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2017年の演劇を振り返る [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

大晦日、皆さん如何お過ごしでしょうか?

今日は今年の演劇を振り返ります。

今年は以下の公演に足を運びました。

1.NODA MAP 「足跡姫」
2.「テアトロコント」2017年1月(ミズタニーなど)
3.庭劇団ペニノ「ダークマスター」(リニューアル再演)
4.シアターコクーン・オンレパートリー2017「陥没」
5.オクイシュージ「安心」
6.革命アイドル暴走ちゃん「Crazy Girls Save The World」
7.M&O playsプロデュース「皆、シンデレラがやりたい。」
8.地下空港「サファリング・ザ・ナイト」
9.ベッド&メイキングス「あたらしいエクスプロージョン」
10.三谷幸喜「不信」
11.SPAC「真夏の夜の夢」(野田秀樹脚本)
12.アガリスク・エンターティメント「時をかける稽古場2.0」
13.ほりぶん「得て」(再演)
14.タクフェス「わらいのまち」
15.劇団☆新感線「髑髏城の七人 Seasen花」
16.水族館劇場「この世のような夢」
17.サディスティックサーカス(2017年春)
18.TEAM JACKPOT「怒れる人たち」
19.クロムモリブデン「空と雲とバラバラの奥さま」
20.ジョビジョバライブ「Keep On Monkeys」
21.釣瓶噺2017
22.新ロイヤル大衆舎「王将」(第3部)
23.劇団チョコレートケーキ「60'Sエレジー」
24.シス・カンパニー「黒塚家の娘」(北村想新作)
25.根本宗子「新世界ロマンスオーケストラ」
26.M&playsプロデュース「少女ミウ」(岩松了新作)
27.吉田大八「クヒオ大佐の妻」
28.シベリア少女鉄道「たとえば君がそれを愛と呼べば、」
29.イキウメ「天の敵」
30.福原充則「俺節」
31.風煉ダンス「まつろわぬ民」
32.唐組「ビンローの封印」
33.劇団道学先生「梶山太郎氏の憂鬱と微笑」
34.チェルフィッチュ「部屋に流れる時間の旅」
35.カムカムミニキーナ「狼狽」
36.青年団「さよならだけが人生か」
37.ワンツーワークス「アジアン・エイリアン」
38.ゴキブリコンビナート「法悦肉按摩」
39.鴻上尚史「ベター・ハーフ」(再演)
40.マーム&ジプシー「^^^ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっとー」
41.シンクロ少女「シンクロ・ゴッサム・シティ」
42.シス・カンパニー「子供の事情」(三谷幸喜新作)
43.鵺的「奇想の前提」
44.ナカゴー「ていで」
45.赤堀雅秋「鳥の名前」
46.日本総合悲劇協会「業音」
47.福田雄一台本「ヤング・フランケンシュタイン」
48.M&Oplayプロデュース「鎌塚氏、腹におさめる」(倉持裕新作)
49.ままごと「わたしの星」
50.シアターコクーン・オンレパートリー2017「プレイヤー」
51.サムゴーギャットモンテイプ「NAGISA巨乳ハンター」
52.フエルサブルータ
53.ナカゴー特別劇場「地元のノリ」
54.FUKAIPRODUCE羽衣「瞬間光年」
55.かはづ書屋「巨獣(ベヒモス)の定理」
56.アガリスクエンターティメント「そして怒濤の伏線回収」
57.カンニング竹山単独ライブ「放送禁止2017」
58.こまばアゴラ劇場「を待ちながら」(山下澄人と飴屋法水のコラボ)
59.森山直太朗「あの城」
60.柴幸男「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」(2ヴァージョン)
61.日本のラジオ「カーテン」
62.前川知大「関数ドミノ」(寺十吾演出初演版)
63.ヘドウィグ&アングリーインチ スペシャルショー(キャメロン・ミッチェル出演)
64.ほりぶん「牛久沼」
65.月刊「根本宗子」第14号「スーパーストライク」
66.劇団☆新感線「髑髏城の七人Season風」
67.イキウメ「散歩する侵略者」
68.タクフェス「ひみつ」
69.唐組「動物園が消える日」
70.庭劇団ペニノ「地獄谷温泉無明ノ宿」(再演KAAT)
71.ナイロン100℃「ちょっと、まってください」
72.ピンター「管理人」(森新太郎演出)
73.チェルフィッチュ「三月の5日間」
74.シベリア少女鉄道「残雪の轍 / キャンディポップベリージャム」
75.ブス会「男女逆転版痴人の愛」
76.M&Oplaysプロデュース「流山ブルーバード」(赤堀雅秋新作)
77.劇団チョコレートケーキ「熱狂」
78.穂の国とよはし芸術劇場PLATプロデュース「荒れ野」(桑原裕子新作)
79.URASUJI2017「ちんもく」
以上の79本です。

それ以外に歌舞伎を今年は数本観ています。
1.演舞場新春大歌舞伎(昼の部)
2.演舞場新春大歌舞伎(夜の部)
3.歌舞伎座三月大歌舞伎(夜の部 海老蔵の助六)
4. ABIKAI2017
5. 歌舞伎座七月大歌舞伎(夜の部)
6. 歌舞伎座八月納涼歌舞伎(第2部)

昨年とほぼ同じくらいの本数です。
年の後半は色々と臨時の仕事が入って、
もう少し観たい演劇があったのですが、
だいぶ観ることを断念しました。

特に昨年ベスト1の城山羊の会の新作を、
観ることが出来なかったのと、
劇団チョコレートケーキの「あの記憶の記録」を、
観ることが出来なかったことは残念でした。

今年の私的なベスト5はこちらです。

①シス・カンパニー「子供の事情」
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2017-07-29
2017年の三谷幸喜さんの新作の中では、
この作品が抜群の完成度だったと思います。
キャストも天海祐希さん、大泉洋さんを初めとして、
これでもかという豪華版で、
内容もいい大人に小学生を演じさせて、
自分の少年時代を再現しようというのですから、
如何にも三谷さんらしい自己愛の押しつけですし、
もの凄くあざといなあ、とは思うのですが、
そのこちらの思いを乗り越えるような贅沢さと、
圧倒的な面白さには素直に兜を脱ぐという思いがしました。
正直とても好きという訳ではないのですが、
今年一番観て面白かった芝居というと、
これになるのかなと思います。

②ままごと「わたしの星」
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2017-08-26
ままごとは「わが星」という大傑作がありますが、
その姉妹編とも言うべき「わたしの星」が今回再演されました。
ただ、新たな高校生キャストを公募し、
それに合わせて台本も大幅にリライトして演出も変えているので、
今回は新作の扱いとしてここに入れました。
人間の多くが地球を離れた未来を舞台にしたSFですが、
キャラも新鮮でノスタルジックで甘酸っぱい感動があり、
とても愛すべき素敵な芝居でした。

③月刊「根本宗子」第14号「スーパーストライク」
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2017-10-22-1
2017年も精力的に活動された根本さんですが、
本人を含む4人だけのキャストのこの新作は、
屈折した恋愛模様の描出の仕方に根本さんらしさが溢れ、
緻密に組み上げられたセットや美術も楽しい快作でした。

④ナカゴー特別劇場「地元のノリ」
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2017-09-03
本当に精力的に活動を続けている、
唯一無二の変な劇団ナカゴーですが、
その中ではこのENBUゼミの発表会用に作った作品を、
膨らませたこの作品が、
登場人物のほぼ全てが河童か動物という奇想が抜群で、
ナカゴーの真髄を感じさせる傑作でした。

⑤こまばアゴラ劇場「を待ちながら」(山下澄人と飴屋法水のコラボ)
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2017-10-01
アゴラ劇場の楽屋を観客誘導用の通路として使用し、
俳優としても登場した演出の飴屋さんは、
被ったフェンシングマスクの中で大量の爆竹を爆発させる、
という荒技で度肝を抜きました。
それ以外にもランドセルを背負った血まみれの小学生が、
お腹からはみ出した腸を振り回して一輪車で登場するなど、
今はもう絶滅危惧種と言って良いアングラ趣向が炸裂の怪作で、
これからも飴屋さんからは目が離せません。
ただ、作品としても密度は、
演劇としてそれほど高いものではありませんでした。

これ以外には、
ベスト5には入れませんでしたが、
今乗りに乗っている感じのある赤堀雅秋さんの、
「鳥の名前」と「流山ブルーバード」という2本の新作が、
いずれも完成度の高い荒くれの芝居で感心しました。
これからも絶対観続けたいと思います。
また戯曲の完成度という点では、
年末に観た桑原裕子さんの「荒れ野」が絶妙でした。
あの作品はまた演出を変えて、
是非再演して欲しいと思います。

最後にこれだけは言いたい、
再演での絶品2本です。

①庭劇団ペニノ「地獄谷温泉無明ノ宿」
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2017-11-11
これは間違いなくペニノの代表作で、
タニノクロウさんが自分の祖母の思い出を、
田舎の温泉宿として徹底したリアリズムで、
舞台上に完璧なセットとして完成したその執念に、
とても感銘を受けました。
これまでの難解な作品の数々と比べると、
驚くほど分かりやすいストーリーの本作ですが、
ちゃんとペニノらしい得体の知れない感じも残っています。
繊細な照明や音効の完成度も素晴らしいと思います。
寺山修司の流れを汲む、
セットや演出に役者は奉仕するタイプの芝居ですが、
こうしたものが1つくらいあってもいいですよね。

②日本総合悲劇協会「業音」
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2017-08-19
松尾スズキの問題作の1つ「業音」が、
初演以来久しぶりに再演されました。
これは非常に完成度の高い舞台で、
奇想に満ちた筋立てとキャストの大暴れを含めて、
これぞ松尾スズキという世界を見せてくれました。
せっかくなら新作が観たかったですし、
平岩紙さんが脱がないのは画竜点睛を欠く感じがありますが、
これぞ大人計画、これぞ松尾スズキ、
という1本であったと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い年の瀬をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「勝手にふるえてろ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は年末でクリニックは休診です。
しばらくぶりに神奈川の実家に戻る予定ですが、
風邪でかなりつらい感じです。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
勝手にふるえてろ.jpg
綿矢りささんの短い長編小説を、
大九明子さんが台本化して監督し、
人気者の松岡茉優さんが主演を勤めた映画が、
今ロードショー公開されています。

単館ロードショーに近い寂しい感じなのですが、
新宿のシネマカリテで観て来ました。

これは最高でした。

原作はそう好きではなく、
これなら西加奈子の「あおい」の方が、
数段素晴らしいと思いますが、
この映画は大好きです。

とっても良く出来た日本映画らしい日本映画で、
調子の良かった時の森田芳光監督映画のようです。
原作の骨組みはキチンと残しながら、
巧みに映画的な趣向を加えてアレンジした台本は、
非常に完成度が高いですし、
ウィットに富んだ演出も冴えています。
前半の釣りおじさん古舘寛治さんと松岡茉優さんとの、
とぼけたやりとりを聞くだけでも、
ウキウキするような気分になりますし、
それでいてキチンと映画ならではの、
ジーンとするような場面も用意されています。
妄想が壊れる瞬間をミュージカル風に処理して、
主演の松岡さんに歌わせているのですが、
普通何度もこうした場面を入れたくなるところを、
1カ所だけにしているのがとても節度があって良いのです。
アイデア満載で、
同じ手は二度は使っていないのです。
この辺りにもセンスを感じます。
そして何より素晴らしいのは主演の松岡さんで、
魅力的で切なくて誰でも好きにならずにはいられませんし、
妄想系女子をそれらしく演じながら、
演技過多のいやらしさがまるでありません。
間違いなく彼女の代表作だと思いますし、
今の時点の彼女の魅力の全てが詰まっていると言って、
過言ではありません。

北村匠海さんと渡辺大知さんという今売り出し中の2人が、
それぞれの特徴的な造形で松岡さんの恋人を演じていて、
こちらもとても完成度が高くで作品を盛り上げています。
北村さんの方は原作のイメージそのままで、
渡辺さんの方はかなり違うのですが、
原作通りでは映像的には成功しないので、
その改変もとてもクレヴァーであったと思います。
2人ともとても素敵です。

ラスト雨の中で狭い場所で抱き合うのは、
「ティファニーで朝食を」に似ています。
あの映画も妄想と現実が入り交じり、
ヒロインが突飛で目茶苦茶で抜群に魅力的で、
ヒロインが1曲だけ上手くはない歌を歌うので、
多分裏設定としては取り入れているのだと思います。

そんな訳で非常に完成度の高い見事な映画で、
観れば必ず心に長く棲みつく影響力の大きな作品です。

妄想系女子が妄想と現実の恋愛の相克に苦しみ、
成長してゆくというドラマは、
ある意味最近の定番でもありますが、
それをここまで完成度高く、
胸がウキウキするようにヴィヴィッドに仕上げた作品は、
これまでにあまりなく、
年末になりましたが、
個人的には今年一番の邦画となりました。

とてもとてもお薦めです。

最高ですよ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い年の瀬をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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慢性腎臓病における降圧治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日からクリニックは年末年始の休診となります。
ただ、あれやこれやで1日バタバタしそうな感じです。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
慢性腎臓病の降圧療法の効果.jpg
今年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
慢性腎臓病に対する降圧治療の効果を検証したメタ解析の論文です。

慢性腎臓病は心血管疾患のリスクになり、
透析が必要な腎不全へと進行するリスクが高く、
生命予後にも大きな影響を与える病気です。

高血圧も心血管疾患の大きなリスクであり、
そのため慢性腎臓病の進行予防のためにも、
血圧を適正なレベルに保つことが、
重要であると考えられています。

ただ、それでは目標とする血圧をどのレベルにするべきか、
という点については、
未だ結論に至っていません。

KDIGOという国際的な慢性腎臓病のガイドラインでは、
尿中アルブミンが30mg/g cr未満の場合には、
降圧目標は140/90mmHg未満を、
尿中アルブミンが30mg/g cr以上の場合には、
130/80mmHg未満を、
血圧の目標値と定めています。
それとは別個にヨーロッパの降圧ガイドラインでは、
慢性腎臓病の降圧目標値は140/90未満 と定められていて、
特に尿タンパクによる区分けはありません。

2015年に発表されたSPRINT試験では、
慢性腎臓病を含む集団において、
収縮期血圧が140mmHg未満を目指す通常のコントロールと、
120mmHg未満を目指すより厳密なコントロールを比較して、
より厳密なコントロールを行った方が、
心血管疾患のリスクも総死亡のリスクも低下した、
という結果が報告され非常な注目を集めました。

その一方でより厳密な降圧において、
急性の腎障害のリスクは増加しており、
慢性腎臓病の患者さんのみの解析では、
全体と同等の傾向はあるものの有意にはならなかったので、
本当に慢性腎臓病においてもより厳密な降圧が、
患者さんの予後に良い影響を及ぼすかどうかは、
結論が出ていません。

今回の研究はこれまでの介入試験と呼ばれる厳密な方法の臨床試験の結果を、
まとめて解析したメタ解析の研究ですが、
慢性腎臓病の患者さんにおいて、
通常より厳密な降圧治療と通常の治療との比較に、
ターゲットをおいたものとなっています。

対象となる患者さんは慢性腎臓病のステージ3から5で、
これは推計の糸球体濾過量が60mL/min/1.73㎡未満であることが条件です。
30の介入試験で登録された、
15924名の患者さんをまとめて解析した結果として、
ベースラインの収縮期血圧148(±16)mmHgを、
140mmHgを目標として降圧治療をした場合と、
より厳しく132mmHgを目標として降圧治療をした場合とで比較したところ、
厳密な目標を設定した方が、
総死亡のリスクが14.0%(95%CI; 0.76から0.97)有意に低下していました。

このように慢性腎臓病の患者さんのみでの解析でも、
現行のガイドラインより低い目標を設定して降圧した方が、
より患者さんの生命予後には良い影響が認められました。
ただ、これは治療薬剤などによっても変わる可能性があり、
今後メタ解析以外の単独データにおいても、
より精密な検証が必要となるのではないかと思います。

現状は高血圧を合併した慢性腎臓病の患者さんにおいては、
降圧時の腎機能の急速な低下に注意しつつも、
収縮期血圧は130mmHgくらいを目標に設定して、
降圧をはかることが望ましいようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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  • 作者: 石原藤樹
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  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


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小児の急性気道感染症に対する抗菌薬治療には何を使用するべきか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
今年の診療は本日までで、
明日からは年末年始の休診となります。
ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
広域と狭域の抗生物質の違い.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
小児の気道感染症に対する抗菌薬の選択についての論文です。

抗菌薬は細菌感染症の治療薬ですが、
細菌には多くの種類があるので、
最初の頃に開発された抗菌薬は
(ペニシリンなど主に細菌や真菌などが産生する物質であったので、
抗生物質と呼んでいます)、
ある特定の種類の細菌の感染症には有効であるけれど、
同じ病気の原因となる別の細菌の感染症には効かない、
というような問題がありました。

そのため抗生物質の構造を変えたり、
別個の薬剤と組み合わせたりして、
より幅広い種類の細菌感染に有効な薬が次々と開発されました。

こうしては開発された幅広く有効な抗菌薬のことを、
広域スペクトラム抗菌薬と呼んでいます。

1種類の薬で多くの場合に対応可能なのですから、
当時はこれは大きな進歩と思われました。

ただ、次第にそうではないことが明らかになりました。

多くの細菌性の扁桃腺炎に対しては、
通常のペニシリンで充分なことが殆どであるのに、
より強力で広域な抗菌剤を使用することにより、
耐性菌が増加するような弊害や、
副作用や有害事象が増加するという弊害が生じました。

特に耐性菌の問題が最近は重要視されるようになり、
抗菌剤の適正使用が強く指摘されるようになっていることは、
皆さんも良くご存じの通りです。

さて、小児の上気道感染症のうち、
抗菌剤の使用が必要と考えられているのは、
急性中耳炎、溶連菌による急性扁桃腺炎、急性副鼻腔炎という、
3種類の病気に対してです。

こうした病気に対する第一選択の抗菌剤として、
アメリカ小児科学会は,
ペニシリンかアモキシシリンを推奨しています。
この2種類は狭域スペクトラムの抗菌剤です。
一方で急性中耳炎の臨床試験においては、
アモキシシリンにβラクタマーゼ阻害剤のクラブラン酸を配合した、
商品名クラバモックスなどの抗菌剤を使用し、
その有効性が確認されています。
これは区分から言えば広域スペクトラムの抗菌剤になります。

同様に急性副鼻腔炎においても、
アメリカ小児科学会が第一選択として、
アモキシシリンを推奨しているのに対して、
アメリカ感染症学会の臨床ガイドラインでは、
クラバモックスが推奨されています。

溶連菌による急性扁桃腺炎にも、
ペニシリンのような狭域スペクトラムの抗菌剤が推奨されていますが、
広域スペクトラムの抗菌剤であるセファロスポリンに、
ペニシリンと比較して治療の失敗が少なかった、
というメタ解析の論文が発表されていて、
実地臨床ではそうした広域スペクトラムの抗菌剤が、
多用されているという実態があります。

今回の研究では、
アメリカの31の小児科のクリニックにおいて、
生後半年から12歳で、
溶連菌による急性扁桃炎と急性中耳炎、急性副鼻腔炎の、
3種類の病気にかかったお子さんを、
広域スペクトラムの抗菌剤で治療した場合と、
狭域スペクトラムの抗菌剤で治療した場合とに分け、
その後の経過を比較検証しています。

これは2つの臨床データに分かれています。
一方は30159名のお子さんを後から抽出して、
治療経過を比較したもので、
もう一方は2472名のお子さんを最初に登録して、
くじ引きで治療薬を広域スペクトラムと狭域スペクトラムに分け、
その治療経過を、
医師による記録と、
患者さんの家族からの聞き取りの双方で比較検証したものです。
治療の成功の有無は治療開始後14日の時点で評価します。

ここでの広域スペクトラムと狭域スペクトラムの薬剤については、
こちらをご覧下さい。
広域と狭域抗生物質の表.jpg
狭域スペクトラムの抗菌剤は、
ペニシリンとアモキシシリンのことで、
広域スペクトラムの抗菌剤としては、
セフェム系の抗菌剤とマクロライド系のアジスロマイシン、
そしてクラバモックス(これだけ商品名です)がエントリーされています。

その結果…

まず後ろ向きの解析をした30159名のデータでは、
治療の成功率に狭域スペクトラムと広域スペクトラムの抗菌剤で、
有意な差は認められませんでした。

前向きの解析をした2472名のデータでは、
広域スペクトラムの抗菌剤の使用において、
小児QOLにやや悪影響が認められました。
また、治療者の視点から見た有害事象も、
患者さんの家族から見た有害事象も、
いずれも広域スペクトラムの抗菌剤で多くなっていました。

このように実地臨床におけるデータにおいて、
小児の急性気道感染症の治療の第一選択は、
アレルギーなどの問題がなければ、
ペニシリンかアモキシシリンが適切で、
クラバモックスを含む広域スペクトラムの抗菌剤は、
その有効性において勝るものではなく、
有害事象は多くなる可能性が高いので、
なるべく使用を控えることが望ましい、
という結論になっています。

抗菌剤に関する考え方は最近大きく変わりつつあるので、
その全てに賛同は出来ない面もあるのですが、
臨床医の端くれの1人としては、
日々情報はアップデートを心がけつつ、
目の前の患者さんに対して、
現時点で最善の選択を模索したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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原発性アルドステロン症の二次検査の方法とその精度 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
PAの二次検査の方法.jpg
今年のHypertension誌にウェブ掲載された、
原発性アルドステロン症の二次検査についての論文です。

原発性アルドステロン症というのは、
治療抵抗性の高血圧の2割に関わるという報告があるほど、
近年高血圧の原因として重要視されている病気です。

身体の水と塩分を保持するのに重要な働きを持つ、
アルドステロンというホルモンが、
副腎の腫瘍から過剰に産生されることにより、
身体が水と塩分を貯留して血圧が上昇し、
塩分(ナトリウム)と交換にカリウムが排泄されるので、
血液のカリウム濃度が低下します。

通常アルドステロンの調節には、
腎臓から分泌されるレニンが関連していて、
レニンがアルドステロンの分泌刺激になります。
しかし、原発性アルドステロン症の時には、
レニンの調整が効かなくなるので、
アルドステロンが増加し、
レニンは抑制されている、
というパターンを取るのが通常です。

そこで、原発性アルドステロン症のスクリーニングとして、
アルドステロンをレニンで割り算して、
その数値がある決められた数値を上回った場合に、
原発性アルドステロン症の疑いがあるとして、
精密検査を行なうことが決められています。

日本においてはアルドステロンをpg/mLで数値化し、
レニン活性をng/mL/hrで数値化して割り算し、
それが200を超える場合に、
原発性アルドステロン症の疑いありと診断しています。

一方で欧米ではアルドステロン濃度の単位は、
ng/dLを用いることが多く、
このため比率は20を超える場合を陽性としています。

この簡便なスクリーニングは有用性の高いものですが、
身体の塩分が少ない状態では、
レニン活性はアルドステロンとは別個に上昇するので、
現行のガイドラインにおいては、
この検査は塩分制限は行わずに施行すること、
と記載をされています。

さて、このように高血圧の患者さんでは初診の際に、
血液のアルドステロンとレニン活性を測定して、
二次性高血圧のスクリーニングをすることが多くなりましたが、
それで疑いがあるとされたケースでは、
機能確認検査と言われる二次検査を行なうことが推奨されています。

この機能確認検査には、
カプトプリル試験、生理食塩水負荷試験、フロセミド立位試験、
経口食塩負荷試験、フルオドロコルチゾン食塩負荷試験の、
5種類があります。

いずれも通常の調節が働いていれば、
レニン活性が上昇したり、
アルドステロンの分泌が抑えられるような負荷を行って、
それでもレニン活性が上昇しなかったり、
アルドステロンの分泌が抑制されない時に、
原発性アルドステロン症の疑いが強いと判断します。

このうち欧米で最も信頼性が高い試験とされているのが、
フルドロコルチゾン食塩負荷試験です。
これはアルドステロンに似た性質を持つフルドロコルチゾンを、
比較的大量で4日間連続で内服し、
かつ塩分を多く摂るようにして、
5日目にレニン活性とアルドステロンを測定する、という方法です。
ただ、この試験では血液のカリウム値が高度に低下するリスクが高く、
原則入院で行う必要があるなど手間が掛かるため、
日本ではあまり行われていません。

国内で最も広く行われていて、
海外でも一定の評価があるのが、
カプトプリル試験です。
これはACE阻害剤であるカプトプリルを、
50ミリグラムという比較的高用量を、
1回のみ内服して、
その前と服用後60分と90分で採血をして、
アルドステロンの正常が低下が、
見られるかどうかで判断します。

この試験は血圧が急激に低下するなどの危険性が、
ゼロではありませんが、
比較的生じる可能性のある副作用は少なく、
外来でも簡単に出来るのが大きな利点です。

それに次いで最近使用頻度が高いのが、
生理食塩水負荷試験です。
これは生理食塩水を4時間で2リットル点滴し、
その前後でレニン活性とアルドステロンを測定するものです。
診断能は高いと評価されていますが、
心臓に負担が大きく掛かることが欠点で、
時間も掛かるので原則入院が必要となります。

以前日本で行われることが多かったのが、
フロセミド立位試験で、
これは利尿剤を飲んで2時間立位を保ち、
その前後でレニン活性とアルドステロンを測定するというものです。
より簡便に立位試験というものもあって、
これは利尿剤は使用せず、
2時間の立位のみを行うものです。
いずれもレニン活性の増加刺激となりますので、
それでもレニンが抑制されていれば、
原発性アルドステロン症の可能性が高いと判断するのです。

僕が実際にこれまで一番やったことがあるのは、
この方法です
ただ、レニン活性の刺激試験は、
診断能が低く本質的ではない、という意見が強く、
最近は施行されない流れになっています。

以上のうちどの機能確認検査が最も優れているのか、
と言う点については、
あまり直接比較をしたような信頼の置けるデータが、
これまで存在していませんでした。
そのため、国内外のガイドラインにおいても、
明確なことは殆ど書かれていません。

今回の研究はその欠落を埋めようとしたもので、
国外で信頼性が高いとされるフルドロコルチゾン食塩負荷試験と、
カプトプリル試験、そして生理食塩水負荷試験の3種類の試験を、
初めて直接的に比較し、
どの検査の信頼性が一番高いのかを検証しています。

対象はレニン活性とアルドステロン値のスクリーニングにより、
原発性アルドステロン症の疑いのある280名で、
3つの群に振り分けて3種類の試験を施行し、
その後236例は残りの2種類の試験も施行して、
診断の正確さを比較しています。

これは基本的にはフルドロコルチゾン食塩負荷試験が、
最も診断能が高いことを前提としているのですが、
他の2種類の試験のうちでも、
1つでも陽性となった患者さんにおいては、
造影CT検査を施行して、
副腎腺腫の有無をチェックしています。
静脈サンプリングについては手術が予定された患者さんにおいてのみ、
施行されています。

フルドロコルチゾン食塩負荷試験を基準とすると、
生理食塩水負荷試験は感度も特異度も、
ほぼ同じ水準に達していました。
カプトプリル試験については、
海外の通常の陽性基準である、
前値からアルドステロン値が、
負荷後に30%未満の低下であった場合を採用すると、
診断能は他の2つの試験より低い、
と言う結果になりましたが、
これをアルドステロン値が負荷後も11 0pg/mL以上であることと変更すると、
その感度も特異度も他の2種類の試験と同等になりました。

このように今回の結果では、
3種類の試験の中で最も簡便で外来でも施行可能な、
カプトプリル負荷試験を、
負荷後のアルドステロン値が110pg/mL以上を陽性として運用することが、
最も有用性が高いと判断されました。
(感度90%。特異度90%)

今回の結果は、
全ての事例で最終的にアルドステロン症の診断が、
なされていないという点はやや問題がありますが、
3種類の負荷試験の、
初めての直接比較という意味で大きな意義があり、
今後のガイドラインに反映されることは間違いのない知見だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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インフルエンザワクチンを毎年接種することの免疫への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インフルエンザの免疫とワクチン.jpg
今年のthe Journal of Infectious Diseases誌に掲載された、
インフルエンザワクチンと免疫についての論文です。

インフルエンザがA型とB型とも、
クリニックのある品川区でも本格的な流行が始まっています。

インフルエンザワクチンの接種についても、
例年であればもうとっくに終わっている時期なのですが、
今年はワクチンの出荷の遅れが影響して、
ワクチンの不足した状態が続いたために、
まだ特に2回接種の必要なお子さんについては、
来年に持ち越しているケースも多いのが実際です。

現行使用されているインフルエンザワクチンは、
スプリットワクチンと言われるもので、
元になるインフルエンザウイルスを殺して、
バラバラにした抗原を精製して集めたものです。
このタイプのワクチンは安全性は高い反面、
液性免疫と呼ばれる免疫の一部しか刺激しないので、
その予防効果も限定的ではないか、
という危惧が以前からありました。

ただ、2009年の所謂「新型インフルエンザ」の流行時には、
その時流行していたウイルス自体を材料として、
迅速にワクチンを製造して接種を行ったので、
その予防効果は非常に高いものとなり、
スプリットワクチンの高い有効性を再評価するものとなりました。

本来スプリットワクチンは細胞性免疫の賦活作用はない、
という認識であったのですが、
これ以降現行のインフルエンザワクチンにも、
細胞性免疫の刺激作用があるという報告がもたらされるようになりました。

その一方で同じ2009年の時には、
過去に何度もインフルエンザワクチンを接種していると、
新型インフルエンザに罹りやすいという見解が、
世間を賑わしたりもしました。

これは実際にインフルエンザに罹った時には、
液性免疫と共に細胞性免疫が刺激されて、
その後の同じウイルスの感染のみならず、
似通ったタイプのウイルスに対する免疫も誘導されるのですが、
ワクチンではそうした効果は得られないので、
別個のウイルスの感染に対しては、
却って罹りやすくなるのではないか、
という理屈です。

実際に動物実験や免疫不全のお子さんでの研究では、
インフルエンザワクチンを繰り返し接種することにより、
インフルエンザウイルスの実際の感染で誘導される、
CD8陽性リンパ球の活性化が阻害される、
という報告が論文化されています。

ただ、これが免疫不全の患者さん以外でも当て嵌まることなのか、
と言う点については、
まだ結論が出ているとは言えません。

今回の研究においては、
2009年に当時新型インフルエンザと呼ばれた、
H1N1pdm09に対するグラクソ社のアジュバントを含むワクチンを、
接種した持病のない医療従事者250名を登録し、
その後ワクチン接種を行わなかった単回接種群と、
毎年接種を繰り返した複数接種群とに分け、
繰り返し接種群は2012年と2013年に、
抗体の上昇やリンパ球の活性を測定し、
その比較と検証を行っています。

その結果、
単回の接種でも繰り返しの接種でも、
その後ワクチン株と同じウイルスに対する抗体価は、
感染防御レベルまで上昇していました。
T細胞により産生されウイルスを攻撃するインターフェロン・ガンマの反応と、
CD4陽性T細胞の反応は、
繰り返しのワクチン接種では維持されていましたが、
単回の接種では徐々に低下を示しました。
以前繰り返しのワクチン接種により低下するとされた、
CD8陽性T細胞の機能は、
インターフェロン・ガンマ産生細胞に限って見ると、
ワクチン接種を繰り返しても、
単独接種群と同等のレベルを維持していました。

つまり、インフルエンザワクチンを繰り返し接種することにより、
液性免疫ばかりではなく細胞性免疫においても、
一定の増強作用があり、
繰り返しの接種により別の型のウイルスに罹りやすくなる、
ということはなさそうだ、という結果になっています。

ただ、これは免疫増強剤を添加した、
H1N1pdm09に対するワクチンのみの特徴である、
と言う可能性も否定は出来ないので、
今後更なる検証が必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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大腸癌の予後と喫煙との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
大腸癌の予後と喫煙.jpg
今年のAnnals of Oncology誌に掲載された、
喫煙と禁煙が大腸癌の予後に与える影響についての論文です。

喫煙が多くの病気のリスクとなっていることは、
多くの疫学データで実証されている事実です。
その中には大腸癌もあります。

以前発表されたメタ解析の結果では、
非喫煙者と比較して喫煙者では、
トータルな生命予後が26%低下するとされています。
ただ、禁煙をした以前の喫煙者では、
どの程度そのリスクに差があるのか、
といった事項については、
あまり明確なことが分かっていませんでした。

そこで今回の研究では、
禁煙してからの期間と大腸癌の予後との関連に、
主なターゲットを絞って、
14の前向きコホート研究をまとめて解析するメタ解析の手法で、
この問題を検証しています。

対象は14の臨床研究の個人データ、
トータル12414名の大腸癌の患者さんです。
大腸癌の生命予後についての観察期間の平均は5.1年です。

その結果、
観察期間中に5229名が死亡しており、
そのうちの3194名は大腸癌が原因でした。

非喫煙者と比較すると、
診断の時点での喫煙者は、
総死亡のリスクが1.29倍(95%CI; 1.04から1.60)、
診断の時点では禁煙していたかつての喫煙者も1.12倍
(95%CI; 1.04から1.20)それぞれ有意に増加していました。

診断の時点での喫煙者と比較して、
その時点で10年以上禁煙していたかつての喫煙者は22%
(95%CI; 0.67から0.85)、
禁煙期間が10年未満のかつての喫煙者は22%
(95%CI; 0.69 から0.88)、
それぞれ総死亡のリスクが有意に低下していました。

大腸癌による死亡のみについて見ると、
10年以上禁煙をしていた患者さんでは、
死亡リスクが24%(95%CI; 0.67から0.85)有意に低下していましたが、
禁煙している時間が10年未満では、
死亡リスクの有意な低下は認められませんでした。
大腸癌の進行度と喫煙との関連については、
データが不充分な物が多く、
明確な関連は得られませんでした。
喫煙と大腸癌の部位との関連では、
結腸癌より直腸癌において、
より明確な関連が認められました、

このようにそれほど明確とまでは言えないものの、
禁煙から10年以上が経過すれば、
大腸癌による死亡リスクは有意ではなくなるので、
大腸癌の予後を改善するという意味合いからも、
1日でも早い禁煙を、
喫煙者には促すことが必要だと言って良いように思います。

これは蛇足ですが、
この論文が代表的な医療サイトの1つに紹介されているのですが、
その内容が明らかに誤っていました。

大腸癌の診断後に禁煙すると、
その予後が改善する、という内容になっていて、
それが本当ならビックリですが、
常識的に考えて5年程度の観察期間で、
その時点で禁煙した場合と喫煙を続けた場合で、
癌の生命予後にそれほどの違いが生じるとは考えにくいと思いますし、
それだと禁煙期間を10年未満と10年以上で分けたことと矛盾します。
実際には癌と診断もしくは登録された時点で、
それ以前の禁煙期間がどの程度あったのかを比較しているのです。

医師のコメントが複数寄せられていますが、
指摘しているものは1つもないので、
コメントをされた皆さんも1人も原文は読まれていないようです。
(2017年12月25日午前6時11分確認)

このサイトの署名記事は、
出展は論文以外記載されていないので、
論文の要約のみのソースであるようなのに、
海外の医療ニュースの引用のように、
研究者の発言のようなカギ括弧の記載をしているなど、
内容や様式にかなり問題があるように個人的には思います。

皆さんもくれぐれも、
こうした記事を鵜呑みにはされないで下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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穂の国とよはし芸術劇場PLATプロデュース「荒れ野」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
荒れ野.jpg
とよはし芸術劇場のプロデュース公演として、
平田満さんと井上加奈子さんの夫婦に、
いぶし銀の役者が集まり、
独特の彫りの深い人間ドラマに定評のある、
桑原裕子さんの作・演出の新作「荒れ野」の東京公演に足を運びました。

これはなかなか見事な作品でちょっと驚きました。

以前観た桑原さんの「痕跡」という作品も、
ミステリー的な失踪劇を深い人間ドラマとして、
見事に着地させていて感心しましたが、
今回も火事のためにある家族が、
昔因縁のあった女性のところに一夜だけ泊まらせてもらう、
というだけの話の中に、
家族のような枠組みの不確かさと、
人生の悲哀のようなものを感じさせて、
その鋭利な刃物のような切り口に、
とても感銘を受けました。

これは今回の上演だけで終わらせては、
もったいない作品だと思いますし、
キャストや演出を変えて、
末永く上演されて欲しい、
一種の古典としての風格がある戯曲だと思います。

テネシー・ウィリアムスに匹敵するような家庭劇で、
こういう地に足の付いた、
完成度が高くかつ観客の肺腑を抉るような攻撃性のある作品は、
これまでの日本の劇作の歴史の中では、
あまり類例がないと思います。

大袈裟に聞こえますか?
いえいえ、決してそうではありません。

舞台は井上加奈子さん演じる独身の中年女性のアパートの一室で、
彼女は長く父親の介護をしていて、結婚をすることが出来ず、
父親が亡くなった後に、
階上の部屋に住む小林勝也さん演じる元教師の老人と、
画家を目指すその教え子の青年(中尾諭介さん)の二人を、
同居人として呼び込み、奇妙な共同生活をしています。
老人と青年とは孫ほどの年の差がありながら、
同性愛的な関係にあるのです。

そこに平田満さんと増子倭文江さん演じる夫婦と、
多田香織さん演じる娘の3人家族が、
傍のショッピングモールの火事で、
自宅が延焼する危険があるために、
一夜の宿を求めて駆け込んで来ます。

平田満さんと井上加奈子さんは昔からの友人で、
男女の関係があったのではないかと、
妻の増子さんは勘ぐっていたのです。

平田さんは7年前に急性冠症候群となり、
心臓バイパス手術をしたのですが、
手術を薦める妻に耳を貸そうとしなかった平田さんが、
最後に手術を決断したきっかけは、
井上さんからの「父が死んだ」というメールでした。
つまり、妻のためではなく、井上さんのために、
平田さんは生きようという決断をしたのではないかと、
妻の増子さんは疑っているのです。
自分は夫のために人生を捧げて来たという自負があるのですが、
夫の心がもし自分の方を向いていないのだとすれば、
自分達が夫婦として家庭を築いて来たことも、
結局無意味なことになってしまいます。

普段ならそんなことは考えもしないのですが、
火事で家が燃えてしまったかも知れず、
その不安の中で、
もし家という形が失われてしまったら、
家族であることすら崩壊してしまうのではないかと、
妻は恐れを感じているのです。

一方で井上さんも、
父親のために人生の大部分を犠牲にしながら、
その父親が死んだ母親のことしか覚えておらず、
自分の存在は無視していたことに深く傷ついていて、
それが死んだ後も父親の気配となって、
そのアパートに染みついています。

翌朝になって火は鎮火し、
平田さんの妻は自分の家がどうなっているのかを見るために、
1人先に家を出るのですが、
井上さんと上の階の奇妙なカップル、
そして平田さんの4人は、
家族であることを捨てて、
別の絆を求めるように、
一緒に同じコタツを囲むのです。

この場合の家族というのは、もっと大きく国家のような共同体も、
同時に指しているように思えるのですが、
火事のような惨事によって、それを構成している枠組みが揺らぐと、
その本質的な不確かさが表面化して、
全ての関係は流動的なものになってしまうのです。
それがおそらく題名になる「荒れ野」ですが、
そこに作者は幾ばくかの希望も、
付加しているようにも思えます。

1時間45分程度の一夜を描いた数場の一幕劇ですが、
構成は非常に巧みに練られていて、
人物の造形も極めて的確に彫り込まれています。
テーマ曲としていしだあゆみの「あなたならどうする」が使われ、
替え歌も含めてそれが何度も登場人物の口をつくのも効果的で、
これは典型的なアメリカ古典戯曲の手法です。
燃えたのかどうか分からない家を、
シュレーディンガーの猫に見立てるなどの蘊蓄も、
登場人物の1人が理系の教師という設定を、
巧みに取り込んでいます。

役者陣も非常に頑張っています。
特に増子倭文江さんと小林勝也さんが良く、
この2人のベテランの演技が、
この作品をワンランク上のものに引き上げていたと思います。

小林勝也さんは昔から変な棒読みの役者さんで、
個人的にはあまり好きではなかったのですが、
今回初めて良かったと思いました。
その得体の知れない薄気味悪さと飄逸さの絶妙なブレンドは、
小林さんにしてなし得た1つの境地であると思います。
増子さんは極めて老練な芝居でした。

この座組で企画であれば、
平田満さんと井上加奈子さんが、
この役を演じることは当然なのですが、
正直2人にフィットしていたとは言いがたい面もあり、
また別のキャストであれば、
違う味わいがあったのではないかとも感じました。
(失礼をお許し下さい)

作者自身による演出は、
その戯曲の完成度と比較すると、
ちょっと疑問に思うところがあります。
部屋にはベランダがあって、
そこのガラス戸を閉じるかどうかで、
空間が変わるという設定になっているのですが、
サッシは実際にはセットにはないので、
ちょっと違和感があります。
これは付けるべきではなかったでしょうか?
また、テーマ曲は1回音効として流した方が、
分かりやすかったように思います。
オープニングの照明のみによる火事の表現も、
蛇足のように感じました。

このように少し不満もあるのですが、
極めて素晴らしい作品であることは確かで、
是非再演を期待したいと思います。
大変感銘を受けました。

最後にこれは蛇足ですが、
僕が観劇した日に最前列に座っていたおじさんが、
ともかく絶えず大きな声を上げて「わはははは」と、
狂言のように笑うので、
集中が切れてつらい思いをしました。
内容を理解はしていて笑っているのですが、
別に笑えるような場面でなくても、
ある種のキャラクター同士の会話のすれ違いなどに、
全て反応して声を上げてしまうので、
時に役者の台詞まで聞き取れなくなるのです。

時々そうした人がいて、
何故ああした行為をするのだろうか、
と不思議にも思っていたのですが、
今回隣で観察してみて、
「独り言」に近いようなものであるのかな、
と感じました。
もう少し医学的な分析は出来そうですが、
失礼に当たるようなので控えます。
意図的な行為ではどうやらなさそうなので、
何に笑おうと個人の勝手で、
非難するべき性質のものではないのですが、
前の列の人の座高が異様に高かったり、
帽子を取ってくれなかったりするのと一緒で、
こうした時にはライブのつらさを思い知るような思いがします。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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URASUJI 2017「ちんもく」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日二本目の更新も演劇の話題です。
それがこちら。
ちんもく.jpg
元BARBEE BOYSの杏子さんと、
マツコ・デラックスの元ネタのような深沢敦さんがタッグを組み、
松村武さんの作・演出で、
歌あり踊りあり殺陣ありの、
仕事人シリーズのパロディ芝居が、
URASUJIと題されて2005年から不定期に上演され、
上演の度に人気を集めています。

僕はあまりご縁がなかったのですが、
前回の2015年は行きたいな、
と思っているうちに終わってしまったので、
今回は初めて実際に足を運びました。

今回は「ちんもく」という題名で、
今年スコセッシ監督が映画にしたことで話題になった、
遠藤周作の「沈黙」が元ネタになっています。
まあ、原作と言うより映画版が元ネタです。

杏子さんや池田有希子さん演じる仕事人が、
長崎で迫害されているキリシタンを助けるために、
長崎奉行と対決し、
実は奉行の側は、
深沢敦さん演じる化け猫などに乗っ取られている、
というお話です。

懐メロ歌謡が上手い具合に差し挟まれて、
歌合戦みたいになるのがなかなか良い感じです。
トータルには劇団新感線の昔のネタ物に近いお芝居で、
今はもうスズナリのような小さな小屋で、
新感線がこうしたお芝居をするようなことはありませんから、
楽しく贅沢な気分に浸ることが出来ました。

ただ、今回は元ネタがかなり暗い話で、
真面目な松村さんは、
かなり元ネタの設定を活かして、
「神の沈黙」みたいな神父の長台詞まで、
そのまま入れているので、
ちょっと重すぎる気もしました。

キャラも藤田記子さんの大暴れなどは、
勿論楽しいのですが、
キャラの中だけで完結してしまうような感じがあって、
物語の構造をかき乱すには至らないので、
その点もやや物足りなく感じました。
キリシタンの踏み絵を利用して、
踏み絵のタップダンスになるという面白い趣向があるのですが、
もっと面白くなりそうで、
なんとなく消化不良に終わっていました。

そんな訳で大満足という感じではなかったのですが、
スズナリにしては前方の客席はゆったりしていて落ち着けましたし、
とても贅沢で楽しい気分を味わうことが出来ました。

お薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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劇団チョコレートケーキ「熱狂」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

今日は祝日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
熱狂.jpg
劇団チョコレートケーキが、
ナチス・ドイツの歴史を描いた連作のうちの2作品を、
連続上演の形で再演しました。
そのうちの「熱狂」に足を運びました。

もう1本の「あの記憶の記録」と、
合わせ鏡のようになっている連作なので、
出来れば両方観劇したかったのですが、
丁度レセプト作業が厳しくて、
結局「あの記憶の記録」の方は断念しました。

この「熱狂」はナチス・ドイツが、
まだ弱小の政治団体としてスタートを切ってから、
ミュンヘン一揆などの何度かの挫折を経て、
ついにヒットラーが国会で首相に就任するまでの出来事を、
ナチス親衛隊に入隊する浅井伸治さん演じる、
ナチス党員の若者を狂言回しとして描いています。

この人物のみが架空の人物で、
それ以外はヒットラー本人を含めて、
実在のナチの大物達を、
全員男性の8人の役者が演じます。

ナチスの戦争前の時期を描いた日本の戯曲と言えば、
三島由紀夫の「わが友ヒットラー」が有名で、
これはヒットラー、レーム、クリップ、シュトラッサーによる4人芝居です。
この「熱狂」でも触れられる、
ヒットラーの親友で一番の同士でもあった突撃隊長レームを、
ヒットラーが粛正しなければならなかった心理を、
三島流に描いたもので、
その作品の中ではヒットラーとレームは、
同性愛のカップルのように描写されています。

それから最近では三谷幸喜の「国民の映画」が、
もう少し時代の下った開戦後の時期に、
ナチの宣伝相ゲッペルスとその夫人を主人公として、
宣伝映画の制作に、
時の芸術家達が巻き込まれ利用される様をコメディで描き、
三谷さんならではの鋭い視点と、
抜群の構成力が素晴らしい優品となっていました。
ここではナチの高官として、
ゲッペルス以外にヒムラーとゲーリング元帥が登場します。

今回の「熱狂」は、
「わが友ヒットラー」の影響は受けていると思うのですが、
レームを粛正した「長いナイフの夜事件」は敢えて描かず、
狂言回しの主人公に「その後の出来事」として、
語らせるにとどめています。

その代わりにレーム以外のゲッペルスやシュトラッサー、
ゲーリングなどによるヒットラーを核にしたナチス内部の権力闘争を描き、
その中でヒットラーが独裁者としての地位を、
確立するまでを濃厚な会話劇として描いています。

これは矢張り良いですよね。

「悪」の魅力ということである訳ですが、
善玉より権力闘争は悪玉揃いの方が盛り上がりますし、
ゲッペルスにヒムラー、ゲーリングにヘス、レームと、
本当に魅力のある怪物が揃っているので、
これはもう面白くない訳がありません。

キャストも滑舌が悪い役者さんが多いのがやや残念ですが、
それぞれに気合いを入れた役作りをしているので、
その造形にはなかなか趣があります。
ラストずらっと舞台前方に揃うと、
これはもう歌舞伎の「白浪五人男」を思わせるようで、
思わず掛け声を掛けたくなるような素敵さがあります。
ゲーリングとゲッペルスが僕は特にお気に入りです。
髭のないヒットラーを演じた西尾友樹さんは、
あまりにポピュラーなキャラなので、
正直かなり損な役回りですが、
内面で演じきった感じがあって、
なかなかの芝居だったと思います。

こういう物語は悪の礼賛のように取られかねないので、
かなりリスクのある素材ですが、
ラストには狂言回しの主人公による、
その後の悲劇の説明を入れて、
更にもう1本の悲劇を扱った作品と同時上演することで、
その危険を回避した計算も巧みだと思います。

ただ、この作品の魅力は、
矢張り描かれた「悪の魅力」にこそあることは、
間違いはないのだと思います。

今日は後でもう1本演劇の記事をアップする予定です。

それでは一旦失礼致します。
石原がお送りしました。
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