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アトピー性皮膚炎と心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アトピー性皮膚炎と心血管疾患リスク.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
アトピー性皮膚炎と心血管疾患リスクについての論文です。

アトピー性皮膚炎は、
アレルギー素因(アトピー素因)を元に発症する皮膚の炎症で、
皮膚のバリア機能の低下と、
免疫機能の低下を伴います。
世界的には成人の1割に達するほどその罹患者は多く、
しかも増加を続けているとされています。

アトピー性皮膚炎による全身の皮膚の炎症性変化は、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の、
発症リスクにもなるのではないか、
という見解があり、
実際にそうしたことを示唆する疫学データも、
これまでに複数報告されています。
ただ、データによってもそのリスクにはばらつきがかなりあり、
アトピー性皮膚炎の重症度などが、
データに反映されていないという批判がありました。

そこで今回の研究では、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用して、
成人のアトピー性皮膚炎の患者さんを、
年齢、性別、全身状態などをマッチさせたコントロールと比較して、
アトピー性皮膚炎の重症度と心血管疾患リスクとの関連を検証しています。

この場合のアトピー性皮膚炎の重症度というのは、
強力なステロイドを長期間処方されているなどの、
診断や入院、処方のデータを元にして分類されています。

387439名のアトピー性皮膚炎の患者さんを、
1528477名のコントロールと比較して解析したところ、
中間値で5.1年の観察期間において、
10から20%の有意な心血管疾患の発症リスクの増加が、
アトピー性皮膚炎の患者さんでは認められました。

この心血管疾患リスクはアトピー性皮膚炎の重症度と関連していて、
重症のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、
脳卒中のリスクが1.22倍(95%CI; 1.01から1.48)、
心筋梗塞や不安定狭心症、心房細動、心血管疾患による死亡のリスクは、
いずれも相対リスクで40から50%増加していて、
心不全のリスクは1.69倍(95%CI: 1.38から2.06)と有意に増加していました。
他の心血管疾患のリスクで補正すると、
そのリスクは小さなものにはなりましたが、
矢張り重症のアトピー性皮膚炎については、
有意なリスクの増加が認められていました。

このように、
アトピー性皮膚炎が少なからず心血管疾患と関連している、
というのはほぼ間違いのない事実で、
今後はその治療やコントロール状況が、
そのリスクにどのような影響を与えているのか、
心血管疾患の予防をどう考えるべきなのかに、
その関心は移りつつあるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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タクロリムス軟膏(プロトピック)で白斑を治療する [医療のトピック]

こんにちは。

北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は特殊健診や産業医面談がある予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
白斑の治療論文.jpg
2018年のJAMA Dermatology誌に掲載された、
白斑を免疫抑制剤の軟膏で治療した症例を紹介した論文です。

白斑(尋常性白斑)というのは、
皮膚が部分的に白く抜けてしまう状態で、
皮膚の基底層に分布する色素細胞(メラノサイト)が、
何らかの原因で減少消失することにより起こります。

原因は不明ですが、
自己免疫的機序によって、
メラノサイトに対する抗体や、
細胞障害性T細胞がメラノサイトを攻撃する、
という可能性、
またそれ以外の原因による細胞障害などが、
その原因として推測されています。

白斑の治療は、
ステロイドの外用剤と、
紫外線による光線療法の単独もしくは併用が、
主に施行されています。

ただ、光線療法は有効である反面、
再発も稀ではありませんし、
長期の使用においては、
目の周囲では白内障のリスクを高め、
皮膚癌のリスクも高めることが知られています。
ステロイドは小さな病変には一定の有効性がありますが、
長期使用では皮膚を萎縮させます。

タクロリムスは免疫抑制剤の一種で、
その外用剤(商品名プロトピック)は、
アトピー性皮膚炎の治療薬として保険適応されています。

このタクロリムスの細胞障害性T細胞の抑制作用は、
自己免疫疾患の可能性が高い白斑にに対しても、
一定の有効性がある可能性があり、
これまでにも有効性の報告があります。

ただ、その効果は必ずしも確立されたものとは言えません。

今回の症例報告では、
著効と判断された3例を報告しています。
白斑改善の画像.jpg
著効した3例のうちの2例の画像です。
上の2枚は唇の周辺の白斑で、
下の2枚は瞼の部分の白斑です。
治療前後の画像の色調がかなり違うのが難点ですが、
タクロリムス軟膏(0.1%)の4ヶ月間の使用により、
白斑が著明に改善した、と記載されています。

特に瞼の白斑は、
光線療法が白内障のリスクのため施行不可であるので、
より意義のあるものなのです。

タクロリムス自体にも動物実験では発癌性の指摘があり、
現行の他の治療より安全とは言い切れないのですが、
白斑治療の1つの選択肢として、
その有効性や安全性、他の治療との併用の可能性などにつき、
今後も臨床知見の蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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苦いカボチャによる脱毛症 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
カボチャで脱毛.jpg
2018年のJAMA Dermatology誌の短報(レター)ですが、
苦いカボチャの中毒で脱毛が生じたという、
ちょっと興味深い症例報告です。

一部の植物毒の影響で、
成長期脱毛と呼ばれる一時的な脱毛症が、
生じることは以前から知られています。
ただ、原因となる植物やイヌサフラン、
ユリグルマ、パラダイスナッツなど、
一般の人があまり口にはしないような植物です。

今回の報告では、
通常はあまり脱毛症の原因とはならないカボチャで、
成長期脱毛の生じた事例が2例紹介されています。

1例目は苦いカボチャのスープを飲んで、
数時間で嘔吐や下痢などの中毒症状を起こした成人女性で、
消化器症状は1日で改善したものの、
それから1週間くらいしてから脱毛が生じています。
一緒に食べた家族も消化器症状はありましたが、
脱毛は生じていません。
患者は2か月後に皮膚科を受診し、
後半な脱毛を認めていましたが、
2センチ程度の毛が既に再生し始めていました。

2例目は苦いカボチャを含む食事を摂取してから、
1時間でひどい吐き気と嘔吐が起こり数時間持続した、
これも成人の女性の事例です。
その3週間後に頭のみならず外陰部も脱毛し、
半年後の回復期の画像がこちらです。
カボチャで脱毛の画像.png
脱毛からの回復部位は6センチの短い毛髪となっていて、
6センチを超える毛髪では、
末端から6センチの位置に、
白い結節が認められ、その部位が脆くなっています。
後天性結節性裂毛症と呼ばれる所見で、
毛髪に物理的な刺激があった時などに生じるものです。

この2例では苦いカボチャを食べた後で、
食中毒と思われる消化器症状の後、
時間差を置いて脱毛が生じています。
食中毒の原因はウリ科の植物の苦み成分に含まれている、
ククルビタシンという一種のステロイドにあります。
この成分は食中毒様の症状を起こすことが知られています。

通常食用のカボチャなどでは、
品種改良によりククルビタシンは、
殆ど含まれていないとされていますが、
自然種の遺伝子が交配されるなどして、
ククルビタシンが多く含まれているカボチャが、
混じってしまうことがあります。

ククルビタシンには強い細胞毒性があるので、
その影響により成長期脱毛が起こってもおかしくはありません。
ただ、通常は嘔吐や下痢などの消化器症状は知られているものの、
脱毛のまとまった報告は、
今回が初めてのようです。

ゴーヤの苦みは別の成分なので問題はありませんが、
カボチャやキュウリなどのウリ科の野菜や果物で、
非常に苦みが強い場合には、
ククルビタシンが多く含まれている可能性があるので、
食べるのを控えるのが賢明であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ため息とそのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ため息のメカニズム.jpg
2016年のNature誌に掲載された、
ため息のメカニズムを解明した論文です。

ため息というのは特殊なパターンを持つ、
深くて大きな単発的呼吸のことですが、
自覚的には緊張の緩んだ時や退屈な時、
悲しみに心が乱れた時などに出るという特徴があります。

ただ、こうした時のみにため息は出ている訳ではなく、
哺乳動物では定期的に、
このタイプの呼吸が通常の呼吸の合間に、
出現していることが知られています。

その頻度は人間で1時間に12回(5分に1回)くらいで、
ネズミでは1時間に40回くらいです。

ため息は通常の呼吸と比較して、
どのような特徴があるのでしょうか?

実はため息をすることにより、
縮んだ肺胞が拡張し、
呼吸機能が改善することが確認されています。
通常の呼吸のみを継続していると、
徐々に肺胞が縮んで、
呼吸機能は低下してしまいます。
それをリセットして肺胞に空気を送り込むような働きが、
ため息タイプの呼吸にはあるのです。
このために哺乳動物は定期的に、
ため息を吐いているのです。

ため息はそのために、
低酸素状態で呼吸機能が低下すると、
それに伴って刺激されその数が増加します。

何故感情的に落ち込んだときや悲しい時、
緊張が取れてほっとした時などに、
このため息が起こるのかは明確には分かっていません。

一種のリラクゼーションの効果があるのでは、
というような推測は可能ですが、
それが習慣化したことの原因は、
自律神経のバランスが元に戻る、など、
もっともらしい説明はあるものの、
特に実証されたようなものではないようです。

上記論文はそれまで詳細が不明であった、
脳におけるため息の発生メカニズムを、
ネズミの実験で明らかにしたもので、
脳の髄質に存在している2種類の小さな神経細胞群が、
プレベツィンガー複合体と呼ばれている呼吸リズムの中枢と、
関連するネットワークを形成していて、
その2種類の細胞群から呼吸リズム中枢への信号が遮断されると、
1種類の遮断によりため息の回数が減少し、
2種類の遮断により完全にため息が消失する、
ということが実験的に確認されました。

ただ、この2つの神経細胞群からの信号が遮断されても、
通常の呼吸自体のリズムには、
特に変化は見られませんでした。

このように通常の呼吸リズムを作る中枢があり、
そこにため息を差し挟むためのボタンのような仕組みが存在していて、
おそらく感情の変化がその部位を刺激するために、
低酸素など本来の目的以外でも、
ため息のシステムが作動して、
ため息が起こるという可能性が示唆されました。

現時点で感情とため息との正確な関連は、
まだ明らかではありませんし、
これは敢くまで動物実験に留まるものですが、
ため息のメカニズムが明確になった意義は大きく、
今後の研究の進歩にも期待したいと思います。

今日はとても不思議な、
ため息のメカニズムについての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ウィンストンチャーチル.jpg
ゲイリー・オールドマンが凝ったメイキャップと演技で、
あまり似ているようには思えないチャーチルを演じ、
アカデミー賞の主演男優賞とメイクアップ賞を受賞した、
2017年のイギリス映画を観て来ました。

これはまあ、日本語の題名の通りで、
第二次大戦の初期、
ヒトラーが破竹の進撃でヨーロッパを席巻していた時に、
徹底してヒトラー嫌いで、
ヒトラーとの交渉を拒否し、
ドイツとの戦争を主張して民意をとらえた、
チャーチルの活躍を、
100%肯定的に捉えた戦意高揚映画です。

これは何か個人的にはひどいな、
と感じました。

結果としてはチャーチルが正しかった訳ですが、
相手がヒトラーだから絶対に譲歩も交渉もせず、
たとえ戦局が不利と思えても、
徹底して武力で戦い抜くというのが正義で、
いやいや交渉の余地も少しは残すべきだという、
穏健的な意見が全て悪という考え方は如何なものでしょうか?

そうなのかも知れないのですが、
ちょっとモヤモヤしてしまいます。

最初はチャーチルには政局は不利で、
ドイツと交渉しようという意見が大半だったのですが、
それが反転したのは、
1つは国王のジョージ6世がチャーチルに味方したことと、
世論が熱狂的に戦争を支持したことで、
その描き方としては、
迷ったチャーチルが1人で町に出て、
ロンドンで地下鉄に乗り、
そこで乗り合わせた庶民の皆さんと対話をして、
「ヒトラーと話し合いなんかするな、戦え!」
という意見が民意だと確信したからだ、
という流れになっています。

これはどうでしょうか?

良く悪し様に言われることの多い、
大衆への安易な迎合そのものではないでしょうか?

実際にはもっと客観的な戦況分析とか、
そうしたものが裏打ちとしてあったのだと思うのですよね。
しかし、この映画には全くそうしたことは描かれないで、
ただ勢いで戦争しろ、苦しくても最後まで戦え、
如何なる犠牲を払っても戦え、
というメッセージがあるだけです。
こんな描き方で良いのでしょうか?

はなはだ疑問です。

全体に丁寧な作りで退屈はしませんし、
演技陣は頑張っていると思いますが、
戦闘シーンなどもほぼ皆無で、
ひたすらウジウジした政局だけが描かれているので、
とてもテンションは上がりません。

オールドマンの芝居も、
作り込みが強すぎて、
人工的な上にとても汚らしいので、
個人的にはゲンナリでした。
でもこういうのが賞を取る演技なんですよね。

世界の一般的な意見が、
こうした映画に単純に拍手喝采するようなものだとすると、
絶望的な気分にもなりますが、
まあでもトルストイの「戦争と平和」も、
ヒューマニズムの金字塔のようで、
実際には戦意高揚小説ですし、
ヒューマニズムというのは、
結局は「悪」を見つけてそいつを殺すという、
戦争賛美と表裏一体のものなのかも知れません。
平和主義とか人道主義とかと言うのは、
「悪」を見つけるまでの、
束の間の休憩みたいなものなのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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岩松了「市ヶ尾の坂ー伝説の虹の三兄弟」(2018年再演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
市ヶ尾の坂.jpg
1992年に竹中直人の会で初演され、
当時から非常に世評の高かった、
岩松了さんの代表作の1つ「市ヶ尾の坂」が、
何と26年ぶりに再演されました。

その間別の演出家による再演はありましたが、
岩松さん自身の演出による再演は今回が初めてです。

これは凄い芝居なんですよね。

岩松さんの劇作は、
何気ない日常会話だけを淡々と連ねながら、
そこに別個の感情や心理を、
見えないように忍ばせて物語りが進行し、
それがラストになって急に目に見える形に浮上して、
観客に衝撃を与えるという構成が特徴です。

それが結構急な暴力であったり、
事件であったりする作品もあるのですが、
この「市ヶ尾の坂」では本当に最後まで、
劇的と称されるようなことは何も起こらず、
物語にちりばめられた謎が、
明らかになるようなことも何もありません。

それじゃ日常と同じで、
何も面白いことはないじゃないか、
と思われると思いますし、
凡百の劇作家が描けば、
そうなってしまうと思うのですが、
そこがそうはならないのが、
岩松さんの天才たる所以です。

この作品はラストが凄いんですよね。
それも、階段を女性が1人降りてくる、
というただそれだけのことなんです。
本当にそれだけなのに、
それがとてつもなく衝撃的で戦慄的で、
何か物凄いものを見た、
という気分にさせてくれます。
これは本当に見事なラストだと思いますし、
ちょっと演劇史の中でも、
あまり類例のないような場面ではないかと思います。

真面目にこのラストを見るだけで、
この作品を観る値打ちは充分にあると思います。

ただ、今回の再演に関しては、
台本が竹中直人の会に対するかなりあて書き的なものなので、
その点に違和感を感じる部分はありました。

初演の3兄弟は竹中直人、田口トモロヲ、温水洋一という、
極めて濃いおじさんメンバーですから、
26年前で皆さん若いとは言え、
それでもイメージ的には得体の知れないおじさん三兄弟であったのですが、
今回はそれを大森南朋、三浦貴大、森優作という、
とてもすっきりしたメンバーで演じていて、
特に幼児性のあるような三男のイメージが、
本当の少年のようなイメージに置き換わっているので、
全体のムードはかなり初演とは異なるものになっています。

それは岩松さんの狙いでもあるので、
それはそれで良いと思うのですが、
大森南朋さんの芝居は、
明らかに竹中直人さんが透けて見えるようで違和感がありますし、
四角い顔のお手伝いさんというのは、
これはもう初演の片桐はいりさんへの当て書きそのものですから、
それを他の女優さんが演じるのは、
それが手練れの池津祥子さんであったとしても、
かなり無理があるようには感じました。

まあでも現代小劇場を代表する素晴らしい戯曲であることは、
これはもう間違いがありませんし、
岩松さんの演出も普段より少し演出を華やかにしながらも、
前半は敢えて退屈さを出して観客の眠りを誘いつつ、
ラストでそれを後悔させる凄味を見せる、
ある種の意地悪さがさすがですし、
岩松さんの演出に載った麻生久美子さんの芝居が、
また格別に素晴らしくて、
これも惚れ惚れするような気分になったのです。

いずれにしても岩松さんの代表作が、
今回本人の演出で再演されたことは、
この上もなく貴重な機会で、
これはもう小劇場演劇がお好きな方であれば、
「これを見ずに死ねるか」と言っても、
決して大袈裟ではないのです。

皆さんも是非。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(追記)
この舞台の3場の終わりに流れるレコードの曲名を、
どなたかご存知はないでしょうか?
あのチークダンスを踊る奴です。
これは唐先生の「二都物語」のオープニングに流れたんですよね。
気になって気になって仕方がありません。

(再追記; 平成30年5月31日午前6時)
曲が気になったのと、
初見でよく分からないところがあったので、
無理をしてもう一度観に行きました。
パンフレットに岩松さんの記載があって、
曲はスタイリスティックスの「From the mountain」と判明しました。
唐先生はこの前奏だけを、
リピートで使っていました。
芝居はより練れていて、
掛け値なしに素晴らしいものでした。
坂の上と下で時間が移動していたり、
家の2階が無意識の欲望を解放していたり、
この作品は唐先生的なところもあります。
坂の上と下とを象徴的に使うのは、
「秘密の花園」と「海の牙」でありましたよね。
松葉杖は僕には「ジョン・シルバー」
のオマージュであるようにも感じられました。
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大腸癌の治癒切除後のフォローアップ間隔と予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
大腸癌の手術後の経過観察の頻度.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
大腸癌の治癒切除後のフォローアップの頻度についての論文です。

大腸癌の患者さんの3分の2は、
癌が固有筋層を超える進行癌ではあるものの、
遠隔転移はないⅡ期もしくはⅢ期の癌です。

Ⅱ期もしくはⅢ期の大腸癌の多くは、
治癒切除が可能ですが、
切除後の再発も稀ではないため、
定期的な検査などによるフォローアップが行われます。

ただ、
そのフォローアップをどの程度の間隔で、
どのような検査を組み合わせて行うことが、
最も有効であるのか、
というような点については、
国や地域によっても考え方は様々で、
世界的にスタンダードな方法が、
決められているという訳ではありません。

そこで今回の研究では、
1から2年に一度というフォローアップと、
半年に一度というより頻回の経過観察とを比較して、
その予後に与える影響を比較検証しています。

対象はスウェーデン、デンマーク、ウルグアイの24の専門施設で、
Ⅱ期もしくはⅢ期の大腸癌で治癒切除を受けた、
2509名の患者さんで、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は術後6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、36ヶ月で、
腫瘍マーカーのCEAと胸腹部のCT検査を施行し、
もう一方は同様の検査を、
12ヶ月と36ヶ月でのみ行います。
そして、術後5年の時点での両者の予後を比較するのです。

その結果、
患者さんの5年の時点の死亡率は、
2回のみの検査で14.1%、5回の検査で13.0%で、
有意は差は認められませんでした。
大腸癌による死亡リスクでみても、
2回のみの検査で11.4%、5回の検査で10.6%と、
これも統計的な差は認められませんでした。
その間の大腸癌の再発率は、
2回のみの検査群で19.4%、5回の検査群で21.6%と、
これも殆ど差はありませんでした。

このように、
治癒切除後であっても、
5年で2割の患者さんは再発している訳ですから、
術後の経過観察の必要性は間違いがないのですが、
通常の検査を間隔を詰めて行っても、
結果としては再発率や生命予後には、
差は認められませんでした。

この問題は必ずしも統計的な差のみで、
決定出来るような事項ではないと思いますが、
検査の内容など、
今後より多角的な検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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小児甲状腺癌は超音波検査でどの程度鑑別可能なのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
カラードップラーと小児甲状腺癌.jpg
2018年のthe Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌に掲載された、
小児甲状腺癌の超音波診断の正確性についての論文です。

甲状腺癌の診断は、
超音波検査が最も有用で、
超音波検査により悪性が疑われた場合に、
皮膚から針を刺して甲状腺の細胞を採取する、
穿刺吸引細胞診が行われて、
悪性の疑われる細胞が確認されるか、
その可能性が否定出来ない場合に、
手術などの治療が検討されます。

成人においては、
これまでの大規模な研究の結果として、
嚢胞性の部分を含み、正常な甲状腺組織とほぼ同じエコーレベルで、
石灰化や腫瘍境界の不鮮明化、横幅に比べて縦(厚み)が大きい、
甲状腺外へ広がりが見られる、
などの悪性所見が見られなければ、
そのしこりが悪性である可能性は、
10%未満であることが分かっています。

そのために現行のアメリカ甲状腺学会のガイドラインでは、
上記のような悪性の疑いが低いしこりでは、
大きさが1.5センチを超えない限り、
穿刺吸引細胞診を行なう必要性は低い、
という判断が示されています。

ただ、これはあくまで成人の場合です。

小児(通常18歳以下)においては、
甲状腺に発見されたしこりが悪性である比率は、
成人が5から10%程度であるのに対して、
22から26%の高率であると報告されています。

その点を勘案して現行のアメリカのガイドラインでは、
小児の甲状腺腫瘍は、
悪性を疑わせる所見が1つでもあれば大きさに関わらず、
充実性か部分的に嚢胞性の腫瘍で悪性所見がなくても、
大きさが1センチ以上であれば、
穿刺吸引細胞診の適応とされています。
ただ、この記載の根拠は実際には精度の高い臨床データが、
存在しているという訳ではありません。

小児の甲状腺腫瘍の穿刺吸引細胞診の適応は、
成人のデータからの推測による部分が大きいのです。

今回の研究はその点をより明らかにしようとしたもので、
経過の分かっている小児の甲状腺腫瘍236個を、
2人の経験のある放射線科医に、
ブラインドで超音波所見の読影を依頼し、
どのような所見が悪性の診断と関連が深いのかを検証しています。

その結果、
腫瘍の大きさや石灰化などの悪性所見、
嚢胞部分の比率やエコーレベルなどの指標により、
悪性や良性かの診断を行なったところ、
総合的にみると癌のうちで癌と診断される確率(感度)は58.7%
(95%CI: 46.7から69.9)、
癌でない場合に癌でないと診断される確率(特異度)は91.6%
(95%CI: 85.8から95.6)、
悪性の診断の的中率は78.6%
(95%CI: 65.6から88.4)、
良性の診断の的中率は80.9%
(95%CI: 74から86.6)と計算されました。

個々の所見でみると、
その腫瘍で嚢胞性の部分が25%を超えていることと、
エコーレベルが甲状腺組織と変わらないこと、
そしてドップラーで血流信号が見られないことが、
最もそのしこりが良性である根拠となると、
判断されていました。

成人のしこりにおいては、
良性と診断された場合に、
悪性である確率が10%未満であることが、
穿刺吸引細胞診を行なわない、
1つの指針となっていましたが、
今回の小児甲状腺腫瘍の検証では、
良性の診断の的中率は80.9%とやや低く、
それだけでは細胞診を行なわない、
充分な指標とはなっていない、
ということが分かりました。

今後成人と小児のしこりの診断上の違いを勘案して、
より信頼性の高い指標の確立が望まれるところだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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甲状腺ホルモン補充療法の適正用量と脳機能について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
チラヂンの量と脳機能.jpg
2018年のthe Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌に掲載された、
甲状腺機能低下症における、
甲状腺ホルモンの補充量と脳機能との関連についての論文です。

甲状腺ホルモンが不足すると、
脳の機能に影響があることは、
実験的にも臨床的にも間違いのない事実ですが、
軽症や潜在性の甲状腺機能低下症と、
臨床的に判断されるような状態であっても、
そうした影響があるかどうかについては、
まだ議論のあるところです。

甲状腺に原因のある甲状腺機能低下症の場合、
その重症度は通常血液のTSH(甲状腺刺激ホルモン)濃度で判断されます。

機能低下が強いほど、
TSH濃度は上昇しますから、
その数値が高いほど、
甲状腺機能低下の程度も重い、
ということになる訳です。

通常このTSHの基準値というのは、
0.5から4.0mU/Lくらいで設定されています。

甲状腺以外には病気がないという前提で考えると、
0.5未満であれば機能亢進に傾いている、
という判断になりますし、
4を超えていれば機能低下に傾いている、
という判断になります。

明確な機能亢進であれば甲状腺ホルモン自体の数値も上がりますし、
明確な機能低下であれば下がりますが、
軽度の機能亢進や機能低下では、
TSHは変動しても甲状腺ホルモンの変動は、
まだないか軽微なものにとどまります。
この状態を潜在性甲状腺機能異常、
というような言い方をすることもあります。

通常1つの目安として、
TSHが10を超えていれば、
ホルモンの補充療法が開始されることが一般的です。

ただ、それより軽症の機能低下症であっても、
患者さんがだるさなどの症状を訴え、
それが甲状腺の機能低下から起こっている可能性が、
高いと判断されるような場合には、
治療が開始されることもあります。

ここは医者によっても意見の分かれるところで、
検査至上主義の先生は、
TSHが一定の基準値内にあれば、
「甲状腺が原因の症状ではありえない」
という判断をして患者さんが体調不良を訴えても、
決して甲状腺ホルモン剤の使用はしません。
その一方で症状を重視するタイプの先生は、
軽度の異常であっても、
まずはホルモン剤をリスクのない範囲で使用してみて、
症状の改善の有無をみて継続するかどうかを判断する、
というような方法を取っています。

このどちらが良いのかと言うのは、
今の時点で断定的に言えることではありません。
TSHが基準値内であれば、
多くの場合に甲状腺機能は治療を要さない、
ということは事実ですが、
検査数値は短期間で変動することもありますし、
組織によって甲状腺ホルモンの感受性が異なり、
見かけ上数値は正常であっても、
組織によってはホルモン欠乏の状態にある、
ということもないとは言えないからです。

それでは、軽症の機能低下症でだるさなどの症状があり、
それがホルモン剤の治療により改善したとすれば、
治療は有効であると考えて良いのでしょうか?

必ずしもそうとは言えません。

軽度の甲状腺機能低下症の患者さんは、
少し過剰なホルモンを使用することを、
好む傾向がある、という報告が複数あるからです。
この場合患者さんにとっての甲状腺ホルモンの効果は、
多分に心理的な影響も加味されている可能性が高いと考えられます。

そこで今回の研究では、
アメリカの複数のクリニックで甲状腺機能低下症に対し、
甲状腺ホルモン(T4)製剤による治療を受け、
甲状腺機能が正常を維持している、
138名の患者さんを、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで3つの群に分け、
第1群はTSHの目標値を0.34から2.50、
第2群は2.51から5.60、
第3群は5.61から12.0mU/Lとして、
それを達成するように6週間毎にT4製剤を調整し、
登録時と半年後にQOLや認知機能、感情障害の有無などを、
同じように計測してその比較を行っています。

これは第1群がやや機能亢進傾向、
第2群が全くの正常で、
第3群はやや機能低下傾向を示しています。

その結果、
3群間の比較では、
認知機能、QOL、感情障害の有無などについて、
有意な差は認められませんでした。
ただ、患者さんは実際に投薬量が増加したか減少したかを、
正確には判断出来なかったのにも関わらず、
それが増加していると感じているときに、
その処方量を好ましいと感じていました。

これはつまり実際にはT4の使用量が、
甲状腺機能の基準値の周辺で上下しても、
生理的には特に変化があるという根拠はなく、
認知機能や感情にも変化があるという根拠はないのですが、
患者さんは薬の量が増えてということに対して、
良くなっているという印象を持つことが多い、
ということを示しています。

今回のデータは大変興味深いものですが、
これをもって甲状腺ホルモンの微調整には意味がない、
という意見には個人的には疑義があります。
甲状腺ホルモンの生理作用は、
今回検証されたような認知機能などのみでは、
検証困難な性質のものも、
含んでいるように思うからです。

ただ、甲状腺の分野では、
今回のような無作為の介入試験のようなデザインの試験は、
非常に数少ないので、
今回の検証は意義のあるものであることは、
間違いがないようには思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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スタチンと認知症リスクのメタ解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
スタチンと認知症リスク.jpg
2018年のScientific Report誌に掲載された、
スタチンというコレステロール降下剤と、
認知症リスクとの関連についての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤ですが、
コレステロールを下げるばかりではなく、
抗炎症作用などの多面的な作用を持ち、
それが動脈硬化の進行予防などに結び付いていると考えられています。

スタチンの心筋梗塞などの心疾患の予防効果は、
間違いなく実証された事実ですが、
認知症に対する効果についてはまだ議論があります。

スタチンの効果の1つとして、
コレステロールの中間代謝産物のイソプレノイドを抑制し、
これが認知症の発症に伴うβアミロイドなどの異常蛋白の蓄積を、
抑制する効果があるのではないか、
という考え方があります。

これが事実であるとすれば、
スタチンは認知症、特にアルツハイマー型認知症に対しては、
その発症を抑制するような効果が期待出来ます。

しかし、その一方でスタチンに使用において、
認知機能の低下が生じるような事例も報告されています。
また、疫学データにおいても、
スタチンの使用により一定の認知症予防効果が認められた、
という報告がある一方で、
そうした効果は認められなかった、
というような報告もあります。

今回の研究は、
これまでの主な臨床データを、
まとめて解析するメタ解析の手法で、
この問題の検証を行っています。

これまでの25の臨床研究をまとめて解析した結果として、
スタチンの使用は全ての認知症の発症リスクを
15.1%(95%CI: 0.787から0.916)、
アルツハイマー型老年認知症の発症リスクを
28.1%(95%CI: 0.576から0.899)、
認知症の基準は満たさない経度認知障害の発症リスクを
26.3%(95%CI: 0.556から0.976)、
それぞれ有意に低下させていました。
ただ、脳梗塞などによる脳血管性認知症の発症リスクについては、
スタチン使用との間に有意な関連は認められませんでした。

ここでスタチンを、
組織移行などにおいて差のある、
水溶性スタチン(プラバスタチン、ロスバスタチン)と、
脂溶性スタチン(シンバスタチン、アトルバスタチン、
ピタバスタチン、フルバスタチン)とに分けて分析すると、
水溶性スタチンは全ての認知症リスクの低下と関連が認められましたが、
アルツハイマー型認知症との関連は弱く、
脂溶性スタチンはアルツハイマー型認知症のリスク低下との関連は認められた一方、
認知症全体との関連は認められませんでした。

このように、
スタチンがアルツハイマー型老年認知症などの、
発症予防に効果があるという可能性はありそうですが、
今のところ血管性認知症などの予防にもなるか、
と言う点は明確ではなく、
またどのような時期の認知症に対して、
有用性があるかどうかも明確ではありません。

今後より精度の高い研究により、
スタチンの認知症への有効性が、
検証されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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