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ヨード造影剤の使用による甲状腺機能異常のリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ヨード造影剤による小児甲状腺機能異常.jpg
今月のJ Clin Endocrinol Metab誌に掲載された、
ヨード造影剤検査を受けたお子さんの、
検査後の甲状腺機能異常のリスクについての論文です。

ヨード(ヨウ素)は、
甲状腺ホルモンの材料で、
海藻などに多く含まれる成分です。

ヨードは過剰に摂取されても、
不足していても、
どちらの状態でも甲状腺機能に影響を与える可能性があります。

ただ、その影響が持続するのは、
橋本病など、
甲状腺に病気のある場合に限られることが多いと思います。

ヨードが過剰に身体に入る原因として、
食事以外に想定されるのが、
イソジンなどヨード系の殺菌剤の使用と、
CTなどの検査の際の、
ヨード系の造影剤の使用です。

CTなどで使用される造影剤には、
大量のヨードが含まれています。

従って、それを使用すると、
誰でも一時的には甲状腺の入るヨードはブロックされ、
甲状腺ホルモンは分泌されない状態になります。

それは通常一時的な作用で、
数日のうちには改善し、
甲状腺ホルモン自体は十分な備蓄があるので、
持続するような甲状腺機能低下症にはなりません。

しかし、
ヨード造影剤の使用後に、
甲状腺の機能低下や逆に機能亢進になるというケースが報告されていて、
その多くの場合には、
その人の甲状腺には何等かの問題が潜んでいるのです。

以前ご紹介したことのある、
2012年のArch Intern Med.誌の論文では、
ヨード造影剤の検査後に、
一過性ではない甲状腺機能異常が、
機能亢進は2倍程度、
TSHが10を超えるような機能低下は3倍程度、
未使用の場合と比較して発症した、
という内容になっています。

今回のデータはこれまであまり検討されていなかった、
18歳未満の小児への同様の影響を検証したもので、
単独施設において、
18歳未満で甲状腺の機能異常が発見された870例を、
年齢などの条件をマッチさせた、
甲状腺の異常のないコントロール870例と比較して、
ヨード造影剤の使用が甲状腺機能異常に与える影響を検証しています。

その結果…

甲状腺機能異常のある患者のうちの6%と、
異常のない対象者のうちの2%が、
診断2年以内にヨード造影剤を使用していて、
ヨード造影剤の使用により、
甲状腺機能低下症の発症するリスクは、
2.60倍(1.43から4.72)有意に増加していました。

ヨード造影剤が使用されてから、
中央値としては10.8か月で機能低下は診断されていました。

甲状腺のこうしたデータは、
単独施設のものが殆どなので、
1つや2つの報告のみでは、
それが事実であるとまでは判断は出来ません。

ただ、これまでの幾つかの同様の報告は、
概ね甲状腺機能低下症が増加する、
という点では一致していて、
そうした現象のあること自体は、
事実と考えて良いように思います。

個人的には、
やはり甲状腺の自己抗体が存在するようなケースで、
大量のヨードがその発症の引き金になることはあっても、
単独でヨードが永続的な機能低下を増やすとは、
考えにくいと思うのですが、
その点については、
まだコントの検証を待ちたいと思います。

いずれにしても、
ヨード系の造影剤を使用した際には、
その後1年間は甲状腺機能異常発症のリスクが、
一定レベルは増加することを想定して、
疑いのあるような症状があれば、
適宜検査はするべきであるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

禁煙治療による精神神経症状のリスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
禁煙治療と精神神経症状.jpg
今月のLancet誌に掲載された、
禁煙治療による副作用としての精神神経症状の、
リスクについての論文です。

バレニクリン(商品名チャンピックス)は、
現在使用されている禁煙補助剤の中で、
最も有用性が高いことは世界的に認められ、
使用がされている薬剤です。

この薬は脳においてニコチン様の作用を示すことが、
その主な作用となっているので、
発売の当初から脳への刺激が、
精神系の副作用に繋がるのではないか、
という危惧がありました。

バレニクリンの使用により、
うつ状態や自殺企図、自自殺リスクの増加などが、
生じるのではないか、という報告も一部にあり、
それが問題視されたこともありました。

ただ、少数の事例の報告はあっても、
ある程度まとまった集団のデータで、
そうしたリスクの増加が示唆されたことはなく、
薬には意地悪なことで有名なコクラン・レビューが、
2012年にまとめた報告でも、
不眠や悪夢のリスクの増加は指摘されていますが、
それ以外の精神系の有害事象は触れられていません。

もう1つ問題となるのは、
こうした薬を精神疾患のある患者さんに使用した場合の影響で、
以前ご紹介したBMJ誌のメタ解析では、
それほどの影響は認められない、
という結論になっていますが、
この点についてはそれほどまとまった研究が、
多く存在しているという訳ではないので、
禁煙治療薬は精神疾患の患者さんには使用するべきではない、
という見解も根強くあります。

今回の研究は、
これまでで最も大規模なもので、
例数も多く試験のデザインも非常に厳密な方法が取られています。

禁煙治療として、
バレニクリンを使用した場合と、
日本では未発売のニコチン拮抗薬である、
ブプロピオンを用いた場合、
そしてニコチンのパッチを使用した場合の3通りを、
偽薬によるコントロールと比較しています。

患者さんはくじ引きでどのグループになるかを選択し、
偽薬を使用して、
どの治療が行われたのかは、
患者さんにも主治医にも分からないように試験は進められます。

12週間の治療が行われ、
その後12週間の経過観察が行われています。

対象者は世界16ヵ国の140ヶ所の施設で登録され、
その総数は8144名で、
内訳は4116名の精神疾患を持つ患者さんと、
4028名の精神疾患のない対象者です。

主な判定項目は、
禁煙治療期間と観察期間における、
中等度から高度の精神神経症状で、
これは日常生活に制限の生じるような症状が、
新たに出現するか悪化してそうした状態になること、
として定義されています。

その結果…

精神疾患のない対象者においては、
中等度から重度の精神神経症状は、
バレニクリン群の1.3%、
ブプロピオン群の2.2%、
ニコチンパッチ群の2.5%、
そして偽薬群の2.4%で認められました。
各群間の比較では、
バレニクリン群が偽薬より有害事象が少なく、
ブプロピオン群よりバレニクリン群が有害事象が少ない、
という結果になりました。
他の群間には有意な差は付いていません。

精神疾患の患者さんにおいては、
中等度から重度の神経症状が、
バレニクリン群の6.5%、
ブプロピオン群の6.7%、
ニコチンパッチ群の5.2%、
偽薬群の4.9%に認められ、
各群間に有意差はありませんでした。

禁煙の成功率については、
バレニクリン群が最も有効性が高く、
ブプロピオン群とニコチンパッチ群の有効性は同程度で、
いずれの治療も偽薬よりは優れていました。
そして、この傾向は精神疾患の患者さんでも、
そうでない対象者と同じように認められました。
ただ、精神疾患の患者さんでは、
そうでない対象者より禁煙の成功率は低くなっていました。

今回のこれまでで最も規模が大きく、
デザインも厳密な臨床試験において、
バレニクリンは他の治療と比較して有効性が高く、
その精神神経症状のリスクは、
精神疾患の患者さんでもそうでなくても、
偽薬と比較して明らかに高い、
ということはありませんでした。

ただ、精神疾患のある患者さんでは、
どんな治療であるかには関わらず、
治療中の精神神経症状の出現率は高く、
その禁煙の成功率も低いので、
そうした患者さんへの禁煙治療についは、
原疾患の安定した時期を狙うなど、
患者さんの状態に合わせた、
慎重な対応が必要であると考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

シベリア少女鉄道「君がくれたラブストーリー」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
1日研修会があるので出掛ける予定です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
シベリア少女鉄道2016.jpg
主催の土屋亮一さんも絶好調の、
シベリア少女鉄道の新作が、
今赤坂レッドシアターで上演されています。

勿論大好きなシベリア少女鉄道ですが、
前作の「Are you ready? Yes,I am.」は、
残念ながら駄作で、
あーあっ、という思いで劇場を後にしました。

今回はどうなのかしら、
土屋さんもリア充で、
もう昔のような切羽詰まった世界は観られないのかしら、
と思っていたのですが、
今回はまずまずの出来栄えで、
キャストもますます安定感のある布陣であったので、
まずはほっと胸をなでおろしました。

ただ、1つのネタで走る、という感じなので、
上演時間は1時間15分とは言え、
やや物足りない感じはありました。
本当に良い時のシベ少は、
ネタも2段構えになっていて、
一旦解体された世界が、
その後に別の構図で再構築され、
それが更に崩される、
という感じになるのですが、
今回は1つのネタだけで、
最後にはそれが別の形で再構築されるのですが、
再構築された構図が、
どうも弱いという気がするので、
全体の半分くらいをピークに、
後半は何となくボルテージが下がるという気がするのです。

以下ネタバレを含む感想です。
そうは言ってもシベ少なので、
そのものズバリのネタバレはしませんが、
どうしても分かってしまう部分はあると思うので、
必ず上演が終わってからお読み下さい。

今回は結構スタイリッシュなセットで、
中央に四角いテーブルがあり、
全員黒服の全てのキャストが、
そこを取り囲んでいます。
タランティーノの「レザボア・ドッグス」のようです。

皆でカードをテーブルに出しながら、
何やら良からぬ相談をしているようなのですが、
台詞は時々不自然に感じられることがあります。
キャストは何かの駆け引きをしているようですが、
それもはっきりしません。

そのモヤモヤとした印象は、
始まって30分ほどのところで鮮やかな「ネタ」で、
一気に氷解します。

そこで一旦小休止という感じになり、
それからまた同じことが最初から繰り返されます。

この辺りは、前作と同じ構成ですが、
ネタがビジュアルでクリアなものなので、
前作のようなモヤモヤした感じにはなりません。

クリアでビジュアルな仕掛けが成功していると思います。

ただ、問題は同じことが繰り返される後半戦で、
前半とは違う光景が展開されないといけないのですが、
衣装は元のままでビジュアルに変化がなく、
あまり雰囲気が変わらないのが面白くありません。
良い時のシベ少では、
たとえば「キミ☆コレ」の時の「ラピュタ」のように、
全く予想外の別個の物語が、
いきなり立ち上がるのですが、
そうした再構築まで物語が至らず、
何となく段取りで終わりになるようなラストが物足りませんでした。

そんな訳で中段まではワクワクしながら観ていたのですが、
後半はちょっと元気を失いました。

それでも、他に類例のない芝居であることは間違いなく、
とても楽しめましたし、
次回も非常に楽しみです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

CABARET「阿部定の犬」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が診療を担当し、
午後は石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
阿部定の犬.jpg
もう先月の下旬の話なのですが、
吉祥寺の地下の小さなカフェで、
実際に黒テントの「阿部定の犬」のキャストだった3人の役者さんが、
ピアノの演奏の元に、
黒テントの名作「阿部定の犬」を、
3人だけで再構成して歌い踊り演じるという楽しい企画に、
足を運びました。

佐藤信作の「阿部定の犬」は、
僕がアングラ演劇に開眼した、
忘れようとも忘れられない1本で、
黒テントではテント公演も何度か行われましたが、
僕が観たのは、
「8月の劇場」という、
六本木の俳優座劇場での舞台でした。
忘れもしない1982年の夏のことです。

以前にも書きましたが、
この公演は本当に本当に本当に素晴らしくて、
今でも全ての場面が脳裏に浮かび、
斎藤晴彦さんのダミ声の歌が耳を駆け抜けます。
http://blog.so-net.ne.jp/rokushin/2010-12-19

この時、主役の「あたし」を演じたのが、
当時の黒テントの絶対ヒロインの新井純さんで、
幽霊役が石井くに子さん、
そしてご町内の3人組の厳島さんを演じたのが、
服部吉次(当時服部良次)さんです。

今回の上演では、
「阿部定の犬」で歌われた、
クルト・ワイルの「三文オペラ」をアレンジした劇中歌を、
全てこの3人で歌い、
物語も解説の語りを入れながら、
ほぼ全編を演じます。
と言っても、実際には台詞のあるキャストは16人なので、
1人で何役も演じ、
ご町内の3人組のような割台詞は、
落語風の語りで処理しています。
歌は全て入っていますが、
台詞は半分くらいになっているかな、
という感じです。
概ね納得のゆくリライトなのですが、
クライマックスの儀式の場面の、
当時の手紙の朗読の件が、
なくなっていたのはちょっと残念でした。

基本的にオリジナルで演じた役柄は、
3人とも自分で演じ、
それ以外の役柄は振り分ける、
という構成になっています。

僕はもう、とても懐かしくて、
後ろ向きな感じはしながらも、
素敵な時間を過ごすことが出来ました。

ただ、構成はもっと自由でも良いのかな、
というようには感じました。
ストーリーをある程度説明するという感じになっているのですが、
元々が難解なストーリーを、
更にダイジェストしているのですから、
殆ど分かりようがないと思います。

今回素晴らしかったのは、
何と言っても新井純さんの艶やかな歌声で、
昔より良いのじゃないかと思うほどの美声と、
情感たっぷりの歌い廻しには、
本当に感動しましたし、
胸が躍りました。

特に「来た!」という街頭写真師の台詞と共に、
人間犬を引き連れて現れる倒錯的な場面など、
昔も素晴らしかったのですが、
心の奥に突き刺さるような歌唱であり情感だったと思います。

勿論、石井くに子さんと服部吉次さんも、
八面六臂の大活躍でしたし、素敵でした。

個人的にはもっと他の舞台の劇中歌も入れて
(作曲家の許可の問題もあるのでしょうか…)、
物語も自由に脚色して、
黒テント名場面集のような感じが実現可能であれば、
もっと素敵なのではないか、と感じましたし、
もう1人公演毎にゲストが加わる、
というような趣向もまたありかな、
と感じました。

これからも頑張って下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

COPDと喘息を合併した場合の予後について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには出掛ける予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
COPDと喘息の合併の予後.jpg
今月のLancet Respiratory Medicine誌にウェブ掲載された、
ポピュラーな呼吸器疾患の、
合併した場合の予後についての論文です。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)というのは、
主に喫煙が原因で呼吸の機能の障害が進行性に起こるもので、
その初期の兆候は、
呼吸機能検査における1秒率という指標の低下です。
以前慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていた病態を、
併せたものとほぼ同一と考えられます。

一方で気管支喘息というのは、
アレルギーや体質が原因となって、
気道にアレルギーを主体とする炎症が起こり、
そのために刺激による気道収縮が、
発作的に起こる状態が持続する、
というアレルギー性の病気です。
その初期の兆候は、
発作時には1秒率が低下して、
それが気管支拡張剤の吸入により、
正常に戻る、ということです。

このように、定義としては明確に差のあるCOPDと喘息ですが、
実際には特に病気の経過が長いと、
両方の特徴を少しずつ持つというケースが、
しばしば見られることが知られています。
特に高齢者においては、その合併は多く、
トータルで大凡2割は、
そうした合併が生じているとされています。

最近単独のCOPDや喘息よりも、
両者を合併すると患者さんの予後が悪い、
とする報告が複数認められるようになりました。

そのため、
COPDと喘息の合併を、
単独の疾患とは別個の病気として、
治療や管理をすることが必要ではないか、
という機運が高まり、
2014年に国際的なガイドラインが作成されました。
ここにおいて、両者の合併は、
喘息・COPDオーバーラップ症候群(ACOS)と呼ばれるようになりました。

それでは、
このオーバーラップ症候群の長期予後はどうなのでしょうか?
それについての臨床データはまだ限られています。

今回の研究はデンマークにおいて、
心臓病の疫学研究のデータを活用し、
患者さんをCOPDと喘息と両者の合併、
そしてどちらもない人などの6つに分類し、
18から22年という非常に長期の経過観察を行って、
その予後を比較しています。

対象者の総数は8382名です。

第1群は非喫煙の健常者で、
喫煙歴がなく、COPDでも喘息でもない2199名です。
COPDでないことは、
1秒率が70%以上で、
喘息発作のような症状がこれまでにないことで定義されています。

第2群は喫煙歴のある健常者で、人数は5435名、
現在もしくは過去に喫煙歴があり、
COPDや喘息の所見はないことで定義されています。

第3群は喘息単独患者で、158名、
喘息発作の既往があり、
毎日10本を通算で1年程度かそれより少ない喫煙本数で、
気管支拡張剤吸入後の1秒率は、
70%以上であることで定義されています。

第4群はCOPD単独患者で、320名、
喘息発作の既往はなく、
毎日10本を通算で1年より多い本数の喫煙歴があり、
気管支拡張剤吸入後の1秒量は70%未満で、
気管支拡張剤の吸入により、
1秒量が200ミリリットル未満しか増加しない、
ということで定義されています。

第5群は40歳未満で喘息発作があったオーバーラップ症候群で、68名、
40歳未満で喘息発作の既往があり、
気管支拡張剤吸入後の1秒率が70%未満であることで定義されています。

最後の第6群は40歳以上で喘息発作のあったオーバーラップ症候群で202名、
40歳以上で喘息発作の既往があり、
気管支拡張剤使用後の1秒率が70%未満であることで定義されています。

オーバーラップ症候群については、
喫煙歴は問題にされていません。

年間の1秒量の低下は、
非喫煙健常者で平均20.9ミリリットル、
喫煙歴のある健常者で平均20.7ミリリットルであった一方、
喘息単独群では平均25.6ミリリットル、
COPD単独群では平均39.5ミリリットルと有意に低下が大きく、
オーバーラップ群では、
喘息発症が40歳未満では平均27.3ミリリットルの低下であったのに対して、
喘息発症が40歳以上の場合には、
1秒量の低下は平均49.6ミリリットルと、
最も大きな低下となっていました。

要するに中年以降で喘息を発症したオーバーラップ症候群は、
その後の呼吸機能の低下が最も大きい、
ということになります。

非喫煙の健常者と比較した時、
COPDもしくは喘息の急性増悪による入院のリスクは、
COPDの基準を満たさない喫煙者でも3.93倍と増加し、
喘息単独群で14.74倍、
COPD単独で23.80倍、
若年で喘息を発症したオーバーラップ症候群で39.48倍、
そして高齢で喘息を発症したオーバーラップ症候群では、
83.47倍という高率になっていました。

要するに、
オーバーラップ症候群の予後は、
特に喘息発作が40歳以降で発症している場合に、
それ以外の場合と比較して非常に悪く、
呼吸機能の低下も急性増悪の頻度も、
より大きいという結果になっています。

この知見は喘息やCOPDの管理において、
非常に大きな意義のあるもので、
喘息発作が後になって出現したCOPDについては、
より厳格な管理と治療が不可欠であるように思います。

なお、原論文には生命予後についての結果もあるのですが、
一般向けのブログの内容としては、
適切ではないと考えてその記載は省略しています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

抗甲状腺薬による無顆粒球症と遺伝子変異(2016年ヨーロッパの知見) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ヨーロッパにおける抗甲状腺薬の副作用と遺伝子.jpg
今月のLancet Diabetes Endocrinology誌に掲載された、
甲状腺機能亢進症の治療薬の、
比較的稀ですが重篤な合併症と、
それを起こし易い遺伝子のタイプを解析した論文です。

バセドウ病で症状のある甲状腺機能亢進症があると、
日本ではほぼ100%飲み薬による治療が、
まずは行われます。

日本で使用されているのは、
チアマゾール(MMI;商品名メルカゾール)と、
プロピルチオウラシル(PTU;商品名チウラジールなど)です。

基本的には妊娠初期を除いては、
第一選択としてはチアマゾールが使用されます。
これはチアマゾールがより効力が強く、
作用が安定していて、その持続も長いからです。

抗甲状腺剤(特にチアマゾール)は、
有用な薬剤ですが、
幾つか気を付けないといけない副作用が存在しています。

その中で頻度的にも0.2から0.5%と、
決してすくなくはなく、
非常に重篤な経過を取ることもあるのが、
無顆粒球症です。

要するに薬剤の影響により、
白血球が減少し、
特に細菌感染に対する身体の抵抗力の主体である、
顆粒球が著名に減少するので、
敗血症などの重症な感染症が起こるのです。

この抗甲状腺薬による無顆粒球症の原因は、
まだ明確ではありませんが、
好中球に対する抗体が検出されたり、
薬剤の代謝産物により、
自己免疫的な反応が起こるのでは、
というような知見もあります。

この無顆粒球症は遺伝素因が関連しているという報告が、
2015年のNature Cmmunications誌に掲載されています。

それがこちら。
メルカゾールの副作用の遺伝解析中国.jpg
これは台湾と香港に住民を対象とした疫学研究で、
42名の無顆粒球症の検体と、
1208名のバセドウ病の患者さんの検体を用いて、
免疫の個人差の指標であるHLA(ヒト白血球抗原)のタイプと、
ゲノムワイド関連解析という手法で、
全ゲノムのSNPという遺伝子の変異を一度に解析して、
そのSNPと無顆粒球症との関連を分析しています。

その結果、
HLA-B*38:02とHLA-DRB1*08:03という2種類のHLAのタイプが、
それぞれ独立に無顆粒球症のリスクと関連していました。
また、その遺伝子の部位に一致するSNPが、
それぞれ1か所ずつ同定され、
HLAのタイプと同一の意味を持つことが確認されました。

両者を足し合わせると、
何もない場合と比較して、
HLAのタイプを2つ持つことにより、
そのリスク(OR)は48.41倍となっていました。

このうちのHLA-DRB1*08:03については、
1996年のAnnals of Internal Medicine誌に日本での論文が出ています。
それがこちら。
メルカゾールの副作用の遺伝解析日本.jpg
HLAの検索としては早い時期のものとして、
意義のあるデータですが、
リスク(OR)は5.42倍で、
それ以外のHLAでは有意な関連はなかったというデータになっています。
ゲノムワイド関連解析も、
1996年なので行われていません。
現状では追試がしっかりされないと、
その価値は低くなってしまうと思います。

さて、今回の研究は2015年の台湾と香港のデータと同じことを、
ヨーロッパの白人種の検体で検証したものです。
HLAのタイピングと、
ゲノムワイド関連解析によるSNPの検出とが、
同時に行われています。
抗癌剤以外の原因による無顆粒球症の患者さん、
トータル234名の検体が解析されていて、
そのうちの39名が抗甲状腺剤によるものです。
ゲノムワイド関連解析では9380034個のSNPが解析され、
180のHLAのタイプが検証されています。

その結果…

特に抗甲状腺薬による無顆粒球症の発症とにおいて、
HLA-B*27:05というHLAのタイプが関連があり、
このタイプがあることにより、
無顆粒球症のリスク(OR)は、
正常コントロールとの比較で7.30倍(3.81-13.96)、
甲状腺機能亢進症の患者さんとの比較で16.91倍(3.44‐83.17)、
それぞれ増加していました。

ゲノムワイド関連解析では、
3つのSNPが無顆粒球症の発症と関連していて、
そのうちの1つはHLA-B*27:05と関連がありましたが、
残りの2つは無関係でした。
3つのSNPはいずれもHLAと同じ、
6番染色体に位置していました。

この3個のSNPとそのうちの1つと関連するHLAのタイプを、
全て併せて計算すると、
そのリスクは753倍(105-6812)となり、
抗甲状腺薬による無顆粒球症の発症のうち、
30%はこの3種類の遺伝子で予測可能であるという結果になりました。

この遺伝子検査による振り分けを行うことにより、
238名の患者さんの検査により、
1名の無顆粒球症が予防可能となる、
という結果も得られました。

この結果が事実とすると、
ヨーロッパの白人と中国系のアジア人や日本人とでは、
全く別個のHLAやSNPが、
その発症に関わっている、
ということになります。

今回の結果も2015年のNature Communications誌の結果も、
それなりに厳密で信頼性は高いものなのですが、
患者さんを直接診察したようなものではないので、
実際の臨床を何処まで反映しているのかは、
疑問の余地があります。

本当にこれだけの人種差があるとすれば、
対応も自ずと違わないといけない理屈になりますが、
その人種差の原因の検証を含めて、
この問題はまだまだ検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

スタチン誘発筋症とビタミンDとの関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビタミンDとスタチンの有害事象との関連性.jpg
2014年のPLOS ONE誌に掲載された、
スタチンというコレステロール降下剤の使用と、
ビタミンDの血液濃度との関連を検証した論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
心血管疾患の予防効果は確立しています。

ただ、有害事象や副作用の多い薬でもあることが知られています。

従って、この薬を使用する場合には、
個々の事例において、
慎重に使用をすることが医療者には求められていると思います。

スタチンの副作用の中で最も多いのは、
スタチン誘発筋症と呼ばれるような、
筋肉痛などの筋肉系の異常で、
ある海外統計では、
患者さんの4人に1人には、
何らかの筋肉痛などの症状があるようです。

血液のCPKという酵素が増加する、
横紋筋融解症が有名ですが、
実際には筋肉痛はあってもCPKは増加しないことも多く、
また大半のケースでは、
CPKの増加は正常上限の2倍程度に留まっています。
稀に見られる急性腎障害を来すようなケースは、
遺伝的な素因が関連していると考えられています。

さて、
このスタチンに伴う筋肉の障害は、
メバロン酸経路の障害による、
筋肉細胞内ミトコンドリアのコエンザイムQ10の欠乏による、
と想定されています。

この理屈で言えば、
筋肉内のスタチンの濃度が高いほど、
そうした障害は起こりやすくなり、
おそらくは遺伝的な素因が、
その起こりやすさを左右していると思われます。

ビタミンDが欠乏すると、
このスタチン誘発筋症が誘発されるのではないか、
という現象を示唆する疫学データが複数報告されています。

スタチンの多くはCYP3A4という酵素で分解され、
このCYP3A4にはビタミンD3産生酵素としての働きがあります。
従って、ビタミンDが欠乏すると、
スタチンを代謝するCYP3A4が、
ビタミンD3の産生のために動員されるので、
スタチンの代謝が阻害されて、
スタチンの細胞内濃度が上昇すると想定されるのです。

しかし、実際にそうしたことがあるかどうかについては、
まだその根拠となる知見は限られています。

そこで上記論文では、
アメリカのプライマリケアの医療データを活用して、
血液のビタミンD濃度と、
スタチン誘発筋症との関連性を検証しています。

5526名の医療データを解析した結果として、
そのうちの1160名がスタチンを使用していて、
その平均年齢は55.9歳でした。
そして、スタチン使用者の24%に当たる276名に、
スタチン関連筋症が発症していました。

対象者を血液のビタミンD濃度(25(OH)D)の濃度毎に4分割すると、
最も高濃度(31ng/ml以上)の群と比較して、
最も低濃度(10ng/ml以下)の群は、
1.21倍(1.09-1.33)有意にスタチン誘発筋症が多く発症していました。

色々なビタミンD濃度で解析すると、
15ng/ml以下を低値として予測する場合に、
感度が89%で特異度が83%となり、
最もスタチン誘発筋症を予測出来る、
という結果になりました。

要するに、
ビタミンDの欠乏が存在していると、
スタチンによる筋肉痛が生じやすいという結果です。
ただ、仮にそのメカニズムがCYP3A4を介しているのだとすると、
スタチンの種別によって、
その影響は異なる筈ですが、
そうした検証はこれまで行われたことはないようです。

昨日お示ししたデータのように、
スタチンをビタミンDと併用した臨床試験もあるのですが、
これまでのところ、
明確にスタチンとビタミンDの併用により、
筋肉痛などの発症が抑制された、
というような精度の高いデータはないようです。

つまり、ビタミンDの欠乏があると、
スタチンによる筋症は増える可能性があるのですが、
それがビタミンDの補充により、
予防されたり改善したりするかどうかは、
まだ証明はされていないのです。
また、全てのスタチンで同様の影響があるかどうかも、
現時点では明らかではありません。
使用されているビタミンDの測定法は、
現状日本では保険適応がありません。

個人的にはスタチンの適応のある人で、
筋肉の合併症のことを気にされていたり、
こむら返りなどが起こりやすい人では、
ビタミンDとスタチンとの併用は、
カルシウム代謝異常などがなければ、
医療コスト的な側面や保険診療との整合性を除いては、
患者さんへの実害は殆どないと思われるので、
1つの選択肢ではあるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

片頭痛に対するスタチンとビタミンDの有効性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビタミンDとスタチンの片頭痛への効果.jpg
2015年のAnnals of Neurology誌に掲載された、
コレステロール降下剤とビタミンDの併用により、
片頭痛が大幅に予防された、
という興味深い論文です。

片頭痛は若年から中年層の女性に多い、
慢性で発作性の頭痛の代表で、
その症状に悩まれている方も多いと思います。

その治療にはセロトニン受容体の作動薬である、
トリプタン製剤やエルゴタミン製剤などが、
痛みのある時には使用され、
一定の効果が確認されています。

しかし、慢性の片頭痛に対しては、
こうした発作を抑える頓服薬だけでは、
コントロールが困難であることが多く、
その場合は予防薬として、
バルプロ酸のような抗痙攣剤や、
β遮断剤、カルシウム拮抗薬、
SSRIのような抗欝剤などが使用されます。

ただ、こうした薬剤の有効性はそれほど高いものではない反面、
決して副作用や有害事象の少ない薬剤ではありません。

「頭痛の名医」とマスコミなどで名前の挙がる先生の中には、
単なる「片頭痛」という診断である筈なのに、
バルプロ酸と数種類の抗鬱剤、
抗不安薬などを山のように出される方がいて、
結局薬の副作用のために、
会社を休まざるを得なくなった、
というような方が何度がご相談に見えたことがあります。

それでは、
脳の働きを落とすような薬を使わずに、
片頭痛を予防するような方法はないのでしょうか?

スタチンはコレステロール降下剤ですが、
抗炎症作用を併せ持ち、
広く動脈硬化性疾患の予防薬として使用されています。

片頭痛は昨日ご紹介したように、
心血管疾患のリスクであることが報告されていて、
仮にそれが事実であるとすると、
血管内皮障害や炎症など、
共通の病因に基づいているという可能性も否定は出来ません。

それでは、
心血管疾患の予防薬であるスタチンで、
片頭痛発作を予防することは出来るのでしょうか?

今回の研究では、
単独施設で例数は少ないのですが、
偽薬を用いる厳密な方法を使用して、
スタチンの片頭痛発作予防効果を検証しています。

対象者は18歳以上で3年以上の片頭痛歴があり、
平均で1ヶ月に4日以上は片頭痛発作がある、
という人達です。

そうした患者さん57名を、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方はスタチンであるシンバスタチン(商品名リポバスなど)を、
1日40ミリグラムと、
ビタミンD3 2000単位を使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
24週間の経過観察を行い、
薬剤使用前の12週間と比較して、
片頭痛の頻度を比較検証しています。

スタチンにビタミンDを併用しているのは、
ビタミンDが欠乏していると、
スタチンの筋肉系の有害事象が生じやすいということを、
示唆するようなデータがあるからで、
スタチンを安全に使用するために、
ビタミンDを併用しているのです。
こうしたスタチンの効果の試験で、
あまりこうしたことはしないことが多いので、
やや奇異な感じはします。

その結果…

薬剤使用前の12週間と比較して、
使用開始後の12週間では、
スタチン使用群で平均8.0日間発作のあった日は減少していて、
その一方で偽薬群では平均1.0日間増加していました。
つまり、スタチンとビタミンDの併用により、
片頭痛発作は有意に抑制されていました。

使用開始後13から24週間の解析では、
スタチン使用群で平均9.0日発作のあった日は減少し、
偽薬群では平均3.0日増加していました。

スタチンとビタミンD使用群において、
25%の患者さんでは12週間の時点で、
片頭痛のあった日数は半減していて、
24週間の時点では29%の患者さんで、
片頭痛のあった日数が半減していました。

このように、
スタチンとビタミンDの併用により、
かなり片頭痛の発作は予防されている、
という結果という結果になっています。

ただし、
薬剤使用前の12週間においては、
有意差はないものの片頭痛回数は、
偽薬群よりスタチン使用群の方が多くなっていて、
そのことが結果に影響している可能性は、
否定出来ません。
単独施設で例数が少ないという点も、
まだこの効果は事実とまでは言えない、
というように考えた方が良さそうです。

いずれにしても、
非常に興味深い結果であることは事実で、
今後より例数が多く、
複数施設における同様のデータを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

片頭痛と心血管疾患リスクとの関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
片頭痛と心血管疾患.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
片頭痛と脳卒中などの心血管疾患との、
関連についての文献です。

片頭痛というのは、
目の前に光がちらつくなどの前兆の後に、
頭の半分のズキズキとする強い痛みが、
発作的に出現する症状で、
脳の一時的な興奮や血管の拡張がその原因であるとされ、
特に若年から中年層の女性に多い病気です。

上記文献のアメリカの疫学データによると、
生涯に一般人口の5分の1は片頭痛を発症していて、
女性は男性より3から4倍発症しやすいと記載されています。

片頭痛は基本的に良性の病気で、
薬剤でコントロールが可能であり、
後遺症などは特にないと考えられています。

しかし、以前から片頭痛の患者さんにおいて、
脳卒中などの心血管疾患が多い、
という知見が報告されています。

片頭痛後に脳卒中を来したとすれば、
それはそもそも片頭痛ではなく、
器質的疾患による頭痛であった、
という可能性もあるのですが、
脳卒中のみならず心筋梗塞なども増加していて、
脳の動脈硬化などの所見とも、
明確な関連性は認められないので、
単純に誤診のみとは考えられません。

ただ、これまでの報告は比較的短期間のものが多く、
実際にどのような心血管疾患が、
片頭痛の患者さんではどの程度多く、
それが患者さんの予後にどの程度影響しているのか、
という点についての、
精度の高いデータはあまり存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカのこうした研究では必ず登場するデータである、
女性看護師の大規模疫学データを活用して、
片頭痛のあるなしと、
その後の心血管疾患の発症と生命予後についてのリスクを、
比較検証しています。

対象となっているのは、
登録時で25から42歳の女性の看護師で、
トータルな人数は115541名です。

20年以上の観察期間中に、
1329件の心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患が発症し、
223名が心血管疾患のために亡くなっています。

高血圧や糖尿病の有無などを補正して解析した結果、
片頭痛により心血管疾患のリスクは、
1.5倍(95%CI; 1.33-1.69)有意に増加していました。
個別にみると、
心筋梗塞が1.39倍(1.18-1.64)、
脳卒中が1.62倍(1.37-1.92)、
心臓のカテーテル治療のリスクが1.73倍(1.29-2.32)、
とそれぞれ有意な増加が認められました。

更に、心血管疾患による死亡についても、
片頭痛を持っている人は持っていない人に比べて、
死亡リスクは1.37倍(1.02-1.83)有意に増加していました。

この片頭痛による心血管疾患のリスクの増加は、
年齢や喫煙の有無。高血圧の有無、
女性ホルモン療法の有無、
経口避妊薬の使用の有無などで分けて解析しても、
同様の結果が得られました。

要するに、
片頭痛のある女性では、
その後20年に渡りそれがない場合と比較して、
1.5倍程度心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクが高くなります。

この原因は明確ではありませんが、
血管内膜に何らかの共通の因子があるのではないか、
という考えや、
他の心血管疾患のリスクを共有しているのではないか、
というような見解があります。

ただ、今回のリスク因子の検証においては、
あまり関連のある因子は確認されませんでした。

次に問題となるのは、
片頭痛を治療することにより、
心血管疾患の予防に繋がるのかどうか、
という点になりますが、
現状はそれについての明確なデータもないようです。

最近、スタチンとビタミンDを使用することにより、
片頭痛発作が抑制されたとする興味深い報告がありましたが、
これが心血管疾患の抑制にも繋がるという可能性はあり、
今後スタチンを片頭痛の患者さんに使用することにより、
長期的な心血管疾患の予後を改善しようという、
研究に繋がるかも知れません。

ただ、現状はまだ未解明の点が多く、
片頭痛をお持ちの方は、
他の人より意識的に心血管疾患のリスクを抑制することを考え、
生活を送るということが最善かも知れません。

明日はスタチンとビタミンDによる、
片頭痛予防のデータをご紹介する予定です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

「アイヒマン・ショー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
アイヒマンショー.jpg
アウシュビッツのホロコーストを主導した、
ナチスの高官アイヒマンが、
1961年に南米で逮捕され、
イスラエルで公開裁判に掛けられたという史実を素材にして、
そのテレビ収録の監督とプロデューサーを主人公とし、
実際の裁判をテレビで中継するという、
それまでにないメデイアの事件の裏側を描いた映画が、
比較的地味に公開されています。

これは内容もかなり地味な映画です。
アイヒマン裁判撮影のために、
アメリカでレッドパージを受けたユダヤ人の監督が、
イスラエルに招かれるところから、物語は始まり、
アイヒマンの「悪」を、
人間が誰しも持ちうる闇として描くことを意図した監督と、
番組が世間的に注目を集め成功することを、
第一に考えるプロデューサーとの対立が軸になるのですが、
特にドラマティックな展開がある訳ではなく、
意外と淡々と物語は進みます。

イスラエル政府や判事の無理解や、
ナチス信奉者の男から襲撃されたりというような、
サスペンスを狙ったような趣向もあるのですが、
なくもがな、という感じで、
スリリングにはなっていません。

ラストは冷静沈着な態度を崩さないアイヒマンから、
人間的な動揺を引き出そうと、
テレビ的な演出を駆使して主人公が迫り、
何となくすっきりしない感じですが、
その表情に一瞬の動揺が捉えられて、
スタッフは歓声を上げて物語は終わります。

人間の誰にでもある闇の部分であるとか、
テレビマンの非人間的な部分、
ユダヤ国家建国のジレンマなど、
興味深いテーマも表現はされますが、
それほど深く斬り込むという感じではなく、
トータルには、
ホロコーストの真実を世界に伝えた、
メディアの意義を称賛するニュアンスが、
作品の基調音となっていました。

歴史のお勉強としては面白く見たのですが、
アイヒマン裁判を扱った映画は他にもあり、
比較して特に目新しさは感じません。
演出は当時の実際の映像を多く使用して、
コラージュ風に構成され、
アイヒマン自身は俳優さんが演じた部分と、
実際の映像による本人の映像とが、
目まぐるしく切り替わります。
それほどの違和感はないように編集されていますが、
それでも別人であることは明らかに分かるので、
やや不自然な感じはありました。

総じて、真面目な作りで興味深く見ることは出来ますが、
頑張って映画館に足を運ぶほどではないかな、
というのが正直な感想で、
特にサイトで日本のテレビ関係者が、
絶賛しているようなコメントを見ると、
「テレビはこんなに影響力があるんだぜ」という、
そのナルシスティックな感じに、
鳥肌の立つような不快な思いもするのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。