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2型糖尿病の予後に与える生活改善の影響(2018スウェーデンの大規模データ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
本日は石原が不在のため、
石田医師が午前午後とも外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
生活改善と糖尿病の予後.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
生活改善や臨床データの数値と、
2型糖尿病の予後との関連についての論文です。

これは非常に臨床的には重要な知見です。
現状まだ詳細をかみ砕くほど読み込んでいないのですが、
今後の糖尿病の診療自体が、
大きく変化するきっかけとなるような、
問題をはらんでいるという気がします。

2型糖尿病の現状の問題点は、
多くの画期的な作用を持つ、
糖尿病治療薬が次々と開発されているにもかかわらず、
糖尿病の患者さんの生命予後や、
心血管疾患のリスクは、
未だ糖尿病のない人よりは、
かなり高い水準にあるという事実です。

糖尿病の病因による議論も、
インスリン抵抗性や分泌不足を本質とするものから、
そうではなくてグルカゴンの過剰分泌こそが本質だ、
というもの、
更には糖質を過剰に摂っている生活習慣が、
全ての元凶だ、というものまで、
議論はまだ尽きないのが実状です。

2型糖尿病というのは、
単純に血糖が高いという病気ではなく、
全身の血管の老化を進行させるような代謝病で、
その予後に最も大きな影響を与えるのは、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患です。

ただ、血糖コントロールのみをターゲットにして、
糖尿病の治療を行なっても、
動脈硬化の進行によって起こる心血管疾患の予後の改善には、
充分ではないことがこれまでの臨床試験などの結果から、
判明しています。

その原因のうち大きいと考えられているのが、
血糖を強力に下げるような治療による、
副作用としての重症の低血糖の増加です。

低血糖は急性心筋梗塞や重症不整脈の、
誘因となることが指摘されています。

そのために現行のガイドラインにおいては、
2型糖尿病の治療の目標は、
数か月の血糖の指標であるHbA1cが、
7.0%程度に設定されていて、
これは確かに低血糖の予防のためには仕方のない基準ですが、
一方でこのレベルでは、
心血管疾患の予後の改善には、
不充分であることもほぼ明らかです。

それでは、どうすれば良いのでしょうか?

問題は2型糖尿病のある患者さんのうち、
どのような条件の患者さんの生命予後が、
最も良く、
逆にどのような患者さんの予後が、
最も悪いのか、
と言う点にあります。

治療効果ではなく、
患者さんの予後がどのような時に、
病気のない人と変わらないのか、
と言う点を検証するという、
ちょっと逆転の発想です。

これまでは単純に血糖コントロール(実際にはほぼHbA1c値)
の一択でした。
HbA1cをともかく正常に近づければ、
それで患者さんの予後は正常に近づくだろう、
という考えであったのですが、
それが誤りであることは明らかになったのです。

それではどのような条件を組み合わせれば良いのでしょうか?

今回の研究は国民総背番号制で、
こうしたデータを大規模に解析しやすいスウェーデンのものですが、
2型糖尿病の患者さん271174名を対象として、
年齢などをマッチした、
糖尿病のないコントロール1355870名と比較し、
生活習慣に関わる臨床データと、
糖尿病の予後との関連を検証しています。
観察期間の中央値は5.7年です。

糖尿病の予後に関わるリスク因子は、
HbA1cは7.0%以上、
収縮期血圧が140mmHg以上もしくは拡張期血圧が80mmHg以上、
尿の微小アルブミン尿、
喫煙歴、
LDLコレステロールが97mg/dL以上、
の5つが採用されています。

これは要するに喫煙歴がなく、
LDLコレステロールが90mg/dLであれば、
この2つのリスク因子は陰性、
ということになる訳です。
この選択はこれまでの多くの疫学データからの推定です。

その結果、2型糖尿病の患者さんにおいて、
以上の5つのリスク因子が全て陰性であると、
総死亡のリスクは健常者と比較して1.06倍(95%CI: 1.00から1.12)、
と糖尿病でも有意な増加はなく、
急性心筋梗塞の発症リスクは0.84倍(95%CI: 0.75から0.93)、
とコントロールより有意に低くなっていました。
脳卒中の発症リスクも0.95倍(95%CI: 0.84から1.07)、
と有意な増加はありませんでした。
一方で心不全による入院のリスクのみは1.45倍(95%CI: 1.34から1.57)、
と5つのリスクが陰性であっても、
糖尿病で有意に増加していました。
2型糖尿病の患者群では、
脳卒中や急性心筋梗塞の発症リスクに最も関連しているのは、
HbA1cの7%を超える上昇で、
総死亡のリスクと最も関連が強いのは喫煙でした。

個々の病態のリスク毎に、
やや異なった傾向があり、
急性心筋梗塞のリスクは、
HbA1cの上昇に伴いほぼ直線的に増加しますが、
総死亡のリスクは脳卒中のリスクは、
7%くらいがそのリスクは最も低く、
それを下回ってもリスクは増加する傾向を示していました。

これは治療により達成された結果ではなく、
治療の有無に関わらずその時の状態を示しているので、
治療の目標値と同じとは考えるべきではないのですが、
血糖自体は下げ過ぎることなく、
他のリスク因子を調節することが、
2型糖尿病の患者さんの予後を、
最も最適化するという今回の知見は、
非常に興味深く、
今後のこうした知見の臨床への応用への議論を、
まずは期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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