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高齢者におけるコレステロールと生命予後との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
コレステロールと死亡リスク.jpg
2017年のBMC Geriatrics誌に掲載された、
血液の総コレステロール値と生命予後との関連についての論文です。

これも非常に議論の多い問題です。

若年層から中年層において血液の総コレステロール値が高いと、
その後の心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが増加することは、
これは間違いのない事実です。
そのために、そうした病気のリスクが高い人では、
スタチンというコレステロール降下剤の治療を継続することにより、
そのリスクが軽減することもまた、
ほぼ実証された事項です。

ただ、高齢者においてもそれが成り立つかどうかは、
それほど明確ではありません。

ロッテルダム研究という大規模疫学データによると、
65歳以上の年齢における、
心血管疾患以外の原因による死亡リスクは、
コレステロールが高いほど低くなっていました。

スタチンによる治療の効果は、
60歳以上の年齢層でも認められるとされていますが、
80歳を超えるような年齢層においては、
総死亡のリスクはスタチンの使用者でむしろ増加する、
という疫学データもまた存在しています。

同じコレステロールの数値であっても、
スタチンを使用している場合とそうでない場合では、
おのずとその病態には違いがある筈ですが、
これまでそうした点が、
1つの大規模疫学データにおいて検証されたことは、
あまりありませんでした。

そこで今回の研究では、
スウェーデンの大規模疫学データを活用して、
60歳以上の3090名を登録し、
中間値で7.5年の経過観察を施行。
原因毎の死亡リスクと血液の総コレステロール値との関連、
及びコレステロール降下療法の有無との関連を検証しています。

その結果、
観察期間中に1059名が死亡しており、
総コレステロール値が5.15mmol/L(200mg/dL)以下と比較して、
5.18から6.21mmol/L(201から239mg/dL)では、
総死亡のリスクが29%(95%CI:0.61から0.83)、
6.22mol/L以上(240mg/dL)では、
32%(95%CI: 0.57から0.80)、
それぞれ有意に低下していました。

このリスクは大部分が心血管疾患以外の死亡によるもので、
スタチンなどのコレステロール降下療法使用者のみでは、
そうしたコレステロール値と総死亡との関連は認められませんでした。

要するにコレステロール値が高いほど、
心血管疾患のリスクが高まることは、
高齢者でも違いはないのですが、
心血管疾患以外の死亡のリスクについては、
高齢者ではむしろコレステロールが高いほどそのリスクは低く、
それが総死亡のリスクにも反映される結果、
高齢者での生命予後は、
コレステロールが高いほど良い、
という結果に繋がっているようです。
コレステロール降下療法を施行している患者さんは、
元々心血管疾患のリスクが高いことが想定されるので、
治療が予後の悪化に結び付く、
ということはないようです。

この結論は理屈にも合っていて妥当なもので、
これまでのデータとも矛盾はしないので、
現時点ではほぼ事実と考えても良いように思います。

つまり、
特に高齢者においては、
コレステロールが高いことのみで、
治療を検討するのではなく、
その後の心血管疾患のリスクが高い場合にのみ、
コレステロール降下療法の開始を検討するべきで、
コレステロールが80歳以上で高いことは、
むしろ生命予後には良い影響を与えると、
そう考えた方が良いようです。

ただ、80歳より以前からコレステロール降下療法を、
継続している患者さんにおいては、
その時点でコレステロールが低いことが、
その後のリスクになるのではなく、
闇雲に治療を中止する、
という判断もまだ妥当なものではない思います。

要はコレステロール降下療法は心血管疾患のリスクについてのみ、
明確な効果のある治療法で、
それ以外のリスクとのバランスにおいて、
その可否を決めるべき性質のものだ、
という点が一番のポイントなのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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