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高齢者の認知機能と生活習慣との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

明日9月1日(土)の午前中は、
代診になりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
認知機能低下と生活習慣.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
高齢者における生活改善が、
その後の認知症の発症や、
認知機能の低下に与える影響についての論文です。

昨日の論文では、
40歳以下という若い年齢においても、
脳の虚血性変化や機能低下の萌芽のようなものは、
既に認められているというデータをお示ししました。

それでは、もう心血管疾患が発症し、
認知機能の低下も見られ始める、
65歳以上の年齢層においても、
生活改善は認知症の予防に有用なのでしょうか?

一定の有効性があるという考えがある一方で、
もう手遅れではないのか、
という考え方もありそうです。

今回の研究ではフランスにおいて、
年齢が65歳以上で登録の時点で心血管疾患や認知症のない、
トータル6626名の一般住民を平均で8.5年観察し、
7つの心血管疾患リスクに繋がる生活習慣やデータと、
認知症の発症リスクとの関連を検証しています。

7つの認知症予防に繋がるデータや生活習慣というのは、
タバコを吸わない、BMIが25未満、適度な運動習慣、
魚を週に2回以上、果物や野菜を1日に3回以上摂るような食事習慣、
総コレステロールが200mg/dL未満、
空腹時血糖が100mg/dL未満、
そして血圧が120/80未満、
の7つです。

その結果、
良い生活習慣や臨床データが多いほど、
認知症の新規発症リスクは低くなっていました。
1つの良い生活習慣や臨床データが加わると、
10%(95%CI:0.84から0.97)認知症リスクが低下する、
と算出されています。

このように65歳以上でも決して遅いということはなく、
心を入れ替えて生活改善を心がければ、
それが認知症の予防に繋がるという今回のデータは、
多くの同年配の方の励みになると思いますし、
生活指導を行いながらも、
心の中ではその効果に懐疑的であった、
多くの医療者にも安堵を与えるものではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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若者の脳の変化と生活習慣との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
若者の脳の変化と生活習慣.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
40歳以下という若い年齢における、
心血管疾患に伴うリスクと、
MRIで検出出来る脳の虚血性変化との関連についての論文です。

中年期における高血圧や脂質異常症などの、
心血管疾患リスクが、
その後の脳の虚血性変化や、
老年期の認知症などの誘因になることは、
ほぼ確立した事実です。

高精度のMRI検査などによる検証によれば、
40歳以下のようなもっと若い年齢においても、
脳血管の血流の低下や血管壁の性状変化、
白質病変などの脳の虚血性変化は、
画像上は認められると報告されています。

それではそうした若い年齢においても、
生活改善による病変の予防は可能なのでしょうか?

今回の検証はイギリスにおいて、
心血管疾患のない40歳以下の125名を対象として、
高血圧や脂質異常症などの、
生活改善により修正の可能な心血管疾患リスクと、
高精度の脳MRIにおける白質病変などの微細な虚血性変化との、
関連を検証しています。

その結果、
この年齢においても、
心血管疾患のリスクが高いほど、
白質病変などの脳の変化は強くなっていました。

将来の脳卒中や認知症を予防するには、
若い頃からの心血管疾患のリスク管理が、
重要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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集団平均から有病率は推測可能なのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
集団平均と病気との関連.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
集団平均と病気のリスクとの関連についての論文です。

これはある医学系のサイトで、
この論文が紹介されていたのですが、
その解説を読んでもちんぷんかんぷんで、
ほとんど日本語にすらなっていなかったので、
原文を読んでみたものです。
意外に分かりやすい内容でした。

血圧にも体格の指標であるBMIにも基準値が存在しています。
これは多くの疫学データから、
病気のリスクや生命予後などを勘案して決定されたものです。

その一方で病気のあるなしに関わらず、
一般住民を対象として血圧やBMIを測定すると、
通常それは正規分布といって、
ほぼ左右対称の大きな山型を描きます。
こちらをご覧下さい。
正規分布の図.jpg
これが血圧値の正規分布です。

この山の頂上に当たる部分が、
この集団における平均値です。
正規分布の場合にはこれが全ての数値の真ん中である、
中央値に一致しています。
この図には2つの平均値の違うグラフが描かれていますが、
調べる集団が異なればこうした平均値の違いがある訳です。

それではこの平均値の数値から、
何か言えることはないのでしょうか?

世界中の多くの疫学データを解析することで、
それを検証した論文が、
1990年のBritish Medical Journal誌に掲載されています。
それがこちらです。
集団平均のローズ論文.jpg
この論文においては、
ある集団における健康上の連続的な数値が、
ほぼ正規分布のパターンを取るときには、
その集団の平均値が、
その集団における病気の発生率と関連があるのではないか、
という推測の元に、
その検証を行っています。

こちらをご覧下さい。
集団平均と病気との関連の図.jpg
これは上の図が収縮期血圧で、
下がBMIを俎上に挙げたものです。

たとえば上の図で見ると、
横軸がその集団の収縮期血圧の平均値を示し、
縦軸がその集団での高血圧症の有病率を示しています。

これを見ると、
集団平均の血圧が高いほど、
高血圧症の有病率も高いという、
相関関係のあることが分かります。

このように集団の健康指標を測定することで、
ある程度その指標に関わる病気の有病率を、
ある程度推測することが可能となるのです。

これは直感的には、
何となく当たり前のことのようにも思えますが、
実際にそれを証明することは、
結構難しいことなのです。

こうした集団平均値と病気との関連は、
主にその数値が高いことと関連のある病気において、
検討されて来ました。

血圧と高血圧、
BMIと肥満症や肥満に伴う病気など、
いずれも平均値より数値が高い場合の関係です。

それでは、
平均値が低い場合に、
矢張り病気との関連はあるのでしょうか?

今回の研究では世界65カ国の疫学データを活用して、
血液のヘモグロビン値と貧血との関連、
そしてBMI値と病的な低体重や栄養失調との、
関連があるかどうかを検証しています。

その結果、
平均値より高い場合の病気と比較して、
平均値より低い場合の病気の貧血や低体重には、
それほどの明確な相関は認められませんでした。

このように、
正規分布自体は左右対象的なものですが、
同じ正規分布を示していても、
平均値が高ければ病気との関連が示唆されても、
平均値が低い場合の関連は、
それほど明確に推測はされないものであるようです。

BMIに関して言えば、
ある集団でその平均値が高ければ、
それだけ肥満の病気は多いと推測されますが、
平均値が低くても、
それだけ低体重や病的な痩せが多いと、
同じように推測することは出来ないのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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認知症への抗コリン剤使用の脳卒中リスク(2018年スウェーデンの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
抗コリン剤悪影響の論文.jpg
2018年のJournal of Alzheimer's Disease誌に掲載された、
認知症の患者さんに対する抗コリン作用のある薬剤の使用が、
生命予後と脳卒中の発症リスクに与える影響についての論文です。

抗コリン作用と言うのは、
副交感神経に代表される、
アセチルコリン作動性神経の働きを抑えるというもので、
非常に多くの薬剤がこの作用を持っています。

その中には抗コリン作用そのものが、
薬の効果であるものもありますし、
副作用として抗コリン作用を持つものもあります。

アセチルコリン作動性神経により、
胃や気管支、膀胱などの平滑筋は収縮しますから、
胃痙攣を抑える目的で使用されたり、
気管支拡張剤として、
また過活動性膀胱の治療薬として使用されます。
パーキンソン症候群の補助的な治療薬として、
使用されることもあります。

その一方で、
鼻水や痒みを止める抗ヒスタミン剤や、
抗うつ剤や抗精神薬は、
副作用としての抗コリン作用を持っています。

この抗コリン作用は基本的に末梢神経のものですが、
脳への作用も皆無ではありません。

一方で認知症では脳のアセチルコリン作動性神経の障害が、
早期に起こると考えられています。

そのために、
現在認知症の進行抑制目的で使用されている、
ドネペジル(商品名アリセプトなど)は、
脳内のアセチルコリンを増やす作用の薬です。

抗コリン剤はアセチルコリン作動性神経を抑制する薬ですから、
これがそのまま脳に働けば、
脳のアセチルコリン作動性神経の働きを弱め、
認知症のような症状を出すであろうことは、
当然想定されるところです。

実際に高齢者に抗コリン剤を使用することにより、
せん妄状態や、記憶障害や注意力の障害など、
認知症様の症状が急性に見られることは、
良く知られた事実です。

また最近の幾つかの大規模な疫学データにより、
抗コリン作用を持つ薬剤の長期の使用が、
その後の認知機能の低下と関連があることも、
ほぼ事実であると考えられるようになりました。

その代表的な知見は、
2015年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
アメリカの大規模疫学データと、
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
イギリスの大規模疫学データです。

いずれのデータにおいても、
抗コリン作用を持つ薬剤の使用は、
その後の認知機能の低下と一定の関連が認められましたが、
2018年の文献においては、
抗コリン作用をもつ薬の脳への影響の強さを、
ACBスケールという指標によって分類していて、
そのスケールが高い場合のみに、
有意な認知症リスクの増加が認められています。

このACBスケールというのは、
抗コリン作用自体はあることが確認されているものの、
それが認知機能に悪影響を与えたという報告のない薬が、
ACBスコアで1点、
脳への抗コリン作用が臨床的に確認されている薬が、2点、
そして更にせん妄などの発生が報告されている薬が、3点、
それ以外の薬は0点というように分類したものです。

具体的には三環系の抗うつ剤やパロキセチンなどのSSRIの大部分、
胃痛などを抑える、アトロピンやスコポラミン、
過活動性膀胱の治療薬である、
トルテロジン(デトルシトール)やオキシブチニン(ポラキス)、
ソリフェナシン(ベシケア)、
オランザピンなどの抗精神病薬、
ヒドロキシジン(アタラックスP)やプロメタジンなどの、
第一世代抗ヒスタミン剤などが、
このACBスコア3点となっています。

それを一覧表にしたものがこちらです。
抗コリン剤悪影響の図.jpg

さて、今回ご紹介する研究はスウェーデンにおいて、
既に認知症のある患者さんへの抗コリン作用のある薬剤の使用が、
その患者さんの予後に与える影響を、
特に脳卒中の発症リスクと生命予後に絞って検証したものです。

脳卒中の既往のない認知症患者、
トータル39107名を対象として、
抗コリン作用のある薬剤の使用と、
脳卒中の発症および総死亡のリスクとの関連を検証しています。

平均で2.31年の観察期間において、
ACBスコアが2以上の抗コリン作用のある薬剤を服用していると、
していない場合と比較して、
総死亡と脳卒中の発症を併せたリスクが、
1.20倍(95%CI: 1.14から1.26)有意に増加していて、
個々のリスクについても、
総死亡のリスクが1.18倍(95%CI: 1.12から1.24)、
脳卒中の発症リスクが1.13倍(95%CI: 1.00から1.27)、
虚血性梗塞の発症リスクが1.15倍(95%CI: 1.00から1.31)、
総死亡のリスク以外は、
やや相関は弱いという気がしますが、
それぞれ有意に増加していました。

このリスクの増加は、
認知症をアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症と分けても、
個別にも存在していました。

この結果からは、
ACBスコアが2以上の抗コリン剤を使用していると、
認知症の患者さんの生命予後や、
脳卒中の発症に、
悪影響が生じる可能性が示唆されます。

ただ、そもそも総死亡のリスクと脳卒中を、
組み合わせて解析するという根拠が、
あまり明確ではありませんし、
ACBスコアを2以上でひとまとめにしていて、
過去の疫学データにある、
3のみでの解析が、
行われていないことも釈然としません。
実際には総死亡のリスクは明確に上昇していますが、
脳卒中の発症リスクの増加は、
それほど明確ではないことも気に掛かります。

このように、今回のデータは、
ややその処理に疑問が残るのですが、
現実に少なからずの認知症の患者さんに、
抗コリン作用のある薬剤が使用されていることは事実なので、
今後もこうした投薬と認知症の予後との関連については、
精度の高いデータの蓄積を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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降圧剤3者併用療法の効果(2018年スリランカの臨床データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高血圧の3者併用療法.png
2018年のJAMA誌に掲載された、
3種類の降圧剤を1錠としたもので、
最初から高血圧の治療を行なう、
という試みについての論文です。

高血圧の薬物治療というのは、
患者さんの状態などからまず1種類の薬からスタートし、
その量を維持量まで増量した上で、
血圧の目標値に達しない時には、
2剤、それで駄目なら3剤と、
段階的に増量をしてゆくのが、
ガイドラインなどで通常推奨されている方法です。

ただ、こうした方法では、
患者さんは薬の数や量が増えることを不安に感じ、
飲み方が変わることにも混乱しますし、
薬が増えるほど支払う医療費の負担も増えるので、
増量や薬の数が増えることにあまり肯定的な感情を持たず、
血圧はまだ高いのに薬を増やすことを拒否したり、
処方されても指示通りには飲まないことが往々にして生じます。

特に医療コストをあまり掛けられない、
発展途上国においては、
この問題はより深刻で、
受診の機会自体はあっても、
治療の継続率は低く、
投薬量も充分ではないので、
目標の血圧には達する比率も低い、
というような事態が指摘をされています。

この問題の1つの解決策として、
3種類の降圧剤(カルシウム拮抗薬、ARB、利尿剤)を1剤にして、
1日1回の内服で、
その低用量と高用量の2種類を作り、
その2種類の剤型のみで、
高血圧の初期治療を行なってしまおう、
という考え方が生まれました。

本来は最初から3種類の薬剤を使用するというのは、
降圧治療の理想から言えばあるべき姿ではないのですが、
発展途上国で医療資源が限られているような場合には、
その方が結果的に効率的なのではないか、
というように考えたのです。

しかし、通常の降圧治療と比較して、
本当にこうした方法でも問題はないのでしょうか?

今回の研究はスリランカにおいて、
通常の治療と最初から3種類の薬剤を同時使用した場合の効果を、
半年間の治療で比較検証しています。

スリランカの11の一般診療をする医療機関の外来で、
血圧が持続的に140/90を超えているか、
もしくは糖尿病か慢性腎臓病があって、
130/80を超えている患者さんで、
医師が安定した状態にあって3者併用療法が可能と判断した場合に、
登録した上でくじ引きで2つの群に分け、
一方は通常の治療を行ない、
もう一方は最初から3者併用療法を施行して、
半年間の経過観察を行ない、
目標である140/90未満、
糖尿病や慢性腎臓病のある場合は130/80未満を、
達成した比率を比較しています。

3者併用療法で使用するのは、
カルシウム拮抗薬アムロジピンの2.5ミリグラムと、
ARBのテルミサルタンの20ミリグラム、
そして利尿剤クロルハリドンの12.5ミリグラムの合剤で、
効果不充分の場合は、
それぞれの量を2倍にした合剤への、
ステップアップも認められています。

その結果、治療半年の時点で、
目標の血圧を達成したのは、
通常治療群で55%であったのに対して、
3者併用治療群では70%で、
3者併用治療群の達成率が、
通常治療群を有意に上回っていました。
両群の有害事象には有意な差はなく、
途中でドロップアウトする頻度にも差はありませんでした。

この研究は主治医の裁量で、
3者併用療法が可能かどうかの振り分けをしているので、
そのバイアスが結果に影響した可能性を、
否定出来ないのですが、
通常ややリスクが高いと思われる、
初期治療からの3剤併用療法が、
意外に有用性が高かった、
という結果は非常に興味深く、
今後の検証の蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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マームとジプシー「BEACH」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
BEACH.jpg
動きや台詞の様式的な繰り返しの中に、
思春期の喪失感や死の匂いを漂わせた、
独特のスタイルが面白い演劇ユニット、
マームとジプシーが、
ドイツのシューズブランド、トリッペンとのコラボで、
原宿のイベントスペースを使い、
70分ほどの小さなお芝居を上演しています。

マームとジプシーは時々足を運んでいるという感じで、
この間の東京芸術劇場での「BOAT」は、
設定ばかり仰々しくて、
昔の意味不明の前衛演劇の劣化コピーのような、
個人的にはガッカリの作品であったのですが、
今回の作品は遙かに小品でありながら、
マームとジプシーの本来の良さがギッチリと詰まった、
素敵なお芝居でした。

トリッペンとのコラボということで、
6人のキャストはこのブランドの別々のサンダルを履いていて、
その内容も時々CMとして、
舞台奥のスクリーンに映写されます。

物語は夏のビーチでの1日の出来事で、
ある1人の女性が、
翌日にその町を去る、
というだけのさざ波のような小さなドラマが、
独特のリフレインの演出と共に、
詩情豊かに描かれます。

役者さんの息づかいも届く小空間に、
そのミニマルなドラマが心地よく、
何もない舞台に、
観客の想像力の中で砂浜の風景が浮かび、
そこに仄かに漂う、
喪失と死の匂いのようなものが、
切なく美しい叙情を紡ぐのです。

役者さんも心得た芝居で、
作者の世界を精緻に表現していました。

空間設計としては、
もっと大空間の処理にも長けたマームとジプシーですが、
その内包するミニマルな喪失感のようなものを、
的確に表現するには、
もっと小さな空間での芝居の方が完成度は高く、
現時点ではよりその本質を感じられるように思いました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「検察側の罪人」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
検察側の罪人.jpg
雫井脩介さんが2013年に発表した同題のミステリーを、
木村拓哉さんと二宮和也さんの顔合わせで映画化し、
原田眞人監督がメガホンを取った話題作を、
封切りの日に観て来ました。

最初に良いところを言いますと、
メインキャスト2人の演技のぶつかり合いは、
なかなか見応えがありました。
また、シネスコの画面を斜めに切り裂くような、
工夫された映像表現もなかなかでした。

それ以外は…

申し訳ないのですが、
個人的感想としては最悪の部類です。

以下少しネタバレを含む感想になります。
映画は予備知識があってもなくても、
どちらでも変わりのないような代物ですが、
原作はなかなかの社会派ミステリーの力作なので、
是非先に原作を読まれることをお勧めします。

それでは先に進みます。

この映画版は、
おそらくは監督主導の個人プレイのように思いますが、
原作を目茶苦茶に改変して、
原作の世界からは到底容認出来ないような入れごとをしています。

主人公の1人の祖父がインバール作戦の生き残りで、
その祖父の意思を次いで、
日本の軍国主義化を画策する大物政治家を倒すために、
検事としての正義を守ろうと、
結果的に悪にも手を染める、
というようなストーリーが強引にはめ込まれていて、
そのために、結果として、
正義のためには殺人を犯しても許される、
というような意味にも取られかねない内容になってしまっています。

原作には勿論そんな内容はありません。
インバール作戦も出て来ませんし、
正義を歪めた検事の所業は、
司直の手によって最後には裁かれます。

勿論映画には映画の入れごとがあることは構いませんが、
そのために原作のストーリーの自然さが、
大きく損なわれてしまっています。

インバール作戦や日本の軍国化を糾弾したいのであれば、
もっと別の映画で、
正々堂々とテーマにすれば良いのではないでしょうか?

こんなやり方はフェアではないように思います。

ストーリーの改悪はそればかりではなく、
原作ではただのヤクザの便利屋であった松重豊さんの役を、
ダークな秘密組織みたいにして、
芦名星さんが声を失った殺し屋を演じるという、
訳の分からないおまけまで付いています。
原作では生き残る犯人を、
超法規的に殺すという映画版の趣向は、
原作のテーマを根底から踏みにじるような性質のものです。
法による正義の限界を描いた作品である筈なのに、
暗黒組織が代わりに殺してお終いでは、
あまりに原作無視のあり方ではないでしょうか。

原作では検事の完全犯罪に、
刑事コロンボ的な面白みがあったのですが、
映画は原作ではただの事務官であった吉高由里子さんの役を、
わざわざ2年ごして潜入したジャーナリストにして、
最初からほぼ事件の全貌を、
知っているような趣向にしているので、
ミステリーとしての面白みが殆どなくなってしまっています。

原作の後半は公判整理を巡る攻防が読みどころなのですが、
他の場面に尺を使っているために、
検事の話なのに公判に関わるシーンは全くない、
という何か珍妙な結果になっています。

山崎努さんの役は大物人権派弁護士で、
彼が後半登場することで公判の流れが変わるのですが、
映画ではそのくだりが完全に抹消されているので、
祝賀会でのみ登場するのが、
極めて不可解な結果となっています。
容疑者が無罪になるきっかけは、
共犯者が自首したため、
という身も蓋もない段取りになっています。
検事の犯罪が暴かれるという段取りもなく、
要するに原作のミステリーの要素はほぼ排除され、
代わりに監督の趣味の世界が展開されているのです。

それ以外にも大駱駝艦の舞踏手まで使って、
繰り出される意味不明の珍妙なダンスは、
一体何の冗談でしょうか?
舞踏好きとしては噴飯ものです。
犯人の変なタップダンスは何ですか?
どうして皆で作品の格を下げたいのか、
訳が分かりません。

おそらくは色々な思惑が錯綜して、
こうした珍妙な作品になったのだと思いますが、
編集次第で、
もっと正攻法の社会派ミステリードラマの力作に、
なった映像素材であると思うので、
こんな結果になったのは本当に残念でなりません。
この監督の作品は、
多分一生観ることはないと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者の原発性アルドステロン症の特徴 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高齢者の原発性アルドステロン症の特徴.jpg
2018年のthe Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌に掲載された、
診断の時点で65歳を超えていた高齢の原発性アルドステロン症の、
特徴についての日本の研究者による論文です。

これはJPAS(Japan Primary Aldosteronism Study)と呼ばれる、
日本の原発性アルドステロン症についての、
多施設共同研究の結果の1つとして発表されているものです。

原発性アルドステロン症というのは、
副腎の腺腫もしくは過形成によって、
水や塩分を身体に保持する役割のある、
アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されて、
それにより血圧が上昇し、
血液のカリウム濃度が低下するという病気です。

以前は稀な病気と考えられていましたが、
最近では高血圧の患者さんに、
簡単なスクリーニングの血液検査が、
各種のガイドラインで推奨されるようになり、
実際には多くの患者さんがいることが分かって来ました。

原発性アルドステロン症の治療は、
片側の腺腫であれば手術による治療が、
両側の過形成であればアルドステロン拮抗薬などの薬物療法が、
通常は行われています。

原発性アルドステロン症についての問題の1つは、
高齢者とそうでない場合とで、
病気の性質や治療後の予後に差がないのかどうか、
ということです。

高齢者では腎機能が低下している場合が多く、
それが治療の予後に影響を与える可能性がありますが、
そうした点についてはこれまで、
あまりまとまった検証が行われていませんでした。

そこで今回の研究では、
この病気の患者を65歳以上の高齢者と、
65歳未満とに分け、臨床的な違いを比較検証しています。

対象となっているのは、
日本全国の28の専門施設で、
原発性アルドステロン症と診断された1902名で、
それを診断時の年齢で65歳以上の411名と、
65歳未満の1691名に分け、
その臨床的な特徴と、
治療の予後を比較しています。

原発性アルドステロン症の原因が、
片側の腺腫であるか両側の過形成であるかの比率は、
高齢群でも若年群でも違いはありませんでした。
片側の副腎摘出術後、
アルドステロン値などが正常化する生化学的治癒率は、
65歳未満が74%に対して65歳以上が68%で、
有意な差はありませんでした。
一方で手術後血圧が正常化して降圧剤などの治療が不要となる、
臨床的な治癒率は、
65歳未満が36%に対して65歳以上では18%で、
これは有意な差をもって高齢者で低くなっていました。

また、手術後に新たに腎機能低下(ステージ3b以上)を発症する頻度は、
65歳未満が12%に対して65歳以上が27%、
手術後に新たに高カリウム血症を発症する頻度は、
65歳未満が5%に対して65歳以上が15%で、
いずれも高齢者で多くなっていました。

つまり、
高齢者で診断される原発性アルドステロン症は、
片側の腺腫と診断された手術がなされても、
血圧が正常化して投薬が不要となる確率は低く、
その一方で術後の腎機能低下や高カリウム血症などの、
有害事象が発症するリスクは高い、
ということになります。

従って今回の結果からは、
高齢者の原発性アルドステロン症の手術治療は、
若年者より慎重にその適応を判断する必要があると、
そう考えるのが適切であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ビタミンC濃度と健康(2018年中国の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンCと健康.jpg
2018年のJ Epideminol Community Health誌に掲載された、
血液のビタミンC濃度と健康との関係についての論文です。

ビタミンCは強い抗酸化作用を持ち、
風邪予防にも対象者をアスリートなどに限ったデータですが、
一定の予防効果が確認されています。
ビタミンCを多く摂ると胃癌などに罹りにくいとする報告はあり、
ノーベル賞受賞者のポーリング博士が推奨して以来、
大量のビタミンCをを点滴すると言う治療が、
その後の検証では否定的な見解も多いのですが、
今でも一部で施行されています。

それでも、一時の過熱していた時期と比較すると、
ビタミンCの健康への効果は、
やや懐疑的に言われることが最近では多いようです。

ビタミンC濃度は一般臨床においても、
測定することは可能ですが、
検体をすぐに分離して測定しないと、
正確な値は得られないので、
クリニックレベルで測定することは、
あまり実際的ではないのが実状です。

ただ、ビタミンCの欠乏が壊血病など、
病気の原因となることは事実で、
軽度の欠乏や通常の基準値の下限に近いという軽度の低下が、
健康上の問題に結び付くのではないか、
という考え方もまだ実証はされないままに、
一部の専門家の間に根強く残っています。

今回の研究は中国における疫学データで、
53から84歳の948名を登録してビタミンCの血液濃度を測定し、
中間値で13.4年という長期の経過観察期間における、
その生命予後との関連を検証しています。

その結果、
一般に言われる基準値内であっても、
血液のビタミンC濃度が低いほど、
総死亡のリスクも、
心疾患や癌による死亡リスクも、
それぞれ有意に増加していました。

今回の検証においては、
ビタミンC濃度が基準値内であっても低めであることで、
対象者の生命予後には有意な悪化が生じていて、
これだけでビタミンC濃度の軽度な低下が、
健康上の問題であるとは言い切れないのですが、
今後他の地域においても、
同様の検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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バレット食道の予後に対する高用量プロトンポンプ阻害剤の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
バレット食道の予防.jpg
2018年のLancet誌に掲載された、
バレット食道という食道の病変に対して、
胃酸の抑制薬とアスピリンの予後改善効果を検証した論文です。

バレット食道の説明のために、
まず胃カメラの画像を見て頂きます。
こちらです。
バレット食道典型2.jpg
食道の出口の部分ですが、
胃の粘膜とほぼ同じ色合いの粘膜が、
部分的に食道粘膜に張り出しています。
青い矢印の先は、
胃の縦じわの終わりを示していて、
それより高い位置にも胃の粘膜様の変化があるのが、
異常な所見と言えるのです。

これが「バレット食道」です。
後天的に胃の入り口に近い食道の粘膜が、
あたかも胃の粘膜のように変性したものです。

バレット食道の定義には日本と海外では違いがあり、
海外でも色々な基準が存在して、
必ずしも統一されたものにはなっていません。

食道の全周性の病変があり、
それが3センチ以上の長さになっているものが、
日本における狭義のバレット食道の定義ですが、
そうした病変は実際には日本人には少なく、
多くのバレット食道は、
このように部分的に上へと伸びているものです。
これを日本ではSSBE(short segment Barett`s esophagus)と呼んでいます。
「短いバレット」のような意味合いですね。
それに対して、
狭義のバレット食道は、
LSBE(long segment Barett`s esophagus)と呼んでいます。

ただ、たとえばアメリカでは、
その長さには関わらず、
組織の検査において、
「特殊円柱上皮」という、
特有の変化のある粘膜の組織が証明されたものを、
バレット食道と呼んでいます。
つまり、バレット食道の診断のためには、
組織の検査をすることが必須なのです。

日本ではバレット食道のみのために、
組織の検査を行なうことは少なく、
この点が日米の大きな違いです。

では次を。
バレット上皮典型(食道粘膜残存).jpg
これもバレット食道(SSBE)です。
よく見るとバレット上皮の中に、
白っぽい食道の粘膜が島状に残っているのが分かります。

バレット食道の問題は、
そこから食道癌が生じるリスクが高い、
ということです。
ただ、日本とアメリカでは基準が違うので、
その癌の発症リスクについても、
議論のあるところです。
日本において特にSSBEの事例で、
どの程度の発癌のリスクがあるのかについては、
あまり明確なデータはありません。

次にこちらをご覧下さい。
バレット腺癌.jpg
これはバレット食道から生じた、
食道の腺癌の画像です。
こうした事例に時々遭遇するので、
その頻度は明確ではありませんが、
矢張り定期的な検査は必要だと実感します。
この方はかなり進行した状態で発見されたのですが、
そうならないために、
バレット食道を持つ方は、
定期的な胃カメラの検査が、
必須と考えられるのです。

定期的に胃カメラ検査をすることで、
バレット食道に起因する食道腺癌は早期発見が可能ですが、
何らかの方法によって食道癌の予防が可能であれば、
それに越したことはありません。

バレット食道は胃酸の食道への逆流に関連があり、
そのことからは、
プロトンポンプ阻害剤などの胃酸分泌抑制剤が、
バレット食道の予後改善に結び付く可能性が示唆されます。

またアスピリンは腺癌の予防に一定の効果が確認されていて、
この食道腺癌に対しても、
一定の予防効果が期待されます。

ただ、これまでに介入試験のような厳密な方法で、
プロトンポンプ阻害剤やアスピリンのバレット食道の予後への効果が、
検証されたことはありません。

そこで今回の研究では、
イギリスとカナダにおける複数の医療機関において、
18歳以上の2557例のバレット食道の患者さんを対象とし、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで4つの群に分けます。
内訳はプロトンポンプ阻害剤であるエソメプラゾール(商品名ネキシウム)の、
1日80ミリグラムという高用量群と、
ネキシウム1日20ミリグラムという低用量群、
ネキシウムの低用量とアスピリン300ミリグラム(もしくは325ミリグラム)の併用群、
ネキシウムの高用量とアスピリンの併用群の、
4つの群で、
何が選ばれたのか分からないように偽薬も使用されます。
観察期間の中央値は8.9年です。

その結果、
総死亡と食道腺癌の発症、そして高度異形成の発症までの期間は、
低用量のネキシウム継続群と比較すると、
高用量のネキシウム継続群で1.27倍(95%CI: 1.01から1.58)、
有意に延長していました。
これは要するに高用量の方が、
より予防効果に勝っていたことを意味しています。

アスピリンの上乗せ効果については、
低用量のネキシウムとの併用では有意に認められましたが、
高用量のネキシウムとの併用では、
より有用であった傾向はあるものの、
有意な差は得られませんでした。

かなり高用量のネキシウムが、
継続的に使用をされていますが、
低用量と比較して有害事象や副作用に、
特に有意に多いものはありませんでした。

今回のデータから計算すると、
1件の死亡もしくは食道腺癌や高度異形成を予防するのに、
34件のネキシウムの使用と、
43件のアスピリンの使用が必要、
と算出されました。

このようにバレット食道と診断された患者さんに対して、
高用量のプロトンポンプ阻害剤とアスピリンを使用することには、
長期的に一定の改善予後効果が期待されます。

臨床応用にはまだ慎重な検証が必要と思われますが、
今後の知見の蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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