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高齢者が汚れた空気の中でジョギングすることのリスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
大気汚染とジョギング.jpg
今年のLancet誌に掲載された、
排気ガスで汚れた空気の中でジョギングすることの、
健康リスクについての論文です。

これは皆さんが多分そうだろうなと感じていることを、
化学的に検証して、
矢張りそうか、という結論に至ったものです。

無理のないジョギングやウォーキングの習慣が、
肥満の予防や筋力の維持、体調の維持に繋がり、
呼吸機能や心機能の改善にも良い影響を与えることは、
多くの精度の高い科学的な裏付けのある事実です。

健康のためや楽しみのために、
ウォーキングやジョギング、マラソンなどがブームとなっていて、
休日ともなれば皇居の周りや公園などは、
そうした人たちで大賑わいとなります。

ただ、たとえば皇居の周りなどは交通量の多い道路ですから、
空気は粉じんや排気ガスで間違いなく汚染されています。
その汚染された空気を吸い込みながら行う運動が、
果たして健康に良いことなのでしょうか?

正直非常に疑問です。

今回の研究はイギリスにおいて、
その素朴な疑問に真っ向から取り組んだものです。

年齢は60歳以上で、
特に病気のない健康な40名と、
慢性閉塞性肺疾患(COPDのGOLDステージ2)に罹患している40名、
そして虚血性心疾患に罹患している39名を登録し、
それぞれをくじ引きで2つに分けると、
一方はバスやタクシーが頻繁に通るオクスフォード・ストリートで、
もう一方は車の通らないハイド・パークで、
それぞれ2時間のウォーキングを行い、
その前後の呼吸機能の変化や症状の変化などを、
比較検証しています。

COPDも虚血性心疾患も、
治療により半年間以上、
増悪なく症状が安定していて、
ウォーキングには問題がないという点が条件となっています。

まずオクスフォード・ストリートとハイド・パークで、
空気の分析をしたところ、
公園より道路では一酸化窒素やPM2.5など、
排気ガスや粉じんの成分が多く認められました。

COPDの患者さんにおいては、
公園でのウォーキングと比較して道路でのウォーキングでは、
その後の咳や痰、息切れや喘鳴などが、
有意に増加を認めていました。

病気のない人も持病のある人もいずれの群においても、
ウォーキングはその後の呼吸機能の改善効果を認めていましたが、
公園と比較して道路ではその改善の程度は低く、
特にCOPDの患者さんにおいては、
その環境による開きが大きくなっていました。
そしてCOPDの患者さんでは道路でのウォーキングは、
むしろ呼吸機能を悪化させていて、
その程度は大気中の排気ガスの成分や粉じん量と相関していました。

要するに、
ウォーキングが健康的なのは汚染されていない環境でのことであって、
交通量などの多い道路でのウォーキングは、
特にCOPDの患者さんにとっては有害な可能性が高い、
という結果です。

これは当然とも言える結果ですが、
交通量の多い道路で高齢者が平気でジョギングなどをしている、
東京などの大都市の状況を見ると、
もう少し走る側も行政などの環境を管理する側も、
考え方を変える必要があるのではないでしょうか。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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日本人の飲酒量と生命予後について(多目的コホート研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
休肝日と死亡リスク.jpg
今年のJournal of Epidemiology誌に掲載された、
日本人の飲酒量と生命予後についての論文です。
この雑誌は日本疫学会の英文誌で、
この論文も日本人の研究者によるものです。

内容は他にも山のように出ている、
多目的コホート研究(JPHC)と呼ばれている、
日本では有数の大規模疫学データを解析した論文の1つです。

内容はちょっとこの問題についての世界の流れから言うと、
かなり違和感のあるもので、
アルコール量はそれほどでなくても健康への悪影響がある、
という世界的な潮流とは別個に、
アルコールは少し飲む人の方が長生きで、
特に男性は一般的に言って飲みすぎくらいのレベルでも、
むしろ健康的、という結果になっています。

お酒の量と病気との関係については、
色々な意見があります。

大量のお酒を飲んでいれば、
肝臓も悪くなりますし、
心臓病や脳卒中、高血圧などにも、
悪影響を及ぼすことは間違いがありません。

ただ、アルコールを少量飲む習慣のある人の方が、
全く飲まない人よりも、
一部の病気のリスクは低くなり、
寿命にも良い影響がある、
というような知見も複数存在しています。

日本では厚労省のe-ヘルスケアネットに、
日本のデータを元にして、
がんと心血管疾患、総死亡において、
純アルコールで平均23グラム未満(日本酒1合未満)の飲酒習慣のある方が、
全く飲まない人よりリスクが低い、
という結果を紹介しています。

その一方で、
昨年のメタ解析の論文によると、
確かに飲酒量が1日アルコール23グラム未満であれば、
機会飲酒の人とその死亡リスクには左程の差はないのですが、
1日1.3グラムを超えるアルコールでは、
矢張り死亡リスクは増加する傾向を示していた、
というようなデータが紹介されています。

比較的最近ご紹介した、
今年のBritish Medical Journal誌に掲載されたイギリスの研究では、
プライマリケアの診療データをまとめて解析することにより、
個々の心血管疾患の発症リスクと、
アルコールの摂取量との関連を検証していました。

登録の時点では心血管疾患にかかっていない、
30歳以上の1937360名の診療データが解析の対象となっています。

その結果…

登録された190万人余のうち、
観察期間中に114859名が心血管疾患の診断を受けていました。
お酒をイギリスで規定された適正飲酒量の範囲で飲む人と比較して、
全くお酒を飲まない人は、
不安定狭心症のリスクが1.33倍(95%CI; 1.21から1.45)、
心筋梗塞のリスクが1.32倍(95%CI; 1.24から1.41)、
予期せぬ心臓死のリスクが1.56倍(95%CI; 1.38から1.76)、
心不全のリスクが1.24倍(95%CI; 1.11から1.38)、
虚血性脳梗塞のリスクが1.12倍(95%CI;1.01から1.24)、
末梢の動脈疾患(閉塞性動脈硬化症など)のリスクが1.22倍(95%CI;1.13から1.32)、
腹部大動脈瘤のリスクが1.32倍(95%CI; 1.17から1.49)、
それぞれ有意に増加していました。

この場合の適正飲酒というのは、
男性で1日アルコール量30グラム以内(1週間で210グラム以内)、
女性で1日アルコール量20グラム以内(1週間で140グラム以内)、
という基準が採用されています。
2016年に男女とも適正飲酒量は1日20グラム以内(1週間で140グラム以内)、
と改訂が行われたのですが、
このデータはそれ以前のものなので、
古い基準が適応されています。

一方で適正量の飲酒を基準とした場合に、
それを超える飲酒量では、
予期せぬ心臓死のリスクが1.21倍(95%CI; 1.08から1.35)、
心不全のリスクが1.22倍(95%CI; 1.08から1.37)、
心停止のリスクが1.50倍(95%CI; 1.26から1.77)、
一過性脳虚血発作のリスクが1.11倍(95%CI; 1.02から1.37)、
虚血性脳梗塞のリスクが1.33倍(95%CI; 1.09から1.63)、
脳内出血のリスクが1.37倍(95%CI; 1.16から1.62)、
末梢動脈疾患のリスクが1.35倍(95%CI; 1.23から1.48)、
それぞれ有意に増加していました。
しかし、心筋梗塞と安定狭心症の発症リスクについては、
有意ではないものの、
飲酒量が多い群の方がリスクが低い傾向が認められました。

総死亡のリスクについては、
矢張り適正範囲の飲酒量を基準とした時に、
全くお酒を飲まない人は1.24倍(95%CI; 1.20から1.28)、
適正量を超える飲酒をしている人は1.34倍(95%CI; 1.31から1.38)と、
いずれも有意に上昇していました。
つまり、お酒を少し飲む人が一番長生きで、
沢山飲む人も全く飲まない人も、
どちらも死亡リスクは高くなるという結果です。

このように概ね多くの病気において、
全くお酒を飲まない人より、
1日20グラム程度のアルコールを摂取している人の方が、
その発症リスクは低く、
それが適正量を超えるとリスクの増加に繋がる、
という結果になっていました。

こうしたデータからは、
男女とも1週間に140グラム程度の飲酒を1つの目安として考え、
なるべくそれを超えないように調整するのが、
健康のためには望ましい、
という結論がほぼ透けて見えて来ます。

ところが…

今回の日本の研究では、
102849名の登録時で40から69歳の男女を、
平均で18.2年間観察した結果として、
飲酒習慣のない人を基準とした場合、
総死亡のリスクは男性では1週間にアルコールで299グラムまでは、
明確に飲酒習慣のある方が少なく、
週に600グラム以上という多量の飲酒者において初めて、
死亡リスクが非飲酒者を上回る、
という仰天するような結果になっています。

女性においては、
週に149グラムの飲酒までは、
総死亡のリスクは非飲酒者より有意に低く、
明確にリスクが増加するのは、
週に300グラムを超えたレベルからです。

個々の病因別の死亡リスクについて見ると、
心血管疾患による死亡のリスクは、
女性では週に150グラムから有意に増加していますから、
欧米のデータとほぼ同等ですが、
男性は明確に病気による死亡のリスクが増えるのは、
矢張り1週間に600グラムという、
極めて大酒のみと言える群のみです。

何故このように日本の男性はお酒の害に対して耐性が強く、
もしくはアルコールが身体に良い方向に作用して、
イギリス人では明確に死亡リスクが上昇する飲酒量であっても、
むしろ死亡リスクが低下する、
という事態を生んでいるのでしょうか?

大雑把に計算すると、
日本人の男性は毎日2リットルのビールを飲んでも、
全く飲まない人より健康的、
ということになり、
これは統計が誤りでなかったとしても、
何かが根本的に間違っているように直感的には思います。

上記文献の著者らの推論は、
週当たりのアルコール量は多くても、
休肝日を多く作るなどの飲み方の違いが、
このアルコール量と死亡リスクとの乖離の、
原因となっているのではないか、
というものです。

確かに男性においては、
心血管疾患と癌による死亡に限っては、
同じ週間飲酒量であっても、
休肝日が多い方がリスクは低下しているのですが、
それ以外の項目についてはそれほどの違いはなく、
項目によっては休肝日のある方がリスクが高かったりもしているので、
休肝日のあるなしを理由にするのも、
それだけでは説明にはならず、
かなり無理があるように思います。

そんな訳で今回の結果はかなり理解に苦しむものなのですが、
日本の男性のみがアルコールに特異的に強いというのも、
可能性としてはかなり低いものではないかと思いますし、
飲酒量の質問事項や解答の正確さを含めて、
このデータは再検証が必要なのではないかと、
個人的にはそう思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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妊娠中のビタミンDの補充の効果について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビタミンDの妊娠中の使用.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
妊娠中のビタミンDの有効性についての論文です。

ビタミンDはステロイドホルモンの一種で、
骨の健康に不可欠のビタミンであるばかりではなく、
細胞の増殖などにおいても、
多くの重要な役割を担っています。

妊娠中の女性や新生児では、
ビタミンDの欠乏が多いという疫学データもあり、
このため妊娠中にビタミンDを補充することが、
母体や胎児の妊娠中から出生時の予後を、
改善するのではないかと考えられました。

ただ、そのために多くの臨床試験が行われましたが、
その結果は有効と無効とが拮抗していて、
妊娠中の補充が良いかどうかは、
未だ明確な結論が出ていません。

2016年のこの問題についての最新のコクランレビューでは、
子癇前症と胎児の低体重や早産のリスクを、
妊娠中のビタミンDが低下させる可能性がある、
という結果になっています。
ただ、データの確実性は高いものではなく、
現行はWHOも妊娠中のビタミンDの使用を推奨はしていません。

今回の検証はこれまでの介入試験という、
厳密なデザインによる臨床試験の結果のみをまとめて解析して、
この問題の現時点での検証を行っているものです。

43の臨床試験のトータル8406名のデータをまとめて解析した結果として、
ビタミンDのサプリメントを使用することにより、
母体血と臍帯血のビタミンD濃度(25OHビタミンD濃度)は上昇していましたが、
使用量と濃度との関連はそれほど明確ではありませんでした。

ビタミンDの使用により、
出生時体重は58.33グラム(95%CI; 18.88から97.78)有意に増加し、
妊娠週数と比較して体重が少ない、
在胎不当過少児のリスクが、
40%(95%CI; 0.40から0.90)有意に低下していました。
早産のリスクには有意な差はありませんでした。
また、ビタミンDを妊娠中に使用することにより、
お子さんの出生後3歳までの喘鳴のリスクが、
19%(95%CI; 0.67から0.98)有意に低下していました。
それ以外の母体の健康や胎児の健康の指標には、
明らかなビタミンDの効果は認められませんでした。

このように妊娠中のビタミンDの使用は、
お子さんの過少体重と乳児期の喘鳴の予防という意味では、
一定の効果はありそうなのですが、
現状データの多くは例数が少なく、
根拠は必ずしも充分なものではない、
という結論になっています。

そんな訳で事例によってはある程度の効果のありそうな、
妊娠中のビタミンDの使用ですが、
その量や製剤の選択などを含めて、
今後より例数が多く、
厳密なデザインの臨床試験が、
この問題に対しては施行される必要性がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

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風邪の咳への科学的対処法について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
かぜの咳の治療.jpg
今年のChest誌に掲載された、
風邪の咳に対する治療法の根拠を検証して、
それをまとめた報告です。
アメリカ胸部医学会の専門家委員会によるものです。

この場合の風邪というのは、
ライノウイルスに代表されるような、
予後の良い風邪ウイルスによる感染症に不随する症状のことで、
マイコプラズマ肺炎のようなものとは違います。

こうした予後の良いウイルス感染症による咳は、
欧米では医療機関での治療の対象とはなりませんから、
このレビューも基本的には医療機関での治療の話ではなく、
民間療法やOTCなどの市販の医薬品による治療を効果を、
科学的に検証したものです。

その結果は以下の4項目にまとめられています。

①風邪の咳に対して、それを軽くしたり早く治したりする目的で咳止めや風邪薬を使用することは推奨されない。
②風邪の咳に対して、それを軽くしたり早く治したりする目的で消炎鎮痛剤を使用することは推奨されない。
③1歳から18歳の小児の風邪の咳に対して、はちみつは未治療や抗ヒスタミン剤より、咳を抑える効果が期待出来る。ただ、その有効性はデキストロメトルファン(咳止めの代表薬)に勝るものではない。補足として、はちみつは1歳未満の小児には使用出来ない。また2歳未満ではデキストロメトルファンは使用するべきではない。
④18歳未満の小児の風邪の咳に対して、コデインを含む処方は呼吸機能の低下などの危険性があるため推奨されない。

これだけだと分かりにくい部分があるので補足します。

まず、基本的なこととして、
日常生活に大きな支障のないような風邪の咳は、
通常は一週間から10日くらいの経過で改善するので、
それに対して無理に咳を抑えるような治療は、
患者さんの予後には良い影響を与えるという根拠がない、
という点が明確に記載をされています。

そうは言ってもつらい咳は止めたいので、
咳止めに効くと称する薬が、
日本でも沢山ドラッグストアには並んでいますし、
それはアメリカでも同じです。

ただ、その主力である消炎鎮痛剤や痰がらみの薬、
抗ヒスタミン剤などについては、
それを風邪の咳に対して使用した時に、
未使用と比較して明確な効果があった、
という科学的なデータが殆どない、
というのがもう1つの事実です。

コデインというのは、
咳の中枢を抑える軽い麻薬のようなもので、
フスコデやカフコデ、ライトゲンシロップなどの名称の咳止めの中にも、
市販薬の成分として広く使用されています。

これは勿論一定の咳止めとしての効果があるのですが、
その一方で咳の中枢に働くので、
呼吸自体が抑えられたり、気管支がけいれんするような副作用が、
しばしば認められます。

そのためアメリカのFDAは警告を出し、
18歳未満でのコデインの使用を制限しています。

しかし、日本においては7歳以上で使用可能な風邪薬にも、
平気でコデインが含有されています。

何故規制がされないのか極めて不可解ですが、
小児用PL顆粒という、
小児への使用はほぼ禁忌と言って良いサリチル酸を含む感冒薬が、
2歳以上では使用可能で、
2014年に厚労省の再審査でもそのまま認められている、
という奇々怪々な事例もありますから、
風邪薬というものの安全性を、
当局が軽視していることは事実であるようです。

民間療法として科学的にも評価されているのがハチミツです。

これは300人規模の厳密な方法での介入試験のデータが、
複数存在しているからで、
こうしたデータのある咳止めの処方というには、
他にあまり類例がありません。

寝る前に小さじ1杯くらいのハチミツを飲むことで、
夜に咳で起きることが減り、
咳の頻度や強さも改善します。

単独では結構ハチミツは飲みにくいので、
レモン水に溶いたり、コーヒーに入れたりするのも良いようです。

ただ、勿論ボツリヌス菌の食中毒の報告がありますから、
1歳未満のお子さんには禁忌です。

欧米でよく使用されている亜鉛ドロップにも、
一定の効果があったとするデータが複数あります。

このように風邪の咳はその経過が、
通常の風邪の経過と合致していて、
その程度も軽ければ何もする必要がないのですが、
民間療法としてはハチミツの使用がお勧めです。
大人で強い咳の時には、
コデインを含む咳止めの短期間の使用も、
やむを得ないことがありますが、
18歳未満の小児では、
使用を控えることが望ましいと思います。
こうした薬は意外に市販の風邪薬や咳止めに入っているので、
今の日本の薬事行政においては、
風邪薬の特にお子さんへの使用に関しては、
慎重な対応が求められると思います。
端的に言えば、どんなにCMが流れても、
風邪薬を買わないことが一番の健康法なのです。

それでは今日はこのくらいで。

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柑皮症とそのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日は特定の論文ではなく、
最近ちょっと事情があって下調べをした、
柑皮症についてのお話です。

冬場はコタツで蜜柑というのが日本人独自の楽しみで、
僕も小学校の頃はコタツで蜜柑でテレビというのが、
外に出るのが億劫な冬の日の楽しみでした。

そうした時の蜜柑は、
ついつい食べ過ぎてしまうものですが、
蜜柑を食べ過ぎると肌が黄色く(実際にはオレンジ色)なることがあり、
僕も小学校の時には経験していて、
かなりの黄色さになったので、
親が心配して近所の小児科に行きました。
結果は笑われて終わりで、
「肌が黄色くなるほど蜜柑を食べてはいけない」
というのがその後の教訓となりました。

これを柑皮症(Carotenosis)と呼んでいます。

何故蜜柑を食べ過ぎると皮膚が黄色くなるのでしょうか?

蜜柑にはカロテノイドという色素が含まれていて、
それが溜まることによって黄色くなるのだ、
というように説明されています。

カロテノイドには幾つかの種類があり、
代表的なβカロテンは、
ニンジンやカボチャなどに多く含まれています。
蜜柑にもβカロテンは含まれていますが、
その量はニンジンなどと比べれば少なく、
その代わりに多く含まれているのがβクリプトキサンチン、
という別個のカロテノイドです。

カロテノイドはβカロテンもβクリプトキサンチンも、
ともに身体の中でビタミンAに変換されます。
この酵素は小腸粘膜や肝臓に分布しています。

古い本にはカロテノイドをビタミンAに変換する酵素は、
主に小腸粘膜のみにある、というように記載をされているのですが、
元々ビタミンAの不足分だけをカロテノイドから動員する、
という仕組みなので、
肝臓がある程度大きな働きをしていないと、
理屈に合わないような気がします。
実際比較的新しい記述では、
肝臓の方の重要性を指摘するものが、
増えているように思います。

さて、カロテノイドは小腸の粘膜から吸収されると、
そこで一部はビタミンAに変換され、
残りは血液を通って肝臓に入ります。
カロテノイドは脂肪に親和性があるので、
脂肪酸と結合した形で全身の脂肪組織に沈着するのです。
一部は肝臓に蓄えられ、
一部は腎臓などから排泄されますが、
処理出来る量を上回って摂取されると、
色素の性質を残したまま皮膚に蓄積するので、
皮膚の色がオレンジ色に変色するのです。

この皮膚の色の変化は、
皮膚の色素量が少ない方が目立つので、
手の平や足の裏などの変色が、
一番特徴的な柑皮症の症状ということになります。

柑皮症の原因食材は日本では蜜柑が多く、
これは温州蜜柑にカロチノイドの1つであるβクリプトキサンチンが、
特異的に多く含まれていることがその理由です。

一方で欧米においては、
菜食主義者の女性などでの報告が多く、
原因食材はニンジンやカボチャであることが多いようです。

日本でも最近では、
野菜ジュースをダイエット目的で大量に飲むような女性に、
欧米型の柑皮症のケースが見られるようです。

さて、この柑皮症は肌の色の変化以外には、
特に健康上の問題はないと考えられています。

しかし、
それほど沢山の原因食材を摂取していないのに、
柑皮症になりやすい場合には、
何らかの病気が隠れている可能性があります。

これを二次性柑皮症という言い方をすることがあります。

二次性柑皮症の原因としては、
カロテノイドをビタミンAに変換する酵素が、
何らかの原因で上手く働かない場合と、
カロテノイドが結合し易い脂質が、
血液中に多い場合、
またカロテノイドの排泄が低下している場合が考えられます。

臨床的に二次性柑皮症を起こすと報告されているのは、
甲状腺機能低下症、腎臓病、肝臓病、糖尿病、
脂質異常症、ネフローゼ症候群、摂食障害、低栄養状態、
などがあります。

このうち腎臓病はカロテノイドの排泄の低下により起こります。
カロテノイドがビタミンAに変換されるには甲状腺ホルモンが必要なので、
甲状腺機能低下症ではそれが原因で柑皮症が起こりやすいと考えられています。
低栄養状態や摂食障害では身体の代謝の低下により、
カロテノイドからビタミンAへの変換が低下すると考えられています。
肝臓病は肝臓で酵素自体が作られるなくなるために起こります。
糖尿病や脂質異常症、ネフローゼ症候群では、
血液中の脂肪酸の増加が主な要因となります。

このように多くの病気が柑皮症と合併する可能性があります。

それでは、どのくらいの量の蜜柑を食べ続けると、
病気がなくても柑皮症が発生するのでしょうか?

これはあまり調べても記載がないのですが、
1日3から4個の蜜柑の摂取は、
その健康への良い影響を調べた試験などもあり、
その範囲では大きな問題は生じていないので、
1日5個以上の蜜柑の摂取でその可能性が高まる、
というように考えるのが現時点では妥当ではないかと思います。

つまり、1日5個以上蜜柑を食べ続けていれば、
それだけで柑皮症になっても特に不思議ではないのですが、
それ以下でも発症したり、
柑皮症を繰り返すような場合には、
他の病気が隠れている可能性を疑って、
血液検査などを施行した方が良いのではないかと思われるのです。

最後に柑皮症と似た皮膚が黄色くなる病気に黄疸がありますが、
黄疸では白目が黄色くなるのに対して、
柑皮症では白目の変化はないので、
その点が簡単な鑑別法になります。

蜜柑は健康的な食品で、
その効能も多いと宣伝もされていますが、
食べ過ぎが良いという根拠もないので、
柑皮症を起こさない程度に、
食べるのがまずは妥当な対応ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

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M&Oplaysプロデュース「流山ブルーバード」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
流山ブルーバード.jpg
M&Oplaysプロデュースとして、
赤堀雅秋さんの作・演出による新作、
「流山ブルーバード」が今下北沢の本多劇場で上演中です。

赤堀さんの作品は前はあまり受け付けなかったのですが、
今年は夏の「島の名前」がなかなか良かったので、
ちょっと見直すような思いがあり、
今回も食わず嫌いは止めようと、
続けて足を運びました。

結果的には今回もなかなか楽しむことが出来ました。
色々な意味で、本多劇場的に優れた芝居でした。

千葉県の流山市を舞台に、
魚屋の家業を継いだ49歳の兄に寄生するようにして、
無為な生活を続けている27歳の弟を賀来賢人さんが演じ、
どうしようもない下卑た不倫や人妻の火遊び、
隣同士のいざこざなどが刹那的に描かれます。
流山からは東京は決して遠い理想郷ではなく、
沖縄も手の届かない楽園ではないのですが、
それでも行こうとすると躊躇する主人公は、
その町を離れることが出来ません。
しかしその町も安住の地ではなく、
謎の通り魔が跳梁して悲劇は繰り返されていますし、
不倫の代償で数少ない友情の場も消滅してしまいます。

オールビーの家庭劇を彷彿とさせるような、
地を這いまわるような人間ドラマですが、
太賀さんが屈折した役柄を演じることを含めて、
クドカンの「ゆとりですが何か」を、
元にしている感じもありますし、
オープニングがいきなり宇宙論の話を廃屋(?)で2人の男がしていると、
急に色っぽい女性がやってきて、
挑発的に踊り出すという、
その時点では意味不明としか思えない描写や、
チェホフの「三人姉妹」の引用など、
岩松了作品に似た匂いもあります。

岩松作品やチェホフと同じく、
一番大事な場面や結末と言えるような場面は、
舞台上では描かれないという作劇で、
ラストもポイントとなる台詞はあるのですが、
ろくでなしの兄弟2人が、
ダラダラと話をするだけで終わってしまうので、
その点の物足りなさはあるのですが、
最初の宇宙論にしても、
舞台の流山市という空間が閉じているのかどうか、
ということで主題に関わっていますし、
「三人姉妹」がモスクワ行きに囚われているように、
この物語の主人公も東京や沖縄に囚われているので、
意外に緻密に全ては仕組まれていますし、
正反対のように見える兄弟が、
物語の最初と最後で対象的な裸体をさらし、
それが同じ構造の修羅場に繋がっているなど、
シンメトリックな構成も巧みです。

それほど好きな世界ではないのですが、
完成度の高い作劇には感心しました。

キャストは皆好演ですが、
特に主役を演じた賀来賢人さんが抜群に良くて、
同年代の舞台役者の中では、
最も良いと言って過言ではないと思います。
昔のキムタクに似た華があり、
屈折した感じもあってコメディも出来ますし、
今回のような嫌な役でも、
嫌味なくすっきりと演じることが出来、
何もしないでじっとしているだけで、
ちゃんと芝居になっているのが天性の魅力です。

ドラマでは屈折した役に妙味のある太賀さんは、
今回もそうした見せ場がありますが、
正直舞台ではまだまだの感じはありました。

主人公の兄を演じた皆川猿時さんは、
いつもの笑いを封印した役柄でしたが、
新境地と言って良い地味な熱演で味わいがありました。

赤堀雅秋さんの快調さを再認識する舞台で、
これからもとても楽しみです。

こういう芝居は矢張り好き嫌いはあって、
僕も以前はあまり受け付けなかったのですが、
最近ではこうしたものも悪くないなと感じています。
出来不出来から言えばこうしたタイプの芝居としては、
劇作の完成度も高く、役者も頑張っていて、
レベルは非常に高かったと思います。
唯一アバのヒット曲をガンガン鳴らす音効は、
ちょっと意味不明で疑問でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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ブス会「男女逆転版・痴人の愛」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
痴人の愛.jpg
ペヤンヌマキさんが主宰して安藤玉恵さんが主役を勤め、
AV女優の控室での生態を赤裸々に描いた「女のみち」が忘れがたいブス会が、
ペヤンヌマキさんと安藤さんの40歳を記念して、
駒場のアゴラ劇場で新作公演を行っています。

今回は谷崎潤一郎の「痴人の愛」を、
男女逆転版で舞台化するという企画です。
文豪の作品の著作権が切れたことを利用した企画で、
その点はちょっと嫌らしい感じもするのですが、
舞台が面白ければこちらは文句はありません。

「痴人の愛」は平凡なサラリーマンの男性が、
15歳の小悪魔的な少女ナオミを引き取って、
自分の妻となるべき女性に調教しようとするものの、
逆にナオミの魔性に翻弄され、
最後は彼女の奴隷となってしまう、
という発表された大正時代には、
かなり時代を先取りしたセンセーショナルな作品です。
新聞の連載小説で、
谷崎の作品としては描写などかなりスカスカの、
風俗小説的な感じの強いものです。
僕は高校生の時に最初に読みましたが、
高校生にピンとくるような話ではありませんでした。

それを男女逆転させた今回の作品では、
40歳の独身の教師の女性を安藤玉恵さんが演じ、
彼女がバーで出会った福本雄樹さん演じる15歳の少年を、
気に入って家に連れ込み、
自分好みの男に調教しようとする、
という話になっています。
時代は現代に設定されています。

これを3人のキャストのみで、
ほぼ安藤さんの語りのような様式で舞台化しています。
舞台は能舞台を模したものになっていて、
音楽はチェロの生演奏です。
演技の質は通常の現代劇ですが、
安藤さんが福本さんに自分がかつて着ていて着物を着せ、
福本さんと仲たがいして1人になった時に、
その着物をもう一度自分で着て、
倒錯的な思いに囚われるところには、
能の「井筒」が入っていると思いますし、
原作とは違うラストでは、
谷崎より三島イズムや寺山イズムを感じる部分もありました。

このようにかなり意欲的な公演ではあったのですが、
それでは面白いかと言われると、
正直かなり苦痛で、
面白さを感じることは殆どありませんでした。

欧米の前衛劇風の演出であり内容なのですが、
演技のスタイルがそれに合致したものではなく、
言ってみれば小劇場演劇のスタイルなので、
様式だけ気取っているのが何かそぐわない感じがするのです。
物語的にも今の時代に語るものとしては、
平凡で地味で何を訴えたいのがピンとくるものがありません。
過激な部分もなく、
ただただ単調に時間だけが流れるような芝居でした。

安藤さんはなかなかの熱演でしたが、
かつてのアングラ大暴れ女優という感じはほぼなくて、
映像メディアで披露している演技の、
基本的には延長という感じしかありませんでした。

そんな訳で個人的には、
面白いと思える部分が皆無の観劇であったのですが、
個人の感想は様々ですので、
どうか関係各位には、
御容赦を頂きたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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傷は昼の方が早く治る [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
傷は昼間に治る.jpg
今年のScience Translational Medicine誌に掲載された、
傷の治り方が日内リズムに左右されるという、
興味深い知見です。

人間の身体にはほぼ24時間のリズムで周期的に時を刻む、
体内時計があることが知られています。

個々の細胞には時計遺伝子と言われる複数の遺伝子があって、
それが日内リズムに同期して時を刻んでいます。

その一方で細胞が集合した組織により構成された人体にも、
体内時計の司令塔があり、
脳の視交叉上核という部分にあることが分かっています。
この脳の時計は太陽などの光刺激に反応して、
身体が光を感知した時間で時計を合わせ、
朝と認識して1日を開始するのです。

要するに身体全体としても時計があり、
それを構成する個々の細胞も、
それぞれの体内時計を持っている、
ということになります。

この沢山の時計がどのように同期するのかと言うと、
脳からの信号が自律神経やステロイドなどのホルモンを介して、
個々の細胞に伝わっているのだと説明されています。

ただ、実際にそれでは体内リズムのうちどの程度の部分が、
脳からの指令によって動き、
どの程度の部分が細胞の自律性によって動いているのか、
というような部分の詳細はまだ明らかにはなっていません。

細胞そのものが24時間のリズムを有していることが、
明確になっている細胞の1つが皮膚などにある線維芽細胞です。
この細胞は線維と筋肉の中間くらいの働きを持っているのですが、
皮膚に傷ややけどが起こると、
その刺激により活性化して増殖し、
筋肉を収縮させるタンパク質として知られている、
細胞内のアクチンが立体構造を取り、
傷を収縮させて治すのです。

今回の研究では培養した線維芽細胞を使用した研究や、
ネズミを使って傷の治りを比較した研究、
人間のやけどの治り方を、
やけどを負った時間帯で比較した研究などを組み合わせて、
体内時計や日内リズムが、
線維芽細胞による創傷治癒に与える影響を、
多角的に検証しています。

その結果、
ネズミの線維芽細胞は固有の体内リズムにより機能していて、
創傷を受けた時の細胞の増殖やアクチンの活性化などの変化は、
日内リズムにより影響を受けていました。
ネズミ自体を使用した実験では、
脳の体内時計の影響も同時に受けることにより、
そのリズムはより明確化し、
朝から昼の時間帯に傷を受けると、
傷の治りは明らかに早くなりました。
そして、最後に救急病院でやけどの患者さんの治るまでの時間を、
やけどになった時間で比較すると、
昼に負ったやけどと比較して、
夜に負ったやけどは60パーセント(1.6倍)治るまでに時間が掛かった、
という結果が得られました。

勿論傷もやけども1日で治る訳ではないのですが、
生体反応の活発な昼のうちに治癒機転が開始されないと、
結果として効率が悪くなり、
トータルに治りが遅れてしまう、
ということのようです。

工場の仕事や病院の診療もそうですが、
昼のシステムが通常に稼働している時間帯に、
最初の仕事の指示が入って作業が開始された方が、
飛び込みの仕事や夜間の救急より、
効率は良く効果も得られやすいことと、
似ている側面があるのかも知れません。

これは最後の人間のデータのみが、
医療ニュースなどで取り上げられているのですが、
論文的にはメインのデータはあくまで基礎実験の部分で、
臨床データは補足的なものです。
これはネイチャーやサイエンスの医療系の論文に特徴的なもので、
臨床との結びつきの証明が要求されるので、
そうした補足が付いているのですが、
臨床の論文ではなくあくまでおまけのデータなので、
それ自体は大したことはないのです。

ただ、生体リズムと創傷治癒に少なからぬ関連がある、
という知見は非常に興味深く、
今後こうした知見が傷の治療などに応用されるのも、
そう遠い未来のことではないかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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HbA1cが冬に高いのは何故か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
HbA1cと季節.jpg
2009年のJournal of Diabetes Science and Technology誌に掲載された、
季節により血糖コントロールの指標が変動する、
という以前から指摘されている現象を、
多角的に検証したものです。

この現象についての論文はこれ以降も幾つか出ているのですが、
あまりこれ以上その原因に踏み込んだものはないようです。

HbA1cというのは前2か月くらいの血糖の高さを示す検査値で、
糖尿病のコントロールの指標としては国際的に高く評価され、
それを7%以下とすることが、
多くのガイドラインで糖尿病コントロールの目標と記載をされています。

このように重要な指標であるHbA1cですが、
実は夏に低く冬には高くなるという季節変動が、
1985年以降複数報告されています。
最初の報告は日本発のものです。
その後台湾やスウェーデン、デンマーク、
イギリスやアメリカからも同様の報告が寄せられています。

ただ、これが気温の差による変動であるのか、
それとも寒い季節には運動量が減るなどの、
温度以外の環境変化によるものなのか、
はたまたインスリン抵抗性や血糖を上昇させるホルモンなどの、
身体の変化によるものなのか、
というようなメカニズムについては、
諸説があってまだ確定的な結論に至っていません。

今回ご紹介する論文では、
シンガポール、オーストラリア、カナダ、アメリカという、
緯度や環境の異なる4つの地域において、
2年間糖尿病の患者さんのHbA1cの値を計測し、
季節や気温と数値の変動との関連を検証しています。

オーストラリアという南半球の地域が含まれているのがポイントです。
これまでの研究はほぼ全て北半球のものであったからです。

その結果、
北半球の地域では気温の低い冬に、
南半球のオーストラリアでは矢張り気温の低い夏に、
HbA1cは数値が上昇していました。
その変動の幅は、年間の気温差が大きい、
アメリカのウィスコンシン州でもっとも大きく、
平均で0.4%に達している一方、
年間の温度変化が最も少ないシンガポールでは、
平均で0.1%程度にとどまっていました。

要するに今回の検証においては、
HbA1cの季節変動は、
気温の変動に最も良く相関していて、
気温変化が直接的に血糖変動に関連している可能性が高い、
ということが言えそうです。

そのメカニズムについては、
まだはっきりと解明はされていないのですが、
他の条件が一定であっても、
気温が低い時期には少しHbA1cが高くなるのは通常のことで、
その差に振り回されることは賢明ではない、
ということは間違いがないようです。
また、糖尿病の治療をしていて冬場にコントロールが良好である時には、
夏場の低血糖にはより注意が必要である、
ということも言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

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アルツハイマー病と環境要因(遺伝子解析による検討) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アルツハイマー病とコーヒー.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
アルツハイマー病のリスクとなる環境要因を、
関連する遺伝子変異により解析した論文です。

アルツハイマー病は認知症の代表で、
多くの病因や治療についての研究が重ねられていますが、
未だに不明の点は多く、
根本的な治療薬と言えるようなものも、
実用に至ってはいません。

従って、現状アルツハイマー病については、
その発症のリスクをなるべく下げる、
ということが重要になります。

慢性の病気というのはどのようなものでも、
遺伝的な要因と環境的な要因の、
両者が複合して発症します。

アルツハイマー病の遺伝要因としては、
APOE蛋白の遺伝子変異など幾つかのものが指摘をされています。

それでは、アルツハイマー病の環境要因は、
どのようなものなのでしょうか?

これまでの疫学データにおいて、
高学歴の人はアルツハイマー病を発症しにくい、
というものや、
肥満や喫煙、高血圧、糖尿病、血液のビタミンDの低値などが、
病気の発症のリスクを高めるという報告がありますが、
ある住民などの集団で単純に比較をした、
というようなものが殆どで、
因果関係を云々出来るようなデータは乏しいのが実際です。

今回の研究では、
これまでに指摘されたことのある、
アルツハイマー病の環境要因の発症リスクについて、
それと関連のある遺伝子変異の有無を比較することで、
その因果関係の有無を解析しています。

これは何度かこれまでにも紹介したことのある、
メンデル無作為化解析という手法です。

遺伝子の変異の型というのは、
無作為に生じるものなので、
それにより異なった現象が生じているとすれば、
因果関係に踏み込んだ解析が出来る、
という考え方です。

ただ、この場合は環境要因である高学歴などと、
関連のある遺伝子の変異を比較しているので、
遺伝で環境を評価していることになり、
ちょっと不思議な感じがすることもまた事実です。

17008例のアルツハイマー病の事例と、
37154例のコントロールの遺伝子を解析した結果として、
高学歴はアルツハイマー病の発症リスクを有意に下げ、
ビタミンDの高値と喫煙も、
アルツハイマー病の発症リスクを有意に低下させていました。
ただ、喫煙によるリスクの低下は、
関連する遺伝子変異の選択により消失していました。
コーヒーの摂取はアルツハイマー病のリスクを有意に増加させていました。
これまでに報告のあるもののうち、
アルコールの摂取量や血液のホモシステインや葉酸、ビタミンB12 濃度、
炎症反応のCRPや糖尿病については、
明確な関連は認められませんでした。

今回の遺伝子解析による検証では、
高学歴はかなりアルツハイマー病の発症リスクの低下と関連がありましたが、
それ以外の要因については、
それほどの関連は認められませんでした。

この結果をどう考えるかは微妙なところで、
単純に生活改善が認知症の予防になるとは言えないと、
そう考えておくことが良いように、
個人的には思います。

アルツハイマー病に代表される認知症の予防は、
まだ実証されたものはないと、
そう思っておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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