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アルツハイマー病にアスピリンが有効なメカニズム(2018年動物実験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンのアルツハイマー病への有効性.jpg
2018年のthe Journal of Neuroscience誌に掲載された、
低用量のアスピリンがアルツハイマー病の治療に有効なのではないか、
という仮説を動物実験で検証した論文です。

まだ、これでアスピリンの有効性が確認された、
というレベルのものではありませんが、
これまでにないメカニズムを提唱したユニークな論文です。

アルツハイマー病では、
アミロイドβという異常な構造の蛋白質が、
脳の神経細胞に沈着し、
それが病因そのものであるかどうかについては、
まだ議論のあるところですが、
アミロイドβの沈着の程度が、
その病状の進行と一致していることは間違いがありません。

そして、研究はされていますが、
現状このアミロイドβの沈着を、
予防したり改善したりする、
確実は治療法はまだ開発されていません。

アルツハイマー病の進行予防に有効であったと、
報告されている薬剤は幾つかあり、
そのうちの1つが低用量のアスピリンです。

低用量のアスピリンには、
血小板のシクロオキシゲナーゼを阻害して、
血小板の働きを弱め、
炎症を抑えて、
心筋梗塞や脳卒中などの再発予防や、
腺癌の転移の予防などに有効であることが確認されています。

このアスピリンがアルツハイマー病のリスクを低下させた、
という複数の報告があり、
一般的にはその抗炎症作用や、
脳梗塞の予防効果などが、
そのリスクの低下に関連していると考えられています。

しかし、上記文献の著者らは、
シクロオキシゲナーゼの阻害とは別のメカニズムで、
低用量のアスピリンがアルツハイマー病に有効ではないか、
という仮説の元にネズミによる動物実験を行っています。

その結果、
アスピリンの刺激により、
脳においてPPARαという転写因子が活性化し、
それがTFEBという遺伝子の発現を介して、
細胞内の老廃物を除去する働きを持つ、
リソゾームの合成を高めることにより、
アミロイドβの除去に働くことが確認されました。

また、
実際に体重1キロ当り2ミリグラムのアスピリンを、
ネズミに継続的に摂取させたところ、
脳神経細胞のアミロイドβが有意に減少したことが確認されました。

これはあくまで動物実験の結果である上に、
臨床的に認知症の症状の改善が確認された訳ではありませんが、
今回低用量のアスピリンにより、
これまで想定されていたのとは別個のメカニズムにより、
認知症の進行予防効果が期待される効果の得られたことは、
大変興味深く、
今後の人間における検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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SU剤の使用法とそのリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SU剤の第二選択薬としての使用.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
SU剤という経口糖尿病治療薬の使用法と、
その安全性の違いについて検証した論文です。

2型糖尿病の治療薬として、
世界的に第一選択薬としての地位が確立しているのは、
ビグアナイト系の薬剤であるメトホルミンです。

そして、メトホルミンを充分量使用しても、
血糖コントロールが不充分であった場合には、
メトホルミンに上乗せするか、
スイッチする形で、
第二選択薬とされる薬剤を使用することが検討されます。

この第二選択薬の候補としては、
DPP4阻害剤やGLP1アナログのおインクレチン関連薬や、
SGLT2阻害剤、SU剤、インスリン注射製剤、
などが挙げられます。
このうちのどれを優先するのか、
それとも同列で扱うのか、
というような点については、
個々のガイドラインによっても違いがあり、
現状統一されたものはありません。

この中でSU剤というのは、
膵臓のインスリン分泌細胞にある受容体に結合して、
強制的にインスリンの分泌を促す薬で、
グリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール)、
グリクラジド(グリミクロン)、グリメピリド(アマリール)
などが使用されています。

SU剤はこれまで開発された糖尿病の飲み薬のうち、
最も強力な血糖降下作用を持ち、
そのため一時は2型糖尿病の第一選択薬として、
広く使用されていました。

ただ、その強力な血糖降下作用から、
低血糖のリスクが増加し、
そのため長期の生命予後や心血管疾患のリスクについては、
その使用によりむしろ増加する、
という報告が最近は主流となっています。

このため、
第二選択薬としてのSU剤の使用についても、
必要最小限度にとどめると言う考え方が広まり、
その治療薬としての価値は低下しているのが実際です。

しかし、現状これまでの経緯もあり、
まだ多くの糖尿病の患者さんが、
SU剤を使用していることもまた事実です。

SU剤のリスクについて現状不明な点は、
メトホルミンに上乗せの形で追加する場合と、
メトホルミンから完全に切り替える場合とで、
その安全性や予後に差はないのかどうか、
という点です。

そのため今回の検証では、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用して、
メトホルミンの単独使用と、SU剤とを比較し、
更にメトホルミンとSU剤との併用と、
メトホルミンからSU剤へのスイッチを比較しています。

その結果、
77138名のメトホルミン使用者と、
血糖コントロールなどの因子を補正した、
25699名のメトホルミンへのSU剤の上乗せと、
そのスイッチとを併せたものを比較したところ、
中央値で1.1年の経過観察期間中に、
心筋梗塞の発症リスクは対象者年間1000人当り、
SU剤使用者が7.8件であったのに対して、
メトホルミン単独治療では6.2件で、
SU剤使用はメトホルミン単独と比較して、
心筋梗塞の発症リスクを1.26倍
(95%Ci: 1.01から1.56)有意に増加させていました。

同様に総死亡のリスクは、
SU剤使用者が年間1000人当り27.3件に対して、
メトホルミン単独治療では21.5件で、
SU剤使用はメトホルミン単独と比較して、
総死亡のリスクを1.28倍
(95%CI: 1.15から1.44)有意に増加させていました。

重症低血糖のリスクは、
SU剤使用者が年間1000人当り5.5件に対して、
メトホルミン単独治療では0.7件で、
SU剤使用はメトホルミン単独と比較して、
重症低血糖のリスクを7.60倍
(95%CI: 4.64から12.44)有意に増加させていました。

今度はSU剤のメトホルミンへの上乗せと、
メトホルミンからSU剤からのスイッチとを比較すると、
心筋梗塞のリスクも総死亡のリスクも、
いずれもメトホルミンへの上乗せと比較して、
そのリスクはSU剤へのスイッチで有意に高くなっていて、
メトホルミンへの上乗せでの心筋梗塞や総死亡のリスクは、
メトホルミン単独のケースと明確な差はありませんでした。
ただ、重症低血糖のリスクは、
SU剤の上乗せでもスイッチでも、
有意な差はありせんでした。

このように、
SU剤はメトホルミンと比較して、
心筋梗塞の発症リスクや総死亡のリスクを、
比較的短期間でも有意に増加させますが、
その影響はメトホルミンとの併用においては、
かなり軽減されています。

SU剤は低血糖のリスクを増加させるため、
その使用は必要最小限度にとどめるべきですが、
使用の際にはメトホルミンと併用することが、
生命予後や心血管リスクの軽減のためには、
重要なことであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「未来のミライ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
未来のミライ.jpg
細田守監督の最新作が今ロードショー公開されています。

こうした映画は行ければ初日に行くのが好きなので、
初日に行ったのですが、
新宿の広い映画館が閑散としていて、
観客の平均年齢もアニメ映画としては異様に高く、
おじさんやおばさん、おじいさんが10人くらいいるだけです。

たとえば「君の名は」は初日で満員でしたから、
これは何かがおかしい、
という感じが見る前からしました。

始まってみると、
映像はとても美しかったのですが、
生活に余裕のある裕福な家庭の、
凝った造りの一軒家が舞台となるので、
その時点で、
「今時この作り手は何がしたいのかしら」
と、とても違和感がありました。

2から3歳くらいと想定される動きと外見の男の子が、
とても広いリビングで、
プラレールの大きなジオラマで、
贅沢に遊んでいます。
その声が第一声から、
大人の女性のようにしか聞こえない違和感のあるものなので、
これもまた異様で困ってしまいます。
その子の喋る内容や心理は、
とても2、3歳のものではなく、
小学校低学年くらいの感じなので、
そのアンバランスもとてもとても違和感があります。

勿論これは架空の子供で、
現実の子供ではないのだ、
と自分に言い聞かせはするのですが、
如何にアニメと言えども、
ここまで違和感と不自然さのある子供の表現は、
これまであまり見たことがありません。

これは作り手が知識も経験もないからなのか、
それとも意図的にこうしたことをしているのか、
結局映画の最後まで分かりませんでした。

内容はこの何の生活の苦労もなさそうな一家の、
子育ての風景がひたすら淡々と描かれるだけで、
確かに主人公の男の子が中庭に出ると、
色々な過去や未来が現れて、
自分の成長した妹や、
自分の母親の女の子時代、
自分のひい祖父の青年時代などと交流したり、
擬人化された犬と喋ったりするのですが、
それはあくまで単発的なイメージに留まって、
その世界で主人公が冒険するとか成長するとか、
あまりそうした展開にはなりません。

要するに分断されたイメージの羅列であって、
それを繋いで物語りを高揚に導く、
ドラマツルギーが皆無なので、
面白いという感情を持つことが出来ないのです。

回りくどい言い方をしました。

要するに詰まらなかったのです。

映像的にも後半未来の描写になると、
フルCGの表現がピクサーみたいで、
しかも数段稚拙なものなので恥ずかしい気分になります。
あの変な遺失物ロボットは何の冗談ですか?
頭が痛い気分になります。

勿論何らかの意図と情熱とがあって、
こうした作品が生まれたのだと思いますが、
今年見て最も後悔した映画であることは間違いがなく、
なるほど多くの気の利いた方は、
既に前評判を見ているので劇場には足を運ばず、
初日の客席は情弱な高齢者のみであったのだなと、
改めて理解することになったのです。

勿論これは僕の個人的な感想ですので、
この作品に感動された方は、
色々な感想や感じ方があるということで、
ご容赦頂ければ幸いです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「モリのいる場所」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
モリのいる場所.jpg
これはあまりご覧になった方が多くない映画かと思いますが、
独特の個性を持った画家の熊谷守一さんをモデルに、
彼の晩年94歳の1日の出来事を描いた作品です。

先週同窓会で松本に行ったのですが、
その時にイオンの映画館でやっていたので、
たまたま観ました。
そうでなければ上映されていたこと自体、
知らなかったと思います。

山崎努さんが主人公の94歳の画家を演じ、
その妻を樹木希林さんが演じています。
山崎さんは熊谷守一さんのファンで、
演じることを切望していた、と宣伝には書かれています。

沖田修一監督が脚本も執筆していて、
僕はこの監督の作品をそれほど観ていませんが、
ちょっとクセのある方ですよね。

自分の家の庭を、
ある種の冒険のように歩く主人公を、
自然の風景や虫たちの姿の精緻な撮影と共に、
淡々とじっくり描いていて、
その部分に関してはとても良い感じです。

また、色々な個性的な人物が、
次々と熊谷さんの家を訪れるのですが、
そのやり取りなどもユーモラスで悠然としていて、
これもなかなか良い感じです。
ああこれは、たとえば黒澤明監督の「まあだだよ」みたいな気分で、
鑑賞すれば良いのかしら、
と思っていると、
ドリフの話題が盛り上がると上からタライが落ちてきたり、
宇宙人が訪問したりするので、
ちょっと騙されたような、
馬鹿にされたような気分になります。

体制批判のような社会批判のような部分もあるのですが、
最初の昭和天皇の登場もあまり感心しませんし、
殊更に文化勲章を批判するのも浮いている感じがしますし、
やるにしてももっとやりようがあったのでは、
という気分が最後まで拭えません。
最後に急に現代になって、
マンションの上から過去を見下ろすのも唐突だなあ、
と思いますし、
何処まで真面目で何処からふざけているのか、
皆目分からない感じがして落ち着かないのです。

でも、多分この監督とは話は合わないだろうな、
という感じが強くするので、
もう好んで観ることは止めようと思いました。

熊谷守一の美術館の新聞で次女の方が書かれた文章を読むと、
台本が事実と違う点が多いので申し入れをしたところ、
監督に「これはフィクションなので自由にやらせて欲しい」
と説得され、仕方なく同意した、
という趣旨のことが書かれていて、
それを読むと余計にモヤモヤしてしまいました。

何か勝手にファンタジーにするなら、
架空の画家のお話にすれば良いのに、
と思ってしまいました。

そんな訳であまり納得がいかなかったのですが、
主人公2人の演技は素晴らしく、
映像も非常に凝っていて美しいので、
一見の価値はあると思います。
何かちょっと残念ですね。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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2型糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの癌予防効果(2018年日本の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの癌予防効果日本.jpg
2018年のDiabetes Care誌に掲載された、
日本人の2型糖尿病の患者さんにおける、
アスピリンの癌予防効果についての論文です。

アスピリンを代表とする消炎鎮痛剤に、
癌の発症予防と予後改善の効果がある、
とする報告は以前からありました。

そのメカニズムは、
必ずしも全て分かっている、
という訳ではありませんが、
消炎鎮痛剤の炎症を抑えるメカニズムの一部が、
癌の増殖に関わるシグナルを、
同時に抑えているためと、
概ね考えられています。

最も研究が進んでいるのはアスピリンで、
最近の幾つかの大規模臨床試験の結果として、
癌の組織型のうち、
腺癌というタイプの癌については、
間違いなくその予後を改善する効果があり、
より明確なのは、
特に大腸癌の転移の抑制効果です。

以前ご紹介した、
2012年のLancet 誌の論文では、
メタアナリシスの結果として、
大腸癌の転移のリスクを、
74%低下させた、
という画期的な効果が得られています。

2009年のJAMA誌の論文では、
大腸癌関連の死亡を29%抑制していますし、
今年のBritish Journal of Cancer誌の論文でも、
大腸癌の患者さんの全死亡リスクを、
23%有意に低下させる効果が得られています。

このように、
複数の一流の医学誌に、
別々の研究グループから、
同様の結果が集積されているのですから、
これはほぼ科学的事実なのです。

さて、
アスピリンの継続的な使用が、
大腸癌の予後を改善する効果のあることは分かりました。

ただ、
この効果にどの程度の地域差や人種差のようなものが、
あるのかという点はまだ不明確ですし、
アスピリンには消化管出血などの出血系合併症が少なからずあり、
予防効果とそうした有害事象とのバランスを、
使用に関してどう考えるかがまた問題となります。

今回の研究は日本において、
2型糖尿病の患者さんに対して、
アスピリンの心血管疾患に対する一次予防効果を検証した、
臨床研究のデータを活用して、
糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの癌予防効果を検証しています。

糖尿病はそれ自体癌のリスクであり、
日本においては糖尿病の患者さんでは、
そうでない人より1.7倍癌のリスクが増加する、
というデータもあるので、
糖尿病の患者さんはアスピリンによる癌予防の、
有効な対象であると考えられるからです。

2536名の2型糖尿病の患者さんを、
中央値で10.7年という長期の観察を行った結果として、
トータルにはアスピリンの使用による癌リスクの低下は、
有意には認められませんでした。

年齢を分けたサブ解析においては、
65歳以上では有意なアスピリンによる効果はなかった一方で、
65歳未満の解析では、
喫煙や血糖コントロールなどの因子を補正した結果として、
アスピリンにより癌のリスクは34%
(95%CI: 0.43から0.99)有意に抑制されていました。
ただ、これもギリギリという感じです。

最もこれまでにデータの多い大腸癌のみでみると、
矢張り65歳以上では有意な差はなく、
65歳未満のみの解析では、
そのリスクはアスピリンにより52%
(95%CI: 0.15から0.97)有意に低下していました。
実際の大腸癌の発症件数は、
アスピリン群で27例、
未使用群で31例ですから、
こうした検証では対象者がもう少し多くないと、
検証は難しいように思いました。

このように今回のデータは例数と癌の発症数から、
明確な差を出すことは難しかったようですが、
現時点で日本人の集団において、
アスピリンの癌予防に有効性があるとは、
言えないのが実際であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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バルプロ酸の男性生殖内分泌機能に対する影響(2018年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
バルプロ酸と男性生殖機能.jpg
2018年のEpilepsy & Behavior誌に掲載された、
抗けいれん剤として広く使用されている、
バルプロ酸(商品名デパケンなど)の、
男性生殖機能に与える影響についての論文です。

バルプロ酸は最もポピュラーなけいれん止めの薬で、
てんかん発作の予防に広く使用されていて、
それ以外に偏頭痛などの慢性頭痛の予防や、
双極性障害などの感情障害の治療にも、
しばしば使用されている薬です。

この薬は有効な反面、
副作用や有害事象が多いことも知られています。

代表的なものは肝機能障害や眠気、
錐体外路症状や胃腸症状などですが、
女性の月経異常や多囊胞性卵胞なども報告されています。

男性の性欲減退や生殖内分泌型の異常も、
報告はありますがその頻度などは明確には分かっていません。

ちなみに現行の日本の添付文書においては、
女性の月経異常は頻度不明で、
男性の生殖機能については記載はありません。

今回の研究はこれまでの臨床データをまとめて解析した、
システマティック・レビューとメタ解析によるものですが、
6つの臨床研究のトータル316名のデータをまとめて解析した結果として、
バルプロ酸の使用により、
血液中のテストステロン濃度と、卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度は、
いずれも有意に低下していました。

つまり、バルプロ酸の使用により、
男性ホルモンが低下し、
男性生殖機能が低下する可能性があることは、
間違いはなさそうですが、
この問題についてのデータは少なく、
その程度を含めて今後より大規模な検証が、
必要であるように思われます。

てんかんへの使用はともかくとして、
バルプロ酸は偏頭痛などに対しても、
若年層にしばしば連用されている薬なので、
この問題は軽視するべきではないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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マルチビタミン・サプリメントの心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マルチビタミンの効果.jpg
2018年のCircultion: Cardiovascular Quality and Outcome誌に掲載された、
マルチビタミンのサプリメントの、
心血管疾患予防効果についての論文です。

人間に必要なビタミンを複合して含む、
マルチビタミン・サプリメントは、
サプリメントの商品の中でも、
最も広く使用されているものです。

個々のビタミンの不足や欠乏が、
多くの病気の原因となることは、
それは間違いのない事実ですが、
それはあくまで高度の不足の場合であって、
余程の偏食やアレルギーなどがない場合には、
そうした事態はあまり起こりません。

それでは、それほどの欠乏がなくても、
やや多めにビタミンを摂ることに、
健康上のメリットがあるのかどうか、
という点については、
まだ明確な結論が出ていません。

これまでの多くの研究では、
マルチビタミンのサプリメントと、
心血管疾患などのリスクとの間には、
明確な関連は得られていません。
ただ、一部にある種の心血管疾患において、
そのリスクがサプリメント使用者で低かった、
というようなデータも発表はされています。

今回の研究は、
1970年から2016年の間に発表された、
主だった臨床データや疫学データをまとめて解析する手法で、
マルチビタミンのサプリメントの使用と、
心血管疾患のリスクとの関連を検証しています。

その結果、
一般住民がマルチビタミンのサプリメントを使用しても、
その後の心血管疾患のリスクには、
何ら有意な影響は確認されませんでした。

これはほぼ常識的な結果で、
そうは言っても全ての方にサプリメントは無効ではなく、
それほどの害もないと想定されるので、
お好きな方が使用することを非難するべきではないと思いますが、
少なくとも心血管疾患の予防という観点においては、
そうしたサプリメントの使用は無意味と断じても、
もう言い過ぎではない時期に来ているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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BMIと死亡リスクとの関連について(心血管疾患の状態による解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。

BMIと死亡リスク.jpg
2018年のthe American Journal of Cardiology誌に掲載された、
体格の指標であるBMIという数値と、
生命予後との関連を、
心血管疾患のリスクなどで解析した論文です。

BMIというのはキログラムで表示した体重の数値を、
メートルで表示した身長で2回割り算して得られる数字で、
この数値が25以上であると過体重と判断され、
世界的にも30を超える状態は肥満と診断されます。

一般住民や心血管疾患の既往のない集団での疫学データにおいては、
BMIが20から24.9の間が最も死亡リスクが低く、
25を超えると総死亡のリスクも、
心血管疾患の発症リスクもいずれも増加に転じます。

しかし、その一方で心血管疾患を持つ患者さんの集団では、
BMIが20から24.9より高い、過体重や軽度の肥満の方が、
死亡リスクが低いという、
かなり意外な結果が複数報告されています。

これをBMIパラドックスと呼ぶこともあります。

何故、心血管疾患の患者さんでは、
体重が重い方が予後が良いのでしょうか?

今回の研究はこれまでの疫学データをまとめて解析する手法で、
心血管疾患の既往のない集団と、
心血管疾患で治療中の安定した状態にある集団、
そして急性冠症候群の状態にある集団の、
3種類の集団毎に、
生命予後とBMIとの関連を比較しています。

その結果、
心血管疾患のない集団では、
最も死亡リスクが低いのは27.2であったのに対して、
安定した心血管疾患の集団では28.1、
急性冠症候群の集団では30.9となっていました。

このように個々の集団において、
心血管疾患との関係の違いにより、
死亡リスクを低下させるBMIの数値には明確な違いが認められました。

またこの集団を全て併せた上で、
喫煙や既往歴などから死亡リスクを推計し、
そのリスクの高さによって3つの分類を行っても、
高リスクである方が、
総死亡のリスクを最も低下させるBMIは上昇していました。

それを図示したものがこちらになります。
BMIと死亡リスクの図.jpg
このように、
どうやら心血管疾患に関わらず、
病気のリスクが高く元々死亡リスクが高い集団では、
そうでない集団より、
やや体重が多くBMIが高い方が、
生命予後が良いという傾向が、
トータルに認められると考えて間違いはないようです。

その原因は不明ですが、
上記文献の著者らは、
生命保持における内臓脂肪などの持つ役割が、
リスクの高い集団では大きいのではないか、
というような推測をしています。

いずれにしても、
その人にとっての健康的なBMIには違いがあり、
それを無視して20から24.9を至適とする、
というような考え方は、
適切ではないと考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「女と男の観覧車」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アレンの観覧車.jpg
大好きなウディ・アレンの新作が、
今ロードショー公開されています。

いつもそれほど長い上映にはならないので、
少し慌てて劇場に足を運びました。

アレンの作品が毎年公開されるのは嬉しい限りですが、
その出来には結構ばらつきがあります。
昨年の「カフェ・ソサエティ」はかつてのアレン節全開の、
ハリウッドでギャングが活躍する楽しい話でしたが、
今回はそうした華やかさとは無縁の、
往年のフランス映画を思わせるような重悲劇で、
全編救いの欠片もないような、
冷徹な生活のドラマが展開されます。

シモーヌ・シニョレか、
「欲望という名の電車」のブランチか、
というような退廃を漂わせた、
元売れない女優の主人公をケイト・ウィンスレットが演じ、
アル中の情の深いろくでなしと結婚していながら、
義理の娘と軽薄な脚本家志望の大学生を、
不倫で取り合うという絶望的な役柄を演じます。

物語自体は救いのないままに進みますが、
狂言回しの軽薄な大学生が、
正面を時々向いて観客に話しかけるという、
アレンらしい趣向と、
主人公の義理の娘の純情な美しさがガス抜きとなり、
映画を象徴する観覧車を中心とした、
コニーアイランドの浜辺の美しいパノラマが、
その見事な映像美で画面を飾ります。

昔だったら救いがなさ過ぎて、
とても受け付けないタイプの映画でしたが、
人生の悲劇性に滑稽さとある種の味わいとを感じるようになると、
意外にこうした話も悪くないなと、
そんなようにも思えます。
アレンにしてなし得た侘び寂びの境地と言うか、
キャストも決してやり過ぎない、
過不足のない熱演で見応えがありました。

誰にでもお勧め出来る映画ではありませんが、
アレン節がお好きな方には、
彼の新たな側面をまた感じさせる、
怜悧で美しく素敵な作品でした。

ご興味のある方は是非。
ケイト・ウィンスレットも良かったですよ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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ナイロン100℃「睾丸」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ナイロン「睾丸」.jpg
結成25周年の記念公演として、
ナイロン100℃の新作「睾丸」が今上演されています。

これはナイロン100℃が旗揚げした、
1993年を舞台にして、
45歳の2人の男と1人の女性が、
25年前の1968年に、
自分達がのめりこんでいた、
学生運動の時代を振り返る、
という趣向の作品で、
3人のリーダーであった七ツ森という先輩が、
1968年に自動車事故で植物人間となり、
25年ぶりにその訃報が届く、
というところから物語は始まります。

学生運動の時代は、
アングラ演劇の1つのピークでもありましたから、
それと現代とを対比させたようなお芝居は、
これまでにも結構ありました。
たとえば鴻上尚史さんの以前の戯曲では、
学生運動の闘士が長い昏睡状態から目覚めて…
というような今回のお芝居と良く似た設定の作品がありました。

ただ、今回の作品はそうした、
ある種のノスタルジーや鎮魂と言った雰囲気に彩られたものではなく、
徹底して怜悧な筆さばきで、
過去の自分とどう向き合い、
どう落とし前を付けるべきか、
というより普遍的なテーマを、
徹底して追及した「論理の芝居」で、
サム・シェパード辺りのアメリカ演劇のドライさにも似て、
ケラさんの新たな挑戦として、
これまでのナイロン100℃の芝居とは、
完全に一線を画した、異なる肌触りの作品です。

前半1時間半、後半1時間半にきっちり分かれて、
間に10分間の休憩をはさんだ構成ですが、
特に後半待たれていた予期せぬ主人公が、
舞台に登場する辺りからの緊張感の高まりと、
その後の緻密かつドラマチックな展開が圧巻で、
ラスト1時間は小劇場でも稀に見る、
濃密な緊張感と戦慄とに舞台は包まれました。

ケラさんのこれまでの舞台は、
シリアスなスタイルのものでも、
すかしのような間や遊びがあり、
コミカルな場面などもあって、
全編計算されつくした幾何学のような作品は、
あまりなかったと思うのですが、
今回の作品はほぼ全編が、
計算されつくした人間のぶつかり合いに終始し、
遊びはほぼ皆無という結晶体のような芝居になっていました。

セットは全編変化はしませんが、
平凡な洋風日本家屋の1階の中に、
具象と抽象とを巧みに組み合わせ、
壁の浸みや屋根の亀裂に時空の狭間を感じさせながらも、
トータルに確固たる存在感を感じさせる見事なもので、
上手前方に縁側と庭のスペースを取って、
そこをメインで1968年を展開させ、
その時空の変化を、
窓ガラスに映る赤と青のライトでコントールする、
という発想もなかなか効果的です。
この辺り唐先生のテント照明のスタイルを、
換骨奪胎した趣向が成功しています。
基本的に抑制された音響と照明の効果も良く、
いつものやや濫用に感じたプロジェクション・マッピングを、
舞台が黒塗りになる場面の1回しか使用せず、
オープニングの映像も、
ガリ版のアジビラのような趣向で処理しています。

役者も新劇などを遙かに超えるリアリズムと、
それを突き抜けたシュールさを兼ね備えた、
ナイロンならではの充実した役者陣で隙がなく、
3人のメインキャストに、
みのすけさん、三宅弘城さん、坂井真紀さんを配して、
特に坂井さんが演じる、
人生で決断に誤ってばかりいる痛いヒロインは、
彼女ならではという感がありました。
また作品の肝となる主人公達のリーダーを演じた、
イキウメでお馴染みの安井順平さんの、
彼でしか出せない「不気味さ」が、
作品の核も部分を支えて見応えがありました。

作品の内容は観る人によって様々な感じ方があると思います。
僕自身はある世代に対する強い不信と悪意とを強く感じましたが、
多分その世代の方が観れば、
自分達を肯定したような見方をする筈で、
この作品は様々な見方を受け入れるような、
懐の深さを持っていると思います。
ケラさんは個人的な心情や考え方とは別に、
創作においては独自の自由さを持っていて、
それが広く支持される理由であるように感じました。

そんな訳で今回はケラさんの作品の中でも、
意欲作で新傾向であると共に、
完成度の高い傑作で、
小劇場演劇の醍醐味を心ゆくまで味わえる名品として、
全ての演劇ファンの方に自信を持ってお勧めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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