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PD-1阻害剤使用時のインフルエンザワクチン接種のリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PD1阻害剤とインフルエンザワクチン.jpg
2018年のJournal for ImmunoTherapy of Cancer誌に掲載された、
今話題の癌免疫療法の治療薬と、
インフルエンザワクチンの副反応との関連についての論文です。

本庶佑先生のノーベル賞受賞で注目された、
癌免疫療法治療薬であるPD-1阻害薬は、
癌が押さえ込んでいる身体の免疫細胞の機能を、
車のブレーキを解除するようにして活性化する、
というタイプの薬です。
免疫チェックポイント阻害剤という言い方をされることもあります。

この免疫チェックポイント阻害剤は、
これまでにない非常に有用な癌治療薬ですが、
免疫系に働くという性質から、
自己免疫疾患などの免疫異常が、
その有害事象として発症するリスクも指摘されています。
これまでに報告されている重篤な有害事象としては、
免疫性肝炎や間質性肺障害、重症筋無力症などがあります。

インフルエンザなどのウイルス感染は、
癌の患者さんでは重症化し易く、
その予後にも大きな影響を与えることは明らかです。

従って、その意味では感染予防のためのワクチン接種は、
癌治療中の患者さんでは推奨されるところです。

所謂古いタイプの抗癌剤を使用中の患者さんにおいては、
インフルエンザワクチンは安全に接種可能と考えられています。
ただ、患者さんの免疫機能は低下しているので、
その効果は通常の方よりは弱くなることが通常です。

それでは、PD-1阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤を、
使用中の患者さんの場合はどうでしょうか?

癌治療中ということで考えれば、
インフルエンザワクチンの接種は有益だと思われます。
PD-1阻害剤は免疫を賦活する薬ですから、
その有効性もむしろ高いことが想定されます。
その一方でこの薬には自己免疫などの免疫系の合併症がありますから、
ワクチン接種に伴う有害事象も、
多いのでは、という可能性があります。

今回の検証はスイスにおいて、
肺癌の治療のためにPD-1阻害剤を使用中で、
3価の不活化インフルエンザワクチンを接種した23名の、
抗体上昇などの有効性と有害事象を観察したものです。

その結果11名のコントロール群と比較して、
23名のPD-1阻害剤治療中の患者さんの、
インフルエンザワクチン接種後の抗体上昇には、
有意な違いは認められませんでした。

その一方で23名中52.2%に当たる12名で、
皮膚病変や関節炎、脳炎や腸炎などの、
免疫系の関与が疑われる有害事象が認められ、
そのうちの6名は重症の事例と判断されました。
(重症度分類の3/4)
ワクチン接種から症状出現までの時間は、
中央値で3.2か月でした。

これはまだ症例数も少ないデータで、
これをもってPD-1阻害剤使用時のワクチン接種に、
リスクが高いとは言えませんが、
こうした免疫系に作用する薬の使用時のワクチン接種においては、
免疫系の有害事象の起こる可能性を想定して、
その適応は慎重に判断する必要がありますし、
接種後は数か月間は、
慎重に経過をみる必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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