So-net無料ブログ作成

直接作用型経口抗凝固剤の癌の治療に伴う静脈血栓塞栓症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
がんの血栓症に対するアピキサバンの効果.jpg
2019年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
経口の抗凝固剤を癌の患者さんの血栓症の予防に使用した、
臨床試験の結果についての論文です。

これは掲載号の巻頭記事ですが、
同じ号にもう一遍、別の薬剤を使用した、
同様の臨床試験の結果が掲載されています。

癌には多くの合併症がありますが、
静脈に血栓が出来てそれが閉塞や塞栓症を引き起こす、
静脈血栓塞栓症もその1つです。

特に抗癌剤による化学療法の施行時には、
薬剤の性質や癌組織の炎症や壊死などの変化により、
そのリスクはより高まります。

通常静脈血栓塞栓症の予防には抗凝固剤が有効です。
しかし、癌の治療中のケースでは、
通常より出血などの合併症も起こりやすいので、
その使用にはより慎重な判断が必要です。

これまでに低分子ヘパリンの注射による予防効果の臨床試験が、
介入試験という信頼性の高い方法で行われていますが、
その結果は血栓塞栓症を50%程度抑制する効果が確認されましたが、
対象者の血栓塞栓症のリスクはそれほど高くなかったので、
その差は小さく、
治療を推奨するという結果には至りませんでした。

近年直接作用型抗凝固剤という、
ワルファリンに匹敵する作用を持ち、
ワルファリンのような相互作用の少ない薬が開発され、
静脈血栓塞栓症の予防においても、
有効性が確認されています。

そこで今回の研究では、
アピキサバン(エリキュース)という経口抗凝固剤を使用し、
静脈血栓塞栓症のリスクの高い科学療法施行予定の患者を対象として、
その有効性を検証しています。

リスクの高い患者の振り分けには、
Khoranaスコアという基準が使われています。
それがこちらです。
がんの出血スコア.jpg
これはその元論文にある表です。

化学療法による血栓塞栓症の発症リスクとして、
癌の部位(胃と膵臓が高リスクで2点、他は1点)、
化学療法施行前の血小板が35万以上であると1点、
ヘモグロビンが10を切るか造血因子製剤を使用していると1点、
白血球が11000以上だと1点、
BMIが35以上の肥満があると1点、
のようにデータを数値化して、
加算した点数が1から2点を中等度リスク、3点以上を高リスクとしています。

今回の研究ではこの指標が2点以上を対象者の条件としています。
アピキサバンは1日5mgという比較的低用量が使用されています。

対象者は574名で、
このうち563名が最終的な解析対象となっています。
静脈血栓塞栓症は、
アピキサバン群288名中4.2%に当たる12名と、
偽薬群275名中10.2%に当たる28名に発症していました。
このことからアピキサバンの使用により、
静脈血栓塞栓症は59%(95%CI: 0.26から0.65)
有意に予防されていました。(intention-to-treat解析)
一方で重篤な出血系の合併症は、
アピキサバン群の3.5%に当たる10名と、
偽薬群の1.8%に当たる5名に発症していました。

このように比較的低用量のアピキサバンを使用することにより、
静脈血栓塞栓症のリスクは6割近く低下し、
その有効性は確認されました。
ただ、想定されたように、出血系の合併症も、
使用群で多く発生しています。

この論文が載った紙面にはもう1篇、
リバーロキサバンという別の経口抗凝固剤を使用した試験結果が掲載され、
統計処理にもよりますが、
矢張り同程度の静脈血栓塞栓症の予防効果が確認されています。

両者を併せて解析すると、
相対リスクの差で42%程度、
絶対リスクで2.5%程度の有効性が認められ、
40人にこの薬を使用することで、
1人の静脈血栓塞栓症が予防される、
という程度の効果であると推測されました。

この結果は一応の治療適応基準を満たしたと言って良いものですが、
リスクスコアの精度の問題や、
癌の性質や部位、使用する抗癌剤によっても、
そのリスクはかなりの幅で変動することが想定されるので、
今後更なる検証により、
本当に必要性の高い患者さんの絞り込みが、
重要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(7)  コメント(0)