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意識消失の原因として肺塞栓症はどのくらいあるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
肺塞栓症の意識消失での頻度.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
意識消失を起こした原因としての、
肺塞栓症の頻度を調査した論文です。

一時的に意識がなくなる意識消失の症状は、
一生のうちには4人に1人は経験する、
というほど多い症状です。

一時的で後遺症なく回復する意識消失を、
通常、失神(Syncope)と呼んでいます。

この失神の原因は様々ですが、
てんかんや不整脈による一時的な血圧の低下、
脳卒中や脳震盪などの外傷、
また自律神経のバランスの乱れによる、
所謂迷走神経反射などが鑑別となります。

その中で、最近実際にはその頻度は結構多いのではないか、
という指摘があるのが、
肺塞栓症に伴う失神です。

肺塞栓症というのは、
下肢の静脈が腫れて炎症を起こしたような場所から、
血の塊が飛んで、
肺の血管に詰まるという病気です。
ここで心臓から肺に行く根本の方の太い血管が詰まると、
心臓からの血液の拍出量が低下して、
失神の要因となることがあります。

ただ、初回の失神ですぐに意識が戻り、
特に後遺症も認めらない場合には、
あまり肺塞栓症の可能性は疑わないのが実際です。

2016年の10月のNew England…誌に、
イタリア発のビックリするような論文が掲載されました。
これは同時期にブログでも記事にしています。

初回の失神発作の原因には、
これまでの推測より肺塞栓症が多いのではないか、
という推測の元に、
イタリアの11の病院で、
初回の失神で救急受診をし、
急性の脳卒中や痙攣発作、外傷は否定的な事例、
トータル560名を登録し、
まずウエルズ・スコアという、
肺塞栓症の簡易診断の検査を行い、
それと血液のDダイマーという血栓症で上昇する検査値を測定して、
両者の結果で肺塞栓症の存在がほぼ否定された事例以外の全例で、
造影CTもしくは換気血流シンチという検査を施行して、
肺塞栓症の診断を行なったところ、
初回の失神を起こした患者さんのうち、
実に17.3%は肺塞栓症であったという結果が得られました。

ただ、その後カナダなどで行われた同様の臨床研究では、
その頻度はもっと低いものに留まっていました。

要するにイタリアの研究結果は再現されなかったのです。

今回の研究は同様の意識消失の原因としての肺塞栓症の頻度を、
カナダ、デンマーク、イタリア、アメリカという、
4か国の疫学データをまとめて解析するという手法で、
再度検証しています。

18歳以上で一時的な意識消失のため救急外来を受診し、
外来もしくは入院で治療を受けた、
トータル1671944名のデータを解析しています。
これまでで最も大規模な疫学データです。

その結果トータルで意識消失の原因が肺塞栓症であったのは、
0.06から0.55%で、
入院した患者さんにおいては、
0.15から2.10%でした。
意識消失後90日間で肺塞栓症を発症したのは、
患者さん全体で0.14から0.83%で、
入院した患者さんでも0.35から2.63%でした。
更に意識消失後90日以内に静脈血栓症と診断されたのは、
患者さん全体で0.30から1.37%、
入院した患者さんでは0.75から3.86%でした。

このようにイタリアの研究での17%という数字は、
矢張りちょっと実態からは外れているように思われます。

ただ、意識消失の裏側に、
無視出来ない頻度で静脈血栓症や肺塞栓症のあることは事実で、
その可能性については、
常に心にとめておく必要はあるのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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