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「ジャンニ・スキッキ」(2019年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は石原が担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ジャンニ・スキッキ.jpg
新国立劇場のレパートリーとして、
ツェムリンスキーの「フィレンツェの悲劇」と、
プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」が二本立て(ダブル・ビル)として、
先日新国立劇場で上演されました。

これは以前二期会が同じ組み合わせの上演をしていますが、
上演自体はかなり珍しくて、
僕自身はどちらの作品も今回生で聴くのは初めてです。

「ジャンニ・スキッキ」はプッチーニが比較的後期に作曲した、
60分くらいの上演時間の短い1幕劇です。
中に出て来る「私のお父さん」があまりにも有名で、
マリア・カラス以来リサイタルのアンコールの定番ですが、
全体が上演されることは非常に稀です。

これはプッチーニ唯一の喜劇で、
遺産相続の遺言状を巡る騒動を、
伴奏に乗った合唱主体で軽快に描いた作品です。
ほぼ鳴り止む瞬間のない音楽は、
全編が快適なリズムとスピード感を持っていて、
心地良く一気に聴くことが出来る完成度の高い作品です。
「私のお父さん」を初めとする、
間に挟まれたアリアがあまりに美しいメロディなので、
ちょっと浮いている感じもするのが、
唯一の瑕というのが面白いところです。

ただ、この20世紀初頭の、
古典的オペラの最後の時代の作品は、
ほぼミュージカルと言って良い構造になっていて、
ここまで来ると、必然的にミュージカルと映画の時代になり、
古典的オペラは終焉を迎えるのです。

今回の上演は1幕で同じ程度の上演時間の悲劇である、
「フィレンツェの悲劇」との二本立てで、
こちらもシュトラウス的音楽をベースとした、
現代音楽と演劇の融合に繋がる、
こちらも古典的オペラの最後の時期の作品です。

演出は最初の「フィレンツェの悲劇」は、
テーマを具現するような、
中央で破壊された巨大な屋敷のオブジェが舞台中央に陣取り、
その家の外の舞台前方に、
家の内部が拡大されて表現されている、
というかなり抽象的なものです。
2本目の「ジャンニ・スキッキ」になると、
紗幕の向こうでオブジェが左右に割れて、
その向こうから全ての家具や小道具が、
巨大に作られたポップな舞台が姿を現します。

「フィレンツェの悲劇」は原作と同じ時代設定で、
「ジャンニ・スキッキ」では1950年代が舞台の読み替え演出です。

舞台面はなかなか美しくて良いのですが、
「フィレンツェの悲劇」はオブジェが舞台を狭くしているだけで、
最後まで何ら動きがないのが詰まらないと思います。
舞台が動くのは紗幕の向こうの転換というのは、
これも如何にも詰まらないのです。
「ジャンニ・スキッキ」をポップな舞台にしたのは、
2つの作品の対比を明確にしたかったのだと思いますが、
この作品が上演される機会は、
そう多くはないのですから、
原作通りの設定で上演して欲しかったな、
というのが正直なところでした。

キャストはまずまずの充実度で、
特に「ジャンニ・スキッキ」は、
一点豪華主義でタイトルロールにカルロス・アルバレスを導入し、
後は実力派の日本人歌手で固めて、
絶妙のアンサンブルを実現しています。
砂川涼子さんの「私のお父さん」は抜群の完成度ですし、
村上敏明さんとの二重唱も日本人歌手の良さが出ていたと思います。
押しは強くありませんが、完成度が高く繊細です。

そんな訳でなかなか楽しめる上演でした。

もう日本のオペラは、
新国立を楽しむくらいしかないですからね。

バブルは遠くなりにけり、という感じです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新規経口GLP1アナログ(セマグルチド)の効果(DPP4阻害剤との比較試験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
セマグルチドの経口剤とシタグリプチンとの比較試験.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
糖尿病の新薬の臨床試験についての論文です。

今2型糖尿病の治療薬として、
最も注目されているのが、
インクレチンという一種の消化管ホルモンで、
インスリン分泌を刺激するインクレチン関連薬と、
尿に糖を排出する働きを持つSGLT2阻害剤です。

いずれも他の多くの糖尿病治療薬とは異なり、
長期的な患者さんの生命予後や、
心血管疾患の予後を改善する可能性があり、
低血糖は比較的起こし難く、
体重も減少させるという効果が報告されているからです。

ただ、インクレチン関連薬には、
飲み薬のDPP4阻害剤と、
注射薬のGLP1アナログという2種類がありますが、
生命予後の改善効果などが一部の薬で示されているのは、
GLP1アナログだけで、
その有効性においてはDPP4阻害剤は劣るというのが、
これまでの臨床データから示されていることです。

しかし、DPP4阻害剤が飲み薬であるのに対して、
これまでのGLP1アナログは注射薬で、
患者さんにとってはその使用は抵抗のあるところです。

今回特殊な製法を用いることによって、
初めて製品化に成功した飲み薬のGLP1アナログが開発されました。

それがセマグルチドという薬です。
これはまず従来と同じ注射薬として開発され、
それから同じ成分の飲み薬が開発されたのです。

今回の研究では、
メトホルミンやSU剤といった従来のタイプの治療を行なっても、
HbA1cが7.0から10.5%と、
コントロールが充分ではない2型糖尿病の患者さんに対して、
経口のGLP1アナログであるセマグルチドを上乗せした場合と、
従来のDPP4阻害剤であるシタグリプチン(商品名ジャヌビア、グラクティブ)
を上乗せした場合との、
26週間の時点での血糖コントロールの比較を行っています。

偽薬を使用してどちらが上乗せされたのかを分からないようにした、
世界14か国で1864名の患者さんを登録して行った試験です。

その結果、
26週の時点でのHbA1cの低下率は、
DPP4阻害剤と比較して、
セマグルチドの方がより大きくなっていました。

ある意味ここまでは当たり前の結果と言えるものですが、
今後より長期の予後の比較を行うことにより、
この薬の真の意味での有効性が確認されることを期待したいと思います。

週に1回の内服で、
これまでの注射薬と同じ効果が見られるのであれば、
それはかなり画期的なことと言って良いからです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ほどほどの飲酒が健康的、は本当か?(中国の遺伝子解析データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

本日は木曜日ですが、
都合により臨時の休診とさせて頂きます。
ご迷惑をお掛けしますがご了承下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルコールと脳卒中と血圧.jpg
2019年のLancet誌に掲載された、
飲酒量と健康についての中国での研究結果です。

こうした報告はこれまでにも多くあるのですが、
今回はさすが中国で非常に大規模であることと、
遺伝子変異の解析を行って、
アルコール量と健康リスクとの関連が、
原因と結果であるかどうかを検証している点が特徴です。

健康のために適切な飲酒量はどのくらいか、
というのは未だ解決はされていない問題です。

大量のお酒を飲んでいれば、
肝臓も悪くなりますし、
心臓病や脳卒中、高血圧などにも、
悪影響を及ぼすことは間違いがありません。

ただ、アルコールを少量飲む習慣のある人の方が、
全く飲まない人よりも、
一部の病気のリスクは低くなり、
寿命にも良い影響がある、
というような知見も複数存在しています。

日本では厚労省のe-ヘルスケアネットに、
日本のデータを元にして、
がんと心血管疾患、総死亡において、
純アルコールで平均23グラム未満(日本酒1合未満)の飲酒習慣のある方が、
全く飲まない人よりリスクが低い、
という結果を紹介しています。

その一方で、
2016年のメタ解析の論文によると、
確かに飲酒量が1日アルコール23グラム未満であれば、
機会飲酒の人とその死亡リスクには左程の差はないのですが、
1日1.3グラムを超えるアルコールでは、
矢張り死亡リスクは増加する傾向を示していた、
というようなデータが紹介されています。

2017年に発表されたイギリスの大規模疫学データでは、
概ね多くの病気において、
全くお酒を飲まない人より、
1日20グラム程度のアルコールを摂取している人の方が、
その発症リスクは低く、
それが適正量を超えるとリスクの増加に繋がる、
というものになっていました。

ただ、喉頭癌、食道癌、乳癌など、
一部の癌はより少ないアルコール量でも、
そのリスクが増加した、
というデータもあります。

これまでのデータを整理すると、
アルコールの摂取量が少なくとも、
ノーリスクとは言えないのですが、
その量が1日換算で20から23グラム未満程度であれば、
大きな健康上の問題は生じない、
と考えて良いように思います。

ただ、この少量の飲酒が最も健康リスクが低い、
という現象が、
本当に飲酒量そのものが原因で起こっているのか、
それともそれに結び付く生活習慣などの影響であるのか、
といった点については明確ではありません。

今回の研究は中国の大規模なバイオバンクに集められた、
512715件という膨大な個人データを解析し、
アルコール代謝に影響を与える2種類の遺伝子多型(SNP)と、
アルコールの摂取量、
そして約10年の観察期間中における、
病気の発症リスクとの関連を検証したものです。
お酒の飲める人と飲めない人は、
ほぼアルコール代謝の状態によって推測が可能なので、
そこから推測された飲酒量と病気との関連を、
実際の聞き取りによる飲酒量と病気との関連と、
比較しているという訳です。
それが一致しているのであれば、
ほぼアルコール量により病気のリスクが影響されている、
ということが実証されますし、
そこに違いがあれば、
酒量以外の要素が影響している可能性がある、
ということになる訳です。

その結果、
聞き取りによる酒量で解析すると、
1週間に100グラム程度のアルコールを摂取している人が、
それより多い量や少ない量の飲酒と比較して、
虚血性脳梗塞、脳内出血、急性心筋梗塞の発症リスクは、
最も低くなっていました。

これは概ねこれまでの疫学データに合致する所見です。

次に遺伝子多型から推測される飲酒量で解析すると、
男性の脳卒中のリスクは飲酒量が多ければ多いほど直線的に増加し、
1週間に4グラムから256グラムの間において、
一定の飲酒量がある方がリスクが低い、
というような関連は認められませんでした。
最も飲酒量との関連が高かったのは脳内出血のリスクで、
1週間に280グラムの飲酒当たり1.58倍(95%CI; 1.36から1.84)となっていました。
虚血性梗塞はそれよりは少なく1.27倍(95%CI; 1.13から1.43)でした。
そして、急性心筋梗塞のリスクについては、
推計の飲酒量との間に有意な関連は認められませんでした。
以上は全て男性のみでの解析です。

女性においては飲酒量自体が少なく、
遺伝子多型を元にして飲酒量を推計しても、
脳卒中や心筋梗塞との明確な関連は認められませんでした。

聞き取りで確認した男性の飲酒者においても、
遺伝子多型で推測した男性の飲酒者でも、
摂取するアルコール量に比例して収縮期血圧は増加しており、
それが病気のリスク上昇の一因と想定されました。

このように、
少しお酒を飲む習慣があった方が、
脳卒中や心筋梗塞のリスクが低い、という現象は、
遺伝子多型を用いた解析では再現出来ないことから、
酒量自体の影響ではなく、
何かそれとリンクした生活習慣など、
別の因子によるものの可能性が高そうです。
従ってアルコール量が多いほど高血圧が増え、
心疾患や脳卒中のリスクも高まるのですが、
それはかなり酒量が多い場合の話で、
適正飲酒とされている1日20グラム程度のアルコール摂取においては、
矢張りあまり大きな影響は与えないと、
そう考えて大きな間違いはないようです。

お酒は適量で、
ただし飲酒の習慣のない人は、
健康のために無理に飲むような必要はない、
というのが現状の科学的事実と言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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日本にやせ形の糖尿病が多いのは何故か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で外来は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

明日18日木曜日は臨時休診とさせて頂きます。
受診予定の方はご注意下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
日本人のやせ形インスリン抵抗性.jpg
2019年のthe Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌に掲載された、
日本人が肥満がないのにインスリン抵抗性が生じるメカニズムを解析した、
順天堂大学などの研究者による論文です。

肥満になるとインスリンの効きが悪くなる、
インスリン抵抗性が生じますが、
その2つ橋渡しているのが、
血液中を流れる脂肪である、
遊離脂肪酸です。

血液中の遊離脂肪酸濃度は、
インスリン抵抗性や肥満と強い関連があります。
遊離脂肪酸を血液中で増加させると、
それが筋肉や肝臓におけるインスリン抵抗性を生み出すことが、
実験的に証明されています。

通常は余分なエネルギーは中性脂肪として、
皮下脂肪の組織に蓄えられています。
皮下脂肪組織に脂肪を蓄える作用を促進しているのがインスリンです。

しかし、これが一旦病的な肥満の状態になると、
筋肉や肝臓においてインスリン抵抗性が生じ、
皮下脂肪組織から遊離脂肪酸が放出されて、
それが内臓の周辺や肝臓の中に沈着するようになります。
これがメタボや脂肪肝です。

日本人を含むアジア人では、
肥満のない2型糖尿病の患者さんが多いという特徴があります。

その理由の1つとして、
皮下脂肪組織におけるインスリン感受性の低下が、
体質的に多く見られるのではないか、
という仮説があります。

通常ならもっと皮下脂肪に余分が脂肪が蓄えられるのに、
それが出来ずに血液中に遊離脂肪酸が放出されやすい体質があると、
血液中の遊離脂肪酸が増加しやすく、
それが筋肉や肝臓におけるインスリン抵抗性を招く、
原因となっているのではないか、という仮説です。

この仮説を検証する目的で今回の研究では、
BMIが21から25kg/㎡で高血圧や糖尿病のない、
ボランティア男性52人を対象として、
人工膵臓を用いた検証を行っています。

人工膵臓を用いて皮下脂肪組織におけるインスリン抵抗性を測定し、
それをそれを高い群と低い群の半数ずつに分けて検証したところ、
皮下脂肪におけるインスリン抵抗性が高いと、
それだけ遊離脂肪酸は高くなり、
結果として肝臓と筋肉におけるインスリン抵抗性も増加して、
肝臓内の脂肪や内臓脂肪の蓄積が起こりやすくなることが確認されました。

つまり、
アジア人では皮下脂肪におけるインスリン感受性の低下があるので、
肥満がなくても血液中の遊離脂肪酸が増加し易く、
それが全身のインスリン抵抗性を惹起して、
肥満のないメタボの状態に結び付いているのでは、
という仮説を支持するようなデータが得られたのです。

今回のデータは1度のみの検査での判断なので、
今後観察期間をおいて、経時的な変化を観察したり、
違う地域や人種で同様の検証を行うなど、
今後更なる研究が積み重ねられることで、
これまで謎の多かった、
肥満のないメタボの謎が解き明かされることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コーヒーの生命予後への効果(2019年日本のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今週の木曜日(18日)は臨時で休診となります。
受診予定の方はご注意下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーの健康効果日本のメタ解析.jpg
2019年のPreventive Medicine誌に掲載された、
コーヒーの健康効果についての論文です。

コーヒーはカフェインを含み、
常用性のある飲み物ですが、
その一方で抗酸化作用のある生理活性物質を、
多く含むという報告などもあり、
また最近ではコーヒーを飲む人の方が、
総死亡や心血管疾患のリスクが低下する、
という報告が複数存在しています。

その代表的なものは、
2012年のNew England…誌の論文で、
以前記事でご紹介したことがあります。

40万人以上の健康調査において、
コーヒーを沢山飲む人の方が、
1割程度総死亡のリスクが低下した、
という結果になっています。

日本の疫学データも2015年に論文化されていて、
例の有名なJPHC研究の解析ですが、
矢張り総死亡のリスクが1から2割低下した、
とする結果になっています。

こうした知見からは、
コーヒーには何らかの健康保持作用が、
あるのではないかということが示唆されますが、
日本においても複数の疫学データが存在していて、
その結果は総死亡などにおいてはほぼ一致しているものの、
個別の死亡リスクにおいては違いもあり、
また生命予後に良い影響を与えるコーヒーの上限量についても、
1日6杯以上でもリスクは低下するというものがある一方で、
5杯以上ではむしろリスク増加に繋がる、
というような報告もあって一定していません。

今回の研究は日本で行われた主な8つのコホート研究のデータを、
まとめて解析したもので、
男性144750人、女性168631人を、17年という長期間観察するという、
日本の疫学データとしては非常に大規模なものです。

その結果、1日5杯までのコーヒーの摂取は、
男女共に総死亡のリスクを低下させる効果が認められ、
その効果は5杯以上の摂取では減弱していました。

男女別の解析においては、
癌による死亡のリスクとコーヒーの摂取量との間には、
明確な関連は認められませんでした。
心臓病や脳卒中、呼吸器疾患などによる死亡リスクについては、
男性においては1日5杯程度までリスクの低下が認められましたが、
女性では1日1から2杯のコーヒーで心臓疾患による死亡リスクは低下したものの、
1日5杯以上では逆にリスクの増加が認められました。

このように、
トータルでは多くの病気による死亡のリスクは、
コーヒーを1日1杯は飲まない人と比較すると、
1杯以上飲む人で低下し、
概ね1日3から4杯でリスク低下は最も大きくなりますが、
5杯を超えると低下は明瞭ではなくなるようです。

これは日本人のみの大規模データである点に意義があり、
コーヒーは1日3から4杯くらいまでが適量という、
これまでの結果を支持するものだと言って良いと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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SGLT2阻害剤による体重組成の変化 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤と体重組成の変化.jpg
2019年のBMC Cardiovascular Diabetology誌に掲載された、
体重減少効果のある糖尿病治療薬の、
体組成への影響を検証した論文です。

2型糖尿病の治療において、
最近注目を集めている新薬が、
SGLT2阻害剤です。

この薬は腎臓の近位尿細管において、
ブドウ糖の再吸収を阻害する薬で、
要するにブドウ糖の尿からの排泄を増加させる薬です。

この薬を使用すると、
通常より大量の尿が出て、
それと共にブドウ糖が体外に排泄されます。

これまでの糖尿病の治療薬は、
その多くがインスリンの分泌を刺激したり、
ブドウ糖の吸収を抑えるような薬でしたから、
それとは全く異なるメカニズムを持っているのです。

確かに余分な糖が尿から排泄されれば、
血糖値は下がると思いますが、
それは2型糖尿病の原因とは別物で、
脱水や尿路感染の原因にもなりますから、
あまり本質的な治療ではないようにも思います。

しかし、最近この薬の使用により、
心血管疾患の発症リスクや総死亡のリスクが有意に低下した、
というデータが発表されて注目を集めました。
こうした効果が認められている糖尿病の治療薬は、
これまでに殆ど存在していなかったからです。

この薬でもう1つ注目されるのは体重の減少効果があることです。

SGLT2阻害剤は利尿剤に近い働きをする薬ですから、
体液量の減少により体重が減ってもおかしくはありません。
心不全傾向のある人であれば、
体液量の減少は心不全の悪化を予防する効果が期待されますから、
それが心疾患の予後の改善に結び付いている、
という考え方も出来そうです。

ただ、もしそれだけのことであれば、
利尿剤と変わりはないということになります。

実際のところはどうなのでしょうか?

今回のドイツにおける研究では、
27名の2型糖尿病の患者さんにSGLT2阻害剤を6ヶ月間使用し、
それをサイアザイド系利尿剤を服用している14名と、
健康なボランティア16名と比較して、
その体重や細胞外液量、体組成の変化を検証しています。

例数は少ないのですが、
目の付けどころが良い研究です。

SGLT2阻害剤使用群では、
6ヶ月の使用により、
HbA1cは平均で0.8%(IQR 2.3;0.4)低下し、
体重は2.6キロ(IQR 1.5;9.3)、BMIも0.9kg/㎡(IQR 0.4; 3.3)、
それぞれ有意に低下していました。

体組成の変化を解析すると、
体重に伴い低下していたのは脂肪組織の重量のみで、
筋肉量には有意な変化はありませんでした。

細胞外液量は投与3日目には有意に低下しましたが、
投与3ヶ月以降においては投与前の水準に戻っていました。
SGLT2阻害剤使用開始1ヶ月において、
体液を維持するホルモンであるレニン活性は、
投与前の2.1倍(IQR 0.5; 3.6)に増加しましたが、
投与3ヶ月以降では元に戻っていました。

SGLT2阻害剤を半年投与した時点では、
その細胞外液量には健康ボランティアや利尿剤使用群との間で、
有意な違いはありませんでした。

このように、
SGLT2阻害剤を使用することにより、
その使用早期(3日から1ヶ月程度)においては、
脱水状態が生じてそれに伴いレニン活性は上昇しています。
しかし、その影響は概ね使用3ヶ月後には元に戻り、
細胞外液量の減少は起こらなくなります。
持続的な体重減少は脂肪の減少によっていて、
細胞外液量とは長期的には無関係で、
筋肉量の低下も伴っていません。

これは少数例の検証で、
6ヶ月という期間に限った結果に過ぎませんが、
当初想定されたような脱水による体重減少ではなく、
長期的には脂肪重量の減少による体重低下が見られる、
という今回の結果は大変興味深く、
今後より多数例で、
期間も長く観察した研究で、
この知見が確認されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ワーグナー「さまよえるオランダ人」(東京・春・音楽祭2019) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。

さまよえるオランダ人.jpg
東京春音楽祭のワーグナーシリーズとして、
今回は「さまよえるオランダ人」が演奏会形式で上演されました。

この作品はワーグナーの初期作で、
彼のキャリアの中では、
初めてその後のワーグナーのオペラのスタイルが、
確立された作品とされています。

実際現行上演されるワーグナー作品は、
「さまよえるオランダ人」以降のものが殆どで、
それ以前の作品も数作残っていますが、
僕も生で聴いたことはありません。

また、この「さまよえるオランダ人」自体も、
ワーグナー作品としてはそれほど上演頻度は多くなく、
僕は生で聴くのは新国立劇場での上演以来2回目です。

不死の呪いを掛けられたオランダ人の船長が、
夢見がちな少女の自己犠牲によって救済されるという物語で、
その後何度もリフレインされるワーグナー生涯のテーマが、
最もシンプルな形で表現されています。

構成も比較的シンプルで、
上演時間も他のワーグナー作品と比較すると短いので、
ワーグナー作品としては比較的聴きやすい部類です。

ただ、指輪4部作のとてつもない仰々しさや、
「タンホイザー」後半の深刻さのつるべ打ちのような重厚さ、
また「トリスタンとイゾルデ」のいつ果てるともなく続く、
二重唱の長大さなどと比較すると、
少し淡泊で物足りなさを感じることも確かです。

今回の上演は演奏会形式で、
場面のイメージが浮かびにくいというきらいはあるのですが、
キャストはブリン・ターフェル、リカルダ・メルビート、
ペーター・ザイフェルトと一流のワーグナー歌いが顔を揃え、
新進気鋭のドイツ人指揮者に、
オケはNHK交響楽団という豪華版で、
ワーグナーの音楽の醍醐味を、
心ゆくまで味わうことが出来ました。

現在はその充実度において、
1年に1回の東京・春・音楽祭が、
オペラ好きとしては一番の楽しみであることは間違いがなく、
今後も良い演奏を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ハロウィン」(2018年製作版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも中村医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ハロウィン.jpg
1978年に製作され日本では1979年に公開された、
ジョン・カーペンター監督の出世作が、
40年の時を経て新作の続編として製作され今公開されています。

製作総指揮はカーペンター監督自身で、
監督は違いますが正調の続編なのです。

オリジナルは日本での封切りの時に観ています。
殺人鬼がずっとマスクを着けていて、
一言も喋らず、最後まで正体すら不明のままです。
ホラーですがショッカー演出のみで、
血が出るような描写もほぼ皆無という斬新な作品でしたが、
当時はもっとひねった筋立てが好きだったので、
正直物足りなく感じました。

その後すぐに続編の「ハロウィン2」が作られ、
「スターウォーズ帝国の逆襲」の影響か、
主人公と殺人鬼に血のつながりがある、
という設定が付加されました。
せっかく「不条理で意味不明の恐怖」という斬新さが、
それによって台無しになったのですが、
この映画はショッカー演出の技巧が冴えていて、
当時として脅かし演出の頂点を極めた、
といって過言ではないホラーでした。
その後「ハロウィン3」が作られましたが、
こちらは前2作の設定とは無関係で、
ハロウィンに起こる奇怪な事件、という趣向のみを引き継いだ、
当時としてはニューウェイブのホラー映画でした。
意味不明なところが多いのですが、
僕は割と気に入っています。
その後リメイク的な映画や他のホラーとのコラボなどがあり、
かなり時間をおいて今回に至ります。

今回の作品は終身刑のオリジナルの殺人鬼が、
40年後のハロウィンの夜に再び脱走して…
というお話で正調の続編となっていて、
主役はオリジナルで殺人鬼と対決した、
ジェイミー・リー・カーティスです。

これはホラー映画というジャンルものとしては、
まずまず良く出来た1本で、
オリジナルの1作目と結局ほぼ同じ話なので、
その点は芸がないのですが、
それを割り切って観れば、
なかなか楽しめる仕上がりになっています。

オリジナルより残酷シーンは少し付加されていますが、
それほど大したことはありません。
脅かしの演出もさほど新しいということはないのですが、
多彩な演出を用意していて、
同じ手を2度使わないようにしているのは良いと思いました。
中では据え置きキャメラのワンカットで、
殺人鬼が窓の外からターゲットを見つけて室内に侵入し、
首に刃物を突き刺して殺害して逃走するまでをそのまま一気に描く、
という趣向が気に入っています。

ラストは怪物は一応退治されるものの、
本当に死んだのかは明らかでない上に、
意味ありげに少女に握られた包丁がアップになるラストなので、
どうやら更に続編も作る気は満々であるようです。

ホラーの好きな方であれば、
そこそこのお薦めです。
こういう映画を大画面で観られる機会はそう多くはないので、
ある意味貴重ではあるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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乳児期のライノウイルス感染と乳幼児喘息との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ライノウイルスと喘息との関係.jpg
JAMA Pediatrics誌に掲載された、
乳児期の風邪ウイルスによる気管支炎が、
その後の乳幼児喘息にどう影響するかを検証した論文です。

小さなお子さんが風邪を引いてゼーゼーしやすいのは、
まだ肺の機能が十分に完成していない乳児期においては、
そう珍しくはないことです。

生後1歳未満の乳児期に、
風邪ウイルスによる細気管支炎を起こすと、
その後3歳くらいまでの時期に、
ゼーゼーの症状が起こりやすいことも知られています。

これはそれ以降の気管支喘息とは異なる病態と考えられていて、
日本においては乳幼児喘息という用語が使われています。
小児喘息に移行することもありますが、
成長に伴い自然と改善することも多いのです。

風邪を起こすウイルスの代表はライノウイルスです。
この一本鎖RNAウイルスには170種類以上の血清型があることが知られていて、
それはA、B、C群という3つの遺伝子群に分類されることが一般的です。

このうちこれまでの報告により、
乳幼児喘鳴との関連が最も高いとされているのがC群ライノウイルスです。

今回の研究はアメリカの複数施設において、
RSウイルス、各種のライノウイルスによる細気管支炎を起こして入院した、
1歳未満のお子さん716名の経過を生後3歳まで観察し、
原因ウイルスの種類と乳幼児喘息の発症リスクとの関連を比較検証しています。

その結果、
RSウイルスの感染と比較して、
C群ライノウイルスのよる感染は、
3歳時の乳幼児喘息のリスクが1.58倍(95%CI: 1.08 から2.32)有意に高く、
更に特異的IgEの上昇で診断したアレルギー素因を伴っていると、
そのリスクは3.03倍(95%CI:1.20から7.61)とより高くなっていました。
4歳の時点で小児喘息と診断されるリスクも、
4.06倍(95%CI: 1.17 から14.1)と、
より高くなっていることも確認されました。

このように、
他の風邪ウイルスと比較してC群ライノウイルスによる感染の、
その後の乳幼児喘息に与える影響は明らかに大きく、
今後C群ライノウイルスに特化した予防法の開発を含めて、
有効な対処法の開発が進むことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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5α還元酵素阻害剤と2型糖尿病リスク(台湾の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
5α還元酵素阻害剤と糖尿病.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
前立腺肥大症の治療薬と2型糖尿病との関連についての論文です。

5α還元酵素は、
主に男性ホルモンのテストステロンを、
より作用の強い代謝産物である、
ジヒドロテストステロンに代謝する酵素で、
1型と2型の2つの種類があります。

このうち1型は全身の皮脂腺などに分布し、
2型は前頭部の皮膚や前立腺などに限局して発現している、
とされています。

この酵素をブロックすることにより、
局所の男性ホルモンの作用が減弱します。

その作用を利用した薬が、
5α還元酵素阻害剤です。

何故男性ホルモンの作用を、
弱めるような薬のニーズがあるのかと言えば、
その目的は主に2つです。
その1つは男性ホルモン反応性の組織である前立腺が、
病的に肥大する前立腺肥大症の治療で、
もう1つは男性型の脱毛症の治療です。

現在日本で使用されている5α還元酵素阻害剤には、
フィナステリドとデュタステリドの2種類があります。
このうちフィナステリドは、
1日最大で1ミリグラムという低用量で、
男性型脱毛症の治療薬として使用されています。
商品名はプロペシアなどです。
このフィナステリドは酵素の2型のみの阻害剤です。
一方のデュタステリドは、
より効果が強く1型と2型両方の酵素の阻害剤で、
1日0.5ミリグラムで前立腺肥大症の治療薬として使用され、
今年になって男性型脱毛症にも適応が拡大されました。
前立腺肥大症の治療薬としての商品名はアボルブで、
脱毛症の治療薬としてはザガーロです。

さて、
テストステロンのみの代謝の阻害剤として、
5α還元酵素阻害剤は説明されることが多いのですが、
実はこの酵素は肝臓や脂肪細胞において、
ステロイドホルモンであるコルチゾールを、
作用の弱いジヒドロコルチゾールに、
分解する働きも併せ持っています。
より正確には1型の5α還元酵素は脂肪細胞と肝細胞の両方で発現していて、
2型の還元酵素は肝細胞でのみ発現しています。

仮にこの作用が肝臓と脂肪細胞でブロックされると、
コルチゾールは代謝されずに組織に留まり、
一種のステロイドの過剰状態が生じます。

それは果たしてどのような影響を、
人間の身体に与えるのでしょうか?

以前ご紹介したことのある健康ボランティアによる研究では、
12人の健康な成人男性のボランティアに、
デュタステリド1日0.5ミリグラム、
もしくはフィナステリド1日5ミリグラムを、
3週間継続的に使用して、
その前後で人工膵臓などの詳細な検査を行ない、
肝臓や脂肪細胞への影響を検証しています。

デュタステリドの使用量は、
日本で前立腺肥大症に使用されている量と同じで、
フィナステリドの使用量は、
海外での前立腺肥大症への使用量と同じです。

その結果、
フィナステリドの使用では、
代謝系への影響は軽微に留まりましたが、
デュタステリドを使用すると、
肝細胞のインスリン抵抗性が増加し、
インスリンの存在下において、
肝細胞はより多くの脂肪を蓄積しました。
そして、脂肪細胞においても脂肪の代謝が低下し、
より身体が脂肪を溜め込む方向に、
シフトしていることが確認されました。

つまり、1型の5α還元酵素が阻害されることにより、
肝臓でのインスリン抵抗性が増すとともに、
脂肪細胞においての脂肪の蓄積が促進され、
メタボの状態が進行する可能性が示唆されたのです。
このメカニズムは、
非アルコール性脂肪肝炎の発症にも、
関連している可能性が高いと考えられます。

それでは、実際に前立腺肥大症に対してこの薬を使用することで、
インスリン抵抗性が増して2型糖尿病が増加する、
というような影響が起こるのでしょうか?

今回の研究は、
イギリスと台湾のプライマリケアのデータベースを活用して、
前立腺肥大症にタムスロシン(ハルナール)
というα遮断剤を使用した場合と比較して、
デュタステリドもしくはフィナステリドの使用が、
その後の2型糖尿病の発症に与える影響を比較検証しています。

その結果、11年を超える長期の経過観察において、
イギリスと台湾のいずれの地域においても、
タムスロシンと比較して、
デュタステリドもしくはフィナステリドの使用は、
2型糖尿病の発症リスクを30%程度増加させていました。

ただ、ボランティアでの実験とは異なり、
デュタステリドとフィナステリドの使用に差は認められませんでした。

現状はまだ可能性のレベルに過ぎませんが、
特に糖尿病が既にあったり、
そのリスクが高いと想定される患者さんの場合、
5α還元酵素阻害剤の使用時には、
血糖悪化の可能性を想定して、
慎重な観察が必要と考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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