So-net無料ブログ作成
  • ブログをはじめる
  • ログイン

高齢者へのスタチンの一次予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
スタチンの高齢者一次予防効果.jpg
今月のJAMA Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
65歳以上の年齢層におけるスタチンの一次予防効果を検証した論文です。

スタチンはコレステロールの合成酵素の阻害剤で、
最も広く使用されているコレステロール降下剤です。

スタチンを使用することにより、
心筋梗塞のなどの心血管疾患になった患者さんの、
再発予防効果は、
多くの精度の高い臨床データによって実証されています。

スタチンはまだ心血管疾患を発症してはいないけれど、
その危険性が患者さんに対して、
発症予防(一次予防)としての使用も行われています。

ただ、スタチンの一次予防を、
どのような条件の患者さんに対して施行することが、
最も適切であるのかについては、
まだ色々の議論があって一定の結論に至っていません。

以前ご紹介した2016年のアメリカ予防医学作業部会のガイドラインでは、
年齢が40から75歳で、
これまでに心筋梗塞などの既往がなく、
喫煙、糖尿病、脂質異常症、高血圧症のいずれかを持っていて、
10年間の心血管疾患のリスクが10%以上の人は、
低強度から中強度のスタチンの使用を推奨する、
という内容になっています。
年齢が76歳以上では、
明確なスタチンの一次予防効果は確認されていません。

今回の研究は、
この問題を単独の大規模臨床試験のデータの、
二次解析により検証したものです。

使用されているのは、
ALLHAT-LLTという大規模臨床試験です。

年齢は55歳以上で、軽症から中等症の高血圧を持ち、
心血管疾患の既往がなく、
糖尿病など高血圧以外の1つ以上のリスクを持つ対象を、
スタチンであるプラバスタチン(1日40ミリグラムという高用量)と、
主治医に任せる形の通常治療とに分け、
その経過を観察しています。

このデータのうち、
今回は年齢を65歳以上に絞って解析を行っています。
トータルは対象者は2867名です。

その結果、
65歳以上全体での試験開始後6年の時点での総死亡のリスクは、
スタチン未使用と比較して、
スタチン使用群では1.18倍(95%CI;0.97から1.42)、
年齢65から74歳では1.08倍(95%CI;0.85から1.37)、
年齢75歳以上では1.34倍(95%Ci;0.98から1.84)となっていました。

これはスタチンを一次予防として使用しても、
65歳以上の年齢層では有意な総死亡のリスクの低下は認められず、
75歳以上に限定すると有意ではないものの、
スタチンを使用した方が、
総死亡のリスクが高い傾向がある、
ということを示しています。

そして、心血管疾患の発症リスクについても、
65歳以上の年齢層においては、
スタチンの使用と未使用との間で、
有意な差は認められませんでした。

つまり、今回のデータからは、
65歳以上の年齢層ではスタチンを使用しても、
心血管疾患の一次予防効果は明確には認められず、
特に75歳以上においては、
生命予後を悪化させる可能性も否定は出来ない、
ということになります。

ただ、これは単独の臨床試験の結果を二次解析したもので、
スタチンもプラバスタチン(商品名メバロチンなど)という、
古いスタチンが使用されています。
心血管疾患のリスクも、
10年リスクを算出するような方法ではなく、
糖尿病などのリスクが1つ以上ある、
というようなやや大雑把な方法を取っています。

従って、これをもって65歳以上におけるスタチンの一次予防は不可、
というようには言い切れないと思うのですが、
少なくとも75歳以上の年齢層において、
スタチンによる心血管疾患の一次予防を行う場合には、
個別のリスクを勘案した、
より慎重な姿勢が必要であることは、
間違いがないと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本