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マクロライド系抗菌剤の免疫調節作用のメカニズム(2018年慶應大学) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マクロライドの免疫調節作用.jpg
2018年のPLOS Pathogens誌に掲載された、
マクロライド系と呼ばれる抗菌剤の、
免疫調整作用のメカニズムを検証した論文です。

慶應大学の研究チームによる報告です。

マクロライド系の抗菌剤には、
エリスロマイシンやアジスロマイシン(ジスロマック)、
クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)などがあり、
マイコプラズマやクラミジアなどの病原体にも抗菌力を持つことから、
主に気道感染症などの治療に幅広く使用されています。

マクロライド系の抗菌剤はそればかりでなく、
びまん性汎細気管支炎や慢性閉塞性肺疾患など、
気道の慢性の炎症が持続するような病気の、
長期のコントロール薬としても応用されていて、
この場合は比較的少量を長期間継続する、
というような、
抗菌剤としてはやや特殊な治療が行われています。

こうした治療は疾患と病態を選べば大きな効果があるのですが、
単純に抗菌剤としての効果とは考えられません。

そこで、マクロライド系抗菌剤には、
過剰な免疫反応を抑制するような、
免疫の調整作用があるのではないか、
という仮説が提唱されるようになりました。

ただ、色々と単発的な報告はあるものの、
そのメカニズムの詳細については、
明らかになっているとは言えません。

今回の研究はネズミの動物実験が主ですが、
ある特定の骨髄系の免疫細胞が、
その免疫調節作用の主体であることを、
多角的に証明したもので、
補足的なデータとして人間の実験も一部含まれています。

内容はかなり緻密で、
最後に人間のデータで補足する辺りも、
Nature系の科学誌の書き方ですから、
色々な事情があってPLOS ONE系の速報ウェブ媒体に、
発表されたのかな、というように思います。

マクロライド系抗菌薬のクラリスロマイシンを、
ネズミで腹腔内注入と経口にて投与したところ、
その肺と脾臓において、
骨髄球系の免疫細胞のうち、
CD11b陽性Gr-1陽性というタイプの細胞群が、
数倍に増加していることが確認されました。

そして、この細胞群の機能を解析したところ、
MDSCという過剰な免疫反応を抑制する細胞集団と、
同様の性質を持っていることが確認されました。
クラリスロマイシンで増加するCD11b陽性Gr-1陽性細胞は、
MDSC様の細胞群であることが明らかになったのです。

次にネズミに細菌の毒素であるリポ多糖を腹腔内投与して、
細菌の毒素性ショックを人工的に作り実験すると、
クラリスロマイシンの使用により、
ネズミの生存率は有意に改善しました。
これをクラリスロマイシンではなく、
誘導されるCD11b陽性Gr-1陽性細胞の注入で行っても、
同様の効果が得られたことから、
生存率の改善はこの細胞群によるものであることが確認されました。

また、インフルエンザ感染後に、
クラリスロマイシン耐性の肺炎球菌を感染させたネズミに、
クラリスロマイシンを投与すると、
こちらもその生存率が増加しました。

最初の実験は毒素のみを投与していて、
次の実験はわざわざクラリスロマイシンの効かない菌に、
感染をさせていますから、
この改善効果は明らかにマクロライドの抗菌作用とは別物なのです。

また補足的データとして興味深いことに、
クラリスロマイシンは腸内細菌叢を変化させる作用があり、
それが免疫細胞増加の一因である可能性が示唆されています。

最後にクラリスロマイシンを1日800ミリグラム、
7日間人間に使用して、
その後の血液を採取して調べたところ、
MDSC様細胞の特徴の1つである。
アルギナーゼ1の遺伝子発現が有意に増加していました。
つまり、人間でも同様の現象が起こっている可能性が、
高いことが想定される結果です。

このように今回の研究において、
クラリスロマイシンの使用により、
骨髄球系の免疫抑制細胞群が誘導され、
それが過剰な免疫の調整に働いて、
細菌性ショックなどの改善に、
結び付いている可能性が示唆されました。

これはまだネズミの実験で、
人間でのデータは補足的なもののみなので、
そのまま人間でも成立するとは言えませんが、
マクロライド系抗菌剤の免疫抑制作用が、
緻密に立証された意義は大きく、
今後の研究の進捗と、
免疫調整作用に特化した薬剤の開発を、
期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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