有無を聞き取りし、
中間値で7年の経過観察を行って、
心血管疾患の発症リスクを比較検証しています。

他の心血管疾患のリスク因子を補正した結果として、
グルコサミンの習慣的な使用は、
心血管疾患のトータルな発症リスクを15%(95%CI: 0.80から0.90)、
心血管疾患による死亡のリスクを22%(95%CI: 0.70から0.87)、
虚血性心疾患の発症リスクを18%(95%CI: 0.76から0.88)、
それぞれ有意に低下させていました。

このように、
今回の大規模な検証から、
グルコサミンの使用が心血管疾患のリスクを低下させる可能性が、
示唆されました。

仮にこれが事実として、
どのようなメカニズムが想定されるでしょうか?

上記文献の考察では、
グルコサミンに抗炎症効果があり、
それが原因となっている可能性や、
グルコサミンに糖化を抑制するような作用があり、
低糖質ダイエットと似た作用があるのでは、
というような推論も記載されています。

グルコサミンの心血管疾患予防効果は、
まだ確定したものではありませんが、
グルコサミンはサプリメントとしては、
関節炎にも一定の有効性があり、
心血管疾患の予防効果もあるとすれば、
意外に優れものと言えるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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