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2018年11月| 2018年12月 |- ブログトップ
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三環系抗うつ剤少量投与の腰痛緩和効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アミトリプチリンの慢性背部痛への効果.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
古くからある抗うつ剤を少量で使用して、
原因不明の腰痛を治療しよう、
という臨床試験の論文です。

ぎっくり腰や長引く腰の痛みは、
ヘルニアによる神経の圧迫など、
明確な原因が分かることは実は少なく、
その多くは慢性腰痛のようにしか、
西洋医学的には表現出来ないような症状です。

この慢性腰痛に対して、
オピオイドや非ステロイド系消炎鎮痛剤などの薬剤や、
体操やリハビリなど多くの治療が試みられていますが、
確実と言えるようなものはありません。

そして、以前から経験的に使用されることがあるのが、
少量の抗うつ剤を使うという治療です。

自律神経のバランスの乱れや交感神経の緊張、
筋肉の緊張の亢進などが、
こうした慢性疼痛の原因として想定されるので、
それを調整する作用のある薬剤として、
抗うつ剤が注目されたのです。

これまでに多くの抗うつ剤が使用されていますが、
その有効性は充分に科学的に検証されているとは言えません。
抗うつ剤をうつ病に使用する常用量で使うと、
便秘やふらつき、口渇などの副作用が強く使用が困難なので、
結果としてこうした目的には少量を使用するようになります。
しかし、実際には少量の抗うつ剤の効果が、
精度の高い臨床試験で確認されたことはありません。

今回の研究では、
慢性腰痛の患者さん146名を、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分け、
一方は三環系抗うつ剤であるアミトリプチリン(トリプタノール)を、
1日25ミリグラムという少量で使用し、
もう一方はメシル酸ベンズトロピンという抗コリン剤を使用して、
6ヶ月の治療効果を比較しています。

例数は少ないのですが精度の高い試験で、
これまでにこの分野ではあまり行われたことのないものです。
抗うつ剤は口の渇く副作用があるため、
同じように口の渇く薬を対照薬として使用しています。

その結果、
治療開始6ヶ月の時点での、
疼痛や活動のしやすさに有意な改善は認められませんでした。
ただ、治療3ヶ月の時点での活動のしやすさには、
抗うつ剤群で有意な改善が認められました。

これは充分な効果とは言えませんが、
これまで経験的に行われて来た治療に、
一定の有効性が確認された意義は大きく、
今後の更なる検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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抗凝固剤とプロトンポンプ阻害剤併用の消化管出血予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PPIと抗凝固剤の併用の効果.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
経口抗凝固剤とプロトンポンプ阻害剤を併用する治療の、
消化管出血予防効果を薬剤ごとに比較した論文です。

経口抗凝固剤というのは、
血液が固まる仕組みの一部を抑えることによって、
脳塞栓症や肺血栓塞栓症などの、
血栓塞栓症を予防するために使用されている薬です。

歴史があり現在でも使用されているのがワルファリンで、
最近では直接作用型経口抗凝固剤として、
ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンなど多くの薬剤が、
その利便性から広く臨床で使用されています。

ただ、こうした薬剤で常に問題となるのが、
その有害事象としての出血系の合併症です。

出血系の合併症のうち、
特に重症となるリスクが高いのは、
脳内出血と消化管出血です。

日本では脳内出血が元々起こりやすいという特徴もあって、
そちらの方が重要視される傾向にありますが、
欧米ではその頻度は圧倒的に消化管出血が多いので、
研究の多くも消化管出血に比重があります。

直接作用型経口抗凝固剤が発売された当初は、
消化管出血はワルファリンより少ないと考えられていましたが、
その後の臨床データにおいては、
必ずしもそうではなく、
むしろワルファリンよりリスクが高いとする報告もあります。

脳内出血は、
特に抗凝固剤使用時の予防法、
といったものはなく、
血圧が安定した状態を保つことなどしか、
その対策はありませんが、
消化管出血に関しては、
胃潰瘍などの治療薬である、
プロトンポンプ阻害剤を、
抗凝固剤と併用するという方法があります。

実際にこれまで、
ワルファリンとダビガトランについては、
プロトンポンプ阻害剤との併用によって、
消化管出血のリスクが低下した、
という結果が報告されています。

ただ、それ以外の薬において同様のデータはありませんし、
個々の薬剤同士の比較も、
明確な形では行われていません。

そこで今回の研究では、
アメリカの公的医療保険メディケアのデータを活用して、
この問題の大規模な検証を行っています。

年間のべ754389名を解析した結果として、
ワルファリン、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンのうち、
最も上部消化管出血による入院のリスクが高かったのは、
リバーロキサバンで、
最も低かったのはアピキサバンでした。

そして、全ての抗凝固剤において、
プロトンポンプ阻害剤の併用はそのリスクを、
有意に低下させていて、
トータルには34%(95%CI: 0.62から0.69)の低下を認めました。

それをまとめた図がこちらになります。
PPIと抗凝固剤併用の図.jpg
上部消化管出血に関して言えば、
薬剤間の比較ではリバーロキサバンが最も多く、
アピキサバンが最も低い、
ということはほぼ間違いはないようです。
そして、リスクの高い薬ほど、
プロトンポンプ阻害剤を併用することの、
抑制効果は高くなっています。

ただ、これをもって抗凝固剤のプロトンポンプ阻害剤との併用を、
推奨するような結論には少し疑問があります。

上部消化管出血の多くは、
すぐに内視鏡検査が施行可能であるような日本の医療状況では、
多くの場合に対応可能な状況ではある一方、
プロトンポンプ阻害剤の長期の使用は、
総死亡リスクの増加は急性腎障害、感染症リスクの増加など、
多くの有害事象がそれ自体指摘されている薬でもあります。
抗凝固剤の多くが長期間継続的に使用される薬だということを思えば、
これは決して無視出来ない影響です。

この問題は今後より多くの領域の専門家が、
議論を重ねて検証し、
実用的なガイドラインを構築するべき事案ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コレステロール降下剤による空腹時血糖増加作用(2018年韓国の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの空腹時血糖.jpg
2018年のCardiovascular Diabetology誌に掲載された、
スタチンというコレステロール降下剤と、
血糖上昇との関連を、
個々のスタチン毎に検証した、
韓国の疫学データの論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
強力なLDLコレステロールの低下作用を持ち、
その使用により、
心筋梗塞などの心血管疾患の、
予防効果のあることが実証されている薬剤です。

ただ、有効性の確立している一方で、
多くの有害事象や副作用のある薬でもあります。

その中で体重増加作用と、
新規の糖尿病の発症リスクを増加させる作用については、
スタチン自体のターゲットである、
HMGCRという酵素の阻害作用自体にその原因のあることが、
遺伝子の解析からほぼ明らかになっています。

HMGCRの活性のみが低下する変異のある人では、
スタチンを使用するのと同じように、
体重増加や糖尿病のリスクが増加することが確認されたからです。

このようにスタチンという薬のメカニズム自体が、
どうやら新規糖尿病の発症リスクと、
関連を持っているということは分かりました。

ただ、それでは複数あるスタチン製剤の間で、
その影響に差があるのかどうか、
と言う点や、
スタチンによる糖尿病新規発症のメカニズムが、
具体的にどのような経路を介するものなのか、
というような点については、
まだ情報は限られています。

たとえば日本以外ではあまり使用されていない、
ピタバスタチン(商品名リバロなど)は、
臨床データ上は糖尿病の発症リスクを上げないと、
メーカーの担当者は言われていますが、
それが実際に薬剤の特徴によるものなのか、
それとも単純に薬剤の効果の弱さや、
使用頻度の少なさによるものなのかは、
明らかではありません。

スタチンは実験レベルでインスリン抵抗性の増加作用が、
報告されていますが、
それが臨床的にも事実であるかどうかも、
まだ分かってはいません。

今回の研究は韓国において、
国民レベルの医療データベースを活用して、
各種のスタチンの使用経過と、
空腹時血糖の上昇との関連性を検証したものです。

379865名の登録時点で糖尿病のない一般住民を対象として、
そのうちのスタチンを使用した96182名の空腹時血糖の上昇率を、
スタチン未使用と比較したところ、
スタチンの使用量が多いほど、また使用期間が長いほど、
空腹時血糖は上昇が認められました。
このスタチンによる空腹時血糖上昇効果は、
スタチン以外のコレステロール降下剤である、
フィブラートやエゼチミブでは認められませんでした。

個々のスタチンで見ると、
アトルバスタチンとシンバスタチンで強く、
ロスバスタチンとピタバスタチンも弱いものの有意な増加が認められましたが、
プラバスタチンやロスバスタチンは単独では有意には認められませんでした。

このようにスタチンによる耐糖能への影響が、
比較的早期に空腹時血糖の上昇でチェック可能な可能性がある、
と言う知見は臨床上有用な知見で、
今後はそうした時のどのような対応が、
適切であるかの検証に進んで欲しいと思います。

スタチンの種類と血糖上昇効果との関連については、
確かに薬剤ごとの違いがあるようにも見えますが、
コレステロール降下作用の強いスタチンで、
単純に血糖上昇効果も強い、
というようにも見えるので、
これも今後より精度の高い検証が必要な事項であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ヴェルディ「フォルスタッフ」(2018年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
フォルスタッフ.jpg
新国立劇場のレパートリーとして、
ヴェルディの「フォルスタッフ」が上演されています。

「フォルスタッフ」はヴェルディ晩年の円熟期のオペラで、
「マクベス」「オテロ」と並ぶ、
シェイクスピア原作ものの最後の作品です。

これは結構難しいオペラなんですよね。

物語は他愛のない喜劇で、
それほどの起伏のあるドラマチックな物語がある、
という訳ではありません。
また聴かせどころのアリアがある、
というような構成ではなく、
メインはアンサンブルを楽しむという音楽作りになっています。

ヴェルディが最後にモーツァルトに回帰した、
という感じの作品で、
何に似ていると言えば、
「フィガロの結婚」辺りに良く似ています。
ラストに妖精の森で大団円を迎える辺りなどそっくりです。

アンサンブルが聴き所なので、
歌手が揃わないと上質な公演にはなりません。

今回の舞台はエヴァ・メイやロベルト・デ・カンディアなどの海外組に、
幸田浩子さんなどの国内組が上手く配分されていて、
突出した歌唱はなかったのですが、
アンサンブルはなかなかの高レベルで、
ヴェルディの音楽の到達点を、
まずはじっくりと鑑賞することが出来ました。

エヴァ・メイは大好きなメゾも歌えるソプラノで、
久しぶりに聴きましたが、
前回リサイタルで聴いた時よりかなり引き締まった体型で、
若返った印象を持ちました。
正直最近は浪速のおばちゃん感があったのですが、
今回は衣装も良く、
素敵な若奥様を楽しそうに演じ歌っていました。
もっと歌える人だと思いますし、
予習で聴いたスカラ座のムーティ指揮版などと比べると、
とても控えめに歌っている印象ですが、
おそらく他とのバランスを取ったのかな、
と思いました。
スカラ座版はファン・ディエゴ・フローレスとインヴァ・ムーラが、
若い恋人同士という豪華版です。

そんな訳でもっと爆発するような「フォルスタッフ」も、
あり得るとは思うのですが、
今回はかなりモーツァルトに寄せたアンサンブル重視で、
今の新国立の水準としては、
充分及第点の出来であったと思います。

演出はこの初演の時に観ていて、
安っぽく感じて印象が悪かったのですが、
今回改めて観てみると、
2つの回り舞台を組み合わせて、
場面転換のストレスを解消した構造は、
決して悪くないなと感じました。
ただ、新国立のオリジナル演出は概ねそうしたものが多いのですが、
構造は悪くなくても美術の細部がおざなりで、
舞台のラフスケッチそのまま、
というような仕上がりになってしまっています。
この舞台もその代表で、
もっと細かいところが重厚に出来ていればなあ、
とそんな風に思えてなりませんでした。

いすれにしてもこの難しい作品にして、
水準を超える聴き応えのある作品となっていたことはとても嬉しく、
まずは充実した気分で劇場を後にすることが出来ました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。


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別役実「森から来たカーニバル」(2018劇壇ガルバ上演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
森の中のカーニバル.jpg
山崎一さんが立ち上げた劇壇ガルバの旗揚げ公演として、
1994年に演劇集団円が俳優座劇場で初演した、
別役実さんの「森から来たカーニバル」が、
山崎さんの演出で上演されています。

これは初演は観ていません。

童話の舞台となるような田舎町が舞台で、
そこでは巨大な像が毎年同じ季節に、
森から町にやって来て、
意図はしていないものの巨大過ぎるので、
必ず多くの人間を踏みつぶして殺してしまいます。
町の人も皆がそのことを知っていて、
象を恐れ殺そうともするのですが、
結局は抗いがたいものとしてそれを受け入れ、
それをカーニバルと呼んで狂騒的な祭りに酔いしれ、
死んで行きます。

別役さんの作品としては、
初期の「スパイものがたり」などに近い雰囲気で、
寓話的な物語がコミカルかつグロテスクに、
歌や生演奏を交えて歌芝居風に表現されています。

ただ、後半は初演では岸田今日子さんが演じた、
老女の1人芝居的雰囲気となり、
若い男女が時空を超えたお茶会を続けて幕が下りるという、
「マッチ売りの少女」的な雰囲気となります。

正直ちょっと前半と後半のバランスが悪いな、
というような印象を持つ戯曲です。

ただ、別役さんの戯曲としては登場人物も多くて、
祝祭的な派手な部分があるので、
そのために今回の上演に選ばれたようです。

今回の上演はとても贅沢でクオリティが高いもので、
小劇場の上演とは思えないキャストも豪華ですし、
衣装や美術、音楽などの舞台効果的な部分にも、
とてもとても手間が掛かっています。

80分という上演時間がとても充実していますし、
細部まで見応えがあって、
一度だけでは勿体ないと思えるくらいです。

山崎さんの演出はケラさん演出の別役作品に近いテイストで、
原作の笑いを活かしてハイテンポで進行させてゆきます。
特に人物の登場のさせ方の間合いが面白いと思いました。
ただ、奇妙で個性的なキャラクターの肉付けと、
笑いの活かし方に関しては、
ケラさんの演出に一日の長があるかな、
というようにも思いました。

本田力さんのカーニバルの男や、
山崎さん本人の演じる牧師などは、
もっともっとヘンテコリンで良いと思うのです。
その辺りにちょっと物足りなさは感じました。

別役さんの戯曲の特徴は、
作品の中で個々の人物が成長したり変化することがなく、
最初から最後まである役割を全うするだけなのですが、
それを観客の側が最初は別の人格のように誤解して、
それが誤解であったと分かるところに、
物語の勘所があり、
上手くゆくとどんでん返しのようなショックを、
観客に与えることになるのです。

その観客に誤解させる、
という部分を理解していないと、
最初から最後まで変化しない人物を、
ただ必死に演じ続けるだけ、
ということになり、
物語が単調に流れてしまうのです。

今回の山崎さんの演出は、
その部分にやや問題があるように感じました。

また、象を恐れていた筈の人々が、
途中で挙って象に殺されたいと願い行動に移すのですが、
その部分の不気味さが、
全体の狂騒的な雰囲気に隠されてしまったようにも感じました。

いずれにしても、
小劇場演劇の英知を結集した素晴らしい上演で、
台本の弱さはありますが、
是非に是非にお薦めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように

石原がお送りしました。
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インクレチン関連薬による胆管細胞癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
健康診断などの仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
DPP4で胆管細胞癌が増える.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
頻用されている糖尿病治療薬で、
胆管細胞癌のリスクが増加するという、
臨床医としては気がかりな疫学データの論文です。

インクレチン関連薬は、
世界的には2006年からその使用が開始された、
新しいメカニズムの糖尿病治療薬です。

インクレチンの代表である、
GLP-1(Glucagonlike Peptide1)は、
主に小腸から分泌される一種のホルモンで、
ブドウ糖と同じように、
膵臓のインスリン分泌細胞を刺激して、
インスリンを分泌させる働きがあります。

このホルモンは食事と共に速やかに分泌され、
その後は速やかに分解されます。

GLP-1を持続的に膵臓の受容体に結合させれば、
血糖を低下させる効果があり、
他の飲み薬の血糖降下剤と比較して、
低血糖などの副作用を、
起こし難いというメリットがあります。

更には糖尿病の病因として、
最近注目されている、
グルカゴンの分泌を抑制する効果も併せ持っています。

また、
動物実験のレベルでは、
膵臓の細胞の再生や増殖に働く、
とされています。

つまり、
血糖を降下させるのみならず、
疲弊した膵臓の細胞を復活させる可能性があると言うのですから、
糖尿病の「夢の新薬」として、
その発売時にはかなりの期待が寄せられました。

このGLP-1関連の薬には、
大きく2つの系統があります。

その1つはGLP-1と同じように、
GLP-1の受容体に結合して作用する薬で、
GLP-1アナログと呼ばれています。

もう1つは身体に存在するGLP-1を、
速やかに分解する酵素である、
DPP4を阻害することによって、
結果としてGLP-1の効果を強めよう、
という薬で、
DPP4阻害剤と呼ばれています。

現行日本においては、
GLP-1アナログとしてリラグルチド(商品名ビクトーザ)と、
エキセナチド(商品名バイエッタ)。
DPP4阻害剤として、
シダグリプチン(商品名ジャヌビアとグラクティブ)、
ビルダグリプチン(商品名エクア)、
アログリプチン(商品名ネシーナ)、
リナグリプチン(商品名トラゼンタ)、
アナグリプチン(商品名スイニー)、
テネリグリプチン(商品名テネリア)、
サキサグリプチン(商品名オングリザ)
などが使用されていて、
糖尿病治療薬の一大勢力となっています。

このタイプの薬は日本においては、
海外以上に評価が高く、
2型糖尿病の第一選択薬に近い位置に、
現在では置かれています。

ただ、膵炎や膵癌のリスクを上げるのではないか、
などの有害事象や副作用の危惧が指摘されている薬でもあります。

今回問題視されているのは、
このインクレチン関連薬と胆管細胞癌との関連です。

胆管細胞癌は稀ですが早期発見が難しく、
予後の悪い癌として知られています。

胆管細胞にはインクレチンの受容体があり、
その刺激が胆管細胞の増殖に繋がる、
という知見があります。
こうした知見からはインクレチン関連薬と胆管細胞癌との関連が示唆されますが、
実際の臨床データにおいては、
胆管細胞癌自体の罹患率が低いこともあって、
これまでにあまり明確な関連が示されてはいません。

今回のデータはイギリスのプライマリケアのデータベースを活用したもので、
2007年から2017年に新規に糖尿病治療薬を開始した、
トータル154162名の糖尿病成人患者を対象として、
胆管細胞癌の発症リスクの差を比較検証しています。

その結果、
年間のべ614274名の観察において、
105件の胆管細胞癌が発症していて、
年間人口10万人当り17.1件という発症率になっています。

インクレチン関連薬以外の糖尿病治療薬の使用時と比較して、
DPP4阻害剤の使用では胆管細胞癌の発症リスクが、
1.77倍(95%CI: 1.04から3.01)有意に増加していました。
一方でGLP1アナログの使用では、
増加する傾向はあるものの有意ではありませんでした。

今回の結果をどう考えるかは微妙なところだと思いますが、
インクレチン関連薬の使用時には、
胆道系の異常の有無にも目を配ることが、
最低限必要なことではあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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最も安全な入浴法は何か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
入浴法と身体リスク.jpg
2014年のInternational Journal of Biometeorology誌に掲載された、
色々な入浴法の安全性を比較した論文です。
愛知医科大学などの研究者による日本発の研究です。

日本の伝統的な入浴法は、
40度前後のお湯に首まで浸かるというもので、
これを全身浴(全身温浴)のように言うことがあります。

ただ、この全身浴では全身に水圧が掛かるので、
入浴の前後で血圧の急変動が起こりやすく、
交感神経が緊張して心臓にも負担が掛かります。
頭を除く全身が高温に包まれるので、
体温は過度に上昇する可能性が高くなり、
脱水が進行する可能性もあります。

よく引用されている東京都長寿医療センターの調査によると、
2011年の1年間で全国で17000人余りが、
こうした入浴前後の身体の変化をきっかけとして、
入浴中に急死したと推計されています。
これは交通事故による死亡者数の3倍を超える人数です。

このように危険な行為である全身温浴ですが、
それでも多くの人が好んで行っているのは、
入浴にはリラックス効果があり、
気分が良くなり疲れが取れると、
多くの人が実感しているからです。

それでは、
入浴法を変えることにより、
全身温浴の健康へのリスクを、
軽減させることは可能なのでしょうか?

元々その目的で、
2000年頃に日本の研究者により推奨されたのが、
38度程度のぬるめのお湯に、
お腹の上くらいの部分まで時間を掛けて浸かる、
所謂「半身浴」です。

この半身浴はその後ダイエット効果が高いと称され、
一般に大きく広がりましたが、
温浴効果として全身浴に勝るということはそもそもありませんし、
上半身が冷えることは、
その時の室温にもよりますが、
結構不快に感じることがあります。

それでは温浴効果とリラックス効果があり、
安全性にも優れた入浴法はないのでしょうか?

欧米ではサウナの健康効果が研究されていて、
日本的な入浴と簡単に併用できるものとして、
ミストサウナが注目されています。

そこで今回の検証では、
7人の健康な男性ボランティア(おそらく学生)に、
38℃の半身浴を20分間と、
42℃のミストサウナと半身浴の組み合わせで20分間、
そしてミストサウナに顔面のみ冷風を送風して20分間という、
3パターンの入浴法を比較して、
深部体温の上昇や脈拍血圧の変化などの違いを検証しています。

その結果、
半身浴と比較しても、
血圧や脈拍、体温の上昇は、
ミストサウナでは急激ではなく、
その温熱効果は保たれたまま、
より安全な入浴法であると考えられました。
入浴による水分喪失も、
半身浴と比較してミストサウナでは軽度にとどまっていました。
身体に与える影響には違いはありませんでしたが、
顔に送風することは、
入浴の快適さを高めていました。

最近ではまた全身浴を、
推奨されるような「専門家」の方がいらっしゃるのですが、
「入浴の科学」のまともなエビデンスは少なく、
殆どは日本の小規模の研究に過ぎない、
という点はしっかり押さえておく必要があると思います。

まあ、快適にリラックス出来ると実感される入浴法が、
個人には合っているのではないでしょうか?
怪しげなうんちくに惑わされるのは危険だと思いますし、
そもそも入浴という行為自体、
一定の負担は身体に掛けるものなので、
安全ではないという点も理解しておく必要があると思います。
この点は運動と同じだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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第38回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はいつもの告知です。

こちらをご覧下さい。
第38回健康教室の画像.jpg
次回の健康教室は、
12月22日(土)の午前10時から11時まで(時間は目安)、
いつも通りにクリニック2階の健康スクエアにて開催します。

今回のテーマは「最新版入浴と健康の基礎知識」です。

入浴と健康との関係も、
食事と健康との関係と同じように、
テレビや週刊誌などの健康情報では、
お馴染みのテーマの1つです。

毎日のように、
「こんな入浴法が健康に良い」
というような情報が流布されています。

最近ではヒートショックプロテイン入浴法という、
ちょっと不可思議にも思える入浴法なども流行しています。

入浴習慣というのは確かに健康に良い、というイメージがあり、
そうした研究も世界中で行われていて、
一定の健康効果が確認されています。

しかし、それは主にサウナなどの話で、
日本の伝統的な入浴法、
比較的高温のお湯に首まで長く浸かる、
という方法によるものではありません。

半身浴というのが一時期流行しましたが、
これも日本のみの発想で、
海外にそうした習慣や、
それを全身浴と比較するような考え方が、
あるという訳でもありません。

つまり、日本で議論されている入浴健康法なるものは、
ほぼ日本のみのローカルルールで、
科学的裏付けがあるように言われることがありますが、
それはほぼ特定の日本の研究者によるもののみで、
それほど精度の高い研究が多く行われているという訳ではなく、
それも予め結論が想定されているような研究が、
実際には殆どであると思います。

入浴の健康効果は、
実際にどの程度のものなのでしょうか?

今回もいつものように、
分かっていることと分かっていないこととを、
なるべく最新の知見を元に、
整理してお話したいと思っています。

ご参加は無料です。

参加希望の方は、
12月20日(木)18時までに、
メールか電話でお申し込み下さい。
ただ、電話は通常の診療時間のみの対応とさせて頂きます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新生児への乳酸菌製剤の敗血症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
LP乳酸菌の敗血症予防効果.jpg
2017年のNature誌に掲載された、
乳酸菌製剤の新生児の使用についての研究です。

昨年発表されてかなり話題になった知見です。

発展途上国においては、
新生児から乳児期の死亡の多くが、
細菌感染症などをきっかけとする敗血症と関連していると、
報告されています。

しかし、その有効な予防法は確立されていません。

新生児においてはまだ免疫系も充分に成熟しておらず、
腸内細菌叢も大人より遙かに少ない細菌で構成されています。

これはつまり、
この時期に特定の乳酸菌製剤を使用すれば、
大人より遙かに大きな影響を身体に与え、
それが腸内免疫を活性化させて、
敗血症に結び付く重症感染症を予防する可能性がある、
ということを示唆しています。

そこで今回の研究では、
インドにおいて新生児4556名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はラクトバチルス・プランタラムという、
ピクルスやぬか漬けなどに含まれる乳酸菌と。
その栄養源として、腸への定着に有用とされる。
フラクトオリゴ糖との合剤を生後2から3日から7日間継続使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
60日間の経過観察を行っています。

その結果驚いたことに、
敗血症と死亡を併せたリスクは、
乳酸菌製剤群で40%
(95%CI: 0.48から0.74)有意に低下していました。

つまり、乳酸菌が早期に新生児の腸に定着することにより、
敗血症と死亡のリスクが4割も低下するという、
ちょっとビックリするようなクリアな結果が得られたのです。

腸内細菌が健康と大きな関連を持っている、
というようには言っても、
それを明確に証明するような介入試験のデータは、
実際には殆ど得られていません。

その意味で、
ただ一週間プロバイオティクスを飲ませるだけで、
60日間の生命予後が明らかに改善するとすれば、
それはもう画期的な知見です。

ただ、これに匹敵するような追試のデータはまだないようですし、
新生児期に使用するという特殊性が、
こうした結果に結び付いているとすると、
それが果たして長期的にお子さんにとって良い結果になるのか、
というような点についてもまだ未知数ではないかと思います。
新生児期には母乳やミルクだけを飲んでいるので、
シンプルな細菌叢であるのが当然で、
そこに無理に別種の菌を定着させることが、
必ずしも良いことであるとは言い切れないからです。

今後の研究の積み重ねを注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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乳酸菌は小児の腸炎には効かない?(2018年の介入試験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

2018年11月のthe New England Journal of Medicine誌に、
乳酸菌製剤の小児の腸炎に対する有効性を検証した、
2編の論文が同時に掲載されました。

今日はその背景から、
2編の論文の内容についてご説明したいと思います。

人間は多くの腸内細菌と共存しており、
その腸内細菌叢がバランスの取れた状態であることが、
人間の健康のために非常に重要であることが、
最近これまで以上に注目されています。

そして、腸内細菌叢の乱れが、
顕著に表れた症状の1つが下痢です。

その中でもウイルスや細菌など多くの原因による、
乳幼児を含む小児の急性胃腸炎は、
嘔吐や下痢などの症状により脱水を来して点滴が必要となることも多く、
特に衛生環境や医療環境の悪い途上国では、
深刻な問題となっています。

急性胃腸炎において腸内細菌叢が乱れることは間違いがなく、
このため症状の改善を期待して、
乳酸菌製剤がしばしば使用されます。

現行幾つかの治療指針において、
小児の急性胃腸炎に対する乳酸菌製剤の使用が、
一定の有効性があるとして推奨されています。

しかし、こうした慣用的な治療の常で、
この治療にはそれほどしっかりと裏付けがある訳ではありません。

臨床試験は幾つか行われてはいるのですが、
例数もそれほど多くはなく、
偽薬を使用したような厳密なデザインの試験も、
あまり行われたことがありませんでした。

そこで今回、世界的には最も使用頻度の高い乳酸菌製剤である、
ラクトバチルス・ラムノーサスGG株(LGG乳酸菌と称されて有名)
を用いた厳密なデザインの臨床試験が、
2つの別個の研究グループによって施行され、
今回のNew England…の紙面を飾っています。

まず1本目がこちらです。
LGG乳酸菌の腸炎への効果単独.jpg
こちらはアメリカの小児救急の10施設において、
生後3ヶ月から4歳で急性胃腸炎で病院を受診した、
トータル971名をくじ引きで2つに分け、
本人家族にも担当医にも分からないように、
一方はLGG乳酸菌を1日2回5日間使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
開始後1ヶ月までの経過観察を行っています。

その結果治療開始後14日の時点での胃腸炎の重症度と、
下痢や嘔吐の継続期間、1ヶ月までの家族への感染率には、
乳酸菌群と偽薬群とで有意な差はありませんでした。

要するに乳酸菌は効果がなかったという結果です。

次にもう1つの論文がこちらです。
LGG乳酸菌の腸炎への効果混合.jpg
こちらはカナダの6カ所の小児救急医療機関において、
同じく生後3から4歳までの急性胃腸炎の小児827名を、
くじ引きで2つに分けると、
一方はラクトバチルス・ラムノーサスとラクトバチルス・ヘルベティカスの合剤を、
同じように使用して、偽薬との比較を行っています。
ラクトバチラス・ヘルベティカスはカルピスに含まれている乳酸菌です。

その結果矢張り使用14日の時点での症状には、
乳酸菌群と偽薬群との間で、
有意な差はありませんでした。

このようにこれまでで最も大規模かつ厳密なデザインで施行された、
2つの臨床試験の結果はほぼ同じで、
乳酸菌製剤を病初期に5日間使用してもしなくても、
急性胃腸炎の経過には関連はありませんでした。

これはLGG乳酸菌に限ったことである可能性もありますが、
急性胃腸炎の下痢に乳酸菌が良いというのは、
腸内細菌叢の乱れを補正するのではないか、
というイメージによるところが大きく、
実際にはあまり効果がないというのが、
どうやら事実であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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