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柑皮症とそのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日は特定の論文ではなく、
最近ちょっと事情があって下調べをした、
柑皮症についてのお話です。

冬場はコタツで蜜柑というのが日本人独自の楽しみで、
僕も小学校の頃はコタツで蜜柑でテレビというのが、
外に出るのが億劫な冬の日の楽しみでした。

そうした時の蜜柑は、
ついつい食べ過ぎてしまうものですが、
蜜柑を食べ過ぎると肌が黄色く(実際にはオレンジ色)なることがあり、
僕も小学校の時には経験していて、
かなりの黄色さになったので、
親が心配して近所の小児科に行きました。
結果は笑われて終わりで、
「肌が黄色くなるほど蜜柑を食べてはいけない」
というのがその後の教訓となりました。

これを柑皮症(Carotenosis)と呼んでいます。

何故蜜柑を食べ過ぎると皮膚が黄色くなるのでしょうか?

蜜柑にはカロテノイドという色素が含まれていて、
それが溜まることによって黄色くなるのだ、
というように説明されています。

カロテノイドには幾つかの種類があり、
代表的なβカロテンは、
ニンジンやカボチャなどに多く含まれています。
蜜柑にもβカロテンは含まれていますが、
その量はニンジンなどと比べれば少なく、
その代わりに多く含まれているのがβクリプトキサンチン、
という別個のカロテノイドです。

カロテノイドはβカロテンもβクリプトキサンチンも、
ともに身体の中でビタミンAに変換されます。
この酵素は小腸粘膜や肝臓に分布しています。

古い本にはカロテノイドをビタミンAに変換する酵素は、
主に小腸粘膜のみにある、というように記載をされているのですが、
元々ビタミンAの不足分だけをカロテノイドから動員する、
という仕組みなので、
肝臓がある程度大きな働きをしていないと、
理屈に合わないような気がします。
実際比較的新しい記述では、
肝臓の方の重要性を指摘するものが、
増えているように思います。

さて、カロテノイドは小腸の粘膜から吸収されると、
そこで一部はビタミンAに変換され、
残りは血液を通って肝臓に入ります。
カロテノイドは脂肪に親和性があるので、
脂肪酸と結合した形で全身の脂肪組織に沈着するのです。
一部は肝臓に蓄えられ、
一部は腎臓などから排泄されますが、
処理出来る量を上回って摂取されると、
色素の性質を残したまま皮膚に蓄積するので、
皮膚の色がオレンジ色に変色するのです。

この皮膚の色の変化は、
皮膚の色素量が少ない方が目立つので、
手の平や足の裏などの変色が、
一番特徴的な柑皮症の症状ということになります。

柑皮症の原因食材は日本では蜜柑が多く、
これは温州蜜柑にカロチノイドの1つであるβクリプトキサンチンが、
特異的に多く含まれていることがその理由です。

一方で欧米においては、
菜食主義者の女性などでの報告が多く、
原因食材はニンジンやカボチャであることが多いようです。

日本でも最近では、
野菜ジュースをダイエット目的で大量に飲むような女性に、
欧米型の柑皮症のケースが見られるようです。

さて、この柑皮症は肌の色の変化以外には、
特に健康上の問題はないと考えられています。

しかし、
それほど沢山の原因食材を摂取していないのに、
柑皮症になりやすい場合には、
何らかの病気が隠れている可能性があります。

これを二次性柑皮症という言い方をすることがあります。

二次性柑皮症の原因としては、
カロテノイドをビタミンAに変換する酵素が、
何らかの原因で上手く働かない場合と、
カロテノイドが結合し易い脂質が、
血液中に多い場合、
またカロテノイドの排泄が低下している場合が考えられます。

臨床的に二次性柑皮症を起こすと報告されているのは、
甲状腺機能低下症、腎臓病、肝臓病、糖尿病、
脂質異常症、ネフローゼ症候群、摂食障害、低栄養状態、
などがあります。

このうち腎臓病はカロテノイドの排泄の低下により起こります。
カロテノイドがビタミンAに変換されるには甲状腺ホルモンが必要なので、
甲状腺機能低下症ではそれが原因で柑皮症が起こりやすいと考えられています。
低栄養状態や摂食障害では身体の代謝の低下により、
カロテノイドからビタミンAへの変換が低下すると考えられています。
肝臓病は肝臓で酵素自体が作られるなくなるために起こります。
糖尿病や脂質異常症、ネフローゼ症候群では、
血液中の脂肪酸の増加が主な要因となります。

このように多くの病気が柑皮症と合併する可能性があります。

それでは、どのくらいの量の蜜柑を食べ続けると、
病気がなくても柑皮症が発生するのでしょうか?

これはあまり調べても記載がないのですが、
1日3から4個の蜜柑の摂取は、
その健康への良い影響を調べた試験などもあり、
その範囲では大きな問題は生じていないので、
1日5個以上の蜜柑の摂取でその可能性が高まる、
というように考えるのが現時点では妥当ではないかと思います。

つまり、1日5個以上蜜柑を食べ続けていれば、
それだけで柑皮症になっても特に不思議ではないのですが、
それ以下でも発症したり、
柑皮症を繰り返すような場合には、
他の病気が隠れている可能性を疑って、
血液検査などを施行した方が良いのではないかと思われるのです。

最後に柑皮症と似た皮膚が黄色くなる病気に黄疸がありますが、
黄疸では白目が黄色くなるのに対して、
柑皮症では白目の変化はないので、
その点が簡単な鑑別法になります。

蜜柑は健康的な食品で、
その効能も多いと宣伝もされていますが、
食べ過ぎが良いという根拠もないので、
柑皮症を起こさない程度に、
食べるのがまずは妥当な対応ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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