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尿酸値と食事との関係について(アメリカの住民データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
痛風と食事との関係.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
血液の尿酸値に与える食事の影響を検証した論文です。

血液の尿酸値が高い高尿酸血症は、
関節の強い痛みを伴う炎症である痛風の原因となります。
尿酸の高いことは痛風以外にも、
高血圧や心血管疾患、
肥満、慢性腎臓病などの生活習慣病とも、
関連があると報告されています。

健診などで尿酸値が高いと、
食生活を気を付けるように指導が行われることが通常です。

アルコールを控え、清涼飲料水や赤身の肉、
貝などの摂り過ぎにも注意するように言われます。

しかし、実際にどの程度こうした食事の内容と、
血液の尿酸値との間には関連があるのでしょうか?

血液の尿酸値の個人差を決めているのは、
SNPと呼ばれる遺伝子の単一塩基の変異が25から40%で、
残りの60から75%は、
食事などの環境要因と、
より広範な遺伝子の関与する体質である、
と考えられています。
ただ、実際のそのうちに占める食事の比率は、
あまり明確には分かっていません。

今回の研究はアメリカにおいて、
ヨーロッパ系の16760名の住民データを、
複数の疫学データから、
抽出してまとめて解析したもので、
食事習慣と遺伝が血液の尿酸値に与える影響を、
検証しています。

ここでは痛風や腎臓病のある患者さんは除外されています。

その結果、
アルコールや清涼飲料水、ジャガイモ、肉類の摂取量が、
尿酸値の増加と関連のあることが確認されました。
一方で卵、ナッツ、乳製品、雑穀、柑橘系を除く果物の摂取量は、
尿酸値の低下と関連していました。
しかし、尿酸値の個人差に対する食事の影響は、
その変動の0.3%程度にとどまっていました。
他方、一塩基の違いによる遺伝的な影響は、
その変動の23.9%に関連していると計算されました。

このように、
今回の研究では血液の尿酸値に与える食事の影響は、
遺伝的な影響と比べると遥かに少ない、
という結果になっていました。

これは痛風などの病気のない集団での検討なので、
痛風の患者さんではまた別の結果になる、
という可能性もあります。
ヨーロッパ系の人種に限った解析である、
という点にも注意は必要です。

ただ、それでもこれまでの常識より、
尿酸値に与える食事の影響が、
遥かに小さいという今回のデータの意義は大きく、
今後更なる検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ACE阻害剤に伴う肺癌リスク増加について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ACE阻害剤と肺癌リスク.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
心臓に対する作用などで評価の高い降圧剤に、
肺癌リスクを上げるような健康影響があるのではないか、
というショッキングな内容の論文です。

ACE阻害剤という降圧剤があります。
血圧を上げるホルモンの反応の一部を、
ブロックするというメカニズムの薬で、
心臓の保護作用から、
心不全の治療薬としても、
その評価は確立しています。

ただ、ACEという酵素を阻害することにより、
ブラジキニンやサブスタンスPといった、
血管拡張や血管透過性亢進に関わる生理活性物質を増加させ、
このため空咳や浮腫みなどの副作用や有害事象が、
比較的高率に生じます。
この咳についてはただし、
高齢者の誤嚥を防止する効果が期待されるとして、
肯定的に評価する考え方もあります。

しかし、ブラジキニンは増加すると肺に集積し、
肺癌の増殖を刺激するという報告があります。
また、サブスタンスPも肺癌組織での発現が認められていて、
癌の増殖と血管新生に関連すると報告されています。
こうした物質を増加させるACE阻害剤は、
肺癌を増加させるというリスクが危惧されるのです。

これまでに幾つかの疫学データが発表されていますが、
結果は様々で一定の結論に至っていません。
個々のデータは例数が少なく、
観察期間もそれほど長くはないので、
それで結論を出すのは時期尚早と言えるのです。

今回のデータはイギリスの、
プライマリケアのデータベースを活用したものですが、
1995年から2015年に新規に降圧剤を開始した、
トータル992061名を対象として、
ACE阻害剤を使用した場合の肺癌発症リスクを、
アンジオテンシン受容体阻害剤(ARB)を使用した場合と比較しています。

ARBはアンジオテンシンやアルドステロンを抑える、
という意味では同様の作用を持つ降圧剤ですが、
ブラジキニンやサブスタンスPは増加させる作用はありません。
そのために、コントロールとして適切と判断されたのです。

平均で6.4年の観察期間において、
7952件の肺癌が新規に発症しています。
ARBを使用している場合と比較して、
ACE阻害剤を使用していると、
1.14倍(95%CI: 1.01から1.29)
肺癌発症リスクは有意に増加していました。

このリスクはACE阻害剤の使用期間が長いほど高く、
5年以上の使用では1.22倍(95%CI: 1.06から1.40)、
10年以上の使用では1.31倍(95%CI: 1.08から1.59)と、
それぞれ有意に高くなっていました。

肺癌のリスクとして最も大きなものは喫煙ですが、
今回のデータでは非喫煙者においても、
同様の関連が認められていました。

このように今回の大規模な疫学データにおいては、
肺癌リスクはACE阻害剤の使用により、
増加する傾向を示していました。

ただ、ACE阻害剤には空咳の副作用があり、
そのためにレントゲンや胸部CTなどの検査が、
通常より行われることが多く、
そのバイアスの影響は想定されます。
また、この研究ではコントロールにARBを使用しているのですが、
ARBには癌リスクを低下させる可能性がある、
という報告があり、
それが事実であるとすると、
この比較は適切ではない、という考え方も出来ます。
このように、この研究はまだこれだけで、
この問題の結論を出すには早すぎるので、
今後の更なる検証の結果を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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亜鉛結合甲状腺ホルモン剤の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
T3と金属結合体の効果.jpg
2018年のThyroid誌に掲載された、
新しい甲状腺ホルモン製剤の効果についての、
動物実験の論文です。

甲状腺機能低下症の治療には、
通常T4製剤(商品名チラーヂンSなど)が使用されます。

ただ、甲状腺ホルモンにはT4以外に、
活性型のホルモンであるT3が存在しています。
甲状腺から分泌されるホルモンの大多数はT4ですが、
5μg程度のT3が毎日分泌されています。
そして、T4のうち25μg程度がT3に変換されて血液中に入ります。

それでは何故甲状腺機能低下症の治療には、
T3を使用せずにT4のみが使用されるのでしょうか?

これは以前には動物から抽出した、
甲状腺がそのまま治療に使用されていて、
それはT3とT4の混合であったのですが、
T3が過剰に摂取されることにより、
心臓に負担が掛かり、不整脈などを誘発することが、
明らかになったからです。

その後より安全なT3単独製剤が発売され、
T3とT4を併用する治療が試みられましたが、
数少ない介入試験の結果として、
併用療法とT4単独療法との間で、
予後の差がないという結果が得られたので、
その後は併用療法は下火となり、
ガイドラインでも特別な場合以外は、
甲状腺機能低下症のホルモン補充療法は、
T4製剤単独で行うことが推奨されるようになりました。

ところが…

上記文献(アメリカ甲状腺学会の機関誌でこの分野では代表的な専門誌です)
の序論の記載によれば、
アメリカで甲状腺機能低下症の治療を受けている患者さんのうち、
おおよそ5%はT3とT4の併用療法を施行されていて、
その比率は年々増加しているとのことです。

その理由は第一には、
患者さんが併用療法の方が症状の軽減に有効であると、
そうした実感を持つことが多いためであり、
T4単独療法ではTSHは正常化しても、
血液のT3濃度は低いレベルに伴うことが多いからです。

ただ、問題は通常使用されるT3製剤は、
内服後3から4時間でピークに達し、
その後は速やかに消失することで、
正常なT3濃度がほぼ一定(変動幅は5から10%以内)で安定していることとは、
大きな違いがあります。
従って、併用療法を施行する場合には、
1日数回に分けて少量のT3製剤を、
使用することが多いのですが、
それでも自然な状態とはかなりの開きがあります。
そして、この変動が大きいことが、
T3製剤の安全な使用においても大きな問題となります。

そこで、徐放型のT3製剤を開発する試みが、
海外では複数行われています。

本日ご紹介する論文では、
そのうちの1つとして、
微量金属の亜鉛をホルモンと結合させることにより、
インスリンと同じように、
ゆっくりと吸収されるように調整された、
亜鉛結合甲状腺T3製剤のカプセルを、
甲状腺機能低下症のネズミに使用して、
通常のT3製剤の内服時と比較を行っています。

その結果、
通常のT3製剤と比較して、
遙かに血液中のホルモンの変動は少なく、
その効果も安全性も、
勝っている可能性が高いことが確認されました。

日本の専門の先生は、
甲状腺機能低下症の治療はT4製剤で充分で、
それで患者さんの症状が改善しない時には、
「それは甲状腺とは関係ありません」
と断定的に言われる方が多いように、
患者さんからはお聞きするのですが、
本来T3とT4が適切なバランスで補充されることが、
理想的な治療であることは間違いがなく、
少なくともアメリカの学会においては、
そうした議論も行われているのですから、
患者さんの悩みや不安には、
もう少し柔軟に対応して欲しいなあ、
とはいつも思うところです。

いずれにしても、
より自然な動態を取るT3製剤が臨床に導入されれば、
甲状腺機能低下症の治療は劇的に変わることは間違いがなく、
今は甲状腺機能低下症の治療は、
T4のみで充分と主張されている多くの専門家が、
掌を返すことは確実であると、
今のうちに予言をしておきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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KERA・MAP「修道女たち」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。
朝から東京国立博物館の特別展を覗いて、
今戻って来たところです。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ケラ修道女たち.jpg
ケラさんのナイロン100℃とは別の企画公演、
KERA・MAPの第8回公演として、
6人の個性的な女優さんが、
架空の宗教の修道女を演じる新作公演に足を運びました。

ケラさんは多くのスタイルの芝居を書いていますが、
今回の作品はかなりシリアスに寄ったもので、
ナイロン100℃が上演した「消失」辺りに似たスタイルです。

ユニヴァーサル映画の、
フランシュタインやドラキュラものの舞台となっているような、
ヨーロッパらしき中世の田舎町で、
キリスト教に似た現地では異端の宗教の修道女達が、
迫害され命を狙われています。
葡萄酒に入れられた毒物のために、
47人の修道女のうち43人が殺されたところから、
物語は始まり、
何故か入信を希望した母娘の2人を含む6人の修道女に、
修道女希望の村娘と、
村の男が絡み、
雪に閉ざされた教会の中で、
死の間際の人間ドラマが展開されます。

例によってケラさんがこの作品の、
何処に面白さを抱いているのか、
観客に何を感じ取ってもらいたいのか、
なかなか図りがたいところもあるのですが、
舞台装置、音響、美術、映像といった、
舞台効果のクオリティは文句なく高く、
役者さんの芝居もアンサンブルを含めて抜群なので、
今回も有無を言わさず見せられてしまう、
という感じのお芝居です。

特にオープニングのプロジェクションマッピングと、
舞台セットのディテールの完成度は、
ケラさんの多くの舞台の中でも、
特筆すべきレベルのものであったと思います。

物語自体はほぼひねりのないもので、
悲劇的な状況が説明されるだけで、
その原因も背景も明らかにはされません。
ラストにはある種の救いが用意されているのですが、
画竜点睛を欠くという感じがしないでもありません。
ただ、舞台効果はなかなかで、
ちょっとほっとするような気分にもなりますから、
構成としてはこれで良いのだと思います。

ケラさんの作品としては、
新しい路線の習作的な感じものので、
これで完成されているということではないのだと思います。
これはこれとして、まだ今後の発展型を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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「銀魂2 掟は破るためにこそある」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
銀魂2.jpg
昨年好評だった「銀魂」の続編が、
前回のキャストがほぼ全て登場する形で、
にぎにぎしく公開されています。

少し遅ればせに映画館に足を運びました。
金曜日の朝だったので観客は3人でした。

江戸時代に異国ではなくエイリアンが日本を侵略し、
共存するようになったというパラレルワールドが舞台で、
史実とは少し違う歴史上の人物もどきが、
微妙に史実もなぞりながら、
奇想天外な物語を紡ぎます。

このコミック原作の、
ドラマとギャグが絶妙にブレンドされた世界が、
福田雄一さんの世界とかなり相性が良くて、
とても楽しく乗り乗りで観ることが出来ます。

今回は岡田将生さんや長澤まさみさん、
堂本剛さんの出番は少なく、特別出演的な感じで、
メインは史実にもある新撰組の内紛劇(伊東甲子太郎)に、
将軍暗殺の陰謀が絡みます。

裏主役は三浦春馬さんの伊東鴨太郎で、
このパートはほぼギャグなしのドラマですが、
そこがなかなか良く仕上がっているので、
ドタバタやパロディやギャグとのバランスが良いのです。
沖田総悟の吉沢亮さんの磨きの掛かった格好良さなども抜群です。

前作でもそうでしたが、
アクションや殺陣のリズミカルな編集がなかなかで、
CGパートもハリウッド製には及びませんが、
日本映画としてはかなり頑張っていて、
インド映画の「バーフバリ」辺りとは遜色がありません。
その辺りの適度なスケール感と、
極めてチープなギャグとのバランスがまた良いのです。

そんな訳で福田雄一さんの世界に一旦馴染むと、
この世界は非常に心地よく、
頭を空っぽにして楽しむことが出来ます。
まだまだ続編がありそうですから、
今後もとても楽しみです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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PD-1阻害剤使用時のインフルエンザワクチン接種のリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PD1阻害剤とインフルエンザワクチン.jpg
2018年のJournal for ImmunoTherapy of Cancer誌に掲載された、
今話題の癌免疫療法の治療薬と、
インフルエンザワクチンの副反応との関連についての論文です。

本庶佑先生のノーベル賞受賞で注目された、
癌免疫療法治療薬であるPD-1阻害薬は、
癌が押さえ込んでいる身体の免疫細胞の機能を、
車のブレーキを解除するようにして活性化する、
というタイプの薬です。
免疫チェックポイント阻害剤という言い方をされることもあります。

この免疫チェックポイント阻害剤は、
これまでにない非常に有用な癌治療薬ですが、
免疫系に働くという性質から、
自己免疫疾患などの免疫異常が、
その有害事象として発症するリスクも指摘されています。
これまでに報告されている重篤な有害事象としては、
免疫性肝炎や間質性肺障害、重症筋無力症などがあります。

インフルエンザなどのウイルス感染は、
癌の患者さんでは重症化し易く、
その予後にも大きな影響を与えることは明らかです。

従って、その意味では感染予防のためのワクチン接種は、
癌治療中の患者さんでは推奨されるところです。

所謂古いタイプの抗癌剤を使用中の患者さんにおいては、
インフルエンザワクチンは安全に接種可能と考えられています。
ただ、患者さんの免疫機能は低下しているので、
その効果は通常の方よりは弱くなることが通常です。

それでは、PD-1阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤を、
使用中の患者さんの場合はどうでしょうか?

癌治療中ということで考えれば、
インフルエンザワクチンの接種は有益だと思われます。
PD-1阻害剤は免疫を賦活する薬ですから、
その有効性もむしろ高いことが想定されます。
その一方でこの薬には自己免疫などの免疫系の合併症がありますから、
ワクチン接種に伴う有害事象も、
多いのでは、という可能性があります。

今回の検証はスイスにおいて、
肺癌の治療のためにPD-1阻害剤を使用中で、
3価の不活化インフルエンザワクチンを接種した23名の、
抗体上昇などの有効性と有害事象を観察したものです。

その結果11名のコントロール群と比較して、
23名のPD-1阻害剤治療中の患者さんの、
インフルエンザワクチン接種後の抗体上昇には、
有意な違いは認められませんでした。

その一方で23名中52.2%に当たる12名で、
皮膚病変や関節炎、脳炎や腸炎などの、
免疫系の関与が疑われる有害事象が認められ、
そのうちの6名は重症の事例と判断されました。
(重症度分類の3/4)
ワクチン接種から症状出現までの時間は、
中央値で3.2か月でした。

これはまだ症例数も少ないデータで、
これをもってPD-1阻害剤使用時のワクチン接種に、
リスクが高いとは言えませんが、
こうした免疫系に作用する薬の使用時のワクチン接種においては、
免疫系の有害事象の起こる可能性を想定して、
その適応は慎重に判断する必要がありますし、
接種後は数か月間は、
慎重に経過をみる必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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妊娠中のn3脂肪酸摂取の胎児への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
n3脂肪酸の妊娠中の効果.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
n3脂肪酸のサプリメントを妊娠中に使用した場合の、
お子さんの健康への効果についての論文です。

n3脂肪酸はω3系脂肪酸とも呼ばれ、
青身魚の脂などに多く含まれる、
EPAやDHAなどの成分のことです。

この脂肪酸は健康への良い影響のあることが知られていて、
心血管疾患の予防効果のあることが、
多くの疫学データと一部の介入試験のデータで認められ、
最近ご紹介したものでは、
ストレスに対する不安を軽減するような作用も、
確認されています。

更に多くの疫学データや、
一部の介入試験のデータで確認されていることとして、
このタイプの脂肪酸を妊娠中や授乳期に多く摂ると、
生まれて来る赤ちゃんの体格が大きくなることも知られています。

しかし、これが一時的な現象であるのか、
その後の赤ちゃんの発達にも影響を与えるものなのか、
妊娠中と授乳期の摂取の、
どちらが主に影響をしているのか、
といった点についてはまだデータは不足しています。

そこで今回の研究では、
デンマークにおいて736名の妊娠女性を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
本人にも担当者にも分からないようにして、
一方は総量2.4グラムのn3脂肪酸のカプセルを、
もう一方はコントロールとしてオリーブオイル入りのカプセルを、
妊娠24週から出生時まで継続的に使用して、
生まれた赤ちゃんの体格やその後の発達を、
6歳まで継続して観察しています。

最終的にデータが比較可能であったのは、
両群併せて523名です。

その結果、
6歳の時点でデキサ法を用いて計測した体格は、
除脂肪体重(主に筋肉量)と骨塩量が、
いずれもn3脂肪酸摂取群でコントロールより有意に高く、
脂肪の比率はコントロールと差がありませんでした。

その結果をまとめた図がこちらです。
n3脂肪酸の妊娠中の効果の図.jpg

要するに妊娠中のみの母体へのn3脂肪酸の補充が、
その後6歳に至るまでのお子さんの体格に影響をして、
その体格を大きくするけれども、
肥満のような脂肪の多い状態にはしない、
という結果になっています。

これが必ずしもお子さんのその後の健康に、
良い影響を与えるとは限らない、
という点には注意が必要ですが、
妊娠中のお母さんの食事が、
お子さんの体格に重要な影響を与えることは、
どうやら間違いがないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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何故今年もインフルエンザワクチンは足りないのか? [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で外来は午前中のみですが、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はどうしても今納得のいかないことについて、
取り敢えずの情報をまとめておきたいと思います。

インフルエンザワクチンが今年も足りません。

昨年(2017年)はインフルエンザワクチンが不足して、
現場は大混乱となりました。

その主な理由は選定したワクチン株が上手く増えずに、
途中で方針が変更されるなどして供給が遅れ、
特に接種開始の10月1日の時点で、
通常であれば1000万本が供給されるべきところ、
700万本程度しか供給されず、
最終的な製造量も例年より低い水準に留まったことが、
その主な原因と説明をされています。

ただ、公の説明ではいつもの3分の2は、
10月1日の時点で供給されていた筈ですが、
現場の実感としては、
前年の半分程度しか出回らなかったように思います。

その反省を元に、
今年は充分な供給量が確保されると、
今年の8月くらいの時点では説明をされていました。

こちらをご覧ください。
インフルエンザワクチン見込み製造量.jpg
今年のワクチン接種の公的な検討会の資料です。
今年のワクチンは10月1日の時点で、
例年通りの1000万本を供給する、と説明されています。

ただ、この図をよく見ると、
平成30年のワクチンの製造量は、
トータルでは不足した昨年並みになっています。
つまり、例年より少なく作ることが、
ほぼ予定されていることが分かります。
更には11月初めくらいの時期で見ると、
不足した昨年と同じ2000万本程度しか製造せず、
その時点では従来より500万本近く少ない、
という予測になっています。

現場に混乱なく、充分な供給量を確保するには、
平成28年と同程度の製造量とその製造のタイミングが、
必須であるように思われるのに、
実際には初動量が昨年より多いだけで、
その後の推移やトータル量は、
不足して大混乱した昨年と、
ほぼ同じ水準にする、という予測になっています。

何故こんなことをするのでしょうか?

そのアリバイのために、
次のような図が用意されています。
こちらです。
インフルエンザワクチンの需給バランス.jpg
これもかなり酷い図だと思うのです。
何を根拠としたのか、
医療機関の需要予測という線が引かれていて、
それより今年の製造量は常に多いので、
不足は生じないという理屈が示されています。

しかし、この図の需要予測というのは、
不足で大混乱した昨年の量より、
更に少ない設定になっています。
つまり、この図が正しいのであれば、
昨年もインフルエンザワクチンは不足する筈がない、
ということになってしまいます。
しかし、実際には大きな不足が生じたのです。

何故わざわざほとんど根拠もなく、
こんなグラフを作成するのか、
はなはだ疑問です。

僕はお上や業界のトリックに、
やすやすと引っ掛かるような馬鹿なので、
10月1日が来るまで、
今年はインフルエンザワクチンの不足は生じない、
というように思っていました。

ところが、
蓋を開けてみると、
ワクチンを直接納入している卸さんからは、
昨年と同量のワクチンしか入荷はしませんでした。

充分に供給されている筈なのに、
これはどうしたことかと卸さんの担当者に聞くと、
次のような答えが返って来ました。

「実は今年のワクチンは昨年と同じ量しか作っていないのです。
それはワクチンメーカーが、
ワクチンが余って損をするのを嫌い、
それしか作らないと決めているからです。
従って昨年と同じ量しか入荷はしません。
ワクチンが出そろうのは12月に入ってからです」

この発言を聞いて仰天しました。
そんな馬鹿なことがあるかと思って、
別の卸の会社の方にも聞いてみましたが、
ほぼ同じ回答が返って来ました。

これは勿論担当者の発言ですから、
事実であるとは限りません。
しかし、今の僕の立場でそれ以上の情報の入手は困難です。

ただ、よくよくそうと分かってから、
最初の需給の予定図を見ると、
そこに既にそうした計画が示されている、
ということが分かりました。

2年前までは11月の初めにはワクチンがほぼ出揃うように、
頑張って生産が急ピッチで進められていたのです。
昨年も同じペースのつもりでしたが、
製造に失敗して供給が遅れました。
その遅れたペースと同じに、
今年の予定が組まれていることが分かります。

つまり、メーカーにとっては、
その方が都合が良いのです。
昨年の結果を見て、
「この方が都合が良く楽に儲かる」と判断した企業は、
適当な理屈をつけて、
同じことを今年もやっているのです。

知らないのは現場の馬鹿ばかり、
という訳です。

愕然としました。

今後、インフルエンザワクチンは、
12月にならないと需給は安定しない、
ということになるようです。

ただ、もしそうなら、現行の状態、
10月1日から一斉にワクチン接種を開始し、
いつ接種してもいいですよ、
というような方法は成り立たないことになります。

そもそも季節性インフルエンザワクチンは、
いつ打つのが良いのでしょうか?

10月から1月までのいつに打つべきなのか、
その指針を何1つ示していないということが、
まず行政の不作為の大罪であるように思います。

どうせこのような需給状態なのであれば、
ワクチンは10月、11月、12月と、
グループ分けして接種することが合理的、
ということになります。

こうした状態であれば、そのための指針が必要なのです。

それを何ら提示しないで、
ワクチン不足の原因を、
過剰に在庫をため込んだ医療機関のせいにするというのは、
あまりに破廉恥なやり口ではないでしょうか?

インフルエンザワクチンは今年も足りません。

しかし、今年の不足は明らかな人災であって、
末端の医療者にはその手掛かりさえ与えられてはいないのです。

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
メーカーが儲かる、というのは適切ではないかも知れません。
余ったワクチンは国が買い取る、
といったような話も聞いたことがあるからです。
ただ、仮にそうであるとしても、
トータルに現場や接種者の利便制を犠牲にして、
昨年のような量を昨年並みのスケジュールで生産した方が、
企業にとって利便制がある、
という判断には違いがないように思います。
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静脈を圧迫するネックカラーの運動外傷への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ネックカラーの予防効果.jpg
2018年のBMJ Sport Med誌に掲載された、
高校生の女子サッカー選手のヘディングなどの脳への影響と、
それを予防するネックカラーの効果についての論文です。

運動は健康を増進するために大切な健康習慣ですが、
ハードなスポーツが同じように健康的、
という訳ではありません。

たとえばサッカーでは、
ゲーム中に選手同士のハードなぶつかり合いがありますし、
ボールを頭に激しく当てて飛ばすヘディングがあります。

ヘディングを繰り返すことが、
脳に微小ななダメージを与え、
それが積み重なることが、
脳の永続的な障害の原因となる、
という考え方があり、
それを示唆するようなデータがある一方で、
そうしたことはない、という報告もあります。

つまり、この問題はまだ決着していません。

いずれにしても、
このヘディングによる脳のダメージを、
予防する方法があればそれに越したことはありません。

その1つの方法として考案されたのが、
特殊なネックカラーです。

こちらをご覧下さい。
ネックカラーの図.jpg
この右の図にある、
首の後ろに巻いてあるバンドのようなものが、
ネックカラーです。
ネックカラーと言うと、
むち打ちの時に首に巻くものを、
思い浮かべる方が多いと思いますが、
この場合のネックカラーは、
もっとさりげないタイプの物です。

このカラーを装着すると、
それが軽く首を圧迫するので、
頸静脈がそれにより軽く圧迫され、
その血流が減少します。

それにより脳の鬱血が軽く起こり、
脳が少し膨らむことで、
頭蓋骨と脳の間の空間がより狭まり、
脳の表面が少し骨に押しつけられるようになります。

これによりヘディング時の脳の衝撃が緩和して、
脳へのダメージが和らげられるのではないか、
と推測されているのです。

今回の研究においては、
14歳から18歳の女子のサッカー選手46名を、
ネックカラー装着群と未装着群に分け、
プレシーズンからオフシーズンまでの9ヶ月以上の経過観察を行っています。

その結果機能性MRIによる検証によって、
シーズン前とシーズン後で比較すると、
シーズン後にネックカラー未装着群では、
微細な脳障害を示唆する白質の変化が有意に認められ、
その変化はネックカラー群では認められませんでした。
また、未装着群においても、
シーズンが終わって3ヶ月以上が経過すると、
シーズン直後に認められた病的な所見は、
ほぼ確認出来なくなっていました。

要するに今回の研究においては、
ネックカラーの装着によって、
脳のダメージを示唆する所見の、
一定の予防効果が確認されました。
ただ、こうした軽微な脳のダメージは、
3ヶ月程度で自然にも回復する性質のものでした。

ただ、これで青少年の時期のヘディングを繰り返すダメージが、
持続的な脳の障害の原因にならないとも言い切れず、
ネックカラーの装着は、
そのダメージを和らげる用具として、
今後もその効果を検証する必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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超音波で認知症が治る? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
超音波で認知症が治る?.jpg
2018年のBrain Stimulation誌に掲載された、
低出力パルス波超音波を照射するだけで、
認知症の症状のみならず脳の病的所見も改善した、
というかなりビックリするような動物実験の論文です。

2018年の6月に東北大学が、
アルツハイマー型認知症に対する超音波治療の、
プレスリリースを発表しました。

その内容は、
世界で初めての認知症に対する超音波治療の治験を、
日本医療研究開発機構の支援の元に実施する、
というものです。

日本医療研究開発機構の、
革新的医療技術創出拠点プロジェクトというものがあって、
東大や京大、成育医療センターや国立がん研究センターなど、
日本の主だった医療の研究拠点が選ばれています。
そこで毎年今後の革新的医療技術に結び付く様な研究テーマを出し、
そこに研究費を出そうという趣旨であるようです。

サイトを見ると色々な研究が選ばれていますが、
「革新的」とか「画期的」という文言は踊っているものの、
すぐに実用化は難しそうな、
大変失礼な言い方をすれば、
ちょっとした思いつきに過ぎないような感じのテーマが多い、
という印象です。

ここで東北大学の同じ研究グループが、
重症狭心症に対して画期的な超音波治療を行う、という研究と、
今回の認知症に対して同じ超音波治療を行う、
という研究を申請して、
いずれも支援に値すると評価されているようです。

これは元々循環器領域で開発された技術のようで、
低出力パルス波の超音波を心臓に照射すると、
血管内皮細胞の機能を改善し、
血流を改善して狭心症の治療に結び付く、
という理屈であるようです。

カテーテル治療などを行わなくても、
仮に超音波を当てるだけで血管が新生して血流が改善し、
狭心症が治るのであれば、
それはもう画期的な治療で、
世界に広める意義のあるものだと思います。

と言いますか、
本当にそんなことが可能であれば、
これはもう世界の医療界から引く手あまたで、
世界中で瞬く間に普及する技術となることは必定です。

しかし、現時点ではまだそうはなっていないようです。

プレスリリースには3編の論文が紹介されていますが、
いずれも動物実験のもので、人間の臨床データはありません。
研究費の対象となっているように、
これはまだ今後の技術であるようです。

上記研究グループは更に、
同じタイプの超音波を、
今度は脳に照射するというアイデアをひねり出しています。

それが今回のプレスリリースです。

心臓の血管に起こるような動脈硬化性の変化と、
認知症のリスクとの間に関連のあることは広く知られています。

それであるなら、
脳に超音波を照射することにより、
認知症も改善する可能性があるのではないでしょうか?

その治験のプレスリリースに際して、
引用されている唯一の論文が、
最初にご紹介したものです。

これはネズミの動物実験ですが、
首の血流を手術で遮断した、脳血流低下のモデルマウスと、
アルツハイマー病のモデルマウスを利用して、
脳全体に低出力パルス波超音波の照射を何クールか行い、
その後に認知機能や脳の血流の状態、
脳の代謝や認知症に関わる、
遺伝子マーカーなどの変化を見たものです。

その結果はかなり驚くべきもので、
1クールで20分の照射を3回、
それを時間を置いて何度か繰り返しただけで、
認知機能は有意に改善し、
血流も改善が認められています。
更には1回の治療により、
その効果は1ヶ月以上持続しています。

更にはアルツハイマー病のモデル動物においては、
脳のアミロイドβの蓄積自体も、
超音波治療をしただけで有意に減少していました。

ただ、超音波を脳全体に照射するだけで、
本当に血管が若返り、血流が改善し、
脳が若返るような効果が期待出来るのでしょうか?

これがもし本物なら、
全身に照射を繰り返せば、
全身の血管の老化は改善し、
全ての病気が治ってしまってもおかしくはありません。

勿論それが嘘であるとは言えません。
ただ、かなり現実離れがしているように、
直感的には思いますし、
臨床医学の知見というよりは、
よくある低周波治療器の宣伝に、
似通っているような気もします。
ああした機器も、
宣伝の上ではそうした画期的な治療効果があるからです。

こうした研究を重ねること自体は、
勿論有意義なことであると思います。
ただ、今回のプレスリリースの内容を読むと、
実験データとして示されているのは動物実験のみで、
それをもって画期的な治療として、
認知症の患者さんを対象とした臨床試験を、
公的機関の支援の元に行うというのは、
かなり時期尚早で拙速ではないかと、
個人的にはそのように思えます。

仮に数十分照射するだけで、
脳の血流の状態や代謝の状態が、
ダイナミックに変化するとすれば、
その治療が認知症の患者さんに対して、
安全であるとは簡単に判断出来ないと思いますし、
安全性の検証は、
まずなされるべきではないかと思います。

そんな訳で、
個人的にはこの治療法は眉つばと思えるのですが、
勿論それは僕の見識の低さ故かも知れません。

10年後に果たしてどのような進捗が見られるのか、
まずはその点を見定めたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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