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原発性アルドステロン症を飲み薬で治療することのリスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日も色々あって遅い更新となりました。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
セララで心血管疾患が増える?.jpg
今年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
原発性アルドステロン症の治療についての、
ちょっとショッキングな報告です。

原発性アルドステロン症は、
副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌され、
通常アルドステロンを調節しているレニン活性が、
抑制されたままの状態となって、
血圧が上昇して血液のカリウム濃度が低下する病気です。

上記文献の記載によれば、
高血圧の患者さんの4から19%は実はこの病気で、
血圧が正常の人でも、
レニン活性が1μg/L/hr未満に抑制されているケースでは、
この病気である可能性が高い、
という報告もあります。

このように実際には非常に多い病気である原発性アルドステロン症ですが、
その治療方針は必ずしも確立されている訳ではありません。

病気の原因は、
副腎の腺腫か過形成というしこりですから、
その部分を手術で切除することが、
最も確実性のある治療です。

ただ、術後に血圧が正常化する比率は、
現状はそれほど高いものではなく、
施設間での差も大きいという欠点があります。
腺腫か過形成であるかの診断も、
静脈サンプリングなどの侵襲的な検査が必要となります。

従って、現状の国内外のガイドラインにおいても、
全例に確定診断や手術が求められているという訳ではなく、
血圧やカリウムの数値が、
飲み薬などの治療で安定するようであれば、
経過をみることも選択肢として認められています。

仮に高血圧の患者さんの15%以上がこの病気であるとすれば、
全ての患者さんに確定診断のための検査をして、
確定した全ての患者さんに手術をするというのは、
医療経済的な側面から考えても、
実現は不可能ではないかと思います。

そこで原発性アルドステロン症が疑われる患者さんにおいて、
現在広く使用されているのが、
アルドステロンの受容体の拮抗薬という飲み薬です。

通常使用されているのは、
スピロノラクトン(商品名アルダクトンAなど)と、
より選択性の高いエプレレノン(商品名セララ)です。

こうしたタイプの薬はアルドステロンの作用をブロックするので、
原発性アルドステロン症の病態が、
過剰なアルドステロンの作用により生じるのであるとすれば、
理に適った治療であると言えます。

ただ、実際にはアルドステロン自体は減少はさせず、
レニン活性を上昇させるという訳でもないので、
手術でアルドステロンの過剰な分泌を抑えるような治療と、
結果として生じる状態は同じであるとは言えません。

しかし、実際にはアルドステロン拮抗薬による治療が、
本当に患者さんの長期予後に良い影響を与えるという根拠は、
推測以上のものがこれまでには存在していませんでした。

今回の研究はアメリカにおいて、
2つの専門病院を中心として、
アルドステロン拮抗薬による治療を行っている、
原発性アルドステロン症の患者さん602名の記録を、
年齢をマッチした本態性高血圧症の患者さん41853名と比較して、
心血管疾患の発症リスクと生命予後を比較検証しています。

その結果、
心血管疾患の発症リスクは、
本態性高血圧の患者さんと比較して、
アルドステロン拮抗薬による治療を行っている、
原発性アルドステロン症の患者さんでは、
1.91倍(95%CI: 1.63から2.25)有意に増加していました。

また、総死亡のリスクも1.34倍(95%CI; 1.06 から1.71)、
糖尿病のリスクが1.26倍(95%CI: 1.01から1.57)、
心房細動のリスクが1.93倍(95%CI: 1.54から2.42)、
それぞれ有意に増加していました。

ただ、この心血管疾患と総死亡のリスクの増加は、
原発性アルドステロン症でも、
そのレニン活性が1μg/L/hr以上であると、
有意にではなくなっていました。

つまり、
原発性アルドステロン症をアルドステロン拮抗薬で治療していても、
レニン活性が1未満と抑制された状態が持続していると、
心血管疾患のリスクも高く、
生命予後にも悪影響を与える状態は続いている、
という結論になっています。

ただ、これは患者さんを最初から登録して経過をみたような研究ではなく、
後から患者さんをマッチングしたものなので、
血圧には違いはないことになっていますが、
他の条件が同じであることの保証はないように思います。
またアルドステロン拮抗薬は、
その83%でスピロノラクトンが使用されていて、
68%の患者さんではACE阻害剤やARBも併用されていますから、
そうした薬剤の影響も少なからず結果には影響していると思われます。

そんな訳で今回の結果をもってすぐに、
原発性アルドステロン症のアルドステロン拮抗薬による治療は問題がある、
とも言い切れないのですが、
レニン活性を含めて、
どのような指標を参考とすることが、
原発性アルドステロン症の患者さんの予後の改善に結び付くのか、
そうした観点からの再検証が必要であるように思います、

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。



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