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ヴェルディ「椿姫」(2018年ローマ歌劇場来日公演) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ローマの椿姫.jpg
ローマ歌劇場の日本公演として上演された、
ヴェルディ「椿姫」の舞台に足を運びました。

「椿姫」はおそらく最も多く生で聴いているオペラで、
50回以上はこれまでに聴いていると思います。
一時期は毎年藤原歌劇団が、
豪華なゲストを招聘して毎年上演していましたし、
新国立劇場でも定期的な上演があり、
海外のオペラハウスの引っ越し公演でも、
3回に1回くらいは演目に選ばれるという感じです。

このオペラは作品としての完成度は高いですし、
3幕4場の構成ですが、
その場毎に雰囲気が異なり、
主要な登場人物は3人のみというのも特徴です。
1幕は主人公のソプラノの技量で、
全てを押し切るというプリマドンナオペラのスタイルですが、
2幕1場では繊細な感情の変化を、
主にバリトンとソプラノの二重唱で紡ぐというスタイルが面白く、
2幕2場はまた華やかな仮面舞踏会を、
バレエや大規模な合唱を入れて、
グランドオペラに近いスタイルで表現。
3幕は死の床に就く主人公を、
アリアとテノールとの二重唱で情感深く描きます。

上演によってさほど印象の変わらないのは1幕のみで、
他の場面は音楽作りや演出により、
その印象は大きく変わります。

最もポイントになるのは、
音楽的には最も優れていて、
ヴェルディの天才が発揮された2幕1場ですが、
この場面を上手く上演することは非常に難しく、
下手をすれば最も退屈な場面となる一方、
伝統的に上演されているバージョンでは、
この部分がオリジナルからズタズタにカットされていて、
オリジナルの音楽の良さが、
まるで感じられないものになっている、
というのが大きな問題点です。
ただ、最近は原点回帰でカットの少ない上演が増え、
僕が聴いた中でも、
エヴァ・メイの歌ったチューリヒ歌劇場の舞台と、
デセイ様の歌ったトリノ歌劇場の舞台は、
かなり全長版に近く、
この場面の真価を感じさせる優れた上演だったと思います。

次に難しいのがグランドオペラ形式の2幕2場で、
1場とはガラリと印象が変わりますが、
バレエや合唱が入り、
ラストは合唱付8重唱という大規模なものですが、
ゴタゴタとして散漫な場面になってしまうことが通常です。

それでは今回の上演はどうだったのでしょうか?

今回の上演はヴァレンティノの豪華な衣装と、
ソフィア・コッポラの映像的な演出も勿論良いのですが、
演劇的に非常に優れた舞台で、
特に2幕2場の仮面舞踏会の場面と、
3幕のヴィオレッタの死の場面が、
優れた成果を挙げていました。

2幕2場は豪華な衣装と装飾で盛り上げると共に、
あくまでヴィオレッタを主役にして、
ラストの大合唱も、
さながら合唱付のヴィオレッタの大アリアのように、
聴くことが出来たのが、
これまでにない創意であったと思います。
ここは途中でポーズなく時間のみが経過するのですが、
その処理も上手く出来ていたと思います。

構成として、幕毎に幕間を置き、
2幕の1場と2場は転換を挟んでそのまま上演されるのが通例で、
最近では1幕と2幕1場をそのまま繋げ、
2幕2場と3幕もそのまま繋げて、
1回の幕間で上演するパターンも多いのですが、
今回の上演は場毎に3回の幕間をとっていて、
上演時間が延びてしまう弊害はあるものの、
この方が演劇的オペラとしては、
理に適っているように感じました。
こうした方が、2幕1場の独立性が活きる、
というように感じるのです。

次に良かったのが3幕で、
通常よりヴィオレッタとアルフレードの二重唱が長く、
2人の恋が成就したことを、
明確に伝える構成になっていました。
多分死に際に長く歌うのが不自然だと誰かが考えて、
ここを短くしたのだと思いますが、
これは絶対オリジナルの方がいいですよね。
「過ぎ去った日々」も2番までカットなく歌っていて、
ここは作品のテーマを最も明確に表現している部分なので、
絶対にこの方が良いのです。

その一方で2幕1場はかなりのカット版で、
この部分の難しさから、
ここは敢えて軽く扱った、という感じがしました。
レオ・ヌッチの降板も大きかったのかも知れません。

ヴィオレッタを歌ったフランチェスカ・ドットは、
生で聴くのは初めてですが、
はつらつとして美しく、
陰影には乏しい感じはありましたが、
イメージ通りのヴィオレッタで素敵でしたし、
実力の120%くらいは出している熱演でした。
コロラトゥーラも綺麗で上手いですよね。
まだ若い声です。
相手役のポーリは、
当代ではアルフレードを最も沢山歌っている1人で、
何度も聴いていますが、
さすがの安定感で舞台を牽引していました。
バリトンの恰幅の良いアンブロージェ・マエストリは、
この役には声が若すぎるという気はしますが、
声量抜群で新鮮さのあるジェルモンでした。
2幕1場はまだ荷が重かった感じです。

僕はどちらかと言えば、
演劇としてオペラを聴いているので、
今回の上演はとても好ましく感じましたし、
演劇としての上演としては、
これまでのベストに近い「椿姫」であったと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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