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コーヒーとニコチン酸 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ニコチン酸とコーヒー.jpg
2018年のMolecular Nutrition Food Research誌に掲載された、
コーヒー摂取後のニコチン酸代謝についての論文です。

すいません。
今週はコーヒーの話題が続きます。

コーヒーには多くの生理活性物質が含まれていますが、
生の豆に存在するアルカロイドのトリゴネリンが、
焙煎により変性して産生されるのがニコチン酸(ナイアシン)です。

ニコチン酸(nicotinic acid )は、
ごく少量は必須アミノ酸である、
トリプトファンから人間の身体で合成されますが、
その大部分は食事として摂る必要があり、
その意味でビタミンB3という、
ビタミンの仲間に分類されています。

トリプトファンから合成される物質には、
他に皆さんお馴染みの「セロトニン」があります。

両者は全く別個の物質ですが、
無関係かと言うとそうでもなく、
ニコチン酸が過剰で現われる「ほてり感」のような症状は、
セロトニンの過剰による血管拡張と同じですし、
ニコチン酸の欠乏は、
意欲低下や幻覚妄想などの、
精神症状の原因ともなります。
また、腫瘍がセロトニンを合成する、
「カルチノイド症候群」では、
トリプトファンがセロトニンの合成のみに使われて、
ニコチン酸が作られなくなるため、
ニコチン酸の欠乏症状が出ることが知られています。
ただ、実際には身体で作られるニコチン酸は、
食事で得られる量の60分の1程度とされていて、
何故それがなくなっただけで、
欠乏症状が出るのか、
ちょっと理屈に合いません。

どうも、セロトニンとニコチン酸との関係には、
まだ分かっていない点が多くありそうです。

ニコチン酸という言葉は、
ちょっと紛らわしい点が多く、
その言葉の定義もかなり混乱しています。

まず、タバコに含まれ、副交感神経を刺激する、
「ニコチン」との関係がよく誤解を招きます。
ニコチンとニコチン酸とは、
基本的には全く別の物質ですが、
ある条件でニコチンを加熱すると、
ニコチンが酸化してニコチン酸になるので、
この物質がニコチン酸と命名された、
という経緯があります。
しかし、実際に人間の身体の中で、
そうした反応の起こることはありません。

また、ナイアシン(niacin )という言葉があります。

ニコチン酸は体内でアミノ基と置換して、
ニコチン酸アミド(nicotinic acid amide )になりますが、
この2つを総称して、ナイアシンと呼ぶことがあります。
その一方で、ニコチン酸のみをナイアシンと呼ぶこともあり、
それが非常に混乱の元になっています。

さて、ニコチン酸とニコチン酸アミドは、
単独で固有の作用を現わしますが、
それ以外に人間の身体の中で、
NADとNADPという名前の物質に変換します。
このNADは、人間の身体のエネルギー代謝に、
なくてはならない物質であると共に、
人間の老化やメタボリックシンドロームの予防にも、
大きな役割が期待されています。

余分なカロリーを摂ると、
その行為は細胞の老化に繋がります。
肥満は動脈硬化を進行させ、
それが脳梗塞や心筋梗塞などの原因となる訳ですが、
そうしたことの以前に、
細胞内への余分なエネルギーの流入自体が、
細胞の寿命を縮めるのです。

しかし、生物というのはうまく出来ているもので、
身体にはこの細胞の老化を、
遅らせる蛋白質が存在しています。
この蛋白質をSirt1 と呼んでいます。
赤ワインが老化を抑えるとか、動脈硬化を抑える、
といった話がありますね。
これは赤ワインの中のポリフェノールである、
レスベラトロールという物質が、
このSirt1 の活性を高めるためだと言われています。

そして、このSirt1 は細胞の中のNADの量が増加することで、
その活性が高まるということも、
ほぼ明らかになっています。

つまり、ニコチン酸は細胞内のNADを上げることにより、
Sirt1 を活性化させ、そのことによって、
細胞の老化を防ぎ、
メタボリックシンドロームを予防する効果も、
あると考えられるのです。

さて、ナイアシンの1日の必要量は、
15ミリグラム程度とされています。
肉類や野菜などに含まれていて、
普通の食事を摂っていれば、
不足することは稀な成分ですが、
その含有量が意外に多いのがコーヒーです。

コーヒー1杯には、
1ミリから多くて2ミリくらいのナイアシンが含まれています。

ただ、その吸収の実際などについては、
これまであまり正確なことが分かっていませんでした。

今回の研究は10人のボランティアに対して、
ナイアシンを制限したダイエットを指示し、
2日間はコーヒーを禁止した上で、
500ミリリットルのコーヒーを一気に飲み、
その後36時間までの尿中のナイアシンの代謝産物の濃度を、
経時的に測定しています。

その結果、
飲んでから1時間後には既に代謝産物の排泄が始まり、
12時間以内に排泄は完了しています。
トータルで身体に入った4.36ミリグラムのナイアシンのうち、
6%が代謝されたという計算になります。

これが多いか少ないかは何とも言えませんが、
コーヒーに含まれているナイアシンが、
比較的速やかに身体に入って利用されることはほぼ間違いがなく、
コーヒーは重要なナイアシンの摂取源であると、
そうした言い方はして問題ないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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