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COPDと喘息を合併した場合の予後について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには出掛ける予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
COPDと喘息の合併の予後.jpg
今月のLancet Respiratory Medicine誌にウェブ掲載された、
ポピュラーな呼吸器疾患の、
合併した場合の予後についての論文です。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)というのは、
主に喫煙が原因で呼吸の機能の障害が進行性に起こるもので、
その初期の兆候は、
呼吸機能検査における1秒率という指標の低下です。
以前慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていた病態を、
併せたものとほぼ同一と考えられます。

一方で気管支喘息というのは、
アレルギーや体質が原因となって、
気道にアレルギーを主体とする炎症が起こり、
そのために刺激による気道収縮が、
発作的に起こる状態が持続する、
というアレルギー性の病気です。
その初期の兆候は、
発作時には1秒率が低下して、
それが気管支拡張剤の吸入により、
正常に戻る、ということです。

このように、定義としては明確に差のあるCOPDと喘息ですが、
実際には特に病気の経過が長いと、
両方の特徴を少しずつ持つというケースが、
しばしば見られることが知られています。
特に高齢者においては、その合併は多く、
トータルで大凡2割は、
そうした合併が生じているとされています。

最近単独のCOPDや喘息よりも、
両者を合併すると患者さんの予後が悪い、
とする報告が複数認められるようになりました。

そのため、
COPDと喘息の合併を、
単独の疾患とは別個の病気として、
治療や管理をすることが必要ではないか、
という機運が高まり、
2014年に国際的なガイドラインが作成されました。
ここにおいて、両者の合併は、
喘息・COPDオーバーラップ症候群(ACOS)と呼ばれるようになりました。

それでは、
このオーバーラップ症候群の長期予後はどうなのでしょうか?
それについての臨床データはまだ限られています。

今回の研究はデンマークにおいて、
心臓病の疫学研究のデータを活用し、
患者さんをCOPDと喘息と両者の合併、
そしてどちらもない人などの6つに分類し、
18から22年という非常に長期の経過観察を行って、
その予後を比較しています。

対象者の総数は8382名です。

第1群は非喫煙の健常者で、
喫煙歴がなく、COPDでも喘息でもない2199名です。
COPDでないことは、
1秒率が70%以上で、
喘息発作のような症状がこれまでにないことで定義されています。

第2群は喫煙歴のある健常者で、人数は5435名、
現在もしくは過去に喫煙歴があり、
COPDや喘息の所見はないことで定義されています。

第3群は喘息単独患者で、158名、
喘息発作の既往があり、
毎日10本を通算で1年程度かそれより少ない喫煙本数で、
気管支拡張剤吸入後の1秒率は、
70%以上であることで定義されています。

第4群はCOPD単独患者で、320名、
喘息発作の既往はなく、
毎日10本を通算で1年より多い本数の喫煙歴があり、
気管支拡張剤吸入後の1秒量は70%未満で、
気管支拡張剤の吸入により、
1秒量が200ミリリットル未満しか増加しない、
ということで定義されています。

第5群は40歳未満で喘息発作があったオーバーラップ症候群で、68名、
40歳未満で喘息発作の既往があり、
気管支拡張剤吸入後の1秒率が70%未満であることで定義されています。

最後の第6群は40歳以上で喘息発作のあったオーバーラップ症候群で202名、
40歳以上で喘息発作の既往があり、
気管支拡張剤使用後の1秒率が70%未満であることで定義されています。

オーバーラップ症候群については、
喫煙歴は問題にされていません。

年間の1秒量の低下は、
非喫煙健常者で平均20.9ミリリットル、
喫煙歴のある健常者で平均20.7ミリリットルであった一方、
喘息単独群では平均25.6ミリリットル、
COPD単独群では平均39.5ミリリットルと有意に低下が大きく、
オーバーラップ群では、
喘息発症が40歳未満では平均27.3ミリリットルの低下であったのに対して、
喘息発症が40歳以上の場合には、
1秒量の低下は平均49.6ミリリットルと、
最も大きな低下となっていました。

要するに中年以降で喘息を発症したオーバーラップ症候群は、
その後の呼吸機能の低下が最も大きい、
ということになります。

非喫煙の健常者と比較した時、
COPDもしくは喘息の急性増悪による入院のリスクは、
COPDの基準を満たさない喫煙者でも3.93倍と増加し、
喘息単独群で14.74倍、
COPD単独で23.80倍、
若年で喘息を発症したオーバーラップ症候群で39.48倍、
そして高齢で喘息を発症したオーバーラップ症候群では、
83.47倍という高率になっていました。

要するに、
オーバーラップ症候群の予後は、
特に喘息発作が40歳以降で発症している場合に、
それ以外の場合と比較して非常に悪く、
呼吸機能の低下も急性増悪の頻度も、
より大きいという結果になっています。

この知見は喘息やCOPDの管理において、
非常に大きな意義のあるもので、
喘息発作が後になって出現したCOPDについては、
より厳格な管理と治療が不可欠であるように思います。

なお、原論文には生命予後についての結果もあるのですが、
一般向けのブログの内容としては、
適切ではないと考えてその記載は省略しています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。