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前糖尿病での糖尿病進行予防治療の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので外来は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
前糖尿病の治療介入.jpg
2018年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
前糖尿病への治療介入の効果についての論文です。

前糖尿病(prediabetes)というのは、
主にアメリカで重視されている考え方で、
日本で言う「境界型糖尿病」とほぼ同じものです。

つまり、
血糖が正常パターンと糖尿病と診断されるパターンとの、
間の数値を取ることを意味しています。

具体的には、
食前血糖が100mg/dL未満で、
75グラムのブドウ糖負荷試験をした時に、
2時間値が140mg/dL未満を正常パターンとしていて、
食前血糖が126mg/dL以上もしくは、
糖負荷試験の2時間値が200mg/dL以上が、
糖尿病パターンです。
この間にあるのが前糖尿病ということになります。
食前血糖の正常パターンを100未満としているのは、
アメリカのみで、
日本では110未満が正常、
ただし100から109は正常だた高め、
というあちこちに配慮した、
玉虫色のものになっています。

5から7年くらいの経過観察により、
前糖尿病の人の3分の1は糖尿病と診断される状態に進行する、
と報告されています。

ただ、それでは前糖尿病の人だけが、
糖尿病になるのかと言うとそうでもなく、
5年後に糖尿病と診断された人の4割は、
5年前には正常の血糖パターンだった、
という報告もあります。

そこでアメリカで近年提唱されているのが、
糖負荷試験の1時間値が、
155mg/dL(8.6mmol/L)を超えた場合も、
前糖尿病と同じように考えよう、
とい主張です。
この数値を入れると、
糖尿病に将来なるリスクの高い人を、
かなり絞り込むことが可能となるのです。

この前糖尿病の段階から糖尿病への進行を阻止することが、
糖尿病の患者さんの増加を食い止めるために、
非常に重要であることは間違いがありません。

これまでに糖尿病治療薬であるメトホルミンなどを、
前糖尿病の段階から使用することにより、
糖尿病への進行が予防された、
というような報告が散見されますが、
実際の臨床で行われたような研究は少なく、
その例数も充分とは言えないものなので、
その有効性についてはまだ結論が出ていません。

そこで今回の研究では、
アメリカにおいて、
実地のプライマリケアや内分泌代謝科の医療機関を登録し、
糖負荷試験で前糖尿病と診断され、
糖尿病に進行するリスクが高いと判断された対象者に対して、
そのリスクの高さにより、
中等度のリスクの場合には、
生活改善と共にメトホルミンとピオグリタゾンを使用し、
高度のリスクがある場合には、
生活改善と共にメトホルミンとピオグリタゾンに加えて、
GLP1アナログを使用、
薬物治療を望まなかった対象者は、
生活改善のみを行って、
その3群の予後の比較を行っています。

この場合の中等度リスクというのは、
血糖パターンは正常で、
糖負荷後1時間の血糖が155を超えている場合か、
糖負荷のパターンは前糖尿病であるけれど、
1時間値は155未満である場合のどちらかです。
高度のリスクというのは、
血糖パターンが前糖尿病で、
負荷後の1時間値も155を超えている場合です。

予防目的の薬物治療は、
メトホルミンは1日850mg、
ピオグリタゾンは1日15mg、
リラグルチドで1日1.2mgなどが使用されています。
これはアメリカの使用量としては、
下限くらいの量が設定されています。
日本においてはリラグルチドの1.2mgは認められていません。

トータルな振り分けられた人数は747名で、
最終的に解析されたのは422名です。

その結果、
平均の平均の観察期間32ヶ月において、
中等度もしくは高度リスクで生活改善のみの場合には、
糖尿病への移行が11%に認められたのに対して、
中等度リスクでメトホルミンとピオグリタゾン使用群では、
糖尿病への移行は5%に抑えられ、
高度リスクでGLP1アナログを含む3剤使用群では、
糖尿病への移行は1名も認められませんでした。

生活改善のみと比較して、
メトホルミンとピオグリタゾンの使用は、
糖尿病へ移行するリスクを71%(95%CI: 0.11から0.78)、
GLP1アナログを含む3剤の使用は、
88%(95%CI: 0.02から0.94)、
それぞれ有意に低下させた、
という結果になっています。

これはあまり厳密なデザインの試験ではなく、
例数も結果的にはかなり減ってしまっているので、
常にこれだけの効果があるとは、
言い切れない結果なのですが、
前糖尿病状態からの積極的な介入に、
無視できない効果のあることは事実で、
今後その安全性や対象者の絞り込み、
医療経済的な側面も含めて、
充分な検証が必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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