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ニューキノロン系抗生物質と大動脈解離リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
フルオロキノロンと大動脈解離との関連.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
ニューキノロン系と呼ばれる抗菌剤による、
大動脈瘤やその解離のリスクについての論文です。

ニューキノロン系の抗菌剤というのは、
レボフロキサシン(クラビット)、シプロフロキサシン(シプロキサン)、
オフロキサシン(タリビット)、ガレノキサシン(ジェニナック)、
シタフロキサシン(ジェニナック)などがあります。

このタイプの抗菌剤は経口剤が主体で使用が簡便で、
その効果は強力なので、
国内外を問わず広く使用されています。

ただ、このタイプの抗菌剤は、
ペニシリン系の抗生物質と比較すると、
人間の細胞に対する毒性が強く、
神経細胞に対する毒性から痙攣を誘発するなど、
他の抗菌剤にはあまり見られない、
有害事象や副作用の原因となります。

そうしたニューキノロンに特徴的な副作用の1つが、
アキレス腱の炎症やその断裂です。
これは、ニューキノロンの抗菌作用以外の作用に、
その原因があると考えられています。

報告によると、
マトリックス・メタロプロテアーゼという、
コラーゲンなどの膠原繊維を分解する酵素があり、
その酵素を刺激することにより、
腱組織などの炎症に結び付きやすいと想定されています。

一方で大動脈瘤の発生やその解離にも、
このマトリックス・メタプロテアーゼの活性化が、
影響しているという仮説があります。
動脈壁の膠原繊維などの組織が障害されることにより、
動脈壁が脆弱となって、
瘤形成や解離の誘因になると言うのです。

これがもし事実であるとすると、
ニューキノロン系抗菌剤の使用により、
大動脈瘤のリスクが増加したり、
大動脈瘤の解離が進行するという可能性が示唆されます。

実際これまでに幾つかの観察研究で、
大動脈瘤やその解離と、
ニューキノロン系抗菌剤の使用との関連を、
示唆する結果が報告されています。
ただ、あまり精度の高い研究ではなく、
更なる検証の必要性が指摘をされていました。

今回の研究は、
国民総背番号制が敷かれているスウェーデンにおいて、
ニューキノロン系抗菌剤(78%はシプロフロキサシン)の処方と、
その後60日間に起こった大動脈瘤もしくはその解離の、
最初の診断との関連を検証しています。

トータルで360088件のニューキノロン系抗菌剤の処方が、
360088件のペニシリン系抗生物質である、
アモキシシリンの処方事例と比較されています。

その結果…

ニューキノロン系抗菌剤の使用後60日以内の、
大動脈瘤とその解離の診断率は、
年間1000人当たり1.2件であったのに対して、
アモキシシリン使用後では0.7件で、
アモキシシリンと比較してニューキノロン系薬剤では、
大動脈瘤と解離のリスクが1.66倍(95%CI: 1.12から2.46)
有意に高くなっていました。
これは絶対リスクとしては、
100万人に治療をした場合に、
それにより82件の大動脈瘤もしくは解離が発生する、
という頻度と計算されます。
これを大動脈瘤の診断と解離の診断とに分けて解析すると、
大動脈瘤の診断のリスクが1.90倍(95%CI: 1.22から2.96)、
大動脈瘤解離のリスクが0.93倍(95%CI: 0.38から2.29)となり、
ニューキノロンと関連が深いのは、
解離よりも大動脈瘤自体の診断であると考えられました。

このように、
今回の大規模な検証においても、
ニューキノロン系抗菌剤の使用により、
大動脈瘤のリスクは増加しており、
これがニューキノロン全体に当て嵌まるものなのか、
今回の検討では8割を占めている、
シプロフロキサシンに限定される現象なのかは、
まだ明らかではありませんが、
少なくとも大動脈瘤が診断されていて、
解離の危険のあるような患者さんには、
ニューキノロン系抗菌剤の使用は、
避けておいた方が安全、
ということは覚えておいた方が良いと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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