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日焼け止めのメラノーマ予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
日焼け止めのメラノーマ予防効果.jpg
2018年のJAMA Dermatology誌に掲載された、
お子さんの時の日焼け止めの使用と、
その後の皮膚癌であるメラノーマの発症との、
関連についての論文です。

メラノーマ(悪性黒色腫)は、
メラニン産生細胞から発症する悪性腫瘍で、
その予後が悪いことでも知られていますが、
皮膚に出来るメラノーマは、
紫外線や日焼けと関連の深いことが知られています。

それでは、子供の頃から日焼け止めを使用し、
紫外線をガードすることにより、
メラノーマを予防することは可能なのでしょうか?

これまでにその時点での日焼け止めの使用と、
メラノーマの発症リスクとの関連を検証した疫学データは幾つかあり、
一定の予防効果があるとする報告と、
無関係であったという報告があり一定していません。

今回の検証はオーストラリアにおいて、
18歳から39歳でメラノーマを発症した事例を、
年齢などでマッチングしたコントロールと比較し、
小児期における日焼け止めの使用と、
メラノーマリスクとの関連を検証しています。

その結果、
日焼け止めの使用が最も少ない群と比較して、
最も多い群ではその後の生涯のメラノーマの発症リスクが、
40%(95%CI: 0.42から0.87)有意に低下していました。
この予防効果は、
特に若年発症の事例や水疱を伴うような日焼けの既往のある事例において、
より高い傾向が認められました。

このように特に家族歴があるなどリスクの高い場合には、
お子さんの時期から適切に日焼け止めを使用することが、
メラノーマのリスクの予防には有効であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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皮膚呼吸は存在しないのか? [科学検証]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日は雑談です。

ネットを遊覧していたら、
専門家らしき方が、
「人間に皮膚呼吸は存在しない」と、
断定的にコメントをされていたので、
いやいやそんなことはないのではないかしら、
と思い少し調べてみました。

調べると他にもエッセイなどで、
「昔金粉ショーで皮膚呼吸が出来なくなり死亡した」
というような話がまことしやかに言われているけれど、
それは全くの非科学的な話で、
人間はミミズではないので肺呼吸だけで、
皮膚呼吸は一切していない、
というこれも断定的な記載が、
幾つかあるのが見つかりました。

本当でしょうか?

人間が肺呼吸を主体として、
ガス交換を行っている生物であることは間違いがありません。
ただ、ミミズは皮膚呼吸のみを行う生物ですし、
は虫類や両生類は皮膚呼吸と肺呼吸とを併用しており、
哺乳動物においても、
皮膚でのガス交換(すなわち皮膚呼吸)が、
一定の比率では行われていることは、
文献的に多くの記載があります。

要するに、
人間が皮膚呼吸を主体にしている、
と言えば勿論誤りで、
金粉ショーで死亡したとしても、
その死因が皮膚呼吸の障害である、
とすることは勿論誤りですが、
皮膚呼吸を全くしていない、
というのもまた、
かなり考えづらい事項であるように思われます。

そこで文献的に検索してみると、
人間がどの程度皮膚呼吸を行っているかの研究は、
主に1930年代から50年代に掛けて行われています。

良く引用されるその代表的な文献がこちらです。
人間の皮膚呼吸.jpg
1957年のPhysilo. Rev.誌の論文ですが、
ここでは全呼吸の1から2%で皮膚で行われている、
という記載があります。

また次のような論文もあります。
人間の皮膚呼吸2.jpg
the Journal of Investigative Dermatology誌の、
同じ1957年の論文ですが、
ここでは人間の皮膚を用いた実験において、
安静時に人間が呼吸するうちの、
表皮で4%、真皮で3%の酸素を消費し、
ガス交換を行っている、
という結論になっています。

これは結構皮膚呼吸の比率が大きい結果ですが、
概ね教科書的な記載としては、
最初の文献にある1から2%という数値が採用されているようです。

ただしこれは大人の場合で、
角質層が未発達である出生から間近の赤ちゃんでは、
より多くの皮膚呼吸が行われていることを、
示唆する報告があります。
極小未熟児においては、
皮膚呼吸のみで血液中の酸素分圧が、
35mmHg以上増加した、
というちょっとビックリするような報告もあります。

つまり、状況によっては、
人間においても皮膚呼吸が少なからず全身状態に影響する、
という可能性もあるのです。

面白いですね。

このように人間でも皮膚呼吸の能力はあって、
勿論肺呼吸主体の生物ですから、
大人におけるその関与はわずかですが、
赤ちゃんなどではその影響が、
人間においても意外に大きいことが報告されているのです。

今日は人間の皮膚呼吸の誤解についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ジュラシック・ワールド 炎の王国」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日最後の記事は映画の話題です。
それがこちら。
ジュラシックワールド.jpg
ジュラシック・パークの新シリーズで、
前作の「ジュラシック・ワールド」の正調の続編である、
「ジュラシック・ワールド 炎の王国」がロードショー公開されています。
MX4Dで観て来ました。

1993年の「ジュラシック・パーク」は、
当時はリアルなCGがまだ一般にはなかった時代で、
本当にわくわくしながら劇場に足を運びました。
Tレックスがどかどか走って来るところとか、
凄かったですよね。
ただ、映画としては前半の説明が長くで、
子供とおじいさんの交流とか、
うっとうしい感じはありました。
何かやぼったい話ですよね。

シリーズを通してそのやぼったさはまあ同じで、
その辺はマイナスなのですが、
恐竜の手を変え品を変えの出現は迫力があります。

今回の作品は前作「ジュラシック・ワールド」と、
同じキャストが多く出演する続編で、
最初は説明パートが少しまどろっこしく、
ブロントサウルスを見て「わあ、本物だ」
と言う場面など、
どうにかならなかったのか、とうんざりなのですが、
その後は島での噴火からの脱出、
後半は大邸宅での恐竜、人間入り交じり、
地下牢の怪物的なキャラも登場しての追いかけっこと、
見せ場のつるべ打ちで大変豪華で見応えはあります。

前半と後半とに同じくらいのスケールの、
それでいて肌合いの全く違う見せ場を用意し、
予告ではほぼ前半しか見せないというのが嬉しく、
エンタメ大作としては夏休みにうってつけの、
豪華な見世物映画として成立していたと思います。

MX4Dも苦情があったのか、
以前より水はあまり掛からない仕様になっていましたが、
動きの演出は悪くなくて、
ガタガタするところより、
屋敷をゆっくり俯瞰で移動するところなどの、
キャメラに連動した動きの計算がなかなかで、
なかなか臨場感を楽しむことが出来ました。

更に続編もあるようですが、
ラストに恐竜が野放しに世界に拡散されるのは、
如何なものかな、というようには思いますが、
まずは楽しめる娯楽作には仕上がっていたと思いました。

そこそこお勧めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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ナカゴー「まだ出会っていないだけ」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日2本目の記事は演劇の話題です。
それがこちら。
ナカゴー 2018.jpg
唯一無二の変な舞台を見せる大好きなナカゴーの本公演が、
今下北沢の駅前劇場で公演されています。

これは昨年の「ていで」に似た、
ナカゴー印の家庭劇で、
ハイバイでの不思議な芝居もなじみ深い、
上田遙さんが客演で、
主役の定食屋をきりもりする女性を演じ、
長く決別していた妹と、
再会して仲直りしようと心の中では思いながら、
結果としてまた喧嘩をしてしまうという心理を、
ナカゴーらしいガジェットは散りばめながら、
本筋は極めて繊細かつ正攻法の心理劇として描いています。

天才鎌田順也さんのお芝居は、
その破天荒な展開とシュールなギャグが魅力ですから、
河童や悪霊や人面痘や口さけ女の集団などが登場する方が、
楽しくて本筋のようにも思うのですが、
数年前からどうやらこうした心理劇や家庭劇に興味が移り、
全うにそれを追求しようとしているようです。

また、これも少し前から、
最初に前説として、
あらすじを最後まで喋ってしまったり、
舞台上で役者が練習として、
本番の台詞を喋ってしまうなど、
普通は「それをしたら台無しだろう」
と思えるようなことをするようになりました。

ただ、
昨年の「ていで」ではそれが全くの失敗で、
何の意味もなく感じられたのですが、
今回の作品を見ると、
最初に予行練習はあるのですが、
大事な台詞は省いていましたし、
最初に登場する前説の女性が、
あらすじを喋ってしまうこと自体は一緒でも、
その女性自体が未来の分かる「予知能力者」だということになっていて、
同じ予知能力者の女性と対決して、
劇中で「予め決まっている未来」を、
変えようとして対決する、
という趣向になっているので、
なるほどそうしたことがしたいのかと、
ようやく腑に落ちるような気分になったのです。

鎌田さんはどうやら、
自分に身近な感情のありかを、
追求するような文学的な芝居を、
エンタメとして成立させる取り組みをしていると共に、
予め書かれた戯曲を演じる、
という行為に対する深い懐疑を、
それ自体テーマとしようとしているようです。

普通考えると、
そんなことをしても意味ないじゃん、
と思えるところですが、
そこが天才の天才たるゆえんで、
その凡人には無意味に見える葛藤が、
全く新しい芝居の萌芽となりつつあるように、
今回は感じました。

昨年の「ていで」を足場にしながら、
今回の作品は数段レベルアップして、
完成度の高い作品となっていましたし、
新劇的な家庭劇としても高い水準で成立しながら、
それがある懐かしさを感じさせるような、
シュールで前衛的な芝居としても成立していたのです。

鎌田さんの新たな境地を見る思いがありました。

役者は主役の上田遙さんが抜群に良く、
重鎮の篠原正明さんもいつもながらの迫力でした。
座組の水準もしっかりと上がっているようです。

正直もっと破天荒さを期待したい部分も正直あるのですが、
今回の舞台はナカゴーの1つの新たな側面の、
現時点での到達点として、
非常に完成度の高い、
素敵なお芝居になっていたと思います。

楽しめました。

それでは次はもう1本、
映画の記事に続きます。
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「菊とギロチン」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。

今日は3本の記事の予定です。

まずはこちら。
菊とギロチン.jpg
瀬々敬久監督のオリジナル企画として、
大正時代を舞台とした3時間を超える長尺の映画です。
「菊とギロチン」という名前もなかなかのインパクトですし、
大正末期を舞台に、
無政府主義のテロリストの若者達と、
女相撲を人生の逃げ場所に選んだ女達との交流を描く、
という内容がまた異色です。

昔のATG映画には、
吉田喜重監督の「エロス+虐殺」や「戒厳令」といった、
今回の映画と同じ時期を扱った前衛映画があって、
基本的には同じ性質のものを描こうとしているのかな、
というようには感じるのですが、
アナーキズムとフェミニズムとの関係とか、
時代の描き方についてはかなり根本的な違いがあって、
この間の政治的な状況の変化と、
歴史をねじ曲げようとする、
立場を問わない多くの情報の乱立が、
実情とは異なる今回のようなフィクションを、
成立させてしまう主因となっているようにも感じました。

僕もその時代に生きていた訳では勿論ありませんが、
本当の大正時代がこんなだった筈はないですよね。
それはもう絶対に違うと思います。
昭和初期くらいの時代の記録映像や映画は、
まだ結構残っていますし、
口語の舞台作品もありますよね。
あの時代には絶対にないような言葉を、
おそらくはかなり無自覚に使っていますし、
時代考証などもデタラメでセットなども安手で稚拙です。

まあ、映画というのはその時代性からは、
離れられない性質のものなので、
この映画の持つ殺伐とした感じ、
ひたすら何かに対して恨みを持ち、攻撃し、
反面一方的に自分を責めたり絶望したりする感じなどは、
間違いなく現代のメンタリティであって、
大正や昭和初期のそれではない、
という気がします。

女相撲の興行の栄枯盛衰を描く、
というのは今までにあまりない面白い趣向で、
「旅芸人の記録」を思い起こさせるような感じもあります。
その雰囲気自体はとても良いので、
個人的には「ギロチン社」の話は脇筋程度にして、
いかがわしい興行の悲哀と人間ドラマを描いた年代記、
という感じにした方が、
個人的にはもっとずっと面白かったのではないか、
というように思いました。

ラストはもうドロドロの崩壊劇になり、
爆薬の使い方などはちょっと面白くショッキングですが、
自分で自傷的に壁で頭を割ったり、
男が女を石で殴って殺すのを延々と見せたり、
死後硬直した死体を桶に入れるために手足を折ったりと、
趣味の悪い場面が続くのがうんざりします。

この監督はこの前の「友罪」でも、
自分で頭に石をぶつけて血を流す光景を、
延々と見せたりして、
言いたいことは勿論あるのでしょうが、
僕にはあまり相性は合わないと感じました。

残酷描写が一概に悪いということではないのですが、
単純かつ即物的に、
それを見せ場にして映画を構成しているような感じが、
ちょっとそれは違うのではないか、
というように思うのです。

今回のような映画においては、
女相撲を逃げ場所にせざるを得なかった女達の悲惨を、
もっと別の形で表現する方法が、
あったのではないでしょうか?

石井輝男監督の残酷時代劇のように、
残酷見世物をそれ自体テーマとして、
徹底して追求した作品などは好きなのですが、
この作品はテーマは完全に別物でありながら、
暴行や残酷描写を見せ場にする、
というのはバランスを欠いているように感じました。

そんな訳で個人的にはちょっと残念な映画で、
役者の熱演は印象に残りますし、
女相撲の流浪の感じなどは非常に良かったので、
中途半端でバランスを欠くメッセージ姓と、
悪趣味な残酷描写の連打はガッカリでした。

前作の「友罪」も、
見事で感動的な原作を、
意味不明の演出で台無しにしている感がありましたし、
この監督の作品はもう見ないようにしようと決めました。

勿論個人的な感想ですのでご容赦下さい。

それでは次の記事に続きます。
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「マクガワン・トリロジー」(2018年小川絵梨子演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

台風が近づいていますので、
受診予定の方はくれぐれもご注意下さい。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
マクガワン・トリロジー.jpg

アイルランドを舞台に、
IRAの殺し屋を主人公にした2014年の海外戯曲を、
翻訳芝居の演出に長けた小川絵梨子さんが演出し、
主役を人気者の松坂桃李さんが演じた舞台が、
今世田谷パブリックシアターで上演されています。

これは3幕のお芝居で、
それぞれ別の場面で、
結果として登場人物全てを、
主人公が殺してしまう、
という趣向になっています。

それ自体はなかなか面白いのですが、
台詞で心の揺れ動きをレトリックで表現する、
という感じのお芝居で、
ジェイムズ・ジョイスが出て来たり、
パンクロックもシェイクスピアも出て来たりするので、
翻訳劇としてはかなりハードルが高く、
とても日本で上演して楽しめる、
という作品ではありませんでした。

IRAの殺し屋というと、
マクドナーの「ウィー・トーマス」が印象深いのですが、
長塚圭史さんによる翻訳上演は、
外連味たっぷりで、
前半殺し屋がいつ銃を撃つのか、
それだけでワクワクする感じがありました。
またストーリー自体にもひねりがあり、
予期せぬ展開やブラックユーモア、
風変わりなキャラなどに満ちていて、
それが翻訳劇の退屈さをすくい取っていました。

そうしたワクワクが、
今回の上演には全くありません。

小川さんの演出は堅実なもので、
オペラを彷彿とさせるような欧米的なセットが美しく、
休憩のない2幕から3幕への転換を、
それ自体見せ場にするという趣向など、
さすが、と感じる部分はあったのですが、
いかんせん素材が地味過ぎて、
とても娯楽劇として成立してはいませんでした。

キャストも皆熱演ではあるのですが、
台詞で心理を語るという感じのお芝居なので、
元々翻訳調で不自然な台詞を、
喋るだけで精一杯という感じがあって、
台詞の堅さを超えた生の実感のようなものを、
舞台に漂わせるまでには至っていませんでした。

主役の松坂さんは熱演で、
これまでとはまた違った側面を見せていましたから、
ファンの方には見る価値のある作品だったと思いますが、
翻訳劇の上演としては、
「どうして、こんなものを選んでしまったの?」
という違和感が最後まで抜けませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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軽症脳卒中に対するt-PA製剤とアスピリンの効果比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルテプラーゼとアスピリン.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された解説記事ですが、
軽症の脳梗塞に対する治療薬の効果を、
アスピリンと比較して検証した論文についての解説です。

脳梗塞は最終的に脳内の結果に血栓が詰まって、
脳の一部に血液が流れなくなるために、
脳の細胞が死んでしまうという病気で、
脳卒中の1つです。

原因としては、
脳の血管の動脈硬化が進行して起こるものもありますし、
心房細動などの原因により、
別の場所から飛んできた血の塊(血栓)が、
血管を詰まらせて起こることもあります。

急性期の脳梗塞の治療の進歩において、
現時点で最大のトピックは、
静脈からrt-PA(アルテプラーゼ)という血栓溶解剤を、
注射して詰まった血栓を溶かしてしまう。
という血栓溶解療法の開始です。

アメリカでは1996年に適応されましたが、
日本で保険適応として施行が可能となったのは、
2005年の10月のことです。
色々と理由はあったのですが、
如何にも遅すぎる決定で、
「失われた10年」という言い方がされることもあります。

この血栓溶解療法は非常に有用性の高い治療で、
それまで回復が困難とされたような患者さんが、
劇的に回復されるというケースが多く報告されました。

ただ、この治療は全身的に出血の合併症を伴うので、
その適応は有効性のあるケースに限定されます。

脳出血を起こすリスクが高いような患者さんや、
血糖や血圧が非常に不安定であるようなケース、
前回の脳梗塞から3ヶ月以内などのケースでは適応となりません。

そして、発症から時間が経った血栓は溶解が難しく、
出血の合併症も多くなることから、
この治療は脳梗塞の症状の発症から、
4.5時間以内(発売当初は3時間以内)に治療を開始することが、
適応の要件となっています。

rt-PAによる血栓溶解療法により、
多くの患者さんの予後が改善したのですが、
その一方で問題点も浮上するようになりました。

現状のガイドラインにおいては、
臨床症状の程度には関わらず、
t-PAは適応となっています。
しかし、軽症の脳梗塞においては、
t-PAの治療を行っても、
元々の予後が良いので、
それほどの効果は期待を出来ません。
その一方で、出血系の合併症は、
軽症例でも同じように起こります。
そのために現行のガイドラインにおいても、
軽症の脳梗塞は慎重投与と記載されていますが、
その具体的な線引きは明らかではありません。

そこでPRISMSと呼ばれた臨床試験が行われ、
その結果が2018年のJAMA誌に公表されました。

症状が軽症(NIHSSスコアが0から5点)で、
発症から3時間以内に治療が可能な虚血性脳血管障害患者を、
多施設で登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はt-PA製剤のアルテプラーゼを使用し、
もう一方は代わりにアスピリンを使用して、
治療開始後90日の時点での予後を比較検証しています。
アルテプラーゼは体重1キロ当り0.9ミリグラムを使用し、
アスピリンは325ミリグラムを使用しています。
どちらが選ばれたか分からないように、
偽の薬と偽の注射が使用されています。

その結果、
治療開始後90日の時点での症状には、
アスピリン群とt-PA群との間で、
明確な違いは認められませんでした。
その一方で頭蓋内出血はアスピリン群では0であった一方で、
t-PA群では3.2%に認められました。

このように、
軽症の虚血性脳血管障害では、
t-PAがアスピリンに勝るという根拠は乏しく、
今後t-PAの適応について、
より厳密な議論が必要となるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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妊娠に伴う血小板数の低下について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
妊娠と血小板.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
妊娠中の血小板数についての論文です。

1993年に妊娠中の女性の5から10%では、
血小板数が15万/μl 未満の血小板減少症が認められると報告されています。
(通常の基準値は15万から35万程度です)

ただ、その病的な意味は明らかではなく、
妊娠中期より正常妊娠でも血小板は低下するとされていますが、
その根拠となるデータもあまり精度の高いものではありません。

今回のデータはアメリカにおいて、
トータル7351名の妊娠中の女性の血小板数を計測したものです。

その結果、
特に合併症のない正常妊娠においても、
平均妊娠8.7週という妊娠初期においても、
血小板数の平均は25.1万と低下傾向が認められました。
(非妊娠女性の平均27.3万)
そして、この血小板の妊娠中の低下傾向は、
出産時まで持続していました。

合併症のない妊娠の出産時において、
9.9%の女性では血小板数が、
異常とされる15万未満となっていました。
ただ、病的な血小板減少とされる10万未満であったのは、
全体の1.0%に当たる45名のみでした。

このように、
これまでの知見とほぼ一致していることとして、
合併症のない正常妊娠ににおいても全体の10%程度で、
出産時に15万を切る血小板の低下が認められていましたが、
これまでの知見とは異なり、
その減少は妊娠初期で既に見られ、
10万を切るような事例は全体の1%程度でした。

要するに、
特に基礎疾患のない場合には、
15万程度までの血小板低下は、
病的なものではない可能性が高く、
特に妊娠の経過にも影響を与えませんが、
10万を切るようなケースは稀なので、
基礎疾患を含め精査を行う必要がある、
ということになるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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BMIと体脂肪量と死亡リスクとの関連について(身体組成からの検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMIと脂肪組成の論文.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
身体の脂肪組成とBMIから見た、
内臓脂肪と生命予後との関連についての論文です。

BMIというのはキログラムで表示した体重の数値を、
メートルで表示した身長で2回割り算して得られる数字で、
この数値が25以上であると過体重と判断され、
世界的にも30を超える状態は肥満と診断されます。

一般住民や心血管疾患の既往のない集団での疫学データにおいては、
BMIが20から24.9の間が最も死亡リスクが低く、
25を超えると総死亡のリスクも、
心血管疾患の発症リスクもいずれも増加に転じます。

しかし、その一方で心血管疾患を持つ患者さんの集団では、
BMIが20から24.9より高い、過体重や軽度の肥満の方が、
死亡リスクが低いという、
かなり意外な結果が複数報告されています。

これをBMIパラドックスと呼ぶこともあります。

何故、心血管疾患の患者さんでは、
体重が重い方が予後が良いのでしょうか?

以前ご紹介した論文では、
もう心筋梗塞などを発症したような状態においては、
内臓脂肪がある程度あった方が、
生命予後には良い影響があるのではないか、
という推論になっていました。

ただ、BMIが同じ数値であっても、
脂肪や筋肉の組成には差がある筈で、
それを測定すればまた別の結果が出るのではないか、
という推測もまた成り立つように思います。

今回の研究は医療関係者の男性の、
大規模な疫学データを活用して、
身体計測から体脂肪量や除脂肪体重を推計し、
平均で21.4年という長期の観察期間における、
死亡リスクとの関連を検証しています。

対象者は登録の時点で40から75歳の38006例で、
そのうちの12356名が観察期間中に死亡しています。

その結果、
総死亡のリスクは推定の脂肪量が21キロまでは、
有意な変化はなく、
それを超えると脂肪量が多いほど、
リスクは増加していました。
一方で筋肉量などを反映する除脂肪体重は、
それが56キロまでは多いほど総死亡のリスクは低下し、
それを超えると総死亡リスクは増加に転じていました。
BMIについて見ると、
これまでのデータとほぼ一致して、
25くらいを超えると総死亡リスクは増加していました。

その結果を図示したものがこちらになります。
BMIと死亡リスクと体脂肪量.jpg
一番上のAのグラフでは、
推計の脂肪量と総死亡リスクとの関係を見ています。
これを見るとほぼ線形に、
脂肪量が多いほど総死亡のリスクは増加しています。

その一方でBのグラフは、
除脂肪体重と総死亡のリスクとの関連を示していますが、
こちらは56キロくらいまでは、
増加するほど総死亡のリスクは低下し、
それを超えるとリスクは増加に転じています。

一番下のCのグラフは、
BMIと総死亡のリスクとの関係で、
これはお馴染みのU型のグラフになっています。

要するにBMIと総死亡との関係は、
内臓脂肪の量によって決まっているのではなく、
脂肪量自体は多いほどリスクは増加するのですが、
筋肉などの量の変化により、
総死亡のリスクが変化しているのではないか、
という結果になっているのです。

死亡の原因別に見てみると、
心血管疾患による死亡と癌による死亡は、
除脂肪体重が多くても少なくても増加しましたが、
呼吸器疾患による死亡のみは、
除脂肪体重が多いほどリスクが低下していました。

このようにBMIと死亡リスクとの関連が、
内臓脂肪によるものではなく、
むしろ筋肉量と関連しているという結果は大変興味深く、
今後肥満と健康との関連についても、
新たな考え方の端緒になる可能性を秘めているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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熱中症の話(2018年版) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日2本目の記事は熱中症の話題です。

今年は記録的な猛暑で、
熱中症の患者さんが急増していることは、
皆さんも良くご存じの通りです。

これまでに何度か取り上げていますが、
熱中症の基礎知識をまとめておきたいと思います。

熱中症というのは、ちょっと不思議な言葉ですね。

一昔前まで、同じことを表現するのに、
「熱射病」という言い方をしていたのを、
昭和生まれの方はご存知かと思います。

それでは熱中症と熱射病とは何処が違うのでしょうか?

一般的な意味合いでは、両者は同じ現象を表現した用語です。

昔は「熱射病」と言われていた言葉が、
「熱中症」に変わったのは、
2003年に日本神経救急学会の診断基準が発表され、
行政もそれに則った手引きを出したからです。

それ以前の用語では、
高温多湿の状態に置かれることにより、
引き起こされる病気の全体を、
暑熱障害(heat illness )と呼び、
その軽い状態が熱痙攣(heat cramp )、
中等度の状態が熱疲労(heat exhaustion )、
最も重症の状態を熱射病(heat stroke )と呼んでいました。

これが英語の直訳で分り難いとの意見が多く、
また本来は重症例のみを指す、
「熱射病」という言葉だけが、
全ての暑熱障害に対して使われるようになったので、
全体を「熱中症」とし、
それをⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分けるという分類が提唱されたのです。
英語は変わった訳ではないので、そのままです。
これはあくまで翻訳の変更に過ぎないのです。

さて、このうち一番軽症のⅠ度の熱中症とは、
こむら返りや立ちくらみ、めまいなどの症状のことです。
これを以前は熱痙攣(heat cramp )と呼んでいました。
これは主に脱水と電解質のバランスの乱れによる症状です。
人間の身体は一定の体温に保たれるような仕組みがあり、
その機能も一定の体温の範囲でのみ、
可能となるものです。

たとえば今の季節、
クーラーを消した車の中になどいれば、
簡単に中の温度は60度以上に達します。
この時、皮膚の表面の温度は急上昇しますが、
身体の中の温度が同じように上昇すれば、
大変なことになります。
血液の中には多くの蛋白質が存在しますが、
内面の温度が41度を超えれば、
蛋白は変性します。
要するに固まってしまうのです。
この状態が長く続けば、
細胞は正常の代謝を保つことが出来ず、
細胞は死んでしまいます。

ここで注意が必要なことは、
人間が自分で起こす発熱では、
そうした現象は通常起こらないということです。
風邪を引けば、熱も出ます。
測定上41度になることもありますが、
だからと言って、熱中症になる訳ではありません。
これはあくまで環境要因が主体で、
体温が強制的に上昇する時のみ、
起こり得る現象なのです。

人間が高温から身を守る主な手段は、
血液をなるべく皮膚の表面に分布させて、
熱を外に逃がし、
汗をかいて水を外に出して、
体温を下げることです。

ただ、汗を多くかけば、当然身体は脱水になり、
血液の量も減ります。
この時に水分や電解質が補充されなければ、
もう熱を逃がすことが出来なくなり、
状態は悪化するのです。

この血液が足りない状態の最初のサインが、
こむら返りやめまいの症状です。

従って、このサインを見逃さず、
涼しい場所で休憩を取って、
ポカリスエットのような電解質飲料で水分を補充すれば、
症状は速やかに改善し、
熱中症の進行は防げるのです。

ただ、往々にして、こんなことがあります。

小学生のお子さんが、
夏の盛りにサッカーの試合をしています。
途中でこむら返りを訴えるお子さんがいて、
先生はそのお子さんを日陰で休ませ、
水を飲ませて、足にマッサージをします。
そのお子さんはすぐに回復するので、
よしそれじゃ、と先生はそのお子さんを試合に戻します。

ところが…

その10分後にそのお子さんは意識を失い、
倒れてしまうのです。

一体、何が悪かったのでしょうか?

そう、先生はただの疲労によるこむら返りと判断したのですが、
これは実はⅠ度の熱中症だったのです。
一時的に回復したように見えても、
熱中症自体が治った訳ではありません。
その状態で運動を再開すれば、
当然より状態は悪化するのです。

熱中症の疑われる環境で、
運動中にこむら返りが起こったら、
たとえ症状はすぐに改善しても、
決してすぐに運動を再開してはいけません。

皆さんもご注意下さい。

湿度の高い環境であると、
それほどの高温でなくても、
熱中症は生じ易いと言われています。

それは何故でしょうか?

汗を掻くと皮膚に水が付きます。
その水分が蒸発すると気化により熱を奪うので、
皮膚温は下がるのです。
それが湿度の高い環境にあると、
水が気化出来ないため、
皮膚温が上昇し易くなるのです。

さて、Ⅰ度の熱中症が改善されないと、
病状は進行してⅡ度の熱中症になります。
めまいは悪化し、強い疲労感と共に、
頭痛や嘔吐、下痢などが起こります。
体温は概ね38度以上に上昇しています。
この状況で意識がなくなるのが、
Ⅲ度の熱中症です。
Ⅱ度とⅢ度の境界はあまり明確ではなく、
体温が38度以上に上昇して、
吐き気や疲労感が強ければ、
Ⅲ度に移行する可能性の高い状態と考えて、
厳重な経過観察が必要です。

この場合、意識がしっかりしていれば、
まず涼しい場所に運んで、
足を少し上げて、頭を低くします。
これは血圧が下がっている可能性が高いためです。
そして、洋服は脱がせて裸に近い状態にし、
脇の下や首筋、股に氷嚢や冷えピタを置いて冷やし、
皮膚には水を掛けます。
意識がはっきりしない徴候があれば、
即坐に病院に運びます。

熱中症への対応における、
幾つかの注意点です。

高血圧の薬は高熱の環境下では、
心臓の働きを抑える場合が多く、
精神科の多くの薬剤や風邪薬には、
抗コリン作用といって、
汗を出し難くする作用があります。
ゾニサミドのような抗痙攣剤にも、
汗をかき難くする作用があります。
従って、こうした薬剤を飲んでいる方は、
熱中症に掛かり易いと考えて、
通常以上の注意が必要です。

熱での順応には慣れがあります。
つまり、少しずつ身体を慣らしてゆけば、
同じ環境でも熱中症にはなり難くなるのです。
お仕事をされる場合には、
1日1時間程度から始め、
徐々に2週間くらいを掛けて、
お仕事時間を増やしていくのが予防に有効とされています。
また、1日2時間程度クーラーの効いた環境下に入ることで、
熱中症にはなり難くなる、
との報告もあります。

熱中症になり易いような環境では、
どのくらいの水分と電解質とを、
補充するのが望ましいのでしょうか?

一般に最大の発汗量は1時間に1.5リットル程度で、
この数値は年齢と共に低下します。
汗の中に含まれる塩分量は、
実際にはかなりの幅があり、
単純な推測は困難ですが、
概ね1リットル当たり2~3グラム程度と考え、
その半分くらいの量を、
補充することを心掛ければ、
深刻な事態にはならないと考えられます。

ポカリスエットの塩分は、
1リットルに1.2グラム程度。
医療用の経口補水液(OS-1など)では、
3グラムが含まれています。
経口補水液は薬局等で購入が可能です。
1人暮らしのお年寄りなどでは、
OS-1を1日500ml程度取るように、
というような指示が行なわれていますが、
これはまあ上記の理由で、
妥当なものなのです。
しかし、通常はポカリで代用しても大きな問題はありませんし、
食事が摂れている、という条件下であれば、
水やお茶のみで補充して、
後で塩分が濃い目の食事、
という順番でも別に問題はありません。

人間は基本的に血液より塩分が濃い汗は出さないのです。
汗をうんと掻くような条件下では、
当然ナトリウムより水分の方を、
より多く喪失します。
従って、軽度の熱中症の状態では、
まず水分を補充して、
それから塩分の補充という順番で、
考えて良いのです。
身体のナトリウム濃度は、
当然高い状態になっているからです。

問題は脱水を気にし過ぎて、
大量の水分だけを摂ってしまうことで、
この場合には血液が薄まって、
今度は本当に低ナトリウムの状態になってしまうのです。
スポーツドリンクや経口補液を、
予防的に使用することには注意が必要です。

水分補充はほどほどに、
というのが原則なのです。

意外に知られていませんが、
汗には結構カリウムも多く含まれていて、
汗を掻いた後にバナナが美味しいのはそのためです。
ただ、これもあまり神経質に、
カリウムの補充を考える必要はありません。

湿度が高く熱い日が続きますので、
皆さんも充分ご注意下さい。

今日は「熱中症」の総説をお届けしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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