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2018年06月| 2018年07月 |- ブログトップ
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「モリのいる場所」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
モリのいる場所.jpg
これはあまりご覧になった方が多くない映画かと思いますが、
独特の個性を持った画家の熊谷守一さんをモデルに、
彼の晩年94歳の1日の出来事を描いた作品です。

先週同窓会で松本に行ったのですが、
その時にイオンの映画館でやっていたので、
たまたま観ました。
そうでなければ上映されていたこと自体、
知らなかったと思います。

山崎努さんが主人公の94歳の画家を演じ、
その妻を樹木希林さんが演じています。
山崎さんは熊谷守一さんのファンで、
演じることを切望していた、と宣伝には書かれています。

沖田修一監督が脚本も執筆していて、
僕はこの監督の作品をそれほど観ていませんが、
ちょっとクセのある方ですよね。

自分の家の庭を、
ある種の冒険のように歩く主人公を、
自然の風景や虫たちの姿の精緻な撮影と共に、
淡々とじっくり描いていて、
その部分に関してはとても良い感じです。

また、色々な個性的な人物が、
次々と熊谷さんの家を訪れるのですが、
そのやり取りなどもユーモラスで悠然としていて、
これもなかなか良い感じです。
ああこれは、たとえば黒澤明監督の「まあだだよ」みたいな気分で、
鑑賞すれば良いのかしら、
と思っていると、
ドリフの話題が盛り上がると上からタライが落ちてきたり、
宇宙人が訪問したりするので、
ちょっと騙されたような、
馬鹿にされたような気分になります。

体制批判のような社会批判のような部分もあるのですが、
最初の昭和天皇の登場もあまり感心しませんし、
殊更に文化勲章を批判するのも浮いている感じがしますし、
やるにしてももっとやりようがあったのでは、
という気分が最後まで拭えません。
最後に急に現代になって、
マンションの上から過去を見下ろすのも唐突だなあ、
と思いますし、
何処まで真面目で何処からふざけているのか、
皆目分からない感じがして落ち着かないのです。

でも、多分この監督とは話は合わないだろうな、
という感じが強くするので、
もう好んで観ることは止めようと思いました。

熊谷守一の美術館の新聞で次女の方が書かれた文章を読むと、
台本が事実と違う点が多いので申し入れをしたところ、
監督に「これはフィクションなので自由にやらせて欲しい」
と説得され、仕方なく同意した、
という趣旨のことが書かれていて、
それを読むと余計にモヤモヤしてしまいました。

何か勝手にファンタジーにするなら、
架空の画家のお話にすれば良いのに、
と思ってしまいました。

そんな訳であまり納得がいかなかったのですが、
主人公2人の演技は素晴らしく、
映像も非常に凝っていて美しいので、
一見の価値はあると思います。
何かちょっと残念ですね。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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2型糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの癌予防効果(2018年日本の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの癌予防効果日本.jpg
2018年のDiabetes Care誌に掲載された、
日本人の2型糖尿病の患者さんにおける、
アスピリンの癌予防効果についての論文です。

アスピリンを代表とする消炎鎮痛剤に、
癌の発症予防と予後改善の効果がある、
とする報告は以前からありました。

そのメカニズムは、
必ずしも全て分かっている、
という訳ではありませんが、
消炎鎮痛剤の炎症を抑えるメカニズムの一部が、
癌の増殖に関わるシグナルを、
同時に抑えているためと、
概ね考えられています。

最も研究が進んでいるのはアスピリンで、
最近の幾つかの大規模臨床試験の結果として、
癌の組織型のうち、
腺癌というタイプの癌については、
間違いなくその予後を改善する効果があり、
より明確なのは、
特に大腸癌の転移の抑制効果です。

以前ご紹介した、
2012年のLancet 誌の論文では、
メタアナリシスの結果として、
大腸癌の転移のリスクを、
74%低下させた、
という画期的な効果が得られています。

2009年のJAMA誌の論文では、
大腸癌関連の死亡を29%抑制していますし、
今年のBritish Journal of Cancer誌の論文でも、
大腸癌の患者さんの全死亡リスクを、
23%有意に低下させる効果が得られています。

このように、
複数の一流の医学誌に、
別々の研究グループから、
同様の結果が集積されているのですから、
これはほぼ科学的事実なのです。

さて、
アスピリンの継続的な使用が、
大腸癌の予後を改善する効果のあることは分かりました。

ただ、
この効果にどの程度の地域差や人種差のようなものが、
あるのかという点はまだ不明確ですし、
アスピリンには消化管出血などの出血系合併症が少なからずあり、
予防効果とそうした有害事象とのバランスを、
使用に関してどう考えるかがまた問題となります。

今回の研究は日本において、
2型糖尿病の患者さんに対して、
アスピリンの心血管疾患に対する一次予防効果を検証した、
臨床研究のデータを活用して、
糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの癌予防効果を検証しています。

糖尿病はそれ自体癌のリスクであり、
日本においては糖尿病の患者さんでは、
そうでない人より1.7倍癌のリスクが増加する、
というデータもあるので、
糖尿病の患者さんはアスピリンによる癌予防の、
有効な対象であると考えられるからです。

2536名の2型糖尿病の患者さんを、
中央値で10.7年という長期の観察を行った結果として、
トータルにはアスピリンの使用による癌リスクの低下は、
有意には認められませんでした。

年齢を分けたサブ解析においては、
65歳以上では有意なアスピリンによる効果はなかった一方で、
65歳未満の解析では、
喫煙や血糖コントロールなどの因子を補正した結果として、
アスピリンにより癌のリスクは34%
(95%CI: 0.43から0.99)有意に抑制されていました。
ただ、これもギリギリという感じです。

最もこれまでにデータの多い大腸癌のみでみると、
矢張り65歳以上では有意な差はなく、
65歳未満のみの解析では、
そのリスクはアスピリンにより52%
(95%CI: 0.15から0.97)有意に低下していました。
実際の大腸癌の発症件数は、
アスピリン群で27例、
未使用群で31例ですから、
こうした検証では対象者がもう少し多くないと、
検証は難しいように思いました。

このように今回のデータは例数と癌の発症数から、
明確な差を出すことは難しかったようですが、
現時点で日本人の集団において、
アスピリンの癌予防に有効性があるとは、
言えないのが実際であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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バルプロ酸の男性生殖内分泌機能に対する影響(2018年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
バルプロ酸と男性生殖機能.jpg
2018年のEpilepsy & Behavior誌に掲載された、
抗けいれん剤として広く使用されている、
バルプロ酸(商品名デパケンなど)の、
男性生殖機能に与える影響についての論文です。

バルプロ酸は最もポピュラーなけいれん止めの薬で、
てんかん発作の予防に広く使用されていて、
それ以外に偏頭痛などの慢性頭痛の予防や、
双極性障害などの感情障害の治療にも、
しばしば使用されている薬です。

この薬は有効な反面、
副作用や有害事象が多いことも知られています。

代表的なものは肝機能障害や眠気、
錐体外路症状や胃腸症状などですが、
女性の月経異常や多囊胞性卵胞なども報告されています。

男性の性欲減退や生殖内分泌型の異常も、
報告はありますがその頻度などは明確には分かっていません。

ちなみに現行の日本の添付文書においては、
女性の月経異常は頻度不明で、
男性の生殖機能については記載はありません。

今回の研究はこれまでの臨床データをまとめて解析した、
システマティック・レビューとメタ解析によるものですが、
6つの臨床研究のトータル316名のデータをまとめて解析した結果として、
バルプロ酸の使用により、
血液中のテストステロン濃度と、卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度は、
いずれも有意に低下していました。

つまり、バルプロ酸の使用により、
男性ホルモンが低下し、
男性生殖機能が低下する可能性があることは、
間違いはなさそうですが、
この問題についてのデータは少なく、
その程度を含めて今後より大規模な検証が、
必要であるように思われます。

てんかんへの使用はともかくとして、
バルプロ酸は偏頭痛などに対しても、
若年層にしばしば連用されている薬なので、
この問題は軽視するべきではないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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マルチビタミン・サプリメントの心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マルチビタミンの効果.jpg
2018年のCircultion: Cardiovascular Quality and Outcome誌に掲載された、
マルチビタミンのサプリメントの、
心血管疾患予防効果についての論文です。

人間に必要なビタミンを複合して含む、
マルチビタミン・サプリメントは、
サプリメントの商品の中でも、
最も広く使用されているものです。

個々のビタミンの不足や欠乏が、
多くの病気の原因となることは、
それは間違いのない事実ですが、
それはあくまで高度の不足の場合であって、
余程の偏食やアレルギーなどがない場合には、
そうした事態はあまり起こりません。

それでは、それほどの欠乏がなくても、
やや多めにビタミンを摂ることに、
健康上のメリットがあるのかどうか、
という点については、
まだ明確な結論が出ていません。

これまでの多くの研究では、
マルチビタミンのサプリメントと、
心血管疾患などのリスクとの間には、
明確な関連は得られていません。
ただ、一部にある種の心血管疾患において、
そのリスクがサプリメント使用者で低かった、
というようなデータも発表はされています。

今回の研究は、
1970年から2016年の間に発表された、
主だった臨床データや疫学データをまとめて解析する手法で、
マルチビタミンのサプリメントの使用と、
心血管疾患のリスクとの関連を検証しています。

その結果、
一般住民がマルチビタミンのサプリメントを使用しても、
その後の心血管疾患のリスクには、
何ら有意な影響は確認されませんでした。

これはほぼ常識的な結果で、
そうは言っても全ての方にサプリメントは無効ではなく、
それほどの害もないと想定されるので、
お好きな方が使用することを非難するべきではないと思いますが、
少なくとも心血管疾患の予防という観点においては、
そうしたサプリメントの使用は無意味と断じても、
もう言い過ぎではない時期に来ているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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BMIと死亡リスクとの関連について(心血管疾患の状態による解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。

BMIと死亡リスク.jpg
2018年のthe American Journal of Cardiology誌に掲載された、
体格の指標であるBMIという数値と、
生命予後との関連を、
心血管疾患のリスクなどで解析した論文です。

BMIというのはキログラムで表示した体重の数値を、
メートルで表示した身長で2回割り算して得られる数字で、
この数値が25以上であると過体重と判断され、
世界的にも30を超える状態は肥満と診断されます。

一般住民や心血管疾患の既往のない集団での疫学データにおいては、
BMIが20から24.9の間が最も死亡リスクが低く、
25を超えると総死亡のリスクも、
心血管疾患の発症リスクもいずれも増加に転じます。

しかし、その一方で心血管疾患を持つ患者さんの集団では、
BMIが20から24.9より高い、過体重や軽度の肥満の方が、
死亡リスクが低いという、
かなり意外な結果が複数報告されています。

これをBMIパラドックスと呼ぶこともあります。

何故、心血管疾患の患者さんでは、
体重が重い方が予後が良いのでしょうか?

今回の研究はこれまでの疫学データをまとめて解析する手法で、
心血管疾患の既往のない集団と、
心血管疾患で治療中の安定した状態にある集団、
そして急性冠症候群の状態にある集団の、
3種類の集団毎に、
生命予後とBMIとの関連を比較しています。

その結果、
心血管疾患のない集団では、
最も死亡リスクが低いのは27.2であったのに対して、
安定した心血管疾患の集団では28.1、
急性冠症候群の集団では30.9となっていました。

このように個々の集団において、
心血管疾患との関係の違いにより、
死亡リスクを低下させるBMIの数値には明確な違いが認められました。

またこの集団を全て併せた上で、
喫煙や既往歴などから死亡リスクを推計し、
そのリスクの高さによって3つの分類を行っても、
高リスクである方が、
総死亡のリスクを最も低下させるBMIは上昇していました。

それを図示したものがこちらになります。
BMIと死亡リスクの図.jpg
このように、
どうやら心血管疾患に関わらず、
病気のリスクが高く元々死亡リスクが高い集団では、
そうでない集団より、
やや体重が多くBMIが高い方が、
生命予後が良いという傾向が、
トータルに認められると考えて間違いはないようです。

その原因は不明ですが、
上記文献の著者らは、
生命保持における内臓脂肪などの持つ役割が、
リスクの高い集団では大きいのではないか、
というような推測をしています。

いずれにしても、
その人にとっての健康的なBMIには違いがあり、
それを無視して20から24.9を至適とする、
というような考え方は、
適切ではないと考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「女と男の観覧車」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アレンの観覧車.jpg
大好きなウディ・アレンの新作が、
今ロードショー公開されています。

いつもそれほど長い上映にはならないので、
少し慌てて劇場に足を運びました。

アレンの作品が毎年公開されるのは嬉しい限りですが、
その出来には結構ばらつきがあります。
昨年の「カフェ・ソサエティ」はかつてのアレン節全開の、
ハリウッドでギャングが活躍する楽しい話でしたが、
今回はそうした華やかさとは無縁の、
往年のフランス映画を思わせるような重悲劇で、
全編救いの欠片もないような、
冷徹な生活のドラマが展開されます。

シモーヌ・シニョレか、
「欲望という名の電車」のブランチか、
というような退廃を漂わせた、
元売れない女優の主人公をケイト・ウィンスレットが演じ、
アル中の情の深いろくでなしと結婚していながら、
義理の娘と軽薄な脚本家志望の大学生を、
不倫で取り合うという絶望的な役柄を演じます。

物語自体は救いのないままに進みますが、
狂言回しの軽薄な大学生が、
正面を時々向いて観客に話しかけるという、
アレンらしい趣向と、
主人公の義理の娘の純情な美しさがガス抜きとなり、
映画を象徴する観覧車を中心とした、
コニーアイランドの浜辺の美しいパノラマが、
その見事な映像美で画面を飾ります。

昔だったら救いがなさ過ぎて、
とても受け付けないタイプの映画でしたが、
人生の悲劇性に滑稽さとある種の味わいとを感じるようになると、
意外にこうした話も悪くないなと、
そんなようにも思えます。
アレンにしてなし得た侘び寂びの境地と言うか、
キャストも決してやり過ぎない、
過不足のない熱演で見応えがありました。

誰にでもお勧め出来る映画ではありませんが、
アレン節がお好きな方には、
彼の新たな側面をまた感じさせる、
怜悧で美しく素敵な作品でした。

ご興味のある方は是非。
ケイト・ウィンスレットも良かったですよ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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ナイロン100℃「睾丸」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ナイロン「睾丸」.jpg
結成25周年の記念公演として、
ナイロン100℃の新作「睾丸」が今上演されています。

これはナイロン100℃が旗揚げした、
1993年を舞台にして、
45歳の2人の男と1人の女性が、
25年前の1968年に、
自分達がのめりこんでいた、
学生運動の時代を振り返る、
という趣向の作品で、
3人のリーダーであった七ツ森という先輩が、
1968年に自動車事故で植物人間となり、
25年ぶりにその訃報が届く、
というところから物語は始まります。

学生運動の時代は、
アングラ演劇の1つのピークでもありましたから、
それと現代とを対比させたようなお芝居は、
これまでにも結構ありました。
たとえば鴻上尚史さんの以前の戯曲では、
学生運動の闘士が長い昏睡状態から目覚めて…
というような今回のお芝居と良く似た設定の作品がありました。

ただ、今回の作品はそうした、
ある種のノスタルジーや鎮魂と言った雰囲気に彩られたものではなく、
徹底して怜悧な筆さばきで、
過去の自分とどう向き合い、
どう落とし前を付けるべきか、
というより普遍的なテーマを、
徹底して追及した「論理の芝居」で、
サム・シェパード辺りのアメリカ演劇のドライさにも似て、
ケラさんの新たな挑戦として、
これまでのナイロン100℃の芝居とは、
完全に一線を画した、異なる肌触りの作品です。

前半1時間半、後半1時間半にきっちり分かれて、
間に10分間の休憩をはさんだ構成ですが、
特に後半待たれていた予期せぬ主人公が、
舞台に登場する辺りからの緊張感の高まりと、
その後の緻密かつドラマチックな展開が圧巻で、
ラスト1時間は小劇場でも稀に見る、
濃密な緊張感と戦慄とに舞台は包まれました。

ケラさんのこれまでの舞台は、
シリアスなスタイルのものでも、
すかしのような間や遊びがあり、
コミカルな場面などもあって、
全編計算されつくした幾何学のような作品は、
あまりなかったと思うのですが、
今回の作品はほぼ全編が、
計算されつくした人間のぶつかり合いに終始し、
遊びはほぼ皆無という結晶体のような芝居になっていました。

セットは全編変化はしませんが、
平凡な洋風日本家屋の1階の中に、
具象と抽象とを巧みに組み合わせ、
壁の浸みや屋根の亀裂に時空の狭間を感じさせながらも、
トータルに確固たる存在感を感じさせる見事なもので、
上手前方に縁側と庭のスペースを取って、
そこをメインで1968年を展開させ、
その時空の変化を、
窓ガラスに映る赤と青のライトでコントールする、
という発想もなかなか効果的です。
この辺り唐先生のテント照明のスタイルを、
換骨奪胎した趣向が成功しています。
基本的に抑制された音響と照明の効果も良く、
いつものやや濫用に感じたプロジェクション・マッピングを、
舞台が黒塗りになる場面の1回しか使用せず、
オープニングの映像も、
ガリ版のアジビラのような趣向で処理しています。

役者も新劇などを遙かに超えるリアリズムと、
それを突き抜けたシュールさを兼ね備えた、
ナイロンならではの充実した役者陣で隙がなく、
3人のメインキャストに、
みのすけさん、三宅弘城さん、坂井真紀さんを配して、
特に坂井さんが演じる、
人生で決断に誤ってばかりいる痛いヒロインは、
彼女ならではという感がありました。
また作品の肝となる主人公達のリーダーを演じた、
イキウメでお馴染みの安井順平さんの、
彼でしか出せない「不気味さ」が、
作品の核も部分を支えて見応えがありました。

作品の内容は観る人によって様々な感じ方があると思います。
僕自身はある世代に対する強い不信と悪意とを強く感じましたが、
多分その世代の方が観れば、
自分達を肯定したような見方をする筈で、
この作品は様々な見方を受け入れるような、
懐の深さを持っていると思います。
ケラさんは個人的な心情や考え方とは別に、
創作においては独自の自由さを持っていて、
それが広く支持される理由であるように感じました。

そんな訳で今回はケラさんの作品の中でも、
意欲作で新傾向であると共に、
完成度の高い傑作で、
小劇場演劇の醍醐味を心ゆくまで味わえる名品として、
全ての演劇ファンの方に自信を持ってお勧めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「パンク侍、斬られて候」(2018年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
パンク侍.jpg
町田康さんのぶっ飛んだ時代小説を、
宮藤官九郎さんが脚本を書き、
石井岳龍さんが監督した映画版が、
今ロードショー公開されています。

これは原作は僕くらいの世代的には、
筒井康隆さんの焼き直し的な感じのものなんですよね。
ただ、筒井さんの作品は今読むと矢張りとても古めかしくて、
何と言うのかな、
個人の自我がとことん肥大化して、
大衆とマスメディアという化け物が全てを支配して、
高度に情報化され退廃化した社会を、
ある意味予言したような作品群であった訳ですが、
今は実際に筒井さんが妄想する100倍くらい凄まじく、
そうした世の中になってしまっているので、
「今さらそんな当たり前のことを言われても…」
という気分にどうしてもなってしまうのです。

少し前に筒井さんの作品を読み直してみて、
昔はゲラゲラと腹がよじれるくらいに笑えたのに、
全然ただの現実を描いているだけなので、
ちっとも笑えないことに愕然としたことがあります。

その点町田さんのこの作品は、
筒井さんの世界を現代にフィットするように、
巧みに読み替えたような感じがあって、
オリジナルとは到底思えないものの、
まずは面白く読むことが出来ます。

ヘンテコな新興宗教は「ドグラマグラ」を意識したもので、
それほどの新味はありませんが、
後半猿回しから猿が舞台の前面に登場する辺りの不気味さは、
なかなかのもので、
ラストで世界を終わらせてしまう辺りに、
町田さんのある種の覚悟を感じる思いがあります。

ただ、ハチャメチャなこの原作を、
実写で映画化するのは相当ハードルが高そうに思われるところ、
脚本のクドカンはほぼ原作のままに台本を作り、
石井岳龍監督もほぼ原作の通りにイメージを尊重して、
愚直なまでに原作をリスペクトした一作に仕上げています。

正直相当感心しました。

石井監督はカルトもアクションも、
独自の拘りがあるのだと思いますが、
前作の「蜜のあわれ」もなかなかの美意識に裏打ちされていて、
見応えがありましたし、
今回の作品でも、
ビジュアルの統一感がなかなかに素晴らしく、
魅力的なキャストの大芝居を、
130分に過不足なく綺麗にまとめ上げた手腕は、
これも凡手ではありません。

原作を読まれないで映画を観られた方は、
時代劇なのに時代考証無視のカタカナ交じりの台詞や、
寒いギャグや自我の肥大した若者同士のじゃれ合いを、
クドカンの趣向だと思われたかも知れませんが、
実はほぼほぼ原作そのままの台詞なのです。

唯一の不満はクライマックスが、
やや拙いCGまみれであることと、
レイティングをG(制限なし)にするために、
人間や猿がバンバン爆発するという残酷シーンを、
抽象的な処理で逃げていることです。
ただ、猿をリアルに爆発させるのは、
動物愛護的に叱られてしまうのだと思いますし、
興行的な観点から、
レイティングは避けるという事情があったとは推察されます。
でも、これはやらないとこの作品を映像化する意味が、
あまりなくなるという気がしますから、
ちょっと残念ではありました。
ただ、転んでもただでは起きないというのか、
原作の人間と猿の爆発を花火にして、
石井輝男さんの「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」のオマージュにしている、
という辺りなど、
マニア心をくすぐるような感じがあります。

いずれにしてもこの空中分解必死の企画を、
このレベルでまとめ上げたことは、
控えめに言っても賞賛に値する力技で、
僕は大好きな作品です。

考え抜かれたキャスティングが成功していて、
役者は皆抜群に良いのですが、
染谷将太さんの狂気と、
豊川悦司さんの愛らしい悪党ぶりは、
中でも繰り返し見たくなる至芸でした。

あまり評判は良くないのですが、
個人的にはこれまでに観た今年の日本映画の中では、
「万引き家族」と共に最も優れた作品だと、
大真面目に思っています。

どちらも間違いなく今僕達が生きているこの地獄さながらの世界を、
想像力を駆使して描ききった傑作なのです。

皆さんも是非。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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第33回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はいつもの告知です。

こちらをご覧下さい。
33回健康教室.jpg
次回の健康教室は、
7月21日(土)の午前10時から11時まで(時間は目安)、
いつも通りにクリニック2階の健康スクエアにて開催します。
告知が遅くなりまして申し訳ありません。

今回のテーマは「最新版便秘の基礎知識」です。

便秘というのは非常に身近な症状ですが、
赤ちゃんからお年寄りまで、
その原因はそれぞれに違っていても、
年齢に関わらずに私達を悩ます病気です。

基礎疾患のない便秘症というのは、
悪性の病気という訳ではありませんが、
高度の便秘は腸閉塞を来して命に関わることもあり、
また緊急手術で便をかき出すような処置が、
必要になるようなケースもあります。

便秘薬は医療用から市販のもの、
また民間療法の類まで、
これも無数に存在していますが、
全ての人が希望している「自然な排便」を実現するものはなく、
その薬の弊害で悩むような事態も稀ではありません。

私達はどのように便秘に向き合うべきなのでしょうか?
どのような時にお医者さんに相談をするべきなのでしょうか?
本当に便秘に詳しいのは誰でしょうか?

今回もいつものように、
分かっていることと分かっていないこととを、
なるべく最新の知見を元に、
整理してお話したいと思っています。

ご参加は無料です。

参加希望の方は、
7月19日(木)18時までに、
メールか電話でお申し込み下さい。
ただ、電話は通常の診療時間のみの対応とさせて頂きます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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抗血小板剤未使用時の出血リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
一般住民の出血リスク.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
一般集団における消化管などの出血のリスクについての論文です。

脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが高い場合には、
その発症予防のために、
アスピリンなどの抗血小板剤を使用していることで、
一定の予防効果が期待出来ます。

これまでにそうした心血管疾患を起こしたことのある患者さんでは、
その再発のリスクは非常に高いものなので、
その使用にメリットのあることはほぼ間違いがありません。

これを二次予防と言います。

その一方でこれまでにそうした病気を発症していない場合には、
二次予防と比較して抗血小板剤の予防効果は、
より低いものとなります。

従ってこの一次予防において抗血小板剤を使用するかどうかは、
その発症リスクの予測と、
使用による有害事象や副作用の頻度の予測とを、
比較検証して、
そのメリットが明確にそのデメリットを上回る場合に、
初めて検討されるべきだと考えられます。

抗血小板剤の有害事象の筆頭は、
消化管出血や脳内出血などの出血系合併症です。

アメリカの予防医学の専門部会は、
50代でその後10年間の心血管疾患リスクが10%以上の時に、
アスピリンの低用量での使用を推奨しています。

ただ、その元になったデータは寄せ集めのもので、
特に一般の人口における出血リスクについては、
あまり信頼性の高いものではありません。

そこで今回の研究ではニュージーランドにおいて、
プライマリケアで登録された一般住民の疫学データを活用して、
心血管疾患の既往がなく、
抗血小板剤などの出血リスクを高める薬剤を使用していない場合の、
出血リスクの推測を行っています。
トータルな対象者は30から79歳の359166名です。

その結果、
人口1000人当り年間2.19件(95%CI: 2.11から2.27)の、
非致死性消化管出血が発症し、
消化管出血による死亡率は、
3.4%(95%CI: 2.2から4.1)に達していました。

これをアメリカ予防医学部会の提言の元になったデータと、
比較した表がこちらになります。
出血リスクの比較の表.jpg
これはちょっと驚くような違いがあって、
たとえば40代の男性で非致死性消化管出血のリスクは、
人口1000人当り年間1.83件ですが、
アメリカ作業部会の出した推計は、
同じ年齢区分で0.5件となっていて、
3倍以上の違いがあります。

つまり、これまでの想定より今回の疫学データは、
遙かに出血のリスクが高いのです。

これを利用してアスピリンの一次予防の効果を検証すると、
未使用の場合の出血リスクの増加によって、
アスピリン使用時の出血リスクも上方修正され、
従来よりその予防効果は、
遙かにデメリットの大きなものとなってしまいます。

そのどちらが実態に近いのか、
という点はまだ何とも言えませんが、
現行のガイドラインを鵜呑みにすることが、
それほど科学的であるとは言い難く、
地域差の問題なども含めて、
この問題は今後大きな議論を呼ぶことになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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