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高齢者低血糖時グルカゴン反応に対するDPP4阻害剤の影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
DPP4阻害剤と低血糖高齢者.jpg
2018年のDiabetes Obes Metab誌に掲載された、
65歳以上の高齢者糖尿病における、
低血糖時のホルモンの反応が、
糖尿病の薬によりどのように影響されるのかを検証した論文です。

これは今少しトピックとなっているテーマの1つです。

今糖尿病の治療薬として、
大きな柱となっているのがインクレチン関連薬です。

「インクレチン」とは一体何でしょうか?

インクレチンとは、
小腸から分泌される一種の消化管ホルモンで、
主に膵臓の細胞を刺激して、
インスリンを出させる作用を持っています。

インスリンを出させる、
最も強い刺激は、
勿論ブドウ糖です。

食事を取ると、その中の糖分が、
吸収されて血液に入り、
膵臓の細胞の中に入ると、その刺激が、
膵臓の細胞からインスリンというホルモンを出させるのです。
このインスリンが筋肉の細胞などに、
ブドウ糖を使わせる作用があるので、
ブドウ糖は速やかに細胞の中に入って利用され、
上がった血糖は正常に戻るのです。
このインスリンが足りなくなったり、
その効きが悪くなって、
余分な糖分が血液に増える病気が、
皆さんお馴染みの糖尿病です。

さて、ブドウ糖がインスリンを刺激するのは当然ですが、
食事をすると同時に小腸からは、
インクレチンという物質が分泌され、
それが膵臓の細胞にくっつくと、
その刺激も矢張り、インスリンを出させる作用があるのです。

つまり、インクレチンとは、ブドウ糖以外に、
食事に伴って分泌され、
膵臓のインスリンを出させる物質のことです。

インクレチンにはGIP(glucose-dependant insulinotropic polypeptide )と、
GLP-1(glucagon-like peptide-1 )の2種類があります。

このうちGLP-1 は、
小腸の下の方や大腸の一部から分泌され、
GIP は十二指腸から分泌されます。

どちらのホルモンも、食事の刺激があると、
分泌されて膵臓を刺激し、
インスリンを出させる作用は同じです。
また、膵臓の細胞を増加させる作用も、
共に持っていると言われています。
インクレチンは、膵臓の、一種の再生因子なのです。

ただ、GLP1が血糖値の高い時に、
膵臓α細胞からのグルカゴンの分泌を抑制する作用がある一方で、
GIPは低血糖時のグルカゴン分泌を促進すると報告されています。

GIPのこの作用は、
血糖の上昇に結び付く可能性がある一方で、
糖尿病薬に付きものの副作用である、
低血糖を予防するような効果があるとも思われます。

インクレチン関連薬にはDPP4阻害剤とGLP-1アナログの2種類があります。

DPP4阻害剤は飲み薬で、
DPP4というインクレチンなどを代謝する酵素を阻害して、
結果としてインクレチンの作用を増強する、
というタイプの薬です。
一方でGLP-1アナログは注射薬で、
インスリンのようにGLP-1そのものを注射します。

ここでお分かりのように、
同じインクレチン関連薬でも、
DPP4阻害剤はGIPとGLP-1を共に増加させ、
GLP-1アナログはGLP-1のみを増加させる、
という違いがあります。

この違いや薬の効果や安全性に、
何か影響を与えるものなのでしょうか?

糖尿病の患者さんの長期予後を改善する上で、
食後のグルカゴンの上昇を極力抑えることと、
医原性の低血糖を起こさないことが、
2型糖尿病の患者さんの管理においては重要なことです。

ここでインクレチン関連薬は、
高血糖時にのみインスリン分泌を促進する性質があるため、
低血糖を起こしにくいことが期待されています。
特にDPP4阻害剤はGLP-1だけではなくGIPも増加させるため、
低血糖時にグルカゴンの上昇反応を、
刺激するという可能性も想定されます。

グルカゴンはインスリンに拮抗するホルモンで、
その上昇は糖尿病の合併症などの進行に、
大きな影響を与えると考えられ、
最近ではインスリンより糖尿病の病態に本質的な役割を持っている、
というような意見もあります。
その一方で低血糖時に速やかにグルカゴンが上昇することが、
重症な低血糖の予防に、
これも非常に重要な役割を果たしています。

ただ、これまでの研究においては、
低血糖時のグルカゴン上昇の反応に、
DPP4阻害剤とGLP-1アナログで特に差はない、
という結果が多いのです。

今回の研究はスウェーデンにおいて、
血糖降下剤の副作用の低血糖のリスクが高い、
65歳以上の高齢の2型糖尿病患者で、
メトホルミンによる治療を行って、
コントロールの指標であるHbA1cが6.0から8.3%の28名を対象として、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はDPP4阻害剤のシタグリプチン(商品名ジャヌビア、グラクティブなど)
を1日100ミリグラムで1回で上乗せ使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
4週間の治療を行い、治療終了後に、
朝食負荷によるインスリンやグルカゴンの反応と、
人工膵臓を活用して人工的に低血糖を誘導し、
低血糖時のグルカゴンの反応を比較検証しています。
更に4週間の未使用期間をおいて、
両群を入れ替えて同じ検証を再度施行しています。

その結果、
食後のグルカゴン濃度の上昇と、
血糖値が3.5mmol/L(63mg/dL)の時点でのグルカゴン濃度は、
偽薬と比較してDPP4阻害剤使用時には抑制されていましたが、
血糖値が3.1mmol/L(56 mg/dL)の低血糖の時点では、
グルカゴン濃度には両群で差はありませんでした。

今回の検証ではDPP4阻害剤を上乗せした方が、
低血糖時のグルカゴン上昇が促進される、
という結果は得られませんでしたが、
高血糖時のグルカゴン分泌を抑制して、
患者さんの長期予後の改善に結び付く可能性があり、
低血糖時のセイフティガードとしてのグルカゴンの上昇にも、
悪影響を及ぼしていないという点から考えて、
高齢者に適した糖尿病治療薬であるというこれまでの見解を、
サポートする知見であると言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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