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抗血小板剤未使用時の出血リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
一般住民の出血リスク.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
一般集団における消化管などの出血のリスクについての論文です。

脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが高い場合には、
その発症予防のために、
アスピリンなどの抗血小板剤を使用していることで、
一定の予防効果が期待出来ます。

これまでにそうした心血管疾患を起こしたことのある患者さんでは、
その再発のリスクは非常に高いものなので、
その使用にメリットのあることはほぼ間違いがありません。

これを二次予防と言います。

その一方でこれまでにそうした病気を発症していない場合には、
二次予防と比較して抗血小板剤の予防効果は、
より低いものとなります。

従ってこの一次予防において抗血小板剤を使用するかどうかは、
その発症リスクの予測と、
使用による有害事象や副作用の頻度の予測とを、
比較検証して、
そのメリットが明確にそのデメリットを上回る場合に、
初めて検討されるべきだと考えられます。

抗血小板剤の有害事象の筆頭は、
消化管出血や脳内出血などの出血系合併症です。

アメリカの予防医学の専門部会は、
50代でその後10年間の心血管疾患リスクが10%以上の時に、
アスピリンの低用量での使用を推奨しています。

ただ、その元になったデータは寄せ集めのもので、
特に一般の人口における出血リスクについては、
あまり信頼性の高いものではありません。

そこで今回の研究ではニュージーランドにおいて、
プライマリケアで登録された一般住民の疫学データを活用して、
心血管疾患の既往がなく、
抗血小板剤などの出血リスクを高める薬剤を使用していない場合の、
出血リスクの推測を行っています。
トータルな対象者は30から79歳の359166名です。

その結果、
人口1000人当り年間2.19件(95%CI: 2.11から2.27)の、
非致死性消化管出血が発症し、
消化管出血による死亡率は、
3.4%(95%CI: 2.2から4.1)に達していました。

これをアメリカ予防医学部会の提言の元になったデータと、
比較した表がこちらになります。
出血リスクの比較の表.jpg
これはちょっと驚くような違いがあって、
たとえば40代の男性で非致死性消化管出血のリスクは、
人口1000人当り年間1.83件ですが、
アメリカ作業部会の出した推計は、
同じ年齢区分で0.5件となっていて、
3倍以上の違いがあります。

つまり、これまでの想定より今回の疫学データは、
遙かに出血のリスクが高いのです。

これを利用してアスピリンの一次予防の効果を検証すると、
未使用の場合の出血リスクの増加によって、
アスピリン使用時の出血リスクも上方修正され、
従来よりその予防効果は、
遙かにデメリットの大きなものとなってしまいます。

そのどちらが実態に近いのか、
という点はまだ何とも言えませんが、
現行のガイドラインを鵜呑みにすることが、
それほど科学的であるとは言い難く、
地域差の問題なども含めて、
この問題は今後大きな議論を呼ぶことになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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