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抗うつ剤の種類と認知症との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
抗うつ剤と認知症.jpg
2018年のJournal of Affective Disorders誌に掲載された、
高齢者における抗うつ剤の認知症リスクについての論文です。

高齢者においては、
特定の薬剤が特にリスクが高く、
若年者では滅多に起こらないような有害事象が、
起こりやすいことが知られています。

たとえば胃薬として広く使用されているH2ブロッカーは、
抗コリン作用を持ち高齢者ではせん妄などの原因となるため、
使用を控えることが望ましい薬剤と考えられています。
概ね若年者では安全に使用出来る薬ですから、
年齢によってその安全性に大きな差があるのです。

同じ抗コリン作用を持つ古いタイプの抗うつ剤も、
高齢者では認知機能の低下が危惧されている薬です。

ただ、最近の抗うつ剤の主流は、
セロトニンやノルアドレナリンなどのモノアミンを、
選択的に脳内で増加させる作用を持ち、
抗コリン作用は弱いので、
おそらく副作用も少ないと想定されていますが、
これまでのデータではその点は明確ではありませんでした。

今回の研究はドイツの疫学研究ですが、
登録の時点では認知症のない、
75歳以上の3239名の高齢者を登録し、
最長で12年の経過観察を行って、
観察期間中の認知症の発症と、
抗うつ剤の使用との関連性を検証しています。

その結果、
抗うつ剤の使用は、
年齢性別を補正した上で、
未使用と比較して1.53倍(95%CI: 1.16から2.02)
有意に認知症の発症リスクを増加させていました。
抗うつ剤を三環系抗うつ剤などの抗コリン作用の強いものと、
SSRIやSNRIなどの新しいタイプのものに分けて検証すると、
認知症のリスクの増加は、
古いタイプの抗うつ剤のみで認められ、
SSRIやSNRIのみの解析では認められませんでした。

この結果のみをもって、
SSRIやSNRIであれば高齢者でも安心、
と言い切ることは出来ませんが、
これまでの疫学データを併せて考えると、
古いタイプの抗うつ剤が、
高齢者では認知症進行のリスクがあること自体は、
ほぼ間違いがなく、
高齢者のうつ病に対して抗うつ剤の使用が必要な場合には、
SSRIやSNRIを用いることが妥当であると考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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