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胃痛(ディスペプシア)の診療ガイドライン(2018年アメリカ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ディスペプシアの治療.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
アメリカの胃痛についての診療ガイドラインの解説記事です。

ディスペプシア(Dyspepsia)は、
消化不良や胃もたれなどと訳されることがあり、
そうしたお腹の不快感を総称する言葉として、
一般的には使用をされていますが、
ここで医学用語として使用されているディスペプシアは、
1か月以上続く胃痛(心窩部痛)のことで、
それは胸やけや膨満感、吐き気などを伴っても良いのですが、
症状の中で最もつらいのが痛みである時に、
この用語を用いると、
アメリカとカナダの合同の消化器学会の、
ガイドラインでは記載をされています。
http://gi.org/wp-content/uploads/2017/06/ajg2017154a.pdf

胃痛というのは極めて一般的な症状で、
日本においては年齢には関わらず、
症状が持続するようなら胃カメラ検査が、
検討されることが多いと思います。

ただ、欧米では少し考え方は異なっています。

上記の解説記事の記載によれば、
年齢が60歳以上であれば、
一か月以上持続する胃痛は胃癌などを否定するために、
胃カメラ検査の適応になると、
弱い推奨として提言されていますが、
年齢が60歳未満である場合には、
たとえ体重減少や貧血などを合併していても、
すぐに胃カメラ検査をすることは推奨されていません。

これは18から70歳の年齢で、
胃痛の症状に対して胃カメラ検査を適応しても、
悪性腫瘍の発見率は0.22%と低く、
また悪性を疑う所見とされる貧血や体重減少の信頼性も、
高いものではないことが報告されているためです。

ただし、これは欧米に限った話で、
日本を含むアジアでは、
胃癌の有病率はより高いと指摘されているので、
日本において同様の基準を当て嵌めることは、
適切ではない可能性があります。

一方で60歳より若い年齢で胃痛が持続する時に、
必ずするべき検査として推奨されているのは、
ピロリ菌の感染診断のための検査です。
ピロリ菌が陽性であれば除菌をすることにより、
胃痛は改善する可能性があり、
この治療はそのコストに見合ったものとして評価されています。

裏打ちとなるデータとしては、
機能性ディスペプシアのメタ解析において、
ピロリ菌陽性で除菌を行なわない場合、
胃痛症状は76.4%で持続したのに対して、
除菌治療を行なうと67.9%に低下した、
というものがあります。
この症状に対する治療効果は、
胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害剤の効果と、
ほぼ同等と報告されています。

ピロリ菌が陰性の胃痛と、
ピロリ菌が陽性で除菌後も持続する胃痛に対しては、
年齢が60歳未満であればプロトンポンプ阻害剤の使用が推奨されています。
この裏打ちとなる臨床データとしては、
プロトンポンプ阻害剤の4週間の治療は、
偽薬と比較して27.8%、H2ブロッカーと比較して15.5%、
有意に胃痛症状を改善していた、
というものがあります。

ただ、プロトンポンプ阻害剤は、
長期の使用において感染症リスクの増加や、
急性の腎障害の増加など、
多くの副作用や有害事象のある薬でもあり、
その長期使用の安全性や高齢者への使用については、
今後より検証される必要があると思います。

日本においては前述のように、
欧米より胃癌の有病率は高いので、
胃カメラ検査の適応については、
上記のガイドライン通りでは良くないと考えますが、
かと言って今のように、
すぐに胃カメラ、というのもあまり合理的とは言えず、
今後日本においても、
より地域性に合った、
合理的で有効性の確認された基準が必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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