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「万引き家族」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
健康教室のために午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
万引き家族.jpg
カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した、
是枝裕和監督の「万引き家族」を観て来ました。

昨年は「三度目の殺人」という、
サスペンス作品が話題となった是枝監督ですが、
この「万引き家族」はかつての「誰も知らない」に近いテイストで、
それぞれの思惑がありながら、
年金生活の老女の家に転がり込み、
それぞれ別個の生活を持ちながら、
偽物の「家族」として生活する、
3世代の男女の物語です。

基本ラインは「誰も知らない」と同じで、
親に見捨てられた兄と妹(ただし虚構の…)の物語なのですが、
「誰も知らない」が徹頭徹尾子供視点であったのに対して、
今回の作品はより重層的で、
同居するそれぞれの大人にも、
それぞれのドラマがある、という内容になっていて、
群像劇でありながら、
ありがちな薄っぺらで総花的な内容にはなっていない、
という辺りに是枝監督の成熟を感じます。
通常の倫理観から少し自由になっていると言う点と、
それに伴うある種の危うさのようなものは、
「誰も知らない」と同じです。

日本映画が取ったカンヌのグランプリと言うと、
「影武者」にしても「うなぎ」にしても、
決してその監督の代表作と言えるような出来栄えではなく、
功労賞的な意味合いを感じさせるようなものばかりでしたが、
今回の「万引き家族」は、
是枝監督の代表作で最高傑作と言っても、
全く誇大表現ではない完成度と熟成度のある作品で、
初めて本当の意味でグランプリにふさわしい日本映画が、
グランプリを取ったと言って良いように思います。

好き嫌いはあっても、
必見の作品であることは間違いがなく、
数年に1本という力作であることは、
これも間違いはないと思います。

ともかく是枝監督のこれまでの映画の、
良い要素はその全てがありますし、
全てが十全に練り上げられて、
一篇の映像詩として昇華されています。

映像は特に俯瞰と引きのカットが美しくて、
見えない花火を屋根の隙間から仰ぎ見るという、
技巧の極致のような場面も良い一方で、
雪道や駐車場などの、
さりげない俯瞰の効果がまた抜群なのです。
僕が特に気に入っているのは、
リリー・フランキーと安藤サクラさんが下着姿でそうめんをすすっていると、
にわかに空が暗くなって夕立になり、
その暗闇をきっかけとして2人が抱き合うワンカットで、
勿論天気を演出は出来ませんから、
特殊効果であることは間違いがないのですが、
極めて自然でエロチックで、
夏のあばら家の空気が感じられるような、
優れて映画的な名場面だったと思います。

キャストは全て名演と言って良いもので、
僕のある意味人生の目標でもあるリリー・フランキーさんは、
彼の人生最高と言って良い芝居をしていますし、
相手役の安藤さくらさんがまた艶っぽく良いのです。
昔の桃井かおりさんを超えたと思いました。
子役の達者さもそれはそれで良いですし、
かなり体当たり的な松岡茉優さんも、
彼女ならではの心に染み付くような芝居でした。
樹木希林さんはもう自然体の極致ですが、
パチンコ屋でずるをした時の凄味のある笑いなどは、
それを切り取った監督もさすがですが、
戦慄的な思いすら感じました。

ラストは例によって、
観客の期待を鮮やかに裏切って、
映画という虚構をなで斬りにするように終わるのですが、
こうした趣向が失敗することも多々ある中で、
今回のラストは、
観客が次の何かを期待し切望する一瞬をなで切ることで、
「ここからは皆さんが物語を紡ぐ番です」
と言われているようで、
なかなかの切れ味であったと思いました。

色々と作品外で物議もかもしている本作ですが、
一個の作品として素晴らしいことは間違いがなく、
是非是非見逃さないで頂きたいと思います。

日本映画的な、
あまりに日本映画的な傑作です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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