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2018年07月| 2018年08月 |- ブログトップ
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イカはコレステロールが多いのに脂質代謝を改善する、は本当か? [科学検証]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
イカとコレステロール.jpg
2014年のLipid in Health and Disease誌の論文ですが、
ネズミの実験でイカの摂取による脂質代謝への影響を調べたものです。
長崎県立大学の田中一成先生のグループによる研究です。

イカは健康に良い食品でしょうか?

少し前の常識としては、
イカには良質の蛋白質が多く含まれているけれど、
その一方でコレステロールの含有量も多いので、
高コレステロール血症のある人は、
その摂り過ぎには気を付けた方が良い、
というものでした。

しかし、これには異論もあって、
僕が大学を出て研修を始めた1990年代には既に、
「イカのコレステロールは健康に良い」
というような説が栄養士さんの口からも聞かれていました。
「イカのコレステロールは良いコレステロール」
というような意見もありました。
ただ、その根拠が明確に示されるようなことは、
殆どなかったように記憶しています。

そもそもコレステロールに良いも悪いもない筈ですから、
良いコレステロールという言い方はナンセンスだと思いますが、
イカという食品が、
脂質代謝に与える影響が、
そう単純ではないことは事実であるようです。

今回調べてみると、
イカの摂取が脂質代謝に与える影響については、
複数の研究が発表されていますが、
その多くは日本の研究者によるもので、
更に殆どはネズミなどの動物実験のデータです。

海外の栄養関連の教科書などを読む限り、
イカの栄養学的な利点は、
蛋白質が総カロリーの7割を超えるという、
高蛋白で低糖質の食品であるということと、
亜鉛やセレニウムなどの、
摂ることの難しい微量元素を、
豊富に含んでいる、という点にあって、
その一方で欠点は脂質の含量は少ない割に、
100グラム中に235ミリグラム(出典により違いあり)という、
それだけで1日の必要量に近い、
多くのコレステロールを含んでいる、
ということです。
それが悪いコレステロールではない、
というような記載はありません。

そうなると問題は、
イカに含まれているコレステロールの、
吸収の問題になる、ということになります。

上記論文は今回検索した中では、
一番新しい部類のもので、
ネズミにイカのすり身を摂取させて、
脂質代謝の変化をみたところ、
血液中のコレステロールも中性脂肪も、
摂取しない場合よりむしろ低下していて、
コレステロールの吸収が抑制されると共に、
肝臓での脂質の産生も低下していました。

そのメカニズムの詳細は不明ですが、
他の別個の日本の研究グループによる文献でも、
ほぼ同じ結果が得られていることから、
少なくともネズミにおいてはそうした脂質代謝の変化が、
存在していることは事実のようです。
ただ、イカの筋肉のみではなく、
内臓の抽出物を一緒に摂取すると、
逆に摂取後にコレステロールや中性脂肪は増加していた、
という報告もあることより、
イカの沖漬けや塩辛のような食品では、
脂質代謝の改善効果は見られなくなるようです。

イカに関しては、
ネットで日本語で検索すると、
イカの加工の組合のサイトがトップに表示され、
それは勿論イカを徹底して賛美したもので、
コレステロールが多いことさえ書かれていないのですが、
多くのイカの栄養についての記述は、
結果としてそのサイトの孫引きになっているので、
ほぼ全てイカを賛美する内容となっています。
この辺りはネット情報に偏った現在の、
大きな問題であるように思います。

要するにイカの身自体は、
良質の高蛋白食品で、
フレッシュな状態で内臓などを除去して食することは、
脂質代謝においてもそれほど悪い影響があるとは考えにくい、
というくらいが現状の認識として、
大きな間違いはないようです。
ただ、これはあくまで動物実験が主体の、
ほぼ日本の研究のみの結果で、
イカが高コレステロール食品であるという事実は、
特に変わった訳ではない、
という点には注意が必要だと思います。
イカの筋肉を食べることで、
トータルに脂質代謝を改善するという可能性はありますが、
そのメカニズムは明確ではなく、
データも日本発の動物実験にほぼ限定されているので、
現時点でそれが事実であるとは、
即断しない方が良いと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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麻疹のワクチンはいつ接種するのが良いのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018-08-15.jpg
2018年のBMC Public Health誌に掲載された、
アフリカにおけるお子さんへの麻疹ワクチンの接種時期と、
その生命予後に対する影響を比較検証した論文です。

今日本では麻疹のワクチンは、
風疹との混合であるMRワクチンとして、
生後1歳から早期に摂取する、
と決められています。

現行WHOでは、
麻疹の発症がないような先進国では、
生後1歳の時点での接種を、
麻疹の流行している発展途上国では、
生後9か月での接種を推奨しています。

この接種時期はお母さんから以降する免疫が、
ほぼ消失してから接種した方が、
その有効性が高く、
効果の持続も長い、
という考え方に則っています。

ただ、勿論生後1歳未満で麻疹が流行すれば、
当然感染するリスクは高いので、
流行地域においてはより低い月齢で、
接種を行う必要があるのです。

日本においても、
必要性が高ければ、
生後半年以降での接種は認められていて、
先日の沖縄での麻疹流行の際には、
そうしたワクチン前倒しの措置が取られていました。

そもそもお母さんの免疫がなくなってから、
接種をした方が有効性が高い、
という考え方は正しいのでしょうか?

その点を疑問視するような見解も、
最近は見られるようになっています。

ワクチンの効果には、
その特定のウイルスや細菌による感染症を、
予防するという以外に、
免疫を全体的に賦活して、
他の感染症に対する抵抗性を強化する、
という側面もあります。
これをワクチンの非特異的効果(non-specific effects)と呼んでいて、
WHOの最近の見解では、
BCGワクチンと3種混合(DTP)ワクチン、
そして麻疹のワクチンには、
そのような効果があるとしています。

これが事実であるとすると、
まだお母さんの免疫が残っているうちに、
早期に麻疹ワクチンを接種することにより、
免疫がトータルに賦活されて、
お子さんのトータルな予後が改善する、
という可能性が見えて来ます。

上記文献と同じアフリカでの臨床研究によると、
通常の生後9ヶ月での麻疹ワクチン接種と比較して、
生後4.5ヶ月というより早期の接種をそれ以前に施行すると、
3歳までの総死亡のリスクが、
30%有意に低下した、
という結果が報告されています。
そのサブ解析では、
4.5ヶ月での最初の接種の時点で、
母体からの抗体が残存している方が、
していない場合より死亡リスクはより強く抑制されていました。
麻疹に対する免疫自体は、
母体からの抗体がない方が、
より有効である筈ですから、
この結果は麻疹ワクチンを早期に打つことにより、
ワクチンの非特異的な効果が高まる、
という可能性を示唆しています。

今回の研究は、
アフリカのギニアービサウ共和国(ギニア共和国の隣の小国)
での長期の臨床研究のデータを解析したもので、
麻疹ワクチンを生後9ヶ月未満という早期に接種した場合と、
生後9から11ヶ月に接種した場合、
そして1歳以降で接種した場合の3群に分けて、
お子さんの生命予後を比較しています。

トータルで14813名を解析した結果として、
ワクチン未接種と比較した場合の、
麻疹ワクチン接種群の接種時期によらないお子さんの死亡リスクは、
24%(95%CI: 0.63から0.91)有意に低下していました。

これを接種の時期により比較すると、
生後9ヶ月未満での早期の接種では、
死亡リスクの低下は32%(95%CI: 0.53から0.87)と最も大きく、
9から11ヶ月の接種では23%(95%CI: 0.62から0.96)の低下となり、
1歳以降の接種では接種よる死亡リスクは有意な低下を示しませんでした。

このデータは世界でも衛生状態の悪いと思われる、
アフリカの小国でのもので、
日本のような社会においては、
ワクチンの非特異的効果による死亡リスクの低下は、
それほど大きな影響を与えることはないと思われますが、
麻疹ワクチンの接種時期により、
その非特異的な効果に少なからぬ差がある、
という今回の報告は非常に興味深く、
日本におけるMRワクチンの接種時期についても、
もう少し早めるような議論が、
なされるべきであるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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うつ病を併発した急性冠症候群に予後に対する抗うつ剤の効果(2018年韓国の検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
エスシタロゾラムの心血管疾患に対する効果.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
抗うつ剤の使用と心臓病の予後との関連を検証した論文です。

うつ病はそれ自体健康上の大きな問題であるとともに、
他の身体の病気の経過にも、
大きな影響を与えることは、
これまでの多くの疫学データから、
ほぼ実証されている事項です。

たとえば、心筋梗塞などの急性冠症候群という状態においては、
その発症後に高率にうつ症状を発症し、
それが心疾患自体の予後にも少なからず影響を与えることが、
これも多くの疫学データからほぼ実証されている事項です。

それでは、
急性冠症候群を発症した患者さんに、
うつ状態に対する治療を行うと、
心疾患の予後にも良い影響を与えるのではないでしょうか?

本来こうした場合のうつ病に対する治療というのは、
薬物治療だけではない筈ですが、
実際に急性冠症候群を発症した直後において、
精神療法やカウンセリングというのも、
現実的には困難で、
医療現場としてはそこまでの余裕はないことが殆どです。

従って、
少なくとも臨床試験としては、
抗うつ剤を使用してその効果を偽薬と比較する、
というようなデザインになることが多いのです。

これまでにも幾つか、
こうしたデザインの臨床試験が行われていますが、
抗うつ剤の効果が明確に確認された、
というような結果は得られていません。

今回の研究は韓国で行われたもので、
急性冠症候群に罹患し、うつ状態を合併している患者さん、
トータル300名を登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は抗うつ剤のエスシタロプラム(商品名レクサプロ)を、
1日5から20ミリグラム(日本での用量と同じ)で使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
24週間の治療効果を比較しています。

その結果、
治療期間中の総死亡と、
心筋梗塞の発症、およびカテーテル治療の施行を併せたリスクは、
抗うつ剤使用群で31%(95%CI: 0.49から0.96)
有意に低下していました。

個別のリスクについては、
総死亡や心疾患による死亡、
カテーテル治療実施のリスクについては、
偽薬との間で有意な差はなく、
心筋梗塞の発症リスクのみが、
46%(95%CI: 0.27から0.96)と有意に低下していました。

今回の結果もやや微妙なもので、
心筋梗塞の急性期の再発リスクのみが、
有意差を牽引していることが、
今回のみのやや特殊な結果であるようにも思われます。

また、そもそも病気の発症とその治療のストレスが、
うつ発症の要因であると考えると、
その原因に切り込まずに薬物治療を行う、
という考え方自体にも、
やや問題があるようにも思います。

いずれにしても、
身体的な病気であっても、
その治療の経過における精神状態が、
その予後に大きく影響与えるという事実が、
急性期の医療においても、
大きな問題であることは間違いがなく、
今後また切り口を変えた方法で、
この問題への適切な対応が、
幅広く議論されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コハク酸の内蔵脂肪燃焼効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日からクリニックは通常の診療に戻ります。
本日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コハク酸の脂肪細胞燃焼効果.jpg
2018年のNature誌のレターですが、
食品にも含まれている物質に、
内臓脂肪の燃焼効果があるのではないか、
というネズミの動物実験の論文です。

これまでにない代謝のメカニズムを示唆するもので、
大変興味深い報告であることは間違いがありません。

内臓脂肪の蓄積が、
動脈硬化を進行させ生活習慣病の原因となることは、
多くの信頼のおける研究によって、
実証されている事実です。

内蔵脂肪を減らすには、
食事制限や運動を、
地道に継続するしかない、
というのが現時点での一般的な考え方です。

しかし、それを実践し持続することは、
そうたやすいことではありません。

脂肪細胞に蓄えられた脂肪を燃焼させるのには、
膨大なエネルギーが必要となる、
というのは以前良く聞かれていた説明です。

ただ、これは脂肪細胞のうち、
白色脂肪細胞と呼ばれる細胞に、
ため込まれた脂肪についての話です。

脂肪細胞には白色脂肪細胞以外にもう1つ、
褐色脂肪細胞という種類があります。
この褐色脂肪細胞にはエネルギーを熱に変えるという性質があり、
その仕組みが刺激されると、
ため込まれた脂肪は比較的容易に燃焼して、
熱に変わるのです。

たとえば、非常に寒く気温の低い環境に入ると、
そのストレスによって交感神経が刺激され、
褐色脂肪細胞が脂肪を燃焼させて熱を出し、
体温を維持しようという仕組みが働くことが分かっています。

ただ、問題はこのような脂肪燃焼細胞は、
身体全体の脂肪細胞のうち、
ごくわずかした存在していない、
という点にあります。

ところが、比較的最近の知見によると、
運動により筋肉で産生されるホルモンの刺激などにより、
白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞に似た、
熱産生型の細胞に、
変化するという仕組みが存在しているということも、
また明らかになっています。
この褐色脂肪細胞に似た細胞を、
ベージュ細胞のように表現することがあります。

ここにおいて、
効率良く内臓脂肪を燃焼させるには、
ベージュ細胞や褐色脂肪細胞を増やすことと、
そうした脂肪燃焼細胞に、
脂肪燃焼のシグナルを与えることの、
両方が内臓脂肪の減少のためには重要である、
ということが分かります。

このうちベージュ細胞の増加については、
運動により筋肉から分泌されるアイリシンという一種のホルモンが、
ベージュ細胞を増やすという知見や、
交感神経のβ3という受容体が刺激されると、
ベージュ細胞が増えるという知見などがあります。

それでは、
褐色脂肪細胞やベージュ細胞において、
熱産生を促すような刺激は何かないのでしょうか?

シンプルに寒冷への曝露は、
脂肪を燃やし熱産生を促す強い刺激なります。

しかし、それだからと言って、
常に身体を冷やしていれば別の病気になってしまいます。

それ以外に、
安全で効率的に脂肪を燃焼させるような刺激は、
何かないのでしょうか?

今回の研究においては、
身体の中において存在する物質に、
褐色脂肪細胞やベージュ細胞における熱産生を、
刺激するようなものがあるのではないか、
という過程のもとに、
寒冷刺激により褐色脂肪細胞において、
増加する物質を総ざらいで調べ、
その中でコハク酸という食品にも含まれる物質が、
その条件を満たすことを確認。
今度はネズミの実験で血液中のコハク酸濃度を高めると、
それだけで褐色細胞での熱産生が高まり、
脂肪が燃焼することが確認されています。

褐色脂肪細胞には、
UCP1(ミトコンドリア脱共役蛋白質1)という、
一種のエネルギー変換器のような蛋白質があり、
コハク酸による脂肪燃焼効果は、
このUCP1を介したものであることが、
UCP1の遺伝子のないネズミを使った実験で、
これも確認されています。

最後に高脂肪食を与えているネズミにおいて、
飲み薬のようにコハク酸を使用すると、
使用したネズミは太りにくくなることも確認されました。

つまり、
コハク酸を飲み、
血液のコハク酸濃度が上昇するだけで、
運動と同じような脂肪燃焼効果があり、
内臓脂肪が高率的に減少することが、
ネズミにおいては確認されたのです。

この実験はまだネズミのもので、
人間でも同じ効果が得られるかどうかは、
まだ証明されていない、という点には注意が必要がですが、
コハク酸は貝のうまみ成分で、
貝類の多く含まれると共に、
お酒の味の成分の1つでもあり、
食品添加物としても使用されていて、
安全性には大きな問題はないと考えられています。

勿論大量に使用された場合の安全性については、
まだ未知数と考えた方が良いと思いますが、
比較的使用のハードルの低い、
サプリメントや添加物としても販売されている物質に、
こうした画期的な作用が認められた意義は大きく、
今後の知見の積み重ねに期待したいと思います。

非常に有用な知見だと思いますが、
同じNature誌のレターで、
以前報告された筋肉由来のホルモンであるアイリシンの効果は、
今ではやや疑問視されているという事例もありますから、
この知見についても、
まだ飛びつくのは早すぎる、
という気はしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新薬師寺夜間拝観 [仏像]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はもう1本奈良の話です。

新薬師寺は仏像好きには欠かせない名寺で、
本尊の薬師如来は貞観彫刻の傑作で凄みのある仏様ですし、
周辺で睨みを利かす天平時代の十二神将も、
東大寺戒壇院の四天王像や元法華堂の日光月光菩薩と並ぶ、
天平塑像の代表作です。

ただ、数年前までお堂の照明が、
全て蛍光灯という無粋なもので、
火災のリスクもあって昔のように蝋燭も殆ど点けませんから、
とても扁平な印象でガッカリでした。
それが1、2年前に遅ればせにLED照明となり、
面目が一新されました。

今年から更に夏の燈花会に合わせて、
夜間拝観が始まりました。

こちらをご覧下さい。
2018年新薬師寺遠景.jpg
本堂前に190個の燈火が並べられ、
本堂正面の3枚の扉が開かれて、
外からご本尊を直接拝むことが可能となっています。

これまであまり新薬師寺ではなかった、
とても幽玄で素敵な光景です。

もう少し近づいてみます。
2018新薬師寺近景.jpg
これはお寺の方に、
外からの撮影であればOKと、
確認して撮ったものです。

こうして見ると、
仏像というのは当たり前のことですが、
外からこうして拝むのが最も素晴らしい、
ということが分かります。

今回の夜間拝観では、
外からだけではなく、
いつものように堂内での拝観も、
同時に出来るようになっていました。

これは今回の奈良行きの中で、
最も感銘の深いひとときでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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夕日観音再訪(2018年夏定点観測) [仏像]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日までクリニックは夏期の休診となります。
明日からはいつも通りの診療になります。

今日は僕が最も好きな石仏の話題です。
今年もお逢いして来ました。

こちらです。
2018夏夕日観音1.jpg
奈良の北方柳生街道の滝坂道にいらっしゃる、
鎌倉期と思われる古い磨崖仏、
一般に夕日観音と呼ばれている仏様のお姿です。

この仏様には30年ほど前に初めてお逢いして、
間近に拝ませて頂いて非常な感銘を受けました。

それ以前に小学校の頃から、
カラーブックスの「柳生の里」を愛読していて、
いつかは柳生街道を歩いてみたいと思っていました。

それが初めて適ったのが大学生の時に春休みで、
それから大分時が経ってから、
2011年の夏に震災後で妻も入院して、
というようなタイミングで再訪することになりました。
それからは定期的に奈良に行くたびに再訪していたのですが、
2012年にはうっかり山道を駆け下りていて転倒し、
左肘の骨折と手首の靱帯損傷で、
生まれて初めて手術をすることになってしまいました。

それから数年はさすがに行かなかったのですが、
この数年は再び訪問を続けています。

もう1枚画像をアップで見て頂きます。
2018年夕日観音2.jpg
素晴らしいフォルムですよね。
この威厳と風格が、
室町以降の大量生産の石仏にはない、
古仏の味わいなのです。

ただ古い写真と比べると、
ここ数十年の間に、
岩自体に出来た亀裂や雨水の浸食による変色が増え、
風化自体も確実に進んでいることが分かります。

それ以上に深刻なのは、
ここ数年の豪雨による周辺の岩盤の崩落で、
この仏様が刻まれた岩のすぐ下でも、
新しい崩落が確認出来ました。

石仏特に岩に刻まれた磨崖仏というのは、
いつかはなく消えてなくなることが必定の、
はかなくも美しい藝術ですから、
これはもう仕方がないこととも言えるのですが、
最近の異常気象とそれに伴う多くの破壊や、
生活や文化、藝術の消滅については、
改めて暗澹たる思いに囚われざるを得ないのです。

最後にもう1つこの夕日観音と同じ岩の別の面にある、
もう1つの素晴らしい仏様を見て頂きます。
こちらです。
2014年地蔵菩薩石仏.jpg
鎌倉時代後期から室町時代の、
非常に完成度の高い磨崖仏です。
ただ、これは2014年の写真です。

今はこちら。
2018年夏地蔵菩薩石仏.jpg
周辺の木々が生い茂ってしまい、
おそらく2011年以降で、
最も街道から見えづらい状態となっています。

このように日々変わり続ける柳生街道ですが、
可能な限りこれからも再訪を繰り返したいと思います。

今日はもう1本奈良の記事が続きます。
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プッチーニ「トスカ」(2018年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。
明日月曜日まで夏期の休診期間となっています。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
トスカ2018.jpg
これももう先月になりますが、
新国立劇場のレパートリーの「トスカ」を、
聴いて来ました。

プッチーニの「トスカ」は、
上演時間も3時間弱と手頃ですし、
物語もドラマチックで分かり易くて、
テンポも早いので、
比較的初心者向けのオペラです。

音楽自体も、
もうミュージカルや映画が始まった時期とかぶる時代なので、
クラシックとは言っても、
映画音楽に近い馴染み深さがあります。
勿論実際には、
映画音楽の方がプッチーニの影響を強く受けて、
成立しているのです。

演出も時代背景とドラマが密接に結びついているので、
オーソドックスなものが多く、
安心して観ることが出来ます。

特にこの新国立劇場のプロダクションは、
あまりに保守的という感じはありますし、
ゼッフィレリ演出に似過ぎている、
という気もするのですが、
非常に豪華かつ緻密に出来ていて、
新国立劇場の演出の中でも、
最も成功したプロダクションであることは、
間違いがありません。

今回の上演は、
タイトルロールのネーグルスタットが、
期待通りの素晴らしい歌唱と演技で、
一部に物足りないところはあったものの、
これまでに聴いた多くのトスカの中でも、
最上位にランクする素敵な舞台でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「人間機械」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日ですが祝日のためクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
人間機械.jpg
これは1時間15分ほどのドキュメンタリーで、
インドの服飾工場の労働の風景と、
労働者と経営者に対するインタビューを、
個性的な映像表現でまとめたものです。

これは宣伝がちょっとずるくて、
前衛的で単なるドキュメンタリーを越えた、
これまでにない映像表現、
というようなニュアンスが強調されているのですが、
実際には無知につけ込む労働搾取を告発する、という、
メッセージ性の強い映画で、
描かれるのはごく一般的な工場の作業風景で、
映像は美しいと言えなくもありませんが、
それほどびっくりするようなものとは言えません。

正直イメージと違い落胆しましたが、
それは地味な社会派ドキュメンタリーを、
無理矢理かつてない映像表現のように売り込んだ、
誇大な宣伝戦略と、
それに臆面もなく協力した、
一部の批評家と称する人達の、
節操のなさにあるだけで、
この映画には何の罪もないのです。

真面目な社会派ドキュメンタリーとして、
お薦めの一本です。

それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
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藤田貴大「BOAT」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日からクリニックは夏期の休診に入ります。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
Boat.jpg
もう公演は終わっていますが、
マームとジプシーの藤田貴大さんが、
東京芸術劇場と協力して上演する、
マームとジプシー特別公演というような新作の舞台に、
先日足を運びました。

高校生の制服姿の団体が、
1階の客席の3分の2以上を占めていて、
僕は自分が学生だった頃から、
個人ではなく学校で行くこうした行事が、
大嫌いだったので、
これなら貸し切りにしてくれれば良かったのに…
と思いましたが特に事前の連絡などはないので、
仕方がありません。
幕前には大騒ぎだったので危惧したのですが、
観劇態度は極めて真面目でした。

ただ、それでは高校生の鑑賞に、
この舞台が適していたのかと言うと、
その点についてははなはだ疑問です。

内容はかなり抽象性の高いもので、
架空の島が舞台となり、
そこに昔からいる住民と、
新しくボートで流れ着いた人達との間に、
差別やトラブルが生じたり、
悲劇が起こったりしているうちに、
今度は大量のボートが現れて、
島は崩壊に導かれます。

ラストは差別意識のない主人公達が、
島をボートで離れるところで、
物語は終わります。

これだけでもお分かりのように、
島をメタファーにして、
今の日本の状況を、
かなり悲観的に描いたお芝居で、
最後に希望を残した感じはあっても、
それで何かが生まれる訳ではありません。

マームとジプシーのいつもの感じですから、
素舞台に本物のボートが置かれているだけで、
衣装も稽古着的なものです。

そのボートが吊り上げられるのが、
舞台上の最も大きな動きです。

台詞は不自然な棒読が基本ですが、
特徴的なリフレインは今回はあまりなく、
普通のお芝居に近づいている印象でした。

総じて、
昔のアングラ演劇の興隆期に、
一般の方がイメージしていた、
難解で意味不明のお芝居に、
ほぼ近いような、
過去の亡霊が甦ったような作品で、
個人的にはとても受け付けませんでした。

もう少し明るい話が見たいですよね。

それでは今日はこのくらいで。

今日も皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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飲酒量と認知症リスクとの関連について(2018年イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

明日から8月13日(月)までは夏期の休診となります。
ご迷惑をお掛けしますがご了承下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルコール量と認知症.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
飲酒量と認知症のリスクに関する疫学データの論文です。

アルコールに厳しいイギリスからの報告で、
その厳しい基準の妥当性を示す結果になっています。

23年という長い観察期間を設けて、
中年期の飲酒の習慣が、
後の認知症の発症に結び付くかどうかを、
時間軸に沿って分析しているのが今回の特徴です。

それではまずいつもの前置きです。

健康のために適切な飲酒量はどのくらいか、
というのは未だ解決はされていない問題です。

大量のお酒を飲んでいれば、
肝臓も悪くなりますし、
心臓病や脳卒中、高血圧などにも、
悪影響を及ぼすことは間違いがありません。

ただ、アルコールを少量飲む習慣のある人の方が、
全く飲まない人よりも、
一部の病気のリスクは低くなり、
寿命にも良い影響がある、
というような知見も複数存在しています。

日本では厚労省のe-ヘルスケアネットに、
日本のデータを元にして、
がんと心血管疾患、総死亡において、
純アルコールで平均23グラム未満(日本酒1合未満)の飲酒習慣のある方が、
全く飲まない人よりリスクが低い、
という結果を紹介しています。

その一方で、
2016年のメタ解析の論文によると、
確かに飲酒量が1日アルコール23グラム未満であれば、
機会飲酒の人とその死亡リスクには左程の差はないのですが、
1日1.3グラムを超えるアルコールでは、
矢張り死亡リスクは増加する傾向を示していた、
というようなデータが紹介されています。

2017年に発表されたイギリスの大規模疫学データでは、
概ね多くの病気において、
全くお酒を飲まない人より、
1日20グラム程度のアルコールを摂取している人の方が、
その発症リスクは低く、
それが適正量を超えるとリスクの増加に繋がる、
というものになっていました。

ただ、喉頭癌、食道癌、乳癌など、
一部の癌はより少ないアルコール量でも、
そのリスクが増加した、
というデータもあります。

これまでのデータを整理すると、
アルコールの摂取量が少なくとも、
ノーリスクとは言えないのですが、
その量が1日換算で20から23グラム未満程度であれば、
大きな健康上の問題は生じない、
と考えて良いように思います。

ただ、アルコールの脳への影響、
と言う点についてはそれほどクリアになっていません。

少量のアルコールは認知症のリスクを低下させた、
という報告がある一方で、
脳画像による同様の検証では、
こうしたアルコールの良い影響は確認されていません。

以前記事にしました2017年のイギリスのデータでは、
登録時の平均年齢が43歳の男女550名を、
アルコール摂取量を聞き取りした上で、
30年間の経過観察を行い、
その前後で脳のMRIを撮って、
その所見の比較も行っています。

その結果…

アルツハイマー型認知症の所見として見られる海馬の萎縮(右側)は、
アルコールの摂取量が多いほどその頻度が高く、
1週間のアルコールの摂取量が8グラム未満と比較して、
112から168グラム未満では3.4倍(95%CI; 1.4から8.1)、
168から240グラム未満では3.6倍(95%CI; 1.4から9.6)、
240グラム以上では5.8倍(95%CI; 1.8から18.6)と、
それぞれ有意に増加していました。

認知機能の検査については、
記憶の再生や、
野菜の名前をなるべく沢山言う、
というような意味流暢性の検査では、
アルコール摂取量との関連は認められませんでしたが、
「A」で始まる言葉をなるべく沢山言う、
というような文字流暢性の検査では、
アルコール摂取量が多いほど、
結果が低下しているという相関が認められました。

ただこの研究ではまだ、
認知症の事例が沢山発症する、
という年齢には至っていないので、
実際に認知症の発症リスクが、
アルコールの摂取量で高まるかどうかは確認されていません。

今回のデータはより大規模なもので、
登録の時点で35から55歳の9087名の男女を、
23年間に渡り経過観察しています。
その結果397名の新規の認知症の発症が認められています。

飲酒量と認知症発症リスクとの関連をみたところ、
1週間に1から14単位(アルコール量で1単位は8グラム)の飲酒と比較して、
14単位(1週間に112グラム)を超える飲酒習慣を、
中年期に持っていた人は、
その後の認知症発症リスクが1.47倍(95%CI: 1.15から1.89)
有意に増加していました。
1週間に14単位以上飲酒をしている人は、
飲酒量が7単位増える毎に認知症リスクは17%増加する、
という推算されています。

この週に112グラムというのは、
1日に換算すると16グラムですから、
日本で適正飲酒量とされる1日23グラム以下より、
かなり少ないということが分かります。

元々2016年のイギリスのガイドラインにおける適正飲酒量は、
1週間に112グラム以下で、
意外なことに日本より厳しいのです。
これがアメリカの男性の適正飲酒量は、
1週間に196グラムとなっています。

イギリス人は毎日パブでビールを飲んでいるようなイメージがありますが、
意外に飲酒に関しては厳格であるようです。
(これは以前は週に168グラムと、
日本でほぼ同一となっていたものが、
少量飲酒のリスクを重視して改訂されたのです)

1週間の飲酒量を基準にするのは、
分かりにくいように思いますが、
イギリスの基準は1週間にワイングラスなら5杯分、
ビール中ジョッキが4杯分、
というように図示されていて、
1日1合くらいと言うより、
この方が分かりやすいというようにも感じます。

少量の飲酒に大きな健康上の害はない、
という常識に現状は大きな変化は起こっていないのですが、
より少量の飲酒でも、
認知症の発症には、
若干の関連がある可能性があります。

従って、
飲酒の楽しみを否定するつもりはありませんが、
健康のためには、
1週間単位でなるべくたしなむ程度にしておくのが、
まずは上策ではないかという気がします。

ただ、こうした飲酒に関してのイギリスのデータは、
初めから結果を決めているような感じがあり、
他の分野でもそうしたことはありますが、
あまり厳密な科学ではないと、
そうした印象を持つこともまた偽らざる気持ちなのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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