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限局性前立腺癌の治療方針と予後(北欧での29年間の観察結果) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
限局性前立腺癌の治療方針.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
早期限局性前立腺癌の長期予後を、
手術と経過観察とで比較した論文です。

遠隔転移のない前立腺癌の、
最も適切な治療は何でしょうか?

前立腺癌は高齢男性に多い、
基本的には予後の良い癌です。
勿論その一部は全身に転移するなどして、
そのために命を落としたり、
骨転移による痛みなどの苦しめられる、
というケースもあるのですが、
比率的には多くの癌は、
特に症状を出すことなく、
その方の生命予後にも影響しない、
というように考えられています。

それでは、
前立腺の被膜内に留まった形で癌が発見された場合、
どのような治療方針が最適と言えるでしょうか?

神様的な視点で考えれば、
その後転移するような性質の悪い癌のみに、
手術や放射線などの治療を行ない、
転移しないような癌は放置するのが、
最善であることは間違いがありません。

しかし、実際には生検の結果である程度の悪性度は評価出来ても、
その癌が転移するかどうかは分かりません。

従って、このことを重視すれば、
全ての患者さんに治療を行なうということになり、
それは本来放置していても生命予後には問題のなかった、
多くの患者さんを「過剰に」治療するという結果に繋がります。
治療は無害ではなく、
合併症などで体調を却って崩すこともありますし、
医療コストも膨大になってしまいます。

そこで1つの考えとしては、
積極的な治療以外に、
当面は無治療で経過観察を行い、
定期的な最小限の検査は施行をして、
悪化が強く疑われれば、
治療をその時点で考慮する、
という方法が次善の策として考えられました。

これを無治療経過観察(積極的監視療法)と呼んでいます。

この無治療経過観察では、
通常は腫瘍マーカーであるPSAを、
定期的に測定し、
それが一定レベル以上上昇すれば、
治療を考慮します。
ただ、このPSAも確実に病勢を反映しているとは言えず、
そうした経過観察によって、
どの程度ただの無治療と比較して、
患者さんの予後が改善するのかも明確ではありません。

この問題を検証する目的で、アメリカで行われ、
2012年のNew England…誌に発表されたのがPIVOT研究です。

これは限局性の早期の前立腺癌の手術に、
その患者さんの生命予後を、
改善する効果があるかどうかを検証する目的で、
アメリカにおいて、限局性前立腺癌の患者さん731例を、
手術を行なう群と行わないでそのまま経過を見る群とに、
くじ引きで割り付け、
その後の経過を平均10年間観察しているものです。

癌が見付かったのに、
「手術をするかどうかはくじ引きで決めますね、これは実験ですから」
と言って承諾を得るのですから、
日本では確実に施行が不可能な種類の研究です。

ただ、当初の対象者は2000人以上を予定していたようですが、
アメリカでもさすがにそれは困難で、
最初のエントリーは5000人を超えていますが、
承諾を得て研究が施行されたのは、
そのうちの731名に留まっています。

そのトータルな結論としては、
観察期間中に手術を行なった患者さん364人中、
47%に当たる171人が死亡し、
手術を行なわず観察のみの患者さん367人中、
49.9%に当たる183名が死亡しています。
絶対リスクで治療による死亡率の減少は、
2.6%に留まっています。

つまり、
手術をしてもしなくても、
その後の経過に明確な差はついていません。

しかし、
実際に前立腺癌のために亡くなった患者さんは、
手術を行なった群では21名で、
観察のみの群では31名です。
経過の中で前立腺癌で生じ易く、
痛みなどの症状の原因になり易い、
骨への転移についてみると、
手術群で17名に対して、
観察群では39名でした。
この研究では定期的な骨のシンチの検査を、
行なっているのです。

つまり、トータルには差はなくても、
骨の転移の比率や前立腺癌のみの死亡数を見ると、
一定の治療効果はありそうです。

今回の研究はそれとは別個に、
スウェーデン、フィンランド、アイスランドの14の専門施設において、
診断の時点で75歳未満で、
10年以上の余命が期待出来、
他の癌の合併のない限局性前立腺癌の患者さん695名を登録し、
くじ引きで手術を行う群と、
そのまま経過観察を行う群とに分けて、
29年間という長期の経過観察を行なっています。
29年が経過した時点で、
登録患者のうち80パーセントは死亡していますから、
その治療の有効性を、
かなりクリアに比較することが可能となっているのです。

その結果、
経過観察群と比較して、
手術治療群では前立腺癌による死亡リスクを、
治療により45パーセント有意に低下させていました。
(95%CI: 0.41から0.74)
これは平均で2.9年の寿命が、
手術を選択することにより伸びる、
という効果を示しています。
ただ、診断の時点で癌が被膜を超えていたり、
グラスゴースケールという指標が7を超えるような悪性度の高い癌であると、
手術群であってもその後前立腺癌で死亡するリスクは、
非常に高くなっていました。

このように、
限局性で比較的悪性度の低い前立腺癌では、
早期に手術を行うことにより、
3年近い寿命の延長効果が見込まれます。

これをどう考えるかは、
その患者さん個人の人生観にもよると思いますが、
非常に長期の経過観察により、
精度の高いデータの得られた意義は大きく、
今後はこうしたデータを元に、
より患者さんの事情に即した、
治療選択が行われることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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インスリン未使用での血糖自己測定の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
血糖自己測定の有効性JAMA.jpg
2017年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
2型糖尿病の患者さんが血糖の自己測定をすることの、
意義について検証した論文です。

現行日本の保険診療においては、
インスリンの注射を使用中の患者さんでは、
血糖の自己測定を行うことが認められていますが、
インスリンを使っていない2型糖尿病の患者さんでは、
認められていません。

それは何故かと言えば、
インスリンの強化療法を施行中の患者さんでは、
重症の低血糖などの有害事象も起こりやすく、
運動量などにより血糖値を見てインスリン量を調節する必要が、
あるようなケースもあるので、
その必要性が認められているのです。

その一方で飲み薬で血糖値が安定しているような、
2型糖尿病の患者さんでは、
血糖値の自己測定を行ったとしても、
それほどのメリットはないと考えられているからです。

ただ、そうは言っても多くの2型糖尿病の患者さんは、
自分で血糖を測定してコントロールをしたい、
という希望を持っています。
自費で血糖測定器を買って、
定期的に測定をしている人も多いと思います。

上記文献の記載によれば、
2型糖尿病の患者さんの75パーセント以上が、
実際には自己測定を行っているそうです。

それでは、自己測定をすることで、
しない場合と比べて、
血糖コントロールが改善したり、
患者さんの予後が改善する、
というようなことはあるのでしょうか?

この点は実はあまり厳密な意味で、
これまで検証されていませんでした。

今回の臨床研究はアメリカのノースカロライナ州において、
15か所のプライマリケアの医療機関を受診した2型糖尿病の患者さんのうち、
年齢が30歳を超えていて、診療を継続しており、
血糖コントロールの指標であるHbA1cが、
6.5を超え9.5パーセント未満の条件を満たす、
450名の患者さんを登録してくじ引きで3つの群に分け、
第1群は血糖自己測定を施行せず、
第2群は毎日1回の自己測定を患者さん本人の管理で行い、
第3群は毎日1回の自己測定後にその値による指示をフィードバックして、
52週間の経過観察を行なっています。

その結果52週間の時点でのHbA1cの低下率には3群間で有意な差はなく、
低血糖のリスクやインスリン導入などのリスクについても、
3群間で有意な差は見られませんでした。

ちょっと興味深いことに、
観察期間の真ん中の6か月の時点では、
HbA1cは自己測定を施行した2群において、
未施行群より明らかに低値となっています。
しかしその差はその後縮まって、
1年後には差がなくなっていました。

このように今回の臨床に即した研究においては、
血糖の自己測定を行なっても行わなくても、
患者さんの血糖コントロールには影響はありませんでした。

数か月という観察期間で同様の研究をすれば、
一定の有効性があるという結果が得られた訳ですが、
少なくとも1年を超えるような期間においては、
その効果は充分なものではないようです。

ただ、これをもって、
全てのインスリン未使用の2型糖尿病の患者さんにおいて、
血糖自己測定が無意味だと断じるのは、
また誤りであるように思います。

血糖の変動が大きな事例や、
内服薬でも低血糖を来しやすいようなケースでは、
自己測定にインスリン治療時と同じような有効性が、
当然期待は出来るからです。

問題はどのような事例で自己測定が有用であるのか、
その点の検証にあるように思います。

この問題はまだ解決されてはいないのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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動脈硬化所見の可視化が病気の予防に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
動脈硬化の可視か.jpg
2018年のLancet誌に掲載された、
心血管疾患の予防のために、
頸動脈のエコー所見を分かり易く説明することの、
有効性についての論文です。

医者はどうしてもこうした研究を軽視しがちですが、
公衆衛生や医療コスト全体を考える時には、
こうした検証が重要となることは間違いないと思います。

体重の管理や運動習慣、バランスの取れた食事、禁煙などが、
動脈硬化による病気の予防のために重要であることは、
これはもう間違いのない事実ですが、
その継続的な実行はそれほど簡単なことではありません。

医療の専門職としては、
その知識や経験を総動員して、
病気の予防のためにはどうすれば良いのかを説明するのですが、
その重要性は往々にして不充分にしか伝わりません。

特にまだ病気をしていない人の場合には、
痛みなどの症状もないので、
なかなか予防のために生活を改善する、
というモチベーションが得られにくいのです。

ただ、そうした人でもテレビやネットの情報などには、
極めて敏感に反応して、
そこで指示された通りの反応を取ったり、
勧められた食材を食べたリすることがしばしばあります。

つまり、生活改善の試みがなかなか成功しないのは、
指導する医療者の方法にもおそらくは問題がありそうです。

今回の研究はスウェーデンのもので、
1つ以上の心血管疾患リスクのある、
また病気は発症していない、
登録時に40歳、50歳、60歳の3532例に対して、
頸動脈の超音波検査を含む健診を施行。
対象者をくじ引きで2つに分けると、
一方は通常の結果説明のみを行ない、
もう一方では超音波検査結果の分かりやすい画像を渡し、
更に看護師が電話で内容を確認する、
という試みを行なっています。

その画像がこちらです。
動脈硬化可視化の図.jpg

その1年後に再評価を行なったところ、
超音波検査の画像説明などを行なった群において、
行なわなかった群と比較して、
心血管疾患のリスクスコアの有意な改善を認めました。

つまり、
そのままだと生活を変えよう、とまでは思わなかった人が、
こうした試みをすることにより、
このままではまずいので生活を改善しよう、
と一定レベルは思ってくれた、
という結果になっています。

こうした試みは、
一方でそれほどの臨床的意義のない検査結果を、
殊更に大袈裟に伝えてしまう、というリスクもあるのですが、
幾ら健診をしても、
それが生活改善に繋がらなければ、
トータルには病気の予防にならないのですから、
ある程度は生活改善を促すための検査やプレゼンテーションにも、
一定の意義があると考える必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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赤身肉の摂取と動脈硬化進行との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コレステロールと肉摂取.jpg
2013年のNature Medicine誌に掲載された、
赤身の肉に多く含まれる成分のカルニチンが、
動脈硬化の進行と関連しているのでは、
というちょっとショッキングな内容の論文です。

肉を多く食べることが健康にとってどのような影響を与えるのか、
というのは多くの議論のある問題です。

肉を多めに摂ることが健康に良い、
という趣旨のデータもある一方、
特に赤身肉やソーセージなどの加工肉の摂取が多いと、
心血管疾患のリスクや総死亡のリスクが増加する、
という複数の報告が存在しています。

仮に赤身肉の摂取と心血管疾患のリスクが関連しているとすると、
それは赤身肉に含まれるどのような成分によるものなのでしょうか?

その1つの候補と考えられているのが、
カルニチンです。

カルニチンは脂質代謝に関わるビタミン様の物質で、
活性のあるLカルニチンは、
動物の赤身肉に多く含まれています。
カルニチンは筋肉細胞内にあって、
脂質をミトコンドリアに運んで代謝を促進働きを持っています。

このためカルニチンを多く摂ることにより、
脂肪代謝が亢進してダイエット効果が期待されるのではないか、
という健康への良い影響を期待する見解もありました。

しかし、
その一方でカルニチンを多く摂取することで、
心血管疾患が増加することを示唆する報告もあります。

仮にカルニチンが動脈硬化の進行と結び付いているとすると、
そのメカニズムはどのようなものなのでしょうか?

今回の研究ではネズミの実験により、
L- カルニチンを摂取することにより、
腸内細菌の代謝によってトリメチルアラニン(TMA)という物質が生まれ、
それが更に肝臓で代謝されてトリメチルアラニンーNーオキサイド(TMAO)という物質が、
生まれることを確認しています。

このTMAOには、
コレステロールの組織からの抜き取り能を低下させ、
コレステロールの組織への蓄積を増加させて、
結果として動脈硬化を促進する働きのあることが確認されています。

こちらをご覧下さい。
コレステロール代謝と肉摂取の図.jpg
赤身肉の摂取による動脈硬化促進のメカニズムの仮説を、
図示したものがこちらになります。

今回の研究では腸内細菌の影響を排除することにより、
TMAOの発生がブロックされていることも確認しています。

人間における補助的なデータも付加されていますが、
まだ人間においても同じことが起こっていることは、
確実とは言えません。

その点については今後の検証を待ちたいと思いますが、
カルニチンが腸内細菌の影響によって動脈硬化促進物質に変化する、
という今回の知見は大変興味深く、
今後の更なる検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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透析中の活性型ビタミンD治療の効果(J-DAVID研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
J-DAVID試験の結果.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
透析中の患者さんに活性型ビタミンDを使用する、
臨床試験の結果をまとめた論文です。

これは「日本透析活性型ビタミンD試験」と題されたもので、
それを英語で略してJ-DAVID試験とされています。
日本全国の透析医療機関で行われた大規模臨床試験で、
この研究のみのサイトが開設されるなど、
かなり力の入ったプロモーションが行われていました。

透析を含む進行した腎不全の状態においては、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが増加し、
それが腎不全の患者さんの予後を大きく左右しています。

しかし、その予防の手立てはあまり有効なものが見つかっていません。

進行した腎不全の状態においては、
腎臓におけるビタミンDの活性化が阻害されます。
このことにより、ビタミンDの骨への作用が低下し、
血液のカルシウムは低下してリンが増加します。
カルシウムの低下に伴って、
カルシウムを増加させるホルモンである、
副甲状腺ホルモン(PTH)が増加し、
それが骨からカルシウムを誘導するので、
骨は脆くなって骨折が増えるのです。
更に副甲状腺ホルモンが過剰に分泌された状態が持続することにより、
副甲状腺が肥大して、
カルシウム濃度が低下していなくても、
副甲状腺ホルモンの分泌が続く、
という悪循環に陥るのです。

これはビタミンDの活性障害に起因する、
骨への影響ですが、
それ以外に活性型ビタミンDには、
抗炎症作用などの抗動脈硬化作用があり、
そのことが慢性腎不全において、
心血管疾患が増加することの大きな要因ではないかと、
そのように考える専門家もいます。

現状のガイドラインにおいて、
透析の患者さんに活性型ビタミンDを使用するのは、
副甲状腺ホルモンが明らかな異常高値である時のみです。
この時の副甲状腺ホルモンの管理目標値には、
日本のものと欧米や国際的な基準とでは、
かなりの違いがあります。
intact PTHの測定値で、
日本の管理目標値が60から240pg/mLであるのに対して、
欧米のそれは150から600pg/mLです。

ただ、副甲状腺ホルモンの明確な上昇のない場合に、
活性型ビタミンDを使用することの意義については、
これまでに明確な有用性が確認されていません。

そこで今回の研究では、
日本国内の108の透析施設において、
血液のintact PTHが180pg/mL以下である透析患者、
トータル976名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常の治療のみを行い、
もう一方では通常の治療に加えて、
1日0.5μgの活性型ビタミンD(アルファカルシドール)を使用して、
中央値で4年間の経過観察を行っています。
ビタミンDの使用量は経過中の副甲状腺ホルモンなどの数値により、
適宜変更が加えられます。

その結果、
心筋梗塞などの心血管疾患の発症リスクは、
有意ではないもののむしろビタミンD使用群の方が、
多い傾向が認められました。
総死亡のリスクについては差はありませんでした。
ただ、実際には最初に治療群に割り付けられた患者さんのうち、
3分の1はカルシウム値の上昇などの理由から、
ドロップアウトしています。

このように、今回の検証においては、
透析の患者さんに対して活性型ビタミンDを使用することの、
有効性は確認されませんでした。

おそらく血液中の副甲状腺ホルモンが上昇していないケースでは、
活性型ビタミンDの使用が患者さんにメリットのある場合もあり、
その一方でむしろ有害である場合もあると想定されます。

従って、透析の患者さんに画一的に活性型ビタミンDを使用することは誤りで、
どのような指標に基づいてビタミンDを使用するべきかについては、
今後より詳細な検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ボヘミアン・ラプソディ」(伝記映画) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ボヘミアン・ラプソディ.jpg
大人気のクイーンの伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観て来ました。
平日でしたが新宿のアイマックスが完売でした。

クイーンは高校生の時に、
「ジャズ」というアルバムが発売されて、
これはカセットテープですり切れるくらいに聴きました。

日本の場合最初はビジュアル的な人気が先行で、
その後音楽的に評価が高まって、
僕が高校生の頃には、
音楽ファンでほぼけなす人はいない、
というくらいの存在でした。

高校生の時に一度武道館の来日公演があって、
とても行きたかったのですが、
チケットは取れませんでした。

同じクラスに有名な音楽評論家のご家族の人がいて、
「チケット押さえたからみんなで行こうぜ」
みたいな話をしていて、
僕はその「みんな」には入っていなかったので、
とてもうらやましいなあ、
と思っていたことを、
何故か今でも鮮明に覚えています。

詰まらないことだけ、
リアルに覚えているのが嫌ですね、
人生って!

さて、この映画は、
1985年のライブ・エイドのコンサートの場面を、
忠実にほぼ全編再現した映像がラストにあって、
そこがともかく抜群に素晴らしく興奮する出来映えです。

ライブの映像化としては、
間違いなく歴史に残るものではないかしら。

ドラマの部分は意外に薄味で大雑把なのですが、
ライブにそっくりさんによる再現ドラマがくっついている、
というような構成になっているのです。

この拘りのそっくりぶりはかなり凄くて、
主人公のフレディ・マーキュリーも良いですが、
ブライアン・メイがまたそっくりですよね。
最後に実際の映像が出て来ますが、
フレディの恋人のマッチョの男性や、
両親がまたそっくりでビックリします。

ドラマはライブ・エイドをクライマックスにするために、
フレディがエイズになるのも、
父親と和解するのも、
生涯の恋人と再会して、
女性の恋人とは親友となるのも、
こじれたメンバーと和解するのも、
全てライブ・エイドの直前、
という設定になっています。
そんなことは明らかになさそうなのは、
それほどのクイーンズ好きではない僕でも、
おおよそ分かりますが、
その大雑把な再現ドラマ的クオリティが、
この映画には合っていて、
ラストのライブが涙なしでは観られなくなりますし、
歌自体もドラマと全て重ね合わせてしまうのです。

この強引さが、
この映画に関しては成功しています。

題名は「ボヘミアン・ラプソディ」ですが、
その創作の場面は意外にあっさりとしか描かれていません。
あれは当時としては画期的な楽曲だったのですが、
今聴いて面白いような曲ではないですよね。
ライブで再現も出来ないし、
知らない人が映画を観ても、
どんな曲なのか分からないと思います。
それを含めてもう少し音楽的なメンバーの葛藤とか、
そうした部分があっても良かったかな、
というようには思います。
後、ライブではギターとドラムのソロと、
でっかい原色の照明ボードが、
ステージの上で動くのが有名でワクワクするのですが、
それが映画ではほぼ出て来ませんでした。

ただ、それもこれもラストのライブの場面を、
圧倒的なクライマックスにするための、
引き算的な演出なのだと思うので、
繰り返しになりますが、
この映画としてはこれで良かったのだと思います。

何度も観たくなる映画ですよね。

僕ももう一度くらい体感したいです。

別にドラマ部分は小さな画面でも良いのですが、
ラストだけは大画面の大音響がマストですね。

皆さんも是非。
すっきりしますよ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「来る」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
来る.jpg
2015年に日本ホラー小説大賞を受賞した、
澤村伊智さんの処女小説を、
映像の鬼才中島哲也監督が演出に当り、
岡田准一さんや妻夫木聡さんら、
主演級のキャストがずらりと顔を揃えた映画版となって、
今公開されています。

もう上映館も少なく、
朝のバルト9の客席は僕を入れて3人でしたから、
それほどヒットはしていないようです。

原作は異界からの怪物と、
普通の市井の人達や霊能者が対決するという話で、
感じとしては「リング」のタイプに近いと思います。

ただ、外見を取り繕って中身が空虚な家族などの人間関係が、
なかなか面白い部分があり、
中島監督はむしろそうした部分に興味があったようで、
原作の人間ドラマをより膨らませて、
「告白」でも試みた多視点の原作を映像で再構成する手法で、
厚みのある家族劇に仕立てています。

ホラーなのですが、
ショッカー演出をそれほど重視していないので、
さほど怖くはありません。
クライマックスは大除霊大会みたいになって、
これは原作はただ、霊能者が1人でマンションでお祓いをするだけなので、
映画の創作なのですが、
発想は堤幸彦作品に似たテイストになり、
またガンガン音と映像でたたみかける感じは、
韓国ホラーを意識しているような演出です。

何と言っても見応えのあるのは豪華なキャスト陣で、
単なる顔見せではなく、
皆なかなかテレビなどでは見せない、
良い芝居をしています。

妻夫木聡さんは、
中身のない軽薄男というちょっと気の毒な役回りですが、
開き直っての熱演で、
この役にまず妻夫木さん以外は考えられない、
という気がします。
妻役の黒木華さんが振幅の大きな芝居で面白く、
今村昌平の映画みたいな役柄が素晴らしく嫌らしく素敵です。

小松菜奈さんの霊能力のあるキャバ嬢というのも、
彼女ならではの魅力全開ですし、
岡田准一さんの渋さも勿論良いのです。
そして、ラスボスのように登場する松たか子さんが最高で、
抜群に格好良くて惚れ惚れします。

脇にはまた柴田理恵さんや青木崇高さんなどの曲者が揃って、
見逃せない芝居をしています。

そんな訳でなかなか面白い映画ではあるのですが、
正直ホラーとしては怖くもなく衝撃的でもない、
ちょっとモヤモヤする感じになっています。
ホラーとしての決定的な場面がないですよね。
原作は顔に口だけあるような怪物が、
もう少し具体的に出て来るのですが、
映画版は「来る」とは言いながらも、
子供が白目で喋ったりする程度のことしか起こらないので、
「今更これじゃなあ」とガッカリしてしまいます。
「リング」だってあれだけ思わせぶりで押していって、
最後になって原作にもないあんな印象的なお化けが、
堂々と出て来るでしょ。
ああいうのが矢張り大事ですよね。
謎の噛み傷と言っているのに、
その噛みついた怪物が登場しないのですから、
それじゃ駄目だよね。

ただ、多分中島監督としては、
普通にホラーにはしたくなかったのかな、
というようには思うのです。
でも、人間ドラマだけで押すのであれば、
別にクライマックスをあんな風に韓国ホラーにしなくてもいいですよね。
もっと静かに不気味に終わっても良かったのじゃないかしら。
何にせよバランスが悪く、
欲求不満で終わったな、
という感じは否めません。

そんな訳でホラー好きの方には、
一見の価値はあるのですが、
頑張って観に行くほどのテンションにはならかなったのは、
少し残念ではありました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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胎児の喫煙影響に対するビタミンCの予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンCの禁煙予防効果.jpg
2017年のAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌に掲載された、
妊娠中の喫煙の胎児への影響を、
ビタミンCで緩和しようという内容の論文です。

喫煙には多くの健康への悪影響があります。

その多くは喫煙者本人に限定されるものですが、
妊娠中の女性が喫煙をしていると、
胎児に影響を与えることが近年指摘されるようになっています。

そのうちで明確な事実と言えることの1つは、
お子さんの肺機能が低下することで、
乳幼児期の喘息が増加し、
この肺機能の低下は生涯に渡り影響を与えると考えられています。

そのメカニズムは胎児のDNAのメチル化にあるとされ、
母親の遺伝的な形質が、
そこに影響すると考えられています。

勿論こうした胎児への影響を防ぐためには、
禁煙することが確実な予防法であることは間違いがありません。

しかし、現実的にはヘビースモーカーの女性が妊娠されたような場合、
すぐに禁煙することは困難なケースも多いのが実際です。

罪のないお子さんを守るような方法はないのでしょうか?

ここで上記文献の著者らが注目しているのがビタミンCです。

ビタミンCは抗酸化作用を持ち、
遺伝子のメチル化についても、
その調整のために必須のビタミンです。

喫煙者ではビタミンC濃度が低下することが知られていて、
その影響は妊娠中の女性の場合、
胎児にも及ぶと考えられています。

それでは、妊娠中の喫煙女性がビタミンCを摂ることにより、
胎児への悪影響が防げる可能性があるのではないでしょうか?

今回の研究では、
1日500ミリグラムのビタミンCを、
喫煙している妊娠女性に使用した場合と、
使用しない場合とを比較して検証したところ、
喫煙による遺伝子のメチル化の変化が、
非喫煙者と同程度まで抑制されていました。

同じ雑誌に2018年に掲載された別の研究グループによる論文では、
同様のビタミンCの補充により、
生後3ヶ月の時点の呼吸機能が有意に改善していました。

このように、
妊娠中のビタミンCの補充が、
胎児の健康被害を守る上で一定の意義があることは、
ほぼ間違いがなさそうで、
勿論喫煙の害には禁煙が正解ではあるのですが、
どうしてもそれが困難な場合には、
罪のないお子さんを守るための方法として、
考慮される必要はあるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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卵巣嚢腫と卵巣癌の超音波所見 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
エコーによる卵巣腫瘍のスクリーニング.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
超音波所見で卵巣癌がどれだけ判別可能かを、
検証した疫学データの論文です。

卵巣癌は予後の悪い癌の1つとして知られています。

そのために腹部超音波検査において、
通常は悪性とは考えにくい、
充実性部分のない卵巣の嚢胞であっても、
悪性である可能性が100%は否定出来ないとして、
経過観察の方針がとられることが多いのが実状です。

しかし、本当にその方針は、
理に適ったものなのでしょうか?

その点を明らかにする目的で今回の研究では、
アメリカの医療保険の大手の1つである、
カイザーパーマネント社の医療データを活用して、
骨盤の超音波検査所見と卵巣癌の診断との関連を検証しています。

トータルで72093名の骨盤超音波検査を施行した女性を観察したところ、
そのうちの1043名で卵巣腫瘍が検出され、
その後に210例が卵巣癌の診断となりました。
閉経前と後に関わりなく、
充実性の部分を含まない単純性嚢胞の所見は、
卵巣癌の診断と関連を持っていませんでした。
一方で充実性の部分を持つ囊胞性腫瘍と充実性腫瘍は、
卵巣癌のリスクを明らかに増加させていました。

今回の大規模な検証から明らかなことは、
卵巣の単純性の嚢胞病変については、
基本的に癌との関連はほぼなく、
経過観察も必要がない可能性が高い、
ということです。

そうは言っても見落としを恐れる医者の立場としては、
どうしても過剰な観察を行いがちなのですが、
今後こうした知見を元に、
明確な経過観察のガイドラインが作成されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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三環系抗うつ剤少量投与の腰痛緩和効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アミトリプチリンの慢性背部痛への効果.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
古くからある抗うつ剤を少量で使用して、
原因不明の腰痛を治療しよう、
という臨床試験の論文です。

ぎっくり腰や長引く腰の痛みは、
ヘルニアによる神経の圧迫など、
明確な原因が分かることは実は少なく、
その多くは慢性腰痛のようにしか、
西洋医学的には表現出来ないような症状です。

この慢性腰痛に対して、
オピオイドや非ステロイド系消炎鎮痛剤などの薬剤や、
体操やリハビリなど多くの治療が試みられていますが、
確実と言えるようなものはありません。

そして、以前から経験的に使用されることがあるのが、
少量の抗うつ剤を使うという治療です。

自律神経のバランスの乱れや交感神経の緊張、
筋肉の緊張の亢進などが、
こうした慢性疼痛の原因として想定されるので、
それを調整する作用のある薬剤として、
抗うつ剤が注目されたのです。

これまでに多くの抗うつ剤が使用されていますが、
その有効性は充分に科学的に検証されているとは言えません。
抗うつ剤をうつ病に使用する常用量で使うと、
便秘やふらつき、口渇などの副作用が強く使用が困難なので、
結果としてこうした目的には少量を使用するようになります。
しかし、実際には少量の抗うつ剤の効果が、
精度の高い臨床試験で確認されたことはありません。

今回の研究では、
慢性腰痛の患者さん146名を、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分け、
一方は三環系抗うつ剤であるアミトリプチリン(トリプタノール)を、
1日25ミリグラムという少量で使用し、
もう一方はメシル酸ベンズトロピンという抗コリン剤を使用して、
6ヶ月の治療効果を比較しています。

例数は少ないのですが精度の高い試験で、
これまでにこの分野ではあまり行われたことのないものです。
抗うつ剤は口の渇く副作用があるため、
同じように口の渇く薬を対照薬として使用しています。

その結果、
治療開始6ヶ月の時点での、
疼痛や活動のしやすさに有意な改善は認められませんでした。
ただ、治療3ヶ月の時点での活動のしやすさには、
抗うつ剤群で有意な改善が認められました。

これは充分な効果とは言えませんが、
これまで経験的に行われて来た治療に、
一定の有効性が確認された意義は大きく、
今後の更なる検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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