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急性虫垂炎の抗菌剤治療の長期予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
急性虫垂炎の薬物治療.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
急性虫垂炎の初期治療についての論文です。

急性虫垂炎(盲腸)の初期治療は、
以前は手術治療が第一選択でしたが、
抗菌剤の進歩と高解像度のCT検査などによる診断の進歩により、
抗菌剤による治療も第一選択として検討されるようになりました。

急性虫垂炎の合併症で最も問題となるのは、
炎症部位の穿孔です。
要するに虫垂に穴が開いて腹膜炎になることです。

画像診断の進歩がある前には、
診察や検査をしても、
穿孔や腹膜炎が起こっていないかどうかを、
100%判断することは困難でした。
そのために疑いがあれば、
手術が選択されることが多かったのです。

ただ、CT検査などでほぼ確実に、
穿孔の有無が診断されることを前提にすると、
穿孔や腹膜炎のない単純性急性虫垂炎は、
抗菌剤で様子を見る方針でも、
大きな問題はなさそうです。

しかし、本当にそうであるかどうかは、
精度の高い臨床試験において検証する必要があります。

上記文献の著者らはフィンランドにおいて、
フィンランドにおいて、
18歳から60歳の単純性急性虫垂炎の患者さん、
トータル530名を、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方は虫垂切除術を行ない、
もう一方は抗生物質による治療を行なって、
その後1年間の経過観察を行なっています。
抗生物質による治療で、
虫垂炎の再燃が認められた場合には、
もう一度抗生物質を使用するのではなく、
原則として手術を行なうという方針になっています。

その結果、抗生物質が選択された患者さんのうち、
72.7%では1年の観察期間において、
手術が必要となることはありませんでした。
この結果は2015年のJAMA誌に論文化されています。

ただ、これはあくまで1年間のみの結果で、
より長期の予後についてはまだ明らかではありません。

今回のデータはより長期の5年の観察期間の、
抗菌剤使用群の予後を検証したものですが、
その間に虫垂炎の再発の事例は、
最初の登録の39.1%において認められました。

この結果をどう考えるかは微妙なところで、
単純性急性虫垂炎の診断が確定的なものであれば、
抗菌剤の治療によりそのうちの6割は、
5年間再発なく経過するのですから、
抗菌剤を第一選択とする判断は概ね妥当なものだ、
というようにも言えます。
その一方で4割が再発していることを考えると、
患者さんによっては手術の方が良い、
という選択があっても良いようにも思います。

いずれにしても、こうしたデータが得られた意義は大きく、
今後の急性虫垂炎の治療においては、
こうした知見を元にして、
個々の患者さんにおいて検討し、
患者さんにも説明した上で、
治療を選択する必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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