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2018年08月| 2018年09月 |- ブログトップ
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ほりぶん 第6回公演「牛久沼3」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ほりぶん牛久沼3.jpg
ナカゴーの怪人鎌田順也さんの別ユニット、
ほりぶんの第6回公演として、
「牛久沼3」が本日まで上演されています。

ほりぶんはワンピース姿の女性しか登場しない、
というお芝居を上演し続けていますが、
はえぎわの怪女優川上友里さんがメインで、
周囲も大暴れ上等の肉体派の皆さんが揃っているので、
ある意味ナカゴーよりラディカルでシュールな世界が展開されます。

今回の作品は2017年に第4回公演として上演された、
「牛久沼」のシリーズ第3作で、
前作は牛久沼の最後のウナギを釣り上げた親子が、
それぞれの理由でウナギを求める女性達と、
壮絶なウナギ争奪戦を繰り広げるというお話でした。

今回の続編は第1作から3年後という設定で、
今度は母親のために子供が1人で、
もう絶対にいないと思われていたウナギを釣り上げるのですが、
同じように因縁のある女性達が次々と出現して、
再び仁義なきウナギ争奪戦が繰り広げられます。

今回のメインは最強の敵と称される、
ナイロン100℃の菊池明明さん演じる「疲れ知らずさん」で、
もう妖怪と言って良いような怪演で、
大バトルが何もない素舞台で展開されるのです。

当日渡される資料には、
何とまだ上演すら未定の「牛久沼4」まで網羅した、
あらすじ集が付いていて、
鎌田さんの独特の拘りが感じられます。

本当に子供の空想のように、
牛久沼の世界が拡大されて行く様が面白く、
是非末永い上演を期待したいと思いました。

さて、鎌田さんの劇作は、
そのシュールで奔放な想像力はそのままに、
最近の作品ではドラマの部分で成熟度が増しています。
今回の作品でも、
主人公となった文子という娘が、
追っ手が迫っているにもかかわらず、
絶対に走らないという母親との約束を守り、
そのために却って危機に陥るも、
最後にはトラウマを克服して走り出す、
というドラマとしての縦筋が明確にあり、
母親との対話が練り上げられていることで、
その部分の説得力が増している、
と言う点が大きな特徴です。

こうしたドラマに説得力があり、
かつしっかりと笑いの要素もそこに散りばめられている、
と言う点に劇作としての成熟があり、
鎌田さんの世界が、
新たなステージに昇りつつあることが感じられました。

キャストのエネルギー全開の大暴れはいつも通りでしたが、
今回はやや粘着でウェットな芝居の人が多く、
やや腹にもたれる感じがあったのと、
あまりに体当たりで皆さん傷だらけなのが痛々しく、
特に菊池明明さんはそのとぼけたキャラが、
個人的には大好きであったので、
今回の捨て身の妖怪演技は、
さすがにちょっとなあ、と、
これも痛々しい感じを覚えてしまいました。

もう少し女優さんの美しさもいかした、
素敵な感じもあると良かったですね。
肉体派ばかりでは少しきついな、と感じました。

たとえばですが、
菊池さんは前半はもっと乙女チックに登場して、
後半で妖怪化しても良かったのではないでしょうか?

いずれにしても、
鎌田さん以外ではなし得ない唯一無二のお芝居で、
初見の方なら呆然自失を約束する怪作です。
是非体力を付けてご覧下さい。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「プーと大人になった僕」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
プーと大人になった僕.jpg
ディズニーが熊のプーさんの後日談を実写映画化しました。

これはディズニーの作品としては、
趣味的な感じのする小品で、
作り手が作りたい作品を作った、
というその意味では愛すべき映画です。
そもそもヒットを狙った感じではなく、
公開後1週間の映画館もガラガラでした。

元々アニメ化されたプーさんは、
かなりアメリカナイズされたもので、
公開当時には原作者サイドから批判のあったようです。

それを意識したものかどうか、
今回の実写映画は、
原作通りにイギリスを舞台にしていて、
時代も1949年に設定され、
非常にノスタルジックな感じのする物語になっています。

原作は7歳のクリストファー・ロビン少年が、
ぬいぐるみのプーさん達との生活に、
別れを告げることで終わるのですが、
今回の映画はその場面から始まって、
その後大人になり仕事人間となってしまったクリストファー・ロビンが、
20年ぶりにプーとその仲間たちに再会する、
というドラマになっています。

ロビンがなくした仕事の書類を、
彼の娘とプーさん達森の仲間が、
届けようと旅をするのがクライマックスですから、
とてもとても地味なお話しなのですが、
原作のキャラクターを忠実に再現した細部には、
かなりのこだわりが感じられます。

ロビンは総合商社のカバン部門を指揮している、
と言う設定で、
お金持ちのバカンス用のカバンを作っていたのですが、
戦後すぐという時代で、
お金持ちもバカンスをするような余裕はなく、
カバンが売れなくなってしまいます。

それでボンボンの2代目社長(?)からは、
コストを20%削減しなければ、
カバン部門を廃止すると宣告されてしまいます。

困ったロビンは家族との約束を反故にして、
旅行もキャンセルしてその削減案の書類を作るのですが、
プーさんとその仲間が書類を失くしてしまうのです。

書類もなしに会社の会議に行ったロビンは、
果たしてどのようなプランを出すのでしょうか?

皆さんはどう思いますか?

要するに、
「家族でディズニーランドで遊ぼう。そうすれば経済も廻って上手くいくよ」
というディズニーに都合の良い結論になるのですが、
その道徳的な結論が、
にわかに首肯出来ないものの、
「なるほど、これが1つの今の時代の正解とされることなのか」
とそう思うと興味深くも感じます。

原作を知らない方には、
汚れたぬいぐるみがそのまま動くビジュアルは、
ちょっと異様に感じるかも知れません。
ただ、これが原作の通りなのです。

まあ、ぬいぐるみが本物の動物と一緒に、
森で楽しく暮らしているという物語を、
そのまま実写で表現する、
というのはかなり無理がありますよね。

童話をそのまま実写にするというのは、
今のような高度の技術をもってしても、
基本的に無理のあることなのかも知れません。

そんな訳でかなり観客を選ぶ作品だと思いますが、
ディズニーとしては本気で趣味に走ったと思える1本で、
人によってはかつての「不思議の国のアリス(アニメ版)」のように、
偏愛の対象となる作品となるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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プッチーニ「マノン・レスコー」(2018年ローマ歌劇場来日公演) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
マノンレスコー.jpg
ローマ歌劇場の来日公演の演目として、
プッチーニの「マノン・レスコー」が上演され、
その神奈川県民ホールの舞台に足を運びました。

プレヴォーの小説「マノン・レスコー」は、
オペラやバレエとして、
これまでに何度も劇化されています。

今上演されている中で最も古いのが、
フランスのオーベール作曲によるオペラで、
これは日本で上演されたことは、
本格的にはほぼないと思います。
海外で上演された録画がDVDなどで観ることは出来て、
それを観るとロッシーニに近い、
超絶歌唱連続の楽しい作品です。

次にフランスで作曲されたのがマスネによる「マノン」で、
デセイ様やネトレプコなどの名歌手が上演したことで、
最近は上演されることの多いヴァージョンです。
如何にもフランスオペラらしい、
楽しく情感や切なさにも満ちた素敵な作品で、
場が多すぎて、やや長く繰り返しの多い点が難です。
僕は新国立劇場で上演されたものと、
英国ロイヤルオペラで、
アンナ・ネトレプコが演じたものを生で聴いています。
ネトレプコ版は同じ公演を2回聴きましたが、
これはもう抜群でした。
大興奮!

そしてもう1つのオペラ版マノンが、
このプッチーニの「マノン・レスコー」です。

プッチーニのマノンは彼の出世作ですが、
ドラマを重視したより新しいオペラとなっていて、
音楽を利用した情景描写が非常に長いということと、
ダイナミックで膨らみのある感情表現が魅力です。

こちらもこれまで日本で上演される機会は決して多くはなく、
僕は2012年に新国立劇場で上演したものを1回聴いているだけで、
今回が2回目の機会です。

今回の上演は主役のマノンを歌った、
クリスティーネ・オポライスの初来日が目玉で、
相手役のグレゴリー・クンデも、
オテロなどを得意とする名テノールです。

正直僕の聴いた舞台は、
まだオーケストラと歌手とのコンビネーションが今ひとつで、
とても良いところがある一方で、
オケと声とのタイミングが合わなかったり、
声が消されるような部分も多く、
やや欲求不満の気味の出来であったように思います。

大柄で恰幅の良いクンデが、
純真な学生役というのもちょっと違和感があります。

オポライスはさすがの迫力で、
2幕の二重唱の部分など、
もの凄くエロチックで肉感的であることに驚きました。
ビジュアルも抜群の美しさです。

これでもう少し音と歌のバランスが良ければなあ、
とは何度も思いましたが、
これはもう舞台は生ものなので仕方がありません。

演出もセンスのあるもので、
トータルにはさすがのクオリティであったと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新規インフルエンザ治療薬パロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ)の臨床試験データ [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ゾフルーザの臨床データ.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
インフルエンザの新薬である商品名ゾフルーザの、
発売前の臨床試験データをまとめた論文です。

インフルエンザの治療薬には、
世界中で広く使用されている、
オセルタミビル(商品名タミフル)、
吸入薬のザナミビル(商品名リレンザ)以外に、
使用が1回で済む吸入薬のラニナミビル(商品名イナビル)、
注射薬のペラミビル(商品名ラピアクタ)、
ファビビラビル(商品名アビガン)があります。

注射薬のイナビルは日本以外では殆ど使用されておらず、
注射薬のラピアクタは日本以外では、
重症時やハイリスク時のみの使用が一般的です。
アビガンはそれまでとはメカニズムの異なる治療薬で、
現状はパンデミック時など国がその使用を許可した場合のみ、
その使用が可能となる医薬品という特殊な位置づけとなっています。

そこに更に今回、
また新たなメカニズムを持つインフルエンザ治療薬として、
ゾフルーザが加わりました。

メカニズムから見ると、
タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタは、
いずれもノイラミニダーゼ阻害剤で、
感染した細胞内で増殖したウイルスが、
他の細胞に感染することを防ぐ仕組みの薬です。

一方でアビガンは、
感染細胞内でウイルスが増殖するのに必要な、
RNAポリメラーゼの阻害剤です。

そして今回のゾフルーザは、
アビガンとは別個の、
細胞内でウイルスが増殖するのに必要な酵素である、
キャップ依存性エンドヌクレアーゼの阻害剤です。

ゾフルーザは通常より早いペースで日本では承認が進み、
2018年の3月に発売されました。
当初はアビガンと同じように、
パンデミック時などの使用とする方針もあったようですが、
実際に発売されてみると、
特にそうした制限はなく、
製薬会社の担当の方のお話を聞いても、
現行どのような場合に使用するべきという指針はなく、
自由に処方して問題はないというお話でした。

この薬剤は感染細胞でのウイルスの増殖を抑えるので、
タミフルやリレンザより効果が迅速で、
体内で49から91時間という長い半減期を持っているため、
内服で1回のみの使用で充分という特徴があります。

今回発表された第3相臨床試験の結果では、
12から64歳のインフルエンザ症状の患者に対して、
ゾフルーザ使用群と、
タミフルを1日150mgの5日間使用群、
そして偽薬群の3群に分けて、
その予後を比較検証しています。
最終的に解析された人数は1064名で、
その8割は日本での登録者です。

その結果、
症状改善までに要する時間は、
偽薬で80.2時間であったのに対して、
タミフル群では53.8時間、
ゾフルーザ群で53.7時間となっていました。
つまり、ゾフルーザを使用することにより、
インフルエンザの発熱などの症状が、
タミフルと同様に1日程度短縮する効果があります。
ウイルスが検出されなくなるまでの期間は、
タミフルよりゾフルーザがより短くなっていました。

ただ、ゾフルーザの効果が減弱するような遺伝子変異も、
9.7%に認められていました。
仮にこうした変異のあるウイルスの感染に対して、
ゾフルーザをすると、
使用しない場合と比較して、
むしろウイルスの排泄に時間の掛かることが想定されます。

本来こうした薬剤の有効性は、
重症化予防や生命予後の改善効果などで判断されるべきですが、
通常健常者の感染の予後は良いインフルエンザの場合、
こうした臨床試験で当面の判断はせざるを得ず、
現状はその効果はタミフルと同等と、
そう考えるのが妥当であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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健康な高齢者へのアスピリン使用の生命予後への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの高齢者へのリスク.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
70歳以上の高齢者に低用量のアスピリンを使用した場合の、
生命予後への影響を検証した論文です。

低用量(1日80から100mg)のアスピリンには、
抗血小板作用があり。
心血管疾患の再発予防や、
消化器系の癌(腺癌)の進行予防効果が確認されています。
その一方で出血系の合併症のリスクは高めるので、
まだ心血管疾患や癌を発症していない、
健康な高齢者に使用を継続した時に、
果たして健康面にトータルでメリットがあるのか、
というのは未だ解決されていない問題です。

そこで2010年から2014年に掛けて、
オーストラリアとアメリカの70歳以上
(アメリカの黒人とヒスパニックは65歳以上)
の一般住民で、
心血管疾患や認知症などがなく生活上の問題のない、
トータル19114名を登録してくじ引きで2群に分け、
本人にも実施者にも分からないように、
一方はアスピリンを毎日100mgを使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
中央値で4.7年の経過観察を行っています。

その結果、
アスピリンの使用は健康寿命の延長に、
有意な効果は認められず、
総死亡のリスクはむしろアスピリン群で増加する、
という意外な結果が得られました。

その結果は別個に論文として発表されていますが、
今回の論文では、
アスピリンによる総死亡リスクの増加について、
個々の死因を分析するなど、
より詳細な解析を行っています。

その結果、
アスピリン群では年間1000人当り、
12.7件の死亡が発症していたのに対して、
偽薬群では11.1件で、
アスピリンは総死亡のリスクを、
1.14倍(95%CI:1.01から1.29)有意に増加させていました。
この原因を死因毎に検索したところ、
この差の原因は、主に癌死亡の差によっていました。
ただ、特定の癌死亡が増えているということはなく、
出血系の合併症が、
癌の患者さんの予後を変えている、
という証拠も得られませんでした。

癌が進行したケースでは、
実際には多くの対象者が登録から外れてしまっているので、
アスピリンが癌の進行を早めた、
というメカニズムは考えにくそうです。

この結果はこれまでの同種の疫学データとは、
一致しないものであるのですが、
比較的健康な高齢者が、
一次予防や健康寿命の延長目的でアスピリンを使用することには、
より慎重である必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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前糖尿病での糖尿病進行予防治療の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので外来は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
前糖尿病の治療介入.jpg
2018年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
前糖尿病への治療介入の効果についての論文です。

前糖尿病(prediabetes)というのは、
主にアメリカで重視されている考え方で、
日本で言う「境界型糖尿病」とほぼ同じものです。

つまり、
血糖が正常パターンと糖尿病と診断されるパターンとの、
間の数値を取ることを意味しています。

具体的には、
食前血糖が100mg/dL未満で、
75グラムのブドウ糖負荷試験をした時に、
2時間値が140mg/dL未満を正常パターンとしていて、
食前血糖が126mg/dL以上もしくは、
糖負荷試験の2時間値が200mg/dL以上が、
糖尿病パターンです。
この間にあるのが前糖尿病ということになります。
食前血糖の正常パターンを100未満としているのは、
アメリカのみで、
日本では110未満が正常、
ただし100から109は正常だた高め、
というあちこちに配慮した、
玉虫色のものになっています。

5から7年くらいの経過観察により、
前糖尿病の人の3分の1は糖尿病と診断される状態に進行する、
と報告されています。

ただ、それでは前糖尿病の人だけが、
糖尿病になるのかと言うとそうでもなく、
5年後に糖尿病と診断された人の4割は、
5年前には正常の血糖パターンだった、
という報告もあります。

そこでアメリカで近年提唱されているのが、
糖負荷試験の1時間値が、
155mg/dL(8.6mmol/L)を超えた場合も、
前糖尿病と同じように考えよう、
とい主張です。
この数値を入れると、
糖尿病に将来なるリスクの高い人を、
かなり絞り込むことが可能となるのです。

この前糖尿病の段階から糖尿病への進行を阻止することが、
糖尿病の患者さんの増加を食い止めるために、
非常に重要であることは間違いがありません。

これまでに糖尿病治療薬であるメトホルミンなどを、
前糖尿病の段階から使用することにより、
糖尿病への進行が予防された、
というような報告が散見されますが、
実際の臨床で行われたような研究は少なく、
その例数も充分とは言えないものなので、
その有効性についてはまだ結論が出ていません。

そこで今回の研究では、
アメリカにおいて、
実地のプライマリケアや内分泌代謝科の医療機関を登録し、
糖負荷試験で前糖尿病と診断され、
糖尿病に進行するリスクが高いと判断された対象者に対して、
そのリスクの高さにより、
中等度のリスクの場合には、
生活改善と共にメトホルミンとピオグリタゾンを使用し、
高度のリスクがある場合には、
生活改善と共にメトホルミンとピオグリタゾンに加えて、
GLP1アナログを使用、
薬物治療を望まなかった対象者は、
生活改善のみを行って、
その3群の予後の比較を行っています。

この場合の中等度リスクというのは、
血糖パターンは正常で、
糖負荷後1時間の血糖が155を超えている場合か、
糖負荷のパターンは前糖尿病であるけれど、
1時間値は155未満である場合のどちらかです。
高度のリスクというのは、
血糖パターンが前糖尿病で、
負荷後の1時間値も155を超えている場合です。

予防目的の薬物治療は、
メトホルミンは1日850mg、
ピオグリタゾンは1日15mg、
リラグルチドで1日1.2mgなどが使用されています。
これはアメリカの使用量としては、
下限くらいの量が設定されています。
日本においてはリラグルチドの1.2mgは認められていません。

トータルな振り分けられた人数は747名で、
最終的に解析されたのは422名です。

その結果、
平均の平均の観察期間32ヶ月において、
中等度もしくは高度リスクで生活改善のみの場合には、
糖尿病への移行が11%に認められたのに対して、
中等度リスクでメトホルミンとピオグリタゾン使用群では、
糖尿病への移行は5%に抑えられ、
高度リスクでGLP1アナログを含む3剤使用群では、
糖尿病への移行は1名も認められませんでした。

生活改善のみと比較して、
メトホルミンとピオグリタゾンの使用は、
糖尿病へ移行するリスクを71%(95%CI: 0.11から0.78)、
GLP1アナログを含む3剤の使用は、
88%(95%CI: 0.02から0.94)、
それぞれ有意に低下させた、
という結果になっています。

これはあまり厳密なデザインの試験ではなく、
例数も結果的にはかなり減ってしまっているので、
常にこれだけの効果があるとは、
言い切れない結果なのですが、
前糖尿病状態からの積極的な介入に、
無視できない効果のあることは事実で、
今後その安全性や対象者の絞り込み、
医療経済的な側面も含めて、
充分な検証が必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ジクロフェナク(ボルタレン)の心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ボルタレンの心血管疾患リスク.jpg
2018年のBritish Medical Journalに掲載された、
広く世界的に使用されている、
ジクロフェナク(商品名ボルタレンなど)という消炎鎮痛剤の、
心血管疾患リスクとの関連についての論文です。

非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
商品名ではボルタレンやブルフェン、
ロキソニンなどがそれに当たり、
一般に幅広く使用されている解熱鎮痛剤です。

しかし、この薬には多くの有害事象や副作用があり、
心血管疾患(特に急性心筋梗塞)の発症リスクの増加は、
ほぼ確認されている有害事象の1つです。

しかし、個別の薬剤間でどの程度のリスクの差があるのか、
と言う点や、
薬剤の量や期間とリスクとの関連などの事項については、
論文によっても結論が異なる部分があり、
まだ確実と言えるような知見は得られていません。

今回の研究はデンマークの、
国民レベルの大規模疫学データを活用したもので、
ジクロフェナク(ボルタレン)を使用開始した1370832名と、
イブプロフェン(ブルフェン)を使用開始した3878454名、
ナプロキセンを使用開始した291490名、
アセトアミノフェン(カロナール)を使用開始した764781名、
以上の消炎鎮痛剤の使用群を、
年齢などの背景を一致させた、
消炎鎮痛剤未使用者1303209名と、
その使用30日以内の心血管疾患の発症リスクを、
比較検証しています。

その結果、
未使用のコントロールと比較して、
ジクロフェナク使用30日以内の心血管疾患発症リスクは、
50%(95%CI: 1.4から1.7)有意に増加していました。
同様にアセトアミノフェンによるリスクの増加は20%、
イブプロフェンによるリスクの増加は20%、
ナプロキセンによるリスクの増加は30%、
それぞれ有意に増加していました。

このように、
多くの消炎鎮痛剤が心血管疾患のリスクを、
その使用後30日以内という短期間で増加させますが、
中でもジクロフェナクはそのリスクが高く、
痛み止めとしては有効性の高い薬剤ではありますが、
その使用は特に心血管疾患のリスクの高い使用者においては、
より慎重である必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ヴェルディ「椿姫」(2018年ローマ歌劇場来日公演) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ローマの椿姫.jpg
ローマ歌劇場の日本公演として上演された、
ヴェルディ「椿姫」の舞台に足を運びました。

「椿姫」はおそらく最も多く生で聴いているオペラで、
50回以上はこれまでに聴いていると思います。
一時期は毎年藤原歌劇団が、
豪華なゲストを招聘して毎年上演していましたし、
新国立劇場でも定期的な上演があり、
海外のオペラハウスの引っ越し公演でも、
3回に1回くらいは演目に選ばれるという感じです。

このオペラは作品としての完成度は高いですし、
3幕4場の構成ですが、
その場毎に雰囲気が異なり、
主要な登場人物は3人のみというのも特徴です。
1幕は主人公のソプラノの技量で、
全てを押し切るというプリマドンナオペラのスタイルですが、
2幕1場では繊細な感情の変化を、
主にバリトンとソプラノの二重唱で紡ぐというスタイルが面白く、
2幕2場はまた華やかな仮面舞踏会を、
バレエや大規模な合唱を入れて、
グランドオペラに近いスタイルで表現。
3幕は死の床に就く主人公を、
アリアとテノールとの二重唱で情感深く描きます。

上演によってさほど印象の変わらないのは1幕のみで、
他の場面は音楽作りや演出により、
その印象は大きく変わります。

最もポイントになるのは、
音楽的には最も優れていて、
ヴェルディの天才が発揮された2幕1場ですが、
この場面を上手く上演することは非常に難しく、
下手をすれば最も退屈な場面となる一方、
伝統的に上演されているバージョンでは、
この部分がオリジナルからズタズタにカットされていて、
オリジナルの音楽の良さが、
まるで感じられないものになっている、
というのが大きな問題点です。
ただ、最近は原点回帰でカットの少ない上演が増え、
僕が聴いた中でも、
エヴァ・メイの歌ったチューリヒ歌劇場の舞台と、
デセイ様の歌ったトリノ歌劇場の舞台は、
かなり全長版に近く、
この場面の真価を感じさせる優れた上演だったと思います。

次に難しいのがグランドオペラ形式の2幕2場で、
1場とはガラリと印象が変わりますが、
バレエや合唱が入り、
ラストは合唱付8重唱という大規模なものですが、
ゴタゴタとして散漫な場面になってしまうことが通常です。

それでは今回の上演はどうだったのでしょうか?

今回の上演はヴァレンティノの豪華な衣装と、
ソフィア・コッポラの映像的な演出も勿論良いのですが、
演劇的に非常に優れた舞台で、
特に2幕2場の仮面舞踏会の場面と、
3幕のヴィオレッタの死の場面が、
優れた成果を挙げていました。

2幕2場は豪華な衣装と装飾で盛り上げると共に、
あくまでヴィオレッタを主役にして、
ラストの大合唱も、
さながら合唱付のヴィオレッタの大アリアのように、
聴くことが出来たのが、
これまでにない創意であったと思います。
ここは途中でポーズなく時間のみが経過するのですが、
その処理も上手く出来ていたと思います。

構成として、幕毎に幕間を置き、
2幕の1場と2場は転換を挟んでそのまま上演されるのが通例で、
最近では1幕と2幕1場をそのまま繋げ、
2幕2場と3幕もそのまま繋げて、
1回の幕間で上演するパターンも多いのですが、
今回の上演は場毎に3回の幕間をとっていて、
上演時間が延びてしまう弊害はあるものの、
この方が演劇的オペラとしては、
理に適っているように感じました。
こうした方が、2幕1場の独立性が活きる、
というように感じるのです。

次に良かったのが3幕で、
通常よりヴィオレッタとアルフレードの二重唱が長く、
2人の恋が成就したことを、
明確に伝える構成になっていました。
多分死に際に長く歌うのが不自然だと誰かが考えて、
ここを短くしたのだと思いますが、
これは絶対オリジナルの方がいいですよね。
「過ぎ去った日々」も2番までカットなく歌っていて、
ここは作品のテーマを最も明確に表現している部分なので、
絶対にこの方が良いのです。

その一方で2幕1場はかなりのカット版で、
この部分の難しさから、
ここは敢えて軽く扱った、という感じがしました。
レオ・ヌッチの降板も大きかったのかも知れません。

ヴィオレッタを歌ったフランチェスカ・ドットは、
生で聴くのは初めてですが、
はつらつとして美しく、
陰影には乏しい感じはありましたが、
イメージ通りのヴィオレッタで素敵でしたし、
実力の120%くらいは出している熱演でした。
コロラトゥーラも綺麗で上手いですよね。
まだ若い声です。
相手役のポーリは、
当代ではアルフレードを最も沢山歌っている1人で、
何度も聴いていますが、
さすがの安定感で舞台を牽引していました。
バリトンの恰幅の良いアンブロージェ・マエストリは、
この役には声が若すぎるという気はしますが、
声量抜群で新鮮さのあるジェルモンでした。
2幕1場はまだ荷が重かった感じです。

僕はどちらかと言えば、
演劇としてオペラを聴いているので、
今回の上演はとても好ましく感じましたし、
演劇としての上演としては、
これまでのベストに近い「椿姫」であったと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「累 かさね」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
かさね.jpg
松浦だるまさんの人気コミックスを、
職人タイプの佐藤祐市さんが監督し、
人気者の土屋太鳳さんと芳根京子さんが主演した、
ホラースリラー映画を観て来ました。

楳図かずおの「洗礼」みたいな話ですが、
「デスノート」的テイストが取り入れられ、
もっとスタイリッシュで今風です。

これはちょっと拾いもの、といった感じの映画でした。

長大なコミックスの、
第3巻の途中までのほんの入り口の部分だけを、
それも人物関係などをより整理して、
ニナと累という「魔法の口紅(笑)」で顔が入れ替わる2人の女性の、
因縁と対立のみに絞って、
シンプルに映像化したことが成功しています。

ただ、ラストは舞台の終演で、
無理矢理終わり感を出しているのですが、
あらゆることが決着しないままですから、
ちょっと苦しいな、という感じはしました。

フジテレビ印の映画で、
スタッフもその多くはテレビドラマ出身ですから、
クオリティもテレビドラマの水準を、
大きく出るものではありません。
ただ、テレビドラマと映画の違いも良く心得ているので、
テレビの連続ドラマのように、
スピード感と密度と先延ばしで乗り切るのではなく、
より物語の構造をシンプルにして、
少数の登場人物を掘り下げることにより、
また別の世界を成立させています。

美と醜の相克を、
「ガラスの仮面」的な演劇成り上がりストーリーと、
絡ませた辺りがアイデアの面白さで、
原作より演劇の場面が多く、
前半はチェホフの「かもめ」、
後半はワイルドの「サロメ」が、
比較的忠実に上演されてストーリーに絡まります。
顔の瞬時に入れ替わる映像表現も、
そう目新しいことをしているという訳ではないのですが、
なかなか自然に出来ていました。

主役2人はなかなかの熱演で、
テレビドラマではあまり見せない顔を、
見せているという点も良いと思います。
累の母親役の檀れいさんが、
怪物的で不気味な伝説の大女優を、
それらしく演じていて凄みがありました。
檀さんはこうしたものが良いと思います。

総じてもう少しグロテスクで先鋭的にして欲しかったと思いますが、
一般向けの映画としては、
かなり無難な着地をしていて、
退屈なく観ることが出来る映画です。

もしお時間があればどうぞ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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tsumazuki no ishi × 鵺的「死旗」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
死旗.jpg
鵺的の高木登さんが台本を書き、
tsumazuki no ishiの寺十吾(じつなしさとる)さんが演出して、
両者の劇団を中心として、
多彩なキャストが顔を揃えた舞台が、
今下北沢のザ・スズナリで上演されています。

これはかなり悪趣味なので、
全ての方にお勧め出来る舞台ではありませんが、
かつての東京グランギニョールを思わせるような、
圧倒的な熱量で繰り広げられるアングラ芝居で、
よくぞ今の時代にここまでやったと、
とてもとても感銘を受けました。

アングラ芝居のお好きな方には、
絶対の贈り物です。

是非劇場に急ぐのじゃ。
見逃しては後悔しますぞ。

以下少しネタバレを含む感想です。

お話は場所も時代も特定しない、
山奥の血の濃い村の話で、
超能力を持つ盲目の長老に支配された、
略奪と強姦とカニバリズムを生業とする地獄のような部落に、
強姦され殺され食べられた女が、
忍びの村の一族であったことから、
復讐に燃える女忍びに率いられた集団と、
血で血を洗う抗争劇が繰り広げられます。

物語は死体を継ぎ合わせて作られた、
残美という人造美女が誕生する辺りから、
伝奇小説的色合いを強め、
山田風太郎的淫乱と暴力の奇想から、
ラストは町田康を思わせる血の精液の雨の中、
世界崩壊と再生の神話に着地します。

鵺的の高木登さんの世界は、
アングラ愛の集大成的な、
悪趣味上等、引用パクリ上等の、
清々しいほどに露悪的で悪趣味で過剰な世界で、
白土三平の「忍者武芸帳」から、
ハマーフィルムの「フランケンシュタイン死美人の復讐」、
山田風太郎の一連の奇想忍法帳、
町田康のパンク侍まで召喚しつつ、
ラストまで1時間40分をまとめ上げた手腕に感心します。

何より素晴らしいのは寺十吾さんの演出で、
寺十さんはアングラ演出では当代最高と思いますが、
今回はその手腕が極限まで発揮された素晴らしいもので、
凡百の演出家であれば扱い兼ねて空中分解するような素材を、
一点の緩みもなく緻密に組み上げ、
最初から醜悪な残虐場面が度肝を抜きますし、
音響やダイナミックな照明、本水などの効果で盛り上げ、
残美の場面では人外の悲しみのようなものまで、
巧みに表現しています。
こうした作品は尻つぼみになるのが通常ですが、
隠し球の夕沈さんを最後に登場させることで、
ラストの再生に繋がる葬列まで、
緩むことなく締め括った力技には、
まことに感銘を受けました。

寺十さんのこれまでのアングラ演出の、
集大成にして最高傑作と言って、
決して言い過ぎではないものだと思います。

キャストは女優陣が素晴らしく、
体当たり演技で賞賛に値する、
熟んだ果実のような川添美和さんが良いですし、
女忍びのとみやまあゆみさんの、
凜としたたたずまい、
残美という人造人間を、
アングラテイストの身体演技で演じきった、
福永マリさんと粒揃いです。

ちょっと残念だったのは、
かつて演劇実験室天井桟敷の一時期の看板であり、
アングラそのものを体現する、
跳躍する異形の肉体であった、
長老役の若松武さんが、
勿論かつての天井桟敷時代の身体演技を、
再現したくはないのでしょうが、
裏声のおとなしめのお芝居に終始していたのが、
かつての若松さんの肉体の大ファンとしては、
少し残念には感じました。
もう少し年齢無視の大暴れを、
しては頂けなかったのでしょうか?
もっと大人げない時代を召喚するような奇態を、
今のかつてを知らない若い観客達に、
見せつけては頂けなかったのでしょうか?
(失礼な表現と不遜な言葉をお許し下さい)
あと鵺的の奥野さんには、
もう少し体当たり演技が欲しかったな、
というようには感じました。
川添さんがあれだけやっているのですから、
もう少し踏ん張っては頂けなかったのでしょうか?
(これも失礼をお許し下さい)

いずれにしても、
「よくぞやったり」の素晴らしいアングラ芝居で、
よもやこれだけの物が今の時代に観られるとは、
想像もしなかった嬉しい誤算でした。

こうしたものがお好きな方には、
絶対のお薦めです。

アングラ万歳!

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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