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メラトニンによる糖尿病リスクのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも、
いつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
メラトニンによる血糖上昇効果.jpg
今月のCell Metabolism誌に掲載された、
睡眠を誘導するホルモンであるメラトニンと、
インスリン分泌との関連を検証した、
興味深い論文です。

2型糖尿病は概ね3割は遺伝で、
7割は環境要因で発症すると考えられていますが、
その遺伝も単独の遺伝子などで決まるような、
性質のものではありません。

病気と遺伝子との関わりについては、
SNP(スニップ)と呼ばれる遺伝子の変異、
要するに遺伝子毎の個性のようなものを、
人間の遺伝子全て(ゲノム)で一挙に解析する、
ゲノムワイド関連解析という手法が、
現在では広く用いられています。

2型糖尿病をこのゲノムワイド関連解析で解析すると、
100を超えるSNPが、
それぞれ一定レベル関連するという結果が得られます。

この沢山のSNPの中には、
そのコードしている遺伝子と、
その機能が明らかなものもありますし、
コードする遺伝子自体がよく分かっていない、
というものもあります。

その中にメラトニンの1bという受容体の変異があります。

メラトニンは主に脳の松果体で産生されるホルモンで、
その分泌は網膜細胞に光刺激がなくなることにより刺激され、
睡眠を誘導して日内リズムを作ることに、
その主な働きがあると考えられています。

そのため、
不眠症の治療として、
メラトニンのサプリメントや、
メラトニンの誘導体であるラメルテオン(商品名ロゼレム)
という薬が使用されます。

さて、このように一見糖尿病とは、
全く関連がなさそうに思えるメラトニン受容体の変異ですが、
ゲノムワイド関連解析においては、
この受容体の変異と、
糖尿病の発症リスクとの間に一定の関連のあることが示されています。

その変異は人口の最大で3割に認められるもので、
それがあると、
メラトニン受容体はより活性化していて、
メラトニンの作用は強くなることが確認されています。

それでは、
何故メラトニンの作用が増強すると、
2型糖尿病のリスクが増加するのでしょうか?

今回の研究では、
培養した人間の膵臓β細胞とネズミのβ細胞を利用して、
そのメカニズムの検証を行なっています。

まず、問題となるSNPを持っていると、
人間でもネズミでも、
インスリン分泌細胞における、
メラトニン1b受容体の遺伝子の発現が増加していて、
その細胞のインスリン分泌は、
その変異により抑制されています。

メラトニンはその1b受容体を介して、
インスリン分泌を抑制する働きがあるのですが、
当該のSNPにより、
その抑制効果が増強されているのです。

実際にメラトニンを使用した患者さんにおいては、
この変異を持つ人は、
よりインスリン分泌が抑制され、
2型糖尿病のリスクが増加していることも、
過去の臨床データの解析により確認されました。

要するにインスリンを分泌する膵臓のβ細胞には、
メラトニンの受容体が存在していて、
メラトニンが分泌されるような状況では、
それに伴ってインスリン分泌は抑制されます。

寝ている間は食事はせず、
インスリンの必要量が少ないので、
インスリンの基礎分泌量も低下していることは、
これまでにも確認されている事実ですが、
その調節にメラトニンが関連していることが、
今回新たに確認されたのです。

これは生理的な現象で特に問題はないのですが、
メラトニン受容体に、
その発現を増加させるような変異があると、
そうしたインスリン分泌の抑制作用が増強されるので、
それがインスリン分泌不全に繋がり、
糖尿病のリスクになると想定されるのです。

この変異は現状あまり解析されていないと思いますが、
この変異のある人は、
メラトニンの使用は控えた方が良いと考えられるので、
臨床的には一定の意義のある検査のように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。