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局所的感染症情報(2019年1月後半) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日は久しぶりに局所的感染症情報です。

クリニックのある品川周辺でも、
インフルエンザの感染が急増しています。

この傾向は年明けすぐから始まり、
1月9日から12日くらいの時期においては、
38.5度以上の発熱で受診された患者さんの、
ほぼ全例がインフルエンザA型の感染という状況になっています。

先週15日以降くらいになると、
同じような発熱と咽頭所見があり、
ほぼインフルエンザに間違いがないと、
臨床的に判断したケースにおいても、
迅速診断は陰性のケースが時々見られるようになっています。

15日の外来終了の時点で、
1月5日以降当クリニックで診断したA型インフルエンザの患者さんは、
233名に上っています。
これはここ3年においては最も多い数字です。
ただ、勿論全例で検査をしているという訳ではありませんし、
迅速検査は当てにならないケースもあることは承知しています。
これはあくまでトータルな数字ではなく、
ほぼ間違いないと想定されるケースのみの集計です。

流行初期においては、
ほぼ全例で症状は一致していて、
急な発熱と寒気、関節痛が見られ、
その前日くらいから咳き込みが見られるのが特徴です。
鼻水は通常ないか軽微です。
発熱当日においては、吐き気が見られることが多く、
お子さんは嘔吐することがありますが、
胃腸炎症状は伴っておらず、
吐き気自体は一時的です。

咽頭後壁のリンパ濾胞の所見で、
インフルエンザの感染が鑑別可能という報告が幾つかありますが、
僕の経験的な印象としては、
あまり当てにならないというのが実感です。

今年は肺炎など重症の事例が多いと、
都内で救急をされている先生からお聞きしましたが、
現状は幸いクリニックでそうした患者さんには遭遇していません。

これは例年のことですが、
ある程度流行が進んだ時期においては、
症状はかなり幅にあるものとなり、
典型的でないものが多く混じるようになる、
という傾向が見られます。
典型的な症状経過であっても、
迅速診断で陰性のケースもあり、
微熱やだるさ、下痢など非典型的な症状経過であっても、
検査が陽性となることもあります。

勿論全ての事例に迅速診断をするべきでない、
という意見のあることは承知していますし、
症例に合わせた個別の判断をしているつもりです。
ただ、臨床診断や咽頭所見よりは、
迅速診断の方が当てになるというようには思っています。
迅速診断が普及した時期においては、
インフルエンザの症状には思ったより多様性がある、
という意見や、
咽頭所見などの臨床所見は当てにはならない、
という意見を専門の先生の多くが表明をされていたと記憶していますが、
最近では迅速診断の乱用を戒めるという意味もあって、
迅速診断より咽頭所見や臨床症状を重視する、
というご意見の方が多いようです。

末端の臨床医としては悩むところはあります。

さて、今のA型インフルエンザ流行の主体は、
A(H1N1)pdm09、
つまり2009年に新型と言われたタイプによるもののようです。

こちらをご覧下さい。
インフルエンザ流行状況.png
これは東京都の感染症情報から引用したものですが、
昨年末辺りから、
流行の主体がA(H1N1)pdm09に移っていることが分かります。
この時点では2割はA(H3N2)、所謂A香港型ですが、
現時点では9割以上はH1N1になっていると思われます。

このタイプのウイルスには、
非常にワクチンの有効性が高く、
そのためここ数年目立った流行がなく、
むしろ変異したA香港型が流行の主体であったのですが、
今シーズンに関してはその傾向が逆転していて、
ワクチン接種者にも感染者が多いことから考えると、
まだ報告はありませんが、
H1N1のウイルスに何らかの変異が生じた可能性が、
高いのではないかと思います。

今週以降、
品川周辺では徐々に終息に向かうことが予測されますが、
まだまだ感染者は多い状況ですので、
皆さんも咳エチケットや手洗いには、
充分留意して生活をされるようにして下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「私は、マリア・カラス」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
マリア・カラス映画.jpg
伝説的ディーヴァ、マリア・カラスの伝記映画が、
今公開されています。

マリア・カラスは崇拝されている方も多いのですが、
来日したのは1974年ですから、勿論生では聴いていませんし、
録画や録音も最盛期の状態の良いものは、
殆どないのが実際です。

残っている録音はかなり状態の悪いもので、
昔の録音の通例で、
カラスの声は金属的なキンキン声のようにしか聞こえません。
晩年の復活リサイタルの映像は残っていますが、
楽譜は無視して、
誰でも出るような中音域を、
無意味に伸ばして拍手をもらったり、
トリルの部分をやたらに伸ばして拍手をもらう、
というような、
僕の感じるベテラン歌手の悪いリサイタルの典型で、
とても希代のプリマとは思えません。

ただ、録音では声質というのは、
本当の意味では分からないもので、
歌舞伎の6世歌右衛門丈なども、
生の舞台を観たのは一度だけですが、
その声質は録画で聞いたキンキン声とは、
まるで異なる趣のある美声でした。

従って、カラスの藝術の本質も、
生の声を聴いた人しか分からないというのが、
僕の個人的な意見で、
録音だけを聴いてカラスを崇拝するような人も、
多くいらっしゃるのですが、
「本当に分かるのかしら」と思うのが本音です。

さて、今回の映画は最新の技術を用いて、
過去の映像を修復して色を付け、
それに声を載せることで、
最盛期のカラスの舞台を、
部分的にせよ再現しているのが一番の見どころです。

確かに舞台に登場した瞬間などは、
実際にその場に立ち会っているように錯覚する感じがあります。

ただ、これは作り手の感覚と、
僕が個人的に観たいと感じるものとに乖離があって、
舞台で演技している姿の映像や音声は殆ど皆無で、
比較的長尺なのは、
「カルメン」のハバネラや「ノルマ」のファーストアリアを、
リサイタルで歌う姿なので、
「もっと本当の舞台で演じ歌う最盛期のカラスを観たい」
という僕の希望を叶えてくれるような映像ではありませんでした。

唯一「トスカ」の2幕のアリアは、
その部分だけの抜粋ですが実際の舞台の映像と音声が登場していて、
そこはなかなか堪能しました。
ただ、せめてスカルピオとのやり取りを、
繋げて欲しかったな、とは残念に思うところです。

映画でも「オペラ歌手は演技が重要」という意味のことを、
カラス自身が言っているのですが、
それを見せてくれるような映像が、
登場しないのが物足りないのです。

映画の内容自体は、
主にテレビのインタビューと、
実際のニュースなどの映像をつなぎ合せ、
そこにカラスの回想や手紙の文章をナレーションで流すだけのもので、
格別目新しい情報はありませんし、
カラスの秘められた実像、というようなものは、
ほぼ何もなかったように感じました。

そんな訳で興味深い映像はあり、
オペラファンとしては楽しめる部分はありましたが、
トータルには「看板に偽りあり」
という感じの平凡な作品であったように思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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東野圭吾「沈黙のパレード」(ネタバレ注意) [ミステリー]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
沈黙のパレード.jpg
東野圭吾さんのガリレオシリーズの新作長編で、
書き下ろしで昨年刊行されると、
主なミステリーのベストテンで、
1位を獲得するなど抜群の評価を得ている作品です。

ガリレオのシリーズは東野さんの作品の中では、
新本格に近いミステリーのスタイルで、
元々森博嗣さんの作品をパクったような感じがあり、
当初は違和感を感じたのですが、
シリーズ初の長編である「容疑者Xの献身」が直木賞を取り、
その後は独立した特徴も生まれて、
東野さんの本格ミステリー畑の作品としては、
代表的なシリーズとなっています。
その作品のほぼ全てが、
福山雅治さんの主演で映像化されていて、
福山さんが断らなければ、
この新作も同じように映画化される可能性が高いと思います。

短編や中編には、
オヤオヤと感じるようなものも多いのですが、
これまでに刊行された長編は、
「容疑者Xの献身」「聖女の救済」「真夏の方程式」と、
いずれも力の入った優れたミステリーになっていて、
東野さんの多くの作品の中でも読み応えがありますし、
東野さん自身も力を入れて書いていることが分かります。

今回の作品も、如何にもガリレオシリーズという感じで、
舞台を用意して主人公の名探偵をその場に居合わせ、
その目の前で不可解な事件を起こすという構成は、
クリスティーやカーの黄金時代の本格ミステリーの構成そのものです。

クリスティーやカー、
スラデックなどの古典ミステリーのトリックを、
一部明かしているようなところがあるので、
「オリエント急行殺人事件」や「ユダの窓」、
「見えないグリーン」については、
是非原典を読んでから、
この作品を読まれることをお薦めします。

つまり、割合とミステリーマニア向けに、
書いているようなところのある作品なのです。

またガリレオシリーズの旧作や新参者シリーズの作品も、
先に読んでおいた方が良いと思います。
東野さんは結構過去作のトリックや設定を、
流用して再構成することが多いからです。

以下勿論ネタバレはしませんが、
内容を類推出来るような表現がありますので、
先入観なくこの作品をお読みになりたい方は、
本作読了後に以下はお読み下さい。

よろしいでしょうか。

それでは続けます。

リーダビリティもクオリティも高いので、
読んでガッカリするような作品ではありません。

ただ、個人的には過去作の焼き直し的な趣向が多く、
目新しさはないな、というのが正直なところです。
全体の構成は「真夏の方程式」に非常に良く似ていて、
主人公の関わり方もそっくりなのですが、
比較すると「真夏の方程式」の方が、
その切なさや余韻の面で、
優れていたように思います。
最後のひねりは、
ちょっとわざとらしすぎるという気がします。
それに最終的な解決は、
ほぼ想像に近い推測で、
何ら根拠はありませんよね。

犯人でありながら司法で裁かれない人物の設定には、
「検察側の罪人」の影響が、
かなりあるのではないかと感じました。

事件自体も全員のアリバイが、
それほどしっかり確認されるという感じではないので、
事件自体のワクワク感も乏しいように思いました。
パレードの活用のされ方も、
意外に詰まらないですよね。
もう一工夫欲しかったと思います。
計画犯罪が途中でアクシデントがあることで、
より不可解な事件になるというのは、
クイーンのスタイルで、
日本では有栖川有栖さんなどが得意とするところですが、
こういうのは東野さんはあまり上手ではないと思います。

ある人物の設定などは、
切なくて東野さん好みなのですが、
これもある旧作の焼き直しで、
旧作の方がインパクトは大きかったと思いますし、
過去作を読んでいると、
何となく構造は分かってしまって、
それほど驚けないのもつらいところです。

そんな訳で東野さんの本格ミステリーとしては、
高いレベルの水準作という感じで、
あまり飛び抜けた印象や、
独自性は感じにくいように思いました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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地中海ダイエットの健康効果(2018年アメリカの検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
地中海ダイエットの効果.jpg
2018年のJAMA Network Open誌に掲載された、
地中海ダイエットの健康効果についての論文です。

地中海ダイエット(Mediterranean Diet)というのは、
ギリシャなど地中海地方の伝統的な食事パターンのことで、
その内容は必ずしも報告や研究で一致している訳ではありませんが、
ナッツやオリーブオイルを多く摂り、
野菜や果物、魚を多く摂り、
赤身肉な加工肉はあまり摂らない、
というような特徴は一定しています。

この地中海ダイエットに、
心血管疾患を予防する効果があり、
生命予後にも良い影響を与えるということは、
多くの精度の高い臨床試験や疫学データにおいて、
ほぼ実証されている事実です。

ただ、実際に地中海ダイエットの何が、
こうした健康への影響の原因になっているのかについては、
これまであまり実証的なデータがありませんでした。

今回の研究では、
アメリカにおいて一般住民(女性)を対象とした大規模な疫学データを活用して、
地中海ダイエットの心血管疾患予防効果を再検証すると共に、
炎症マーカーや血圧、インスリン抵抗性などの因子と、
その予防効果との関連を検証しています。

トータルで25994名の女性を最長で12年間経過観察し、
地中海ダイエットはどの程度のレベルで実施しているかによって、
低実践度と中実践度、そして高実践度に分けて比較しています。

地中海ダイエットの定義は様々ですが、
今回の研究に関しては、
野菜(芋類を除く)、果物、ナッツ、全粒穀物、豆類を多く摂取していること、
不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸より比率的に多いこと、
1日5から15グラム程度のアルコールを摂取していること、
赤身肉や加工肉の摂取量が少ないこと、
以上がポイントとして計算されています。

その結果、
地中海ダイエット低実践群と比較して、
中実践群では23%(95%CI: 0.67から0.90)、
高実践群では28%(95%CI:0.61から0.86)、
心血管疾患リスクが有意に低下していました。

この地中海ダイエットによる心血管疾患の予防効果と、
各種の心血管疾患と関連する因子の変化との関連をみたところ、
最も関連が認められたのは炎症反応で、
その低下によりダイエットの効果の29.2%が説明可能でした。
次に血糖やインスリン抵抗性との関連が大きく、
27.9%が説明可能でした。

このように、
地中海ダイエットに心血管疾患の予防効果があることは、
おそらく間違いがなく、
それはインスリン抵抗性や炎症反応の低下など、
通常指摘されている心血管疾患のリスクを、
低下させることによっている可能性が高いと想定されました。

ただ、このメカニズムの部分に関しては、
まだ多分に仮説の域を出ないもので、
どの成分が重要であるのかを含めて、
今後の検証が必要なように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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脳卒中の生涯リスクの地域差 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脳卒中の生涯発症リスク.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
世界規模での脳卒中の地域差を分析した論文です。

脳卒中には地域差があるという話は以前からありますが、
実際にそれが信頼のおける大規模データによって、
検証された事例はあまりありません。

今回のデータは世界規模の大規模な疫学データを活用したものですが、
世界規模で25歳以降の脳卒中の生涯リスクが推計されています。

それによると、
2016年における世界全体での脳卒中の生涯リスク(25歳以降)は、
24.9%(95%CI: 23.5 から26.2)でした。
男女別では男性では24.7%(95%CI: 23.3から26.0)、
女性では25.1%(95%CI: 23.7から26.5)と明らかな性差は認められません。

脳卒中の生涯リスクが最も高かったは、
中国などの東アジアで38.8%、
次がリトアニアなどの中央ヨーロッパで31.7%、
それに続くのがウクライナなどの東ヨーロッパで31.6%でした。

一方で脳卒中の生涯リスクが低かったのは、
サハラ砂漠より南のアフリカ大陸で11.8%でした。

それを図示したものがこちらになります。
脳卒中の生涯発症リスクの図.jpg
暖色で色が濃いほどリスクが高い地域、
ということになります。

ただ、この図では日本は比較的リスクの低い地域となっていますが、
特に出血系梗塞に関しては、
日本の発症リスクは高いという常識が一方ではあり、
この結果は日本に関しては、
やや疑問を感じないでもありません。

いずれにしてもこのような世界規模の検証は非常に貴重で、
今後の臨床研究などにおいても、
大きな影響を与えるものではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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糖尿病性網膜症に対するスタチン治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンと糖尿病性網膜症.jpg
2019年のJAMA Ophthalmology誌に掲載された、
スタチン治療が糖尿病性網膜症に与える影響についての論文です。

2型糖尿病の治療は新薬の開発などもあり、
日々進歩をしていますが、
それでも全身の血管に影響を与える合併症は、
血糖コントロールが安定していても、
完全には予防出来ないのが実際です。

糖尿病性網膜症は小血管合併症の1つで、
網膜の血管に出血などの変化が起こり、
進行すれば失明のリスクも高い深刻な合併症です。

ただ、その予防については、
血糖やコレステロール、血圧を正常に保つ、
ということ以外には、
現状決め手がないのが実際です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
コレステロール降下作用のみならず、
抗炎症作用なども併せ持っていて、
動脈硬化の進行予防薬として、
その評価は確立している薬剤です。

ただ、血糖を上昇させるような作用も持っているため、
糖尿病の患者さんへの使用については、
その適応について色々な見解があります。

今回の研究は台湾のもので、
年齢などをマッチングさせた、
スタチンを使用している2型糖尿病で脂質異常症の患者さん18947名を、
スタチンは未使用の18947名と比較して、
中央値で7.6年の経過観察を行い、
糖尿病性網膜症の進行を比較検証しています。

その結果、
観察期間中にスタチン使用群の2004名と、
未使用群の2269名が糖尿病性網膜症を新規発症しています。
スタチン使用群は未使用群と比較して、
糖尿病性網膜症全体のリスクを14%(95%CI: 0.81から0.91)、
増殖性網膜症のリスクを36%(95%CI: 0.58から0.70)、
硝子体出血のリスクを38%(95%Ci: 0.54から0.71)、
網膜剥離のリスクを39%(95%CI: 0.47から0.79)、
黄斑浮腫のリスクを40%(95%CI: 0.46から0.79)と、
それぞれ有意に低下させていました。

つまり、スタチンの使用により、
かなり明確に糖尿病性網膜症が予防されている、
という結果です。

ただ、この研究では、
血糖値やコレステロール値などの臨床検査値が、
殆ど検討されていないので、
そうした数値の影響が実際には大きい、
という可能性も否定は出来ません。

今後スタチンが本当に独立して網膜症を予防可能なのか、
より詳細かつ厳密な検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていいい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者肺炎の重症度の指標について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
プロカルシトニンと高齢者肺炎.jpg
2019年のBMC Geriatrics誌に掲載された、
高齢者の肺炎の重症度を予測する指標についての論文です。

肺炎というのは、
お子さんから高齢者まで罹患する、
重症の感染症を代表する病気の1つです。

その原因には肺炎球菌などによる細菌性以外に、
ウイルス性や真菌性、
アレルギー性のものなど多くがあり、
それぞれに対して治療は異なるので、
その鑑別診断が非常に重要です。

肺炎の診療において大切なことは、
その原因を含めて肺炎を早期に診断することと、
その重症度を適切に判断することです。

この重症度の判定において、
以前から補助的に使用されていたのが、
CRPと呼ばれる血液検査です。

CRPは炎症反応と呼ばれる検査の代表で、
インターロイキン6というサイトカインによって、
肝臓で産生される炎症物質です。

この数値は一般的に言えば、
身体の炎症が強いほど高くなるので、
肺炎の重症度の指標にもなると思われます。

ただ、このCRPは肺炎の原因の鑑別には、
殆ど役に立ちませんし、
肝機能が低下したような時には数値が上がりません。
肺炎のような炎症以外にも、
関節リウマチや動脈硬化などによっても、
数値が上昇するので、
その数値により肺炎の重症度を予測することは、
あまり信頼性の高い方法とは言えません。

近年CRPに変わる炎症の指標として、
プロカルシトニンという検査が注目されています。
この検査はカルシトニンというホルモンの前駆体ですが、
特に細菌感染症において組織で産生されることが分かっています。

この検査はCRPとは異なって、
細菌感染症で特異的に増加し、
特に敗血症など重篤な状態で増加することが、
臨床データによって明らかとなっています。

このため、肺炎の重症度の予測や、
それが細菌感染症であるかどうかの判断には、
CRPよりプロカルシトニンが適している、
という考え方が高まりました。

しかし…

たとえば2013年のBritish Medical Journaln誌に掲載された研究では、
肺炎の診断においてはプロカルシトニンは単独で有用な指標ではなく、
白血球とCRPの方が有効であった、という結果になっています。

何が最も肺炎の診断や予後予測に有用であるのか、
この問題はまだ解決には至っていないようです。

今回の研究は福岡大学筑紫病院の研究者によるものです。
肺炎の患者さんトータル667名を解析したもので、
そのうちの436名は75歳以上の高齢者でした。

多変量解析において、
血液のアルブミン濃度や体格の指標のBMI、
肺炎の臨床的重症度指標、などと比較して、
プロカルシトニンの高齢肺炎患者の30日後の生命予後に対する関与は、
より小さなものとなっていました。

年齢に関わらずプロカルシトニンの数値は、
30日後の死亡リスクに対する、
独立した予測因子とはなっていませんでした。

肺炎の重症度との関連で見ると、
重症の肺炎であるほどプロカルシトニンの数値は有意に高値で、
年齢に問わず一定の重症度の指標となっていましたが、
白血球数やCRPについては、
重症度と検査値との間に、
明らかな関連は認められませんでした。

サブ解析においては、
細菌性肺炎の代表である肺炎球菌による肺炎において、
その重症度が高いほどプロカルシトニン値も有意に増加していました。

このように、
高齢者においてもプロカルシトニンの数値と、
肺炎の重症度との間には一定の関連が認められましたが、
その一方で生命予後を予測する独立した指標とは、
認められませんでした。

現状は個々の数値を、
患者さんの状態や病状に合わせて、
幾つか組み合わせながら臨床的な判断をしてゆくしか、
ないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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第39回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。

今日はいつもの告知です。

こちらをご覧下さい。
第39回健康教室.jpg
次回の健康教室は、
1月19日(土)の午前10時から11時まで(時間は目安)、
いつも通りにクリニック2階の健康スクエアにて開催します。

今回のテーマは「最新版感染症と消毒の基礎知識」です。

今クリニック周辺では、
A型インフルエンザが大流行しています。

今品川周辺で咳込みがあって、
急な寒気と関節痛と共に高熱が出た場合には、
ほぼ100%A型インフルエンザの感染です。

嘔吐があるケースもあるのですが、
通常連続することはなく、
ひどい下痢にはなりません。

下痢と嘔吐が最初からある時には、
ノロウイルスなどのウイルス性腸炎の可能性が高くなります。

インフルエンザにおいても、
ノロウイルス腸炎においても、
問題となるのは家族などの二次感染です。

どちらの感染症も小さなお子さんや高齢者では、
重篤になることが多いのですが、
そうした方が感染するのは、
通常気を付けている外出の時ではなく、
家でのことが多いからです。

二次感染の予防で重要になるのは「消毒」です。

消毒薬は一般にも多くの種類が販売されていますが、
どれが良いのか判断するのは難しいのが実際です。

病原体によっても、
消毒薬の有効性には差があり、
その種類によって消毒法も変える必要があります。

今回は最新の知見を含めて、
感染予防のための有効な消毒法をまとめてみます。

今回もいつものように、
分かっていることと分かっていないこととを、
なるべく最新の知見を元に、
整理してお話したいと思っています。

ご参加は無料です。

参加希望の方は、
1月17日(木)18時までに、
メールか電話でお申し込み下さい。
ただ、電話は通常の診療時間のみの対応とさせて頂きます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「家(うち)へ帰ろう」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
うちへ帰ろう.jpg
アルゼンチンのパブロ・ソラルス監督による、
珍しいスペイン・アルゼンチン合作映画が今公開されています。

これは東京はシネスイッチ銀座の単館ロードショーなんですよね。
昔はハリウッド映画中心の名画座だった館で、
「ひまわり」や「ドクトル・ジバゴ」、
「時計仕掛けのオレンジ」などを観たことを覚えています。
古くて居心地がかなり悪いのと、
ネット予約が出来ないのが難点です。

今時、ロードショーでネット予約不可というのは、
相当面倒ですよね。

ただ、頑張って観た甲斐はありました。

12月公開ですが、
昨年のうちに観ていれば、
間違いなく2018年のベスト5に入れていました。

背景にホロコーストを絡めた、
ユダヤ人の老人が、
ポーランドを目指して1人旅をするロードムービーで、
大甘の話ですが、
これは抜群にラストがいいですよね。
客席では高齢者中心の観客が、
皆オイオイと泣いていました。

泣かせなんですけど、
ド直球で、
今の映画というより、
「自転車泥棒」や「禁じられた遊び」のような、
古典的なテイストなのです。

ラスト以外の部分も、とてもシンプルな演出で、
語り口が明晰で柔らかいので、
重くて暗い話ではあるのですが、
とても自然に観ることが出来ます。
また、主役の俳優さんがとても自然で魅力のある芝居をしていて、
老人映画に特有の臭みがなく、
鑑賞後の気分をとても爽やかにしているのです。
日本でこうした映画を作ると、
上手くいって山田洋次作品みたいになるでしょ。
あのわざとらしさや不自然さが嫌ですよね。
この映画のように、
リアルで自然なテイストには絶対ならないと思うのです。
この自然さが素晴らしいですよね。

この映画はラストが抜群ですが、
それ以外にもじんわり胸が熱くなるような、
印象的な場面が幾つもあります。
その全てがストレートな表現で小気味よいのです。
以前最初の「ロッキー」を観て、
映画ってこんな単純でいいんだ!
と目から鱗の思いがありましたが、
それに近い新鮮さを感じました。

単館ロードショーで観るのは面倒ですが、
映画ファンであれば観て損はない、
観終わった後で心が少し綺麗になった気分になる傑作です。

とてもお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「斬、」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
斬.jpg
鬼才塚本晋也監督の新作で時代劇の「斬、」を観て来ました。

幕末を舞台にした80分くらいの短い作品ですが、
画面は暗く全編異常な緊張感で、
救いの欠片もないダークな物語が展開され、
ラストは3人のメインキャストが、
泥と雨と血に塗れて殺し合いを演じるという、
観終わると気分がどん底になること必定の、
イヤな映画です。

何となく「鉄男」にも似たところのある物語なのですが、
活劇の面白みやビジュアルの遊びなど、
息の抜けるような要素はこの作品には微塵もないので、
娯楽性という面では天と地ほどの開きがあります。

暴力を憎み、平和を希求するような思想が、
根底にはあってこうした映画が作られたのだと理解は出来ますが、
それなら「たそがれ清兵衛」みたいな作品であっても、
充分その役目は果たしたと思うのです。
ここまで無残で残酷で暗い映画を、
作る必要はなかったのではないかと思いますし、
監督の心の中では、
こうまでしなければ暴力の本質を描けない、
という思いがあったのではないかとも思いますが、
仮にそうだとすれば、
それはかなり病的でそれ自体平和や非暴力とは、
距離のある思想ではないでしょうか。

作品は「七人の侍」の反歌のような構成を取っています。

貧しい村に暴力で強奪する夜盗の集団がやってくるのですが、
官兵衛を彷彿とさせる坊主頭の剣豪は、
夜盗の多くを斬り殺してしまい、
復讐に再来した夜盗の残党によって、
村人は更に殺されるなど悲惨な目に遭ってしまいます。
つまり、「七人の侍」の方法論では、
暴力の連鎖を生むだけで村人は幸福にはなれない、
と言っている訳です。

そんなにひねくれなくてもいいのに、
と思わなくはありませんが、
そこまではまあ発想を理解は出来ます。

しかし、それならそれに変わる方法論を、
映画は提示してくれるのかと思っていると、
平和主義者の侍は、
ただ苦悩するだけで何の助けにもならず、
結局仲間内で殺し合いをして終わり、
というような感じになってしまいます。
蒼井優の演じる女性も、
人間というより獣のように暴力的で淫乱なので、
なおさら意図が分からなくなってしまいます。

そんな訳で勘弁してよ、と言いたくなるような怪作で、
映画を見て気分が落ち込むのが大好き、
という変わった嗜好をお持ちの方以外には、
お薦めはしにくい作品のように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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