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2018年09月| 2018年10月 |- ブログトップ
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カミュ「誤解」(新国立劇場レパートリー) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
カミュ誤解.jpg
新国立劇場の演劇のレパートリーとして、
カミュの「誤解」が上演されています。
その舞台に足を運びました。

これはちょっと困りました。

文学作品としては確かに名作とは思うのです。
ただ、その作品の書かれた時代背景というものもありますし、
今まともに上演して、
面白いと思える作品にするのは、
非常に難しいという感じがします。

そして、結果として、
面白い舞台にはなっていませんでした。

内容はある暗い国の宿屋に母親と娘がいて、
明るい別の国へ行く旅費を貯めるために、
宿泊客を殺して金を奪うことを繰り返しているのですが、
ある時殺してしまった青年は、
実は20年前に生き別れた娘の兄で母親の息子だったのです。
それを知って母親は自分も自死しますが、
生き残った娘は青年の妻に呪いの言葉を投げかけ、
何処かに去って行きます。
もう1人何も言わない召使いの老人が登場するのですが、
ラストで救いを求める青年の妻に対して、
一言「駄目だ!」と言い放ちます。
それでお終い。

ストーリーは非常に古典的な因縁話です。
日本であれば歌舞伎を思い出しますし、
鬼子母神のお話なども想起されます。
欧米ではギリシャ悲劇を連想するところで、
知らないで父親を殺し、母親と寝る、
というような悲劇の焼き直しです。
最後に一言しか発しない老召使いは、
勿論神様の比喩になっています。

ただ、勿論カミュがこの作品を戦時中に執筆した意味は、
ギリシャ悲劇そのものがやりたかったのではなく、
暗い国で登場人物が皆、
それぞれにやり方で必死に生き、
幸福を求めていながら、
それが全て最悪の結果に至る、
という現代に通底する不毛さを、
そうした構造で浮かび上がらせたかったのだと思います。

現在でも勿論、
そうした不条理は形を変えて、
今の人間を苦しめているとは思います。
ただ、それはおそらく、
この物語に描かれているような形ではないので、
この作品を現代に響く物にすることは、
そうたやすい作業ではないように思います。

そこで演出ということになるのですが、
個人的には落第点と感じました。

この新国立劇場の小劇場は、
キャパの割に舞台は大きくて、
今回はそれを大きな戸板を並べた素舞台にしています。
そこに緞帳のようにも見え、巨大な船の帆のようにも見える、
大きな白い布を装置として配して、
ある時はそれが部屋の壁になり、
ある時は翻って海を表現します。
装置はそれ以外に椅子とベッドがあるだけです。
原作は3幕でそれも複数の場に分かれていますが、
この上演では布の装置と照明の変化を付けるだけで、
幕間はなく連続して上演しています。

物語が抽象的なので舞台を抽象化した、
という意図は分かります。

しかし、これでは全体があまりに単調に流れてしまいますし、
原作では被害者を海に沈めるような場面は描かれておらず、
登場人物が部屋を去るだけであるのに、
この演出では布が翻り、
青い照明が海を表現して、
そこに人物が去って行く、という描かれ方をしているので、
逆に何が起こったのかが分かりません。
青年も母親も娘も、
同じように去って行くので、
その違いが分からないというのが、
この演出の最大の欠点です。

そもそもこうした抽象的な物語であるからこそ、
舞台装置はリアルで即物的な方が、
その効果を挙げるには有効なのではないでしょうか?

素舞台で朗々と登場人物が恨み節の独白を続けるのでは、
ギリシャ悲劇と何ら変わらないことになってしまいます。
抽象を具象にしたのが作品の本質なのに、
それを抽象に戻しては意味がないのではないでしょうか?

典型的な頭でっかちの駄目演出と感じました。

役者さんの演技も、
原田美枝子さんにしても、
小島聖さんにしても、
もっとリアルで肉感的な芝居の出来る人なのに、
変な絶叫を交えた、
ギリシャ悲劇もどきの演技をさせて、
その個性を奪っている感じがしたのが、
これも演出の凡庸さを示していると思います。

思えばこうした欧米の前衛劇を、
鮮やかに日本の土壌に移し替えたのが別役実さんで、
彼の「病気」という作品では、
この「誤解」と全く同じように、
最後に唐突に神が出現して、
主人公を一言罵倒して終わり、
というラストに至ります。

この作品を観て思うことは、
確かにお勉強としては、
こうした作品を上演することにも、
一定の学術的意味があると思いますが、
その意味するところを現代の観客に伝えるには、
別役さんの芝居を上演した方が、
100倍良く伝わるように感じました。

カミュの原作を深く知ることが出来たのは良かったのですが、
観劇自体は残念ながら時間の無駄でした。
関係各位には失礼な言い方をお許し頂きたいのですが、
これが正直な感想です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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唐十郎「黄金バット~幻想教師出現~」(唐組・第62回公演) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
黄金バット.jpg
唐組の第62回公演として、
状況劇場の終わり近くの1981年に初演された戯曲が、
唐先生自身の関わる舞台としては、
37年ぶりに再演されました。

初演の時は高校生で、
神保町の書泉グランデでポスターを見て、
観に行こうかどうしようかと、
迷ったことを覚えています。
でも結局は行きませんでした。
僕の状況劇場の初体験はその翌年の「二都物語」の再演です。

2014年に初期の唐組のメンバーが多く在籍する劇団、
オルガン・ヴィトーでテント芝居として上演されていて、
僕はその時に一度観ています。
その時の舞台は原作をかなり改変していて、
セットや美術も貧相なものでしたが、
原作の持つかなり特異でダークな雰囲気は、
しっかりと感じることが出来ました。

この芝居は唐先生の多くの戯曲の中でも、
そのグロテスクさや暗い情念、
ヒロインの造形の複雑な危うさのような物で際立っています。

代表作とは言えないのですが、
ある種の爛熟味というのか、
状況劇場の後半、非常に内省的な時期の、
他にはない暗い魅力があるのです。

今回の唐組による上演は、
久保井研さんと唐先生のコラボによる演出が、
原作の戯曲をオリジナル通りに、
繊細に立ち上がらせているのが素晴らしく、
舞台装置も美術も音効も、
全体にやや小粒な感じは否めないのですが、
完成度が高く原作に忠実に再現されていて、
アングラの精髄を感じることが出来ました。

今回は唐組としては非常に舞台も大仕掛けで、
ラストには外のポールを使った宙乗りがあり、
小ぶりながらモグラタンクもしっかりと登場します。
屋体崩しのタイミングも、
小気味よいほどの素晴らしさです。
多分唐先生の舞台でこうした宙乗りなどの仕掛けが登場するのは、
30年以上ぶりだと思います。
これにはとても感動しました。

役者陣は、勿論ヒロインの藤井由紀さんを含めて、
唐組の生え抜きが頑張っていましたし、
客演も内野智さんに月船さららさんといぶし銀のセンスです。
特に狂気の女教師を演じた、
月船さんの怪演が素晴らしく、
この舞台をワンランク上のものにしていました。
また、初演では唐先生自身が演じたかまいたち役の岡田悟一さんが、
熟練した唐芝居独自の悪党を、
惚れ惚れとする質感で演じていました。
こちらも拍手喝采の出来映えです。

客席はかなりシルバー度の高いものでしたが、
アングラ芝居の精髄を蘇らせて後世に伝えるような希有の舞台で、
シルバー世代に独占させておくのは勿体ないと思います。
是非幅広い世代の皆さんに観て頂きたいですし、
「これぞアングラ!」というある種の演劇的奇跡を、
その目に焼き付けて頂きたいと思います。

昔を知る者としては、
全体にちょっと小粒ですけれど、
でも素晴らしいです。

アングラ好きの方には必見です。
楽しいですよ。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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妊娠中の3種混合ワクチンの胎児への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Tdapの妊娠中の接種効果.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
妊娠中に3種混合ワクチン(Tdapワクチン)を、
お母さんに接種することのお子さんへの効果についての論文です。

3種混合ワクチン(Tdap)というのは、
百日咳とジフテリアと破傷風のトキソイドを混合したワクチンで、
この3種類の病気に対する予防のために使用されるものです。

日本においては、
そこに不活化ポリオの抗原を混合したものが、
4種混合ワクチンとして使用され、
生後3か月齢から合計4回の接種が定期接種として行われています。
そしてDTワクチンと言って、
3種混合ワクチンのうち百日咳のトキソイドを除いた、
ジフテリアと破傷風のトキソイドのみのワクチンを、
11から12歳時に追加接種として行っています。

しかし、この方法では、
百日咳の免疫は早期に低下してしまうので、
年長児から成人の百日咳が増え、
それが小さなお子さんにも流行するという危険を除外出来ません。

そこでアメリカなどにおいては、
思春期や大人用の3種混合ワクチン(Tdap)が、
日本のDTワクチンの代わりに10代で接種されています。

更に2013年にアメリカのCDCは、
妊娠中の女性に27から36週の時期に、
3種混合ワクチンを接種することにより、
新生児の血液中の百日咳毒素に対する抗体価を高め、
3か月齢以前に発症する百日咳を予防しよう、
という方法を推奨しています。

振り返って日本においては、
未だにDTワクチンの接種が継続されていて、
DTワクチンを3種混合ワクチンに切り替えるという検討は、
既に2010年には開始されて、
臨床試験も行われているのですが、
まだ足踏みのまま時が流れています。
妊娠中の3種混合ワクチンの接種も、
勿論公式には認められていません。

それはともかく…

アメリカにおいては妊娠中の3種混合ワクチンの接種が,
認められはているものの、
それが実際に胎児の免疫を賦活しているかについては、
あまり実証的なデータが存在していませんでした。

今回の研究はその点を明らかにしようとしたもので、
妊娠27週から36週の時期に3種混合ワクチンを接種した、
妊娠中の女性312名を、
接種しなかった妊娠中の女性314名と比較したところ、
出生時に臍の緒から採取された血液での、
新生児の血液中の百日咳毒素に対する抗体価は、
ワクチン接種群で有意に増加していて、
未摂取群の平均でおよそ4倍に上昇しており、
その効果は妊娠27から30週で接種した場合に、
最も高値となっていました。
厳しい基準で勘案しても、
ワクチン接種群の6割で感染予防レベルの免疫が認められ、
一方で未接種群では12%の新生児しか、
そのレベルの免疫を保有はしていませんでした。

このように妊娠後半期における3種混合ワクチンの接種が、
新生児の百日咳予防に有効であることはほぼ間違いがなく、
今後日本においてもその適応については、
慎重に検討する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アロプリノールの腎機能との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アロプリノールと腎機能低下.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
尿酸降下剤のアロプリノールの、
腎機能への影響を検証した論文です。

高尿酸血症があって痛風発作を起こすと、
症状が治まってから尿酸降下剤が開始されます。
複数の尿酸降下剤の中で、
世界的に最も使用されているのは、
アロプリノール(商品名ザイロリックなど)です。

アロプリノールは尿酸合成酵素の阻害剤ですが、
稀ではあるものの重症薬疹の原因となると共に、
腎機能低下時にはその血中濃度の増加により、
腎不全などの有害事象のリスク増加に繋がると考えられています。

そのために医者は腎機能低下時には、
アロプリノールは少量からゆっくり増量するのが通常で、
またこの薬剤を使用中に腎機能が低下した時には、
アロプリノールの副作用であることを想定して、
薬は中止や変更される場合が多いと思います。

ただ、実際にはアロプリノールに腎毒性がある、
という根拠はあまり明確なものはなく、
少量から開始したからと言って、
それが防げるという根拠もありません。

今回の研究はその臨床的な問題を明らかにしようとしたもので、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用して、
高尿酸血症で1日300mg以上のアロプリノールを、
新規に開始したその時点で腎機能低下のない4760名の患者さんを、
年齢などの条件をマッチさせた同数のコントロールと比較して、
平均で4から5年の観察期間において、
腎機能低下の進行の程度を比較検証しています。

その結果、
1日300mg以上のアルプリノールの継続使用は、
その後のステージ3以上の慢性腎臓病の発症リスクを、
13%(95%Ci: 0.77から0.97)有意に低下させていました。
このアロプリノールの腎保護作用は、
1日の使用量が300mg未満では有意には認められませんでした。

今回のデータからは、
充分量のアロプリノールを使用することで、
むしろ腎機能低下は抑制される可能性がある、
という可能性が示唆されます。

これはあくまで腎機能が正常な状態で始めた場合で、
腎機能低下時のアルプリノールの使用に、
腎機能低下を抑制するような作用があるとは言えませんが、
腎機能低下のリスクを考えてアロプリノールを減量する、
というような処方は、
実際には有効に機能していない可能性があるという指摘は重要で、
今後より詳細な検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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急性虫垂炎の抗菌剤治療の長期予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
急性虫垂炎の薬物治療.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
急性虫垂炎の初期治療についての論文です。

急性虫垂炎(盲腸)の初期治療は、
以前は手術治療が第一選択でしたが、
抗菌剤の進歩と高解像度のCT検査などによる診断の進歩により、
抗菌剤による治療も第一選択として検討されるようになりました。

急性虫垂炎の合併症で最も問題となるのは、
炎症部位の穿孔です。
要するに虫垂に穴が開いて腹膜炎になることです。

画像診断の進歩がある前には、
診察や検査をしても、
穿孔や腹膜炎が起こっていないかどうかを、
100%判断することは困難でした。
そのために疑いがあれば、
手術が選択されることが多かったのです。

ただ、CT検査などでほぼ確実に、
穿孔の有無が診断されることを前提にすると、
穿孔や腹膜炎のない単純性急性虫垂炎は、
抗菌剤で様子を見る方針でも、
大きな問題はなさそうです。

しかし、本当にそうであるかどうかは、
精度の高い臨床試験において検証する必要があります。

上記文献の著者らはフィンランドにおいて、
フィンランドにおいて、
18歳から60歳の単純性急性虫垂炎の患者さん、
トータル530名を、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方は虫垂切除術を行ない、
もう一方は抗生物質による治療を行なって、
その後1年間の経過観察を行なっています。
抗生物質による治療で、
虫垂炎の再燃が認められた場合には、
もう一度抗生物質を使用するのではなく、
原則として手術を行なうという方針になっています。

その結果、抗生物質が選択された患者さんのうち、
72.7%では1年の観察期間において、
手術が必要となることはありませんでした。
この結果は2015年のJAMA誌に論文化されています。

ただ、これはあくまで1年間のみの結果で、
より長期の予後についてはまだ明らかではありません。

今回のデータはより長期の5年の観察期間の、
抗菌剤使用群の予後を検証したものですが、
その間に虫垂炎の再発の事例は、
最初の登録の39.1%において認められました。

この結果をどう考えるかは微妙なところで、
単純性急性虫垂炎の診断が確定的なものであれば、
抗菌剤の治療によりそのうちの6割は、
5年間再発なく経過するのですから、
抗菌剤を第一選択とする判断は概ね妥当なものだ、
というようにも言えます。
その一方で4割が再発していることを考えると、
患者さんによっては手術の方が良い、
という選択があっても良いようにも思います。

いずれにしても、こうしたデータが得られた意義は大きく、
今後の急性虫垂炎の治療においては、
こうした知見を元にして、
個々の患者さんにおいて検討し、
患者さんにも説明した上で、
治療を選択する必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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水を飲むことで膀胱炎は予防出来るのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
水の膀胱炎予防効果.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
水を多めに飲むことが、
膀胱炎の予防になるのかどうかを、
科学的に検証した論文です。

これは他愛なく思えますが、
臨床的には重要な知見です。

膀胱炎などの尿路感染症は女性には非常に多い症状で、
その原因の多くは大腸菌の感染によるものです。

そのため、症状の早期改善のために、
通常抗菌剤による治療が行われます。

ただ、この症状は繰り返すことが多く、
抗菌剤を使用しても、
必ずしも再発の予防効果は実証されていません。

それでは、効率的に尿路感染症を予防する方法はないのでしょうか?

一般の方と医療者の双方が、
水を沢山飲むことを、
日々の習慣として勧めています。

しかし、その有効性は、
実はあまり科学的に検証されたものではありません。

そこで今回の研究はアメリカにおいて、
過去1年間に3回以上の膀胱炎の治療歴のある女性で、
1日の飲水量が1.5リットル未満である140名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は1日1.5リットル以上の水を飲むことを指示し、
もう一方は特にそうした指示はせずに、
1年間の経過観察を行っています。

定期的に尿量と浸透圧を測定して、
飲水量が守られているかどうかと、
危険のあるような飲み方がされていないかを検証しています。

その結果、
1年間の平均の膀胱炎発症回数は、
1.5リットル以上の飲水指示群では1.7回であったのに対して、
コントロール群では3.2回で、
飲水の指示により、
膀胱炎発症回数は差し引き1.5回(95%CI: 1.2から1.8)
有意に抑制されていました。
抗菌剤の使用頻度も同様に抑制されていました。

このように、
特に腎臓の病気などのない方であれば、
1日の飲水量を1.5リットル以上に調整することで、
膀胱炎の予防には一定の有効性があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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肺炎球菌の感染経路と手洗いの重要性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
肺炎球菌の感染経路.jpg
2018年のEur Respir J誌に掲載された、
肺炎球菌という細菌の感染経路を検証した論文です。

肺炎球菌は、
急性中耳炎や副鼻腔炎、肺炎や髄膜炎などの原因となる細菌で、
特に小さなお子さんや高齢者では、
そうした感染症が重症化して命に関わることは稀ではありません。
そのために感染やその重症化を予防するためのワクチンが、
小さなお子さんや高齢者の感染予防のために使用されています。

この肺炎球菌は鼻腔に感染して、
そこでまず増殖し、
それが身体の免疫状態の低下やウイルス感染などに伴って、
肺炎や髄膜炎などより重症の感染症の原因となります。
5歳未満の年齢では40から90%に鼻腔の感染が存在し、
大人でも10%程度では鼻腔に、
肺炎球菌が検出されると報告されています。

それでは、肺炎球菌はどのようにして、
鼻腔に侵入して感染するのでしょうか?

今回の研究では健常なボランティア63名を対象として、
肺炎球菌の集団(コロニー)を、
濡れた手に接触させ、
その手の臭いを嗅いだ場合と、
その手で鼻をほじったりした場合、
更に1、2分経って手が乾燥してから、
同様の行為をした場合の4種類で、
その後9日間経過した時点での、
鼻腔の肺炎球菌のコロニー形成の有無を比較検証しています。

鼻腔への肺炎球菌の保菌の有無は事前に確認し、
保菌していない対象者に限って実験を行っています。

勿論毒性の強い菌は使用されていませんが、
あまり進んでやる気は起こらない、
日本ではほぼ不可能なタイプの実験です。

その結果、
濡れた指で鼻をほじった場合には、
40%という高率で感染が成立し、
濡れた手の臭いを嗅んだ場合にも、
30%で感染が成立しましたが、
手を乾燥させた場合には、
感染は殆ど起こりませんでした。

このように、
濡れた状態の手が汚染されると、
それが鼻に近づくだけでも高率に感染が起こることが、
人間の実験で確認されています。

不潔な手は良く洗ってすぐに乾燥させることで、
肺炎球菌の感染は多くの場合に予防が可能であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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前川知大「ゲゲゲの先生へ」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ゲゲゲの先生へ.jpg
イキウメの前川知大さんと、
佐々木蔵之介さんがタッグを組んで、
水木しげるさんの世界に想を得た新作舞台が、
今池袋の芸術劇場で上演されています。

これは前川さんらしい奇想が活きた舞台で、
舞台効果もまずまずで面白く鑑賞しました。

ただ、平成60年という舞台の設定と、
そこに展開される安っぽい現代社会批判のようなものが、
何か脳天気過ぎる感じがして、
その点はかなり不満でした。
もっとも、今の演劇作品の大半は、
そうした世界観を共有しているようです。
何となく、芝居を観るのもうんざりする今日この頃です。

以下ネタバレを含む感想です。
ただ、結構踏み込んだ内容が、
特設サイトなどでは記載をされていて、
格別それを超えた意外な展開などはないので、
内容は知った上で鑑賞しても、
そう大きな問題はなさそうです。

舞台は平成60年で、
子供が生まれなくなって日本の人口は激減し、
人間は殆ど都市に住んで、
田舎は自然の支配する世界となっています。
しかも都会で生まれた子供は、
魂のない「フガフガ病」となってしまいます。
都市は怪しげな市長に支配され、
一般住民は管理されて貧しい暮らしをしています。

主人公は佐々木蔵之介さん演じる根津で、
彼は半妖怪のかつてのねずみ男です。
そこに逃げてきた市長の娘と青年のカップルに、
久しぶりに眠りを覚まされた主人公は、
自分の生い立ちを思い出して懐かしみ、
崩壊しつつある人間社会に、
久しぶりに介入することになるのです。

水木しげるさんの世界を再現するのに、
主人公にねずみ男を持ってくる、
という辺りが前川さんらしい発想です。
妖怪というのは人間が気配を感じる世界でのみ存在出来る、
という哲学的な定義も前川さんならでは、
という気がします。
妖怪は人間とは別の存在ですが、
人間がその存在を感じなくなると、
その存在自体も消滅してしまうのです。

儚げに登場する妖怪を、
白石加代子さんや松雪泰子さんが、
それらしく情緒たっぷりに演じるのも魅力です。

ただ、この作品は設定を平成60年に設定していて、
勿論平成はもう31年で終わることが確定しているので、
分かった上での設定ではあるのですが、
出生数が激減して田舎は存在しなくなっても、
そのまま平成60年まで日本が存続している、
というある種脳天気な発想が信じがたくて、
そんな訳がないじゃん、と脱力する気分になります。

平成60年になっても一部の権力者が国民を搾取し管理していて、
その世界が成り立っているという考えそのものが、
僕にはとてもナンセンスに思えますし、
原因不明の「フガフガ病」の治療のために、
悪い病院の院長が、
生きた赤児に人体実験をして殺してしまい、
その母親の怨霊が怪物となって暴れ回る、
というような発想の貧困さはどうでしょうか?
僕は医療者の端くれなので、
こうした「権力にこびた悪い医者像」のようなものには、
その薄っぺらさに本当にうんざりしてしまいます。

こうした薄っぺらな未来を想像するのは、
本当にあり得る未来の悲惨さから、
目を背けたいという願望がその主な原因と思いますが、
こうした結果になるのであれば、
未来を舞台にするのは止めて欲しい、
というのが正直な感想です。

前川さんは「太陽」などの諸作で、
想像力を駆使した「あり得ない、しかしリアルな未来」を、
幾つもこれまで創造してきた作家ですが、
その名手をしてこんな結果になるのですから、
真の絶望というものは、
創造力すら腐らせてしまうものなのかも知れません。

この作品には「ゲゲゲの鬼太郎」は出て来ず、
その存在について主人公が一言触れるだけですが、
せっかくですから鬼太郎の未来のようなものも、
表現して欲しかったな、とは思いました。

今回は前川さんの作品としては見やすいお芝居で、
半妖怪と妖怪や精霊の佇まいのようなものが、
手練れの役者さんによって、
なかなか情緒的かつ魅力的に描かれていて、
その点はこれまでの前川作品にない良さを感じました。

内容には不満もあるのですが、
前川さんらしいちょっとひねった妖怪譚として、
一見の価値はある舞台に仕上がっていたと思います。

それでは今日はこのくらいで、

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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モーツァルト「魔笛」(2018年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
魔笛.jpg
大野和士さんが芸術監督に就任しての、
新国立劇場のシーズン開幕公演として、
モーツァルトの「魔笛」が上演されました。

ウィリアム・ケントリッジが2005年に演出し、
その後世界中で上演された名演出を、
今回初めて借りて来ての上演になります。

「魔笛」は新国立劇場ではこれまでに何度も上演されていますが、
僕はここで聴くのは初めてです。
通例で男声のメインのキャストは海外ゲストが多く、
夜の女王やパミーナという主要な女声キャストは、
日本組となることが多いのですが、
あまりそれが乗らなかったのです。

ただ、今回はシーズンオープニングですし、
演出にも興味があったので足を運ぶことにしました。

「魔笛」は引っ越し公演などで何度かは聴いていますが、
1幕はともかく2幕が長くて、
有名な夜の女王のアリアが終わると、
眠くなることが多いのが正直なところです。
また、子供じみた演出や悪ふざけのような演出が多いことや、
効果音などに人工音が使われることが多いことも、
僕がこの作品の上演を、
あまり好きではない理由です。

ただ、今回の上演はなかなか良かったですし、
最後まであまり眠くもならずに聴くことが出来ました。

演出は基本的には擬古典という感じの古風なもので、
そこにプロジェクションマッピングが、
上手く活かされて新しい風を吹き込んでいます。
最初の大蛇を影絵で処理したのは、
ちょっとミスタッチに感じましたが、
それ以外の部分はなかなか原作の雰囲気を活かしていて、
良かったと思いました。
主要なアリアやアンサンブルの聴き所は、
舞台正面に歌手を立たせて、
下からの古風な照明を当てて処理するのも、
音楽優先で良いと思いました。
何より良かったのは、
雷や嵐などの効果音も、
全て生音で処理していたことで、
これは最近の「魔笛」の上演では、
あまりないことだと思います。

でも、こういうのは、
一般受けはしないかも知れませんね。

コロラトゥーラは大好きなので、
夜の女王のアリアにはこだわりがあるのですが、
正直生の舞台で満足のゆく歌唱を聴いたことはありません。
今回の安井陽子さんは夜の女王はお得意なので、
安定した歌いっぷりと貫禄は、
悪くありませんでした。
トータルに歌手陣も悪くありませんでしたし、
今回の「魔笛」はなかなか高レベルで満足のゆくものでした。

まずまずお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アルドステロン濃度と糖尿病リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームや保育園の診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルドステロンと糖尿病.png
2018年のJournal of the American Heart Association誌に掲載された、
高血圧と関連のあるホルモンであるアルドステロンの濃度と、
糖尿病との関連についての論文です。

アルドステロンは血圧を維持し、
身体の水分と塩分を保持するために、
重要な働きをしているホルモンですが、
その調節の乱れや分泌の過剰は、
身体に水分や塩分を貯留させ、
高血圧症の原因となります。

その代表的な病気は、
副腎の腺腫や過形成から、
アルドステロンが調節なく分泌される、
原発性アルドステロン症です。

さて、このアルドステロンには、
実験的にインスリン分泌を抑制したり、
インスリンの効きを悪くするような作用が、
あることが知られています。

このことからは、
アルドステロンが高いと糖尿病の発症リスクが増加する、
という可能性が示唆されます。

ただ、実際に臨床的にそうした結果が得られているかと言うと、
報告によってもその結果には違いがあり、
今のところ明確な結論には至っていません。

今回の研究では、
アメリカの動脈硬化に関する大規模な疫学データを活用して、
1570名の糖尿病のない一般住民を10年以上観察し、
糖尿病の新規発症リスクと、
血中アルドステロン濃度との関連を検証しています。
対象者はヒスパニック系、中国系、黒人、非ヒスパニック系白人と、
人種毎に解析しているのが今回の特徴です。

その結果、
血液のアルドステロン濃度が高いほど、
糖尿病の発症リスクは増加していて、
インスリン抵抗性の増加と、
インスリン分泌の低下も認められました。

ログによる解析が主体なので説明が難しいのですが、
アルドステロンが平均で80pg/mL程度と比較して、
平均で200pg/mL程度の群では、
糖尿病の発症リスクは2倍以上となっていました。
また、この関連には明確な人種差があり、
最もリスクが高いのが中国系で、
次が黒人という順になっていました。

これまでの同様のデータがあまり明確な結果を示せなかったのは、
人種差の要素を考慮していなかったためと考えられました。

この人種差の原因は明確ではありませんが、
アルドステロンの合成酵素の差や、
塩分感受性の差などが想定されています。

このように糖尿病の発症とアルドステロン濃度との間には、
一定の関連はありそうで、
今後アルドステロンを抑制することの、
糖代謝への影響を含めて、
更なる知見の蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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