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COPDにおける気管支拡張剤の使用と心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
COPDにおける気管支拡張剤と心血管疾患リスク.jpg
2018年1月のJAMA Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
COPDに使用される気管支拡張剤の、
心血管疾患リスクについての論文です。

COPDは慢性閉塞性肺疾患のことで、
主には喫煙の継続によってもたらされる、
肺の慢性の変化を総称した用語です。
その中には肺気腫や慢性気管支炎などが含まれ、
炎症などによる悪化を繰り返しながら、
徐々に呼吸機能が低下して行くのが特徴です。

このCOPDと良く似ているのが気管支喘息で、
こちらはアレルギー性の炎症が気道に起こり、
治療により呼吸機能自体は、
正常な状態に改善することが特徴です。

しかし、実際には気道の感染を繰り返して、
呼吸機能も低下することはありますし、
COPDが喘息と似通った病態を、
同時に呈することも稀ではありません。

ほんの10年くらい前には、
気管支拡張剤も吸入のステロイド剤も、
どちらも気管支喘息の薬で、
COPDへの使用は推奨されてはいませんでした。

しかし、近年になりCOPDにも、
まず抗コリン剤と呼ばれる吸入剤が有用だ、
という話になり、
それから長時間作用型のβ2刺激剤という薬が、
有用だという話になりました。

そして、まだ議論はありますが、
吸入のステロイド剤も、
COPDに使用されるようになりました。

つまり、喘息治療薬の多くが、
COPDにもその有用性を認められるようになったのです。

この抗コリン剤とβ2刺激剤はいずれも気管支拡張剤で、
吸入ステロイドは気道の炎症を抑える薬です。
持続性のβ2刺激剤の吸入薬をLABAと呼び、
持続性の抗コリン剤の吸入薬をLAMAと呼んでいます。

いずれの薬剤もその使用により、
COPDの患者さんの息切れなどの症状を改善し、
急性増悪と呼ばれる一時的な状態の悪化を、
抑制する作用があるとされています。

しかし、患者さんの生命予後を改善したり、
呼吸機能の悪化を抑制したりする効果があるのかについては、
最近肯定的なデータが少しずつ得られてはいるものの、
まだ明確な結論が出ているとは言えません。

問題はこうした喘息の治療薬はCOPDに対して使用した場合、
良い点ばかりではなく、悪い点も考えられることにあります。

吸入ステロイドは免疫を抑えて、
肺炎などの感染症を増加させるというリスクがありますし、
LABAやLAMAのような気管支拡張剤は、
以前使用されていた同種の短期作用型の薬と比較すれば、
遥かに軽度ではあるのですが、
心臓を刺激して脈拍を上昇させるような働きがあり、
このため心臓に負担を掛け、
心血管疾患のリスクを増加させる可能性が否定出来ません。

LABAやLAMAと心血管疾患との関連については、
先行研究は多くありますが、
その結果は全く問題はなかった、
というものから、
使用により1.1から4.5倍の心血管疾患のリスク増加があった、
というものまであって、
その結果は一定していません。

これまでの研究の多くは、
登録の時点で何らかの気管支拡張剤を使用していて、
直近では心血管疾患を発症していない患者さんを、
主な対象としていました。

ただ、こうした方法では、
新しく気管支拡張剤を開始した患者さんに、
比較的早期に起こった病気が除外されてしまいます。

そこで今回の臺灣の研究では、
臺灣の大規模な医療保険データを活用して、
年齢が40歳以上でCOPDという診断を受け、
まだLABAもLAMAも使用していない284220名の患者さんを抽出し、
平均観察期間2.0年において、
その後のLABAもしくはLAMAの使用と、
心血管疾患の発症との関連を検証しています。
処方を継続している期間と、
病気の発症との関連が検証されているという点が、
今回の研究の特徴です。

その結果、
観察期間中に37719名の患者さんが心血管疾患を発症していて、
LABAを開始して30日以内の発症リスクは、
未使用の1.50倍(95%CI; 1.35から1.67)、
LAMAを開始して30日以内の発症リスクは、
未使用の1.52倍(95%CI; 1.28から1.80)、
それぞれ有意に増加していました。

この場合の心血管疾患というのは、
心筋梗塞などの虚血性心疾患、心不全、
虚血性脳梗塞、不整脈のいずれかを発症して、
救急受診もしくは入院した事例をカウントしています。

ただ、このLABAやLAMAによる心血管疾患のリスクの増加は、
薬剤開始後30日以内に限って認められ、
それ以降の使用においては、
未使用と有意な差はありませんでした。
個々の薬剤の種別やその使用量、
薬の組み合わせや心血管疾患の既往などは、
このリスク増加との関連を認めませんでした。

今回のデータは実臨床のものであるので意義のあるもので、
これまでの研究結果とも矛盾はしていません。
LAMAもLABAも、
いずれもCOPDの患者さんに使用する際には、
使用開始後1か月間は、
心臓病や脳卒中などの発症リスクが1.5倍程度上昇するので、
その点を慎重に観察する必要があります。
これは元に病気を持っていたかどうかで差が出ていないので、
それまでに病気のなかった患者さんでも、
安心は出来ないのです。

最後に念のための補足ですが、
これはCOPDの患者さんにLABAやLAMAを使用することが、
良くないという意味ではありません。
患者さんの症状の改善や、
COPDの急性の悪化の予防などについては、
その有効性は確立しているので、
必要性が高ければその使用には問題はないのです。
ただ、心臓に若干の負担を掛ける薬であることは、
おそらくは事実であるので、
その点の説明は事前に必要であると思いますし、
患者さんも使用開始後1か月間は、
動悸や胸の圧迫感、息切れなどの症状に、
注意をする必要があります。
こうした症状はCOPD自体でも勿論出るものなので、
どちらの原因と自己判断することなく、
主治医の先生にその都度ご相談をして頂くことが良いと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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