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2018年12月| 2019年01月 |- ブログトップ
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糖尿病性網膜症に対するスタチン治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンと糖尿病性網膜症.jpg
2019年のJAMA Ophthalmology誌に掲載された、
スタチン治療が糖尿病性網膜症に与える影響についての論文です。

2型糖尿病の治療は新薬の開発などもあり、
日々進歩をしていますが、
それでも全身の血管に影響を与える合併症は、
血糖コントロールが安定していても、
完全には予防出来ないのが実際です。

糖尿病性網膜症は小血管合併症の1つで、
網膜の血管に出血などの変化が起こり、
進行すれば失明のリスクも高い深刻な合併症です。

ただ、その予防については、
血糖やコレステロール、血圧を正常に保つ、
ということ以外には、
現状決め手がないのが実際です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
コレステロール降下作用のみならず、
抗炎症作用なども併せ持っていて、
動脈硬化の進行予防薬として、
その評価は確立している薬剤です。

ただ、血糖を上昇させるような作用も持っているため、
糖尿病の患者さんへの使用については、
その適応について色々な見解があります。

今回の研究は台湾のもので、
年齢などをマッチングさせた、
スタチンを使用している2型糖尿病で脂質異常症の患者さん18947名を、
スタチンは未使用の18947名と比較して、
中央値で7.6年の経過観察を行い、
糖尿病性網膜症の進行を比較検証しています。

その結果、
観察期間中にスタチン使用群の2004名と、
未使用群の2269名が糖尿病性網膜症を新規発症しています。
スタチン使用群は未使用群と比較して、
糖尿病性網膜症全体のリスクを14%(95%CI: 0.81から0.91)、
増殖性網膜症のリスクを36%(95%CI: 0.58から0.70)、
硝子体出血のリスクを38%(95%Ci: 0.54から0.71)、
網膜剥離のリスクを39%(95%CI: 0.47から0.79)、
黄斑浮腫のリスクを40%(95%CI: 0.46から0.79)と、
それぞれ有意に低下させていました。

つまり、スタチンの使用により、
かなり明確に糖尿病性網膜症が予防されている、
という結果です。

ただ、この研究では、
血糖値やコレステロール値などの臨床検査値が、
殆ど検討されていないので、
そうした数値の影響が実際には大きい、
という可能性も否定は出来ません。

今後スタチンが本当に独立して網膜症を予防可能なのか、
より詳細かつ厳密な検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていいい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者肺炎の重症度の指標について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
プロカルシトニンと高齢者肺炎.jpg
2019年のBMC Geriatrics誌に掲載された、
高齢者の肺炎の重症度を予測する指標についての論文です。

肺炎というのは、
お子さんから高齢者まで罹患する、
重症の感染症を代表する病気の1つです。

その原因には肺炎球菌などによる細菌性以外に、
ウイルス性や真菌性、
アレルギー性のものなど多くがあり、
それぞれに対して治療は異なるので、
その鑑別診断が非常に重要です。

肺炎の診療において大切なことは、
その原因を含めて肺炎を早期に診断することと、
その重症度を適切に判断することです。

この重症度の判定において、
以前から補助的に使用されていたのが、
CRPと呼ばれる血液検査です。

CRPは炎症反応と呼ばれる検査の代表で、
インターロイキン6というサイトカインによって、
肝臓で産生される炎症物質です。

この数値は一般的に言えば、
身体の炎症が強いほど高くなるので、
肺炎の重症度の指標にもなると思われます。

ただ、このCRPは肺炎の原因の鑑別には、
殆ど役に立ちませんし、
肝機能が低下したような時には数値が上がりません。
肺炎のような炎症以外にも、
関節リウマチや動脈硬化などによっても、
数値が上昇するので、
その数値により肺炎の重症度を予測することは、
あまり信頼性の高い方法とは言えません。

近年CRPに変わる炎症の指標として、
プロカルシトニンという検査が注目されています。
この検査はカルシトニンというホルモンの前駆体ですが、
特に細菌感染症において組織で産生されることが分かっています。

この検査はCRPとは異なって、
細菌感染症で特異的に増加し、
特に敗血症など重篤な状態で増加することが、
臨床データによって明らかとなっています。

このため、肺炎の重症度の予測や、
それが細菌感染症であるかどうかの判断には、
CRPよりプロカルシトニンが適している、
という考え方が高まりました。

しかし…

たとえば2013年のBritish Medical Journaln誌に掲載された研究では、
肺炎の診断においてはプロカルシトニンは単独で有用な指標ではなく、
白血球とCRPの方が有効であった、という結果になっています。

何が最も肺炎の診断や予後予測に有用であるのか、
この問題はまだ解決には至っていないようです。

今回の研究は福岡大学筑紫病院の研究者によるものです。
肺炎の患者さんトータル667名を解析したもので、
そのうちの436名は75歳以上の高齢者でした。

多変量解析において、
血液のアルブミン濃度や体格の指標のBMI、
肺炎の臨床的重症度指標、などと比較して、
プロカルシトニンの高齢肺炎患者の30日後の生命予後に対する関与は、
より小さなものとなっていました。

年齢に関わらずプロカルシトニンの数値は、
30日後の死亡リスクに対する、
独立した予測因子とはなっていませんでした。

肺炎の重症度との関連で見ると、
重症の肺炎であるほどプロカルシトニンの数値は有意に高値で、
年齢に問わず一定の重症度の指標となっていましたが、
白血球数やCRPについては、
重症度と検査値との間に、
明らかな関連は認められませんでした。

サブ解析においては、
細菌性肺炎の代表である肺炎球菌による肺炎において、
その重症度が高いほどプロカルシトニン値も有意に増加していました。

このように、
高齢者においてもプロカルシトニンの数値と、
肺炎の重症度との間には一定の関連が認められましたが、
その一方で生命予後を予測する独立した指標とは、
認められませんでした。

現状は個々の数値を、
患者さんの状態や病状に合わせて、
幾つか組み合わせながら臨床的な判断をしてゆくしか、
ないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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第39回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。

今日はいつもの告知です。

こちらをご覧下さい。
第39回健康教室.jpg
次回の健康教室は、
1月19日(土)の午前10時から11時まで(時間は目安)、
いつも通りにクリニック2階の健康スクエアにて開催します。

今回のテーマは「最新版感染症と消毒の基礎知識」です。

今クリニック周辺では、
A型インフルエンザが大流行しています。

今品川周辺で咳込みがあって、
急な寒気と関節痛と共に高熱が出た場合には、
ほぼ100%A型インフルエンザの感染です。

嘔吐があるケースもあるのですが、
通常連続することはなく、
ひどい下痢にはなりません。

下痢と嘔吐が最初からある時には、
ノロウイルスなどのウイルス性腸炎の可能性が高くなります。

インフルエンザにおいても、
ノロウイルス腸炎においても、
問題となるのは家族などの二次感染です。

どちらの感染症も小さなお子さんや高齢者では、
重篤になることが多いのですが、
そうした方が感染するのは、
通常気を付けている外出の時ではなく、
家でのことが多いからです。

二次感染の予防で重要になるのは「消毒」です。

消毒薬は一般にも多くの種類が販売されていますが、
どれが良いのか判断するのは難しいのが実際です。

病原体によっても、
消毒薬の有効性には差があり、
その種類によって消毒法も変える必要があります。

今回は最新の知見を含めて、
感染予防のための有効な消毒法をまとめてみます。

今回もいつものように、
分かっていることと分かっていないこととを、
なるべく最新の知見を元に、
整理してお話したいと思っています。

ご参加は無料です。

参加希望の方は、
1月17日(木)18時までに、
メールか電話でお申し込み下さい。
ただ、電話は通常の診療時間のみの対応とさせて頂きます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「家(うち)へ帰ろう」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
うちへ帰ろう.jpg
アルゼンチンのパブロ・ソラルス監督による、
珍しいスペイン・アルゼンチン合作映画が今公開されています。

これは東京はシネスイッチ銀座の単館ロードショーなんですよね。
昔はハリウッド映画中心の名画座だった館で、
「ひまわり」や「ドクトル・ジバゴ」、
「時計仕掛けのオレンジ」などを観たことを覚えています。
古くて居心地がかなり悪いのと、
ネット予約が出来ないのが難点です。

今時、ロードショーでネット予約不可というのは、
相当面倒ですよね。

ただ、頑張って観た甲斐はありました。

12月公開ですが、
昨年のうちに観ていれば、
間違いなく2018年のベスト5に入れていました。

背景にホロコーストを絡めた、
ユダヤ人の老人が、
ポーランドを目指して1人旅をするロードムービーで、
大甘の話ですが、
これは抜群にラストがいいですよね。
客席では高齢者中心の観客が、
皆オイオイと泣いていました。

泣かせなんですけど、
ド直球で、
今の映画というより、
「自転車泥棒」や「禁じられた遊び」のような、
古典的なテイストなのです。

ラスト以外の部分も、とてもシンプルな演出で、
語り口が明晰で柔らかいので、
重くて暗い話ではあるのですが、
とても自然に観ることが出来ます。
また、主役の俳優さんがとても自然で魅力のある芝居をしていて、
老人映画に特有の臭みがなく、
鑑賞後の気分をとても爽やかにしているのです。
日本でこうした映画を作ると、
上手くいって山田洋次作品みたいになるでしょ。
あのわざとらしさや不自然さが嫌ですよね。
この映画のように、
リアルで自然なテイストには絶対ならないと思うのです。
この自然さが素晴らしいですよね。

この映画はラストが抜群ですが、
それ以外にもじんわり胸が熱くなるような、
印象的な場面が幾つもあります。
その全てがストレートな表現で小気味よいのです。
以前最初の「ロッキー」を観て、
映画ってこんな単純でいいんだ!
と目から鱗の思いがありましたが、
それに近い新鮮さを感じました。

単館ロードショーで観るのは面倒ですが、
映画ファンであれば観て損はない、
観終わった後で心が少し綺麗になった気分になる傑作です。

とてもお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「斬、」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
斬.jpg
鬼才塚本晋也監督の新作で時代劇の「斬、」を観て来ました。

幕末を舞台にした80分くらいの短い作品ですが、
画面は暗く全編異常な緊張感で、
救いの欠片もないダークな物語が展開され、
ラストは3人のメインキャストが、
泥と雨と血に塗れて殺し合いを演じるという、
観終わると気分がどん底になること必定の、
イヤな映画です。

何となく「鉄男」にも似たところのある物語なのですが、
活劇の面白みやビジュアルの遊びなど、
息の抜けるような要素はこの作品には微塵もないので、
娯楽性という面では天と地ほどの開きがあります。

暴力を憎み、平和を希求するような思想が、
根底にはあってこうした映画が作られたのだと理解は出来ますが、
それなら「たそがれ清兵衛」みたいな作品であっても、
充分その役目は果たしたと思うのです。
ここまで無残で残酷で暗い映画を、
作る必要はなかったのではないかと思いますし、
監督の心の中では、
こうまでしなければ暴力の本質を描けない、
という思いがあったのではないかとも思いますが、
仮にそうだとすれば、
それはかなり病的でそれ自体平和や非暴力とは、
距離のある思想ではないでしょうか。

作品は「七人の侍」の反歌のような構成を取っています。

貧しい村に暴力で強奪する夜盗の集団がやってくるのですが、
官兵衛を彷彿とさせる坊主頭の剣豪は、
夜盗の多くを斬り殺してしまい、
復讐に再来した夜盗の残党によって、
村人は更に殺されるなど悲惨な目に遭ってしまいます。
つまり、「七人の侍」の方法論では、
暴力の連鎖を生むだけで村人は幸福にはなれない、
と言っている訳です。

そんなにひねくれなくてもいいのに、
と思わなくはありませんが、
そこまではまあ発想を理解は出来ます。

しかし、それならそれに変わる方法論を、
映画は提示してくれるのかと思っていると、
平和主義者の侍は、
ただ苦悩するだけで何の助けにもならず、
結局仲間内で殺し合いをして終わり、
というような感じになってしまいます。
蒼井優の演じる女性も、
人間というより獣のように暴力的で淫乱なので、
なおさら意図が分からなくなってしまいます。

そんな訳で勘弁してよ、と言いたくなるような怪作で、
映画を見て気分が落ち込むのが大好き、
という変わった嗜好をお持ちの方以外には、
お薦めはしにくい作品のように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アスピリン使用によるCOPDの予後改善効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COPDにおけるアスピリンの有効性.jpg
2018年のChest誌に掲載された、
慢性の肺疾患に対するアスピリン使用の効果についての論文です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、
主に喫煙に伴って、
肺に慢性気管支炎などの肺の炎症が起こり、
それが気道の細菌感染などをきっかけとした急逝増悪を繰り返し、
肺気腫へと進行して呼吸不全に至る、
という病気です。

このCOPDに対しては、禁煙に加えて、
抗コリン剤や気管支拡張剤、ステロイド剤などの吸入が、
呼吸機能の改善や急性増悪の予防目的で使用されています。

ただ、COPDは全身の炎症性疾患という側面があるのですが、
現行の治療は気道の局所の炎症を抑えるには有効でも、
全身の炎症に対しては有効ではありません。

そのために、
全身の炎症への対応として、
マクロライド系の抗菌剤の継続使用や、
スタチンの使用が試みられていますが、
抗菌剤には耐性の問題や聴力低下などの有害事象の問題があり、
スタチンの有効性は、
精度の高い臨床試験にておいては確認されていません。

低用量のアスピリンには抗血小板作用や抗炎症作用があり、
COPDにアスピリンを使用すると、
未使用と比較して生命予後が改善することを、
示唆する疫学データが存在しています。
しかし、データは限られていてその詳細も不明です。

そのため今回の研究では、
COPDの患者さんの疫学データを活用して、
503組のアスピリン未使用と使用のペアにより、
アスピリンの使用がCOPDの予後に与える影響を検証しています。

その結果、
アスピリンの使用により、
COPDの急性増悪のリスクは22%(95%CI: 0.65から0.94)
有意に低下していました。
ただ、救急外来受診や入院を要するような、
重症の事例に限って解析した場合には、
そのリスクの低下は有意ではなくなりました。

また患者さんの呼吸困難度やQOLについても、
アスピリン使用群で改善する傾向を示しました。

このように今回の解析では、
アスピリン使用がCOPDの予後に、
一定の改善をもたらす可能性が示唆されました。

アスピリンには出血系の合併症などの有害事象もあり、
今後より精度の高い介入試験を実施して、
患者さんにとって有効性と安全性のバランスの問題が、
解決されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高感度CRPと肺癌リスクとの関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
CRPと肺癌.jpg
2018年のBritish Medical Journals誌に掲載された、
炎症反応の検査値と肺癌のリスクとの関連についての論文です。

CRPというのは、
炎症に伴って肝臓で産生される蛋白質で、
炎症の急性期に高値となることから、
その血液濃度の測定は、
「炎症反応」と呼ばれて臨床に広く使用されている検査です。

通常その値は、
0.3mg/dL以下であれば正常と判断されていますが、
近年高感度CRPと言って、
0.01mg/dLまで正確に測定出来るようになると、
通常の基準値であれば正常値であっても、
それがやや高いということが、
身体の状態にとって意味があるのではないか、
という知見が多く報告されるようになりました。

動脈硬化の進行に伴う、
心筋梗塞や脳卒中のような心血管疾患では、
その進行度によって、
高感度CRPが上昇する、
という知見があります。

また、肺癌を含む複数の癌において、
矢張り高感度CRPが上昇しているという知見が報告されています。

今回の検証は喫煙歴や癌の組織型を分けて、
肺癌と高感度CRPとの関連をみたものです。

アジア、ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカにおける、
20種類の疫学データをまとめて解析したもので、
5299名の肺癌と診断された患者さんを、
年齢などをマッチさせた同じ5299名のコントロールと比較しています。

その結果、
肺癌と診断されるリスクと高感度CRPとの間には、
喫煙歴のない非喫煙者では、
明確な関連は認められませんでした。
その一方で現在の喫煙者では、
高感度CRP値が2倍に増加することにより、
肺癌のリスクが9%(95%CI: 1.05から1.13)、
喫煙歴のある非喫煙者でも9%(95%CI: 1.04 から1.14)と、
それぞれ有意な肺癌リスクの増加が認められました。

肺癌の組織型との比較では、
腺癌では明確な関連は認められませんでしたが、
小細胞癌と扁平上皮癌においては、
特に喫煙歴のある非喫煙者において、
高感度CRPとの間に有意な関連が認められました。

この高感度CRPと肺癌リスクとの関連は、
特にCRP測定後1から2年の間の、
肺癌発症リスクと高い相関を示していました。

このことから、
高感度CRPの上昇で推測される、
身体の軽度の炎症は、
肺癌の原因であるというより、
その初期診断のマーカーとしての意味を持っている可能性が高い、
と推察されました。

炎症反応の上昇は、
様々な病気によっても引き起こされるものなので、
高感度CRPの計測を肺癌の早期診断に利用する、
というのは実現性は低い考え方であるように思いますが、
組織型や喫煙歴によっても、
高感度CRPの数値と肺癌リスクとの関連に差がある、
という今回の知見は興味深く、
今後の知見の蓄積を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者への長期の運動習慣の健康効果(2018年のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高齢者への運動の効果のメタ解析.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
高齢者が定期的に運動することの効果についてのメタ解析の論文です。

定期的に運動の習慣を持つことが、
筋肉量を維持して骨折を予防し、
心血管疾患や認知症の予防にもなることは、
これまでの多くの疫学データや観察研究により、
ほぼ確立された事実です。

ただ、1年以上の長期の運動習慣が、
高齢者に与える影響というように限定すると、
それほど裏打ちとなるデータが豊富にある訳ではありません。

2014年のJAMA誌に掲載された、
LIFE(ライフ)研究は、
その数少ない介入試験のデータです。
それがこちらです。
高齢者への運動の効果ライフ研究.jpg
ここでは70歳から89歳の一般住民1635名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は健康維持の指導のみを行ない、
もう一方は週に2回(家庭では3から4回)の運動を行なって、
平均で2.6年の経過観察を行なっています。

その結果、
400メートルの歩行が困難となるような身体機能低下は、
運動療法群で28%有意に予防されていました。
しかし、その一方で病気での入院や死亡は、
むしろ運動療法群で多い傾向が認められました。

高齢者の身体機能の低下は様々ですから、
画一的に運動を強制するようなことを行なっても、
かならずしも高齢者のトータルな予後を、
改善することには結び付かない可能性もある、
という問題を示唆する結果です。

今回の研究はその後に発表されたデータも含めて、
60歳以上の高齢者を対象に、
1年以上の運動療法の効果を検証した臨床データを、
まとめて解析する、スステマティック・レビューとメタ解析という手法で、
この問題の現時点でのまとめを行なっています。

これまでの46の臨床研究における、
22709名のデータをまとめて解析した結果として、
概ね週に3回程度のエアロビックやバランス体操を取り入れた運動療法は、
転倒のリスクを12%、
外傷性転倒のリスクを26%、それぞれ有意に低下させ、
有意ではないものの骨折のリスクも低下させる傾向を示しました。
ただ、頻回の骨折や入院のリスク、
また生命予後の改善効果は有意には見られませんでした。

つまり、高齢者の長期の運動療法は、
ライフ研究単独と同様、
今回のメタ解析においても、
骨折や転倒のリスクの予防にはなっても、
明確に患者さんの生命予後や、
健康寿命の延長には結び付くとは言えないようです。

運動習慣は確かに高齢者においても、
転倒予防や筋力の維持などには有効ですが、
それ自体身体に負荷を掛ける行為ではあるので、
個々の高齢者の状態に応じて、
画一的ではなく、
きめ細かい個別の対応が必要な事項であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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血液アルコール濃度の規制値変更と飲酒運転予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルコール濃度と飲酒運転予防効果.jpg
2018年のLancet誌に掲載された、
血液アルコール濃度の基準値の変更が、
飲酒運転予防に与える影響についての論文です。

飲酒運転による自動車事故は、
日本でも最近大きな問題となっていますが、
海外でもその状況は同じで、
個々の国においてそれぞれの、
飲酒運転の規制の法律が施行されています。

ただ、検査においてどのレベルを超えるアルコールが検出されれば、
それを飲酒運転と見做すかという基準値には、
各国において少なからず違いがあります。

日本では血液のアルコール濃度が、
0.3mg/mL以上が飲酒運転(正確には酒気帯び運転)
の基準として使用されていますが、
これは世界でも厳しいレベルの基準値で、
欧米では0.8mg/mLを基準としていることが多く、
それが最近0.5mg/mLに厳しくなって来ている、
というのが実状であるようです。

基準値を厳しくすることには、
どのような効果があるのでしょうか?

一般的には法律で基準値を厳しくすることにより、
より少量のお酒でも捕まるということがある、
という認識が広まって、
飲酒後の運転により気をつけるようになり、
飲酒運転が減るという抑止効果があると、
そうした効果が期待をされています。

しかし、そうした効果は実際に証明出来るものなのでしょうか?

スコットランドにおいては、
2014年に血液アルコール濃度の基準値が、
0.8mg/mLから0.5mg/mLへと厳格化されました。

今回の研究では基準値厳格化前後の、
飲酒運転による事故や飲酒量などの疫学データ、および、
コントロールとして基準値が0.8mg/mLのまま固定されている、
イギリスやウェールズの疫学データも比較して、
基準値厳格化の影響を検証しています。

その結果、飲酒運転の基準厳格化の前後において、
バーやレストランでの個人の飲酒量は若干低下が認められましたが、
交通事故の頻度には明らかな違いはなく、
イギリスやウェールズとの比較では、
むしろ事故数は基準が厳格化したスコットランドで多い傾向がありました。

これはトータルな事故の件数を見たものですから、
これだけで基準値の厳格化が無意味とは言えませんが、
単純に基準を厳格化すれば、
それだけで飲酒事故が減ると考えるのは誤りで、
「飲んだら乗るな」の啓蒙活動を含めて、
飲酒運転の撲滅のためには、
その効果を含めて科学的かつ多角的な検証が、
必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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シャワーヘッドの汚染による非結核性抗酸菌症のリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは1月5日から、
いつも通りの診療を行っています。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シャワーヘッドの汚染.jpg
2018年のmBio誌に掲載された、
シャワーヘッドの細菌汚染が身体に与える影響についての論文です。

シャワーや入浴は身体を清潔にして、
感染症の予防効果もあると一般的には考えられています。

実際入浴の温熱による免疫力の賦活作用や、
サウナによる肺炎予防効果などが報告はされています。

一方で浴室やシャワールームは、
感染のリスクのある場所でもあります。

循環系の浴槽では、
クラミジアのような特殊な細菌が繁殖し、
難治性の肺炎などの原因となることがあります。
浴室は湿気が多く、
カビなどが繁殖することにより、
その吸入により気管支炎や肺炎などを起こすこともあります。
病原体が微小な水滴と一緒に吸引されると、
より肺の奥まで病原体が吸引されるので、
感染のリスクが高いと考えられています。

シャワーは塩素消毒された水道水が、
勢いよく噴出して身体を洗うもので、
それだけ考えると清潔で、
感染症の問題などはないように思えます。

ただ、実際にはシャワーヘッドの部分などには、
澱などが溜まりやすい死角があり、
そこにムコ多糖などと一緒になった形で、
細菌がバイオフィルムという構造を形成すると、
消毒薬などにも抵抗性となり、
それが予期せぬ病気の原因となることもあるのです。

今回の研究ではアメリカやヨーロッパにおいて、
656家庭のシャワーヘッドを調査したところ、
高率に細菌のバイオフィルムが見つかり、
塩素消毒した水道水においては、
塩素に抵抗性の強い、
非結核性抗酸菌症という慢性気道感染を起こす細菌が、
高率に検出されました。

そこで非結核性抗酸菌症の罹患率と、
シャワーヘッドの培養結果との関連を見たところ、
シャワーヘッドで非結核性抗酸菌が検出された地域で、
非結核性抗酸菌症の罹患率が高い、
という傾向が認められました。

これはまだ間接的なデータに過ぎないので、
シャワーヘッドの感染が、
非結核性抗酸菌症の原因であるとは言い切れませんが、
身近なところに意外な危険が潜んでいる可能性がある、
という点については、
心に留めておく必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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